大人の女は童貞の夢を打ち砕く? 成長譚としての官能小説『彼女はいいなり』

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『彼女はいいなり』/角川書店

■今回の官能小説
『彼女はいいなり』サタミシュウ(角川書店)

 童貞喪失は早い方がカッコいい。思春期の性として、女性の処女喪失よりも、男性の童貞喪失の方が、より死活問題に関わる。もっと言うと、かっこいいよりも、早く「ヤリたい」という気持ちが強いのかもしれない。10代に突入した頃からオナニーを経験し、朝晩の歯磨きと並ぶ頻度でそれを繰り返している10代男子。だからこそ、セックスに対しての並々ならぬ希望と期待、そして憧れが強いはずだ。

 誰彼かまわず、とにかく早く体験したい。でもやっぱり、好きな女のコとしたい。女が想像している以上に、思春期の少年は繊細でロマンチスト、しかも端から見れば想像も付かないほどの高いプライド、その両方持っている。その反動で、大きなコンプレックスも抱えやすい……思春期の少年は、思春期少女以上に、複雑で厄介な生き物だ。

著者がリアルにもくろむ「旧・大宮市の独立」『消滅した国々 第二次世界大戦以降崩壊した183カ国』

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『消滅した国々 第二次世界大戦
以降崩壊した183カ国』
(社会評論社)
 いまや、マニアック本出版社としての地位を確立しつつある社会評論社から、またまたマニア心をくすぐる本が出版され、話題となっている。それが、吉田一郎氏の著書『消滅した国々 第二次世界大戦以降崩壊した183カ国』である。  この本は、吉田氏が運営するサイト「世界飛び地領土研究会」(http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/2917/)のコンテンツ、「消滅した国々」をもとにしたもの(サイトのメインコンテンツである「飛び地」の項目も、同社から『世界飛び地大全』として発売中だ)。  この本、まず驚くのは本の分厚さ。総ページ数700ページ超の大ボリュームなのだ。 政変で政権が交代するとか、革命が起こって権力者が追放されるって事態はよく聞くが、国が滅びるなんて東ローマ帝国の滅亡(1453年)とか世界史上の出来事かと思いきや、実は第二次世界大戦以降も、驚くほど多くの国が滅亡しているのだ。  それらの国の多くは、大国の思惑が絡んだりして興亡を繰り返した、怪しげなものばかり。南アフリカのホームランドなんて、まさにそれ。ホームランドとは、アパルトヘイトを行っていた時代の南アフリカ政府が、国際的非難をかわすために使った、いわば詭弁。不毛の地に黒人の独立国をつくらせて、南アフリカ国内の黒人はそこの住民だとでっち上げる。そうすれば、南アフリカの領土で働く場合は出稼ぎ労働者だから、南アフリカ国民ではない=権利が制限されるのも当然、というもの。  卑劣な人種差別の代名詞として知られるホームランドだが、その実態を詳しく記した書籍は、これまでほとんど存在しなかった。本書では、このインチキ国家で権力を握ろうとしたり、一儲けを企んだ群像についても詳しく解説している。この人種差別政策を逆利用して一儲けした実例として挙げられているのが、ボプタツワナ共和国。この国は、南アフリカの大都市に近接している利点を生かし、リゾート都市・サンシティを建設。南アフリカでは禁止されているカジノもあるし、同様に禁止されている黒人とのセックスも楽しめるとあって、わんさか白人たちが訪れて大いに栄えたという。アパルトヘイトのイメージを覆すような事実は、目からウロコというよりほかない。  イギリスが植民地にしていたアラビア半島の重要港・アデンの周囲にあったアデン保護領の首長国も、怪しさ満点だ。この首長国というのは、日本の戦国時代のようなもので、村を有力者が統治しているというようなスタイル。ゆえに、国を名乗ってはいるが、中には人口は百人ちょっと、というところもあったのだとか。そんな国が20世紀の後半まであったなんて、スゴイ! なお、アデン保護領はその後、アラビア半島唯一の社会主義国家・南イエメンになって独立。冷戦終結後に北イエメンと合併したはいいが、権力をめぐって南北の内戦になったり……メチャクチャな国すぎて住民にとっては迷惑なんだろうけど、なんだか興味をそそられてしまう。 ■自分だけ生き残った、ひんしゅくものの権力者たち  さて、滅亡した183カ国の中は、平和裏に滅んでいったものは少ない。そういった国の王様や大統領は、いったいどうなってしまうのか? ここも、吉田氏が消滅した国々に、興味を引かれたポイントだ。だいたいは、処刑されたり無惨な最後を遂げたかと思いきや、のうのうと生き残っている人がけっこう多いのだ。中には、国の最後と運命を共にした人もいるだろうし、権力者だけが生き残るなんて、ひんしゅくものではないか。  その最も顕著な事例が、1967年から3年あまりの間に存在したビアフラ共和国のオジュク大統領だ。ナイジェリアの東部州だったビアフラは、同国の有力な産油地帯。住民は、黒人のキリスト教徒のイボ族主体で、自分たちの土地から湧き出る石油の利益が、民族も異なり宗教もイスラム教主体の他州の人々に吸い上げられているとして、民族紛争の末に独立を目指したもの。独立をめぐるビアフラ戦争で、内陸部に押し込まれたビアフラ側は200万人あまりの餓死者を出し、一時はビアフラ=飢餓のイメージは広く浸透していた。  最終的に、首都に攻め込まれ亡命したオジュク大統領は1984年に赦されて帰国すると、一転しナイジェリアの支持者に! 2003年には大統領選にも出馬したが、得票率わずか3%で落選したのだとか。  どうも、彼の中では「今のナイジェリアは当時とは違う、いい国」とつじつまが合っているらしいが……200万人も餓死させておいて虫のいい話である。  ほかにも、王様が若いアメリカ娘を嫁にしてハァハァしていたら、国民に見限られてインドに併合されたシッキムなどが本書には登場する。権力者は、スチャラカ過ぎて興味を引かれる人ばかりである。 ■著者がもくろむ、消滅した自治体の復活  しかし、本の内容以上に興味深いのは、著者の吉田一郎氏自身。吉田氏は「大宮の自治と独立」を主張する、さいたま市議なのである。本の内容も興味深いが、この主張も興味深い。いったい、吉田氏の目指すものは、なんなのか? 「さいたま市誕生のための合併は、平成の合併による政令指定都市誕生のモデルケースとして、国主導の住民不在で行われたものです。当初は、さいたま新都心に首都機能が移転するという触れ込みだったのですが、実際にはごくわずかな機関が移転したにとどまりました」  吉田氏によれば、いまや旧大宮市の扱いは、前述のビアフラ共和国のような状態だという。 「旧大宮市、浦和市、与野市は表向き対等合併しましたが、実際には行政機能が集中している浦和市に有利となっています。大宮市の税収はおろか、図書館の本まで浦和市に奪われてしまっているのです。市議会でも市に対して合併して、どういった利点があったか質問したこともありますが、市の職員すら満足に答えることができないのが現状なんです」  いったん誕生した市から再び独立することなんて、雲をつかむような話に聞こえるが、吉田氏は本気だ。そもそも、市会議員に当選するだけの支持があるわけだから、旧大宮市民からの期待も大きい。でも実際に、いきなり分離独立することが困難なことは、吉田氏も認めるところ。まずは、財源や権限を分割する自治から、手をつけることを構想している。  消滅した自治体を復活させようと、リアルに企む吉田氏。そこからは、本書が単なる雑学本でないという意志が伝わってくる。 (取材・文=昼間たかし)

「小さな石ころの波紋ですべて崩れる」義母からの電話に怯える長男の嫁

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Photo by IAN Chen from Flickr

 実の親の介護と、夫の親の介護とは、そりゃやっぱりどうしても気持ちの入り方は違う。同居していようがいまいが、一歩引いているというか、ちょっと冷めてるというか、よくいえば客観的に見られるというか。自分を産んでくれた親とは、その感覚は違って当たり前なのだが、それでもまったく他人事というわけにはいかないのが嫁の立場ってもんだろう。他人事としてまったく関知しない! という猛者もいるが、猛者にはなれない一般嫁としては、親戚の目やら世間体やらも気になるし、一応夫の手前ってのもある(ポーズともいう)。自分の親なら覚悟を決めるしかないが、夫の親にはなんで自分が? という気持ちは拭えない。今回は、そんな嫁から見た話をお送りしよう。

<登場人物プロフィール>
松田圭子(45)パート勤務。四国の県庁所在地に夫、小学生の子ども2人と暮らす
松田孝一(48)松田圭子の夫。県庁に勤務している
松田勝則(80)松田孝一の父
松田頼子(77)松田孝一の母

「現代の自分 VS 過去の自分」近未来SFアクション傑作『LOOPER ルーパー』

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(c) 2012 LOOPER DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED
 毎週新作映画を紹介する当連載の2013年の初回は、正月休み明けのまったりモードにビシッと気合いを入れてくれる傑作アクション2本を取り上げたい。  1月12日公開の『LOOPER ルーパー』は、ジョセフ・ゴードン=レビットとブルース・ウィリスが主演した近未来SFアクション。2074年の世界から、タイムマシンで消したい標的を30年前に送り込む犯罪組織と、2044年の世界に送られてきた標的を抹殺する「ルーパー」たち。その1人、ジョー(ゴードン=レビット)の前に、30年後の自分自身が現れる。30年後のジョー(ウィリス)は、未来社会の独裁者「レインメーカー」を幼いうちに消すためタイムマシンに自ら乗り込んでいた。ルーパーの掟に従い30年後の自分を殺そうとするヤング・ジョーと、追っ手を巧みにかわしながら困難なミッションに挑むオールド・ジョー。運命の対決の行方は、そして謎に包まれたレインメーカーの正体とは……。  時間旅行を扱うSFでは、登場人物が過去の自分に会うと自身の人生や未来の世界に重大な変化をもたらす可能性が高いため、そうした行為をタブーとすることが多い。だが、本作はそれを逆手に取り、主人公が未来から来た自分と、互いに影響を及ぼし合いながら命懸けの戦いを繰り広げるという展開がユニーク。ヤング・ジョーは30年後の自分を殺さなければ組織から消されてしまうが、オールド・ジョーは30年前の自分を殺すわけにはいかない(自分の存在も消えてしまう)という非対称性も対決を一層面白くしている。若手のルーパーが傷を負うと老ルーパーの身体にも即座に反映されるという描写は、視覚効果も見事で楽しませるが、30年間の行動や記憶への影響を考えると矛盾も浮かぶ。とはいえ、細かな難点もさして気にならないほどテンポ良くストーリーが進み、ハリウッド的なハッピーエンドではないクライマックスも見応え十分。ウィリスに似せるため特殊メイクで全編演じきったゴードン=レビットや、田舎の農家で一人息子を育てる男勝りのシングルマザーという従来の出演作とはイメージの異なる役どころに挑んだエミリー・ブラントらの熱演も含め、見どころたっぷりの快作だ。  続いて1月11日公開の『96時間 リベンジ』は、リーアム・ニーソン主演で米国や日本をはじめ各国でヒットしたアクションサスペンス『96時間』(09)の続編。元CIA工作員のブライアン(ニーソン)は、元妻レノーア(ファムケ・ヤンセン)と娘キム(マギー・グレイス)との関係を修復しようと、3人でイスタンブールを訪れる。だが、かつてキムが誘拐された事件でブライアンに息子を殺された老ボスが、アルバニア人の手下たちを動員して一家を襲撃。街中でレノーアを人質にとられたブライアンは、自らもとらわれの身に。ホテルに1人残ったキムにも危機が迫る。  製作・脚本は前作に続きリュック・ベッソン。『トランスポーター3 アンリミテッド』(09)のオリビエ・メガトンが監督を務めた。リーアム・ニーソンは舞台出身の演技派だが、50代後半になって『96時間』、『アンノウン』(11)など体を張った主演作で新境地を開拓。愛娘を誘拐した組織の一味を銃と格闘技でバッタバッタと倒していった前作に対し、今作ではまず主人公が元妻とともに拉致され、娘が携帯電話で父親にアドバイスを受けながら脱出を助けるという点が新趣向だ。仮免許中の娘が父に助けられながら敵の車とカーチェイスを繰り広げるシーンも、熟練ドライバーの運転とは異なる緊張感が生まれてスリリング。元特殊部隊所属のファイト・コーディネーターがキャストとしても起用され、終盤の共同浴場でニーソンとの接近戦を自ら演じるなど、刺激的な本格アクションを随所で堪能できる1本だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『LOOPER ルーパー』作品情報 <http://eiga.com/movie/77480/> 『96時間 リベンジ』作品情報 <http://eiga.com/movie/77609/>

“クールでかっこいい”はずの相葉雅紀が、夜中に聞くと怖いものとは?

