
「週刊新潮」11月1日号 中吊り広告より
佳作1
「安倍晋三と半グレ」(「週刊現代」11月10日号)
佳作2
「『地震予知』は大嘘だったのか!?」(「週刊ポスト」11月9日号)
佳作3
「尼崎『女モンスター』の揺り籠から監獄まで」(「週刊新潮」11月1日号)
佳作4
「誤認逮捕の被害者が『恐怖の取調室』を語った」(「週刊現代」11月10日号)
今週は、残念ながらグランプリに値する記事はなかった。予想通り、橋下徹大阪市長の記事で全面敗北した週刊朝日の河畠大四編集長が更迭されたのが目立つ程度だ。
どんぐりの背比べの中から佳作を4本選んでみた。
まずは、警察の誤認逮捕と調書でっち上げで、危うく冤罪にされるところだった人たちの恐怖を扱った、現代の「ネットなりすまし事件」の記事。大新聞に、自白調書が警察のでっち上げだったことがわかったのに、それを追及した記事があまり見当たらなかったのはどうしてか。
発端は7月1日、東京・杉並区に住む19歳の明大生が神奈川県警保土ケ谷署に逮捕されたことだった。横浜市のHPに小学校を襲撃する殺人予告を書き込んだという、威力業務妨害の疑いだったが、これも冤罪だった。
「しかし、3日付のスポーツ新聞にはこんな記事か載っている。〈明大広報課担当者は『事実関係を確認し、厳正に処分します』とコメント。商学部2年の女子学生は『明治の恥。大学のイメージが悪くなり、就活などで他の学生に迷惑がかかる』と憤っていた〉(日刊スポーツ)」(現代)
現代の言う通り、学校は事実関係を調べもしないで、警察の発表を無条件で信じてしまうのだ。
大阪府警に誤認逮捕された北村真咲さん(43)の弁護人はこう語る。
「北村さんは、今回の事件に関して逮捕前から一貫して捜査に協力し、かつ否認していました。にもかかわらず、北村さんは逮捕・勾留されてしまい、著しい肉体的、精神的、経済的打撃を受けました。(中略)また、逮捕された後も、捜査機関は北村さんの言い分を聞くことなく連日の取り調べを続けました。このような取り調べは、虚偽の自白を誘発するものです。この取り調べに北村さんが屈していれば、そのまま有罪判決を受けていたかもしれない」
8月26日に北村さんが逮捕され、9月1日に福岡の無職の男性(28)が警視庁に逮捕される。9月14日には2ちゃんねるに伊勢神宮を爆破すると予告したとして、三重県津市に住む28歳の男性が三重県警に逮捕されている。
なぜこのようなことが起きるのかを、全国紙社会部記者が解説している。
「08年の秋葉原事件後、警察庁が全国の県警に通達した『サイバーテロ予告の捜査マニュアル』があります。詳しい内容は開示されていませんが、そこには『脅迫メールの書き込みが行われたパソコンのIPアドレスを根拠に、被疑者を逮捕してもよい。被疑者否認のまま起訴しても、公判は維持できる』という旨が明記されているんです」
IT時代に、こんなとんでもない通達が出ていたというのは驚きである。真犯人が犯行声明で捜査当局の能力の低さをあざ笑うのは当然である。その上、犯人が捕まる可能性はほとんどないと、サイバー犯罪に詳しい神田知宏弁護士は話す。
「いろいろな国のサーバーを経由して発信元を隠すTorというソフトを使っているので、発信元を辿ることは不可能でしょう。現状はネットの書き込みに対する法整備が追いついておらず、警察は正直言ってお手上げの状態です」
後手後手に回った捜査をごまかすために、無実の者を逮捕し、自分たちに都合のいい調書をでっち上げ有罪にする。これだから司法を監視する手を緩めてはいけないのだ。
尼崎の「女モンスター」角田美代子(64)が主人公の大量殺戮事件は、いまだに謎だらけである。新聞、テレビはもちろんのこと、週刊誌を読んでも、なぜこの女がこのような大事件を引き起こしたのか、よくわからない。取り巻きを含めて柄の悪いのはいっぱいいるようだが、だからといって、娘が自分の親まで殺してしまうというのは、理解しがたい。
いろいろ読んだ中では新潮が美代子だけに絞っているだけにわかりやすかったので、これを佳作に推す。
美代子は1948年に尼崎市内の左官工の家に生まれた。中学時代にはナイフを背中にしのばせていたというから、桁外れのワルのようだ。私立女子高へ入ってわずか数週間で喧嘩沙汰を起こして退学になってしまうが、その頃すでに中学の同級生と同棲していたそうだ。
さらに若い女を4~5人雇ってホテルに送り届ける「管理売春」の元締めだったという。その元手でスナックを開き、ママになる。その後、離婚して横浜へと移り、伊勢佐木町にバーを開く。10数年後に故郷へ帰り、「殺人カンパニー」の下地を作り始めていったそうだ。
息子を溺愛し、通う学校の教頭を怒鳴りつけたり、卒業式に乱入したこともある。
美代子の暴力装置として支えたのは、戸籍上のいとこである李正則。全身刺青で野球をやっていただけに、腕力は強い。
美代子たちに乗り込まれた香川県高松市の「谷本家」は一家崩壊、地獄のようになった。一家は、後に美代子の息子と一緒になる瑠衣、姉の茉莉子、両親が静かに暮らしていた。そこへ李が入り込み、美代子たちが乗り込んで阿鼻叫喚の地獄の日々が始まる。
「男らが庭に両親を立たせてホースで水責めにするのは序の口。美代子は“金を持ってこないとこうなる”と言い、娘2人に両親を執拗に殴らせていた。さらに両親は素っ裸で集落を歩かされ、親戚の家々を回って借金を申し込んでいた」(捜査関係者)
この事件の全容が明らかになると、まだまだ犠牲者が増えそうである。
さて、イタリアで地震に「安全宣言」を出した地震学者らに、禁固6年の実刑判決が出て話題になっている。地震大国日本の地震予知はどうなのか。ポストが「大嘘」ではないのかと噛みついている。
「若手学者が声高に言った。『(予知できない地震があるのは)地震学者なら誰だってわかっている。そんな状態で「予知絡み」の予算を取るのはもうやめましょうよっ!』(中略)10月16日、北海道・函館で開かれた日本地震学会特別シンポジウム『「ブループリント(青写真)50周年ーー地震研究の歩みと今後』の討論は白熱した」(ポスト)
ここで指す地震予知とは、短期の地震予知である。冒頭の研究者の「予知できない地震」とは、「前兆現象」のない地震で、阪神・淡路大震災も東日本大震災も前兆は観測されなかった。
“反予知派”の筆頭で、シンポジウム実行委員長の東大大学院・ロバート・ゲラー教授は、「打つ手がない」「地震を予知しようとする作業に意味はない」とまで言いきった。
「その証左が文科省の外郭団体である独立行政法人防災科学技術研究所が作成する『確率論的地震動予測地図』(ハザードマップ)だという。地震学の粋を集めて作成されたはずのハザードマップだが、ゲラー教授は手厳しい。『この地図は、地震発生確率の高い地区ほど濃い色で塗りつぶされているのですが、阪神・淡路大震災も東日本大震災も、大きな地震の震源はいずれも色が薄い、確率が低いとされた地区だった。こうなると予知は“害悪”ですらある。ハザードマップを見て、地震に遭う確率の低い地区だと思って住んだら、大震災に見舞われたという人がいるかもしれない』」
だが、地震研究には毎年100億円単位の予算が投じられ、官僚の天下り先にもなっているのである。
東洋大学の渡辺満久教授はこう語る。
「地震学会の体質改善はそう簡単ではない。そもそも地震学者と呼ばれる人々に対してこれまでマスコミが甘すぎたんです。学界内部でも、きちんと同僚の罪を告発していた人々は昔からいたのに、『個人攻撃になるから』などといった理由をつけて、しり込みするメディアが多かった。そこはしっかりしてほしいと思う」
天気予報と地震予知は当たらなくて当たり前、では困るのだ。日本で地震予知学者を告発したらどうなるのだろう。裁判所はどういう判断を下すのか。誰かやってみないかな。
石原慎太郎都知事が辞任して政党をつくるとはしゃいではいるが、先行きは不透明である。ポストは、橋下大阪市長の「日本維新の会」と連携すると見ているようだが、現代は「それはない」と真反対である。
そうした中で、存在感が日に日に薄れていく安倍晋三総裁だが、現代が彼の「怪しい人脈」を掘り起こした記事をやっている。
冒頭、03年9月22日に行われた「ワールド・ダンス・ランキング・アワード」という耳慣れない名前の「ダンス大会」の模様が描かれ、自民党の幹事長になったばかりの安倍がそこで挨拶をしている。
その時、壇上で安倍とツーショットに収まるのが主催者の塩田大介ABCホーム元会長だが、この人物、今年3月に競売入札妨害容疑で警視庁に逮捕され、その後起訴されている人物なのだという。
安倍総裁は最近発売された他の週刊誌にも、かつて「山口組の金庫番」と呼ばれた大物金融業者・永本壹柱(本名・孫一柱)と親密に肩を並べる写真が掲載されたばかりだが、塩田もまた暴力団の密接交際者として警察にマークされてきた人物なのだ。
「1カ月に2度、暴力団と近しい人物との交際が明るみに出るとは、次期首相候補の政治家として資質を疑われても仕方がない。新興宗教団体の『慧光塾』との深い関係が取り沙汰されたり、もともと安倍さんは『怪しい人脈』がチラつく人、という印象があります。政治家一家で育ってきたわりには、ワキが甘過ぎるのではないか」(政治評論家・有馬晴海)
自民党清和会の幹部もこう語る。
「岸信介さんが統一教会教祖の故・文鮮明氏と関係があったことで、安倍は官房長官時代に統一教会の行事に祝電を打って問題になった。国際勝共連合(文鮮明氏が設立した共産党撲滅を目指す組織)ともつながりがある。とにかく周りにいるのが右寄りの人間ばかり。右だけならいいけど、それが右翼、さらには暴力団につながる危険性がある」
現代はこう結んでいる。
「人を見るに厳しく、機を見るに敏という、政治家に必要な二つの能力が、現段階で安倍氏に十分に備わっているとは思い難い。『二度目の総理』が近づくいまこそ、真価が問われている」
そんな夫の窮状を知ってか知らずか、夫人のアッキーこと昭恵夫人は東京・内神田に出した居酒屋稼業に精を出しているようだ。新潮が紹介したが、その後日談を今週もやっている。
「『UZU』。昭恵氏が『女将』を務めるこの店を再び訪れてみると、何とカウンターまで一杯である。(中略)そこで待つこと1時間、ラストオーダー近くなって何とか入店すると看板メニューの『山口県産新米と豚汁セット』(980円)を頼む。(中略)残念ながらオーダーが間に合わなかった。そこで、『山口県祝島のひじき五目煮』(480円)と『自家製ベーコン』(1500円)を注文。ひじき煮は柔らかくて瑞々しい。ベーコンは2日間塩に漬け込み、さっと燻してあるという。市販されているものとはまったく違った味で、ベーコンなのに新鮮な肉の味がする。そばにいた客に聞いてみると、やはりもの珍しさからのぞきに来たという。(中略)運がよければ『自民党総裁夫人』が注文を聞きにやってくるのだから」
私も10月25日(木曜日)に訪ねてみた。神田駅から歩いて7~8分。外堀通りを渡って路地を左に入ったところにある。外から見ると喫茶店かフレンチレストランという趣の店である。覗いてみるとテーブル席が空いているようなので入ってみたが、中年の女性に、予約でいっぱいだと言われてしまった。
4~5人かけられるカウンターとテーブル席が3つぐらいのこぢんまりした店だが、私のような古びた居酒屋が好きな人間には、居心地がよくない。
女性がドアの外まで出てきて、「名刺をいただければ、後日連絡する」と言われたが、お断りして、近くの酒屋がやっている立ち飲みでいっぱいひっかける。このような「千ベロ」(千円でベロベロになれる店)が一番落ち着くね~。
(文=元木昌彦)

1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか










