
宗教、洗脳、自己啓発セミナー、悪徳商法……身近に潜むニッポンのカルトな風景に「やや日刊カルト新聞」の藤倉善郎がゆる~く切り込む!
約18年前に、長野県松本市の住宅街や東京の地下鉄に化学兵器“サリン”をまいて、約6,300人もの死傷者を出したカルト教団があります。オウム真理教です。その広報担当者として、事件当時メディアで教団の無実を主張してきた上祐史浩氏は、その詭弁ぶりから、「ああ言えばこう言う」をもじって「ああ言えば上祐」と揶揄されました。
その上祐さんが昨年12月、告白本『オウム事件 17年目の告白』(扶桑社)を出版。その報告イベントを1月22日に東京・新宿のライブハウス「ロフトプラスワン」で開催しました。そこに藤倉、上祐さんの対談相手としてゲスト出演させていただけたので、「あれだけの事件を起こしておいて、どの面下げて」などと言いたい放題、言ってきました。
■言いたい放題言ってみた

上祐さんは死刑や無期懲役が決まって塀の中にいる教祖や高弟たちと違って、サリン散布や殺人などに直接関与しなかったということで、偽証罪などで懲役3年の刑を受けただけ。1999年に出所し、現在は娑婆でオウムの残党を率いて宗教団体「ひかりの輪」の代表をしています。
しかし上祐さんは教団が東京・亀戸で炭疽菌をまいたテロ未遂事件には関与していたし、サリン事件や坂本堤弁護士一家殺害事件などについても教団の仕業だと知っていながら、メディアで教団の無実を主張していました(その辺りのことも『オウム事件 17年目の告白』に書かれています)。
つまり上祐さんは元テロリストで、なおかつテロ集団の顔として世間に向けてウソをつきまくっていた人物です。現在は麻原信仰を捨て、「オウムを超える」「麻原を超える」宗教を標榜して「ひかりの輪」の代表を務めていますが、ひかりの輪の信者の多くはオウム真理教の残党です。
■言いたい放題言ってみた

ロフトプラスワンでのイベントで、私は
「ひかりの輪は解散すべき」
「あれだけの事件を起したテロ集団の元幹部が残党を率いて、宗教だの思想だのと言っているのって、“どの面さげて”という感覚」
などと、自分の出番のしょっぱなから割と言いたい放題言ってみました。これに対する上祐さんの返答は、要約すると、こういうもの。
「自分は麻原を超える思想を創造したい」
「被害者支援機構との賠償契約がある」
宗教によって無差別殺人テロを起こした団体の幹部が、いまだに「宗教」だ「思想だ」と言っていることへの違和感には答えていませんし、賠償が目的なら、宗教ではなく賠償のための団体でもいいはずです。
上祐さんは、
「解散したら、個々の信者は賠償しないだろう」
「宗教は賠償のための事業」
といった趣旨の説明をしていました。もっともらしい言い分に聞こえるかもしれませんが、これって言い換えれば、
「賠償する気なんかない信者たちからカネを吸い上げて、彼らが望んでいない賠償にそのカネを使うのが、ひかりの輪という宗教」
ということです。冷静に考えると、けっこうひどいことを言っています。
■“ああ言えば上祐”健在か
残党が組織を存続させる限り、信者が家族のもとに戻ったり社会復帰したりということは難しく、彼らにとって永久に「オウム事件」は終結しません。しかし上祐さんは、そんな信者たちを団体から“解放”し、社会復帰させる努力をした形跡もなく、このイベントでも、そのような意思を表明することはありませんでした。
上祐さんはイベント中、
「敵を師とする」
「私を批判する藤倉さんのような人も私の師匠だ」
と言っていました。しかし、私と一緒に出演した真宗大谷派僧侶の瓜生崇さん(やや日刊カルト新聞の記者でもあります)は、こうツッコミを入れていました。
「そう言う割には、何かを言うても全部、『それはこうなんです、ああなんです』って返ってくるんですよね。『その通りですね。私が間違ってました』という言葉を上祐さんから聞いたことがない。『みんなが師』と言う割には、本当はそんなことは全然思ってないんじゃないの?と思うんですが」
イベント後、複数のお客さんから
「“ああ言えば上祐”は健在ですね」
という感想をいただきました。
■上祐さんはシャレがわからない
かつての上祐さんは、悪い意味でインパクトのあるパフォーマーでした。あるときは、テレビカメラの前で「ばかばかしいですよ!」と声を荒らげてフリップを投げ、警察を非難して見せました。オウム幹部・村井秀夫が刺殺された後のインタビューでは、村井を殺したのはマスコミだと言わんばかりに「次は尊師(麻原彰晃)を殺すんですか!」と報道陣にキレて見せました。
しかし、現在の上祐さんは違います。著書でもイベントでも、批判に対して謙虚で殊勝そうな態度は崩さず、口先で批判をいなすだけ。何も面白いことはしてくれません。当然、伝説の“フリップ投げ”もイベントでは披露しませんでした。
しかしイベント中に、上祐さんの言葉ではなく行動に、お客さんから批判の声が上がった場面が1度だけありました。休憩時間に、上祐さんがお客さん相手にサイン会を行っていたからです。
「どういう気持ちでやってるんでしょうか? サインというのは一般に、芸能人とか作家とか、やましいことがない人が書くのが自然。会場の人も、どういう気持ちでサインを受け取っていたんでしょうか?」(お客さん)
これは、ものすごくいい質問でした。テロ集団の元幹部で、現在も残党組織の代表者である人がサイン会って、確かに変です。
「署名することで販売を促進して、被害者への賠償になればという気持ちでやっていますが、そういった印象を抱かれる方もいらっしゃると思いますので、今後、やり方、その他考えながらやっていきたいと思います」(上祐さん)
もはや上祐さんにとって「賠償のため」は自己保身の最終兵器。これさえ言っときゃOKみたいな印象です。イベントが終わると、やっぱりまたサイン会が始まりました。
実は、お客さんからの批判が出るより前に、私もイベントの中で、
「上祐さんを文化人扱いすべきではない」
と発言していました。というわけで、ようやく私が上祐さんを「いじる」ネタができました。
イベント後、上祐さんは、会場に残った20人ほどの観客を相手に「懇親会」という名の説法会状態に。そこへ私が、色紙とマジックを持って突撃です。
藤倉 「サインしていただけますか?」
色紙へのサインなので、書籍の販売促進にはなりません。でも上祐さんはOKしてくれました。そこで、もうひと押し。
藤倉 「サインの下に“文化人”って書いてください!」
上祐さん 「それ、どういう意図ですか?」
藤倉 「カルト化しないためには、シャレを理解すべき」

結局、サインはもらえましたが、「文化人」とは書いてもらえませんでした。
◆「カルトなニッポン見聞録」過去記事はこちらから
●ふじくら・よしろう
1974年生まれ。東京出身。0型の乙女座。宗教やスピリチュアル団体をめぐる「カルト問題」を取材するフリーライター。ニュースサイト「やや日刊カルト新聞(
http://dailycult.blogspot.jp/)」主筆。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)。