
検定用の忍者コスプレはレンタルでも自前でも可。
筆者は無駄に気合いを入れて、専門店で2万5,000円
の衣装を購入(自腹)
ゆるいものならなんでも大好き♪ ロリ顔ライター・朝井麻由美が気になるスポットをご案内します。
履歴書の“資格等”の欄に、普通自動車免許以外のことを書けるようになりたい。それも、漢検や英検のような平凡な資格じゃダメだ。もっと突拍子もない検定でなければ。そんな折、5年前から滋賀県で行われている「甲賀流忍者検定」に受かれば忍者を名乗れる、との話を聞きつけた。これはいい。ご当地検定のようだし、観光ついでにヒョイッと受けて誰でも受かるようなものでしょう! と軽いノリで申し込んでみたのだが――。
こんな調子で、忍者検定をすっかり甘く見ていた私が検定用のテキストを開いたのは、検定の10日前。過去問を見た瞬間、絶句した……。
例えば、このような問題が出題されている。
「忍者が窮地から脱出するのに、逃げながら撒くのは“菱撒き退きの術”。撒き菱には、鉄ビシ、木ビシ、竹ビシ、天然ビシがある。では、天然ビシはどこで採れるか?」
→答え:池
……どうやら、ヒョイッと簡単には忍者になれないようである。勉強がまるで間に合わず、当日、絶望的な気持ちになりながら現地へ向かった。
ちなみに、筆者が申し込んだ初級の試験は、50問の筆記試験(100点満点)に、コスプレ加点(5点満点)と手裏剣投げ加点(5点満点)がある。合格ラインは60点で、例えばもし、筆記試験が55点でも、コスプレで5点の加点を獲得したら合格になるという仕組みだ。筆記が異様に難しいのに、コスプレすれば許される――忍者検定、真面目なのかふざけてるのか……。
そして当日。検定の受付を午前9時台に済ませ、10時15分には試験開始となる。この空き時間に少しでも知識を叩き込もうと思っていたのに……そうは問屋が卸さなかった。会場は忍者コスプレだらけ。これからあの無駄に難しい試験を受けるとは思えないほど、おちゃらけた空気が蔓延していた。

右も左も忍者だらけ。会場には、
なぜか信号みたいな色の忍者トリオもいた。
こうなると当然の流れとして、お互いの撮影会である。忍者コスプレをしていれば、初対面だろうが年の差があろうが皆友達。撮ってください、撮らせてくださいの繰り返しでとてもじゃないけど、勉強の追い込みをするような雰囲気ではない。
「過去問、難しかったですよね? 勉強しました?」
「いやー、全然勉強できてないんですよー。たぶん落ちますね(笑)」
という会話が、ところどころで繰り広げられていた。いわゆる、試験前お約束の会話である。お前ら、その言葉信じるからな! 私は本当に勉強してないぞ! (だいたい、こういうときって、本当に勉強してない人のほうが少数派なのだよな……)
ちなみに、タイムテーブルは以下のようになっている。
10:15~10:45 筆記試験(この間にコスプレの採点もされる)
10:45~12:30 実技試験(手裏剣投げ)& 昼食
12:30~13:00 受験生有志による忍者パフォーマンスタイム
13:15~15:15 プロの忍者による講演&演武
15:15~ 成績発表・表彰
10時15分、検定が始まった。筆記の制限時間は30分。筆記中に、審査員がコスプレの採点をしてまわるため、それなりにしゃんとした姿勢で試験に臨む。

机の端には持参した手裏剣のオモチャを置いてみた。
小道具もしっかり揃えてきましたヨ、
という審査員への小さなアピールである。

真剣に問題を解く忍者がズラリと並ぶ会場の光景は、少し異様。
筆記試験が終わると、次は手裏剣投げの実技だ。筆記試験のハイレベル具合は先に述べた通りだが、手裏剣投げとて、今の時代の一般家庭では練習のしようがない。強いていえばダーツに近いものの、実技試験で使う手裏剣は鉄製でダーツよりもはるかに重く、感覚がまるで違う。ほかの受験生の手裏剣投げを見ていても、成功者はかなり少ないようだった。しかし、試験での得点が絶望的なだけに、ここでなんとしても加点がほしいところ――。

試験官は当然投げ方を教えてくれないので、適当に投げるしかない。トリャー!

あ、あれ!? 当たったー!! しかも一番高得点のところに!
全部で三回投げるところ、一投目、二投目は的に届きすらしなかったが、三投目でまぐれの大当たり。
まさかの手裏剣が当たったことで、少し欲が出てきてしまった。実技試験に入るまでは、筆記の手ごたえがほぼ絶望的なだけに合格をあきらめていたのだが、手裏剣の加点が入ったため、まだあがけばなんとかなるかもしれない、と。そのとき、「午後からの“忍者パフォーマンス”に出れば、点数が加点される」とのウワサが流れてきた。パフォーマンスは、ダンス、歌、劇ほか、出し物であればなんでもOK。本来は、受験申し込みの段階で、パフォーマンス出演も申し込みをするのだが、どうやら飛び入り参加も可能らしい。
そこで、「なんとしても加点がほしい!」との思いと、手裏剣が当たって気が大きくなっていたのか、試験開始前に忍者コスプレの撮影会をしたメンバーを集め、9人で即興の忍者寸劇をすることになった。

何しろ急ごしらえなので、忍者の武器も、
そこらへんにあった傘を使用。

傘を開いて悪役を攻撃!
悪者が現れ、ピンチに見舞われ、最後にはヒーロー忍者が助けに来る、といったストーリーとしてはベタもベタだったのだが、傘を武器に使うなどのチープさがウケたのか、なんと我々のチームは優勝してしまった。

優勝賞品はビールケース。
しかし。ここにきて、忍者パフォーマンスに関しては、優勝しても特に試験の加点にはならないことが発覚。なぜならば、忍者パフォーマンスタイムは、試験の採点の時間稼ぎのために設けられている単なるお遊びなのだそう。ああ、合格が遠のいてしまった。
そしていよいよ、結果発表の時間がやってきた。予想では、ギリギリ合格か、あと数点で惜しくも不合格か、のきわどいラインにいるはず。もしかしたら、もしかすると、とわずかな希望を胸に、合格者の名前が続々と映し出されるスクリーンを眺めていたのだが……結局、合格ラインには8点足りず、落第忍者になってしまった。今回は例年よりも合格率が高かったようで、初級は受験者98名中55名が合格したとのこと。不合格のほうが少ないだなんて! ちなみに、一緒に忍者パフォーマンスに出た9人のメンバーのうち、合格したのはたった2名だけというありさまだった。わざわざ滋賀県まで時間とお金をかけて行って、得られたものがビールケースだけって、一体何しに行ったんだろう……。
ただ、忍者コスプレの撮り合いっこや、「勉強した?」「全然ー」の“学生時代プレイ”も楽しめるため、友人と旅行を兼ねて参加するにはうってつけ。中学・高校時代と比べて記憶力が甚だしく落ちていることを心から実感するおまけ付きですけれども。
●学生プレイ度
★★★★★
試験は午前開始のため、前日入りするか、夜行バスで行くかのどちらか。昨年の上位合格者の中には、忍者が好きすぎるあまり、単に腕試しとして再受験する検定リピーターになっている人も何人かいた。ちなみに、今回見事5位で合格した受験者の猪瀬隆さんによると、「市販の忍者本を読むよりも、甲賀市観光協会から過去問を数年分取り寄せて問題の傾向を掴んで、いかにも出題されそうなところを予想してネットで忍者について調べておくのが最も効率のいい試験対策」だそう。受験生さながらである。
(取材・文=朝井麻由美)
●『甲賀市観光協会』
<
http://www.koka-kanko.org/ >
忍者検定を主催する甲賀市観光協会のHP。毎年6月に行われ、4月下旬頃から申し込みが始まる。受験料は1,000円。

ちなみに、これが検定合格者に進呈される忍者認定の巻物。
いいなぁ……。
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