「ウチらが一番カワイイし」話題の『異色肌ギャル』をプロデュースするmiyakoの“素顔”に突撃インタビュー!

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異色肌ギャルの発案者でありプロデューサーのmiyakoさん
 今年の6月26日、ツイッターのタイムラインに流れてきた以下のツイートが、私の凝り固まった脳味噌に強烈な衝撃を与えてくれた。  髪の毛は蛍光塗料で染めたような青にピンク、そして全身の肌は鮮やかな緑色という、二次元の世界から飛び出してきたような巨乳美女が、舌を出してこちらを挑発していたのだ。この女性こそがツイートをしたmiyakoさんだ。  そこには写真が3枚あり、残りの2枚は明らかに同族と思われる、「肌色」を放棄した異色なギャルの群れ。そんなインパクト抜群のヴィジュアルに添えられた「ウチらが一番カワイイし」というコピーもまた異色、いや出色の出来だった。  この異色肌ギャルのツイートは1万以上のリツイートを集め、国内外で大きな話題を呼ぶこととなったのだが、個人的にその驚きを大きくしたのは、この緑色の肌を持つ美女と『八潮秘宝館』というディープスポットで会っていたことだった。そのときは高級ラブドールに囲まれていても違和感を感じさせない、いい意味で人形っぽさのある色白の女性だったのに。
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写真中央がmiyakoさん。八潮秘宝館についてはこちらの記事参照。
 あのときに会ったmiyakoさんが、まさか肌を緑色に染めていたとは。この「異色肌ギャル」は瞬く間にムーブメントを呼び、各媒体のインタビューやテレビ番組の出演、さらには蜷川実花がプロデュースするイベントへの出演も果たした。  メディアを通じて観る異色肌ギャルのmiyakoさんと、私が記憶しているmiyakoさんの間を埋めたい。そんな個人的な動機で恐縮なのだが、10月20日に歌舞伎町で行われたハロウィンイベントの前に時間をいただき、異色メイク前のmiyakoさんにインタビューをお願いした。
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異色肌ギャルではない時のmiyakoさん。
──さっそくですが、まずはmiyakoさんが何者なのかを教えてもらっていいですか? miyako 元グラビアイドルで、今はモデルや異色肌ギャルのプロデューサーですね。 ──やっぱり一般人のかわいさじゃないですよね。ではプロデューサーに聞きますが、この異色肌ギャルというのは一体何者なのでしょう。 miyako いわゆるアメコミとか、ロッキン・ジェリービーンさん(ミュージシャンでもある日本人覆面漫画家)、水野純子さん(コケティッシュでグロテスクな作風の漫画家・イラストレーター)とか、イラストとかコミックの世界では肌色が現実とは違うキャラが普通だったので、それで私がギャルでやってみよ~って趣味で撮影したのが始まりです。 ──なるほど、異色肌でギャルになってみようと。すごい発想だと思いますけど、miyakoさんは元ギャルなんですか? miyako 全然。ただのオタクです。マンガ、ゲームが大好き人間。オタクというか、引きこもりに近いかな。 ──具体的にはどんな作品ですか。 miyako ゲームだと、『バイオショック』、『龍が如く』、『クーロンズゲート』、『探偵 神宮寺三郎』シリーズとか。マンガなら『パタリロ』が好きです! ──確かにギャルとは関係ないラインナップですね。まさか『パタリロ』がくるとは。 miyako でもギャルに憧れはあったんです。ガングロとかヤマンバとか。それでトランスを聞いてみたり、「egg」(大洋図書)とか「小悪魔ageha」(インフォレスト)を買ってみたり、そういう努力はしていました。その頃に憧れたギャルをオマージュして、ちょっと異色肌でやってみようと思ったのが2年前です。最初は一人でスタジオを借りて、地味に撮影していました。 ──自分の中に眠っていたギャルへの憧れを、得意分野であるオタクカルチャーから「異色肌」と結び付けて、コスプレのような感じで実現させたということですかね。 miyako よしじゃあ今度は一人ではなく、何人かでやろうと思って募集をかけたら、けっこう集まったんです。それで6月に歌舞伎町のバーを借りて撮影をしたら、それがTwitterでバズって、いろんなところからご依頼がきたりとか。 ──あの写真の表情、すごくいいですよね。 miyako 「アヘ顔」ですね。あれでバーッといきました。でもこんなことになるとは全然思っていなくて。蜷川実花さんに呼んでいただけたり、カズ・レーザーさんをメイクしたり……良い思い出です。 ──いやいや、活躍はまだまだこれからですよ!
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異色肌のときとは、ちょっと表情が違うように見える
──異色肌のメイクは何でするんですか? miyako 舞台役者とかピエロとかが使うドーランですね。三善(みつよし)というメーカーを使っています。一回のメイクで2時間以上かかるし、やっぱり一回異色肌になるだけでも、すごく体力を使うので、短期間に依頼が重なると、何回も塗っては落としてってなるので、ものすごく大変ですね。塗ってしまうと、ものに触れないとか、着替えもできないとか、そういうのがすごくストレスで。 ──なるほど、異色肌になるのも楽じゃないんですね。他のメンバーはメイクや髪型がバラバラなんだけど、グループとしての統一感を感じます。人数が増えると、やっぱりパワーアップしますね。このヴィジュアルは自分たちで考えるんですか? miyako メンバーがそれぞれ自分で考えますね。ただ、やっぱりなるべくハデにしようとか、色がかぶらないようにしなきゃとかは、こっちで気を付けています。 ──そこはプロデューサーの手腕ですね。 miyako ちょっとは、かな。 ──この異色肌ギャルには設定とかあるんですか? 宇宙から来たとか、特殊能力で変身しているとか。 miyako 自分のキャラに近いかな。何か架空の存在になりきるというよりは、自分の延長線上にあるキャラクターです。名前もキャラ名とかがあるわけではなく、普段の自分の名前ですね。 ──miyakoさん以外のメンバーは、どんな人がいるんですか? miyako ラブドールと暮らすグラドル、ぽっちゃりアイドル、ストリッパー、漫画家、イベント制作、主婦といろいろですね。全部で10人くらいかな。こんな活動をしているけど、実はオタクでおとなしいメンバーばっかりです。異色肌は自己解放みたいなところが結構あって、あの派手なメイクをすることで、普段の弱い自分からの開放がそこにある。変身すると弱いヒロインが強い魔法少女になるみたいな。でも中には普段から異色肌みたいな子もいるかな。 ──なるほど。確かにもともとが強そうな方が混ざってますね。あ、良い意味でですよ。
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本日集まった異色肌ギャル達の貴重なメイク前の姿。
──外観を変えると、内面も変わります? miyako かわいいなー、自分! ってみんなテンションが上がります。その変身が大変なんですけど。 ──ちょっと特殊かもしれませんが、理想の自分になるためのメイクなんでしょうね。
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イベントでの異色肌ギャル。誰がどれになったかわかりますか?※左の黒肌ギャルだけメイク前は写ってません(写真提供:海老式
──「ウチらが一番カワイイし」という印象的なフレーズとつながってきましたね。 miyako あのツイートをするとき、何かギャルっぽい強い言葉を考えようと思って、ふと思いついたフレーズです。今はみんなの合言葉になっていますね。自己肯定のフレーズ。オタクって基本的に自己肯定力が低いので。 ──かわいいとか、きれいだねとか、人に思われるためにやっているのとは、ちょっと違う感じですね。 miyako あわよくば、かわいいって思われたいというのはありますよ。でも、自分で自分がかわいい! と思いたい方が強いです。みんなが自己肯定をできる瞬間が、異色肌になっている瞬間なのかなって思います。
「ウチらが一番カワイイし」話題の『異色肌ギャル』をプロデュースするmiyakoの素顔に突撃インタビュー!の画像8
自己肯定、最高!(写真提供:海老式
──今後の活動はどんなことを予定しているのでしょう。 miyako また新たに作品撮りをしたりとか、もっとボーダレス的な活動に参加したりとか、みんなを楽しませていけるようなことができたらなーって思っています。自己肯定力をみんなでもっと上げていくスタイルで。ハロウィンが近いので、みんなにも異色肌を試してほしいな。ただ、企業が商用でのパロディはやらないでいただいて……。
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ハロウィンイベントでのステージパフォーマンス(写真提供:@lmskii
 miyakoさんが異色肌ギャルになったのは、ただ目立ちたいからというわけではなく、なりたい自分を積み重ねた結果なのだろう。ちょっと自信を持った状態の自分になるためのコスプレなのだ。  こうしてじっくりと話を伺ったおかげで、目の前にいた色白のmiyakoさんと、写真で見た緑色のmiyakoさんが、しっかりと繋がって見えるようになった。 (取材・文=鴨野橋太郎)

「ウチらが一番カワイイし」話題の『異色肌ギャル』をプロデュースするmiyakoの“素顔”に突撃インタビュー!

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異色肌ギャルの発案者でありプロデューサーのmiyakoさん
 今年の6月26日、ツイッターのタイムラインに流れてきた以下のツイートが、私の凝り固まった脳味噌に強烈な衝撃を与えてくれた。  髪の毛は蛍光塗料で染めたような青にピンク、そして全身の肌は鮮やかな緑色という、二次元の世界から飛び出してきたような巨乳美女が、舌を出してこちらを挑発していたのだ。この女性こそがツイートをしたmiyakoさんだ。  そこには写真が3枚あり、残りの2枚は明らかに同族と思われる、「肌色」を放棄した異色なギャルの群れ。そんなインパクト抜群のヴィジュアルに添えられた「ウチらが一番カワイイし」というコピーもまた異色、いや出色の出来だった。  この異色肌ギャルのツイートは1万以上のリツイートを集め、国内外で大きな話題を呼ぶこととなったのだが、個人的にその驚きを大きくしたのは、この緑色の肌を持つ美女と『八潮秘宝館』というディープスポットで会っていたことだった。そのときは高級ラブドールに囲まれていても違和感を感じさせない、いい意味で人形っぽさのある色白の女性だったのに。
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写真中央がmiyakoさん。八潮秘宝館についてはこちらの記事参照。
 あのときに会ったmiyakoさんが、まさか肌を緑色に染めていたとは。この「異色肌ギャル」は瞬く間にムーブメントを呼び、各媒体のインタビューやテレビ番組の出演、さらには蜷川実花がプロデュースするイベントへの出演も果たした。  メディアを通じて観る異色肌ギャルのmiyakoさんと、私が記憶しているmiyakoさんの間を埋めたい。そんな個人的な動機で恐縮なのだが、10月20日に歌舞伎町で行われたハロウィンイベントの前に時間をいただき、異色メイク前のmiyakoさんにインタビューをお願いした。
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異色肌ギャルではない時のmiyakoさん。
──さっそくですが、まずはmiyakoさんが何者なのかを教えてもらっていいですか? miyako 元グラビアイドルで、今はモデルや異色肌ギャルのプロデューサーですね。 ──やっぱり一般人のかわいさじゃないですよね。ではプロデューサーに聞きますが、この異色肌ギャルというのは一体何者なのでしょう。 miyako いわゆるアメコミとか、ロッキン・ジェリービーンさん(ミュージシャンでもある日本人覆面漫画家)、水野純子さん(コケティッシュでグロテスクな作風の漫画家・イラストレーター)とか、イラストとかコミックの世界では肌色が現実とは違うキャラが普通だったので、それで私がギャルでやってみよ~って趣味で撮影したのが始まりです。 ──なるほど、異色肌でギャルになってみようと。すごい発想だと思いますけど、miyakoさんは元ギャルなんですか? miyako 全然。ただのオタクです。マンガ、ゲームが大好き人間。オタクというか、引きこもりに近いかな。 ──具体的にはどんな作品ですか。 miyako ゲームだと、『バイオショック』、『龍が如く』、『クーロンズゲート』、『探偵 神宮寺三郎』シリーズとか。マンガなら『パタリロ』が好きです! ──確かにギャルとは関係ないラインナップですね。まさか『パタリロ』がくるとは。 miyako でもギャルに憧れはあったんです。ガングロとかヤマンバとか。それでトランスを聞いてみたり、「egg」(大洋図書)とか「小悪魔ageha」(インフォレスト)を買ってみたり、そういう努力はしていました。その頃に憧れたギャルをオマージュして、ちょっと異色肌でやってみようと思ったのが2年前です。最初は一人でスタジオを借りて、地味に撮影していました。 ──自分の中に眠っていたギャルへの憧れを、得意分野であるオタクカルチャーから「異色肌」と結び付けて、コスプレのような感じで実現させたということですかね。 miyako よしじゃあ今度は一人ではなく、何人かでやろうと思って募集をかけたら、けっこう集まったんです。それで6月に歌舞伎町のバーを借りて撮影をしたら、それがTwitterでバズって、いろんなところからご依頼がきたりとか。 ──あの写真の表情、すごくいいですよね。 miyako 「アヘ顔」ですね。あれでバーッといきました。でもこんなことになるとは全然思っていなくて。蜷川実花さんに呼んでいただけたり、カズ・レーザーさんをメイクしたり……良い思い出です。 ──いやいや、活躍はまだまだこれからですよ!
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異色肌のときとは、ちょっと表情が違うように見える
──異色肌のメイクは何でするんですか? miyako 舞台役者とかピエロとかが使うドーランですね。三善(みつよし)というメーカーを使っています。一回のメイクで2時間以上かかるし、やっぱり一回異色肌になるだけでも、すごく体力を使うので、短期間に依頼が重なると、何回も塗っては落としてってなるので、ものすごく大変ですね。塗ってしまうと、ものに触れないとか、着替えもできないとか、そういうのがすごくストレスで。 ──なるほど、異色肌になるのも楽じゃないんですね。他のメンバーはメイクや髪型がバラバラなんだけど、グループとしての統一感を感じます。人数が増えると、やっぱりパワーアップしますね。このヴィジュアルは自分たちで考えるんですか? miyako メンバーがそれぞれ自分で考えますね。ただ、やっぱりなるべくハデにしようとか、色がかぶらないようにしなきゃとかは、こっちで気を付けています。 ──そこはプロデューサーの手腕ですね。 miyako ちょっとは、かな。
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miyakoさんは異色肌ギャルの発案者であり、現在はメンバーを統括するプロデューサーでもある
──この異色肌ギャルには設定とかあるんですか? 宇宙から来たとか、特殊能力で変身しているとか。 miyako 自分のキャラに近いかな。何か架空の存在になりきるというよりは、自分の延長線上にあるキャラクターです。名前もキャラ名とかがあるわけではなく、普段の自分の名前ですね。 ──miyakoさん以外のメンバーは、どんな人がいるんですか? miyako ラブドールと暮らすグラドル、ぽっちゃりアイドル、ストリッパー、漫画家、イベントスタッフ、主婦といろいろですね。全部で10人くらいかな。こんな活動をしているけど、実はオタクでおとなしいメンバーばっかりです。異色肌は自己解放みたいなところが結構あって、あの派手なメイクをすることで、普段の弱い自分からの開放がそこにある。変身すると弱いヒロインが強い魔法少女になるみたいな。でも中には普段から異色肌みたいな子もいるかな。 ──なるほど。確かにもともとが強そうな方が混ざってますね。あ、良い意味でですよ。
「ウチらが一番カワイイし」話題の『異色肌ギャル』をプロデュースするmiyakoの素顔に突撃インタビュー!の画像6
本日集まった異色肌ギャル達の貴重なメイク前の姿。
──外観を変えると、内面も変わります? miyako かわいいなー、自分! ってみんなテンションが上がります。その変身が大変なんですけど。 ──ちょっと特殊かもしれませんが、理想の自分になるためのメイクなんでしょうね。
「ウチらが一番カワイイし」話題の『異色肌ギャル』をプロデュースするmiyakoの素顔に突撃インタビュー!の画像7
イベントでの異色肌ギャル。誰がどれになったかわかりますか?※左の黒肌ギャルだけメイク前は写ってません(写真提供:海老式
──「ウチらが一番カワイイし」という印象的なフレーズとつながってきましたね。 miyako あのツイートをするとき、何かギャルっぽい強い言葉を考えようと思って、ふと思いついたフレーズです。今はみんなの合言葉になっていますね。自己肯定のフレーズ。オタクって基本的に自己肯定力が低いので。 ──かわいいとか、きれいだねとか、人に思われるためにやっているのとは、ちょっと違う感じですね。 miyako あわよくば、かわいいって思われたいというのはありますよ。でも、自分で自分がかわいい! と思いたい方が強いです。みんなが自己肯定をできる瞬間が、異色肌になっている瞬間なのかなって思います。
「ウチらが一番カワイイし」話題の『異色肌ギャル』をプロデュースするmiyakoの素顔に突撃インタビュー!の画像8
自己肯定、最高!(写真提供:海老式
──今後の活動はどんなことを予定しているのでしょう。 miyako また新たに作品撮りをしたりとか、もっとボーダレス的な活動に参加したりとか、みんなを楽しませていけるようなことができたらなーって思っています。自己肯定力をみんなでもっと上げていくスタイルで。ハロウィンが近いので、みんなにも異色肌を試してほしいな。ただ、企業が商用でのパロディはやらないでいただいて……。  * * *  miyakoさんが異色肌ギャルになったのは、ただ目立ちたいからというわけではなく、なりたい自分を積み重ねた結果なのだろう。ちょっと自信を持った状態の自分になるためのコスプレなのだ。  こうしてじっくりと話を伺ったおかげで、目の前にいた色白のmiyakoさんと、写真で見た緑色のmiyakoさんが、しっかりと繋がって見えるようになった。 (取材・文=鴨野橋太郎)

「人を食う」はOKで「おっぱいポロリ」はNG? 世界の「R-18」をTokyo Otaku Modeに聞く

「人を食う」はOKで「おっぱいポロリ」はNG? 世界の「R-18」をTokyo Otaku Modeに聞くの画像1
「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国のフィギュア週間ランキング(2017年10月)
 日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか?  日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に前編(http://www.cyzo.com/2017/10/post_34943.html)から話を聞いている。こちらの後編では、「海外のオタクイベントの様子」や「世界のR-18の尺度の違い」について伺っていく。 ■海外のオタクイベントは来場者の半数近くがコスプレをしている? ――前編ではフィギュアが一番人気、と伺いましたが、Tokyo Otaku Modeでは書籍も扱っているんですか? 高橋裕氏(以下、高橋) はい。マンガではなく画集ですと、日本語のままで販売もできますので。日本のイラストレーターの画集の場合、むしろ海外のコレクターにとっては、オリジナル版である日本語の方が「コレクションとして価値がある」というのはあると思いますね。 ――「オリジナルを所有したい」というオタク、マニア心は万国共通なんですね。欧米でもオタクイベントは行われていますよね。例えば日本の『コミックマーケット』などと比べ、どのような雰囲気なのでしょうか? 高橋 海外のイベントは日本のイベントより来場者の方がコスプレをしていることが多いな、と思いますね。日本だとコスプレをする人はコスプレをしに、買い物をする人は買い物に、と目的が分かれている感じがしますが、欧米だとそこがいっしょくたになっている印象はあります。なによりコスプレをしている人数が多いですね。来場者の半数くらいがコスプレをしているようにも見えます。 ――会場は東京ビッグサイトぐらいの広さなのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 大型イベントはそのくらいの会場で行っていますね。有名どころとして、ロサンゼルスで開催される『アニメエキスポ』は、4日間で30~35万人が来場するといわれています。フランスの『ジャパンエキスポ』も規模は同じくらいです。そういった大型イベントではコミケ同様、大きな企業ブースがあったりもします。日本のメーカーさん、版元さんも見かけますよ。 ――コミケが3日間で50万人強(杉並区の全人口くらい)ですから、コミケほどではないにしろ、大した動員力ですね。イベント参加者の半数近くがコスプレをしている、というのは日本だとない感覚ですよね。コスプレがここまで広がっているのはなぜだと思いますか? 高橋 米国は日本よりずっとハロウィンの文化が根付いていますから、仮装への敷居が低いというのはあると思います。オタク系イベントに限らず、スターウオーズやマーベルの新作映画が公開されると、ダースベーダーなどのコスプレをした人が映画館でずらりと並んでいたりしますから。 ――「コスプレ」というと日本が先進国のように思えますが、考えてみれば「仮装」は、ここ数年でハロウィンが一部で定着しだした日本より、米国の方がはるかに先輩ですよね。米国のオタクイベントでは、どういった日本のアニメやマンガのキャラクターがコスプレされていますか? 秋山 ほんとうに時期、トレンドによりますね。何年か前の『ニューヨークコミコン』では『進撃の巨人』が多かったです。 ■「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、R-18か? ――Tokyo Otaku Modeでは扱わない商材はあるのでしょうか? 秋山 R-18は今のところ扱っていないですね。 ――なぜなのでしょうか? 秋山 性描写の規制は国によってルールが違いますし、国や地域によって宗教、文化的な背景や価値観に違いがあります。そのあたりを把握しないまま、相手国の文化的タブーに触れてしまえば国際問題にもなりかねません。そこまできめ細やかにみていくヒューマンリソースが今は社内にないので、そういったものに触れない範疇で扱っていますね。 ――日本の性表現はかなり過激とは言われていますよね。少女マンガでも掲載誌によってはセックスシーンがありますし。それに慣れてしまうと他国の「常識」が見えにくくなりますが、例えば他国のR-18事情はどんな感じなのでしょう? 秋山 例えば、シンガポールはヌードがNGです。 ――「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、小学生が読むような週刊少年マンガ誌にも掲載される、古典的表現の一つですが、これもNGなんでしょうか。 秋山 NGですね。 ――「セックスシーンじゃないからいい」とか、そういう“文脈”の話ではないんですね。おっぱいポロリはアウトだと。 秋山 はい。ですので、ある一国を対象にするというのでなく、グローバルに展開するという場合「性的な表現」はとても難しい問題なんです。他にも、例えばゲームでは、結構露出度の高いコスチュームを着ている女性キャラクターがよくいますよね。 ――ビキニの水着に少し装飾がついたようなコスチュームの女性キャラクターは、「あるある」ですよね。 秋山 はい。そういったキャラクターのフィギュアを販売する際に写真つきでメルマガで告知したところ、読者である米国の子供のお母さんから「こういう情報が来ると、親としては戸惑ってしまう」というご意見をいただいたこともありました。 ――米国のAmazonを見ると『進撃の巨人』『東京喰種』が人気です。人を食うのがOKなら、ビキニみたいな衣装のひとつやふたつ……、と思ってしまいそうになりますね。 秋山 あと、日本のアニメやマンガの女性キャラクターは、特に欧米の方には幼く見えるというのもありますね。 ――小児性愛に関するさまざまな規制については、日本がゆるいのか、米国が厳しいのかというのはありますが、歴然な「差」がありますよね。 秋山 はい。グローバルに展開するサービスでは、法律の違いもそうですが、宗教観や文化の違いなどにも敏感でないといけないと思います。 ■2020年は、日本が世界に注目してもらうラストチャンス? ――Tokyo Otaku Modeさんが今後広げていきたい事業はありますか? 秋山 イベントへの出展に加え、店舗など、直接、リアルにお客様と接点を持てる場を増やしていきたいですね。 ――2020年のオリンピックに向け、日本への注目は上がっていますね。 秋山 今後数十年を見ても、2020年ほど日本が世界から注目される機会はおそらくないでしょう。2020年に向けいかに世界中の人に日本は楽しいか、また、行ってみたいと思ってもらえるかが、2020年以降においてもとても大切だと思います。このチャンスを逃さないようにしたいですね。  当社が今まで培ってきたノウハウなどを活かし、新しく海外に向けて日本のオタクグッズを製造、販売したい、という会社の支援も行っています。 ――それは「競合他社の育成」になってしまうように思えますが……? 秋山 いえ、オタクグッズは本当に商材が多彩ですから。一緒に2020年に向けて盛り上げられればと思います。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/

「人を食う」はOKで「おっぱいポロリ」はNG? 世界の「R-18」をTokyo Otaku Modeに聞く

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「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国のフィギュア週間ランキング(2017年10月)
 日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか?  日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に前編(http://www.cyzo.com/2017/10/post_34943.html)から話を聞いている。こちらの後編では、「海外のオタクイベントの様子」や「世界のR-18の尺度の違い」について伺っていく。 ■海外のオタクイベントは来場者の半数近くがコスプレをしている? ――前編ではフィギュアが一番人気、と伺いましたが、Tokyo Otaku Modeでは書籍も扱っているんですか? 高橋裕氏(以下、高橋) はい。マンガではなく画集ですと、日本語のままで販売もできますので。日本のイラストレーターの画集の場合、むしろ海外のコレクターにとっては、オリジナル版である日本語の方が「コレクションとして価値がある」というのはあると思いますね。 ――「オリジナルを所有したい」というオタク、マニア心は万国共通なんですね。欧米でもオタクイベントは行われていますよね。例えば日本の『コミックマーケット』などと比べ、どのような雰囲気なのでしょうか? 高橋 海外のイベントは日本のイベントより来場者の方がコスプレをしていることが多いな、と思いますね。日本だとコスプレをする人はコスプレをしに、買い物をする人は買い物に、と目的が分かれている感じがしますが、欧米だとそこがいっしょくたになっている印象はあります。なによりコスプレをしている人数が多いですね。来場者の半数くらいがコスプレをしているようにも見えます。 ――会場は東京ビッグサイトぐらいの広さなのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 大型イベントはそのくらいの会場で行っていますね。有名どころとして、ロサンゼルスで開催される『アニメエキスポ』は、4日間で30~35万人が来場するといわれています。フランスの『ジャパンエキスポ』も規模は同じくらいです。そういった大型イベントではコミケ同様、大きな企業ブースがあったりもします。日本のメーカーさん、版元さんも見かけますよ。 ――コミケが3日間で50万人強(杉並区の全人口くらい)ですから、コミケほどではないにしろ、大した動員力ですね。イベント参加者の半数近くがコスプレをしている、というのは日本だとない感覚ですよね。コスプレがここまで広がっているのはなぜだと思いますか? 高橋 米国は日本よりずっとハロウィンの文化が根付いていますから、仮装への敷居が低いというのはあると思います。オタク系イベントに限らず、スターウオーズやマーベルの新作映画が公開されると、ダースベーダーなどのコスプレをした人が映画館でずらりと並んでいたりしますから。 ――「コスプレ」というと日本が先進国のように思えますが、考えてみれば「仮装」は、ここ数年でハロウィンが一部で定着しだした日本より、米国の方がはるかに先輩ですよね。米国のオタクイベントでは、どういった日本のアニメやマンガのキャラクターがコスプレされていますか? 秋山 ほんとうに時期、トレンドによりますね。何年か前の『ニューヨークコミコン』では『進撃の巨人』が多かったです。 ■「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、R-18か? ――Tokyo Otaku Modeでは扱わない商材はあるのでしょうか? 秋山 R-18は今のところ扱っていないですね。 ――なぜなのでしょうか? 秋山 性描写の規制は国によってルールが違いますし、国や地域によって宗教、文化的な背景や価値観に違いがあります。そのあたりを把握しないまま、相手国の文化的タブーに触れてしまえば国際問題にもなりかねません。そこまできめ細やかにみていくヒューマンリソースが今は社内にないので、そういったものに触れない範疇で扱っていますね。 ――日本の性表現はかなり過激とは言われていますよね。少女マンガでも掲載誌によってはセックスシーンがありますし。それに慣れてしまうと他国の「常識」が見えにくくなりますが、例えば他国のR-18事情はどんな感じなのでしょう? 秋山 例えば、シンガポールはヌードがNGです。 ――「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、小学生が読むような週刊少年マンガ誌にも掲載される、古典的表現の一つですが、これもNGなんでしょうか。 秋山 NGですね。 ――「セックスシーンじゃないからいい」とか、そういう“文脈”の話ではないんですね。おっぱいポロリはアウトだと。 秋山 はい。ですので、ある一国を対象にするというのでなく、グローバルに展開するという場合「性的な表現」はとても難しい問題なんです。他にも、例えばゲームでは、結構露出度の高いコスチュームを着ている女性キャラクターがよくいますよね。 ――ビキニの水着に少し装飾がついたようなコスチュームの女性キャラクターは、「あるある」ですよね。 秋山 はい。そういったキャラクターのフィギュアを販売する際に写真つきでメルマガで告知したところ、読者である米国の子供のお母さんから「こういう情報が来ると、親としては戸惑ってしまう」というご意見をいただいたこともありました。 ――米国のAmazonを見ると『進撃の巨人』『東京喰種』が人気です。人を食うのがOKなら、ビキニみたいな衣装のひとつやふたつ……、と思ってしまいそうになりますね。 秋山 あと、日本のアニメやマンガの女性キャラクターは、特に欧米の方には幼く見えるというのもありますね。 ――小児性愛に関するさまざまな規制については、日本がゆるいのか、米国が厳しいのかというのはありますが、歴然な「差」がありますよね。 秋山 はい。グローバルに展開するサービスでは、法律の違いもそうですが、宗教観や文化の違いなどにも敏感でないといけないと思います。 ■2020年は、日本が世界に注目してもらうラストチャンス? ――Tokyo Otaku Modeさんが今後広げていきたい事業はありますか? 秋山 イベントへの出展に加え、店舗など、直接、リアルにお客様と接点を持てる場を増やしていきたいですね。 ――2020年のオリンピックに向け、日本への注目は上がっていますね。 秋山 今後数十年を見ても、2020年ほど日本が世界から注目される機会はおそらくないでしょう。2020年に向けいかに世界中の人に日本は楽しいか、また、行ってみたいと思ってもらえるかが、2020年以降においてもとても大切だと思います。このチャンスを逃さないようにしたいですね。  当社が今まで培ってきたノウハウなどを活かし、新しく海外に向けて日本のオタクグッズを製造、販売したい、という会社の支援も行っています。 ――それは「競合他社の育成」になってしまうように思えますが……? 秋山 いえ、オタクグッズは本当に商材が多彩ですから。一緒に2020年に向けて盛り上げられればと思います。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/

世界130カ国にオタクグッズを配送! 世界のオタク事情をTokyo Otaku Modeに聞く

世界130カ国にオタクグッズを配送! 世界のオタク事情をTokyo Otaku Modeに聞くの画像1
「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国でも人気な『ソードアート・オンライン』の商品の一部
「日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか?  どの国の人が、どんな作品の、どんなグッズを購入しているのか? 日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に話を聞いた。 ■130カ国、5大陸すべてにオタクグッズ販売実績あり ――Tokyo Otaku Modeでは、どの国に対してオタクグッズを販売しているのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 配送はEMS(Express Mail Service:日本郵便が提供する国際郵便サービス)を利用しており、EMSが利用できる地域であればどこでも発送可能です。すでに130カ国、5大陸すべてに配送実績があります。 ――日本が承認している国が196カ国ですから、かなりの割合ですね。アジア圏、北米、フランスなどはオタク文化の人気が高い印象がありましたが、130カ国と聞くと、想像を超えて世界中なんですね。 秋山 「こんな国名初めて見た」という国の方にも配送したことがあります。例えば、カリブ海のマルティニークっていうフランス領の島とか。 ――マルティニーク、初めて聞きました。Tokyo Otaku Modeのホームページは英語ですが、130カ国、というと英語圏でない利用者も多いかと思います。 秋山 ECサイトは、今は基本的には英語だけですね。商品点数が何万件もあるので、全てを多言語対応にするのは社内のリソース的に難しくて。決済の部分など重要な部分から多言語化を進めています。中国向けには、中国のECモールに出店しており、そちらは全て中国語対応です。 ――確かに、お金周りのことについて利用者は母国語で把握したいですよね。商品はどのエリアで特に売れているのでしょうか? 秋山 割合でいくと、北米が圧倒的です。米国が一番ですね。 ――海外の人に販売をしていて、こんなこと日本人はしないな、と思ったことはありますか? 秋山 セールをはじめたときに、セール前に買われた方が「差額を返して」と連絡してきて、驚いたことがありますね。 ■日本のオタクグッズを自由に海外で販売できるというわけではない ――オタクグッズを海外に販売するにあたって、大変なことは何でしょうか? 秋山 販売のための調整ですね。メーカーさんがマンガやアニメのキャラクターをもとにしたグッズを作るときに、版元さんにこういう商品をつくりたい、と申請するのですが、そのときに「販売する地域」も合わせて申請するのが一般的です。  メーカーさんが国内展開しか考えていない場合は、契約を見直すことが必要です。こういった手続きにはとても時間がかかってしまうんですね。  また、「この地域向けにはすでにディストリビューター(販売代理店)がいるので、現地で仕入れてください」というケースも多くあります。単純に「日本で仕入れたものを世界で自由に売れる」というわけではないのです。 ――商品一つ一つにおいて、気が遠くなるような調整が必要になるんですね。そうなると、その「契約」がネックになり扱えない商品というのも多いのでしょうね。 秋山 はい。当社は渋谷の本社のほか、米国のオレゴンにもオフィスがあります。なぜ米国にもオフィスを作ったかというと、米国で販売権を持つ卸の会社さんから仕入れ、米国内で販売するのは問題ないためです。 ――日本のオタクグッズを販売する代理店が米国に存在する、ということは米国内でオタクグッズの普及は進んでいるとも言えます。一方で、それだけでは足りないから、通販を行うTokyo Otaku Modeさんへの注文があるのでしょうね。 秋山 はい。情報はネットにより世界中に瞬時に行き渡るようになりましたが、モノはまだまだ追いついていません。ですので、「ネットで情報は見たものの、購入できる場所がないので、Tokyo Otaku Modeで取り扱って欲しい」という問い合わせはよくいただきますね。それに、オタクグッズは商材の幅がとても広いですから。 ――ネットが普及する前の「情報すら分からずもどかしい」でなく、「分かっているのに手に入れることができない」という別のもどかしさが今はあるのですね。 ■「日常系」「キャラ推し」は米国では今一つ? 世界のオタク事情 ――北米圏が売上の中心と伺いましたが、北米のオタクと日本のオタクの好みに「ずれ」を感じることはありますか? 高橋裕氏(以下、高橋) 北米では日常系や、キャラクター推しの男性向けのタイトルは爆発的にはヒットしない印象ですね。文化的に好きなキャラクターに違いがあるように感じます。一方、中国、韓国などアジア各国はだいたい日本と流行る作品は似ています。 ――そうなると、北米圏で人気の作品はなんでしょうか? 秋山 『進撃の巨人』『東京喰種』『ソードアート・オンライン』は人気が高かったです。最近ですと『僕のヒーローアカデミア』ですね。 高橋 『僕のヒーローアカデミア』は北米人気が高いですね。マーベル(『スパイダーマン』などアメコミ作品を展開する米国の出版社)の話でも、いじめられっ子がヒーローになる、という“成り上がり”は定番のストーリーです。『僕のヒーローアカデミア』は米国の文化的にフィットするものがあったのだと思います。 ――冴えない主人公が成長していく物語は、日米ともに支持される定番なのですね。では、Tokyo Otaku Modeでの人気商品は何でしょうか? 高橋 フィギュアですね。売上個数で見るとぬいぐるみも結構売れているのですが、フィギュアは単価が高いですから。売上額でのランキングの上位はフィギュアが占めています。「フィギュアは世界で人気」というのは各社さんも分かっていますので、正規のルートでフィギュアを購入できる地域は広がっています。  ただ、フィギュアの場合すごくクオリティが低い偽物もあるので、当社を含め「本物を提供している」ことがひとつの価値になると思います。フィギュアは高いものでは2万円くらいするものもあります。そうなると、正規か分からないサイトで購入するのは怖いですよね。 ――買うからには正規品が欲しいですよね。利用者の性年代などはどうなっているでしょうか? 高橋 20代が一番多く、次が10代ですね。この2世代で60%ほどを占めます。男女比は、購入で見ると男性がちょっと多いくらいですね。 ――そう考えると、女性も結構多いのですね。 * * *  後編では引き続き秋山氏と高橋氏に「海外のオタクイベントの様子」や、「日本と海外のR-18の違い」などを伺っていく。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/

6度引退→復帰の大仁田厚に聞く「今度こそ本当に引退?」さらに、政治と地方とアントニオ猪木──

6度引退→復帰の大仁田厚に聞く「今度こそ本当に引退?」さらに、政治と地方とアントニオ猪木──の画像1
(撮影=名鹿祥史)
“涙のカリスマ”として、プロレス界に一時代を築いた“邪道”大仁田厚が10月31日、東京・後楽園ホールでの「さよなら大仁田 さよなら電流爆破」で、リングに別れを告げる。実に6度にわたって引退、復帰を繰り返してきた大仁田だが、「今回は本当に引退」だと言う。引退試合を目前に控えた大仁田を直撃し、引退に至る経緯を聞きつつ、元参院議員でもある氏に来たる衆院選についての話も聞いてみた。(取材・文=ミカエル・コバタ) ――周囲では、「本当に引退するのか?」という声もありますが、今度こそ本当に辞められるんですよね? 大仁田厚(以下、大仁田) もちろん。本当は6回も引退、復帰を繰り返したつもりはないんだけど、どこかに6回って書かれたから、もう6回でいいやって思ったんだけど……。「まだ動けるじゃないか」って言われますけど、肉体的な問題もあるし、もうボクの時代じゃないですよ。ボクはプロレスが大好きだし、今でも何千人というお客さんは呼べるけど、最後の幕引きをしなきゃいけない。引退の言葉は何度も使ってきたから、今回は「さよなら」です。 ――かねて、「還暦で電流爆破デスマッチをやって引退」を公言されていましたが、それを有言実行されると……。 大仁田 そうですね。10月25日で60歳になりますから、肉体的にも限界です。この先、顔見せ的な試合はできるかもしれませんが、ボクはそういうのは好きじゃない。動けるうちに引いた方がいいと思ったんです。 ――10月29日に、名古屋国際会議場で、最後の電流爆破デスマッチ(大仁田&KAI vs ミノワマン&青柳政司)を行いますね? 大仁田 平成元年にFMWは名古屋で旗揚げしたんですけど、そのときの対戦相手が青柳館長。あれから28年の月日を経て、こういうことになって、これも何かの縁なんでしょうね。異種格闘技戦はFMWの原点。タッグを組むKAIは、ボクのファンでプロレスラーになった選手。総合格闘家のミノワマンとは初対戦になりますが、水と油のおもしろさがある。青柳館長はバイク事故で右脚を複雑骨折して引退したけど、「もう一度、大仁田を蹴りたい!」ということで、この試合のために、1日限定で復帰する。このメンバーで電流爆破をやるわけですから、どんな試合になるか想像もつかない。だからこそ、おもしろいんじゃないですか。 ――10月31日の引退試合(大仁田&雷神矢口&保坂秀樹 vs 藤田和之&ケンドー・カシン&NOSAWA論外)では、アントニオ猪木さんの弟子である藤田選手と対戦します。かなり、意外な人選だと思いますが……。 大仁田 そういう声もありますが、ボクはジャイアント馬場さんの弟子です。そのライバルだった猪木さんとは、対戦要望を出して、実現目前までいったけど、諸々の事情で流れて、交わることができなかった。だったら、最後に猪木さんの遺伝子である藤田選手と闘ってみたいと思ったんですよ。馬場さんと猪木さんの代理戦争じゃないけど……。
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――当日、猪木さんを会場に招待するようなプランはないのですか? 大仁田 ないです! 呼んでも来ないですよ。実はあいさつに行きたくて、秘書さんを通じてアポイントを取ろうとしたんだけど、取り次いでくれなくてダメ。礼を尽くそうとしても、アポが取れない。プロレス界の首領なら、もっとドーンと構えてほしいよ。ボクは猪木さんに嫌われてる男の1人なんでしょうね。 ――むしろ引退試合を電流爆破デスマッチで、という選択肢もあったと思いますが? 大仁田 もちろん。当初は旧川崎球場跡地(現・富士通スタジアム川崎)も考えたけど、あそこはもうアメフトやサッカーのスタジアムで、思い出深い川崎球場じゃないんですよ。だったら、後楽園にしようと思って。後楽園はデビューした場所だし、全日本プロレスで最初の引退式をやった場所でもあるし、思い出がいっぱい詰まってるんです。だから、最後は後楽園なんです。 ――ZERO1・超花火プロレスの工藤めぐみエクスプロージョンプリンセスからは、引退試合3日後となる11月3日に川崎市スポーツ文化・総合センターで開催される「電流爆破フェスティバル」へのオファーが届きましたが、出る可能性はありますか? 大仁田 それは絶対ないです。工藤選手の気持ちはうれしいけど、それは出ません。それをやったら、10月31日のチケットを買ってくれたファンを裏切ることになる。遠方の人で、休みを取って来てくれる人もいるわけだし。その話が出て、チケット購入者からキャンセルが出たりしましたけど、それは100パーセントないです。 ――引退後のプランは決まっているんですか? 大仁田 まだ決まってません。ただ1カ月は休もうと思ってます。痛めている膝、肩、右手の問題もありますし。しばらく体を休めたいですね。 ――商売を始められるような考えはないですか? 大仁田 いやー、ボクは商売には向いてないですよ。じいちゃんが商売人だったけど、博打じゃないけど、相場師みたいなもんだった。 ――今回こそ、本当に引退されるんですよね? 大仁田 そうだよ。もうボクの時代じゃないって! ただ、たとえば老人ホームとか慰問して、そこでリングを作って、アマチュアとしてやることはあるかもしれない。それはあくまでもボランティアであって、プロレスラーとしてではない。プロレスラーの大仁田厚は幕引きで、もう幕を開けることはないです。それからボクは「イジメ撲滅」「地方の活性化」を掲げて、全国300カ所くらい回ったんですけど、地方の活性化にはプロレスがいいって思うんですよ。地方でやると、おじいちゃん、おばあちゃん、子どもたちが来るんです。だから地域プロレスは応援したい。
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――大仁田さんは元参院議員でもありますが、今でも政治には興味を持たれているんですよね? 大仁田 関心はあります。やっぱり地方の活性化をすべきだと思うんです。東京中心の世の中で、すべてが東京に集まる中、地方はどんどん過疎化して、空き家問題もある。高齢化、少子化の問題もある。地方の財源の問題もある。最近はよく「タバコは吸うな」って言いますけど、たばこ税の多くは地方税ですよ。規制に入ると、地方の財源はどんどんなくなっていく。地方は官僚や有力な国会議員に頭を下げて、補助金をもらう状態。地方がどんどん疲弊していく中で、地方革命が起きないかな? 誰か地方から声を上げないかな? って思ってます。希望の党、立憲民主党もいいけど、誰か地方党とかいって名乗り上げる人はいないのかと思う。沖縄県みたいに、政府に反発すると、補助金も削られて、締め付けられて財源がなくなっていく。予算で地方をいじめるわけですよ。 ――国政より、地方自治に興味があるわけですか? 大仁田 そうだね。地方にはその地方の特色があって、地方新聞があるんです。たとえば群馬に上毛新聞、栃木に下野新聞というのがあって、シェアが80パーセントくらいある。この間、佐賀新聞の社長とお会いしたんですが、ここも80パーセントくらいのシェアを持っている。共同通信とか大きなところと提携は結んでいるんだろうけど、地方新聞が立ち上がるべきじゃないかと思うんですよ。「地方のことを考えろ!」って。地方が立ち上がらなければ、日本の国はダメ。 ――自民党の石破茂さん(衆院議員)なんかはどうですか? 大仁田 ボクは好きですよ。地方の人が陳情に行っても、流す人がいるんだけど、あの人は幹事長時代、陳情に来ると、ちゃんと話を聞いていたって、国会議員仲間から聞きましたね。鈴木宗男さん(元衆院議員)なんか、陳情に来ると、その場で官僚に連絡して、その場で話を決めたっていう伝説がある。そういう地方のためになる人が必要だと思う。 ――今回の衆院選(22日投開票)は、どう見られていますか? 大仁田 どこが野党だかわからない。本当の野党は共産党と社民党くらいだろ。リベラルという意味は非常に難しいけど、大衆主義的な傾向があって、はき違えがある。共産党の理想論は聞いてたら素晴らしいけど、その予算はどうするの? 理想ではメシ食えないよ。ボクはもう自民党員じゃないし、好きな人を応援したいと思います。党ではなく、人で選ぶべきだと思う。「地方のために、何をしてくれるんだ!」って、議長の胸ぐらをつかむぐらいの気持ちを持った人が出るべき。「てめぇー、なめんなよ!」というくらいの国会議員がいてもいいじゃない。自国は自国で守らないといけないし、日本という国の存在感を高めないといけない。それができる人を首相にして、全責任を負わせないと……。選挙権も18歳からになったわけだし、投票率が100パーセントになれば、日本の国は変わりますよ。建設関係の人たちとかが自民党を勝たせようとしたりするけど、日本がどういう方向を向くかを国民も考えないと……。第2次安倍(晋三)政権になって、5年近くになるけど、お灸を据えないといけない。野党にがんばってもらいたいけど、選択肢がなかなかないな。
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――猪木参院議員がたびたび訪朝されてますが、どう見られていますか? 大仁田 訪朝しても、金正恩(キム・ジョンウン)は出てこないじゃん。猪木さん的には、北朝鮮とのパイプがあるというのを、自民党とかにアピールする材料でしかないんじゃないの? だって、なんのために行ったのか、中身がないじゃない。帰国後、何も決まっていない。猪木さんが「平和の祭典」をやっても、ミサイルをぶっ放してるじゃない。そこら中に。「平和の祭典」をやった成果があるんなら、ミサイルは撃ってこないだろ。あくまでも猪木さんの政治的なアピールだと思いますよ。北朝鮮の特命大臣とか狙ってるんじゃないの?(笑) ――国会議員を1期で辞められたのはなぜですか? 大仁田 1期で辞めたのは、政治家になりきれなかった男だからかな。政治家は平気でウソをつく。いや言ってるときは本当なんだけど……。ウソをつくのが商売のようなところがある。その点、宗男さんなんか正直だった。「オレが国会議員を続けていたら、(北方領土の)2島は返還されたんだよ。4島じゃなくてもいいじゃない」って言ってたね。2島だけでも返還されれば、北海道の漁業の人たちが、そっちの方にも鮭や昆布を取りに行けるでしょ。北海道は拓殖銀行が潰れて、経済が落ちたけど、そのときにがんばってたのが宗男さん。今でも、あの年になって、がんになっても、立とうとする精神力は買うべきだよ。北海道のためにって。あれこそ地方革命だよ。それから、参院議員になってわかったのは、あの世界は「官僚と世襲」だと痛感した。それでイヤになって、1期で辞めた。それは今でも変わらないな。 ――どうしても、地方の方に目が行ってしまうわけですか? 大仁田 そうだね。ボクはいろんな都市を回って、たくさんの市長や知事に会ったけど、どこかお手本になるような都市作りをしてくれないかな。日本は根本に立ち返り、家族とは何か、きょうだいとは何か、友人とは何かを考えるべき。ネットの世界は生き方の手本じゃないよ。自分が感じ、自分で動いて、食べて飲んで、それを自分の生き方にしなきゃいけないと思います。 ――それでは、将来的に、大仁田さん自身が、どこかの市長選に出馬するような意向はありますか? 大仁田 今のところないけど、どこかでボクを生かしてくれる所があれば、立ちたいという気持ちはメチャメチャ持ってます。 ――わかりました。それでは最後に何かメッセージがあれば、お願いします。 大仁田 10月31日、後楽園ホール。「大仁田の最後を見てやろうか!」という人がいたら、ぜひ足を運んでください。それから、ネットでよく、故・鳩山邦夫先生に「借金返せ!」って書き込みしてる人がいるんだけど、その件はもう鳩山家との間で解決してますから。それでも文句ある人は、ボクのところに直接聞きに来てください。
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★大仁田厚試合情報 10月21日(土) A-TEAM 沖縄・豊見城市豊崎美らSUNビーチ特設会場(18時開始) 10月29日(日) 大仁田興行 愛知・名古屋国際会議場(15時開始) 10月31日(火) 大仁田興行 東京・後楽園ホール(18時半開始) ★大仁田厚オフィシャルサイト http://onitafire.com/ ●大仁田厚(おおにた・あつし) 1957年10月25日、長崎県長崎市生まれ。高校を3日で中退し、73年10月、旗揚げしたばかりの、故ジャイアント馬場率いる全日本プロレスに新弟子第1号として入門。74年4月14日、後楽園ホールでの佐藤昭雄戦でデビュー。82年3月にNWAインターナショナル・ジュニアヘビー級王座を奪取するなど、同団体のジュニアのエースとして活躍。83年4月20日、東京体育館でのヘクター・ゲレロ戦で左膝蓋骨を粉砕骨折し、長期欠場を余儀なくされる。戦線復帰はしたものの、左膝のケガは癒えず、85年1月3日、後楽園で引退式を行う。88年12月3日、ジャパン女子プロレスのリングで復帰。89年10月、FMWを旗揚げ。有刺鉄線、電流爆破など過激デスマッチ路線で新境地を開拓。社長兼エースとして、同団体を牽引し、“涙のカリスマ”と称される。95年5月5日、川崎球場で2度目の引退。96年12月に復帰すると、以後、引退、復帰を繰り返す。2001年に自民党から参院選に出馬し当選。42歳で駿台学園高等学校を、47歳で明治大学政治経済学部経済学科を卒業。

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(撮影=名鹿祥史)
“涙のカリスマ”として、プロレス界に一時代を築いた“邪道”大仁田厚が10月31日、東京・後楽園ホールでの「さよなら大仁田 さよなら電流爆破」で、リングに別れを告げる。実に6度にわたって引退、復帰を繰り返してきた大仁田だが、「今回は本当に引退」だと言う。引退試合を目前に控えた大仁田を直撃し、引退に至る経緯を聞きつつ、元参院議員でもある氏に来たる衆院選についての話も聞いてみた。(取材・文=ミカエル・コバタ) ――周囲では、「本当に引退するのか?」という声もありますが、今度こそ本当に辞められるんですよね? 大仁田厚(以下、大仁田) もちろん。本当は6回も引退、復帰を繰り返したつもりはないんだけど、どこかに6回って書かれたから、もう6回でいいやって思ったんだけど……。「まだ動けるじゃないか」って言われますけど、肉体的な問題もあるし、もうボクの時代じゃないですよ。ボクはプロレスが大好きだし、今でも何千人というお客さんは呼べるけど、最後の幕引きをしなきゃいけない。引退の言葉は何度も使ってきたから、今回は「さよなら」です。 ――かねて、「還暦で電流爆破デスマッチをやって引退」を公言されていましたが、それを有言実行されると……。 大仁田 そうですね。10月25日で60歳になりますから、肉体的にも限界です。この先、顔見せ的な試合はできるかもしれませんが、ボクはそういうのは好きじゃない。動けるうちに引いた方がいいと思ったんです。 ――10月29日に、名古屋国際会議場で、最後の電流爆破デスマッチ(大仁田&KAI vs ミノワマン&青柳政司)を行いますね? 大仁田 平成元年にFMWは名古屋で旗揚げしたんですけど、そのときの対戦相手が青柳館長。あれから28年の月日を経て、こういうことになって、これも何かの縁なんでしょうね。異種格闘技戦はFMWの原点。タッグを組むKAIは、ボクのファンでプロレスラーになった選手。総合格闘家のミノワマンとは初対戦になりますが、水と油のおもしろさがある。青柳館長はバイク事故で右脚を複雑骨折して引退したけど、「もう一度、大仁田を蹴りたい!」ということで、この試合のために、1日限定で復帰する。このメンバーで電流爆破をやるわけですから、どんな試合になるか想像もつかない。だからこそ、おもしろいんじゃないですか。 ――10月31日の引退試合(大仁田&雷神矢口&保坂秀樹 vs 藤田和之&ケンドー・カシン&NOSAWA論外)では、アントニオ猪木さんの弟子である藤田選手と対戦します。かなり、意外な人選だと思いますが……。 大仁田 そういう声もありますが、ボクはジャイアント馬場さんの弟子です。そのライバルだった猪木さんとは、対戦要望を出して、実現目前までいったけど、諸々の事情で流れて、交わることができなかった。だったら、最後に猪木さんの遺伝子である藤田選手と闘ってみたいと思ったんですよ。馬場さんと猪木さんの代理戦争じゃないけど……。
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――当日、猪木さんを会場に招待するようなプランはないのですか? 大仁田 ないです! 呼んでも来ないですよ。実はあいさつに行きたくて、秘書さんを通じてアポイントを取ろうとしたんだけど、取り次いでくれなくてダメ。礼を尽くそうとしても、アポが取れない。プロレス界の首領なら、もっとドーンと構えてほしいよ。ボクは猪木さんに嫌われてる男の1人なんでしょうね。 ――むしろ引退試合を電流爆破デスマッチで、という選択肢もあったと思いますが? 大仁田 もちろん。当初は旧川崎球場跡地(現・富士通スタジアム川崎)も考えたけど、あそこはもうアメフトやサッカーのスタジアムで、思い出深い川崎球場じゃないんですよ。だったら、後楽園にしようと思って。後楽園はデビューした場所だし、全日本プロレスで最初の引退式をやった場所でもあるし、思い出がいっぱい詰まってるんです。だから、最後は後楽園なんです。 ――ZERO1・超花火プロレスの工藤めぐみエクスプロージョンプリンセスからは、引退試合3日後となる11月3日に川崎市スポーツ文化・総合センターで開催される「電流爆破フェスティバル」へのオファーが届きましたが、出る可能性はありますか? 大仁田 それは絶対ないです。工藤選手の気持ちはうれしいけど、それは出ません。それをやったら、10月31日のチケットを買ってくれたファンを裏切ることになる。遠方の人で、休みを取って来てくれる人もいるわけだし。その話が出て、チケット購入者からキャンセルが出たりしましたけど、それは100パーセントないです。 ――引退後のプランは決まっているんですか? 大仁田 まだ決まってません。ただ1カ月は休もうと思ってます。痛めている膝、肩、右手の問題もありますし。しばらく体を休めたいですね。 ――商売を始められるような考えはないですか? 大仁田 いやー、ボクは商売には向いてないですよ。じいちゃんが商売人だったけど、博打じゃないけど、相場師みたいなもんだった。 ――今回こそ、本当に引退されるんですよね? 大仁田 そうだよ。もうボクの時代じゃないって! ただ、たとえば老人ホームとか慰問して、そこでリングを作って、アマチュアとしてやることはあるかもしれない。それはあくまでもボランティアであって、プロレスラーとしてではない。プロレスラーの大仁田厚は幕引きで、もう幕を開けることはないです。それからボクは「イジメ撲滅」「地方の活性化」を掲げて、全国300カ所くらい回ったんですけど、地方の活性化にはプロレスがいいって思うんですよ。地方でやると、おじいちゃん、おばあちゃん、子どもたちが来るんです。だから地域プロレスは応援したい。
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――大仁田さんは元参院議員でもありますが、今でも政治には興味を持たれているんですよね? 大仁田 関心はあります。やっぱり地方の活性化をすべきだと思うんです。東京中心の世の中で、すべてが東京に集まる中、地方はどんどん過疎化して、空き家問題もある。高齢化、少子化の問題もある。地方の財源の問題もある。最近はよく「タバコは吸うな」って言いますけど、たばこ税の多くは地方税ですよ。規制に入ると、地方の財源はどんどんなくなっていく。地方は官僚や有力な国会議員に頭を下げて、補助金をもらう状態。地方がどんどん疲弊していく中で、地方革命が起きないかな? 誰か地方から声を上げないかな? って思ってます。希望の党、立憲民主党もいいけど、誰か地方党とかいって名乗り上げる人はいないのかと思う。沖縄県みたいに、政府に反発すると、補助金も削られて、締め付けられて財源がなくなっていく。予算で地方をいじめるわけですよ。 ――国政より、地方自治に興味があるわけですか? 大仁田 そうだね。地方にはその地方の特色があって、地方新聞があるんです。たとえば群馬に上毛新聞、栃木に下野新聞というのがあって、シェアが80パーセントくらいある。この間、佐賀新聞の社長とお会いしたんですが、ここも80パーセントくらいのシェアを持っている。共同通信とか大きなところと提携は結んでいるんだろうけど、地方新聞が立ち上がるべきじゃないかと思うんですよ。「地方のことを考えろ!」って。地方が立ち上がらなければ、日本の国はダメ。 ――自民党の石破茂さん(衆院議員)なんかはどうですか? 大仁田 ボクは好きですよ。地方の人が陳情に行っても、流す人がいるんだけど、あの人は幹事長時代、陳情に来ると、ちゃんと話を聞いていたって、国会議員仲間から聞きましたね。鈴木宗男さん(元衆院議員)なんか、陳情に来ると、その場で官僚に連絡して、その場で話を決めたっていう伝説がある。そういう地方のためになる人が必要だと思う。 ――今回の衆院選(22日投開票)は、どう見られていますか? 大仁田 どこが野党だかわからない。本当の野党は共産党と社民党くらいだろ。リベラルという意味は非常に難しいけど、大衆主義的な傾向があって、はき違えがある。共産党の理想論は聞いてたら素晴らしいけど、その予算はどうするの? 理想ではメシ食えないよ。ボクはもう自民党員じゃないし、好きな人を応援したいと思います。党ではなく、人で選ぶべきだと思う。「地方のために、何をしてくれるんだ!」って、議長の胸ぐらをつかむぐらいの気持ちを持った人が出るべき。「てめぇー、なめんなよ!」というくらいの国会議員がいてもいいじゃない。自国は自国で守らないといけないし、日本という国の存在感を高めないといけない。それができる人を首相にして、全責任を負わせないと……。選挙権も18歳からになったわけだし、投票率が100パーセントになれば、日本の国は変わりますよ。建設関係の人たちとかが自民党を勝たせようとしたりするけど、日本がどういう方向を向くかを国民も考えないと……。第2次安倍(晋三)政権になって、5年近くになるけど、お灸を据えないといけない。野党にがんばってもらいたいけど、選択肢がなかなかないな。
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――猪木参院議員がたびたび訪朝されてますが、どう見られていますか? 大仁田 訪朝しても、金正恩(キム・ジョンウン)は出てこないじゃん。猪木さん的には、北朝鮮とのパイプがあるというのを、自民党とかにアピールする材料でしかないんじゃないの? だって、なんのために行ったのか、中身がないじゃない。帰国後、何も決まっていない。猪木さんが「平和の祭典」をやっても、ミサイルをぶっ放してるじゃない。そこら中に。「平和の祭典」をやった成果があるんなら、ミサイルは撃ってこないだろ。あくまでも猪木さんの政治的なアピールだと思いますよ。北朝鮮の特命大臣とか狙ってるんじゃないの?(笑) ――国会議員を1期で辞められたのはなぜですか? 大仁田 1期で辞めたのは、政治家になりきれなかった男だからかな。政治家は平気でウソをつく。いや言ってるときは本当なんだけど……。ウソをつくのが商売のようなところがある。その点、宗男さんなんか正直だった。「オレが国会議員を続けていたら、(北方領土の)2島は返還されたんだよ。4島じゃなくてもいいじゃない」って言ってたね。2島だけでも返還されれば、北海道の漁業の人たちが、そっちの方にも鮭や昆布を取りに行けるでしょ。北海道は拓殖銀行が潰れて、経済が落ちたけど、そのときにがんばってたのが宗男さん。今でも、あの年になって、がんになっても、立とうとする精神力は買うべきだよ。北海道のためにって。あれこそ地方革命だよ。それから、参院議員になってわかったのは、あの世界は「官僚と世襲」だと痛感した。それでイヤになって、1期で辞めた。それは今でも変わらないな。 ――どうしても、地方の方に目が行ってしまうわけですか? 大仁田 そうだね。ボクはいろんな都市を回って、たくさんの市長や知事に会ったけど、どこかお手本になるような都市作りをしてくれないかな。日本は根本に立ち返り、家族とは何か、きょうだいとは何か、友人とは何かを考えるべき。ネットの世界は生き方の手本じゃないよ。自分が感じ、自分で動いて、食べて飲んで、それを自分の生き方にしなきゃいけないと思います。 ――それでは、将来的に、大仁田さん自身が、どこかの市長選に出馬するような意向はありますか? 大仁田 今のところないけど、どこかでボクを生かしてくれる所があれば、立ちたいという気持ちはメチャメチャ持ってます。 ――わかりました。それでは最後に何かメッセージがあれば、お願いします。 大仁田 10月31日、後楽園ホール。「大仁田の最後を見てやろうか!」という人がいたら、ぜひ足を運んでください。それから、ネットでよく、故・鳩山邦夫先生に「借金返せ!」って書き込みしてる人がいるんだけど、その件はもう鳩山家との間で解決してますから。それでも文句ある人は、ボクのところに直接聞きに来てください。
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★大仁田厚試合情報 10月21日(土) A-TEAM 沖縄・豊見城市豊崎美らSUNビーチ特設会場(18時開始) 10月29日(日) 大仁田興行 愛知・名古屋国際会議場(15時開始) 10月31日(火) 大仁田興行 東京・後楽園ホール(18時半開始) ★大仁田厚オフィシャルサイト http://onitafire.com/ ●大仁田厚(おおにた・あつし) 1957年10月25日、長崎県長崎市生まれ。高校を3日で中退し、73年10月、旗揚げしたばかりの、故ジャイアント馬場率いる全日本プロレスに新弟子第1号として入門。74年4月14日、後楽園ホールでの佐藤昭雄戦でデビュー。82年3月にNWAインターナショナル・ジュニアヘビー級王座を奪取するなど、同団体のジュニアのエースとして活躍。83年4月20日、東京体育館でのヘクター・ゲレロ戦で左膝蓋骨を粉砕骨折し、長期欠場を余儀なくされる。戦線復帰はしたものの、左膝のケガは癒えず、85年1月3日、後楽園で引退式を行う。88年12月3日、ジャパン女子プロレスのリングで復帰。89年10月、FMWを旗揚げ。有刺鉄線、電流爆破など過激デスマッチ路線で新境地を開拓。社長兼エースとして、同団体を牽引し、“涙のカリスマ”と称される。95年5月5日、川崎球場で2度目の引退。96年12月に復帰すると、以後、引退、復帰を繰り返す。2001年に自民党から参院選に出馬し当選。42歳で駿台学園高等学校を、47歳で明治大学政治経済学部経済学科を卒業。

