
「週刊文春」8月2日号 中吊り広告より
グランプリ
「野田首相前後援会長は社会保障費21億円を詐取していた」(「週刊文春」8月2日号)
第2位
「19兆円復興予算をネコババした『泥棒シロアリ役人の悪業』」(「週刊ポスト」8月10日号)
第3位
「JAL再上場目前の乱気流 当機は燃料費節約のため台風に突っ込みます!」(「週刊新潮」8月2日号)
次点
「ああ残念!鈴木京香様、やっぱりあの男と!」(「週刊ポスト」8月10日号)
何度も書いているが、週刊朝日が心配だ。今週は新聞広告の「総選挙へ 谷垣が小沢、鳩山と組む」につられて読んでみたが、それらしい記事がないのだ。どうやら「森元首相の引退声明で始まった自民党の『脱長老』総裁選」というのがそれに当たるらしいのだが、ここまで広告と本文が違うのには驚く。
谷垣の最側近だという川崎二郎が、囲み記事の中で「小沢さんや鳩山さんとも手を結ぶ」と話しているのがタイトルになったようだが、羊頭狗肉が過ぎる。
AERAの一行ダジャレが面白い。「夢をもうイチロー」
私に届いた暑中見舞いで、税理士で「株式会社パラトネール」の中川尚代表取締役はこう書いてきた。
「2010年度消費税還付金上位5社
1位 トヨタ自動車 2,246億円
2位 ソニー 1,116億円
3位 日産自動車 987億円
4位 東芝 753億円
5位 キャノン 749億円
輸出大企業は消費税を納めているのではなく、むしろ還付金を受けている。今後、消費税率を上げ、法人税の税率を下げていくと、日本の大企業の多くは日本で税金を1円も払わないことになる。輸出補助金がWTO(世界貿易機関)の協定違反となったことにより、消費税が実質的な輸出補助金となったのである。これが消費税問題の本質である」
消費税還付金がこれほどあるのは驚きである。大メディアはこのことを書いているのか。
さて、ポストが珍しく張り込みネタをやっている。フライデーのようにはいかないようだが、なんとか同じマンションから出てくる二人を撮っている。
一人は熟女美人の女優・鈴木京香(44)。そして相手は? きっかけは、銀座の飲食店の関係者の「極秘情報」だった。
「銀座の某有名高級クラブの常連に、政財界やメディアに大きな影響力を持つ団体のトップがいるのですが、彼は酔って上機嫌になると決まって鈴木京香さんを呼び出すそうなんです」
そこでポストは取材を開始し、京香の自宅があるマンションを張り込み始めた。そして、ついに7月下旬のある週末(なんで何月何日と書かないのかね)、霧雨が降る中、顔を隠すように傘をさした男が現れる。
彼はウワサされていたオヤジではなく、2010年に『セカンドバージン』(NHK)で共演した9歳年下の俳優・長谷川博己(35)であった。
長谷川が京香の部屋の合い鍵を持っているのは間違いないと、ポストは書いている。
かつては、俳優の堤真一や真田広之との熱愛が報じられたが、結婚までいくことはなかった。長谷川には結婚を求めてはいないらしい。山田五十鈴や原節子を持ち出すまでもなく、名女優は独身でいることが多い。独身生活を謳歌する京香は、名女優への道を「我が道」と思い定めたのかもしれない。
今週の第3位は、週刊新潮の記事。JALの再上場に異議ありと、新潮らしい切れ味を見せている。
JALが会社更生法の適用を申請したのが2010年1月。それが、今年3月期には2,049億円の営業利益を出したのだから、JALの名誉会長になった稲盛和夫は評価されていいはずだが、そうではないと異を唱える。
「稲盛さんの経営哲学の下、日航では、すべてに優先して絶対安全、という方針が弱まってしまいました」(共産党の穀田恵二代議士)
稲盛の「利益なくして安全なし」というイズムが浸透して、安全が脅かされているというのだ。
その例を穀田代議士は挙げる。昨年の台風シーズンのとき、機長が「台風は迂回すれば避けられるが、そうすると30分ほど余計に時間がかかり、燃料費が20万円余計にかかってしまうから台風を突っ切っていく」と発言したというのだ。
今年1月には旭川発羽田行きの便の機長が、空港で点検中に転倒して肋骨を折ったにもかかわらず、そのまま羽田まで操縦した。
航空業界に詳しいジャーナリストはこう語る。
「この機長は管理職で、稲盛さんの利益第一主義を進めてきた立場の人。自分がケガをしたせいで欠航になれば赤字になるから、休むと言い出せなかったのではないでしょうか」
その日の機種や、お客が何人搭乗して燃料費にいくらかかるかを、パイロットには事前に知らされる。そこから利益を捻出しなければと考えるパイロットが増えたために、燃料費を抑えようと、台風に突っ込んでいくパイロットまで出てくるというのだ。恐ろしいことではないか。
また、CA(客室乗務員)もただのセールス要員だと、元CAが嘆く。
「CAにはフライトごとに“セールスターゲット目標額”が課され、羽田―沖縄便ならCA一人につき往復4,000円。(中略)みなノルマをいかに達成するかで頭が一杯で、接客どころではありません」
国際線ではもっとノルマがきつく、一人当たり3万2,400円にもなるという。
パイロットは年収がいいと思われてきたが、破綻前が1,700~1,800万円、2,000万円を超える者もいたが、今は1,200~1,500万円だという。
驚くのは、希望退職で整備員が約2,000人辞め、今は下請けに丸投げされていることである。それをカバーしているのは中国の厦門(アモイ)にある工場で、そこへ一括して依頼しているというのだ。
「しかし、日航が世界に誇れる整備等の技術面が、このままで大丈夫なのか。信頼性が低下しないでしょうか」(国土交通省航空局の関係者)
新潮の言うように、
「安全を疎かにすると、いかに巨大なコストにつながるか、東京電力という反面教師がいるではないか」
JALに乗るのが恐ろしくなる記事である。
第2位は怒りが思い切りあふれている、ポストお得意の官僚批判特集。読みながら、こちらも怒りに震えてくる記事である。
東日本大震災から500日以上を過ぎたにもかかわらず、被災地復興は進んでいない。三陸海岸のガレキ処理はまだ2割にしか過ぎず、岩手、宮城、福島3県の仮設住宅には約27万人が暮らしているが、これまで着工した復興住宅はわずか229戸で、計画の1.1%にすぎない。
東北復興が進まないのには理由がある。被災者のための震災復興予算が役人たちにかすめ取られているからだとポストは追及する。
政府は震災復興のため、昨年度は3次にわたって約15兆円もの復興補正予算を組み、今年度分と合わせて総額19兆円の震災復興予算を集中的に投下することを決めた。
その財源を賄うために、来年1月から25年間にわたる所得税引き上げと10年間の住民税引き上げという、長期間の臨時増税が実施される。そのほかに子ども手当の減額、高速道路無料化の廃止、国家公務員の人件費削減も決まった。
だが、国の予算は制約ばかりが多く、被災地が本当に必要としている事業には使えない仕組みになっているというのだ。
宮城6区選出の小野寺五典衆議院議員(自民党)がこう語る。
「被災地の自治体は壊滅状態だから税収もない。そこで復興に自由に使えるという触れ込みの復興交付金が創設されたが、使途が40事業に限定され、土地のかさ上げすらできない。気仙沼では水産庁の復興事業で漁港周辺の地盤を高くしたが、そこに以前あった商店を建てるのはダメだといわれた。これでは町の復興には使えません」
そのために昨年度の復興予算約15兆円のうち、4割に相当する約6兆円が使われずに余ってしまったのだ。被災者向けの復興住宅に至っては1,116億円のうち、使われたのはわずか4億円。
大事な復興予算をシロアリ官僚たちはネコババしていると書いている。
まず「不用額」とされた約1兆円は、新設された「東日本大震災復興特別会計(復興特会)」に繰り入れられ、各省庁に分配されるのだが、国交省は36億円を使って政府の官庁舎を改修する計画を立てた。一方で石巻市役所は1階部分が水没し、5~6階の吊り天井が壊れるなどの被害が出たが、「市庁舎改修工事」費用はわずか2,900万円。
市の管財課担当者は、これは改修費用ではなく、加湿器と駐車場のLED電球の設置予算で、自治体が自腹で改修したら倒産してしまうと嘆く。
だが、同じ市の国の出先機関の港湾合同庁舎には4億円の改修費用が計上されているという。
