
少し前だが、産経新聞に以下のような記事が掲載された。
《大阪市西成区のあいりん地区で、昨年1年間に覚醒剤や大麻の売買で摘発された購入者らのうち、少なくとも37%にあたる155人が生活保護受給者だったことが13日、大阪府警薬物対策課への取材で分かった。保護費が薬物の購入に充てられている実態が浮き彫りになった。府警によると、同地区では路上での密売が横行しており、昨年は同地区で密売人50人、購入者371人の計421人を摘発。うち155人の生活保護受給が確認され、この半数近くが同区の保護費の支給開始日にあたる毎月1~10日に摘発された。摘発者のうち受給者が占める割合は、平成22年が145人で29%、23年が149人で34%となっており、増加傾向が続いている。西成区の受給者は昨年10月現在で約2万8千人。大阪市24区で最多で、市全体の約2割を占めている。一方、昨年の摘発者全体のうち約80人が大阪府以外に居住。中には「西成に行けば覚醒剤が買えると聞き、大分から電車で来た」と供述する購入者もいた》<産経新聞2013 2.13>
生活保護と覚せい剤売買を安易に結びつけるものではないが、事実の一端として記事に出ている以上、この件について取材・考察を試みたい。
まずは、実際に売人(プッシャ―)といわれる人間への接触に成功した。
――いま、客の数はどうですか?
「いまは福祉がみんな金尽きてるから、少ないな。最近見回りきついしな。デコ(警察)の」
――1日どのくらい?
「それでも30~40人はいるわな」
――いま西成では、何カ所くらい売人はいるのですか?
「立ちんぼは4カ所かな、後は屋台とか直接(組の)事務所に行くとかな」
――値段はどうなんですか?
「ここらの末端は昔から変わらないわ、下手に上げると暴動起こすしな(苦笑)」
――いま、シャブはどこから入れてるか聞いてます?
「本来は九州から入れてたみたいやけど、いま向こうはいろいろ厳しいやろ、だからルート変わったらしいで。ほら昔H会が作ってたりしたろ」
――いまはどこルートですか?
「ワシが聞いてる限りは関東ルートやな」
――関東ですか?
意外な思いがした。これも人によって異なる。ミャンマーの名前を挙げる人もいるし、以前は北朝鮮の名前をよく口にしていた。
「昔は知ってる通り、シャブの値段はIが牛耳ってたやろ、それとはいまは違うらしいけど関東モンが主流らしいで」
――シャブといえば関東では、いや関東以外でもどこも扱ってます。北朝鮮、台湾、中国ルートではないのですか?
「聞いた話じゃ、海も国境きついらしいんよ。ロシアは完全にダメになったらしいしな」
北朝鮮は総連土地売買問題で事実上の大使館であった総連が機能しなくなり、日本とは国交断絶に近い状態だ。ロシアは以前、タイヤを密輸していくといい値段で買ってくれたという話もあったし、それは暴力団の資金源の一つであろう。ただ、土地売買や株に比べれば微々たるものだと思うのだが。
関東の売人にも接触できた。
――いまの取引価格を教えてください。
「高いよ、モノも少ないしな。ハーブに逃げた人間も戻ってきてるし。俺なんか一時期ハーブの売までやったからな、食えなくて」
――ハーブの規制、かなり厳しくかかりました。
「俺の知ってる関東の人間なんかは、オーストラリアにハーブ栽培のための土地買うって言ってたけど、その話も消えたしな」
――いま、ミャンマー産が増えてると聞いたんですが。
「そこまでは増えてないよ、だけど、日本ミャンマーなんとか協会とか、ヤクザもんがやってるうさん臭い団体多いな」
――いま、いくらですか?
「俺らは、まとめて売ることはしないから。刑期長くなるだけだろ。注文受けて、ある場所に取りに行くだけ」
――グラムで3~4万くらいですか?
「いや、人を見て値段つけるな、前はネットの掲示板とかですごく高く売れたろ。あれで相場がなくなったからな。グラム最低でも5万はつけるよ、いくら知り合いでも」
――まとめて買うと一昔前は安くしてたじゃないですか、いまは駄目ですか?
「そいつらがネットとかでバカみたいに高く売って、パクられて、そのケツが結構売する側に来たからな。いまは寒いわ」
――いまは関東からモノが入ってくるって聞いたんですが。
「出る場所が関東でも、値崩れはさせないよ、そこらへんは考えてる。同じモノを安く売って刑期が同じだろ。馬鹿だわ」
――シャブ利権で一番儲けてるのはどこですか?
「関西、九州はわからないよ。だけど現実に関西から買いに来てるな、まとめて。俺の卸元は余裕かましてるよ、でかい土地買って、そこらにシャブ埋めて隠してるわ」
――話は戻りますけど、ではシャブの値段は誰がつけるのですか?
「末端だよ、欲しい奴らは、いくらでもある程度までは買う。それで俺らが甘い汁を吸う」
――いまは、アフリカルートは消えたんですか?
「馬鹿な女を使って運び屋にするやつだろ、いまは捕まってもう警戒されてるからないわ」
――これからは、どこルートが増えると思いますか?
「モノがあっても質の悪いやつはダメだよ、前のオウムネタみたいに。だからミャンマーはある程度までは伸びると思うよ、だけどまだ供給ルートが確立してないからな、これからだろ」
本稿では最初に書いたように、生活保護受給者のすべてが違法薬物に手を出している、ということを言いたいわけではない。新聞記事から、これは一般人~芸能界まで、依然として目の見えないところで、薬物汚染は広がっているのではないかと思った次第である。
歩を譲って、大麻は合法化されている国もある。オランダなどであるが、といっても、決まった店の中で、の話である。
覚せい剤の恐ろしいところは依存性である。
ある元ヤクザが言っていた。毎週水曜放送「ニコ生ナックルズ」(
http://ch.nicovideo.jp/hisada)の中でだったと思うが、自身の経験から「覚せい剤を断ち切るには、人間関係、住環境、仕事環境など、すべて変えなければダメ。だから俺はアフリカまで行った。刑務所から戻ってきて、また同じ土地で暮らすとなると、どうしても以前の人間関係で仕事をしたりする。すると再犯率が高くなる」といった趣旨のことだったと記憶している。
芸能人の再犯率が高いのはそのせいであろう。酒井法子などはボランティアの仕事に就くと言っていたが、結局芸能界に戻ってきてしまった。闇社会数人の人間に取材したが、酒井は顔つきから再犯率が高いとまで言い切っていた。そこらへんは僕には分からない。実際に芸能人の再犯率が高い、というより目立つのは事実である。もちろん、麻薬取締官などは再犯に目を光らせてはいると思うし、マークしている芸能人もいると思うのだが……。
(文=久田将義)
●ひさだ・まさよし
1967年東京都世田谷区生まれ。神奈川県横浜育ち。法政大学社会学部を卒業後、(株)産経メディックスに入社。その後、三才ブックスに入社、「別冊ラジオライフ」編集部に所属。後に、ワニマガジン社へ移籍、その傍ら、ムック「ワニの穴」シリーズの編集人。2000年、ミリオン出版に移籍し「ダークサイドJAPAN」の創刊編集長。2001年、「実話ナックルズ」編集長。2005年、「実話ナックルズ」編集長兼任で「ノンフィクスナックルズ」「THE HARD COREナックルズ」創刊、2012年9月末日にミリオン出版を退社。2012年9月より、ニコニコでブロマガ「久田将義の延長!ニコ生ナックルズ」を配信開始。
・久田将義の延長!ニコ生ナックルズ
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