本物の極道だった“元アウトローのカリスマ”瓜田純士が見る『アウトレイジ 最終章』

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“元アウトローのカリスマ”こと瓜田純士(37)が森羅万象を批評する不定期連載。今回のお題は、北野武監督の人気シリーズ映画で5年ぶりの続編となる『アウトレイジ 最終章』だ。元極道であり、北野映画のファンでもある瓜田は、この作品を見て何を思い、何を語るのか?  17歳から10年間に渡り暴力団に所属し、組抜けしてからも数々の事件やトラブルを巻き起こしてきた瓜田だが、2014年に4度目の結婚をして以降は、すっかり更生して穏やかな日々を送っている。 「昔はレンタルDVD屋に行ったらヤクザ映画やギャング映画ばかり借りていましたが、最近はディズニー映画が中心ですね。血なまぐさい映画はもう何年も見ていません」  そんな瓜田だが、『アウトレイジ』の新作が公開されるとなれば、話は別のようだ。 「俺も北野映画は大好きですけど、お袋がそれ以上のファンで、今年の8月ぐらいから『行こう、行こう、一緒に行こう』としつこく誘われていましたから、親孝行も兼ねて、公開初日のチケットを取りました。ちなみにウチの嫁はバイオレンス映画が苦手なんですけど、1人でお留守番させるのは可哀想なので、映画が終わったあとの食事をエサに一緒に連れて来ました」  こうして瓜田ファミリーが映画館に集結した。かつては極道の妻として、数多の筋者を身近に見てきた母・恭子。その遺伝子を継ぎ、幼少期から悪名を轟かせてきた息子・純士。そうした親子にも物怖じすることなく、「暴力は嫌いや!」と言い切る関西人の嫁・麗子。  三者三様の感想を鑑賞後に語ってもらった。  * * * ――いかがでしたか? 純士 いい面、悪い面、両方あったけど、トータルとしては面白かったし、よかったですよ。 恭子 私はものすごく楽しみにしていたんですが、期待が大き過ぎたせいか、ちょっとガッカリしましたね。 麗子 こんなん茶番劇や。『ビー・バップ・老人ホーム』って感じ。ただ、西田敏行だけはよかったです。 ――意見が分かれましたが、まずは純士さんが「いい」と思った部分を軸に、感想を語り合ってもらえますでしょうか。 純士 まず、大森南朋がとびきりよかったですね。他の多くの役者たちは、北野監督が横にいるせいか、一発で録らなくちゃいけないみたいな緊張で思い切り硬くなっているのがわかった。でも、大森は場に何人いようが、武が回していようが、その壁を壊して自分の空気を出せていたように思います。屈託なく笑うシーンなんかもそうだけど、肩の力が常に抜けている。今作の中ではピカイチかも。めちゃくちゃ優秀なんだと思いますね、役者として。 恭子 あの人、いいんだよ。テレビで『ハゲタカ』を見たときも、うまいなぁって感心したもん。 麗子 ウチは「こんなヤクザおらへんやろ」って思いながら彼を見ていましたよ。橋下弁護士にしか見えへんかったけどなぁ。 恭子 ウソ? ウソ?(笑) 麗子 あんなんやったんですよ。昔の橋下徹は。 純士 大森は、冒頭の釣りのシーンからよかったよ。彼と武が共演する別の映画を見たくなったもん。
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母・恭子と、息子・純士
――その他、いいなと思った役者はいますか? 純士 一番癖があってよかったのは、ピエール瀧ですね。凄み方もビビリ方もよかった。実際はどうだか知らないけど、あの人ってたぶん、夜の繁華街とか飲み屋とか、不良がたくさんいるような場所に、長い人生の中でいっぱい行って遊んできた人なんじゃないかな。だからああいう台本を渡されても、すぐに「じゃあ俺流でいきますよ」と演じることができたんだと思う。ああいう不良、マジでいますからね。新体制が発表されて自分が昇格したとわかった途端、調子に乗ってポケットに手を突っ込んで大声で誰かと電話し始めて岸部一徳から呆れられる場面なんて、本当にリアル。韓国で大友(北野武)に向かって、「ところで、お前の名前は?」って聞いたあとの目つきの悪さとかもね。ああいうのって、ただテレビや映画に出て育ってきただけの俳優ではできないことなんで、たいしたもんだなと思います。 麗子 タムケンにしか見えへんかったけどな(笑)。 純士 あとは、西田敏行の演技も圧巻でしたね。そこらへんの三下っぽく振る舞ったらいけないんだ、俺は大物ヤクザなんだと言い聞かせながら役を全うしたと思うんです。その徹底ぶりがよかったですね。「大友、来ていませんよ」って場面でも、二流の役者だったら「え? 来てねえのか?」と泡食った演技をしそうなもんだけど、「それならそれで別にいい」といった感じで動じない。そういう不敵なリアクションが多々あったじゃないですか。 恭子 あれがウザかった~。 純士 あの、常に上から見下ろしている感じがいいんだよ。 麗子 ウチもやねん! 恭子 何、私だけ除け者にして、夫婦で意気投合してんのよ! 純士 出所者を励ます会で、西田がマイクで喋り出すところなんかも「キター!」「さすがだな」って思いながら見ていました。最後まで西田は武の期待値以上のことをやったと思いますね。 麗子 西田敏行って、ウチのお父さんにソックリやねん(笑)。 恭子 ウソ? あんなオッサンなの? 麗子 それが、懐かしくて懐かしくて(笑)。 恭子 私は西田が、ウザくてウザくて。早く殺されていなくなれ! と思っていたけど、全然いなくならないからイライラしたわ。 麗子 イヤやーーー! そんなん言わんといてください。 恭子 あれは、よくいるタチの悪いヤクザもんだよ。本当に根性の汚い奴。 純士 でもそれがよかった。本物の不良っぽかったじゃん。あと、西田がすごいな、貫禄勝ちだなと思ったのは、大杉漣のところに行って、啖呵を切る場面。誰かに話をつけに行くのって、相手が1人だとしても緊張するじゃないですか。それを映画の中の話とはいえ、西田は他のヤクザも大勢見守る中、今から下克上してやるという一世一代のシーンを、さらっと演じ切ったでしょう? あの貫禄がすごかったよね。 麗子 すごかった! 恭子 似た者夫婦だから意見も一致するのかねぇ……。お父さんに似ているから、なんでもよかったんじゃないの? 麗子 ちゃうわー! 純士 あと、張会長(金田時男)から明らかにシカトされているにもかかわらず、西田が行儀悪い格好で延々と話しかけ続けるところも、いいんだわ。 恭子 ああいうのが私は鼻についた。やり過ぎでしょ。ああいうヤクザ、実際にいることはいるけどさぁ。 純士 そう、ああいうのが本物のヤクザなんだよ。武と大森が銃を持って、屋上駐車場で花菱会の面々と向き合うシーンでも、車の窓がスッと開いて、西田が「オイ、大友。今までのことは一回水に流して」みたいなことを言うじゃないですか。あのときもまだ「俺のほうがお前より貫目が上だぞ」っていう態度を崩さない。ヤクザの上層部って、ああじゃなきゃダメなんですよ。それを演じ切った西田は只者じゃない。一級品の役者ですね。
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――その他、ヤクザがリアルだった場面はありますか? 純士 塩見三省みたいな顔をしたヤクザは、どの義理場に行っても必ず1人はいます。今回、痩せて弱っちくなっていたけど、かえってそれがリアルだったと思う。花田(ピエール瀧)っていう金稼ぎのうまい有望な若い衆を抱える身でありながら、本家からは年寄り扱いされたり、信頼している人間のタマを取るように命じられたり。年老いちゃったから丸め込まれて、組織維持のために使われそうになる、ちょっと可哀想な立場。そういうのが伝わるうまい見せ方だったと思います。 恭子 西田と塩見が疲れ切った顔で車に乗っているシーンが可笑しくて、私、吹き出しちゃったわよ(笑)。どんな看板を背負っていようが、寄る年波には勝てない。こういうロートルヤクザ、実際にいるなぁと思って。 麗子 ウチは笑うよりも心配になりましたよ。老人ホームの発表会を見ているみたいで痛々しくて……。 純士 武も岸部一徳もそうだけど、映画は画面がデカイから老いを隠せず、加齢臭全員集合みたいになっていたのは否めない。でもその一方で、フレッシュな若手もいたじゃん。キャバクラで踏ん反り返っていた池内博之。彼はハーフ特有の顔の怖さが不良にハマる。現代風ヤクザとしての実在感がありましたね。逆に、ヤクザとしての実在感が一番薄かったのは、武が演じた大友かな(笑)。彼の振る舞いは、ヤクザじゃなくてただのチンピラ。刑事に絡んだり凄んでみせたり、出所祝いの会場で道具を出したり。実際は大物のヤクザほど刑事を立てるし、義理場や祝いの席はあえて避けてケンカをしますからね。大友は最低ですよ(笑)。チンピラの極み。 恭子 今回、武さんの見せ場が少なかった気がするなぁ。西田ばっかりになっちゃっていたような……。 純士 確かに。昔の北野映画はぶっちぎりの独りよがりでそれが面白かったのに、今回は監督が、自ら呼び集めた大物役者に気を使って、彼らを立て過ぎちゃったせいなのか、誰が主人公なのかわかりづらくなっていたかも。西田や塩見の演技はすごいんだけど、それは小出しにするからいいんであって、今回は前面に出し過ぎて安くなっちゃった印象がありますね。全員のセリフを半分とか3分の1とかに切っちゃっていいから、もっと他に描き込んでほしい部分もあった。 ――それは具体的には? 純士 今回、繁田刑事(松重豊)がキレる場面があったじゃないですか。あれ、本当に絶妙なタイミングだと思うんです。人が発狂する瞬間って、あんな感じだよなぁと思って、すごく共感できたんだけど、上司と決別したあと、武と大森が階段を上がってくるシーンだったから、上で待っているのは繁田かと思いきや、違うんだもん。「刑事としてではなく、俺個人として言うが、大友、往生しろ」とかのシーンがあるのかと思いきや、ない。みんなが自分のやってきたことにケジメつける映画かと思ったら、そうでもない。 恭子 西田に尺を取られちゃって、そこらへんに時間を割けなかったのよ、きっと。 純士 ピエール瀧にしても、ドMの変態ヤクザでいくんなら、女性にもっとひどいことをしたりさせたりしている描写がほしかった。じゃないと、ただのコスプレになっちゃう。 恭子 それは、いろいろ問題があって映像化できないんじゃない? 純士 直接的な暴力描写や性描写は無理にしても、もっと車で移動している最中とかヤクザ的な時間を過ごしている間に、上の人がいる前でわざと変態っぽい電話をかけてニヤニヤしているシーンとかがあったほうが、あの末路の爆発力も増したのに。序盤、済州島でヘタを打ったピエール瀧が、大友たちがいなくなったあとに、自分とこの若い衆をボコボコにするシーンがあったでしょう。ああいう八つ当たりって、実際のヤクザ社会でもよく見ることで、すごくリアリティーがあってよかったから、もっとあの温度で最後まで来てほしかったです。
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――その他、不満だった点はありますか? 純士 かつての北野映画の世界観って、暴力描写にはスピード感がある一方で、それ以外ではよくわからない女性が出てきたり、ゆっくりなシーンがあったりしたと思うんだけど、今回はそういう緩急や、独特の間が少なくて、俳優陣の長ゼリフが最初から最後まで続いた印象でした。しかも俳優が噛まないように一生懸命になり過ぎちゃったせいで、リアルさが失われてしまった感がある。そうなった一番の原因は、関西出身じゃない俳優に、関西弁を喋らせ過ぎたことでしょうね。 麗子 その通りや! バッタもんの関西弁が多過ぎて、序盤で興醒めしたわ。 純士 関東人の俺からするとイントネーションのおかしさはそれほど感じなかったけど、誰からも文句を言われないように一生懸命勉強してきたというのが伝わってきて、こっちまで緊張しちゃった。そういう本筋とは関係ないハラハラドキドキって、映画を見る上で邪魔。特にこの手の掛け合いが肝となる映画の場合は、標準語の人は標準語のままアクセル全開でぶっちぎったほうが絶対よかったのになぁと思いました。関西の組織に関東人がいてもおかしくないんだから。 麗子 あと、やり過ぎた服装もアカンかったわ。今どきあんなん着たヤクザ、どこにもおらへんやろ? ヴェルサーチのテロテロのシャツに犬の首輪みたいなチェーンとか(笑)。 純士 俺は10代の頃、ああいうコテコテの格好をしていたけどね(笑)。ピエール瀧みたいなストライプのスーツも愛用していたし、上下サテンのスウェットとかも着ていた。 麗子 当時はイケてたん? 純士 いや、その当時から生きた化石状態だった(笑)。 麗子 そやろ? 今回の映画は服装のセンスが古いねん。 純士 まぁあれはあれで、どれだけヤクザ化できるかという俳優同士の競い合いみたいなもんだから、いいと思うけどね。もっと派手にやってほしいと個人的には思ったよ。それよりも気になったのは、設定の古臭さかな。 ――と、申しますと? 純士 謎のフィクサーが日韓を股にかけて暗躍、みたいな設定は、20年前なら底知れぬ不気味さを感じたのかもしれないけど、今はそうでもない。というのも今の日本人は、韓流映画やK-POPにたくさん触れて韓国文化を知り過ぎているから、張会長や白龍らの韓国語のやりとりを見ても、それほど新鮮さを感じないんですよ。あと、原田泰造。ビビって引き金を引けない表情はよかったんですけど、「元暴走族の鉄砲玉」という設定はあまりにも前時代的でしょう。あともう一つ、個人的に受け入れがたい描写もありました。 ――それは何でしょう? 純士 自分が今、カタギになる苦労を味わっているからこそ感じたんですが、汗だくになってカタギに戻ろうとしている人間に対して、あそこまでの追い込みをかけるのはいかがなものか。もっと他にやるべき奴がいたんじゃないの? と思いました。だから見終わったあと、あまりスッキリできなかったです。 麗子 お義母さんはこの映画を見て、スッキリできたんとちゃいますか? 銃撃戦のときに「ひゃーっはっはっはっ!」って大笑いしていましたよね?(笑) 恭子 最近、日常生活で嫌なことがあったから、ああいう場面を待ち望んでいてテンションが上がっちゃったけど、どうでもいい奴らが死んだだけだったから消化不良よ。でも、映画の終わり方は好き。 純士 俺は、あのラストはイマイチかな。もっと間を与えず、情け容赦なく、幕を引いてほしかった。 ――ご家族の中でも賛否両論、さまざまな意見が飛び交いましたが、そろそろ純士さんのほうから総括のコメントをお願いします。 純士 なんやかんや文句も言ったけど、やっぱりこの映画はすごいですよ。こんだけ今、現実の暴力団同士が揉めていて、東京五輪も近いってときに、あんだけのヤクザがバンバン組の名前を出して人を殺すような映画を実際にやっちゃう、許されちゃうってのは、本当にすごいこと。もしこれが北野映画じゃなかったら、そんな映画に出たってだけで銀行取引もダメになるような時代なのに、民放各局がこぞって宣伝までするというのは、武の力に他ならない。あの人以外に許される人はいないでしょうし、こういうヤクザ映画を劇場で見られるのはおそらくこれが最後でしょうね。だから、見ておいてよかったと思います。  * * *  劇場はアウトローだらけなのでは? と心配している読者も多いかもしれないが、満席の場内を記者が見渡した限り、それらしき風体の人物は瓜田を除けばほぼ皆無。家族でもカップルでも安心して楽しめる作品と言えそうだ。 (取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)
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※日刊サイゾーでは瓜田純士の最新情報をほぼ月イチペースでお届けしています。 http://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/ ※瓜田純士公式ブログ http://junshiurita.com ※瓜田純士&麗子Instagram https://www.instagram.com/junshi.reiko/