ハコ物と並ぶ巨大公共事業である道路にも多額の予算が復興特会から出されている。北海道と沖縄の道路整備事業にそれぞれ78億円、22億円が拠出された。
もっと腹が立つのは、国家公務員を6,000人以上削減するといっていたのに、実際には1,300人しか減っていないことである。
削減分を穴埋めするために新規事業を立ち上げ、そちらに人員を移しているからだ。新設された復興庁の定員は120人だが、復興特会には791人分の人件費が計上されている。
「被災地に行く職員ならまだわかりますが、そうじゃない。霞ヶ関の役人の給料なんです。本来は一般会計で計上すべき予算を、勝手に付け替えている」(みんなの党の桜内文城参議院議員)
復興特会の人件費は総額131億円にも上る。これは通常の給与だけではなく、年金や福利厚生、退職金まで含まれているというからあきれ果てる。
また、文科省や会計監査院から天下りする独立行政法人・日本原子力研究開発機構へは107億円拠出されているのである。
機構を管理する文科省の研究開発戦略官付の担当者はこう語る。
「実験を行っている日本原子力研究開発機構は、(被災した)青森県と茨城県にあります。同事業のコンセプトは、この研究を日本と欧州が参画する『世界的な核融合の拠点施設』にして、イノベーションの力で復興に寄与しようというものです。世界的な研究拠点ができれば、被災地に活力を与えるという趣旨です」
ポストは「質の悪いジョークにもほどがある」と切り捨てる。
そのほかに、南極に行く調査捕鯨に18億円、それを妨害するシーシェパード対策費に5億円が使われてしまっている。
「財務省や執行部は、震災復興を増税するための道具としてうまく使っただけで、その駆け引きのために震災復興が遅れてしまった。(中略)もう無茶苦茶ですよ。それで不用分は繰り越しだというのだから、地元は本当に怒っていますよ。『使い切れなかったとはなんだ! こっちは本当に復興予算を必要としているのに』と」(新党きづなの齋藤恭紀衆院議員)
安住淳財務相は19兆円を超える可能性が高くなってきたので、新たな財源を考えると、積み増しまで示唆している。
震災復興のためのカネを役所の利権拡大や生活保障という「霞ヶ関復興」のために使っているのは「国家犯罪」だとポストは書いているが、その通りである。
今週も文春の記事がグランプリである。文春の独走態勢が止まらない。
今週は野田佳彦首相と刎頸の交わりのある医療グループオーナーのスキャンダルを暴き、野田首相には「消費増税を行う資格なし」と言い切っている。
オーナーの寒竹郁夫と野田は船橋高校時代の同級生。千葉県議に当選した野田と再会し、以来20年にわたって寒竹は支援を続けてきた。
昨年12月3日。野田首相は忙しい合間を縫って政経倶楽部というところで講演したが、この倶楽部の初代理事長で現在はファウンダーを務めるのが寒竹である。
野田首相は、総理に就任した2カ月後に開かれた天皇・皇后主催の秋の園遊会にも首相枠で寒竹を推薦し、出席させている。
彼は訪問歯科診療をサポートする「デンタルサポート株式会社」(以下、DS)の社長。訪問歯科診療とは、要は歯医者の出前である。歯科医、歯科衛生士、コーディネーターの3人でチームを組み、患者の自宅や介護施設を訪問して診療する。
医療保険から診療報酬が医療法人に支払われ、DSは診療1件ごとに約4,000円のサポート料を得る仕組みだそうである。
寒竹は街の歯科医だったが、訪問歯科診療に着目して売上を伸ばし、現在年商約86億円となっている。
だが、DSグループの元中枢幹部は「この売上には見逃すことのできない不正があるのです」と告発する。
訪問診療では、診療時間が20分を超えると一軒家なら850点、老人ホームなどは380点が加算されるが、20分以内では初診でも218点、再診では42点しか加算されないのだ。
20分を超えるか否かで、最大8,000円以上の差が出るという。DSグループでは20分以内で診療を終えても超えたことにして、高い診療点数を請求する不正が横行しているというのだ。事実ならば、刑事事件に発展する悪質行為である。
取材していくと、寒竹は「ノルマ」を達成するよう、以下のような文書を出していた。
「各医院の勤務医の先生は、院長の管理のもとで点数算定方法を再確認し、平均点数が1,100点となるようにして下さい」
DSグループの元中枢幹部は「組織として当たり前にやっていたということです。(中略)ただ、昨年くらいから幹部会議でも問題視され始めました。寒竹は株式上場を目指し、社内でもコンプライアンスを求める声が高まっていった」と語る。
だが、これほどおいしいやり方をやめるわけにはいかなかった。3年前にDS内部で、不正請求をやめた場合、どれぐらい売上が減るかを試算したら、年間21億円という数字が出たからである。
この幹部は、このことが記事になったほうがいいと思うと洩らし、続けてこう語る。
「記事になったら、もっと告発が出てくるはずです。やはり社会保障費をむさぼっている事実はあるわけで。規模を大きくしようとするあまり、その認識が抜けていたことは認めざるをえない」
野田首相は税と社会保障の一体改革を唱え、消費税増税に命を賭けると表明している。消費税増税は社会保障の充実に使われると説明しているが、DS社のような不正請求をする企業に吸い込まれていくとしたら、国民の理解は得られまい。
野田が96年に落選したときに支えたのも寒竹で、野田の秘書達の面倒も見ていた。
当人はこの疑惑にどう答えるのか。医療グループのトップにいる人間にしてはこの御仁、いささか柄が悪い。
「訪問医療を始めた理由は」と聞かれ、
「金を儲けたいから。当たり前だよ。だけど、やっているうちに、価値観がだんだん変わるんだよ。本当に世の中のためになりたいと」
と答えるが、「本当は診療していないのに、20分診療したことにして高い保険点数を請求していますが」と追及されると、口調が変わった。
「ウチの平均診療点数は九百、全国平均よりかなり下。現象として不正みたいなことはないと思います。今の医療を国の基幹産業にしようとしているのに、妨害する奴らがいる。百歩譲って、二十分を五分にしました。それで何になるの? 俺の給料、三千六百万だよ、たったの。ふざけんなよ。政経倶楽部に私費をぶっ込んでるわけだよ」
野田の選挙活動に、DSの社員を手伝わせたのではないかと突っ込まれて、
「そこまで調べてるんだ。もしそうだとしてもノーと言います。ウソをつきます。それはなぜかというと義理人情。従業員を張りつかせて選挙応援したって数十万。その件に関してはノーだと言うけど、あったとして、あげつらって、国難のときに意味がある? 野田は守るから、友情で。検察に言われても、俺はあいつを守る。検察にしょっぴかれようが、吐かないけど。一国の総理の後援会長だよ。そのくらいの根性じゃなければ」
厚労省保険局医療課は「訪問医療の場合、患者のリスクは、外来の患者に比べて高く、手間隙もかかるため、診療点数を高くしている。あくまでもつきっきりできちんと診療をやっていただく。その結果として二十分あったのか、なかったのか、ということです」と文春に答えている。
野田首相は文春の取材に対して期日までに返答をしてこなかった。消費税増税は国民の4割を超える支持を得ている。それは後世にツケを残してはいけない、日本を破綻させてはならないという将来に対する責任感に基づくものだろうと文春は書き、こう続ける。
「しかし、その増税が真の社会保障の充実に使われることなく、社会保障予算をむさぼる組織に流れ込むとしたら、消費税増税は国民の支持を得られるはずがない。しかも、その流れ込む先は野田首相の有力後援者なのである。野田首相、あなたに消費税増税を行う資格はない」
この結びも見事である。
野田首相は参院社会保障と税の一体改革特別委員会で、礒崎陽輔(自民党)議員がこの件について質問したが、「事実関係はまだ明らかでない。今、法的に問題があるわけではないが、疑惑について私も彼もきちっと説明していく責任がある」と述べるにとどめた。
事実関係が明らかになったら責任を取るということかね、野田さん。
(文=元木昌彦)

撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか