『東京都北区赤羽』でおなじみの漫画家・清野とおるによる、悶絶必死の爆笑コラム。
俺は生卵が怖い。
正確には、生卵の味は大好きだけど、生卵を割るその瞬間が、怖い。

あれは小4の時の話。近所で、大量のニワトリを飼って、コケコケ言わせてるおじさんがいた。
ある日、同じクラスの高田くんと、そのニワトリどもを駄菓子片手にボーっと眺めていたところ、飼い主のおじさんが近づいてきて、卵を一つくれた。

おじさんは、無知な俺たちに分かりやすく説明してくれた。
有精卵とは、オスと交尾した後にメスが産んだ卵のこと。精子入りなので、うまく育てると、ヒヨコが生まれるという。通常、その辺のスーパーで売られている卵は、交尾しないで産んだ無精卵なので、ヒヨコは生まれない。

俺と高田くんは、有精卵に大興奮した。
有精卵については知らなかったけど、ヒヨコが卵からかえって初めて見る、自分より大きくて動くものを親と認識する「刷り込み」という習性があることは知っていた。
その習性を利用して、

こんな感じでヒヨコに付きまとわれたいという、ステキ極まりない願望を抱いた俺たちは、早速図書館に行って、卵の育て方を調べてみた。

高田くんの家に電気毛布があったので、それに包んで卵からかえるのを見守ることにした。

「刷り込み独占禁止条約」を締結した俺たちは、連日、放課後になるとダッシュで高田くんの家に行き、卵ヒヨコ化計画を遂行する日々を送った。

時に卵を抱きしめて、おなかのぬくもりで温めたりもした。俺と高田くんは、ありもしないエセ母性に目覚め、まだ見ぬヒヨコを愛してしまっていたのだ。
嗚呼、早くヒヨコを。ヒヨコを抱きしめたい。耳元でピヨピヨ言われたり、追いかけられたりしたい。ヒヨコが、好きだ。
しかし……まさかあんなことになるなんて……この時の俺たちは……予想だにしなかったのであります……。
(
後編へ続く/文・イラスト・写真=清野とおる)
●せいの・とおる
1980年生まれ。東京都板橋区出身。地元・赤羽に生息する奇妙な人々を生き生きと描いた漫画『東京都北区赤羽』(Bbmfマガジン )が大ヒット中。
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●【キ○チ○ガ○イと呼ばないで】INDEX
【第6話】
「謎の美人くだもの売り」
【第5話】
「オモシロイ顔のおじさん」
【第4話】
「ウンコおじさん」
【第3話】
「恐怖!‟木曜日の男”」
【第2話】
「鳥盗り物語」(後編)
【第2話】
「鳥盗り物語」(前編)
【第1話】
「ホモビデオの清野さん」