
「週刊朝日」7月13日号
グランプリ
「正妻が告発! 元国税庁長官に脱税疑惑『脱法重婚』で妻2人」(「週刊朝日」7月13日号)
第2位
「原一億円恐喝事件で『中畑清DeNA監督が元暴力団員を仲介した』」(「週刊文春」7月5日号)
第3位
「有名80社『夏のボーナス』実はこれだけもらってました」(「週刊ポスト」7月13日号)
このところ、興味深いといっては失礼だが、事件や報道が多い。
「芸能プロダクション「イエローキャブ」社長の帯刀(おびなた)孝則さん(58)が28日午後、事務所内で首をつっているのを社員が見つけた」(asahi.comより)
動機は、経営状態の悪化を苦にしてのものだったといわれているが、一時は隆盛を誇ったプロダクションだけに、感慨深いものがある。
6月29日の夜、反原発を旗印に数万人が首相官邸を取り囲んだが、そのデモの直前、こういう報道が流れた。
「大麻樹脂と乾燥大麻を自宅に隠し持っていたとして、近畿厚生局麻薬取締部神戸分室が兵庫県西宮市苦楽園一番町のヨガ講師、山本利華容疑者(48)を大麻取締法違反(所持)容疑で現行犯逮捕していたことがわかった。捜査関係者が明らかにした。山本容疑者は脱原発運動で知られる俳優の山本太郎さん(37)の姉で、容疑を認めているという。(中略)『脱原発運動や更年期障害で疲れ、気分を和らげるために使った』と供述しているという」(asahi.comより)
「わかった」とあるから、逮捕されたのは少し前なのだろう。山本太郎はこの日のデモの主役の一人である。意図的なデモ潰しのための、警察側の情報リークではないのか。
同じ日の朝日新聞朝刊が、社会面トップで「インターネット掲示板『2ちゃんねる』が覚醒剤の購入をあおる書き込みを放置したとされる事件で、掲示板の運営会社とされるシンガポールの会社が、2ちゃんねるとは無関係のペーパー会社だったことが、同社関係者への取材でわかった」と報じた。
警視庁は、麻薬特例法違反(あおり、唆し)幇助(ほうじょ)の容疑で、2ちゃんねるの国内の関係先を家宅捜索していた。だが創設者で元管理人の西村博之は2009年1月に同社をシンガポールにある「パケット・モンスター」社に譲渡したと発表して、2ちゃんねるとは無関係だと言っていたが、そのいい分が崩れたことになる。
この情報源も警察筋だろうが、西村の最大の危機であることは間違いない。
さて、今週の第3位はポストの「夏のボーナス」の記事。
経団連がまとめた東証1部上場企業の今期の妥結状況を見ると、平均給与額は77万2,000円あまりで、前年より率で3.54%、金額で2万8,380円の減と、3年ぶりのマイナスになった。
東京電力は、当然ながら昨夏の組合平均40万1,000円がこの夏は支給なし。昨夏より19万1,000円ダウンしたのはソニー。
自動車では、日産自動車、マツダ、ホンダが昨夏よりダウン。中でもマツダは他社に比べて海外生産比率が低く、円高の影響をもろに受けてしまった。
積水ハウスは大震災や電力供給不安による特需を追い風にして14万3,900円のアップ。
テレビでは視聴率で低迷するフジテレビだが、ボーナスは気前がよく昨夏より1.8%アップの約140万円。
金融界も景気がよく、三菱東京UFJ銀行は40代前半の支店課長クラスで前年比5%アップの230万円前後。三井住友銀行も40代前半の支店課長クラスで約220万円だそうである。
もっと驚くのは商社で、三菱商事は30代前半で約350万円、40代課長で約480万円。
この中で、おやっと思わされるのはJALとANAのボーナスの差である。
JALが約67万、ANAが約39万円。JALは大規模なリストラで業績が回復したためだというが、投入された膨大な公的資金はまだ返していないし、税金さえ払っていないのだ。
株券を紙切れにして多くの株主に迷惑をかけたのに、近々上場する話まである。浮かれるのが、ちと早過ぎはしないか。儲けたカネは運賃を安くしてお客に還元する、という姿勢を見せるべきではないか。ANAの人間たちは怒りをもって見ているに違いない。
今週の2位は、原巨人軍監督の1億円恐喝事件を追い続ける文春の第2弾である。
「実は原の恐喝の前に、HとKは中畑に相談しとるで。中畑はKのことを“おやっさん”と慕っていたから、Kが恐喝の仲介を頼んだんや。そしたら中畑は『野球選手は二千万円か三千万円しか持っていませんよ』と言いながら、原の携帯番号を教えてくれたそうや。ワシが09年の時に新宿にある中畑の事務所『ドリームきよし』に電話を入れて、恐喝のことを聞いたら、担当者が『その件はKさんに一切お任せしています』と言うとったで。つまり認めたっちゅことや」
原辰徳巨人軍監督が、元暴力団員Kと現役暴力団員Hに1億円を払っていたという先週の文春のスクープは、原監督もその事実を認めてコメントを発表。読売巨人軍も払った相手は「反社会勢力に属する者ではない」としながらも認めたことで、大新聞やテレビまでが大きく報じた。
今週は、2009年4月に、恐喝したHの兄貴分を名乗る元暴力団組長・山本正志(仮名)が、巨人軍の球団事務所と原に脅迫行為を続けて逮捕されたが、その山本にインタビューして、上記のような発言を引き出している。
スキャンダルは今期から「横浜DeNAベイスターズ」を率いている元絶好調男・中畑清監督にも飛び火し、球界全体を巻き込む大騒動となってきた。
しかも、事情を知る関係者の話としてこう書いている。
「中畑は原の携帯番号を教えただけではなく、実際に原と面談したと聞いています。K側は06年8月末に巨人の遠征先の熊本のホテルで、原に一億円を要求しましたが、それ以前に原監督と中畑監督の間でやりとりがあったようです。週刊文春の記事の金銭要求の場面で、K側の人物が指を一本突き出し、原が『一千万円ですか』と聞き、K側が『桁が一つ違う』と答えていますが、あのやり取りは実は原と中畑の間で交わされたものだったそうです」
これが事実とすれば、爽やかな人柄で人気のある中畑の致命傷になる。
文春によれば、中畑とKの出会いは今から約20年前だという。中畑が現役を引退して新宿で焼き肉店をやっていたときに知り合い、のちにKの息子が中畑と同じ駒澤大学に入り、親しくなっていった。
中畑は記者の問いかけに、Kは知っているし、彼がやっている旅館に行ったことは認めたが、事件については「まったく分からない話だ。もう勘弁してくれ」というだけだった。
6月20日に静岡県伊東市にあるゴルフコースで、Kが経営する旅館の7周年記念ゴルフコンペが開かれた。
演歌歌手の山川豊、鳥羽一郎、山本譲二なども顔を揃え、会場に届けられた花輪の中には中畑清のものもあった。
警察当局は「被害届さえ出れば捜査に乗り出したい」と言っているそうだ。文春はこう結んでいる。
「真実解明のため、巨人側は公訴時効を迎えていない06年の恐喝事件の被害届を警察当局に提出すべきではないか」
Kが元暴力団であることは、6月21日付の朝日新聞のインタビューで本人も認めている。しかし、金を払った相手が暴力団であった場合、野球協約180条に違反し、原の野球人生は断たれてしまうため、巨人側は反社会的勢力の人間だと認めるわけにもいかず、被害届を出すこともできないのではないかと文春は推測する。
また、先週の文春が発売される3日前に、読売巨人軍が文春の広告差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てていたことを明らかにしている。
結局、19日になって読売側が申し立てを取り下げたが、こうした言論機関の「言論圧殺行為」に対して、田島泰彦上智大学教授はこう批判している。
「言論機関が事前の差し止めを法的に求めた、という事例を私は聞いたことがありません。これは言論機関の自殺行為です。今回は広告に関する差し止めですが、広告に掲載される見出しの表現も言論と一体のもの。雑誌と広告を分けて考えること自体、無理がある」
読売新聞には、原発を日本に持ち込んだ正力松太郎、白紙でも新聞を売ってみせると豪語した務台光雄という超ワンマンがいた。
務台が選んだ後継者・渡邉恒雄も二人を忠実に見習い、自分に逆らう人間を排除してナベツネ王国を築き上げたが、もはや瓦解寸前、いや、崩壊していると見るべきだろう。
私は昔、務台が会長のとき、もはや老害になってしまった務台はやめるべきだという記事を月刊現代でやって、読売社内が大騒ぎになったことがある。
これと同じことを、今の渡邊主筆にも言いたい。
週刊朝日で、今回の原スキャンダルのネタ元ではないかと疑われている清武英利元巨人軍GMが、鳥越俊太郎との対談の中で、こう語っている。
「今、読売社内では、多様性は認められず、渡邊社論のみです。やっぱり表現の自由って言論機関としてはいちばん大事なことじゃないですか。権力の監視というのも、とっても大事なこと。ところが権力の監視どころか、読売自体が権力になってしまっている」
今週のグランプリは久々に朝日がやってくれたスクープに贈りたい。
脱税疑惑を指摘されているのは大武健一郎(65)。財務省主税局と国税庁で一貫して税制改革に携わり、「税と社会保障の一体改革」と「国民総背番号制」を唱え、今の消費増税案の礎を築き上げ、国税庁長官にまで上り詰めた御仁で、告発したのはその妻・満里子(61)である。
大武は05年7月に国税庁長官を退官し、数々の天下りを経て、メディアにも出ている財務省の大物OB。
満里子はこう訴える。
「夫は退官後も公人です。公人の妻として、税金を払ってくださっている国民の皆さまに今、真実を知って頂くのは、私に与えられた責務だと思いました。手帳、通帳、確定申告などを調べた結果、官僚時代に給与外所得(講演料、原稿料等)を数百万円も過少申告し、“脱税”していました。さらに職権を乱用し、先輩である歴代の財務事務次官、国税長官の方々の年収を調べたり、愛人にせがまれるまま人事情報を漏洩したりし、公僕にあるまじき行為をしていたのです」
妻が言うには、大武は結婚以来、預金通帳や給料明細を一切見せず、収入の一部を現金で手渡してきたという。
長女が20歳になり、区役所から国民年金を納付するよう連絡が来たとき、大武は繰り返しこう言ったという。
「国民年金なんか払うな。将来は破綻してもらえないから損をする。俺は厚生省で年金のスペシャリストだったんだぞ」
この発言だけで罪万死に値する。
妻が退職後に公務員住宅を出て住む家を探そうとしたところ、預金が財形貯蓄の500万円しかなかったことがわかり、それを問い詰めると、彼女に馬乗りになり首を絞めたという。
そして07年1月以降は、1度も帰宅しなくなってしまった。
09年9月に満里子が大武の部屋を片付けているとき、12冊の黒い手帳を見つけた。そこには講演料、勉強会謝礼など給与外所得と思われる記述があった。
それによると、92年から94年の3年間だけで1,000万円近くの“脱税”をしていた疑いが濃厚だという。
藤井裕久、安倍晋三、松本龍などの政治家からの金額も書いてあり、朝日が取材してみると、松本議員は事務所を通して「大武氏へ10万円を現金で払ったのは事実です。(中略)勉強会のお車代だと思います」とコメントした。
ほかにも、主税局の有力な天下り先である税理士団体から「副収入」を得たかのような記述が並んでいた。
お定まりのように、この金を大武はA女という51歳の彼女に使っていたのだ。妻がこう語る。
「手帳を解読した結果、A女と夫との交際は86年以降、1,700回以上も記され、A女に対し、11年間で計3,800万円以上の飲食費、宿泊代などの出費があったと記されていました。(中略)夫の使途不明金の多くが彼女へ流れていたのです」
大武は家を出てからA女と暮らしているのかと、妻は思っていたが、自分の父親が住んでいた実家で別の女性と暮らしていることがわかったという。
それも07年4月には彼女を父親の養女にして、1年半後に父親が死ぬと実家を相続させていたのだ。
妻はこれを「脱法的な重婚」だと難じている。離婚が成立していないために考え出したやり方なのだろう。自宅を訪ねた記者にその女性は「妻です」と言い切ったそうだ。
直撃した朝日に対して、大武は弁護士と現役国税職員を引き連れて取材に応じた。
講演料などの雑所得と確定申告された額が数百万も違うが、脱税ではないのかと問う記者にこう答える。
「僕は現役中はビタ一文、謝礼はもらっていない。でも、講演料がいくらか主催者に聞き、将来、講演で自活するための参考資料として手帳に書いた。すべて僕の妄想だ」
車代だとお金をわたしたことを認めた国会議員がいたと話すと、同席した国税職員が身を硬くしたそうだ。
泣く子も黙る国税庁長官の実態が分かって、すこぶる面白い記事である。
小沢一郎の妻・和子の「離縁状」といい、今回のケースといい、げに恐ろしきは妻である。小沢も言ってはならないひと言「お前とはいつでも別れられるが、あいつ(長年付き合ってきた愛人=筆者注)とは別れられない」と言ったばかりに、人間としてだけではなく政治家としても「失格」であることを暴露されてしまった。
おのおのがた、くれぐれも気をつけよう「暗い夜道と妻の口」である。
(文=元木昌彦)

1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか












