
この、オサレな工房で着ぐるみを作っているのだ。
もっと町工場みたいなところを想像してた!
珍奇なものをこよなく愛するライター・北村ヂンが、気になったことや場所にNGナシで体当たり取材していく【突撃取材野郎!】。第15回は、着ぐるみ制作会社に潜入してきました。
■ゆるキャラ&着ぐるみを作って儲けたいのだ
長引く不況でもはや死に体の地方経済を活性化すべく、ご当地B級グルメやローカルアイドル、街コンなど、さまざまな企画が打ち出されているけれど、そんな中でも、ご当地の知名度アップ、経済効果ともに大きく貢献しているのが「ゆるキャラ」だろう。
一時のブームで終わるかなー……という予想を覆し、最近では完全に一般層にまで定着してきているようで、各地方自治体がどんどん新しいゆるキャラを生み出し、ますます盛り上がりを見せているご様子。

我が地元のゆるキャラ・もんじゃ焼きの「もじゃろー」。
手作り感あふれ過ぎてる着ぐるみ!

着ぐるみのゆる過ぎ感もさもさることながら、足下が
またねぇ……もうちょっと気を遣って下さいッ!
ゆるいにもほどがあるよ。
着ぐるみはもちろん、グッズやお土産なども作られ、人気ゆるキャラはテレビやイベントにも引っ張りだこ。……いやあ、銭ッコのニオイがプンプンするじゃないですか! そもそも、ああいう行政の仕事ってギャラよさそうだし。
ボクも一応、イラストなんかを描く仕事をしているもんで、いつか、どっかのゆるキャラのデザインをして、ボロ儲けした……いやいや、着ぐるみ化されたらうれしいなぁ、なんて思っているのだ。自分のデザインしたキャラクターが着ぐるみになって、子どもたちに囲まれているのを見たら、お金なんかには代えられない喜びがあると思うんですよね。……お金も欲しいけど!

まあ、銭のニオイはしないね……。
しかし、そもそも着ぐるみって、どこで、どんなふうに作ってるのか? そして、作るのにはどれくらいお金がかかるものなのか? 全然分からないでしょ。
というワケで今回は、着ぐるみの制作からショーのプロデュースまでを一手に請け負っている「ゴーゴープロダクション」の二村直範社長に、突撃取材してきた!
■表に出られない! 着ぐるみアクターの苦悩
――着ぐるみ専門の会社を作ったきっかけは、なんだったんですか?
「もともとは、僕自身が着ぐるみのアクターだったんです。でも、着ぐるみの世界って難しくて、優秀なアクターがいてもなかなか認めてもらえないんですよ。表に出るわけにいかないから名前が知られることもなく、だから頑張っていても、なかなかギャラを上げてもらえないし……」
――ああ、「中に人なんか入ってない!」ということになってますからね。
「呼んでくれる側からも『人気キャラクターの着ぐるみを着て、それなりに演技してくれれば』程度のことしか期待されていないですからね。だから、もっと着ぐるみアクターの地位向上ができないかなと思ったわけです。そんな時に、以前から考えていた『着ぐるみがプロダンサー並みのダンスを踊ったらショーとしても話題になるし、認めてもらえるんじゃないか』というコンセプトを実現するために会社を立ち上げたわけです」

こんな本格的ダンススタジオが、着ぐるみ工房に併設されているのだ。
――アクターとして立ち上げた会社で、オリジナルの着ぐるみを作るようになったきっかけは?
「当時、デパートの屋上ショーで使われているような着ぐるみって、ものすごくレベルが低かったんですよ。背中のファスナーは丸見えだし、口の穴や首のスキマから中が見えちゃったりとか……。某・夢のランドに、着ぐるみのリサーチをしに行ったら、日本で作られている着ぐるみとは全然レベルが違っていて、ビックリしましたから」
――確かに、あのランドの着ぐるみは相当レベルが高そうですね。
「一方、日本で着ぐるみを作っている会社って『着ぐるみってこんなもんでしょ』という感覚のところばっかりだったんです。だから、着ぐるみを作り始めるにあたっても、従来の着ぐるみ工場ではなく、それぞれの素材を扱っている工場に行って技術を教えてもらいました。そもそも、ダンスみたいな激しい動きができる着ぐるみなんてなかったですし。ウチの着ぐるみはヒップホップ、タップ、ジャズ……それぞれ得意のダンスが設定されていて、その動きを邪魔しないような設計になっています。ダンスに対する理解がない人には絶対作れないと思いますよ」

ゴーゴープロダクションのオリジナル着ぐるみ。
手足の可動性が違うらしいです。

こんな、着ぐるみの粋を超えたダンスパフォーマンスを
やっているそうです。


ものすごく小さい人が入ってるように見えるけど、
胴体まで頭部に入ってるんですね。
■オリジナル着ぐるみを制作するには?
――ちなみに、オリジナルの着ぐるみ制作をお願いする場合、いくらくらいかかるんですか?
「大体、50~60万くらいですね」
――思ったよりは……という感じですね。
「発泡スチロールの削り出しで作る場合の値段なんですが、もっと作りを精巧にしたり、複数体を制作する場合には、型を作ってFRPという素材で作ることになるので、また変わってきますけど」

コレが制作途中の着ぐるみ。
中身はこんな感じなんすね。

FRP素材で製作する場合は、こういう型を使って作ります。

天井まで着ぐるみのパーツがギッシリと……。着ぐるみは
置き場所に困るので、完成したらすぐに発送
しちゃうんだそうな。
――作りやすいキャラクター、作りにくいキャラクターってあるんでしょうか。
「最近はCGで制作されているアニメもありますけど、ああいうのって難しいんですよ。着ぐるみは人が着ることが前提なので、どこかに関節やのぞき穴を作らなきゃいけないんですが、CGのキャラだと3Dのデータが存在しているせいで、ごまかせないんですよ。実は、平面的にデザインされているキャラクターのほうが自由度が高くて作りやすいんです」
――着ぐるみを制作する上で、一番気にするポイントはどこですか?
「のぞき穴の位置ですね。着ぐるみの中に入っていると、生活している上で普段どれほど目に頼っているかって分かりますよ。多少、動きづらかったり、換気が悪かったりしてもなんとかなりますが、視界が悪いとホントに大変なんです」
—――ああ、前が見えないと、子ども蹴り倒しちゃったりしそうですしねぇ。
「いや、着ぐるみの中に入っている時に必要な視界って、実は前方よりも足元が重要なんですね。だから、口の部分をうまくのぞき穴にして、足元が見えるようにしています。口を閉じているキャラクターだとそれができないので、お願いしてデザインを変えさせてもらったりすることもあるんですよ」

口の部分にこんな透ける素材を貼って、のぞき穴にするんだとか。
――はーっ、どうも目がついている着ぐるみだと、そこから見ているイメージを持っちゃいますけど、実は口から見ているんですね。それじゃ最後に、今後の目標なんかがありましたら……。
「やっぱり、着ぐるみアクターの地位向上ですね! ゆるキャラブームなどのおかげで着ぐるみ自体の需要は増えてはいるんですけど、着ぐるみだけ作っちゃえば、あとはバイトや社員さんが着ればいいだろう……くらいに考えている方がすごく多いんですよ。ちゃんとプロのアクターが中に入ってキャラクターの魅力を引き出さないと、せっかく作った着ぐるみも活かせないと思います。理想としては、ひとつのキャラクターは同じ人しか演じない、というのが一番いいと思うんですけどね。ウチのアクターたちにも『この人で』と指名されるようなアクターになれって、いつも言ってますから!」
な、なるほどー。自腹でもなんでも着ぐるみさえ作っちゃえば、あとはそれを自ら装着していろんなところに出没してれば、たとえば最近ネットで話題の勝手ご当地キャラ「にしこくん」みたいに人気キャラになれるんじゃ……なんてスイートな考えを持っていたんだけど、そりゃ確かに動きまで含めてのキャラクターだもん、中に入る人も人気キャラになる重要な要素なんだろうな……。
――ま、それはそれとして、せっかく着ぐるみ工房に来たんだから、着ぐるみをかぶってみたいんですけど……。
「ああーっ、どうぞどうぞ!」
……と、着ぐるみの頭部を持ってきてくれたんですが、いざかぶってみようと思ったら、頭が引っかかって入らないの。ボ、ボクの頭、そんなにデカイのかな。

仕方ないので取材に同行していた編集部のK女史にかぶってもらいました。
(取材・文・写真・イラスト=北村ヂン)
●株式会社ゴーゴープロダクション
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-33-10丸二ビル1F
電話:0422-27-5523
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http://www.myquee55.com/>
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