「厄介ごとに巻き込まれたくない!?」中国人が変死体を見て見ぬふりするワケ

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用水路での捜索の様子。
 陝西省咸陽市乾県の用水路で、4月3日からの20日間あまりの間に16体もの遺体が連続して発見される騒動が発生した。遺体の中には、行方不明者として捜索願が出されていたものも複数あったというが、腐敗が進み身元が判明しないものがほとんどだという。警察によると事件性はなく、誤って川に転落したものと見られている。  2月末には山東省徳州市の路上で、放置された嬰児の遺体、約10体が発見されたばかり。このような事件が続発しているのは、不審物を発見しても警察に通報するという習慣がないことが一因だと指摘する声もある。  中国で司法通訳として働いた経験がある馬建華(仮名)さんは、変死体を発見しても警察に通報する人が少ない理由を、こう語る。 「中国では、変死体を発見し警察に通報したのち、事件性があると判断された場合、第一発見者は15日間、警察の監視のもとに置かれるんです。これには3つの意味があって、ひとつは『第一発見者をまず疑え』という原則に基づいたもの。もうひとつは、いつでも好きなときに現場検証などの捜査に協力をさせるため。そしてもうひとつは、犯人から口封じに殺されたり、口止め料を受け取ったりすることを避けるためです。また、単純に『警察と関わりたくない』という警察不信もあって、発見者は通報したがりません。  広東省仏山市で発生した女児ひき逃げ死亡事件で、13人以上の通行人が、路上にうずくまる女児を目撃しながらも何もしなかったことが批判を浴びましたが、彼らには『厄介ごとに巻き込まれたくない』という心理が少なからずあったはずです」  変死体やケガ人を見て見ぬふりする人々に対し「道徳崩壊」の声も上がっているが、安心して通報できる司法制度や警察への信頼が欠如していることも問題のようだ。 (文=牧野源)

千鳥 いよいよ全国区に羽根を広げる「媚びない心」の切れ味

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『千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶ』
(よしもとアール・アンドシー)
 関西を拠点に活動している千鳥が、ついに東京進出を果たしつつある。この4月からは22時台に進出した『ピカルの定理』(フジテレビ系)でもレギュラーメンバーの仲間入りを果たした。関西ではロケ芸人として名が知られていた千鳥の勇姿を、全国ネットで見かける機会も少しずつ増えてきている。  千鳥が漫才の祭典『M-1グランプリ』で初めて決勝の舞台に立ったのは2003年。その印象は強烈なものだった。1番手として舞台に上がった彼らが披露したネタは、司会の今田耕司から「エロ漫才」と呼ばれる衝撃的な代物だった。  ボケ担当の大悟は、ツッコミ担当の相方のノブを女性役にして、幼なじみの女の子と虫取りに行った思い出を再現する。その設定で話が進んでいく中で、不意に大悟は女の子の胸に止まった虫を捕るふりをして彼女の胸を触る。そんな彼をノブ演じる女の子がやんわりとたしなめる演技も妙に生々しい。客席は静まり返り、百戦錬磨の審査員たちもただ苦笑いを浮かべるばかりだった。全国ネットの漫才番組にあえてこんなネタをぶつけてくるところに、千鳥の芸人としてのこだわりの一端がうかがえる。この年、千鳥は決勝で最下位の9位。それ以降も、決勝には三度上がっているが9位、6位、8位という結果に終わっている。  そんな彼らが漫才の全国大会で華麗な復活を遂げたのは11年。『THE MANZAI』に出場した彼らは決勝に駒を進め、そこで爆笑を勝ち取った。決勝16組の中から最終4組にまで勝ち残り、3位入賞を果たした。ここで自分たちの漫才の面白さを見せつけた千鳥は、ようやく全国区への足がかりをつかんだ。  彼らの漫才師としての特徴は、第一にネタの種類が豊富であるということ。彼らの漫才には決まったパターンのようなものがほとんどなく、ひとつひとつのネタが違っている。ひとつのボケを何度も繰り返して用いるネタもあれば、わかりやすい笑いどころをあえて設けないストーリー性の高いネタもあるし、リズミカルなしゃべりの掛け合いで笑わせるネタもある。設定が奇抜なものから下ネタ交じりのものまで、とにかく圧倒的に種類が豊富なのだ。  また、彼らの漫才の技術も折り紙付きだ。