
「週刊ポスト」4月27日号
グランプリ
「原発再稼働の大嘘」(「週刊ポスト」4月27日号)
第2位
「『石川遼』傲岸チンピラ親父の『スポーツ記者』暴行事件」(「週刊新潮」4月19日号)
第3位
「朝日『消費増税』礼賛と、国税調査」(「週刊現代」4月28日号)
東京の桜がようやく散った。桜の散り方が潔いなどと誰が言い出したのだろう。強風が吹いたり豪雨があったりすれば別だが、桜は咲き始めてから散るまで10日は楽しめる。
この時期、心せわしくて仕事が手につかない。あと幾たびの桜かな。そういう思いに急かされて、今日はどこの桜を見ようか、どこで花見の宴を開こうかと、都内を東奔西走する。
今年も向島の桜から始まり、飛鳥山、目黒川、千鳥ヶ淵、江戸川橋、哲学堂と徘徊し、日曜日には近くの植木屋で八重のしだれ桜まで買い込み、食卓の上に乗せて「家de花見」と洒落こんだ。花が散るのは寂しいが、これでようやく仕事に没頭できる。といってもそれほど仕事があるわけではないがね。
君は週刊ポストの新聞広告を見たか! よかったね~。「怒りを忘れた『週刊誌』なんて!」。この文句に痺れました。
ポストに同調したわけではないだろうが、今週は怒りを込めた特集が目立ったような気がする。
まず1本目の怒りは、週刊現代の朝日新聞批判記事。
私も前々から、新聞はなぜ消費税増税に賛成の大合唱なのだろうと不思議に思っていた。それに、次々に発覚する新聞社の申告漏れ。朝日新聞が4,800万円の所得隠し、2億円超の申告漏れがあったと3月30日の読売新聞が報じたし、4月10日には日経新聞が3年間で約3億3,000万円の申告漏れがあったと、自ら報じている。
現代によれば、読売も2009年に修正申告しているし、消費税増税に反対の立場をとっていた産経新聞にも昨年、東京新聞も最近2度の税務調査が入っているという。
東京国税局=国税庁の母体はいわずと知れた増税の総本山、財務省である。なんとしてでも消費税アップをやり遂げたい財務省が、消費税反対などしないように新聞社に“圧力”をかけたと推察する。
新聞社だけではなく、メディアにとって税務調査は鬼門である。取材相手を明らかにできない取材費や謝礼など、当局が叩けばいくらでも埃が出てくるからだ。
私がいた出版社でも税務署対策なのだろう、国税庁の大物OBを顧問のような形で入れていた。国税の人間から依頼された学生は優先的に採用せざるを得ないと、人事担当者が嘆いていたことを思い出す。
そうした圧力が功を奏したのかもしれない。中でも朝日新聞は社を挙げて消費税導入すべしと前のめりの論調が目立つ。
3月31日付の社説「やはり消費税増税は必要だ」では、「増税から逃げ出さずに早く決断することが大切だ」。4月6日付社説「消費税増税と政治――言い訳やめて、本質論を」では、「有権者の審判は消費税増税を決めたあとに仰げばいい。民主党の公約違反の責任はそのときにとってもらおう」と、増税したら民主党などどうなろうと構わないと思える論調である。
朝日の論説委員の一人は社内の空気についてこう語っている。
「消費税増税については『国家財政が傾いているのだから、増税は当然』というのが大前提で、増税に反対だという意見は出たことがありません。(中略)消費税増税による庶民の痛みをどうするか、といったようなことは議論の対象にすらなりませんね」
このときとばかりに、勝栄二郎財務省事務次官を始め、財務省の面々がマスコミ懐柔に走り回っている。その結果、各紙の社説に同じようなフレーズが出てくると、現代は指摘している。
「4月6日付社説に出てきた『決められない政治からの脱却』というフレーズがそうだ。同じ言葉は、3月31日付『日経新聞』社説、同『毎日新聞』社説、4月10日付『産経新聞』主張(社説)にも登場する」
真壁昭夫信州大学教授はこう言う。
「消費増税は、財政の立て直しの段階でいつか必要になります。ただタイミングを誤れば、96年の増税のあと金融危機が起きたように、日本経済にとって致命的な打撃になる。どう見ても、現状では消費税を上げることはリスクが高い」
