
「週刊新潮」2013年2月21日号中吊り
注目記事1
「中国人9割は『日本と戦争』『東京空爆』」(「週刊新潮」2月21日号)
「中国からの『宣戦布告』」(「週刊文春」2月21日号)
「中国『宣戦布告なき開戦』の一部始終」(「週刊ポスト」3月1日号)
「『狙いは首都・東京』習近平の中国は本気だ」(「週刊現代」3月2日号)
注目記事2
「北朝鮮『国連脱退』へ」(「週刊現代」3月2日号)
注目記事3
「学習院中高出身のネコ男を新聞・テレビに『売った』警視庁」(「週刊現代」3月2日号)
注目記事4
「告発された『高知県警』組織的隠蔽工作」(「週刊新潮」2月21日号)
注目記事5
「本当は同僚も知らなかった 人気女子アナの年収」(「週刊ポスト」3月1日号)
まるで日中戦争が勃発したかのような週刊誌のタイトルが並んでいるが、それについては後で触れる。
性懲りもなくポストは小沢一郎をインタビューしているが、終わってしまった男の愚痴でしかないと思わざるをえない。
唯一読めたのは安倍晋三総理について触れたこの部分。
「──安倍(晋三首相)は、今は自信満々にアベノミクスと呼ばれる政策で予算をバラ撒いている。
小沢 安倍さんは総理大臣に2度なったんだから幸運といえば幸運だけれども、内外に問題を抱えて、非常にしんどい立場だと思います。よっぽど心してやらないと、そんな楽な政権運営にはならない気がします。
アベノミクスは本質的に、昔の自民党と同じやり方なんです。一つは最気が悪くなったから公共事業をやる。もう一つは、小泉・竹中路線も同じたったけれど経済全体のパイを大きくすれば国民の所得レベルも上がるという考え方です。けれども、『小泉改革』でわかったように、パイが大きくなっても、国民所得は下がる一方です。だから格差はどんどん拡大した。アベノミクスは、そうした二重の過ちを再び犯しているんじゃないかと思います。加えて、官僚支配の弊害がますます強く出てくるはずです。それがやっぱり大間題だと思います」
現代お得意の外性器シリーズ、今週は「『私の外性器を見てほしい』自画撮り公開する20代女子たち」。飽きずにやる根性がすごい!
ネットで「自画撮り女子」と検索すれば出てくるとあるので、やってみたらあるある。1日1万枚が投稿されるというのだ。
座談会に出席している26歳のリナが、自画撮りをする本音をこう語っている。
「いつまでも美しくいるために、私たちは大勢の人の目に、あえて裸や性器を晒すんです」
こちとらそうですかと頷くしかないね。
注目記事の最初はポストの「女子アナの年収」の記事。一部のスポーツ紙がフジテレビの人気女子アナ加藤綾子(27)について、こんなことを書いたという。
「入社5年目のカトパンが大出世して、6年目のショーパンの上司になるらしい」
フジの最年少の管理職になり、現在の年収1,700万円が一気に3,000万円になるというのだ。
だがこれがまったくのデタラメで、年収も1,000万円か1,200万円程度だと、フジの現役アナウンサーに語らせている。
それでもフジの給料はいいと思うが、端が羨むほどではないというのだ。
悲惨なのは日テレの女子アナで、看板アナの石田エレーヌ(30)でも約900万円程度ではないかと推定している。
TBSも低くて、人気ナンバーワンの田中みな実(26)や枡田絵理奈(27)でも年収900万円がやっとだそうだ。
NHKはどうかというと、2月12日に経営陣が抜本的な給与制度の改革案をぶちあげ、基本賃金の10%カットや各種手当の廃止、勤務地によって給与を引き下げるというのだ。
給与水準は民放の7~8割程度で、昨年の紅白歌合戦で司会を務め課長待遇の有働由美子アナ(43)で1,300万円程度ではないかという。
結婚式などの司会が副業としておいしかったのだが、フジテレビやテレ朝などは、副業がやりにくく、局として仕事を受けるので個人へのバックはないようだ。
それではみんながフリーになるのではと心配になるが、フリーで成功を収めるのもほんの一握りで、独立も茨の道なんだそうだ。女子アナもつらいのですな。
新潮と現代が警察批判をしている。まずは新潮の高知県警に組織ぐるみの隠蔽工作があったのではないかと告発している記事から。
軽犯罪法違反で起訴された小松満裕(63)被告の罪状は、加藤晃久(50)の悪口を大声で言ったためだというのだが、そんなことで起訴するのはおかしいと、元最高検検事の土本武司筑波大学名誉教授がいっている。
実は、その加藤なる人物は高知県警本部長で、小松被告は7年前に起きたある事件を告発していたのだ。
2006年3月3日、仁淀川町立仁淀中学校のスクールバスが駐車場から国道に出た際、右側から高知県警交通機動隊の白バイが衝突し、死亡した。白バイ隊員はそのとき時速60キロで走行しており、すべての過失は運転手にあると認定された。
しかし、バスの運転手は一貫してバスは停止していたと主張し、バスに乗っていた生徒や教師、バスのすぐ後ろにいた校長などもそう証言している。
さらに白バイの速度は60キロどころではなかったとも証言しているのだ。
だが高知地裁は現場検証の申請も最後まで無視し、最大の証拠として認定されたスリップ痕の写真についても、科学的な検証をまったく行わないまま判決を下し、確定してしまった。
バスの運転手は10年10月に高知地裁に再審請求し、弁護団は専門家に調べてもらってスリップ痕写真が捏造であったことを突き止めている。
小松被告は、この事件を高知県警によるでっち上げだと以前から告発していたので、取るに足らないことで起訴されてしまったというのである。
検察や警察がぐるになってかかれば無実の人間を有罪にすることなど容易いことは、これまでいくつも事例がある。
新潮は以前にもこの事件の判決を取りあげ「おかしい」と詳報している。
これからも再審請求の行方や小松被告の裁判など、目が離せない。
現代は「PCなりすまし事件」で逮捕された片山祐輔容疑者について、警察が事前に犯人情報をメディアにリークしたのはおかしいと難じている。
全国紙社会部記者がこう話す。
「逮捕2日前には捜査関係者が各メディアに容疑者の素性や住所などをリークしていました。逮捕前に捜査情報がここまで漏れてくることはありえませんから、極めて異例です。逮捕直前の未明に自宅前にメディアを集合させることなどは、常軌を逸していますよ。連行する際には、事前に『(容疑者の顔を)撮らせるから』と約束し、警視庁の広報官がカメラマンたちに『撮れたか?』と確認をしている始末です。これでは警察によるメディアのコントロールと言われても仕方ありません」
たしかに逮捕時の映像が撮られ、容疑者の顔を隠さず、カメラに撮らせていたのには違和感を感じたが、そういうことだったのか。
4名の冤罪被害者を生んだことで警察も焦っていたのだろうが、まだ真犯人と決まったわけでもないのに住所、氏名をリークし、顔を晒すのは明らかに行き過ぎである。
メディア側も多くの冤罪者を生んだことへの反省もなく、警察組織に取り込まれ、警察の広報機関と堕していることへの疑問もない。
事件へのもう一つの視点を指摘した、いい特集である。
ポストでカレル・ヴァン・ウォルフレン・アムステルダム大学名誉教授とマーティン・ファクラー・ニューヨーク・タイムズ東京支局長が安倍政権について対談しているが、そこでウォルフレン教授がこんなことをいっている。
「ウォルフレン 私はそのシステムを打破する鍵を握っているのは『市民とメディア』だと思います。これまで日本では、市民による真の大きな反メディア・キャンペーンは起きていませんね。
私は、日本の改革はそれによって起きるのではないかと期待しています。メディアは閉塞的な日本という現状を生み出すその片棒を担いでいないか? ただ習慣的に政治家を批判し、政局だけを報じていないか? 新聞は国民を導くガイド役を放棄しているのではないか? と具体的な例示を持ってキャンペーンする。そうしたことが起きれば、有能なジャーナリストも現われ、物事を変えていく力となりうる。メディアが変わらなければ、投票に行かなかったけれど改革を求めている人たちを動かすことはできません」
マスメディアが信用されない時代にこそ、小メディアが活躍できる余地があるのだ。がんばれ週刊誌。
注目記事の2位は現代の記事。かって日本が満州国承認を受けられなかったことで国際連盟を脱退し、これを機に戦争へと突き進んだ道を、北朝鮮も国連がイラン並みの非難決議を決めたら、同じ道を進むかもしれないというのだ。
この中で読み所は中国共産党幹部へのインタビューである。
1月22日に国連安保理で北朝鮮への5度目の非難決議を採択したが、そのとき中国は賛成に回った。
今度の核実験をどう見ているのかという問いに、こう答えている。
「習近平総書記の心情を察して言えば、『金正恩よ、もう許さないから覚悟せよ!』ということだ。
核実験をした前日夜に、北朝鮮から『明日、実行する』と、ぶっきらぼうな連絡が入った。『中国は強く反対する』と告げたところ、『今回は前日に連絡したのだから、わが国の誠意をありがたく思うべきだ』と言ってきた。こんな非礼な国が、どこにあるか?」
さらに習近平が金正恩に冷めている理由をこう述べている。
「考えてもみるがいい。わが国は北朝鮮に対して、食糧、重油、肥料を毎年大量に援助し続けている。それなのに、わが国が援助した食糧を朝鮮人民軍が喰い、わが国が援助した重油で朝鮮人民軍が核兵器を作っている。そしていくら警告しても、耳を貸そうともしない。こんな『流氓(リウマン)国家』(ヤクザ国家)を、なぜこれ以上支援し続けなくてはいけないのだ?」
今週の注目記事の1位には、あたかも日中が戦争を始めたのかと見紛うばかりのタイトルが踊る各誌の特集を選んだ。
安倍政権は大政翼賛政治だと批判しているはずのメディアが、こと中国や韓国のことになると無批判に相手国を非難し、中国撃つべしと挙って反中を掲げて思考停止してしまうのは、今に始まったことではないが、辟易する。
新潮の以下の発言が週刊誌全体の空気をよく表している。
「戦争が始まれば、東京を空爆することを考えなければならない」
これは羅援という人民解放軍少将の発言だという。驚くべき発言ではあるが、新潮は、中国人の9割が日本との戦争を望んでいるという驚くべきアンケートがあると書いている。
『環球時報』という人民日報系の新聞が「尖閣空域で巡視活動を行う中国機に対し、日本の戦闘機が射撃を行うと思うか」というアンケートを実施した。
3万人ほどが回答し、その9割近くが「日本は開戦への第一弾を発砲するだろう」と答えたというのである。
さらにメディアに解放軍の幹部たちが登場して「我々は瞬間的に日本の戦闘機F15を撃墜する力を持ち、開戦から30分で日本を制圧し、始末することができる」という過激な発言を繰り返しているというのだ。
先の羅援人民解放軍少将の発言もその一つだが、この人物は習近平の小さい頃からの友人で、「彼の発言は、習総書記の意向を汲んだものとの可能性が捨てきれない」(矢板明夫産経新聞中国総局特派員)という見方もあるようだ。
もし日中戦かわばどうなるかという特集も多い。大方の見方は日本有利と見ているが、中国が最終兵器を持ち出してきた場合は、すべてが水泡に帰す恐れもあると武貞秀士延世大学教授は新潮でこう語っている。
「中国の軍事力で危惧すべき点は、中国が東風21などの中距離弾道ミサイルを東京や大阪に向けて発射、それが着弾した場合、それらの都市は瞬時に焦土と化します」
ここまでいけば間違いなく第3時世界大戦の始まりだ。いくら中国内部に好戦的な空気が横溢しているからといって、ここまでやるとはとうてい思えない。
それよりも目下の最大の危機は北朝鮮である。日米関係も大事だが、北朝鮮を押さえつけるためにはどうしても中国の力が必要なのだ。
それなのに安倍総理は中国との関係改善の糸口さえ見つけられないでいるではないか。今メディアがやるべきは日中関係をさらに悪くする方向へ世論を煽ることではなく、安倍に「日中関係改善を最重要課題とせよ」と諭すことではないのか。
海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」がレーダー照射(ロックオン)されたのは1月30日である。
ロックオンはミサイルを撃ち込まれても不思議ではない危険な行為だそうで、文春で作家の麻生幾が、1月19日に尖閣諸島から北へ約百数十キロの海域で起きた、海上自衛隊の海上哨戒用ヘリコプター「SH-60K」に対する、中国のフリーゲート艦「ジャンカイ1級」からの射撃管制レーダー照射の模様を緊迫感のある文章で描いている。
「神経をかき乱す音が、海上哨戒用のヘリコプターSH-60Kの狭い機内に鳴り響いた。
“強烈に耳障りな音”を聴いた機長ほか三名の搭乗員たちは、その音が意味することをすぐに悟った。
SH-60Kをターゲットにして向かってくるミサイルが自ら放つ終末誘導レーダーか、軍艦が射撃を行うためのレーダーか、そのどちらかを探知したのだ。(中略)
“強烈に耳障りな音”は止むことはなかった。しかも回避行動を取りながらその海域を離脱するSH-60Kの背後へも、フリーゲート艦は十分近くもしつこく照射し続けたのである。
“強烈に耳障りな音”を十分近くも聞き続けたヘリコプター搭乗員の精神状態はいかばかりであったか──『至急報』を受けた海上自衛隊幹部は、ゾッとする想いに襲われた」
週刊ポストは、こうしたレーダー照射などの危険な中国側の行為は頻発していたと報じている。
取材で明らかになったのは2010年4月8日に「中国艦艇の艦載ヘリが護衛艦『すずなみ』に接近飛行」。4月13日には「P-3C哨戒機が中国艦艇から速射砲の照準を向けられる」など、1月の2件を入れて8件あるという。
こうした人民解放軍の一触即発の危険な行為は、習近平総書記がまだ軍を完全に掌握できていないための「軍の暴走」だと捉える見方が多いようだが、いつ現場で小競り合いが起きないとも限らない。
日本人は後先を考えず短慮に物事を進める気質が強くある。そうした空気が大きくならないようにするのも報道する側の責任であるはずだ。中国側の好戦的な雰囲気より、日本の中の「中国撃つべし」とい雰囲気の広がりのほうが心配である。
(文=元木昌彦)

撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか