祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』

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“北関東3部作”完結編となる
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』。
夢を追い掛けて故郷を離れたマイティのその後が描かれる。
 夢を追い掛けているつもりだったが、いつの間にか現実から逃避しているだけなことに気が付いた。埼玉のブロッコリー畑育ちのマイティは夢をその手でもぎ取るために東京に向かったが、知らず知らずにいろんなものから逆に追い掛けられるはめに陥った。お金にシビアな怖い大人たち、警察、東京でトラブルを起こしてバックレたバンドのメンバー……、みんなでマイティを押さえつけようとする。長回しで繰り広げられるこのクライマックスシーンは、観ている人間をひどく息苦しくする。マイティがいろんなものから追われているように、この映画を観ている自分もいろんなものに追われている。毎月の家賃の支払いだとか、滞納気味の国保だとか年金だとか、今の仕事に未来はあるのかとか、付き合っている彼女とのケジメはどうすんのとか、実家をめぐる火種とか、切実な問題がすぐ後ろから首根っこを捕らえようと手を伸ばして迫ってきている。入江悠監督の地元・埼玉県深谷市を舞台にした『SRサイタマノラッパー』(08)、群馬在住のアラサー女子の葛藤を描いた『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー★傷だらけのライム』(10)に続く『SR』シリーズの第3弾。『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』は“北関東3部作”の完結編となる作品だ。前2作が切なくもおかしいコメディだったのに対し、本作はシリアスな作風へと大きく振り切れている。
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『SR1』で東京へ出ていったマイティ(奥野
瑛太)が『SR3』の主人公。鬱屈した日々
の中で、溜め込んだ情念をMCバトルで
爆発させる。
 『SR』シリーズは、入江監督にとってリアルな自分自身の進行形の物語だ。日大芸術学部を卒業して念願の映画監督になったものの、キャリア不足、ネームバリュー不足、予算不足のないない尽くしで、ままならない日々が続く。もう20代も終わりが近づき、貯金残高も残すところあと僅か。ギリギリに追い詰められた自分の心境を、ニートなダメラッパーのイックら登場キャラクターたちのラップに重ねた。『SR』シリーズは同じような境遇にある地方在住もしくは地方出身者たちの共感を集め、インディーズ映画としては異例のロングランヒットに。入江監督は全国各地の映画館に呼ばれてせっせと舞台挨拶に出掛けたが、その分生活費を稼ぐことができずに、余計に生活は苦しくなった。一時的に深谷の実家に戻るはめに。しばらくして、いろんなところからオファーの声が掛かるようになったが、今度は殺人的スケジュールを乗り切らなくてはならないという別のシビアさに直面する。最初のステージは全力でぶつかることで何とかクリアできたものの、新しいステージではより面倒な難敵たちが手ぐすね引いて待ち構えていた。
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『ムカデ人間』(09)のムカデ人間第1号
として国際的な注目を集めた北村昭博が
「極悪鳥」のメンバー役。今まで以上に
配役もグレードアップ。
 『SR3』の主人公はお調子者のMC・マイティ。『SR1』でイックやトムと一緒にヒップホップグループ「SHO-GUNG」のメンバーとして初ライブする日が来ることを待ちこがれていた。でも、夕方になると真っ暗になる地元の街にはライブハウスはおろかクラブもCDショップもない。一度、公民館でラップを大人たちの前で披露したけど、大恥ぶっこいた。夢を叶えるなら、やっぱり東京に出たほうがチャンスに近い。そう考えたマイティは、イックとトムを裏切るようにして故郷を後にした。これも夢を叶えるためだ。東京で人気ラップグループ「極悪鳥」の見習いメンバーになるものの、実際はただのパシリでステージに立たせてもらえない。福島出身のポッチャリ娘・一美と同棲しているが、まだ自分のラップを聴かせることもできずにいる。昼は日雇い労働で、夜はパシリというサイアクな生活。実家でブロッコリーを収穫しながら、イックやトムと曲づくりしていた日々がずいぶん昔に感じられる。ある日、メンバー入りの約束を反故されたマイティはキレて、メンバーをボコボコに。一美を連れて流れ者となったマイティは、栃木で盗難車の転売を手掛ける違法業者の下請けに身をやつす。夢を叶えるどころか、もはや裏社会の人間になりつつあった。そんな中で、違法業務を仕切るコワモテの胴元から詐欺まがいの野外フェスを開くように命じられる。その野外フェスにカモがネギを背負うようにひょこひょこと現われたのが、相変わらず能天気にラップを続けていたイックとトム。3人はあまりにも皮肉な形で再会することになる。
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埼玉のラップグループ「SHO-GUNG」
のMC、デブニートのイック(駒木根隆介)
と日和見主義のトム(水澤紳吾)。今回は
栃木にやって来ました♪
 夢が重たい。いつから、こんなにも“夢”を持つことが重要視される社会になったのだろうか。人気アーティストは「夢を追い掛けているあなたが好き」と歌い、人気ドラマの主人公は「夢はあきらめない限り、必ず叶う」とのたまう。本当にそうなのか? いや、違う。「夢を持て」とか「夢に向かって走れ」とか言っといたほうが、楽で口当たりがいいから彼ら・彼女らは口走っているだけなのだ。夢の正体を見極めた上で身の程を知りましょう、甘言に惑わされずにまずは生活能力を身に付けましょう、ある段階で路線変更することも視野に入れましょう……そういう地味なテーマでは歌やドラマにしにくいからスルーされる。若者たちに理解を示す寛容な大人のふりをしたエンタメ業界の詐欺師たちは「ビッグな夢をつかもう」「夢に向かってはばたけ」とお題目のように繰り返す。これでは射幸心を煽る新興宗教「ドリーム教」だ。作詞家やドラマの製作者は詐欺罪で捕まる心配がないので、手抜きかつ無責任に「夢」「夢」「夢」と連呼する。主人公が夢を追って走っていく様子が歌やドラマのエンディングを飾る。でも、夢を追い続けて引き返せなくなった人たちの屍が、崖の下には累々と重なっていることに言及する人は極めて少ない。  残念なことにさほどヒットしなかったが、北野武監督&主演作に『アキレスと亀』(08)がある。少年の頃に絵がうまいと誉められた主人公・万知寿は夢を叶えて画家となるが、特出した才能に恵まれていたわけではなかった。そのため、中年になった万知寿の一家は生活にきゅうきゅうとし、離散するはめになるという辛口ドラマだ。アキレスと亀の足並みが一生揃うことがないことに例え、自分の夢を叶えることと幸せな家庭生活を送ることは別問題であることが描かれている。『アキレスと亀』の公開時に北野監督に話を聞いたところ、北野監督は若い頃は数学者になるのが夢だったと語った。でも、自分が数学者として食べていくことは明らかに無理なことが分かっていたので、お笑いの世界に入ったそうだ。「自分が成りたかった職業に就けなかったんだからさ、せめてその世界で売れなくちゃ」という想いで舞台に上がっているうちに、運良くお笑いブームに乗ってツービートとして売れっ子になった。ビートたけしとしての人気と名声は、叶えられなかった夢の代償だった。  話を『SR』シリーズに戻そう。2009年に池袋シネマ・ロサで『SR1』が公開され、3年間にわたって邦画界を盛り上げてきた『SR』シリーズ。入江監督の代名詞ともなった『SR』シリーズは今後どうなるのか。一時は全都道府県を走破するプランも浮上していたが、『SR3』のラストシーンを見る限り、シリーズはいったん封印されることになりそうだ。入江監督の熱いスピリットは、分厚い壁の中に収容される。それだけに、エキストラ2,000人を動員した野外フェスでの長い長い長回しシーンは息苦しく、ひりひりと胸がうずく。観る者にも痛みを伴うフィナーレだ。  『SR3』は、入江監督にとって自身の青春時代のくすぶったネガティブな感情とか、劇中に登場するマイティやイック、トムたちの壊れてしまった夢とかハンパな希望とか、そんな一切合切を燃焼させる“祭り”である。同時に、入江監督がよりメジャーな次のステージに進むための“通過儀礼”でもある。3年間にわたって日本のインディーズシーンを熱くしてきた『SR』という名の祭りの最後の幕が開く。入江監督が『SR』の封印を再び解くことになるのは、何年後になるだろうか。そのときには入江監督は、どのような作風の監督になっているのだろうか。そして、『SR』を追い掛けていた自分たちはどんな風になっているんだろうか。『SR3』で感じた胸のうずきは、多分そのときまで続くはずだ。 (文=長野辰次) sr35.jpg 『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 監督・脚本・編集/入江悠 出演/奥野瑛太、駒木根隆介、水澤紳吾、斉藤めぐみ、北村昭博、永澤俊矢、ガンビーノ小林、美保純 配給/SPOTTED PRODUCTION 4月14日(土)より渋谷シネクイントほかにて全国順次ロードショー、4月21日(土)より渋谷シネクイントほかにて『SR』シリーズ全作上映 <http://sr-movie.com> (c)2012「SR3」製作委員会 ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第165回]すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史 [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! [第161回] 鬼才キム・ギドクの"多重人格ショー"セルフドキュメンタリー『アリラン』 [第160回]映画創成期に散った"殉教者"への聖歌 3D映画『ヒューゴの不思議な発明』 [第159回]これはホラー? それともコメディ? 勘違い女が爆走『ヤング≒アダルト』 [第158回] ピラミッドは古代からのメッセージ!? 歴史ミステリー『ピラミッドの謎』 [第157回] 韓国映画の名匠が明かす"創作の極意"イ・チャンドン監督『ポエトリー』 [第156回] ローカル局で"伝説となった男"の生涯『木村栄文レトロスペクティブ』 [第155回] 米国に半世紀も君臨した"影の大統領" FBI初代長官『J・エドガー』 [第154回]犯罪者たちに学ぶ"人心掌握術"の奨め『アニマル・キングダム』『預言者』 [第153回]"地獄"からの生還者・板尾創路の凄み 古典落語を過激に脚色『月光ノ仮面』 [第152回]早くも2012年ベスト1映画が登場!"代理殺人"を巡る恐怖『哀しき獣』 [第151回]父殺し、自分殺し、そして再生の物語 園子温流ラブストーリー『ヒミズ』 [第150回]米国お笑い横断旅行『宇宙人ポール』人間のちっぽけな悩みはETが解決! [第149回]70年前と変わらない日本人の精神構造『聯合艦隊司令長官 山本五十六』 [第148回]追悼......"永遠の反逆児"原田芳雄さん幻の主演作『原子力戦争』がDVD化 [第147回]"ファスト風土"を舞台にした犯罪喜劇 J・アイゼンバーグ主演『ピザボーイ』 [第146回]"正義のゾンビ"が犯罪者を貪り喰う! イラク戦争奇談『ゾンビ処刑人』 [第145回] "時代の寵児"の未ソフト化作品上映!「松江哲明グレイテスト・ヒッツ」 [第144回]原発事故を描いた『カリーナの林檎』と今関あきよし監督の背負った贖罪 [第143回]"窮屈なモラル"を脱ぎ捨てた裸の女たち 園子温監督の犯罪エロス『恋の罪』 [第142回]ノーベル賞作家・川端康成が夢想した新風俗『スリーピングビューティー』 [第141回]横暴な上司は有志社員が制裁します!『モンスター上司』のブラックな笑い [第140回]"クソみたいな社会を変えたい!"高校生テロリストの凄春『アジアの純真』 [第139回] うつ病なんかヘーキ!? 宮崎あおい主演作『ツレがうつになりまして。』 [第138回]"神話"が生まれる瞬間を目撃せよ! 人類への黙示録『猿の惑星:創世記』 [第137回]刑務所で食する至高の味『極道めし』ヒロインの後ろ姿に、むせび泣き! [第136回]"理想の恋人"という偶像を破壊せよ 深夜番長の劇場デビュー作『モテキ』 [第135回]"城定秀夫監督、ブレイク前夜の予感! 闘争本能を呼び覚ます『タナトス』 [第134回]"人間失格"の道を選んだ映画監督の業 林由美香の最新主演作『監督失格』 [第133回]ホラ吹きのホラを見破る特異な職能 ポランスキー監督『ゴーストライター』 [第132回]芦田愛菜、6歳にして危険な魅力!? 子連れで全力疾走『うさぎドロップ』 [第131回]元"暴走族"が書いた旧友への鎮魂歌 青春懺悔録『アメイジング グレイス』 [第130回]V・ギャロ主演のサバイバルグルメ!? 『エッセンシャル・キリング』 [第129回]『キック・アス』より悪趣味で泣ける 中年男の悪ノリ暴走劇『スーパー!』 [第128回]この夏の清涼剤、地方少女のダンス成長記『あぜみちジャンピンッ!』 [第127回]竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸 [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! 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祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』

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“北関東3部作”完結編となる
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』。
夢を追い掛けて故郷を離れたマイティのその後が描かれる。
 夢を追い掛けているつもりだったが、いつの間にか現実から逃避しているだけなことに気が付いた。埼玉のブロッコリー畑育ちのマイティは夢をその手でもぎ取るために東京に向かったが、知らず知らずにいろんなものから逆に追い掛けられるはめに陥った。お金にシビアな怖い大人たち、警察、東京でトラブルを起こしてバックレたバンドのメンバー……、みんなでマイティを押さえつけようとする。長回しで繰り広げられるこのクライマックスシーンは、観ている人間をひどく息苦しくする。マイティがいろんなものから追われているように、この映画を観ている自分もいろんなものに追われている。毎月の家賃の支払いだとか、滞納気味の国保だとか年金だとか、今の仕事に未来はあるのかとか、付き合っている彼女とのケジメはどうすんのとか、実家をめぐる火種とか、切実な問題がすぐ後ろから首根っこを捕らえようと手を伸ばして迫ってきている。入江悠監督の地元・埼玉県深谷市を舞台にした『SRサイタマノラッパー』(08)、群馬在住のアラサー女子の葛藤を描いた『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー★傷だらけのライム』(10)に続く『SR』シリーズの第3弾。『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』は“北関東3部作”の完結編となる作品だ。前2作が切なくもおかしいコメディだったのに対し、本作はシリアスな作風へと大きく振り切れている。
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『SR1』で東京へ出ていったマイティ(奥野
瑛太)が『SR3』の主人公。鬱屈した日々
の中で、溜め込んだ情念をMCバトルで
爆発させる。
 『SR』シリーズは、入江監督にとってリアルな自分自身の進行形の物語だ。日大芸術学部を卒業して念願の映画監督になったものの、キャリア不足、ネームバリュー不足、予算不足のないない尽くしで、ままならない日々が続く。もう20代も終わりが近づき、貯金残高も残すところあと僅か。ギリギリに追い詰められた自分の心境を、ニートなダメラッパーのイックら登場キャラクターたちのラップに重ねた。『SR』シリーズは同じような境遇にある地方在住もしくは地方出身者たちの共感を集め、インディーズ映画としては異例のロングランヒットに。入江監督は全国各地の映画館に呼ばれてせっせと舞台挨拶に出掛けたが、その分生活費を稼ぐことができずに、余計に生活は苦しくなった。一時的に深谷の実家に戻るはめに。しばらくして、いろんなところからオファーの声が掛かるようになったが、今度は殺人的スケジュールを乗り切らなくてはならないという別のシビアさに直面する。最初のステージは全力でぶつかることで何とかクリアできたものの、新しいステージではより面倒な難敵たちが手ぐすね引いて待ち構えていた。
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『ムカデ人間』(09)のムカデ人間第1号
として国際的な注目を集めた北村昭博が
「極悪鳥」のメンバー役。今まで以上に
配役もグレードアップ。
 『SR3』の主人公はお調子者のMC・マイティ。『SR1』でイックやトムと一緒にヒップホップグループ「SHO-GUNG」のメンバーとして初ライブする日が来ることを待ちこがれていた。でも、夕方になると真っ暗になる地元の街にはライブハウスはおろかクラブもCDショップもない。一度、公民館でラップを大人たちの前で披露したけど、大恥ぶっこいた。夢を叶えるなら、やっぱり東京に出たほうがチャンスに近い。そう考えたマイティは、イックとトムを裏切るようにして故郷を後にした。これも夢を叶えるためだ。東京で人気ラップグループ「極悪鳥」の見習いメンバーになるものの、実際はただのパシリでステージに立たせてもらえない。福島出身のポッチャリ娘・一美と同棲しているが、まだ自分のラップを聴かせることもできずにいる。昼は日雇い労働で、夜はパシリというサイアクな生活。実家でブロッコリーを収穫しながら、イックやトムと曲づくりしていた日々がずいぶん昔に感じられる。ある日、メンバー入りの約束を反故されたマイティはキレて、メンバーをボコボコに。一美を連れて流れ者となったマイティは、栃木で盗難車の転売を手掛ける違法業者の下請けに身をやつす。夢を叶えるどころか、もはや裏社会の人間になりつつあった。そんな中で、違法業務を仕切るコワモテの胴元から詐欺まがいの野外フェスを開くように命じられる。その野外フェスにカモがネギを背負うようにひょこひょこと現われたのが、相変わらず能天気にラップを続けていたイックとトム。3人はあまりにも皮肉な形で再会することになる。
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埼玉のラップグループ「SHO-GUNG」
のMC、デブニートのイック(駒木根隆介)
と日和見主義のトム(水澤紳吾)。今回は
栃木にやって来ました♪
 夢が重たい。いつから、こんなにも“夢”を持つことが重要視される社会になったのだろうか。人気アーティストは「夢を追い掛けているあなたが好き」と歌い、人気ドラマの主人公は「夢はあきらめない限り、必ず叶う」とのたまう。本当にそうなのか? いや、違う。「夢を持て」とか「夢に向かって走れ」とか言っといたほうが、楽で口当たりがいいから彼ら・彼女らは口走っているだけなのだ。夢の正体を見極めた上で身の程を知りましょう、甘言に惑わされずにまずは生活能力を身に付けましょう、ある段階で路線変更することも視野に入れましょう……そういう地味なテーマでは歌やドラマにしにくいからスルーされる。若者たちに理解を示す寛容な大人のふりをしたエンタメ業界の詐欺師たちは「ビッグな夢をつかもう」「夢に向かってはばたけ」とお題目のように繰り返す。これでは射幸心を煽る新興宗教「ドリーム教」だ。作詞家やドラマの製作者は詐欺罪で捕まる心配がないので、手抜きかつ無責任に「夢」「夢」「夢」と連呼する。主人公が夢を追って走っていく様子が歌やドラマのエンディングを飾る。でも、夢を追い続けて引き返せなくなった人たちの屍が、崖の下には累々と重なっていることに言及する人は極めて少ない。  残念なことにさほどヒットしなかったが、北野武監督&主演作に『アキレスと亀』(08)がある。少年の頃に絵がうまいと誉められた主人公・万知寿は夢を叶えて画家となるが、特出した才能に恵まれていたわけではなかった。そのため、中年になった万知寿の一家は生活にきゅうきゅうとし、離散するはめになるという辛口ドラマだ。アキレスと亀の足並みが一生揃うことがないことに例え、自分の夢を叶えることと幸せな家庭生活を送ることは別問題であることが描かれている。『アキレスと亀』の公開時に北野監督に話を聞いたところ、北野監督は若い頃は数学者になるのが夢だったと語った。でも、自分が数学者として食べていくことは明らかに無理なことが分かっていたので、お笑いの世界に入ったそうだ。「自分が成りたかった職業に就けなかったんだからさ、せめてその世界で売れなくちゃ」という想いで舞台に上がっているうちに、運良くお笑いブームに乗ってツービートとして売れっ子になった。ビートたけしとしての人気と名声は、叶えられなかった夢の代償だった。  話を『SR』シリーズに戻そう。2009年に池袋シネマ・ロサで『SR1』が公開され、3年間にわたって邦画界を盛り上げてきた『SR』シリーズ。入江監督の代名詞ともなった『SR』シリーズは今後どうなるのか。一時は全都道府県を走破するプランも浮上していたが、『SR3』のラストシーンを見る限り、シリーズはいったん封印されることになりそうだ。入江監督の熱いスピリットは、分厚い壁の中に収容される。それだけに、エキストラ2,000人を動員した野外フェスでの長い長い長回しシーンは息苦しく、ひりひりと胸がうずく。観る者にも痛みを伴うフィナーレだ。  『SR3』は、入江監督にとって自身の青春時代のくすぶったネガティブな感情とか、劇中に登場するマイティやイック、トムたちの壊れてしまった夢とかハンパな希望とか、そんな一切合切を燃焼させる“祭り”である。同時に、入江監督がよりメジャーな次のステージに進むための“通過儀礼”でもある。3年間にわたって日本のインディーズシーンを熱くしてきた『SR』という名の祭りの最後の幕が開く。入江監督が『SR』の封印を再び解くことになるのは、何年後になるだろうか。そのときには入江監督は、どのような作風の監督になっているのだろうか。そして、『SR』を追い掛けていた自分たちはどんな風になっているんだろうか。『SR3』で感じた胸のうずきは、多分そのときまで続くはずだ。 (文=長野辰次) sr35.jpg 『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 監督・脚本・編集/入江悠 出演/奥野瑛太、駒木根隆介、水澤紳吾、斉藤めぐみ、北村昭博、永澤俊矢、ガンビーノ小林、美保純 配給/SPOTTED PRODUCTION 4月14日(土)より渋谷シネクイントほかにて全国順次ロードショー、4月21日(土)より渋谷シネクイントほかにて『SR』シリーズ全作上映 <http://sr-movie.com> (c)2012「SR3」製作委員会 ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第165回]すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史 [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! [第161回] 鬼才キム・ギドクの"多重人格ショー"セルフドキュメンタリー『アリラン』 [第160回]映画創成期に散った"殉教者"への聖歌 3D映画『ヒューゴの不思議な発明』 [第159回]これはホラー? それともコメディ? 勘違い女が爆走『ヤング≒アダルト』 [第158回] ピラミッドは古代からのメッセージ!? 歴史ミステリー『ピラミッドの謎』 [第157回] 韓国映画の名匠が明かす"創作の極意"イ・チャンドン監督『ポエトリー』 [第156回] ローカル局で"伝説となった男"の生涯『木村栄文レトロスペクティブ』 [第155回] 米国に半世紀も君臨した"影の大統領" FBI初代長官『J・エドガー』 [第154回]犯罪者たちに学ぶ"人心掌握術"の奨め『アニマル・キングダム』『預言者』 [第153回]"地獄"からの生還者・板尾創路の凄み 古典落語を過激に脚色『月光ノ仮面』 [第152回]早くも2012年ベスト1映画が登場!"代理殺人"を巡る恐怖『哀しき獣』 [第151回]父殺し、自分殺し、そして再生の物語 園子温流ラブストーリー『ヒミズ』 [第150回]米国お笑い横断旅行『宇宙人ポール』人間のちっぽけな悩みはETが解決! 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いいとも「テレフォンショッキング」、リニューアルの真相をゲストに直撃!

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『タモリ2』(Sony Music Direct)

 今秋で放送開始から30周年を迎える『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の人気コーナー「テレフォンショッキング」の内容が、9日の放送回より突然リニューアルされた。

 タモリが「明日来てくれるかな?」と呼びかけると、電話口の次回ゲストが「いいとも!」と応える流れはコーナー開始時から一貫されてきた。同コーナーに使われていた「友達の輪」というキャッチフレーズの通り、ゲストが意外な有名人との繋がりを明らかにすることも、長年の間視聴者を惹きつけてきた魅力のひとつだろう。

まさにはまり役! 『三毛猫ホームズの推理』で相葉雅紀の役者評価が急上昇!?

【ハピズムより】

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ダメダメっぷりがツボです!

――人気の低迷やウワサに振り回され、人には言えない悩みを抱える芸能人。彼らをさまざまな鑑定方法で勝手に占い、今後も飛躍し続けることができる成功への道へとお導きいたします。今回鑑定する芸能人はこのお方。

■今回のターゲット
相葉雅紀
1982年12月24日生まれ

 4月14日スタートのドラマ『三毛猫ホームズの推理』(日本テレビ系)に主演する相葉さん。嵐のリーダー・大野智さんも同時期にスタートするフジテレビ系連続ドラマ『鍵のかかった部屋』に主演し、嵐のメンバー同士の“連ドラ主演対決”に注目が集まっています。今回の相葉さん主演のドラマはヒットするでしょうか? 「M-FORTUNE」の牛島嶺豪先生に霊感霊視、タロット、四柱推命で鑑定してもらいました。

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タモリもやる気ゼロ……『笑っていいとも!』テレフォンコーナー改新の断末魔

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フジテレビ『笑っていいとも!』公式サイトより
 1982年10月にスタートし、今年10月で放送開始30周年を迎えるお昼の長寿バラエティー番組『笑っていいとも!』の4月9日の放送で、まさにサプライズのリニューアルが行われた。  唯一、放送開始当初から現在まで続いている名物コーナー「テレフォンショッキング」で翌日のゲストを紹介する「友達紹介」が、その日のゲストによる生電話から、タモリが「明日のゲストを紹介します」と切り出し、パネルに翌日のゲストが表示される形式に変更となったのだ。  9日の同コーナーには、バイオリニストの高嶋ちさ子が出演。タモリから翌日のゲストとして女優・水川あさみが発表された後、つながった電話をタモリが直接受け取って水川と談笑し、そのまま「明日来てくれるかな?」と呼びかけた。  同局は突然のリニューアルについて、「新コーナーなども含め、あくまで番組の変化の一つ」「今春はこの形式で続ける」とコメントしているが、リニューアルされた原因は明らかだという。 「ゲストは多忙な芸能人ばかりで、あらかじめスケジュールは調整しているが、あくまでも表向きは“ガチンコ”でその日のゲストが生電話で出演交渉して、翌日のゲストに『いいとも!』と承諾させるのが売りだった。ところが、いつからか、その日のゲストと何のつながりもないのに、事務所が同じだとか、ドラマ・映画の宣伝で出演するゲストが続出。今年3月8日の放送では、ゲストの矢田亜希子が大竹しのぶを紹介したが、電話口で大竹に『初めまして、矢田亜希子と申します』と同番組においては放送事故レベルのあいさつ。大竹が数秒絶句の後、『こんにちは』と返したが、矢田は『いつかご縁があったときにはよろしくお願いします』と、またまたKYなあいさつをした。この一件が今回のリニューアルを決断させたようだが、矢田より少し前に出演した平野綾も自身のTwitterで明日のゲストとして呼ばれることを放送開始前に暴露したばかりか、スタッフと打ち合わせしたことまで書き込んでしまった」(テレビ関係者)  明らかなマイナス要因での看板コーナーリニューアルは番組の根幹に関わる一大事だが、局内では「区切りのいい30年で歴史に幕を閉じるべき」という声が圧倒的だという。 「とにかく、ここ数年は視聴率が低迷し、平均5~6%台に落ち込んでいる。今年2月7日に日本テレビ系の『ヒルナンデス!』が7.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で初めて同時間帯のトップに立ったが、それ以前から『いいとも』は同番組どころか、他局の後塵も拝していた。以前は、曜日ごとに趣向を凝らしたコーナーを考えていたが、最近は頭打ちで、曜日レギュラーの入れ替えも頻繁」(同)  もはや、『いいとも』の顔であるタモリ自体のやる気のなさが目立ち、同番組と比べ、自分の好きなテーマを取り上げる『ブラタモリ』(NHK)と『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)では生き生きした表情を浮かべているだけに、そろそろ潮時のような気がしてならないのだが……。