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【ジャニーズ研究会より】

 嵐の相葉雅紀が10日、東京・表参道ヒルズ スペースオーで主演ドラマ『ラストホープ』(フジテレビ系)の制作発表に登場した。多部未華子や田辺誠一、小池栄子らと白衣姿で現れた相葉は「このドラマは最先端医療とミステリーが絡んで、みんなそれぞれ過去を抱えているわけですけど、それが回を重ねるごとにだんだんわかってくるという、ハラハラドキドキさせてくれる新しい医療ドラマです」と紹介。見どころとして「カンファレンス(会議)や豚の内臓とかを使った手術のシーン」を挙げていた。

 そして、3月6日発売の嵐の新曲「Calling」が主題歌に起用されたことが発表され、「この歌のテーマは、ドラマのテーマと一緒で命とか希望とか。さびはキャッチーなロックナンバーになっているかなと思います」と説明した。

玉森裕太、初単独主演ドラマ『信長のシェフ』の成功の鍵は?

【ハピズムより】

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(C)メーテル・タムラ

 今週のジャニーズ占いのターゲットは、Kis-My Ft2の玉森裕太!!

 デビュー後に、センターポジションとなった玉森裕太さん。玉森さんがセンターになったことで、フロントメンバーとバックメンバーの格差が激しいことがファンの間でも話題となっていますが、メンバーとの相性はいい様子。1月からは初の単独主演ドラマ『信長のシェフ』(テレビ朝日系)の放送も始まります。

 そんな玉森さんの恋愛の運勢を見てみると、過去にウワサになり、復縁情報などが時折聞こえてくるタレント・南明奈さんとの恋愛の相性はいいように読み取れますが、第一印象と、中身のギャップに苦しんでいるようで……(続きはこちら)

 先週のHey!Say!JUMPの山田涼介さんに引き続き、玉森さんのあんなことやこんなことを占いで暴いちゃうジャニーズ占い、ぜひチェックしてください!!

Rain(ピ)の軍規律違反と謹慎処分で、芸能兵への風当たり強まる?

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本人も顔を隠して反省していますので

 韓国スターで現在は兵役中のRain(ピ)が、軍の規律に反して服務中にキム・テヒとほぼ毎週末にデートを繰り返し、先月23日から4泊5日の休暇をとっていた件で、国内から激しい非難の声が浴びせられ、国防部から7日間の謹慎処分を言い渡されたニュースは、日本のテレビ番組でも報じられた。

 Rain(ピ)は、トラブルの見舞われやすい芸能人でもある。2006年からのワールドツアーの不履行で公演企画会社から訴えら、また11年にはRainが所有する建物に住む人物からも訴えられている。同年には、会社の公金を引き出したという横領の疑いで検察からの捜査も受けており、これだけ問題を抱えてきた芸能人も珍しい。韓国芸能に詳しい関係者は、「芸能界に群がる悪い人も多いでしょうから、脇の甘さを見せるとこういうトラブルも多くなるのでしょう」というが、女性関係に関しても脇が甘いと長年のファンは語る。

Rain(ピ)の軍規律違反と謹慎処分で、芸能兵への風当たり強まる?

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本人も顔を隠して反省していますので

 韓国スターで現在は兵役中のRain(ピ)が、軍の規律に反して服務中にキム・テヒとほぼ毎週末にデートを繰り返し、先月23日から4泊5日の休暇をとっていた件で、国内から激しい非難の声が浴びせられ、国防部から7日間の謹慎処分を言い渡されたニュースは、日本のテレビ番組でも報じられた。

 Rain(ピ)は、トラブルの見舞われやすい芸能人でもある。2006年からのワールドツアーの不履行で公演企画会社から訴えら、また11年にはRainが所有する建物に住む人物からも訴えられている。同年には、会社の公金を引き出したという横領の疑いで検察からの捜査も受けており、これだけ問題を抱えてきた芸能人も珍しい。韓国芸能に詳しい関係者は、「芸能界に群がる悪い人も多いでしょうから、脇の甘さを見せるとこういうトラブルも多くなるのでしょう」というが、女性関係に関しても脇が甘いと長年のファンは語る。

ダウンタウン浜田雅功が成し遂げた、「ツッコミの地位向上」という大偉業

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『クイック・ジャパン 104』(太田出版)
 1月3日、ダウンタウンの浜田雅功と、彼の息子でミュージシャンのハマ・オカモトがラジオ番組で初めての親子共演を果たした。ロックバンド・OKAMOTO’Sのベーシストで浜田の実子であるハマ・オカモトが、自身がパーソナリティーを務める『RADIPEDIA』(J-WAVE)のゲストとして父親である浜田を招いたことから“世紀の親子対談”が実現。実の親子らしい親しみにあふれたトークが展開された。それぞれが普段見せていない一面を明かした貴重な番組として、お笑いファン、音楽ファンの間でも大反響を巻き起こした。  昨年、結成30周年を迎えたダウンタウン。そのツッコミ担当である浜田の芸人としての功績については、今さら語るまでもないだろう。89年に東京進出して以来、ダウンタウンの一員として、あるいは司会者として、テレビの第一線をひた走り、数々の伝説を築いてきた。  ただ、そんな彼は、雑誌などのインタビュー取材でも自分についてあまり露骨に語りたがらない。自分のことはごく控えめに語るのみで、どちらかといえば相方である松本人志がいかに面白くて偉大な芸人であるかということを熱心に語り、それを生かすのが自分の仕事である、と繰り返すばかり。ただ、ここ数十年のお笑いの歴史をひも解いてみれば、ボケのスペシャリストとしての松本とは別に、浜田には浜田なりの歴史的意義というものがあったといえる。  浜田雅功の歴史的な意義――。それは、「ツッコミ」という概念を世の中に広めて、ツッコミの地位を向上させたことだ。もちろん、ダウンタウンの登場以前にも、漫才における「ボケ」と「ツッコミ」というものは存在していた。ただ、それがお笑いの専門用語から日常的な用語に変わり、その積極的な意味まで認められるようになったのは、間違いなく浜田の存在があってこそだろう。  例えば、80年頃の漫才ブームの時代に活躍した当時の若手漫才師の中では、ボケ主導型のコンビが多かった。ビートたけし、島田紳助、島田洋七など、才能を発揮してその後もテレビで長く活躍したのは、いずれもボケ担当のほうだった。彼らの相方でツッコミを担当した芸人たちは、ボケの話にただうなずくばかり。当時の人気番組『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)では、そんな地味で目立たないツッコミ担当の者たちを集めた「うなずきトリオ」というユニットまで結成されたほどだ。  ボケは残るが、ツッコミは消える。ダウンタウンの登場以前、ツッコミは日陰の存在だった。どうしても消えたくなかった浜田は、生き残りを賭けてツッコミの腕を磨いた。そして、東京に進出してからは、ツッコミという役割を背負ったままバラエティ番組で戦う、という決意をした。共演する大物芸能人たちを向こうに回して、彼らをボケ扱いして積極的にツッコミを放っていったのだ。これは革命的なことだった。  もちろん、共演者をイジるというのは浜田以前にもビートたけし、明石家さんま、島田紳助らもやっていたことである。ただ、彼らが主に行っていたのは、イジりそのもので笑いを生む、ボケ寄りのイジりだった。  浜田はあくまでもツッコミという役割にとどまったままで、共演者を果敢に攻め立てた。そして、それまでほかの芸人が手を出せなかったような領域にも、ズケズケと踏み込んでいった。『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)では菅原文太、中尾彬、江守徹といった大物俳優にもツッコミを放ち、『HEY!HEY!HEY!』(フジテレビ系)では堂々と若手ミュージシャンの頭をはたいた。それは、死ぬ気で売るケンカだった。  浜田はタブーを破り、彼らをツッコミのターゲットとして矢面に立たせて、番組を盛り上げることに成功した。こうしてテレビの中でツッコミにも存在意義があるということを示したのだ。一か八かの戦いを制して、実力が認められ、浜田は史上初のツッコミ型司会者となった。  これ以降、ツッコミの地位は飛躍的に高まり、世間でもツッコミというものが評価されるようになった。そして、その後はバリエーション豊かなツッコミ芸人が続々とテレビで人気を得るようになった。  浜田雅功は、ツッコミ一筋の笑いの王様。松本という笑いの神を戴く王国を司る、血気盛んなお笑い界の帝王だ。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)