登場人物全員悲劇! 全員号泣! 伝説の体操マンガ『空のキャンバス』が重すぎる……

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『空のキャンバス』(集英社)
 日本を代表する男子体操選手といえば内村航平、そして白井健三。白熱する2人のライバル関係もあり、2020年の東京オリンピックに向けて、体操ニッポンの活躍が大いに期待できるところですが、マンガの世界で男子体操マンガっていうと……正直ほとんど思いつきません。しかしただ一つ、突き抜けた存在の作品がありました。  そう、男子体操マンガの金字塔といえば、今泉伸二先生の『空のキャンバス』をおいて他にないのであります。「週刊少年ジャンプ」(集英社)誌上において、1986年から87年にかけて連載され、連載期間こそ長くないものの、なんの予兆もなく突如として登場した体操マンガは、その感動的ストーリーでジャンプ読者に多大なインパクトを残しました。 『空のキャンバス』の凄さは、男子器械体操という競技の地味さを補うかのように徹底的に盛り込まれた「泣き」要素にあります。主人公の北野太一やその周囲の登場人物に、これでもかと言わんばかりに次から次へと襲いかかる苦難。そして作品終盤では、ページをめくるたびに誰かが号泣しているという……これほどまでに暑苦しく息苦しく、あざといまでにお涙頂戴な展開のマンガは、ジャンルに関係なく、なかなかお目にかかれるものではありません。  主人公、北野は14歳の中学生。幼少期に出会った、月面宙返り(ムーンサルト)ができる運動神経抜群の少年「あいつ」の存在を追いかけて体操に打ち込み、天才的な才能を開花させます。しかし、太一はその「あいつ」が崖から落ちたのを助けた時に脊椎に負った大けがが原因で全身麻痺に陥り、回復した今も、いつ再発するかわからないという切迫した状況にあります。  本作品のヒロイン・赤城榛名は、かつて体操の五輪選手だった赤城コーチを父に持つ、女子体操のジュニアチャンピオン。そんな榛名の家に、体操のトレーニングをすることになった太一が居候することになります。少年漫画の主人公らしく、エッチなイタズラを連発する太一に榛名はビンタで応酬するなど、ツンデレ上等のラブコメ要素が盛り込まれています。  そして実は、幼少期の榛名こそ、太一がずっとライバルとして追いかけてきた「あいつ」だったのです。しかし、ずっと追いかけてきたライバルが女だったことを知ったら、ショックを受けて立ち直れないかもしれない……そう思った榛名は、真実を告げることを封印します。おバカなラブコメ展開と、登場人物たちのさまざまな苦悩が表裏一体となってストーリーが進んでいきます。  というわけで、『空のキャンバス』の凄いところを、以下にまとめてみました。 ■北野太一に襲いかかる悲劇の総量が半端じゃない  体操でジュニアチャンピオンを狙えるほどの圧倒的な才能を持ちながら、幼少期の脊椎のケガが元で、競技中に突然腕が動かなくなったり目が見えなくなる、などの後遺症を抱えています。  医師には、いずれは全身が麻痺して死ぬ、とサジを投げられた状態。そんな中、宿命のライバル「あいつ」と闘うことだけを目標に気力で体操をしているのですが、その「あいつ」は、実は女の子。しかも一つ屋根の下の同居人、赤城榛名です。しかし太一は作品中で、決してその事実を知らされることはないのです。なんという悲劇!  作品後半、成功率は限りなく低いが、うまくいくかもしれないという難手術を受け、見事手術は成功! 奇跡が起こったかに思われましたが、手術後、記憶喪失に陥り、今までのことをすべて忘れてしまいます。なんという悲劇!  記憶喪失のまま、過去を思い出すために体操に打ち込む太一、次第に記憶が蘇ってきます。そして、ついに記憶が回復! 再び奇跡が起こったかに思われましたが……全身麻痺の症状が再び太一を襲います。なんという悲劇!  最初から最後まで、太一が、とにかく不憫なのです。スポーツマンガ界における悲劇のキャラクターの代表格といえば、心臓病を抱えたままサッカーをする、キャプテン翼の三杉くんですが、正直、北野太一のほうが数段上の悲劇を背負ってます。 ■偽物の「あいつ」が復数登場し、事態がややこしくなる  いつか「あいつ」と出会えると信じて、命がけで体操に取り組む太一と、自分が「あいつ」だと名乗り出ることができない榛名。そんな太一と榛名の状況を見かねてか、太一の前に立ちはだかったライバル、五十嵐俊が太一を励ますため…… 「忘れたのかい、ボクだよ!! ずっと昔、木駄町の公園できみに助けられたじゃないか!!」  などと、自分が「あいつ」だと名乗り出ます。完全に偽者なのですが、太一はこれ信じてしまいます。まあ後で嘘がバレるのですが。  2人目の偽「あいつ」は、全日本ジュニアチャンピオンの鶴巻公次。全身麻痺が進行して、ほとんど動けない状態で体操の練習に打ち込む北野の姿を見るに見かねて 「わからんのかーっ!! オレはお前のライバルだ!! 遠い昔おまえに助けられた男だぞ!!」 と「あいつ」宣言。すでに目が見えず、判断力もなくなっている太一は、あっさり信じてしまいます。しかし、これがきっかけで、太一は手術を受ける決意をすることになります。ナイス偽物!  実は、知らぬは太一ばかりなりで、周りの人はほとんど、榛名が「あいつ」であると知っているのです。このことが何よりも悲劇的という感じがします。 ■太一以外のキャラの生きざまも結構壮絶 『空のキャンバス』では、主人公の太一だけが悲劇を背負っているわけではありません。太一の周りのサブキャラの悲劇っぷりも、なかなかのものです。 ・五十嵐俊 太一の初期のライバルとして登場した五十嵐俊は、少年院出身。少年院のワルな仲間たちの期待を一身に背負っている体操選手なのですが、五十嵐自身は、実は無実の罪で少年院に入れられていたのでした。まさに悲劇! ・あずさちゃん 太一と同じ症状で入院していた少女、あずさちゃん。同じ病状ながら、体操の技を身につけ、みるみる回復していく太一の姿に憧れ、車椅子で病院を抜け出し、太一を応援にいきます。しかし応援中に無理がたたり、会場でぶっ倒れて絶命。まさに悲劇! ・エレナ・シュトロワ ソ連から来た女子体操選手で、女子チャンピオン・榛名の最大のライバル。幼少期のころにエレナを捨てて失踪した母を見つけるために、体操で有名になることを決意します。日本で、絶対100パー母親で間違いない、という女性を見つけますが、話しかけても結局名乗ってもらえず。まさに悲劇!  そんな感じで登場人物がそれぞれ、悲劇を背負っており、作品のいたるところに「泣き」要素がちりばめられているのです。どこから読み始めても泣くことができる後方支援体制。それが『空キャン』の凄いところ!! ■わかる人にはわかる!? 超秘技の数々  壮絶すぎるストーリーばかりが気になって、本来の体操競技の攻防が全然頭に入ってこないのですが、実際のところはかなり激しく、本格的な技の攻防が描写されています。文字通り、ウルトラCとかウルトラDな技が次々と繰り出されるのです。 「後方伸身宙返り2回ひねり」「屈身モリスエ」「イエガー宙返り」「ギンガー宙返り」「マルケロフ飛び越し」「伸身クエルボ飛び2回ひねり」「後方伸身3回宙返り3回ひねり」等々……。  どれも常人ではできないスゴ技のはずですが、体操の知識がないので、今ひとつピンときません。クエルボって何? 食えるの? ……みたいな。体操マンガが地味な印象を拭えないのは、このへんの技がよくわからない感のせいでしょうか。  というわけで、泣ける体操マンガ『空のキャンバス』をご紹介しました。今泉伸二先生のもう一つの代表作『神様はサウスポー』も、泣きのシーンがグイグイくる作品ですので、2作品まとめて読んで涙腺を崩壊させてみるのもいいかもしれません。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) ◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

日本最強サラリーマン『島耕作』 その出世遍歴を振り返る

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『課長 島耕作(1)』(講談社)
   突然ですが、みなさんは出世してますか? 僕はしてません。それはともかく、僕らの思い描く、 サラリーマンが「出世」するマンガといえば、やっぱり『島耕作』シリーズですよね?  1983年に「週刊モーニング」(講談社)で連載がスタートした『課長 島耕作』は、派閥にも属さず、自分の信念を貫く、日本一カッコイイ中間管理職を描いたマンガとしてサラリーマンの熱い支持を得てきた作品ですが、約10年間課長を務めた後、ついに部長に昇進、 92年からはタイトルが『部長 島耕作』となります。  その後は中間管理職の象徴ではなく、エグゼクティブコースに乗ったサクセスストーリーマンガとして『取締役 島耕作』『常務 島耕作』『専務 島耕作』『社長 島耕作』と上り詰 め、これで終わりかと思いきや、まさかの『会長 島耕作』がスタートして今に至ります。  さらに、過去の時代への回帰も行われており、『ヤング 島耕作』『ヤング 島耕作 主任編』『係長 島耕作』、そして大学生時代の『学生 島耕作』までさかのぼっています。もはや野口英世や夏目漱石以上に詳細な自伝が描かれ、いつお札に印刷されてもおかしくないレベルなのですが、とにかく派生作品が多すぎるので、これから読む人のために、それぞれのタイトルを島の人生の時系列に沿ってご紹介してみましょう。 ■『学生 島耕作』  早稲田大学を受験するため、山口県岩国市から上京した学生・島耕作。当時、学生運動が盛んだった早稲田で、下見の最中に活動家と間違えられて機動隊にボコられたり、入学後はタコ部屋学生寮の先輩と一緒に風俗に行ってボッタくられたりと、なかなかの青春ド真ん中っぷりです。  ハイライトは、高校時代からのペンフレンドでタレントの卵、三沢淳子との童貞喪失シーンです。道を歩くだけで女が寄ってくるモテの化身・島耕作にも、童貞時代があったというのが驚きですね。てっきり、生まれた直後から非童貞だと思ってました。 ■『ヤング 島耕作』  新入社員の島を描く『ヤング島耕作』。本人の望み通り、大企業・初芝電産に入社できた島が、若さに任せて大ハッスル。  研修として、ハツシバショップで販売実習をすることになる島。そこの従業員が 不用品を不法投棄するシーンを見かけ、正義感が爆発してガツンと言ってやったのはいいが、その報復として実習先での勤務評価を最低ランクにされてしまうピンチに陥ります。  そこへたまたま通りかかったのが、まさかの神、初芝電産の吉原会長。「お前は正しいことを言っている!」と会長の覚えもめでたく、研修後の評価は最高グレードで、見事に希望の宣伝部配属ゲット。やはり島耕作、新入社員の時から「持ってる」男でした。  女関係では、言い寄ってきた同僚をヤッちゃった後に、その女が会社に産業スパイとして潜り込んでいた左翼活動家の女だったことを知ったり、社員寮のルールを破って無断外泊しまくりで上司に呼び出され、開き直って「好きな女とセックスしてました」と堂々と答えたり、若気の至りがあふれ返っているヤング時代なのでした。 ■『ヤング 島耕作 主任編』  ヤングだけど、主任……つまりは、若手のエースとなった島。主任になったために部下ができたのですが、よりによって新しく配属された部下・亀渕雄太郎が、アメリカ帰りの新人類で大物デザイナーの息子という、初芝のお偉いさんも逆らえない、たいそう厄介なヤカラなのです。  アメリカ的個人主義を徹底し、日本企業になじもうとしない亀渕に対し、人情を大事にするニッポンのサラリーマン代表、島が激しく叱責。しかし、亀渕の親のコネが強力で、逆に島が専務に怒られるありさま。  女関係では、島の最初の妻となる岩田怜子が大活躍。『課長 島耕作』では最初っから夫婦関係が冷え切っていて浮気しまくりモードの島ですが、この時代の怜子は島が惚れるのも納得の、実にデキる女です。  レストランでの食事の予約を入れるも、突然の深夜作業でドタキャンしてしまう島。しかし、家に帰ってくると、レストランのフルコース料理をお持ち帰りにして、テーブルにきれいに並べて待っている怜子の姿が。  そして「しょうがないわよ、仕事よりデートを優先する男がいたら、そんな奴逆に信用できないわ」のセリフ。彼氏の仕事に理解のある、実にいい女ですね。 ■『係長 島耕作』  係長になって早々、上司の遠馬課長が末期のすい臓がんであることが発覚。会社の命令により、本人には知らせず奥さんに告知するという、いきなりハイレベルなミッションを課された島。  しかも、入院している課長は課長で、奥さんのいない隙に、行きつけのバーのホステスである愛人を見舞いに来させろという、さらにややこしい指示を出してきます。こんな嫌な業務命令ある?    課長の他界後、愛人の存在に薄々気づいていた奥さんが、その愛人に会わせろと島に詰め寄るという修羅場に陥ります。これぞまさに貧乏くじ。っていうか、明らかに係長の業務のレベルを超えてますよね。 ■『課長 島耕作』  島耕作シリーズの原点が、この『課長 島耕作』です。課長時代の活躍があったからこそ会長にまで出世できたということで、読んでみると、歴代の中でも実は女関係が一番鬼畜なのも、この課長時代といえます。  態度の悪い新人女性社員にガツンと言ってやるべく、晩飯に誘う島。しかし、完全に彼女にペースを握られ、飲んでカラオケに行った後、ラブホにしけ込んで結局ヤッちゃいます。その後、女性社員にガツンと言うどころか、会社や妻にバラされ、家庭を壊されるのではないかとビクビクしていた島でしたが、その女が結婚して辞めることになり、ギリギリセーフだった話とか……。  部長命令で「博通広告賞の大賞をなんとしてでも受賞しろ」というムチャ振りを受け、博通の審査員の男に頼み込んだところ、「スワッピングパーティーに参加することが条件」と言われる島。結局、その男の嫁を抱くハメになったのですが、島の嫁・怜子と大学の同級生だったことが発覚して、大ピンチみたいな話とか……。  行きずりでヤッちゃった女にピンチを救われたり、ヤッた女が実は仕事上のキーマンだったり、みたいなパターンも異常に多く、それがきっかけで社内での評価をガンガン上げていく島。日本のサラリーマンを代表する男にしては、能力が特殊すぎます。 ■『部長 島耕作』  部長以降の島は、無事、怜子との離婚が成立し、独身貴族に。女関係は本命セフレの大町久美子が中心ではありますが、相変わらず女にモテまくりです。  総合宣伝部長の島なのですが、中沢社長の友人が企業乗っ取りの危機に遭っているということで、会社を救うための特命を受けることになります。いわゆるM&A案件です。まったく畑違いの仕事でも、柔軟かつ颯爽と、ビシッとこなす。さすがは仕事がデキる男。その後はフランスに行ってワインの買い付けをしたり、ニューヨークで自分の隠し子を歌手としてプロデュースしたりと、一体なんの部長なんだ……。 ■『取締役 島耕作』『常務 島耕作』『専務 島耕作』  正直、このへんは取締役と常務と専務の時代の違いがよくわからず、ストーリーがごっちゃになりやすいのですが、取締役時代は島の上海進出がテーマになり、常務時代は中国全土を担当するようになり、専務時代には東アジアおよびアメリカ担当ということで、ワールドワイドな展開が続きます。コマ当たりの説明セリフの密度も上がり、文字だらけのシーンが多く、まるでビジネスマンガのようになります(もともとビジネスマンガですが……)。  しかし、肝心の初芝自体は、業績ダダ下がり。カルロス・ゴーンみたいな郡山社長の下、超リストラ断行モードで、ド派手だった課長時代に比べると、冬の時代といった感じ。  女関係はビジネス同様、ワールドワイドに手を広げ、中国人秘書、中華料理店のママ、米国法人の金髪秘書、インドの大物女優などなど、オッサンになってもモテが止まりません。インドの大物女優とのキスシーンをフライデーされて、敵対する副社長派に吊るし上げられたりなど、業績は冬なのに、女関係は相変わらず夏真っ盛りといった感じです。 ■『社長 島耕作』  前社長が憎まれ役を買って出て、大リストラをやってくれたおかげで、会社の膿を出し切り、最高においしいタイミングで社長になった島。  パナソニックが三洋電機を子会社にしたように、初芝電器も五洋電機と経営統合。松下電器がパナソニックになったように、初芝五洋ホールディングスも「テコット」に改名というリアルとシンクロする感じのストーリーがグッときます。  女関係では、社長秘書である和菓子店のお嬢様・南村彩、オヤジ殺しの多田かおり、ヌンチャク使いの神奈川恵子という、仕事がデキるだけでなく一芸に秀でている3人の社長秘書たちが、いかに他を出し抜いて社長の好意をゲットするかという三つ巴バトルや、25年間付かず離れずの関係だったセフレの久美子と、ついに観念して結婚するところなどが見どころです。 ■『会長 島耕作』  巨額の赤字を出した責任を取ってテコットの社長を辞任し、会長に就任した島。今まで、年齢に比して異様なまでの若々しさを保ち、それゆえモテモテだったわけですが、会長編では一気に枯れた感じを醸し出します。  ストーリーとしては、ついに財界の大物デビューを飾った島が、経団連みたいな感じの「経済連」に入ったかと思えば、上層部と考えが合わず、揉めたりします。ビジネスのスケールもいままでよりも大きく、日本の国益がテーマとなり、農業や漁業、さらには日本酒造りなど、予想もしなかった方向に進出します。  また、島の専任秘書として登場した三代稔彦は、カミングアウトしたゲイという設定で、イケメンが出てくるとすぐに口説こうとするなど、やたらとゲイ関連の話が出てくるのも特徴的です。こちらは現在も連載中の作品なので、今後の展開に期待しましょう。 ■この後の展開を予想してみる  ビジネスマンとしての頂点である会長まで上り詰めてしまった島なので、どうしても、その先の役職は限られています。『相談役 島耕作』『名誉会長 島耕作』あたりなら、まだイケますが。もしビジネスマンとしての役職にこだわらなければ、『総理大臣 島耕作』『国連事務総長 島耕作』『老後 島耕作』『遺骨 島耕作』などもイケそうです。  ちなみに、島の再婚相手、久美子のアブノーマルな女子高生時代を描いた読み切り『JK大町久美子』や、島が殺人事件に巻き込まれて探偵になる『島耕作の事件簿』の連載が始まっているので、今後はこのような変化球路線が中心になるという可能性も考えられます。  また、ヤング方面の作品では、大学生時代の『学生 島耕作』に加え、読み切りの『少年 島耕作』で高校時代を消化してしまっているため、残りは『中学生 島耕作』『小学生 島耕作』『園児 島耕作』『幼児 島耕作』『赤子 島耕作』『胎児 島耕作』あたりが考えられます。さらに『君の名は。』とのコラボが実現すれば『前前前世 島耕作』というのもあるかもしれません(ないか……)。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

日本最強サラリーマン『島耕作』 その出世遍歴を振り返る

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『課長 島耕作(1)』(講談社)
   突然ですが、みなさんは出世してますか? 僕はしてません。それはともかく、僕らの思い描く、 サラリーマンが「出世」するマンガといえば、やっぱり『島耕作』シリーズですよね?  1983年に「週刊モーニング」(講談社)で連載がスタートした『課長 島耕作』は、派閥にも属さず、自分の信念を貫く、日本一カッコイイ中間管理職を描いたマンガとしてサラリーマンの熱い支持を得てきた作品ですが、約10年間課長を務めた後、ついに部長に昇進、 92年からはタイトルが『部長 島耕作』となります。  その後は中間管理職の象徴ではなく、エグゼクティブコースに乗ったサクセスストーリーマンガとして『取締役 島耕作』『常務 島耕作』『専務 島耕作』『社長 島耕作』と上り詰 め、これで終わりかと思いきや、まさかの『会長 島耕作』がスタートして今に至ります。  さらに、過去の時代への回帰も行われており、『ヤング 島耕作』『ヤング 島耕作 主任編』『係長 島耕作』、そして大学生時代の『学生 島耕作』までさかのぼっています。もはや野口英世や夏目漱石以上に詳細な自伝が描かれ、いつお札に印刷されてもおかしくないレベルなのですが、とにかく派生作品が多すぎるので、これから読む人のために、それぞれのタイトルを島の人生の時系列に沿ってご紹介してみましょう。 ■『学生 島耕作』  早稲田大学を受験するため、山口県岩国市から上京した学生・島耕作。当時、学生運動が盛んだった早稲田で、下見の最中に活動家と間違えられて機動隊にボコられたり、入学後はタコ部屋学生寮の先輩と一緒に風俗に行ってボッタくられたりと、なかなかの青春ド真ん中っぷりです。  ハイライトは、高校時代からのペンフレンドでタレントの卵、三沢淳子との童貞喪失シーンです。道を歩くだけで女が寄ってくるモテの化身・島耕作にも、童貞時代があったというのが驚きですね。てっきり、生まれた直後から非童貞だと思ってました。 ■『ヤング 島耕作』  新入社員の島を描く『ヤング島耕作』。本人の望み通り、大企業・初芝電産に入社できた島が、若さに任せて大ハッスル。  研修として、ハツシバショップで販売実習をすることになる島。そこの従業員が 不用品を不法投棄するシーンを見かけ、正義感が爆発してガツンと言ってやったのはいいが、その報復として実習先での勤務評価を最低ランクにされてしまうピンチに陥ります。  そこへたまたま通りかかったのが、まさかの神、初芝電産の吉原会長。「お前は正しいことを言っている!」と会長の覚えもめでたく、研修後の評価は最高グレードで、見事に希望の宣伝部配属ゲット。やはり島耕作、新入社員の時から「持ってる」男でした。  女関係では、言い寄ってきた同僚をヤッちゃった後に、その女が会社に産業スパイとして潜り込んでいた左翼活動家の女だったことを知ったり、社員寮のルールを破って無断外泊しまくりで上司に呼び出され、開き直って「好きな女とセックスしてました」と堂々と答えたり、若気の至りがあふれ返っているヤング時代なのでした。 ■『ヤング 島耕作 主任編』  ヤングだけど、主任……つまりは、若手のエースとなった島。主任になったために部下ができたのですが、よりによって新しく配属された部下・亀渕雄太郎が、アメリカ帰りの新人類で大物デザイナーの息子という、初芝のお偉いさんも逆らえない、たいそう厄介なヤカラなのです。  アメリカ的個人主義を徹底し、日本企業になじもうとしない亀渕に対し、人情を大事にするニッポンのサラリーマン代表、島が激しく叱責。しかし、亀渕の親のコネが強力で、逆に島が専務に怒られるありさま。  女関係では、島の最初の妻となる岩田怜子が大活躍。『課長 島耕作』では最初っから夫婦関係が冷え切っていて浮気しまくりモードの島ですが、この時代の怜子は島が惚れるのも納得の、実にデキる女です。  レストランでの食事の予約を入れるも、突然の深夜作業でドタキャンしてしまう島。しかし、家に帰ってくると、レストランのフルコース料理をお持ち帰りにして、テーブルにきれいに並べて待っている怜子の姿が。  そして「しょうがないわよ、仕事よりデートを優先する男がいたら、そんな奴逆に信用できないわ」のセリフ。彼氏の仕事に理解のある、実にいい女ですね。 ■『係長 島耕作』  係長になって早々、上司の遠馬課長が末期のすい臓がんであることが発覚。会社の命令により、本人には知らせず奥さんに告知するという、いきなりハイレベルなミッションを課された島。  しかも、入院している課長は課長で、奥さんのいない隙に、行きつけのバーのホステスである愛人を見舞いに来させろという、さらにややこしい指示を出してきます。こんな嫌な業務命令ある?    課長の他界後、愛人の存在に薄々気づいていた奥さんが、その愛人に会わせろと島に詰め寄るという修羅場に陥ります。これぞまさに貧乏くじ。っていうか、明らかに係長の業務のレベルを超えてますよね。 ■『課長 島耕作』  島耕作シリーズの原点が、この『課長 島耕作』です。課長時代の活躍があったからこそ会長にまで出世できたということで、読んでみると、歴代の中でも実は女関係が一番鬼畜なのも、この課長時代といえます。  態度の悪い新人女性社員にガツンと言ってやるべく、晩飯に誘う島。しかし、完全に彼女にペースを握られ、飲んでカラオケに行った後、ラブホにしけ込んで結局ヤッちゃいます。その後、女性社員にガツンと言うどころか、会社や妻にバラされ、家庭を壊されるのではないかとビクビクしていた島でしたが、その女が結婚して辞めることになり、ギリギリセーフだった話とか……。  部長命令で「博通広告賞の大賞をなんとしてでも受賞しろ」というムチャ振りを受け、博通の審査員の男に頼み込んだところ、「スワッピングパーティーに参加することが条件」と言われる島。結局、その男の嫁を抱くハメになったのですが、島の嫁・怜子と大学の同級生だったことが発覚して、大ピンチみたいな話とか……。  行きずりでヤッちゃった女にピンチを救われたり、ヤッた女が実は仕事上のキーマンだったり、みたいなパターンも異常に多く、それがきっかけで社内での評価をガンガン上げていく島。日本のサラリーマンを代表する男にしては、能力が特殊すぎます。 ■『部長 島耕作』  部長以降の島は、無事、怜子との離婚が成立し、独身貴族に。女関係は本命セフレの大町久美子が中心ではありますが、相変わらず女にモテまくりです。  総合宣伝部長の島なのですが、中沢社長の友人が企業乗っ取りの危機に遭っているということで、会社を救うための特命を受けることになります。いわゆるM&A案件です。まったく畑違いの仕事でも、柔軟かつ颯爽と、ビシッとこなす。さすがは仕事がデキる男。その後はフランスに行ってワインの買い付けをしたり、ニューヨークで自分の隠し子を歌手としてプロデュースしたりと、一体なんの部長なんだ……。 ■『取締役 島耕作』『常務 島耕作』『専務 島耕作』  正直、このへんは取締役と常務と専務の時代の違いがよくわからず、ストーリーがごっちゃになりやすいのですが、取締役時代は島の上海進出がテーマになり、常務時代は中国全土を担当するようになり、専務時代には東アジアおよびアメリカ担当ということで、ワールドワイドな展開が続きます。コマ当たりの説明セリフの密度も上がり、文字だらけのシーンが多く、まるでビジネスマンガのようになります(もともとビジネスマンガですが……)。  しかし、肝心の初芝自体は、業績ダダ下がり。カルロス・ゴーンみたいな郡山社長の下、超リストラ断行モードで、ド派手だった課長時代に比べると、冬の時代といった感じ。  女関係はビジネス同様、ワールドワイドに手を広げ、中国人秘書、中華料理店のママ、米国法人の金髪秘書、インドの大物女優などなど、オッサンになってもモテが止まりません。インドの大物女優とのキスシーンをフライデーされて、敵対する副社長派に吊るし上げられたりなど、業績は冬なのに、女関係は相変わらず夏真っ盛りといった感じです。 ■『社長 島耕作』  前社長が憎まれ役を買って出て、大リストラをやってくれたおかげで、会社の膿を出し切り、最高においしいタイミングで社長になった島。  パナソニックが三洋電機を子会社にしたように、初芝電器も五洋電機と経営統合。松下電器がパナソニックになったように、初芝五洋ホールディングスも「テコット」に改名というリアルとシンクロする感じのストーリーがグッときます。  女関係では、社長秘書である和菓子店のお嬢様・南村彩、オヤジ殺しの多田かおり、ヌンチャク使いの神奈川恵子という、仕事がデキるだけでなく一芸に秀でている3人の社長秘書たちが、いかに他を出し抜いて社長の好意をゲットするかという三つ巴バトルや、25年間付かず離れずの関係だったセフレの久美子と、ついに観念して結婚するところなどが見どころです。 ■『会長 島耕作』  巨額の赤字を出した責任を取ってテコットの社長を辞任し、会長に就任した島。今まで、年齢に比して異様なまでの若々しさを保ち、それゆえモテモテだったわけですが、会長編では一気に枯れた感じを醸し出します。  ストーリーとしては、ついに財界の大物デビューを飾った島が、経団連みたいな感じの「経済連」に入ったかと思えば、上層部と考えが合わず、揉めたりします。ビジネスのスケールもいままでよりも大きく、日本の国益がテーマとなり、農業や漁業、さらには日本酒造りなど、予想もしなかった方向に進出します。  また、島の専任秘書として登場した三代稔彦は、カミングアウトしたゲイという設定で、イケメンが出てくるとすぐに口説こうとするなど、やたらとゲイ関連の話が出てくるのも特徴的です。こちらは現在も連載中の作品なので、今後の展開に期待しましょう。 ■この後の展開を予想してみる  ビジネスマンとしての頂点である会長まで上り詰めてしまった島なので、どうしても、その先の役職は限られています。『相談役 島耕作』『名誉会長 島耕作』あたりなら、まだイケますが。もしビジネスマンとしての役職にこだわらなければ、『総理大臣 島耕作』『国連事務総長 島耕作』『老後 島耕作』『遺骨 島耕作』などもイケそうです。  ちなみに、島の再婚相手、久美子のアブノーマルな女子高生時代を描いた読み切り『JK大町久美子』や、島が殺人事件に巻き込まれて探偵になる『島耕作の事件簿』の連載が始まっているので、今後はこのような変化球路線が中心になるという可能性も考えられます。  また、ヤング方面の作品では、大学生時代の『学生 島耕作』に加え、読み切りの『少年 島耕作』で高校時代を消化してしまっているため、残りは『中学生 島耕作』『小学生 島耕作』『園児 島耕作』『幼児 島耕作』『赤子 島耕作』『胎児 島耕作』あたりが考えられます。さらに『君の名は。』とのコラボが実現すれば『前前前世 島耕作』というのもあるかもしれません(ないか……)。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

人気コミック『ギャングキング』が“タトゥー裁判”の有罪判決で大打撃!?

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『ギャングキング(29)』(講談社)
 あの人気コミックも、内容の変更を余儀なくされるかも?  医師免許を持たずに客にタトゥー(入れ墨)を施したとして、医師法違反(無資格医業)の罪に問われた彫師・増田太輝被告(29)の公判が9月27日、大阪地裁で行われ、「有罪」との判決が下された。 「医師法には、タトゥーの施術に関する明文規定はなく、彫師をめぐる初の正式裁判として注目されました。長瀬敬昭裁判長は『保健衛生上の危害が出る恐れがあり、医療行為に当たる』として医師免許が必要と指摘。罰金15万円(求刑罰金30万円)を言い渡しました。弁護側は『医師免許を要求するのは過剰な規制で、表現の自由や職業選択の自由を侵害している』と主張したものの、『保健衛生上の危害の防止を上回る利益があるとはいえない』として退けられました。認可制導入を求める署名活動も展開していた一部の彫師らは、『このままでは彫り物の文化がなくなる。彫師は地下に潜るしかなくなる』と肩を落としています」(社会部記者)  さらに、この裁判はマンガ界にも飛び火。ある人気コミックへの影響が不安視されているという。出版関係者が明かす。 「累計発行部数1,000万部を誇る柳内大樹の人気コミック『ギャングキング』に影響を及ぼす可能性があります。同作は2003年に『ヤングキング』(少年画報社)で連載がスタートし、現在は『別冊少年マガジン』(講談社)に移籍。自分で自分の体に彫り物を彫った少年、“和彫りのジミー”の成長を描いた不良マンガの金字塔です。作中で、彫り物は『芸術』として描かれ、世界一の『彫り師』になる夢を持つジミーが、学校の生徒たちにワンポイント3,000円で営業しているシーンも出てきます。しかし、今回の判決に照らすとジミーの行為は違法となり、『犯罪を助長する』作品になってしまった。彼は憧れの彫師に弟子入りするために渡米しようとしていますが、表の世界で営業するつもりなら、医師免許取得に向けて猛勉強しなくてはならない。勉強とは無縁の不良生活を送るジミーですから、並大抵の努力では夢は叶いそうにありません」  こうなったら、タイトル通りギャングを目指す方向にシフトチェンジするしかない?

男だったら野望を持て! 狂気と暴力が織り成す“殺しんぼ”『野望の王国』

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『野望の王国 完全版』(日本文芸社)
 突然ですが、皆さんの「野望」はなんでしょうか? 人は皆、誰しも心に野望を秘めているはず。社長になりたい、ユーチューバーになりたい、総選挙で推しメンを1位にしたい、ラーメン二郎を全店制覇したいなどなど……。  今回ご紹介する『野望の王国』は、そんな野望ニストに死ぬまでに一度は読んでほしい作品。東大法学部を首席で卒業するほどの頭脳を持つ男たちが、権力への野望に取り憑かれ、日本を支配するために暴力団・警察・政治・宗教など、ありとあらゆるものを利用して野望を達成しようとする究極のバイオレンス劇画。どこを切ってもすさまじい暴力表現と、狂気のキャラクターにあふれています。こんなに何もかもが狂ってるマンガは、ほかに見たことありません。  本作は1977年から82年まで「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)に連載されており、原作は雁屋哲先生、作画は由起賢二先生です。雁屋先生は『美味しんぼ』の原作者として有名ですが、本作は『美味しんぼ』のコンセプトとは対極にある、狂気と暴力がメインの「殺しんぼ」な作品であるといえます。  主人公は橘征五郎と片岡仁という東大法学部の学生2人。東大で主席を争うほど頭脳明晰なだけでなく、弱小アメフト部を2人の活躍で日本一にしてしまうほどのスポーツ万能ぶり。将来は大学教授か官僚か、いずれにしてもエリート街道まっしぐらと思われていた2人が、研究室の教授に進路を聞かれると……  征五郎「我々は野望達成にすべてをかけると決めたのです」「ぼくたちが法学部政治学科で政治を学んだのは、人が人を支配する仕組み、権力をつかむための方法を学ぶためだったといっていいでしょう!」  片岡「この世は荒野だ! 唯一野望を実行に移す者のみがこの荒野を制することができるのだ!」  このように、意味不明なことをのたまいます。教授も同級生もお口アングリ、唖然です。  実は主役のひとり、征五郎は神奈川県下最大の暴力団「橘組」組長の五男坊。しかし、組長の妾腹の息子のため、本妻の息子たちに比べて冷遇されていました。そのため、相棒の片岡とともに橘組を乗っ取り、暴力で日本を支配するという大いなる野望を持っていたのでした。東大で一生懸命勉強してきた結論がこれですよ。東大は一体何を教えているんでしょうか。  そして、ついに征五郎と片岡の野望が動きだす時が来ました。橘組の親分、橘征蔵が死去し、世代交代が起こります。跡を継ぐ息子たちは征一郎から征五郎までの5人兄弟。そして、そのうち征二郎と征五郎だけが妾腹。兄弟それぞれの思惑が動きだします。  次期組長の第一候補で長男の征一郎が30歳、次男の征二郎が29歳、双子の征三郎と征四郎が28歳、末っ子の征五郎が21歳という設定なのですが、どいつもこいつも余裕で40代以上の面構え、実年齢+15歳ぐらいはいってそうなルックスなのです。 ■恐るべき東大生、征五郎・片岡の手腕  征五郎と片岡の橘組乗っ取り計画は、組長の葬儀の日に決行されました。2人が秘密裏に雇った兵隊たちが、橘組本家に奇襲をかけます。葬儀の日とあって、大混乱の橘組。そのドサクサで征一郎を暗殺。あっという間に、組長と次期組長の葬儀になってしまいました。  さらに、告別式にも巨大なタンクローリーを突っ込ませ、業火の渦でパニックになる中、ヒットマンが征三郎を暗殺。この鮮やかな手口、東大生の頭脳が遺憾なく発揮されています(悪いほうに)。そんな感じで、東大生の野望のために、いとも簡単に人が死んでいくマンガなのです。  とにかく本作のテーマは「野望」そして「暴力」です。征五郎と片岡は、こんな名ゼリフを残しています。 「男は一旦、野望にとりつかれたら、もう燃えつきるまで猛進するしかありません」 「力とは、暴力それに金。他に何が必要だというんです?」  いや、ほかにもいろいろ必要だと思うんですけど……。 ■最強のカリスマヤクザ征二郎  征一郎が殺された後、橘組の新組長となった征二郎、この男こそ、征五郎と片岡の野望にとって最大の障壁となる男です。知力は東大生の2人をも上回り、殺しをやれば冷酷非道。そして、組長としての圧倒的なカリスマ性を持つ――。これで29歳です。なんて嫌なアラサーでしょうか。  征二郎はそのカンのよさから、一連の兄弟殺しに征五郎と片岡が絡んでいるのではないかと早々に疑いを持ちますが、同じ妾腹の息子としてつらい境遇を歩んできた征五郎をかわいがっていたため、どうしても征五郎の裏切りに確信を持つことができません。  そんな中、本家の生き残りでアホの征四郎が征五郎たちにそそのかされ、兄を殺したのは征二郎だと思い込み、戦争を仕掛けます。怒った征二郎は、征四郎の屋敷を米軍のヘリを使って空爆。屋敷から逃げ出してきた征四郎を生け捕りにして、証拠を一切残さず始末してしまいます。恐るべき征二郎の力……。兄弟を倒すのに米軍まで使うヤクザって聞いたことないよ! ■マンガ史上最悪のバイオレンス警察署長・柿崎  そんな内輪モメに揺れる橘組をぶっ潰さんと、川崎中央署に赴任してきた新任警察署長、柿崎憲。征五郎や片岡の先輩にあたる東大法学部卒で、30歳にして署長に就任。超スピードで出世街道を歩むこの男こそ、マンガ史上最悪の危険思想を持つ警察署長です。というか、このマンガに出てくる東大出身者は基本的に危険人物しかいません。 「おれが警察庁に入ったのは日本の警察を動かす力を持つためだ! 日本は警察国家だ!警察こそは日本最大の暴力機構だ! おれはその警察を乗っ取るのだ!!」 「この世を支配するのは暴力だっ! 暴力が全てだっ! 日本の表世界の暴力機構が警察なら、裏世界のそれは暴力団だっ! 表裏二つの暴力機構を握れば巨大な権力をつかむことが出来るっ!」 「川崎中央署の全ての力を2人の思う通りに使うがいい。人殺しでもなんでも無制限だ!」  どうですか、柿崎のこの名ゼリフの数々。警察は日本最大の暴力機構って……。こいつにかかると警察が悪党、ヤクザが正義の味方に見えてしまうから困ります。  この柿崎の登場により、征二郎率いる正統派ヤクザの橘組、橘組を乗っ取ろうと画策する征五郎・片岡の若獅子会、どちらもまとめてぶっ潰そうとする柿崎警察署長の三すくみによるすさまじい裏切り合い、潰し合いがラストまで続きます。  舞台となる川崎は、こいつらの闘いのせいで製鉄場爆破、石油コンビナート爆破、造船所爆破、競馬場での暴動などが引き起こされた挙げ句、川崎中が火の海になります。なんて川崎市民に迷惑なマンガなんだ……。  ほかにも関西最大の暴力団や、自衛隊を自由に使えるほどの強大な力を持つ政界のフィクサー、信者を次々と殺人鬼に洗脳する信仰宗教の教祖様などなど、とりあえず関わったら絶対ヤバいジャンルのヤツらが一通り絡んできて、狂った暴力世界を奏でている作品です。  長編作品ながら、一度読みだすと続きが気になって途中でやめられない、そんなかっぱえびせんやプリングルズのような中毒性を持った劇画です。画も内容もあまりに濃すぎるので敬遠する人も多そうですが、だまされたと思って読んでみてください。絶対にハマります。そして知らず知らずのうちに、あなたの心にも野望の火がともるに違いありません。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

男だったら野望を持て! 狂気と暴力が織り成す“殺しんぼ”『野望の王国』

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『野望の王国 完全版』(日本文芸社)
 突然ですが、皆さんの「野望」はなんでしょうか? 人は皆、誰しも心に野望を秘めているはず。社長になりたい、ユーチューバーになりたい、総選挙で推しメンを1位にしたい、ラーメン二郎を全店制覇したいなどなど……。  今回ご紹介する『野望の王国』は、そんな野望ニストに死ぬまでに一度は読んでほしい作品。東大法学部を首席で卒業するほどの頭脳を持つ男たちが、権力への野望に取り憑かれ、日本を支配するために暴力団・警察・政治・宗教など、ありとあらゆるものを利用して野望を達成しようとする究極のバイオレンス劇画。どこを切ってもすさまじい暴力表現と、狂気のキャラクターにあふれています。こんなに何もかもが狂ってるマンガは、ほかに見たことありません。  本作は1977年から82年まで「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)に連載されており、原作は雁屋哲先生、作画は由起賢二先生です。雁屋先生は『美味しんぼ』の原作者として有名ですが、本作は『美味しんぼ』のコンセプトとは対極にある、狂気と暴力がメインの「殺しんぼ」な作品であるといえます。  主人公は橘征五郎と片岡仁という東大法学部の学生2人。東大で主席を争うほど頭脳明晰なだけでなく、弱小アメフト部を2人の活躍で日本一にしてしまうほどのスポーツ万能ぶり。将来は大学教授か官僚か、いずれにしてもエリート街道まっしぐらと思われていた2人が、研究室の教授に進路を聞かれると……  征五郎「我々は野望達成にすべてをかけると決めたのです」「ぼくたちが法学部政治学科で政治を学んだのは、人が人を支配する仕組み、権力をつかむための方法を学ぶためだったといっていいでしょう!」  片岡「この世は荒野だ! 唯一野望を実行に移す者のみがこの荒野を制することができるのだ!」  このように、意味不明なことをのたまいます。教授も同級生もお口アングリ、唖然です。  実は主役のひとり、征五郎は神奈川県下最大の暴力団「橘組」組長の五男坊。しかし、組長の妾腹の息子のため、本妻の息子たちに比べて冷遇されていました。そのため、相棒の片岡とともに橘組を乗っ取り、暴力で日本を支配するという大いなる野望を持っていたのでした。東大で一生懸命勉強してきた結論がこれですよ。東大は一体何を教えているんでしょうか。  そして、ついに征五郎と片岡の野望が動きだす時が来ました。橘組の親分、橘征蔵が死去し、世代交代が起こります。跡を継ぐ息子たちは征一郎から征五郎までの5人兄弟。そして、そのうち征二郎と征五郎だけが妾腹。兄弟それぞれの思惑が動きだします。  次期組長の第一候補で長男の征一郎が30歳、次男の征二郎が29歳、双子の征三郎と征四郎が28歳、末っ子の征五郎が21歳という設定なのですが、どいつもこいつも余裕で40代以上の面構え、実年齢+15歳ぐらいはいってそうなルックスなのです。 ■恐るべき東大生、征五郎・片岡の手腕  征五郎と片岡の橘組乗っ取り計画は、組長の葬儀の日に決行されました。2人が秘密裏に雇った兵隊たちが、橘組本家に奇襲をかけます。葬儀の日とあって、大混乱の橘組。そのドサクサで征一郎を暗殺。あっという間に、組長と次期組長の葬儀になってしまいました。  さらに、告別式にも巨大なタンクローリーを突っ込ませ、業火の渦でパニックになる中、ヒットマンが征三郎を暗殺。この鮮やかな手口、東大生の頭脳が遺憾なく発揮されています(悪いほうに)。そんな感じで、東大生の野望のために、いとも簡単に人が死んでいくマンガなのです。  とにかく本作のテーマは「野望」そして「暴力」です。征五郎と片岡は、こんな名ゼリフを残しています。 「男は一旦、野望にとりつかれたら、もう燃えつきるまで猛進するしかありません」 「力とは、暴力それに金。他に何が必要だというんです?」  いや、ほかにもいろいろ必要だと思うんですけど……。 ■最強のカリスマヤクザ征二郎  征一郎が殺された後、橘組の新組長となった征二郎、この男こそ、征五郎と片岡の野望にとって最大の障壁となる男です。知力は東大生の2人をも上回り、殺しをやれば冷酷非道。そして、組長としての圧倒的なカリスマ性を持つ――。これで29歳です。なんて嫌なアラサーでしょうか。  征二郎はそのカンのよさから、一連の兄弟殺しに征五郎と片岡が絡んでいるのではないかと早々に疑いを持ちますが、同じ妾腹の息子としてつらい境遇を歩んできた征五郎をかわいがっていたため、どうしても征五郎の裏切りに確信を持つことができません。  そんな中、本家の生き残りでアホの征四郎が征五郎たちにそそのかされ、兄を殺したのは征二郎だと思い込み、戦争を仕掛けます。怒った征二郎は、征四郎の屋敷を米軍のヘリを使って空爆。屋敷から逃げ出してきた征四郎を生け捕りにして、証拠を一切残さず始末してしまいます。恐るべき征二郎の力……。兄弟を倒すのに米軍まで使うヤクザって聞いたことないよ! ■マンガ史上最悪のバイオレンス警察署長・柿崎  そんな内輪モメに揺れる橘組をぶっ潰さんと、川崎中央署に赴任してきた新任警察署長、柿崎憲。征五郎や片岡の先輩にあたる東大法学部卒で、30歳にして署長に就任。超スピードで出世街道を歩むこの男こそ、マンガ史上最悪の危険思想を持つ警察署長です。というか、このマンガに出てくる東大出身者は基本的に危険人物しかいません。 「おれが警察庁に入ったのは日本の警察を動かす力を持つためだ! 日本は警察国家だ!警察こそは日本最大の暴力機構だ! おれはその警察を乗っ取るのだ!!」 「この世を支配するのは暴力だっ! 暴力が全てだっ! 日本の表世界の暴力機構が警察なら、裏世界のそれは暴力団だっ! 表裏二つの暴力機構を握れば巨大な権力をつかむことが出来るっ!」 「川崎中央署の全ての力を2人の思う通りに使うがいい。人殺しでもなんでも無制限だ!」  どうですか、柿崎のこの名ゼリフの数々。警察は日本最大の暴力機構って……。こいつにかかると警察が悪党、ヤクザが正義の味方に見えてしまうから困ります。  この柿崎の登場により、征二郎率いる正統派ヤクザの橘組、橘組を乗っ取ろうと画策する征五郎・片岡の若獅子会、どちらもまとめてぶっ潰そうとする柿崎警察署長の三すくみによるすさまじい裏切り合い、潰し合いがラストまで続きます。  舞台となる川崎は、こいつらの闘いのせいで製鉄場爆破、石油コンビナート爆破、造船所爆破、競馬場での暴動などが引き起こされた挙げ句、川崎中が火の海になります。なんて川崎市民に迷惑なマンガなんだ……。  ほかにも関西最大の暴力団や、自衛隊を自由に使えるほどの強大な力を持つ政界のフィクサー、信者を次々と殺人鬼に洗脳する信仰宗教の教祖様などなど、とりあえず関わったら絶対ヤバいジャンルのヤツらが一通り絡んできて、狂った暴力世界を奏でている作品です。  長編作品ながら、一度読みだすと続きが気になって途中でやめられない、そんなかっぱえびせんやプリングルズのような中毒性を持った劇画です。画も内容もあまりに濃すぎるので敬遠する人も多そうですが、だまされたと思って読んでみてください。絶対にハマります。そして知らず知らずのうちに、あなたの心にも野望の火がともるに違いありません。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

“モノノフ”作者がドルヲタの悲哀を描くマンガ『堂々とアイドル推してもいいですか?』小城徹也氏インタビュー

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 人は誰しも秘密がある。それは、家族の間でも同じだ。  しかし、人に知られずに味わう楽しみには、また違った面白さがあることも事実だ。  今、アイドルヲタク(通称:ドルヲタ)界隈で「けもの道」と呼ばれる人たちがいる。奥さんや子どもに内緒にしつつ、アイドルを楽しむ人のことである。  そんな「けもの道」の悲哀を描き、話題となっているマンガがある。  その名も『堂々とアイドル推してもいいですか?』(KADOKAWA)、通称『堂推し』。  家族に隠れて、アイドルを楽しむことの苦労はどんなところにあるのか? 今まであまり公にされることがなかった人たちの生体はどんなものなのか?  それらを知るため、作者の小城徹也さんにインタビューを行った。 * * * ――この作品を描くことになった経緯を教えてください。 小城徹也(以下、小城) 以前、“アイドルヲタク”をテーマにしたファンタジーマンガを描いたことがあるんです。宇宙人がやってきて、アイドルについて学ぶみたいな。それをKADOKAWAさんに持ち込んだ時に、編集の方から「リアルなアイドルヲタクについて描いてみてはどうか」と言われたのがきっかけですね。 ――製作にあたり、実際にヲタクの方に取材をしたのでしょうか? 小城 元々私の周りにドルヲタの方がいたというのもありますし、より詳しく話を聞くために協力してもらったりしました。ちょうど「けもの道」の方も多かったので。その後は、ツイキャスや、飲み会などでも情報収集しましたね。 ――9月5日には、「マンガワールド」というイベントに出演されましたね。 小城 以前描いていた『ももプロZ』(講談社)というマンガを出した時に、このイベントの関係者の方がモノノフ(ももいろクローバーZのファン)で、そこからお話をいただきました。『堂推し』の連載が始まった時に「コミックスが出たらまたやりたいね」という話をしていたんです。 ――『堂推し』に出てくるアイドル(あらたなチューズ)が架空のグループなのは、何か理由があるのでしょうか? 小城 例えば、「ももクロ」と名前を出しちゃうと、そのファンしか見てもらえないのではないかという懸念がありましたね。ただ、描き始めた当初は、ももクロしかアイドルに詳しくなかったので、ベースはももクロになってます(笑)。 ――モノノフになったきっかけは? 小城 2012年の夏ぐらいに、ももクロがたくさんテレビ番組に出ていた時期があるんです。今思うと、アルバムが発売されて、その宣伝もあったようですが、『しゃべくり007』(日本テレビ系)とか、『ゴッドタン』(テレビ東京)を見ていて、「なんだか変わった子たちだな」と思いまして。  それまで、バラエティ番組に出ているアイドルというと、芸人においしくいじってもらって終わる、みたいな感じだったじゃないですか。でも、ももクロは逆に芸人の方があたふたしちゃうようなトークをしていて、そこが新鮮だと思いました。それまで見たことないアイドルだなと感じました。 ――それから曲を聴き始めたということですか? 小城 そうですね。それまでのアイドルって、恋愛ソングみたいのが多い印象だったのですが、歌もちょっと変わってる感じで良かったですね。ライブに行ったのは、関係者席で見た「男祭り 2012-Dynamism-」が一番最初でした。コールはすごいし、お神輿が客席に入ったりで、カルチャーショックでしたね。他のアーティストのライブとはだいぶ違いました。 ――マンガだと、主人公の奥さんはアイドル嫌いですが、小城さんがももクロにハマった時、奥様の反応はいかがでしたか? 小城 それが、資料でいただいたライブDVDを家に置いておいたら、妻が勝手に見て勝手にハマってくれたんですよ(笑)。仕事という免罪符もあったんで、うちはけもの道を免れました(笑)。 ――ヲタク同士の横のつながりみたいなものは、すぐにできたんでしょうか? 小城 2013の日産スタジアムの「夏のバカ騒ぎ WORLD SUMMER DIVE 2013.8.4」が最初ですね。『堂推し』を描き始めた頃、ももクロはもう「握手会」とか「特典会」をやってなかったので、それがどういうものかわからなかったんです。なので、そうやって広がっていった横のつながりだったり、Twitterでもオススメを聞いたりして他の現場に行ってみました。  周りに元々スタダDD(ももクロが所属するスターダストプロモーションのアイドルを追いかけている人)界隈の方が多かったので、最初に行ったのは3Bjunior内の「ロッカジャポニカ」だったかな? その次が確か、「GRAZIE4」。あと、アイドルにもモノノフの方が多いので、「この子、モノノフでアイドルだから来て欲しい」という声も多くて、ライブを観に行ったりしましたね。 ――今年の夏は、アイドルフェスなども行かれていたようですね。 小城 7月の「アイドル横丁夏まつり!!」では「プレイボールズ」が一番気になりました。Twitterでオススメを聞いて、自分なりのタイムテーブルを作ったりしました。あとは、ドルヲタのみなさんとの交流を含めて行った部分もあったので、そこでも楽しみがありました。 ――今作では、「まだ描きたいことがある」という終わりになっていましたけど、具体的には今後どんなことを描きたいですか? 小城 ドルヲタあるあるでいったら、まだ山ほどネタがあるので、それは描いていきたいです。あとは、「会社バレ」とか「親戚バレ」みたいなのは面白いかなと思います。主人公を苦しめる展開にしたいので(笑)。  やっぱり、“アイドル”というよりは“アイドルヲタク”を描きたくて。今Twitterに、『ガチ恋40』っていうアイドルにガチ恋したおっさんのマンガをアップしています。アイドルのものは今までもありましたが、アイドルヲタクものっていうのはあまりないので、そっちの方が自分には向いてるのかなと。  アイドルや、アイドル運営目線のものも描いてみたんですけど、あまりピンとくるような感じじゃなかったんですよね。自分はドルヲタの知り合いが多くて、そっちの方が合ってるのかなと感じているので、その方面の方に喜んでもらいたいなと思っています。 ――このマンガを通して伝えたいことは何でしょうか。 小城 やはり、世間的には、ヲタクに対する偏見があるじゃないですか。そういうのがなくなったらいいですよね。 ――ただ、ちょっとした後ろめたさって、逆に楽しみが増幅される感じもありますよね。 小城 ちょっとしたところだったらいいですよね。「離婚届がどうの……」みたいなヘビーな話も聞いているんで、一概には言えませんが(笑)。 ――小城さんから見て、「アイドルとヲタク」の関係性とは? 小城 キレイに言うと「心の支え合い」じゃないでしょうか。今作品でも、単に「この子カワイイな!」という理由ではなく、心を病んでいる時に偶然目にしたり、耳にしたことがきっかけでファンになる過程を描いています。実際に、そういったきっかけでファンになったという話はよく聞きますしね。 ――“ドルヲタの良さ”は何だと思いますか? 小城 「いい意味で変わった人はいるけど、怖い人がいないところ」ですかね。初対面でも接しやすいです。もう、初めての現場に行くと、アイドルよりヲタクを見ちゃうくらい。すごい奇抜な格好してる人もいたりして(笑)。 ――最近のアイドルで、面白いなと思う子はいますか? 小城 「アイドルネッサンス」の石野理子ちゃんのTwitterは面白いですね、尖ってて(笑)。アイドルもキャラが被るくらいだったら、ありのままの自分を好きになってもらう方がいいと思っているんじゃないかと思います。他には「notall」と「きゃわふるトルネード」ですね。本を書かせていただいたりもしてますし、きゃわふるトルネードのかれんちゃんのお父さんがドルヲタなんですよ。お話もしたんですけど、「今度そういうマンガ描いてよ」と言われちゃいました。 ――最後に、改めて今作の紹介をお願いします。 小城 やはり、好きなことをやっていけるのは一筋縄ではいかないということを知ってほしいです。偏見もありますし。でも、やっぱり好きなことはやっていった方がいいと思いますよ。くじけずに頑張って欲しい、そんな気持ちを込めたマンガです。 * * *   インタビューを通して、「アイドルヲタクのあるある」を描いた作品ながら、小城さんのアイドルに対する思い、アイドルヲタクに対する思いがあふれた作品であることに、あらためて気付かされた。 アイドルファン、そしてアイドルファンの気持ちを知りたい人には必読の一冊であろう。 (取材・文=プレヤード)
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『堂々とアイドル推してもいいですか?』(KADOKAWA)
■『堂々とアイドル推してもいいですか?』 著 者:小城徹也 Twitter:@kojotetuya 出版社: 株式会社KADOKAWA 価 格:580円(税別)

少女マンガ界最大のタブー? 封印マンガ『キャンディ・キャンディ』を、40代おっさん目線で解説

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『キャンディ・キャンディ(1)』(講談社) 
 皆様こんにちは。美白ブームの昨今ですが、この夏の紫外線対策はバッチリだったでしょうか? シミ・そばかすは、イマドキの女性にとっては天敵ですよね。しかし、かつて「そばかす」「鼻ぺちゃ」「おてんば」こそが、モテ系女子のキーワードだった時代がありました。  今回ご紹介する『キャンディ・キャンディ』は、そんな「そばかす」ヒロインが活躍する少女マンガです。1975年に連載開始、翌年にアニメ化されて以降、少女マンガ界の人気を独占。関連グッズの売り上げは年間80億円にも上り、フランスやイタリア、アジア各国でも大人気となる、まさしく少女マンガ界のモンスターだったのですが、現在は読むことができない「封印マンガ」としても知られています。少女マンガの頂点を極めた大ヒット作に、いったい何があったのでしょうか? 『キャンディ・キャンディ』は、大ヒット作品であるにもかかわらず、2001年以降、マンガは絶版、アニメの再放送はなく、DVDなども出ていません。かつては『オバケのQ太郎』と並ぶ封印マンガの二大巨頭でしたが、オバQが再販されるようになった今、現在は『キャンディ・キャンディ』が封印マンガ独り勝ち(?)状態です。 『キャンディ・キャンディ』封印の理由は、一言でいえば、作画:いがらしゆみこ先生と原作:水木杏子先生の確執にあります。いがらし先生が、原作者である水木先生に許可を取らずにグッズ展開をしたため、裁判に発展。今もなお、2人が和解することはなく、『キャンディ・キャンディ』の封印は解かれていないのです。  そんな暗い話はここまでにして、『キャンディ・キャンディ』とはどんな作品だったのかをご紹介しましょう。悲劇のヒロインが王子様に見初められる「ザ・玉の輿」なシンデレラストーリーで、これぞまさに少女マンガの王道といえます。 ■とにかく不幸、絶望的境遇のヒロイン  タイトルのせいで、主人公の名前が『キャンディ・キャンディ』だと思い込んでいた僕のような人もいるかもしれませんが、本当の名前はキャンディス・ホワイトといいます。キャンディはニックネームというわけです。アントニオ猪木のニックネームがアントンみたいなもんですね。  キャンディは孤児院「ポニーの家」で育ったのですが、もともとはミシガン湖の湖畔に捨てられており、誕生日も本名もわからない女の子でした。同じ「ポニーの家」の孤児だった親友アニーは、お金持ちのブライトン家の養女として引き取られましたが、おてんばすぎるキャンディはまったく養女のお呼びがかからず……。やっとお呼びがかかったラガン家には、養女ではなく使用人として引き取られます。  さらにラガン家の子どもたちである、ニール&イライザ兄妹が超絶に意地悪で、キャンディを徹底的にいびり倒します。とにかく、小学生の女の子が思いつくレベルのあらゆる不幸を背負ってるのがキャンディです。 ■おてんば女子が、王子様キラーにランクアップ  このようにキャンディは徹底的に不幸な境遇でありながら、ラガン家の使用人になって以降はすごい勢いでモテ始めます。しかも、王子様&イケメン限定という、それはもう見事な愛され女子。これが、いわゆる「そばかす」「鼻ぺちゃ」「おてんば」効果です。  アンソニー、アーチー、ステアなど、お金持ちアードレー一族の王子様キャラがそろってキャンディを奪い合うほどのモテっぷり。その中でも、幼少期に出会った初恋の人「丘の上の王子様」にそっくりのNo.1イケメン、アンソニーとは運命を感じ合う仲になります。  しかし、このままアンソニーとラブラブで「玉の輿」確定かと思われていた最中、アンソニーが落馬事故で死んでしまい、再びキャンディは不幸のどん底に突き落とされます。少女マンガのヒロインたるもの、そう簡単には幸せにはなれないのです。 ■留学先でアウトローなイケメンにフォーリンラブ  アンソニーのことが忘れられず傷心のキャンディでしたが、アードレー家の当主であり、決して姿を現さない謎の男、ウィリアム大おじさまに気に入られ、養女として迎え入れられます。そして、ステア、アーチーらのいるロンドンへ留学します。  ロンドンでは、なんと死んだアンソニーにそっくりながら、性格は真逆のちょいワルなイケメン、テリィが登場。今度はテリィが気になり始めるキャンディ。持ち前のおてんばパワーで女子寮からロープで男子寮に忍び込むなど、肉食系女子っぷりを遺憾なく発揮します。 ■愛に生きる看護師、夜勤をサボる  ロンドンでテリィと着実にラブラブになっていくキャンディですが、ひそかにテリィを好いていた天敵・イライザの罠により、退学寸前に追い込まれます。しかし、テリィがキャンディをかばい、代わりに退学することに。  しばらくテリィのことが忘れられなかったキャンディは、看護師になるべく看護学校に入学。持ち前の明るさと人当たりで患者にも評判がよく、一人前の看護師になりますが、ブロードウェイで俳優としてデビューしたとうわさのテリィに一目会うため、夜勤をサボり、同僚に激怒されます。相変わらず、惚れた男の前では自分を見失いがちです。 ■神田川みたいな貧乏同棲生活  実はそれ以外にも、キャンディのピンチを要所要所で救ってくれていた謎のおじさん、アルバートさんというキャラがいます。髭モジャサングラスのワイルドな風貌で、動物たちと暮らしている謎の自由人です。  そんなアルバートさんが、事故で大けがをして、キャンディのいる病院に運ばれてきました。しかも、記憶喪失状態。キャンディは懸命な看護をするも、病院は身元不明のアルバートさんを不気味に思い、追い出そうとします。  そこで、キャンディは、記憶のないアルバートさんを介護するため同居を開始。勤務していた病院も辞めて、町医者の元へ転職。アルバートさんはアルバートさんでバイト先を転々とするなど、「神田川」のような極貧カップル生活を送ります。 ■壮大な伏線の回収、そして水戸黄門的ラスト  泥棒の汚名を着せられたり、メキシコに売られそうになったり、大嫌いなニールと無理やり結婚させられそうになったりと、ピンチを迎えるたびにキャンディを救ってくれる、謎のアードレー家当主、ウィリアム大おじさま。姿を一切現さない本作の最大の謎キャラが、ラストシーンでついにキャンディたちの目の前に現れることになります。  ウィリアム大おじさまの本名は「ウィリアム・アルバート・アードレー」。そう、キャンディのピンチを助け、後半はキャンディに介護をされた風来坊、アルバートさんこそがウィリアム大おじさまの正体でした。しかも、キャンディが幼少期に出会った初恋の人、「丘の上の王子さま」とも同一人物だったのです。  孤児院出身ということで一族の奴らに散々いじめられていたキャンディが、実は当主と同居経験もあるほどの仲良し……という水戸黄門的展開が待っていたのです。まあ、読者のほとんどが感づいていたはずなのですが、ラストシーンでちゃんとすべての謎が解明します。  というわけで、かの名作少女マンガ『キャンディ・キャンディ』を40代のおっさん目線で下世話に紹介してみました。結局のところ、何が言いたいかといいますと、『キャンディ・キャンディ』は大人が読んでも超面白い作品なので、早く封印が解かれて、みんなが気軽に読める日が来るといいなあと願っている次第です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

少女マンガ界最大のタブー? 封印マンガ『キャンディ・キャンディ』を、40代おっさん目線で解説

少女マンガ界最大のタブー? 封印マンガ『キャンディ・キャンディ』を、40代おっさん目線で解説の画像1
『キャンディ・キャンディ(1)』(講談社) 
 皆様こんにちは。美白ブームの昨今ですが、この夏の紫外線対策はバッチリだったでしょうか? シミ・そばかすは、イマドキの女性にとっては天敵ですよね。しかし、かつて「そばかす」「鼻ぺちゃ」「おてんば」こそが、モテ系女子のキーワードだった時代がありました。  今回ご紹介する『キャンディ・キャンディ』は、そんな「そばかす」ヒロインが活躍する少女マンガです。1975年に連載開始、翌年にアニメ化されて以降、少女マンガ界の人気を独占。関連グッズの売り上げは年間80億円にも上り、フランスやイタリア、アジア各国でも大人気となる、まさしく少女マンガ界のモンスターだったのですが、現在は読むことができない「封印マンガ」としても知られています。少女マンガの頂点を極めた大ヒット作に、いったい何があったのでしょうか? 『キャンディ・キャンディ』は、大ヒット作品であるにもかかわらず、2001年以降、マンガは絶版、アニメの再放送はなく、DVDなども出ていません。かつては『オバケのQ太郎』と並ぶ封印マンガの二大巨頭でしたが、オバQが再販されるようになった今、現在は『キャンディ・キャンディ』が封印マンガ独り勝ち(?)状態です。 『キャンディ・キャンディ』封印の理由は、一言でいえば、作画:いがらしゆみこ先生と原作:水木杏子先生の確執にあります。いがらし先生が、原作者である水木先生に許可を取らずにグッズ展開をしたため、裁判に発展。今もなお、2人が和解することはなく、『キャンディ・キャンディ』の封印は解かれていないのです。  そんな暗い話はここまでにして、『キャンディ・キャンディ』とはどんな作品だったのかをご紹介しましょう。悲劇のヒロインが王子様に見初められる「ザ・玉の輿」なシンデレラストーリーで、これぞまさに少女マンガの王道といえます。 ■とにかく不幸、絶望的境遇のヒロイン  タイトルのせいで、主人公の名前が『キャンディ・キャンディ』だと思い込んでいた僕のような人もいるかもしれませんが、本当の名前はキャンディス・ホワイトといいます。キャンディはニックネームというわけです。アントニオ猪木のニックネームがアントンみたいなもんですね。  キャンディは孤児院「ポニーの家」で育ったのですが、もともとはミシガン湖の湖畔に捨てられており、誕生日も本名もわからない女の子でした。同じ「ポニーの家」の孤児だった親友アニーは、お金持ちのブライトン家の養女として引き取られましたが、おてんばすぎるキャンディはまったく養女のお呼びがかからず……。やっとお呼びがかかったラガン家には、養女ではなく使用人として引き取られます。  さらにラガン家の子どもたちである、ニール&イライザ兄妹が超絶に意地悪で、キャンディを徹底的にいびり倒します。とにかく、小学生の女の子が思いつくレベルのあらゆる不幸を背負ってるのがキャンディです。 ■おてんば女子が、王子様キラーにランクアップ  このようにキャンディは徹底的に不幸な境遇でありながら、ラガン家の使用人になって以降はすごい勢いでモテ始めます。しかも、王子様&イケメン限定という、それはもう見事な愛され女子。これが、いわゆる「そばかす」「鼻ぺちゃ」「おてんば」効果です。  アンソニー、アーチー、ステアなど、お金持ちアードレー一族の王子様キャラがそろってキャンディを奪い合うほどのモテっぷり。その中でも、幼少期に出会った初恋の人「丘の上の王子様」にそっくりのNo.1イケメン、アンソニーとは運命を感じ合う仲になります。  しかし、このままアンソニーとラブラブで「玉の輿」確定かと思われていた最中、アンソニーが落馬事故で死んでしまい、再びキャンディは不幸のどん底に突き落とされます。少女マンガのヒロインたるもの、そう簡単には幸せにはなれないのです。 ■留学先でアウトローなイケメンにフォーリンラブ  アンソニーのことが忘れられず傷心のキャンディでしたが、アードレー家の当主であり、決して姿を現さない謎の男、ウィリアム大おじさまに気に入られ、養女として迎え入れられます。そして、ステア、アーチーらのいるロンドンへ留学します。  ロンドンでは、なんと死んだアンソニーにそっくりながら、性格は真逆のちょいワルなイケメン、テリィが登場。今度はテリィが気になり始めるキャンディ。持ち前のおてんばパワーで女子寮からロープで男子寮に忍び込むなど、肉食系女子っぷりを遺憾なく発揮します。 ■愛に生きる看護師、夜勤をサボる  ロンドンでテリィと着実にラブラブになっていくキャンディですが、ひそかにテリィを好いていた天敵・イライザの罠により、退学寸前に追い込まれます。しかし、テリィがキャンディをかばい、代わりに退学することに。  しばらくテリィのことが忘れられなかったキャンディは、看護師になるべく看護学校に入学。持ち前の明るさと人当たりで患者にも評判がよく、一人前の看護師になりますが、ブロードウェイで俳優としてデビューしたとうわさのテリィに一目会うため、夜勤をサボり、同僚に激怒されます。相変わらず、惚れた男の前では自分を見失いがちです。 ■神田川みたいな貧乏同棲生活  実はそれ以外にも、キャンディのピンチを要所要所で救ってくれていた謎のおじさん、アルバートさんというキャラがいます。髭モジャサングラスのワイルドな風貌で、動物たちと暮らしている謎の自由人です。  そんなアルバートさんが、事故で大けがをして、キャンディのいる病院に運ばれてきました。しかも、記憶喪失状態。キャンディは懸命な看護をするも、病院は身元不明のアルバートさんを不気味に思い、追い出そうとします。  そこで、キャンディは、記憶のないアルバートさんを介護するため同居を開始。勤務していた病院も辞めて、町医者の元へ転職。アルバートさんはアルバートさんでバイト先を転々とするなど、「神田川」のような極貧カップル生活を送ります。 ■壮大な伏線の回収、そして水戸黄門的ラスト  泥棒の汚名を着せられたり、メキシコに売られそうになったり、大嫌いなニールと無理やり結婚させられそうになったりと、ピンチを迎えるたびにキャンディを救ってくれる、謎のアードレー家当主、ウィリアム大おじさま。姿を一切現さない本作の最大の謎キャラが、ラストシーンでついにキャンディたちの目の前に現れることになります。  ウィリアム大おじさまの本名は「ウィリアム・アルバート・アードレー」。そう、キャンディのピンチを助け、後半はキャンディに介護をされた風来坊、アルバートさんこそがウィリアム大おじさまの正体でした。しかも、キャンディが幼少期に出会った初恋の人、「丘の上の王子さま」とも同一人物だったのです。  孤児院出身ということで一族の奴らに散々いじめられていたキャンディが、実は当主と同居経験もあるほどの仲良し……という水戸黄門的展開が待っていたのです。まあ、読者のほとんどが感づいていたはずなのですが、ラストシーンでちゃんとすべての謎が解明します。  というわけで、かの名作少女マンガ『キャンディ・キャンディ』を40代のおっさん目線で下世話に紹介してみました。結局のところ、何が言いたいかといいますと、『キャンディ・キャンディ』は大人が読んでも超面白い作品なので、早く封印が解かれて、みんなが気軽に読める日が来るといいなあと願っている次第です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

単行本は、まったく売れていなかった……ジョージ秋山『浮浪雲』連載終了に安堵の声も

単行本は、まったく売れていなかった……ジョージ秋山『浮浪雲』連載終了に安堵の声もの画像1
『浮浪雲 111』(小学館)
「ようやく終わってくれるのか……」  小学館発行のマンガ雑誌「ビッグコミックオリジナル」にて連載されてきたジョージ秋山の『浮浪雲(はぐれぐも)』が、9月20日発売号で最終回を迎えることが話題を呼んでいる。 『浮浪雲』は、同誌創刊翌年の1973年から連載されてきた作品。『三丁目の夕日』(1974年連載開始~継続中)、『釣りバカ日誌』(1979年連載開始~継続中)など長寿連載の多い同誌連載作の中でも、群を抜いて長期間連載されてきた作品である。 『浮浪雲』は、ジョージ秋山が初めて青年誌に発表した作品であり、幕末の品川宿を舞台に、主人公・雲を中心とした日常を描いてきた。主人公の名前のように、ゆらゆらと綴られる物語には、さまざまな人生のヒントが込められている。そんな評価の下で、常に「ビッグコミックオリジナル」の後ろのほうに掲載され、「雑誌の読者なら必ず読んでいる作品」という地位を不動のものにしてきた。  けれども、あくまで高いのは作品の人気だけであった。編集部の事情に詳しい関係者は明かす。 「作品は常に一定の支持を集めてきました。しかし、作品は人気があるのに、単行本はあまり売れないのです。そのため、ある時期からは単行本の発行部数を減らしていたんです。でも、先生の印税分を減らすことはできません。だから、印税は今まで通りとして、実際の刷り部数を減らしていたのです」  つまり、印税は1万部分を支払うが、実際には5,000部しか印刷・製本しない……というスタイルで、連載は継続してきたのだという(実際の数字は不明)。  日本雑誌協会の公表しているデータによれば、今年4月~6月期の「ビッグコミックオリジナル」の発行部数は50万部。「ビッグコミックスピリッツ」の14万5,833部。「モーニング」の20万8,358部から比べるとはるかに多い。  とはいえ、2008年4月~6月期の82万8,333部からは、かなり目減りしている。それ以前には100万部を突破していた時代もあるわけだから、かなり台所事情が苦しくなっているのは、自ずと理解できる。  そうした中にあって、単行本が売れない『浮浪雲』は、重荷になっていたというウワサも。ゆえに、関係者の間では連載終了に安堵の声も聞かれているのである。  とはいえ、たとえ単行本の売り上げが芳しくなかったからといって、作品の価値が下がるわけではない。この連載終了を機に、新たに単行本の需要が伸びる可能性も期待できる。  惰性で読んでいるつもりが、ふと深さに気づかされるのが『浮浪雲』という作品の最大の特徴。連載が終了する今だからこそ、本棚に余裕があるなら揃えておきたい作品のはずだ。 (文=是枝了以)