タモリもやる気ゼロ……『笑っていいとも!』テレフォンコーナー改新の断末魔

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フジテレビ『笑っていいとも!』公式サイトより
 1982年10月にスタートし、今年10月で放送開始30周年を迎えるお昼の長寿バラエティー番組『笑っていいとも!』の4月9日の放送で、まさにサプライズのリニューアルが行われた。  唯一、放送開始当初から現在まで続いている名物コーナー「テレフォンショッキング」で翌日のゲストを紹介する「友達紹介」が、その日のゲストによる生電話から、タモリが「明日のゲストを紹介します」と切り出し、パネルに翌日のゲストが表示される形式に変更となったのだ。  9日の同コーナーには、バイオリニストの高嶋ちさ子が出演。タモリから翌日のゲストとして女優・水川あさみが発表された後、つながった電話をタモリが直接受け取って水川と談笑し、そのまま「明日来てくれるかな?」と呼びかけた。  同局は突然のリニューアルについて、「新コーナーなども含め、あくまで番組の変化の一つ」「今春はこの形式で続ける」とコメントしているが、リニューアルされた原因は明らかだという。 「ゲストは多忙な芸能人ばかりで、あらかじめスケジュールは調整しているが、あくまでも表向きは“ガチンコ”でその日のゲストが生電話で出演交渉して、翌日のゲストに『いいとも!』と承諾させるのが売りだった。ところが、いつからか、その日のゲストと何のつながりもないのに、事務所が同じだとか、ドラマ・映画の宣伝で出演するゲストが続出。今年3月8日の放送では、ゲストの矢田亜希子が大竹しのぶを紹介したが、電話口で大竹に『初めまして、矢田亜希子と申します』と同番組においては放送事故レベルのあいさつ。大竹が数秒絶句の後、『こんにちは』と返したが、矢田は『いつかご縁があったときにはよろしくお願いします』と、またまたKYなあいさつをした。この一件が今回のリニューアルを決断させたようだが、矢田より少し前に出演した平野綾も自身のTwitterで明日のゲストとして呼ばれることを放送開始前に暴露したばかりか、スタッフと打ち合わせしたことまで書き込んでしまった」(テレビ関係者)  明らかなマイナス要因での看板コーナーリニューアルは番組の根幹に関わる一大事だが、局内では「区切りのいい30年で歴史に幕を閉じるべき」という声が圧倒的だという。 「とにかく、ここ数年は視聴率が低迷し、平均5~6%台に落ち込んでいる。今年2月7日に日本テレビ系の『ヒルナンデス!』が7.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で初めて同時間帯のトップに立ったが、それ以前から『いいとも』は同番組どころか、他局の後塵も拝していた。以前は、曜日ごとに趣向を凝らしたコーナーを考えていたが、最近は頭打ちで、曜日レギュラーの入れ替えも頻繁」(同)  もはや、『いいとも』の顔であるタモリ自体のやる気のなさが目立ち、同番組と比べ、自分の好きなテーマを取り上げる『ブラタモリ』(NHK)と『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)では生き生きした表情を浮かべているだけに、そろそろ潮時のような気がしてならないのだが……。