北野監督を支え続ける森昌行プロデューサーが語る『アウトレイジ』三部作の舞台裏と北野映画の今後(後編)

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テレビ番組のADを振り出しに映画プロデューサーとなった森昌行氏。北野武監督、そしてビートたけしの最大の理解者でもある。
 オフィス北野の社長であり、北野監督作品のプロデューサーでもある森昌行氏へのロングインタビュー後編。『アウトレイジ』シリーズの個性的なキャスティングと『アウトレイジ 最終章』後の展望について尋ねた。 (前編はこちらから) ──“全員、悪人”というキャッチフレーズで始まった『アウトレイジ』シリーズが話題になったことで、それまでの芸能界の「好感度」がもてはやされる風潮にクサビを打ったんじゃないでしょうか。 森昌行 実録犯罪ドラマで大久保清を演じたこともありますし、たけしさん自身が悪役を好んでやりますよね。そのきっかけになったのは、たけしさんが俳優として注目を集めた大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(83)です。たけしさんは坊主頭にして原軍曹という日本兵を演じたのですが、ラストシーンの「メリークリスマス、ミスター・ローレンス」という台詞で劇場に笑いが起きたんです。あんなシリアスな映画なのに自分のシーンで笑いが起きたことが、かなりショックだったようです。それもあって、あえてお笑いをやりながら悪役を演じるという難しいことにたけしさんは取り組み始めた。違和感なく役者をやれるようになるまで10年を要したと言っています。今では悪役が定着して、いいおじいちゃん役は映画では難しいでしょうね(笑)。極悪非道な役をやればやるほど、クールだと喜ばれる。そういう意味でも、お笑いと暴力は紙一重なのかもしれません。 ──ビートたけしの悪役ぶりに触発されるように、『アウトレイジ』シリーズでは西田敏行ら大物俳優たちも、それぞれ思い切った極道ぶりを披露していますね。  実は、西田さんが新人時代にバラエティー番組に出演していた頃、僕はそのバラエティー番組のADをやっていたんです。『アウトレイジ』が公開中のとき、フジテレビの廊下で西田さんとすれ違い、「森さん、俺にも悪いのやらせてよ」と頼まれたんです(笑)。西田さんみたいな大物俳優はそう簡単に出演してくれないだろうと思っていたんですが、「いい人の役ばかりで、ずっとイライラしていた。だから『アウトレイジ』には出たかった」と後から言われました。そういう経緯もあって、西田さんは撮影現場ではアドリブ連発でノリノリでした(笑)。 ■コワモテ俳優が集う『アウトレイジ』シリーズの現場 ──『ビヨンド』に続く『アウトレイジ 最終章』も実力派男優たちの顔面バトルの連続。撮影現場はかなりピリピリしていたのでは?  いえ、ピリピリした現場ではありませんでした。かといって、俳優たちがワーワーと騒いでいる現場でもなく、とても静かな現場でした。そんな中で、西田さんはカメラが回り出すとメリハリのついた演技を次々と見せる。北野監督は「プロの俳優はやっぱり違うな」と感心していたぐらいです(笑)。 ──花菱会の若頭・西野(西田敏行)が「迷惑もハローワークもあるかいっ」と捲し立てる場面がありますが、あれはアドリブ?  西田さんがアドリブで考えた台詞です(笑)。西田さんは他にもアドリブを連発していました。元証券マンの新会長(大杉漣)に向かって「ジェニ(銭)ジェニ♪って、リトル・リチャードじゃあるまいし」なんて台詞も飛ばしていたんですが、ほとんど編集でカットされています。西田さんは昨年入院されていたので心配していたんですが、自分の出番になると大変な集中力を見せてくれました。やっぱり、すごい俳優だなと思いましたね。 ──『最終章』からの出演となる花菱会直参幹部・花田役のピエール瀧も面白い存在です。凄んでみせるけど、どこかおかしみがある。  本物のヤクザではない、お金の力で幹部に取り立ててもらった半グレ上がりという設定ですね。まだヤクザの世界のことがよく分かっておらず、自分の指を詰めるのを怖がっている。ヤクザ然としていないところが、ぴったりだったんじゃないでしょうか。彼がいたことで、逆に塩見三省さんの凄みが際立ったように思います。 ──第1作には短い出番でしたがマキタスポーツが出ていましたし、ミュージシャンはドラマに出ると独特の面白さを発揮しますね。  ピエールさんが電気グルーヴで活躍していることはもちろん知っていましたが、ミュージシャンであることを意識してキャスティングしたわけではありません。でも、やっぱりミュージシャンの方は台詞の間を外すことがないし、話し方もリズミカルですね。たけしさんも「ミュージシャンはコントをやらせてもうまい」と言っています。
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金の力で花菱会の幹部に成り上がった花田(ピエール瀧)。花菱会と張会長グループとの抗争の火種となる。
■本職の俳優顔負けの存在感を放った男 ──『アウトレイジ』シリーズの意外なキャスティングで外せないのは、『ビヨンド』からフィクサー役で出演している金田時男さん。俳優ではなく、まったくの素人だと聞いています。  たけしさんは金田時男さんの息子さんと知り合い、個人的な付き合いがあったそうです。それで食事を一緒にするうちに、父親である金田時男さんを紹介され、戦後の日本をどう生きてきたかといった話をされ、その話がとても面白かったそうです。また、金田時男さんは松田優作さんの自伝なども読まれ、「お金はいくら稼いでも、いつかは消えてしまう。その点、俳優は映画にその姿を残すことができて羨ましい。とんでもないと思うかもしれないが、北野作品に自分の姿を刻みつける機会があればお願いできないか」とたけしさんにお願いしたそうです。金田さんは顔つきがいいし、あの存在感は本職の俳優たちにも負けていない。それで『ビヨンド』では台詞がほとんどなかったんですが、張会長として出演してもらい、『最終章』ではストーリーの展開上、出番も台詞もかなり増えることになったんです。 ──2014年に亡くなった高倉健さんですが、北野映画に出演かという噂が何度も上がりました。実際にオファーはされていたんでしょうか?  高倉健さんがご存命中に「こういうのをやりませんか」と企画を提案させていただいたことはありました。ただ提案書だけではなく、ある程度のホン(脚本)を用意しないとダメだと健さんの出演作をプロデュースされた方からは聞いていたので、北野組は脚本が変更することは多々ありますが、シノプスよりは詳しいものを準備しました。健さんもずいぶん考えてくれたみたいですが、自分がやる役ではないんじゃないかと丁寧に断られたというのが事実です。 ──『アウトレイジ』シリーズや先ほど出た「ヤクザ名球会」ではなかったんですね?  違います。映画化された企画へのオファーではなく、まったく別の企画でした。健さんの出演が決まっていなかったので、他のキャストへのオファーもしていない状態だったので、その企画は実現はしていないんです。
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『アウトレイジ ビヨンド』に続き、日韓の裏社会を牛耳るフィクサー・張会長(金田時男)は独特の存在感を見せる。
■恋愛小説『アナログ』の映画化の可能性は? ──『アウトレイジ』シリーズの完結後は、どのように考えていられるんでしょうか? ビートたけし初の恋愛小説ということで9月に発売されたばかりの『アナログ』(新潮社)も話題となっていますが……。  北野監督の頭の中には、次回作はどうするのか、バイオレンス映画をまた撮るのかどうかといった考えはあるようですが、それはそのときの気分によって変わるものなので、これからのことは『アウトレイジ 最終章』が興行的に成功して、そこから初めて「じゃあ、次回はどうするか」という話になります。もちろん、『アナログ』は出版されたばかりで話題性もあるので次回作の候補にはなり得ますが、最終的にはビジネスサイド、お金を出してくれる人たちが納得してくれないと次へは進めません。また、原作小説があっても、それを映画としてどう広がりのあるものにしていくかというアイデアも必要になってきます。『アウトレイジ』の前や『龍三と七人の子分たち』の前も、北野監督は別の企画を提案していたんですが、どの企画が優れている優れていないではなく、どの企画が実現可能かどうかということなんです。我々は大ヒットメーカーではありませんが、ヒットメーカーとしての立場は守っていかなくてはいけない。興行的に成功を見込める作品を作っていくことが責務でもあるんです。それと北野組には大きなハードルがあるんです。たけしさんはテレビの仕事もしているのでテレビの収録をする“テレビ週”と映画の撮影をする“映画週”とが隔週ごとに分かれていて、他の映画よりも機材費や人件費が2倍必要になってくるため、リクープラインが高くなっているんです。いろんな企画のアイデアを持っている北野監督は歯がゆいかもしれませんが、プロデューサーとしては企画選びは慎重にならざるを得ないんです。 ──北野監督の初期を代表するバイオレンス映画の傑作『ソナチネ』の後に『キッズ・リターン』(96)のような名作が生まれているだけに、ファンは次回作も大いに期待してしまいます。  いやいや、『キッズ・リターン』の前には『みんな~やってるか!』(95)がありましたし、94年にはバイク事故も起こしています(苦笑)。バランスが大きく崩れることもあるわけです。それで『座頭市』が大ヒットして喜んでいたら、また『TAKESHIS’』で沈んで……ということになっています。今の興行システムでは、それは許されないんです。単館でもロングラン上映してくれる映画館が全国に20~30館もあればビジネス的に可能なんですが、今はそんな劇場は国内には1~2館しかないというのが現状です。観客動員100万人という数字は、東京ドームを20日連続で満員にしなくちゃいけないということ。ローリングストーンズでもできるかどうか。シネコンのシステムの中でヒットさせるということは、そういうことなんです。 ──森プロデューサーはそんな重責を担っていながら、毎年11月に開催される映画祭「東京フィルメックス」のエクゼクティブプロデューサーも務めている。めちゃめちゃ大変じゃないですか。  「東京フィルメックス」は“アジアの若手監督を紹介する映画祭”という建前は非常に美しいのですが、内情はとても厳しいです(苦笑)。カンヌやベネチアといった映画祭でも近年はだんだん地味になってきているぐらいですからね。 ──最近のフィルメックス上映作品だと、中国のジャ・ジャンクー監督の『罪の手ざわり』(13)や奥田庸介監督の『クズとブスとゲス』(15)などは、とても面白い作品でした。  いい映画でしたねぇ。アジアにはまだまだ優れた才能がいることは我々も分かってはいるんですが、彼らの作品を定期的に公開できる環境が整っていない状況なんです。大量消費の時代にあって、いくら良作を作ってもビジネス的には難しい。多様化の時代と言われていますが、現実は全然多様化していません。みんな、マスのほうへ向かっているのが現状です。マスでなければ、いわゆるオタクと呼ばれる趣味趣向の世界になり、メジャーにはなり得ない。シネコンとは異なる、新しい受け皿づくりは今後の大きな課題かもしれません。 (取材・文=長野辰次)
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●森昌行(もり・まさゆき) 1953年鳥取県生まれ。テレビ番組製作会社でADとして過ごし、最初にチーフディレクターを務めたバラエティー番組『アイドルパンチ』(テレビ朝日)をきっかけに、司会のビートたけしと親交を深める。88年の「オフィス北野」の設立に参加し、92年から代表取締役社長に就任。89年の北野監督の監督デビュー作『その男、凶暴につき』から全ての北野作品をプロデュースしている。また、例年11月下旬に開催されるアジアを中心にしたインディペンデント系の映画祭「東京フィルメックス」の運営も手掛け、若手映像作家の育成にも取り組んでいる。
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『アウトレイジ 最終章』 監督・脚本・編集/北野武 音楽/鈴木慶一 撮影/柳島克己 照明/高屋齋 出演/ビートたけし、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、大杉漣、塩見三省、白竜、名高達男、光石研、原田泰造、池内博之、津田寛治、金田時男、中村育二、岸部一徳 配給/ワーナー・ブラザース映画、オフィス北野 R15+ 10月7日(土)より全国ロードショー (c)2017『アウトレイジ最終章』製作委員会 http://outrage-movie.jp

北野武監督を支え続ける森昌行プロデューサーが語る『アウトレイジ』三部作の舞台裏と北野映画の今後(前編)

北野武監督を支え続ける森昌行プロデューサーが語る『アウトレイジ』三部作の舞台裏と北野映画の今後(前編)の画像1
北野映画にこの人あり。森昌行プロデューサーがいたから、『ソナチネ』や『キッズ・リターン』などの傑作が誕生した。
“世界のキタノ”こと北野武監督が衝撃デビューを果たした『その男、凶暴につき』(89)から、常に北野映画を支えてきたのが森昌行プロデューサーだ。またオフィス北野の社長として、テレビの第一線で活躍を続ける人気タレント・ビートたけしのマネジメントも手掛けている。多彩なキャストを配し、経済至上主義となった現代社会の風刺にもとれるバイオレンスエンターテイメント『アウトレイジ』シリーズは、どのようにして生まれたのか。そして、トリロジー完結編『アウトレイジ 最終章』を完成させ、北野映画はこれからどこへと向かうのか。北野監督の才能を誰よりも愛するがゆえに、時にシビアな判断も迫られる森プロデューサーが北野映画の裏側を語った。 ──2010年に公開された第1作『アウトレイジ』は独創的なバイオレンスシーンが話題となり、スマッシュヒットを記録しました。もともとは前作『アキレスと亀』(08)の主人公・真知寿がいろんな自殺方法を試すシーンで危なすぎて使えなかったネタから生まれたそうですね。 森昌行 我々はデスノートと呼んでいるんですが、死に方帳みたいなものをたけしさんは持っているんです(笑)。お笑いのネタ帳と同じように、面白い死に方や殺し方を思いついたら、たけしさんは『アキレスと亀』以前からメモしていました。子どもが自由に落書きするみたいな感覚なんですが、その手帳を持ち歩いているときに警察に尋問されたら、きっとテロリストとして逮捕されるでしょうね(笑)。 ■笑いほど残酷なものはない ──北野監督にとっては、笑いも死も同価値のものなんですね。  北野さんは昔から言っているんですが、「笑いとは残酷なものだ」と。また、「笑いは悪魔のように忍び寄る」とも言っています。お笑いって、シリアスな状況であればあるほど、そこで起きる笑いも大きくなるわけです。お葬式みたいに絶対笑ってはいけない場で、誰かがおならをするとおかしくて仕方ない。それがたけしさんの言う「笑いが悪魔のように忍び寄る」ということなんです。これは突発的に起きる暴力と同じようなもの。だから、笑いってすごく暴力的なものなんだ、というのがたけしさんの持論です。チャップリンが言っていたそうですが、「ホームレスがバナナの皮で転ぶより、大統領がバナナの皮で転んだほうが面白い」と。権力を持っている人間が転んだほうがおかしいわけです。だから、たけしさんも「お笑いをやっているからには俺は文化勲章をもらうんだ」と言っています。文化勲章をもらった翌日、立ちションで逮捕されたら、そのギャップが笑いを生むわけです。たけしさんはいつも笑いをベースに考えていて、その延長線に暴力も並んでいるようですね。 ──北野映画は“死生観”“破滅衝動”がテーマだとも言われています。  確かに「北野監督の作品は死がテーマになっている」と言われていたことが初期の頃はありました。でも、たけしさんに言わせれば「いや、そうじゃないんだ。今の時代は生に光を当て過ぎているんだ」ということなんです。たけし流に言えば、なぜ死を忌み嫌うのか、生きることにしか光を当てないほうがおかしいよ、ということ。人間の死を描くことは生を描くということでもあるんです。北野監督にとっては、死に方=生き方なんです。
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『アウトレイジ ビヨンド』でマル暴刑事・片岡(小日向文世)を射殺した大友(ビートたけし)は韓国の済州島に身を潜めていたが……。
■内面三部作は監督にとって必要な作品だった ──北野作品は、笑いと暴力、生と死が隣り合わせになっているわけですね。『アウトレイジ ビヨンド』(12)は北野監督にとっては初の続編。第1作のラスト、刑務所で刺殺されたはずの大友組の組長・大友(ビートたけし)が実は生きていたという『ビヨンド』のアイデアは、森プロデューサーの発案だったと聞いています。  ハハハ、それは事実です(笑)。確かに北野監督はそれまでシリーズものを作ることはせず、『アウトレイジ』も1作で完結させたつもりだったはずです。北野監督と揉めたわけではないんですが、これはプロデューサー個人の話として聞いてください。プロデューサーという仕事は、クリエイティブサイドとビジネスサイドとのブリッジ役だと認識しています。クリエイティブサイドに関しては、北野監督の意思を最大限に尊重したい。でも一方のビジネスサイドに立てば、プロデューサーは出資者たちへの責任があるわけです。作品を完成させるだけでなく、興行的にも成功を収めなくてはいけません。『アウトレイジ』の前に撮った、『TAKESHIS’』(05)、『監督・ばんざい!』(07)、『アキレスと亀』の3作品は正直なところ、ビジネス面で成功したとは言えませんでした。 ──北野監督の内面を描いた三部作、どれも興味深い作品でした。  もちろん、3作品とも内容は評価はされており、それぞれ海外の映画祭にも呼ばれています。北野監督の作家性には悪影響は何らもたらしていません。また、『座頭市』(03)の後、自分が撮りたいのはこれだという明確なものが見つからない混迷期に入り、北野監督にとっては新しい出口を探り出すために必要な3作だったと思います。決して開き直って、弁明しているわけではありません(笑)。そこで3作を撮り終えた北野監督に提案したのが、「十八番中の十八番であるバイオレンスエンターテイメントをやりましょう」ということでした。実験的な作品は避けて、北野監督が最も得意とするバイオレンスアクションに戻ろうと。でも、それは『その男、凶暴につき』や『3-4x 10月』(90)や『ソナチネ』(93)をもう一度撮るということではないし、そうならないと確信していました。北野監督はそれまでにいろんな作品を撮ってきたので、バイオレンスアクションを撮っても初期作品とは同じものにはならないはずだという期待もありました。
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老舗暴力団・花菱会の若頭・西野(西田敏行)と若頭補佐の中田(塩見三省)。実力派俳優たちの老練なやりとりは大きな見どころ。
■『アウトレイジ』に科せられた高いハードル ──北野映画初出演組を中心にした多彩なキャスティングも、『アウトレイジ』シリーズならでは。  それまでの北野監督は、色のついた俳優を起用することをあまり好みませんでした。自分の言うとおりに役者は動いてほしいと考えていたようです。それもあって、寺島進や大杉漣さんといった北野組と呼ばれる常連俳優たちをいつも起用していたんです。ですが、いろんな作品を撮ってきたことで北野監督はどんな俳優が来ても充分にやれるはずだという読みがこちらにはあり、『アウトレイジ』は北野組ではない俳優を使いましょうと提案しました。ビジネス的に前3作が成功しなかったということも、プロデューサーとして大きくありました。『アウトレイジ』がもし失敗したら、監督生命が危ぶまれる……くらいの危機感がありました。4作連続でリクープできなければ、メディアが“世界のキタノ”と持ち上げても、ビジネスパートナーたちはパートナーシップを解消してしまう。そうなれば、北野監督は好きなように映画を撮ることもできなくなる。『アウトレイジ』に関しては、私は観客動員100万人をボーダーラインとして考えていました。そのくらいの大ヒットじゃないと、過去3作のマイナスイメージを払拭できないと、スタッフ全員にハッパを掛けていたんです。いざ、劇場公開してみると観客動員は80万人程度でした。ヒットはヒットなんですが、私の設定していた目標値には達していなかった。そこで、たけしさんには「大友は生きているというアイデアはどうですか? 大友の死体は映していませんし」と私から持ち掛けて、『アウトレイジ』のDVDがリリースされるタイミングで、続編製作を正式発表することでヒット感を打ち出しました。その甲斐あって、『アウトレイジ』のDVDセールスは伸び、その勢いが第2作『アウトレイジ ビヨンド』へと続いたんです。 ──北野監督と森プロデューサーには長年の信頼関係があるわけですが、それでも「大友は生きている」というアイデアを切り出すタイミングは気を使ったんじゃないですか?  もちろん、そうです。下手なタイミングで切り出せば、一蹴されてしまう可能性もありました。でも、たけしさんにも思うところがあったんだと思います。「大友が生きているなら、こういうストーリーになるな」とアイデアを膨らせてくれました。その結果、『ビヨンド』は第1作を越える興収結果を残し、『ビヨンド』で終わってもよかったんですが、今度は北野監督が乗って、「次は大友が韓国へ逃げて……」と3作目まで作ることになったんです。まぁ、すぐに『アウトレイジ 最終章』を作るのではなく、一度違うベクトルに振ったほうがいいだろうと思い、たけしさんがネットで発表した短編小説『ヤクザ名球会』を『龍三と七人の子分たち』(15)として映画化することにしました。幸い、こちらもうまくヒットすることができました。 ──北野監督ほどの才能と実績とネームバリューがあっても、常に数字を残さなくてはいけない時代ですね。  やはり、シネコンというシステムの中では、興行成績というものが中心になっています。『HANA-BI』(98)の頃はアートハウス系でロングラン公開され、口コミで動員することができました。『HANA-BI』を1年間にわたって上映し続けた映画館もあったほどです。海外の映画祭で受賞したことで宣伝費も使わずに済みました。でも、そういったアートハウス系の映画館はほとんど消えてしまい、今はシネコンで上映するしかありません。ある意味、シネコンは残酷な世界です。公開初週の土日にどれだけ観客動員できたかで、公開期間も決められてしまう。宣伝費も『HANA-BI』の頃に比べて、10倍必要になっています。そんな中で、ただ作家性を重視した作品を撮っても、自己満足で終わってしまうことになってしまう。シネコンに作品を掛けるということは、メジャー指向で大量動員することが前提となっています。『HANA-BI』や『座頭市』くらいまでは海外マーケットもそれなりの市場だったんですが、今はアジア映画が海外で占める市場はとても縮小されています。嫌だと思っていても、日本の大量動員システムの中で勝負し、勝ち残っていくしかないんです。エンターテイメントに徹しないと、この国では映画を撮ることはできません。海外でインタビューを受けると「なぜ、北野監督は今もテレビ出演を続けているのか?」と質問されることがありますが、今の日本では映画を撮っているだけでは食べてはいけないからなんです。よっぽど慎ましい生活にすれば別でしょうけど。そういったことも含め、マネジメントも考えざるをえない。当然、たけしさんも年齢を重ね、テレビの世界では新しい人間も出てくる。今後、映画監督としてタレントとして、どう続けていくかは大きなテーマですね。 (取材・文=長野辰次/後編につづく) ●森昌行(もり・まさゆき) 1953年鳥取県生まれ。テレビ番組製作会社でADとして過ごし、最初にチーフディレクターを務めたバラエティー番組『アイドルパンチ』(テレビ朝日)をきっかけに、司会のビートたけしと親交を深める。88年の「オフィス北野」の設立に参加し、92年から代表取締役社長に就任。89年の北野監督の監督デビュー作『その男、凶暴につき』から全ての北野作品をプロデュースしている。また、例年11月下旬に開催されるアジアを中心にしたインディペンデント系の映画祭「東京フィルメックス」の運営も手掛け、若手映像作家の育成にも取り組んでいる。
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『アウトレイジ最終章』 監督・脚本・編集/北野武 音楽/鈴木慶一 撮影/柳島克己 照明/高屋齋 出演/ビートたけし、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、大杉漣、塩見三省、白竜、名高達男、光石研、原田泰造、池内博之、津田寛治、金田時男、中村育二、岸部一徳 配給/ワーナー・ブラザース映画、オフィス北野 R15+ 10月7日(土)より全国ロードショー (c)2017『アウトレイジ最終章』製作委員会 http://outrage-movie.jp