チンピラのような怪しい雰囲気を持つボケの大悟は、岡山弁のよどみない語り口で一瞬にして自分の世界を作ってしまう。また、ツッコミのノブは、抜き身の日本刀のように鋭い大悟のボケに対して、いなすようにして優しくツッコミをいれる。シンプルな訂正ツッコミをするだけでなく、ボケを否定せず聞き流すこともあるし、ツッコミのフレーズをひとひねりして笑いを増幅させることもある。一見温厚そうなノブのえびす顔の奥には、漫才サイボーグとしての確かな技術が潜んでいるのだ。  ただ、千鳥の漫才で最も注目すべきは、その堂々とした姿勢だ。彼らは決して観客に媚びない。大悟は自分が面白いと思うものに対して揺るぎない信念を持ち、それを荒削りな状態でやや無造作に観客にぶつけてみせる。恐らく彼にとって漫才とは、自分の生き方を表現することなのだ。  だからこそ、大悟の放つボケにはほかの漫才師にはない、生き生きとした魅力がある。それを受け止めて、できるだけわかりやすい形にして観客に提示するのが相方のノブの役目だ。ノブはツッコミという形で常識を提示して、大悟の狂気が暴走するのをギリギリのところで引き留めているのだ。  千鳥の2人の関係性は、バンジージャンプを試みる人とそれを支える命綱にたとえられる。大悟が無謀にも崖の上から飛び降りると、そんな彼をノブは命綱として必死でつなぎ止めようとする。このスリリングな関係こそが、千鳥の漫才がはらんでいるゾクゾクするような魅力の源泉だ。彼らは、全国区のテレビで自分たちの持ち味である「媚びない笑い」をどこまで進化させることができるのだろうか。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第105回】渡辺直美 希代のドリームガールが見つけた「かわいいとブサイクの間にあるもの」 【第104回】ロバート コント日本一をかっさらった暴風雨・秋山竜次の芝居に宿る「殺気の正体」 【第103回】TKO 不遇を乗り越えたかつてのアイドル芸人が「太って咲かせた、もう一花」 【第102回】オアシズ それぞれにブスを昇華した「現実と空想のアンサンブル」 【第101回】スリムクラブ 最後のM-1を駆け抜けた「超スローテンポという革命」 【第100回】レイザーラモンRG  "吉本団体芸"が生んだ「強心臓のニューヒーロー」 【第99回】麒麟 5度の決勝進出が「M-1グランプリの申し子」をどう変えたか 【第98回】ピース 噛み合わない2つの破片が力ずくで組み上げた「笑いのパズル」 【第97回】次長課長 変幻自在のオールラウンダー河本を生かす、井上の「受け止めるツッコミ」 【第96回】 オセロ松嶋尚美 大先輩・鶴瓶に見初められ「褒められて咲いた大輪の花」 【第95回】 ダイノジ 雌伏16年──ついに訪れる「二頭の虎が目覚めるとき」 【第94回】 キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」 【第93回】 山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 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千鳥 いよいよ全国区に羽根を広げる「媚びない心」の切れ味

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『千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶ』
(よしもとアール・アンドシー)
 関西を拠点に活動している千鳥が、ついに東京進出を果たしつつある。この4月からは22時台に進出した『ピカルの定理』(フジテレビ系)でもレギュラーメンバーの仲間入りを果たした。関西ではロケ芸人として名が知られていた千鳥の勇姿を、全国ネットで見かける機会も少しずつ増えてきている。  千鳥が漫才の祭典『M-1グランプリ』で初めて決勝の舞台に立ったのは2003年。その印象は強烈なものだった。1番手として舞台に上がった彼らが披露したネタは、司会の今田耕司から「エロ漫才」と呼ばれる衝撃的な代物だった。  ボケ担当の大悟は、ツッコミ担当の相方のノブを女性役にして、幼なじみの女の子と虫取りに行った思い出を再現する。その設定で話が進んでいく中で、不意に大悟は女の子の胸に止まった虫を捕るふりをして彼女の胸を触る。そんな彼をノブ演じる女の子がやんわりとたしなめる演技も妙に生々しい。客席は静まり返り、百戦錬磨の審査員たちもただ苦笑いを浮かべるばかりだった。全国ネットの漫才番組にあえてこんなネタをぶつけてくるところに、千鳥の芸人としてのこだわりの一端がうかがえる。この年、千鳥は決勝で最下位の9位。それ以降も、決勝には三度上がっているが9位、6位、8位という結果に終わっている。  そんな彼らが漫才の全国大会で華麗な復活を遂げたのは11年。『THE MANZAI』に出場した彼らは決勝に駒を進め、そこで爆笑を勝ち取った。決勝16組の中から最終4組にまで勝ち残り、3位入賞を果たした。ここで自分たちの漫才の面白さを見せつけた千鳥は、ようやく全国区への足がかりをつかんだ。  彼らの漫才師としての特徴は、第一にネタの種類が豊富であるということ。彼らの漫才には決まったパターンのようなものがほとんどなく、ひとつひとつのネタが違っている。ひとつのボケを何度も繰り返して用いるネタもあれば、わかりやすい笑いどころをあえて設けないストーリー性の高いネタもあるし、リズミカルなしゃべりの掛け合いで笑わせるネタもある。設定が奇抜なものから下ネタ交じりのものまで、とにかく圧倒的に種類が豊富なのだ。  また、彼らの漫才の技術も折り紙付きだ。チンピラのような怪しい雰囲気を持つボケの大悟は、岡山弁のよどみない語り口で一瞬にして自分の世界を作ってしまう。また、ツッコミのノブは、抜き身の日本刀のように鋭い大悟のボケに対して、いなすようにして優しくツッコミをいれる。シンプルな訂正ツッコミをするだけでなく、ボケを否定せず聞き流すこともあるし、ツッコミのフレーズをひとひねりして笑いを増幅させることもある。一見温厚そうなノブのえびす顔の奥には、漫才サイボーグとしての確かな技術が潜んでいるのだ。  ただ、千鳥の漫才で最も注目すべきは、その堂々とした姿勢だ。彼らは決して観客に媚びない。大悟は自分が面白いと思うものに対して揺るぎない信念を持ち、それを荒削りな状態でやや無造作に観客にぶつけてみせる。恐らく彼にとって漫才とは、自分の生き方を表現することなのだ。  だからこそ、大悟の放つボケにはほかの漫才師にはない、生き生きとした魅力がある。それを受け止めて、できるだけわかりやすい形にして観客に提示するのが相方のノブの役目だ。ノブはツッコミという形で常識を提示して、大悟の狂気が暴走するのをギリギリのところで引き留めているのだ。  千鳥の2人の関係性は、バンジージャンプを試みる人とそれを支える命綱にたとえられる。大悟が無謀にも崖の上から飛び降りると、そんな彼をノブは命綱として必死でつなぎ止めようとする。このスリリングな関係こそが、千鳥の漫才がはらんでいるゾクゾクするような魅力の源泉だ。彼らは、全国区のテレビで自分たちの持ち味である「媚びない笑い」をどこまで進化させることができるのだろうか。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第105回】渡辺直美 希代のドリームガールが見つけた「かわいいとブサイクの間にあるもの」 【第104回】ロバート コント日本一をかっさらった暴風雨・秋山竜次の芝居に宿る「殺気の正体」 【第103回】TKO 不遇を乗り越えたかつてのアイドル芸人が「太って咲かせた、もう一花」 【第102回】オアシズ それぞれにブスを昇華した「現実と空想のアンサンブル」 【第101回】スリムクラブ 最後のM-1を駆け抜けた「超スローテンポという革命」 【第100回】レイザーラモンRG  "吉本団体芸"が生んだ「強心臓のニューヒーロー」 【第99回】麒麟 5度の決勝進出が「M-1グランプリの申し子」をどう変えたか 【第98回】ピース 噛み合わない2つの破片が力ずくで組み上げた「笑いのパズル」 【第97回】次長課長 変幻自在のオールラウンダー河本を生かす、井上の「受け止めるツッコミ」 【第96回】 オセロ松嶋尚美 大先輩・鶴瓶に見初められ「褒められて咲いた大輪の花」 【第95回】 ダイノジ 雌伏16年──ついに訪れる「二頭の虎が目覚めるとき」 【第94回】 キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」 【第93回】 山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」 【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由 【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来 【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代 【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中 【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性 【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」 【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在 【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは 【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ 【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者 【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略 【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由 【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」 【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃 【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力 【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」 【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」 【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ 【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」 【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」 【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」 【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」 【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

浜崎あゆみ、「僕らの結婚はノリだった」元夫に暴露されても無敵なワケ

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エイベックス社員はあゆに足向けて寝ら
れないね

 今年1月にオーストリア出身で俳優のマニュエル・シュワルツとの離婚を発表した浜崎あゆみ。24日発売の「女性自身」(光文社)よると、元夫・マニー氏は離婚の真相について友人モデルに「振り返ってみると、僕らの結婚は正直、ノリだったと思う」などと暴露しているという。近年ではお騒がせ歌手のイメージが定着しつつある浜崎だが、この謎に満ちた離婚をバネに再起することはできるのか。

 2011年元日、マニー氏との電撃結婚を発表し世間を驚かせた浜崎。しかし、英語と日本語の言葉の壁に阻まれ、ふたりの心には次第にスレ違いが発生。そのため実際に夫婦として生活していたのはわずか2カ月足らずだったという。

実はAKB48の経済効果はプラマイゼロ? 海外進出こそが世界を救う!

 4月23日(月)にサイゾーが“満を持して”オープンした新ニュースサイト「Business Journal」では、話題の企業・経済ニュースから、ビジネススキル、蓄財・運用、充実したプライベートライフを実現させるための実用情報まで、“本音の”情報をお届けします。  今回は「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップ! このほかにも、東電、AIJからスマホ、FX、AKBまで、サイゾーだから書ける“ディープ”かつ“役に立つ”情報が満載ですので、ぜひともご覧ください! 実はAKB48の経済効果はプラマイゼロ? 海外進出こそが世界を救う! - Business Journal(4月23日)
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AKB48・前田敦子(「(C)AKS」より)
  大手芸能プロダクション・オスカープロモーションが主催する「全日本国民的美少女コンテスト」。多くの人が知る通り、上戸彩さんや武井咲さんなどのスターはここから誕生した。同社は応募資格として「12~20歳までの美少女」とし、応募条件として「圧倒的な輝きを放つ美しい容姿」「秘められた神秘性」などを掲げている。応募する少女たちはここで苦笑しないのだろうか。あるいは他薦であったら、大丈夫なのか。12歳の少女にバスト、ウエスト、ヒップを訊くのはどうかと思う。ただ、芸能界を生き抜くためには、この程度の条件を気にしない精神的タフさが求められるかもしれない。冗談である。  それはいいとして、驚くのは毎回10万人前後もの応募があることだ。総務省統計局が発表している統計データによると、12〜20歳の女子の人口は540万人ほどだ。まったく対象外の人もいるはずだが(失礼)、それを無視して考えても、全国の中学高校30人クラスの2 教室に1人は、応募していることになる。  あくまで私見だが、「全日本国民的美少女コンテスト」で各タイトルを受賞した美少女は、確かに群を抜いてレベルが高いと思う。スポットライトを浴びる、そして人並み以上の生活を送る。たくさんの少女が彼女たちを目指す理由はよくわかる。  現在、日本の給与所得者の給与水準が低下しているといわれている。国税庁「2010年度民間給与実態統計調査」によると、約10年前の01年に454万円だった給与所得者の平均年収が、10年には412万円となった。それに対し、芸能界のトップになれば、1回のCM起用で3000万円以上を稼ぎ出す。  しかも昨今の美少女アイドルグループの流行により、その願望は強くなってきたように思われる。最近では、乃木坂46のオーディションに約4 万人が殺到した。男性はアイドルを求め、女性はアイドルになりたがる。前田敦子さんが卒業することになるAKB48をはじめとして、乃木坂46、アリス十番など、私たちは、彼女たち「美少女」を見ない日はない。海外を歩いていても、これほど街中に少女たちが表紙を飾っている雑誌が溢れる国を、見つけることは難しい。  製造業が斜陽となっている日本において、美少女たちの発売する商品は売れ続ける。「彼女たちのソフトパワーが次なる産業だ」という人までいる。  実際はどうなのだろうか。有名なところでは、AKB48の経済効果が200~300億円だという説だ。確かに、AKB48は11年の音楽ソフト売上が、なんと162億円にも達したという。国内アーティストとしてトップだ。AKB48の音楽ソフトが売れれば、関連グッズも売れる、その物流を請け負う、運送業も盛況になる。あるいは情報通信業も恩恵があり、さらにAKB48を使った企業宣伝が活発になるため、制作スタッフが潤い、書籍など出版物も売れる......と、まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」的な波及効果があるというのだ。それが、162億円から、200~300億円まで膨らむロジックだ。  さて、ここから私の考えを述べる。ネット上などでまことしやかに流れている、この「AKB48の経済効果200~300億円」説は、正直いって疑わしいと思う。おそらく、これを述べる人たちは、国の産業連関表を利用して計算しただけではないか。産業連関表とは、統計局のホームページからダウンロードできるもので、どこかの産業で新規需要が生じた際の経済波及効果の予測をするものだ。新規需要のカテゴリーと額により、「運輸」「金融」「IT」など30以上の分野で、直接的・間接的にどれくらいの波及効果(需要)が生まれるのかが、自動的に計算される。そのエクセルの「商業」欄に新規需要に162億円と入れてみた。結果、経済波及効果は245億円と出た。  なんだよ、そのままじゃないか。  これなら誰だってAKB48について経済評論家っぽく語ることができる。乃木坂46だってKARAだって、音楽ソフトの売上高さえわかれば、それなりの「解説」ができることになる。 カギは、"ぼくたちの"アイドルからの卒業  この数字を使ってか使わずか、「AKB48の経済効果200~300億円」といっている人の、何が疑わしいか? それは、代替の作用を考えていないからだ。たとえば、AKB48のCDを買う人がいる。何枚も買い集めれば、そのぶんのお金を捻出するために、何かをケチる。お金は無限ではない。3000円を払うことで、犠牲になり売れなくなった商品があるはずだ。それはほかのアーティストのCDかもしれないし、あるいは夕飯のおかずが1つ減らされるかもしれない。そのマイナスぶんを考慮しないと、本当の経済効果は出ない。そして、「阪神優勝で600億円」「なでしこ効果は1兆円」などの巷間に流布する経済効果値には、そのマイナスぶんが考慮されていない。この意味で、アイドルにかかわる景気のいい経済効果予測はほとんど意味がない。もっといえば、ニュースで流れる多数の経済効果予測は意味がないと私は思う。  確かに、各アイドルグループの売上や利益は相当なものだ。しかし、それは日本経済に直接波及し、全体のパイを膨らませるものではない。アイドルは文字どおり「偶像」として楽しむ程度がふさわしい。  ところで、私はAKB48がまったく日本経済に影響しないといいたいのだろうか? とんでもない。もし海外でAKB48のコンテンツが売れれば、相殺対象は日本商品でなくなる。その意味で、私たちが応援すべきは、彼女たちの海外進出だ。  "ぼくたちの"アイドル、から、"世界の"アイドルへの脱皮。 「全日本国民的美少女コンテスト」に応募する美少女たちの目標が、"全日本"ではなく"全世界"であることを祈る。 (文=坂口孝則/株式会社アジルアソシエイツ取締役、物流コンサルタント) ※このほかにも「Business Journal」には、ビジネスパーソンを刺激する記事が満載!ぜひご覧ください! ■そのほかの記事(一部抜粋) 「ベンチャー経営者」起用するCMモデルは合コンでリサーチ!? フォロー返ししたらスパムが! ツイッターでも横行する詐欺の手口 JAL機長、血まみれ骨折でもフライトするこれだけの理由

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 4月23日(月)にサイゾーが“満を持して”オープンした新ニュースサイト「Business Journal」では、話題の企業・経済ニュースから、ビジネススキル、蓄財・運用、充実したプライベートライフを実現させるための実用情報まで、“本音の”情報をお届けします。  今回は「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップ! このほかにも、東電、AIJからスマホ、FX、AKBまで、サイゾーだから書ける“ディープ”かつ“役に立つ”情報が満載ですので、ぜひともご覧ください! 実はAKB48の経済効果はプラマイゼロ? 海外進出こそが世界を救う! - Business Journal(4月23日)
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AKB48・前田敦子(「(C)AKS」より)
  大手芸能プロダクション・オスカープロモーションが主催する「全日本国民的美少女コンテスト」。多くの人が知る通り、上戸彩さんや武井咲さんなどのスターはここから誕生した。同社は応募資格として「12~20歳までの美少女」とし、応募条件として「圧倒的な輝きを放つ美しい容姿」「秘められた神秘性」などを掲げている。応募する少女たちはここで苦笑しないのだろうか。あるいは他薦であったら、大丈夫なのか。12歳の少女にバスト、ウエスト、ヒップを訊くのはどうかと思う。ただ、芸能界を生き抜くためには、この程度の条件を気にしない精神的タフさが求められるかもしれない。冗談である。  それはいいとして、驚くのは毎回10万人前後もの応募があることだ。総務省統計局が発表している統計データによると、12〜20歳の女子の人口は540万人ほどだ。まったく対象外の人もいるはずだが(失礼)、それを無視して考えても、全国の中学高校30人クラスの2 教室に1人は、応募していることになる。  あくまで私見だが、「全日本国民的美少女コンテスト」で各タイトルを受賞した美少女は、確かに群を抜いてレベルが高いと思う。スポットライトを浴びる、そして人並み以上の生活を送る。たくさんの少女が彼女たちを目指す理由はよくわかる。  現在、日本の給与所得者の給与水準が低下しているといわれている。国税庁「2010年度民間給与実態統計調査」によると、約10年前の01年に454万円だった給与所得者の平均年収が、10年には412万円となった。それに対し、芸能界のトップになれば、1回のCM起用で3000万円以上を稼ぎ出す。  しかも昨今の美少女アイドルグループの流行により、その願望は強くなってきたように思われる。最近では、乃木坂46のオーディションに約4 万人が殺到した。男性はアイドルを求め、女性はアイドルになりたがる。前田敦子さんが卒業することになるAKB48をはじめとして、乃木坂46、アリス十番など、私たちは、彼女たち「美少女」を見ない日はない。海外を歩いていても、これほど街中に少女たちが表紙を飾っている雑誌が溢れる国を、見つけることは難しい。  製造業が斜陽となっている日本において、美少女たちの発売する商品は売れ続ける。「彼女たちのソフトパワーが次なる産業だ」という人までいる。  実際はどうなのだろうか。有名なところでは、AKB48の経済効果が200~300億円だという説だ。確かに、AKB48は11年の音楽ソフト売上が、なんと162億円にも達したという。国内アーティストとしてトップだ。AKB48の音楽ソフトが売れれば、関連グッズも売れる、その物流を請け負う、運送業も盛況になる。あるいは情報通信業も恩恵があり、さらにAKB48を使った企業宣伝が活発になるため、制作スタッフが潤い、書籍など出版物も売れる......と、まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」的な波及効果があるというのだ。それが、162億円から、200~300億円まで膨らむロジックだ。  さて、ここから私の考えを述べる。ネット上などでまことしやかに流れている、この「AKB48の経済効果200~300億円」説は、正直いって疑わしいと思う。おそらく、これを述べる人たちは、国の産業連関表を利用して計算しただけではないか。産業連関表とは、統計局のホームページからダウンロードできるもので、どこかの産業で新規需要が生じた際の経済波及効果の予測をするものだ。新規需要のカテゴリーと額により、「運輸」「金融」「IT」など30以上の分野で、直接的・間接的にどれくらいの波及効果(需要)が生まれるのかが、自動的に計算される。そのエクセルの「商業」欄に新規需要に162億円と入れてみた。結果、経済波及効果は245億円と出た。  なんだよ、そのままじゃないか。  これなら誰だってAKB48について経済評論家っぽく語ることができる。乃木坂46だってKARAだって、音楽ソフトの売上高さえわかれば、それなりの「解説」ができることになる。 カギは、"ぼくたちの"アイドルからの卒業  この数字を使ってか使わずか、「AKB48の経済効果200~300億円」といっている人の、何が疑わしいか? それは、代替の作用を考えていないからだ。たとえば、AKB48のCDを買う人がいる。何枚も買い集めれば、そのぶんのお金を捻出するために、何かをケチる。お金は無限ではない。3000円を払うことで、犠牲になり売れなくなった商品があるはずだ。それはほかのアーティストのCDかもしれないし、あるいは夕飯のおかずが1つ減らされるかもしれない。そのマイナスぶんを考慮しないと、本当の経済効果は出ない。そして、「阪神優勝で600億円」「なでしこ効果は1兆円」などの巷間に流布する経済効果値には、そのマイナスぶんが考慮されていない。この意味で、アイドルにかかわる景気のいい経済効果予測はほとんど意味がない。もっといえば、ニュースで流れる多数の経済効果予測は意味がないと私は思う。  確かに、各アイドルグループの売上や利益は相当なものだ。しかし、それは日本経済に直接波及し、全体のパイを膨らませるものではない。アイドルは文字どおり「偶像」として楽しむ程度がふさわしい。  ところで、私はAKB48がまったく日本経済に影響しないといいたいのだろうか? とんでもない。もし海外でAKB48のコンテンツが売れれば、相殺対象は日本商品でなくなる。その意味で、私たちが応援すべきは、彼女たちの海外進出だ。  "ぼくたちの"アイドル、から、"世界の"アイドルへの脱皮。 「全日本国民的美少女コンテスト」に応募する美少女たちの目標が、"全日本"ではなく"全世界"であることを祈る。 (文=坂口孝則/株式会社アジルアソシエイツ取締役、物流コンサルタント) ※このほかにも「Business Journal」には、ビジネスパーソンを刺激する記事が満載!ぜひご覧ください! ■そのほかの記事(一部抜粋) 「ベンチャー経営者」起用するCMモデルは合コンでリサーチ!? フォロー返ししたらスパムが! ツイッターでも横行する詐欺の手口 JAL機長、血まみれ骨折でもフライトするこれだけの理由