
──女子高生モデルとして、活躍していた平田薫。“R-18”と冠がついた作品に出演することで、オトナの女優に変身していくその姿をキャッチ!
誰にでも、人にはいえない“愉しみ”がある。彼女の場合それは、自らの身体を縄で縛る“自縛”だった──。
来る2月2日、「女による女のためのR-18 文学賞」大賞受賞作の『自縄自縛の私』が公開される。商業映画で扱いづらい異色の題材ということもあり、公開前から話題の映画だ。
ともすると露悪的にも映る物語だが、本作で表現したのは、めくるめく“官能の世界”ではない。「縛るという行為は自分に対する戒めというような思いもあった」という竹中直人監督の言葉が示すとおり、全編を通じて、ごく普通の女性のナイーヴな本音が綴られていく。
ヒロインに抜擢されたのは平田薫(23)。今年でキャリア9年目。映画に舞台に活躍の幅を広げる、今注目の若手女優である。
今回の役どころは、仕事のストレスから“自縛”の世界にのめり込んでいくOL。瑞々しくスレンダーな裸体を晒し、“自らの身体を縛りあげる”行為をエスカレートさせていくヒロインを演じた。
劇中、幾度となく麻縄を手にする彼女。その都度、恍惚の表情で、白肌に縄が喰い込むまで縛りあげていく。その姿を観るにつけ、主人公・百合亜の心の奥を垣間みることになる。
「百合亜は、どこにでもいるような普通の女の子。縄の練習以外、特別なことは必要ありませんでした。今までにないくらいフラットな状態で、作品に入っていけました」
インタビュー冒頭、事もなげにこんな話が始まる。しかし、ひと呼吸置いてこうも続く。
「まったく知らない世界だったので、最初は驚きました。クランクインまでの1カ月半は、自縛の世界を深く理解するため、さまざまな愛好者のブログを読みました。作中、自縛シーンをワンカットで撮ると聞いていたので、縄と馴染むことを目標に、ひとり縛りの練習に明け暮れて(笑)。そんな日々のなか、何百回となく縛りの練習を繰り返し、私が演じる百合亜はなぜ、自分を縛るのか? その答えを探しました。だけれど、百合亜の胸の内にまでは、どうしても辿り着けなくて……」
気持ちは焦るばかり。いくら自分を縛っても「何の感情も生まれなかった」そうだ。そんな気持ちに変化が生じたのは、クランクインの直前。撮影チームのロケハンに同行した際、監督からヒロイン像について聞くことができ、その言葉から「自分と“似ている”部分がある」ことに気づいたという。
「どこかで百合亜のことを後ろめたいとかかわいそうとか、マイナスの方向から見ていたんです。でも彼女は『これも自分だ』と肯定できているからこそ、誰に頼ることもなく、自立した女性として“力強く”生きていて。百合亜にとって縄は現実逃避の手段かもしれないけれど、縄があるから前を向ける、頑張れるというパワーの方が強くなっていったことに気づくことができたんです。その姿が『格好いいな』と思えるようになりました」
劇中、百合亜は多くを語らない。彼氏とも会社の仲間とも、饒舌に話すことはない。取材中の彼女も、質問に対して言葉を選びながら、ひと言ひと言丁寧に話していく。時折笑顔をのぞかせながらも、その眼差しはまっすぐだ。

「私も百合亜と同じように、友人が多いタイプではないんです。自分から進んで新しい人間関係を作っていくのも、誰かに頼ることもすごく苦手。もっぱら心を解放するのは自宅でひとり酒をしている時。騒ぎたくなったら騒ぎ、泣きたくなったら泣く(笑)」
人に光と影があるのだとすれば、平田薫は間違いなく“影”の部分をもった女の子だ。自分を飾ることなく話す彼女と接するにつけ、本作のヒロインに抜擢された理由が分かるような気がした。
はたして平田薫は、20代女性がもつ複雑な心模様をさらりと演じきった。ありそうでなかった真理の発見が、そこにはある。
「印象に残っているのは、終盤のあるシーンです。撮影中、感情が爆発して途中から記憶がないんです。百合亜の哀しみや怒りにシンクロできたのかも……。身体の芯がざわつき、気がつくといつの間にか撮影が終わっていて。自分のすべてを縄に委ねることができ、その瞬間、自縄自縛の本質に近づけたのかもしれませんね(笑)」
縄さえあれば、私はひとりで生きていける――。はたして自縄自縛は、破滅めいた媚薬なのか。しっとりと微笑む彼女の姿を見るにつけ、瑞々しい白肌に縄が喰い込むシーンがオーバーラップし、ドキッとする筆者なのであった。
平田薫という新ミューズ、侮るなかれ。
(文=メコン伝太/写真=石黒幸誠 go relax E more/ヘアメイク=内山多加子 Commune/スタイリスト=有本祐輔)
●平田薫(ひらた・かおる)
1989年、宮城県生まれ。「CANDy」(白泉社)の専属モデルを経て、『魔法戦隊マジレンジャー』のヒロイン役で女優デビュー。主な出演映画は、『アヒルと鴨のコインロッカー』『るろうに剣心』など多数。その透明感と屈託のない笑顔を武器に、CM・ドラマへの出演など、活躍の幅を広げる。
ブログ〈
http://ameblo.jp/kaoruhirata/〉

(c)吉本興業
●『R-18文学賞vol・1自縄自縛の私』
蛭田亜紗子による小説『自縄自縛の私』の映画化作品。主演の平田薫は本作で、初ヌードを披露する。監督は竹中直人が務める。配給/よしもとクリエイティブ・エージェンシー 公開/2013年2月2日 新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー