いつも似たような顔ぶればかりのテレビ番組。それらのタレントは、研音、スターダストプロモーション、オスカープロモーション、ホリプロ、アミューズ、そして吉本興業に渡辺プロダクションと、誰もが知っているような大手芸能プロに所属していることが多い。もしかして大手プロのタレントは、優先的に出演できる専用の枠を持っているんじゃないだろうか? ところが、芸能関係者に聞くと、「芸能プロが好き放題にキャスティングできるような"芸能プロ枠"なんて、基本的には存在しません」と口を揃えて証言する。ただし、「テレビ局側は、数字を持っている人(=高視聴率が取れる人)に出てもらいたいと考えている。そしてそれは、視聴者も同じではないでしょうか」とも語る。つまり、高い視聴率が取れる人気タレントは、生き残りを賭けるテレビ局にとっても、面白い番組を求める視聴者にとってもテレビに出てほしい存在。そういうタレントは大手プロ所属のことが多いから、結果としてそういう事務所に所属するタレントをテレビで観る機会が多くなるだけ、という論理である。 しかし、そうした"人気タレント"だってたくさんいる。やはり、ある特定のタレントを出演させるために、テレビ局と芸能プロとの間に"不適切な関係"はないのだろうか? これに対しても、バラエティとドラマどちらの関係者も、「ゴシップ誌を賑わすようなそうした"癒着"は、まずない」と断言する。 「確かにバブルの頃は、キャスティング権を握るプロデューサーに対し、芸能プロから実弾(現金)が贈られ、それで『家が建った』などと言われたことがありました。でも、今はどの局もコンプライアンスが厳しくなり、バレたら飛ばされるだけなので、まず起こらないことだと思います」(大手芸能プロ関係者) と、ごく健全な業務上のお付き合いであると強調する。 「ただ、以前から親しくしていたり、良い業績を上げたりした事務所とプロデューサーや制作会社が繰り返しタッグを組むことはありますよ。でも、それはテレビ業界に限らずどの業種も同じですよね」(同) その"同じメンバーと繰り返しタッグを組む"ということが、外側から見ると、特定の"芸能プロ枠"と映るのかもしれない。特にバラエティで、その傾向は強いという。 「例えば、フジテレビのバラエティ制作センターには、5~6ほどの派閥があります。『めちゃ×2イケてるッ!』に携わるナインティナインと親しい片岡飛鳥さん、『クイズ!ヘキサゴンⅡ』に携わり島田紳助と親しかった神原孝さん、石田弘さんやとんねるずと近い港浩一さんらの"港班"などです。その誰が担当するかによって、キャスティングがだいたい決まってきます。各プロデューサーは、『○○は必ず押さえられます』とタレント名を編成局にアピールし、自分の企画を通しやすくするわけです」(構成作家) 超大物級のダウンタウン、ナインティナイン、明石家さんまらは、そうした人脈によって自動的にキャスティングが決まっていく。すなわち、"プロデューサー=タレント枠"である。その下のクラスのロンドンブーツ1号2号、今田耕司、東野幸治、爆笑問題あたりになると、特定のプロデューサーと強いつながりを持っている、というほどのことはなく、ある程度自由に交渉してキャスティングできるという。さらに下のひな壇クラスのタレントは、企画の方向性や番組内の各事務所のバランスを考えて、適宜選ばれていく。つまり、タレントのランクによってキャスティング方法が異なるのだ。 またバラエティの場合、芸能プロが社内に制作部隊を持っていたり、あるいは制作会社を子会社に持っていたりすることも多い。その場合、必然的にその芸能プロのタレントが多く出演することになる。 「例えば、『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)は田辺エージェンシー、『ネプリーグ』(フジテレビ系)はワタナベエンターテインメントの制作部隊がそれぞれプロデューサーとして加わっています。日曜お昼の『ウチくる!?』(同)は、かつて放送されていた『クイズ・ドレミファドン!』の時代から伝統的にナベプロが企画制作、出演する"ナベプロ枠"と決まっています」(テレビ関係者) 正真正銘の"芸能プロ枠"があるとすれば、まさにこれ。事務所とテレビ局の長い付き合いの中で生まれたものである。 そのほか、メイン司会者がキャスティングにかかわる場合もある。 「出演者をすべて自分で決めていた島田紳助などは極端な例だとしても、人気司会者になればなるほど、キャスティングにある程度口を挟むことはよくあります。例えばビートたけしは、いまだに企画にきっちり意見をすることで有名。たけしが『この人と共演したい』と言えば、ノーと言えるスタッフはいませんね。松本人志もかつてはその傾向があり、『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)ではキャスティングにかなり口を出していましたが、芸人として"上がった"今は、わりと誰でもいいらしく、『爆笑 大日本アカン警察』(フジテレビ系)なんかでは何も言わないそう(笑)」(事情通) この場合は、プロデューサーや事務所よりもタレントの立場が強い"タレント個人枠"である。 ■所属タレントに有無を言わせない研音 一方ドラマにおいては、とにもかくにもまず主役。人気俳優・女優は、1年ほど前からスケジュールが押さえられているという。 「プライムタイムに放送されるようなドラマの場合、企画が決まっていない段階から、主役と相手役はほぼ決まっています。編成局、プロデューサー、事務所の幹部クラスの話し合いやあうんの呼吸によって決まっていくもので、現場のマネージャーレベルではよくわからない(笑)。所属プロの俳優が主演に起用されたら、脇に新人を入れてもらったり、主題歌に所属アーティストを起用してもらうといったバーター(抱き合わせ出演)はよくある話です」(芸能関係者) ただし、それをもって、事務所の力をかさに着た「芸能プロ枠」などと言われるのは「心外だ」と関係者は語る。なぜならば、たまたまその時その事務所の俳優が主演に起用されたからできた交渉ごとであって、事務所の思い通りにいつも俳優をねじ込めるような"枠"が用意されているわけではないからだ。 「仮に主演のオファーがあっても、事務所によっては役者の意向を尊重して、『企画が出来上がるまでなんとも言えない』と返事をすることもあるんです。例えば、福山雅治や上野樹里、吉高由里子らが所属するアミューズや、松雪泰子や中谷美紀らが所属するスターダストは、わりとタレントの意向を尊重するタイプの芸能プロ。逆に研音は役者をコントロールするのがうまく、土壇場で断ることがまずないので、制作側も安心して先々までキャスティングできる。『研音枠』といわれるほどドラマで研音が強いのには、そういう事情もあるんです」(事情通) 「噂によると、研音は歩率(俳優のギャラの取り分)が良いらしいんです。なので、企画その他に多少気に入らないことがあっても、役者は出演をOKするんです」(芸能関係者) 天海祐希や菅野美穂ら研音の俳優が毎クールどこかしらに出ているのも、りょうが身重の体を押しても1月クールの連ドラに出演するのも、そういった事情があるわけだ。 また、ジャニーズタレントが毎クール出演していたり、バーニング系のヴィジョンファクトリー所属の観月ありさが1年に1度は必ず連ドラ主演があるというのも、視聴者から見れば芸能プロの力による「ゴリ押し」のようにも見えるが、「なんだかんだで、ジャニーズタレントも観月ありさも"数字を持っている"のは否定できません」(芸能関係者)という。必ず"枠"が用意されているということは、すなわちそれだけ視聴率が取れるということも意味しているわけだ。 「ジャニー喜多川氏の一言で決まるような"トップ会談"によるゴリ押しも皆無とはいいません。けれど、大部分のキャスティングは、もっとシビアなもの。だって、知らないタレントじゃ視聴者も見ないでしょう? 11年4月期放送の『鈴木先生』(テレビ東京系)なんて、人気マンガが原作で、批評家からは評価が高かったけれど、当時まだ名が浸透してなかった長谷川博己(ヒラタオフィス)が主演で、平均視聴率はゴールデンタイムのドラマ史上最低レベルの2・16%。華やかな"スター枠"は、ある程度必要なものだと思いますよ」(テレビ関係者) 不景気、テレビ離れ、そんな不穏な空気の中、局が手堅く稼ぐための"安心枠"。それで実際にそこそこ視聴率が取れるのだから、制作側は「やはりこれでいいのだ」と安易に考えても仕方ない。大手芸能プロによる"キャスティング至上主義"に異議を唱えるなら、まずは視聴者の側に、キャスティングにとらわれず「本当に面白い」番組を選んで見る目が必要とされるのかもしれない。 (文/安楽由紀子) 【プレミアにはこんな記事も!】 ・『ウチくる!?』はナベプロの"豪腕"利権? 最新ドラマ・バラエティに見るキャスティングの"裏側"『芸能界ベストセレクション』(オリ
コン)。
■プレミアサイゾーとは? 雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、月額525円で読み放題! (バックナンバー含む)















