■前編、中編はこちらから
今野 その間もピンでライブを2回くらいやりましたよね。結局、後輩とか一緒に出ていたし、お客さんも事情は知ってるし、けっこう気楽でしたよ。
高橋 俺は痴漢がどうこうっていうよりも、この世界にいられない人になっちゃうっていう絶望感がありましたけどね。もう駄目だろうな、みたいな。
──そこからどうやって精神的に回復を? けっこうハードな状況ですよね。
高橋 それが一気に来たんじゃなくて、最初はそもそも"逮捕"だっていう認識もないんで。「なんか面倒くせーことになったなー」っていう感じで。マネジャーは俺と連絡がつかないから、俺が自殺してると思ったらしくて。ちょうどマネジャーと揉めた後だったから、「俺が殺しちゃった!」と思ってた。だから事情を話しても、「なんだ痴漢? あー良かった、やってないでしょ、オッケー!」みたいになって(笑)。でも、下手におおごとになって、新聞社とかも取材に来て、しばらく活動できなくなって......。それが徐々に来るから、「これ、もしかしてもしかして......」って感じの不安はありましたよね。漠然とした不安。
──高橋さんはご実家ですよね、お父さまは......?
高橋 親父の仕事場まで車で送っているときに、「昨日、新潟のおばさんから電話あったよ、ニュース見たって」。えー、新潟のおばさんなんで知ったんだろって言ったら、「あと、この新聞にも、この新聞にも、これにも載ってる」って次々出してきて。それを怒るでも悲しむでもなく、普通な感じで言ってくる。
──不思議な距離感ですね。
高橋 息子がもうニュースになる人なんだってことで、相殺されているのかも。
今野 うれしいんだ! 捕まってくれてうれしいんだ!
高橋 意味が違う! 変な感じですよ。
──でも、本当におっかないと思ったのが、「とりあえず話を聞くから」って言われてついて行ったらもう認めたことになるなんて、知らないじゃないですか?
高橋 認めるっていうか、逮捕されることに同意することは間違いないらしいですよ。それで、駅員室に行って話をしようって言われて、まあまあ、逃げるのもアレだしと思って行ったんですけど、逃げるのが1番の正解だったらしいです。
──でも、逃げたら本当にやったみたいじゃないですか!
高橋 でも警察の理屈だと、「おい、ちょっとお前、降りろってやったら抵抗するでしょ? 逃げるでしょ? なのに来たってことは認めてるからでしょ?」ってことに。で、駅について警察呼ぼうってことになって、駅員に話しても警察に話してくださいって。警察に話しても、いや、署で話を聞くよってなって、署に行くと「お前、逮捕されたんだよ」って話になって。
──いつの段階でされたんだよ!! やましいことはないんだから、話せば分かってくれると思っちゃいますよね。今も電車に乗られてますか?
高橋 乗ってますよ、今日も捕まった千代田線に乗りましたよ。僕、千代田線にしばらく乗っちゃいけなくて、警察が僕を保釈するときに「被害者とされている女性に復讐するな」って。「向こうが怖いかもしれないから、はっきり白黒つくまでは千代田線に乗らないでくれますか」って言うんですよ。
──怖いのはこっちだよ......。痴漢も確かに実在するけど、冤罪はやっぱり怖すぎる。リアル『それでもボクはやってない』ですよね。
高橋 今野はその映画を見てたから結末を知っていて。最終的にはやってなくても、信じてもらえないっていう嫌な終わり方だから、「高橋+痴漢で捕まった=終り→よし、金髪!」ですよ。はーい、次! 次! みたいな。
──その切り替えの早さはすごいですよ! 昔からですか?
今野 昔からですね。というか、親の離婚を機に。うちの母親、なんでずっと離婚しないんだろうって思ってて。離婚した瞬間にすごく楽になっていたから、やっぱり思ったことはパッといったほうがいい!
──私もズルズル引きずってしまうタイプなので、すごく参考になります......。
今野 僕も痴漢されたことあるんですよ。
──えっ! 女子にですか?
今野 いえ、男子に。20歳くらいの時、ガラガラの車内でドアの横に立っていたら、明らかにドア側に近づいてきて、袖で隠しながらずっとチンコを触ってきた。
──お尻じゃなく、前?
今野 前ですよ! なんで俺なんだ? 男性いっぱいいるのに、なんで俺なんだろうなって。
高橋 痴漢の目を見ながら、なんで俺なんだろうって。
──見つめ合いながら......そういうプレイみたいですね。
今野 怖いですよ。「この人、痴漢です!」って、僕は言えないですよ。言って誰が信じるんですか? その痴漢が「お前なんか触るわけねーだろ!」って言ったら100%そっちを信じますよ。
高橋 そこに審判がいたら、痴漢にウィナーっていう。しかもガラガラでしょ、ガラガラだから「この人、痴漢です!」って言っても、まず誰に言ってるんだよって。
今野 男が痴漢されるのは本当に怖い、何も言えない。
──ちょっとアレな人扱いされて終わるっていう一番気の毒なパターンですね......。そういったさまざまな紆余曲折があったなかで、今まで辞めずに続けられたのはどうしてですか?
高橋 急に本題に戻りましたね。
──今、私は25歳なんですけど、高橋さんはコピー機の静電気を調べる仕事の正社員に誘われ出した歳、今野さんはもう芸人さんになってた歳なんです。アイドル的にもライター的にも微妙すぎる立ち位置ですし、是非参考にさせていただきたく!
高橋 うーん、活動休止中のときも、「半年はかかる」っていうのはなんとなく聞いてたし、そのわりには早かったらしいんですよ。まだ予定もなかったから、そこは漠然と待てました。けど、あの休みがもっと長かったら、辞めようと思ったかもしれない。
──だいたい半年っていうゴールが見えてると希望がありますよね。
高橋 ゴールが遠いと思っていたらわりと早めに来たから、あ、戻れたーって。
今野 僕は、辞めようかな、とかはないですよね。いつ辞めてもいいから。
高橋 執着がないんですよ。
──お金にも、仕事にもあんまり執着がないんですね。
今野 だって、続けられないでしょ。続けられるとはまず思ってないじゃないですか?
高橋 なんで、お前の感情をこっちが知ってるんだよ。
──こんなに面白いのに、お笑いを続けられると思わないっていうのは、またどうして?
今野 子どもの頃に文集で「歌手になりたい」とか書いてても大体なれないし、ならないじゃないですか。それを「お笑い芸人になったらかっこいいだろうな」くらいのノリで、ハイ養成所入りました、なりました、と。それで、食っていくことを意識していないんです。なったらもう、満足みたいな。
高橋 そんな感じのまま10年。
今野 だから、どうでもいいんですよ。
高橋 飽きるとやめるでしょ。服もそう。僕は貧乏性だから買ったら結構着ようとか、一度始めたら最後までやろうとか、本も最後まで読もうとかあるんすけど、こいつはつまんなかったら読むのやめるだろうし、ツイッターとかもやってますけど、飽きたらハイやめる、みたいな。僕はやったらやめらんないって思うから逆に慎重。
──やめられないから始められない高橋さんと、いつでもやめられるから始める今野さん! 確かに、「いつやめてもいいんだ」って思うと、意外と続けられますよね。
今野 うん。そうだと思いますよ。だから、僕、禁煙とかも多分できると思うんですよね。平気で2週間くらい吸わない時があるし。やめられると思ったら続けられる。
──私もアイドル業であまりにも売れてなくて辛いとき「まあ、明日やめますって言ったら辞められるんだよな」って気付いて、「じゃあ、もう少しやろう」って思って、そのまんま現在です。このまま、まだしばらくいけるのかな。
今野 なんか、自殺癖のある人たちの会話みたい......いつでも死ねるし、みたいな。
高橋 死ぬと思えばなんでもできる!
──ですよね! ありがとうございました! もう少し生きる! じゃなくて、もう少しアイドル頑張ります!
(取材・文=小明)
●キングオブコメディ
高橋健一と今野浩喜からなるお笑いコンビ。2000年結成。「キングオブコント2010』王者。『キングオブコメディのカネとコメ』(ラジオ大阪)、サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にてトーク番組『ニコニコキングオブコメディ』(隔週木曜)出演中
●小明(あかり)
1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。
ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/>
サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中
キングオブコメディ単独ライブ Vol.6 「葉桜」 コント一筋。
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