ことは消費税増税問題だけではない。現代が言っているように、大新聞が一斉に同じ方向を向くことがいかに危険なことかは、これまで数々の忌まわしい過去が証明している。
4月16日付の朝日新聞に世論調査の結果が載っている。
「定期検査で停止中の関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を野田内閣が妥当と判断したことについて、賛成は28%にとどまり、反対は55%にのぼった。内閣支持率は25%で、下落傾向が続いている」
その中で消費税増税に賛成かどうかについても聞いている。
「賛成は40%で、反対の51%の方が多かった。法案の国会提出前の3月調査では、消費増税に賛成41%、反対46%で、差がやや開いた」
いくら新聞が大増税キャンペーンを繰り広げても、国民の半数以上は「NO」だといっているのだ。この世論を無視して、増税早くやれとキャンペーンを続けるつもりなのだろうか。「消費税増税を争点にして解散総選挙せよ」というのが民意であるはずだ。
2位は新潮の石川遼の父親批判の記事。遼の「傲岸チンピラ親父」が日刊スポーツの記者に「暴行」を働いたというのだ。
新潮によれば、日刊スポーツが3月22日付けで「遼 米ツアー参戦へ、専用ジェットに家探し」と報じたことに父・勝美氏が怒り、フロリダに来ていた記者に訂正と謝罪文を掲載しろと迫ったとき、暴力を振るったというのである。
現地の大会関係者がこう証言する。
「突然、壮年の男が記者のふくらはぎのあたりを右足で思い切り蹴ったのです。記者は抗議しているようでしたが、男はさらに激昂した様子で続けざまに3回ぐらい、同じ場所を蹴り上げた。(中略)その様子はキャディーやら大会ボランティアなど複数が目撃していますよ」
日本を出て海外を拠点に試合をすることになると、契約している日本の企業にメンツが立たないというのが、怒りの理由なんだそうだ。
こうまでされて抗議しない日刊スポーツもどうかと思うが、同じことを報じている週刊文春によれば、そうまでされた意地が、4月8日付けのスクープ「遼 婚約&今オフ結婚」になったというのだ。
昨年から1勝もできず、マスターズも屈辱の予選敗退。カワイイ婚約者もいるのに、この困った親父のおかげで遼の前途は洋々とはいかないようだ。
と、ここまでなら正直、2位にしなくてもいいかなと思ったのだ。これよりも、同じ新潮の猫ひろしの記事、「『猫ひろし』五輪切符は金で買われた!」は、カンボジアのナンバーワン・マラソンランナー、ヘム・ブンティン(26)に8時間インタビューして、こう言わせているからだ。
「(中略)僕の自己ベストを超えたこともない。どうしてそんな選手がカンボジアの国旗を背負ってオリンピックに出場できるんだ! 簡単なことだろう、お金だ。お金を払って国籍を買い、オリンピック出場権も買ったんだよ」
また、国際陸連は最近、国籍変更後の国際大会出場についての規則を改正し、居住期間が1年を切っている場合は、例外を除いて五輪に出場できないとしている。猫のカンボジア国籍取得は去年の10月で五輪は8月だから1年に満たない。
「今回のような“背景”を国際陸連が知れば、例外適用が認められる可能性は低い」(スポーツ紙デスク)
4月15日に行われたパリ・マラソンでブンティンが猫のタイムを7分近く上回ったため、「昨年10月にカンボジア国籍を取得した猫をめぐって、国際陸連が参加資格を疑問視。五輪参加が認められない可能性も浮上する中での、ライバルの好走。最後は『僕はこの現実をしっかり受け止めます』としている」(4月16日付スポーツニッポン)という。
だが、月曜日(4月16日)発売の現代とサンデー毎日を見て気が変わった。父・勝美氏のインタビューが両誌に掲載されているのだ。
現代の「石川遼の『婚約』家族はこう考えている」を読むと、勝美氏の危機感や焦燥感がうかがえる。中でも今回の婚約について、両親に相談することなく二人だけで出した結論だったことに、苛立ちを隠せないようである。
遼の婚約が早いからといって心配はしていないと言いながら、
「本当に遼が彼女と結婚するのかも分からないし、たとえ結婚せず別れたとしても『どうしたんだ?』と聞くことはないでしょう。(中略)彼女のことだって、いまは『いい子だな』と思っていますよ。でも、それが本当の姿なのか断言する自信はない」
と話している。これを彼女が読んだらどう思うか。
結婚をするということは親離れすることである。掌中の玉がどこの誰かも分からない女に奪われ、捨てていかれるのではないかという焦りが、記者たちへの傲慢な態度や暴力につながっているのではないか。
どこにでもある父と息子の葛藤の物語ではあるが、子離れできない父親ほど哀れなものはない。
今週のグランプリはポストの原発再稼働への怒りのメッセージにした。
ポストが書いているように、原発再稼働に慎重だったはずの野田佳彦首相や枝野幸男経産相が、
「4月3日の関係閣僚会合から、何かに取り憑かれたように再稼働に驀進する。野田首相が会合で『新たな安全基準をつくれ』と命じて新基準ができるまでが2日間、枝野氏が新基準をもとに関電に『安全対策を出せ』と指示してから提出まで3日間。わずか1週間足らずで安全かどうかの判断基準を決め、それに基づいて安全のお墨付きを与えるという離れ業を演じたのである」
そうして枝野は記者会見で「再稼働基準をおおむね満たしている」と言ってのけたことに、「『おおむね』で動かされてはたまらない。あのアホの繰り言『ただちに影響ない』と同じ詐欺的論法である」と怒る怒る。
原発推進の黒幕はあの仙谷由人で、野田や枝野が弱腰にならないかと、監視しているという。
野田や素人大臣を操っているのは経産省の「電力マフィア」で、その中心にいるのが今井尚哉資源エネルギー庁次長。原発再稼働には彼の出世がかかっているというのだ。
新基準は原子力安全・保安院の原子力発電検査課が、原発推進派の学者や東京電力の技術者を集めて開いた「意見聴取会」でまとめられたもので、「“これでも出しておけ”と手元にあった文書をそのまま提出したというのが真相だろう」と容赦ない。
さらに水素爆発の対策として、大飯原発にフィルター付きのベント設備を設置するとしたが、発表された工程表では整備期限は3年後になっているのはおかしいと批判する。
ポストは以前から、原発がなくても電力不足にはならないというキャンペーンをやってきた。
今回も、大飯原発が再稼働できなければ夏に大停電になるという「官製デマ」と、それに無批判に同調する大新聞を難じている。
「デタラメだから安心していい」とまで言い切る。非常時の電力である揚水発電を少なく見積もっている「電力隠し」があり、企業の非常用電源などを入れれば、「この夏の電力各社のピーク時電力使用量が記録的猛暑だった10年と同じだったとしても、『原発再稼働なし』で乗り切れる」とする。
週刊朝日の広瀬隆・緊急寄稿でも、「今年の25%電力不足というデマは、昨年よりひどい大嘘の最大電力需要3138万kWという、あり得ない想定をして、電力不足を煽った結果であった」と書いている。
先に触れた朝日新聞の世論調査でも、大飯原発再稼働には圧倒的に反対が多いのである。福島第一原発事故からまだ1年と少しである。いまだに事故原因の究明も進んでいないのに、再稼働するなどというのは天が許さない。
ポストや広瀬の試算がどれだけ正しいのか、私には判断材料がない。だが、原発再稼働には、国民一人一人が大停電したとしても仕方ないという覚悟をもって反対しないと、ずる賢い役人やそれを後押しする大メディアと闘うことはできまい。
何度も言うが、国の将来を決める「消費税増税」と「原発再稼働か否か」の大問題を争点にして総選挙をするべきである。そのための判断材料として、週刊誌は新聞・テレビが報じない情報を発信し続けてほしいと切に思う。
(文=元木昌彦)

1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか








