映画評論家・町山智浩氏の最新刊、予約スタート!『今のアメリカがわかる映画100本』

映画評論家・町山智浩氏の最新刊、予約スタート!『今のアメリカがわかる映画100本』の画像1
『今のアメリカがわかる映画100本』
――「月刊サイゾー」にて10年以上も続く長寿連載『映画でわかる アメリカがわかる』が待望の書籍化! ブッシュJr、オバマ、トランプまでの三代の大統領を、そして、今の大国が抱える問題点を“100本以上の映画”を通じて鋭く見抜いてきた人気コラムニストによる同書。「トランプ現象」は、いったいなぜ起こったのか? アメリカの激動の10年が、映画でわかる! 【収録映画】 『告発のとき』――イラク帰還兵はなぜ殺されたのか? 『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』――ソ連を崩壊させたエロ議員と有閑マダム 『君のためなら千回でも』――凧に託されたアフガン難民の願い 『ミルク』――ゲイをカムアウトした世界で最初の政治家 『007/慰めの報酬』――水道の民営化は007最凶の悪役 『グラン・トリノ』――デトロイトとモン族とアメリカン・ドリーム 『世界で一番偉大なパパ』――あの有名人も? 窒息オナニー死の悲喜劇 『インフォーマント!』――味の素の談合を告発した虚言癖で躁鬱の天才 『プレシャス』――「大切」という名の少女が自分の大切さに目覚めるまで 『マイレージ、マイライフ』――ファーストクラスが住居!? リストラ請負人の“福音” 『インサイド・ジョブ』――金融崩壊を引き起こした犯人をムショにブチ込め! 『ソーシャル・ネットワーク』――Facebookの創業者は裏切り者か英雄か? 『ヘル・アンド・バック・アゲイン』――アフガン帰還兵の日常は戦場よりも地獄 『フライト』――パイロットはアル中!? ”奇跡の英雄”の真実 『リンカーン』――奴隷解放のため、権謀術策も辞さない正直大統領の真実 『ジャンゴ 繋がれざる者』――元奴隷が白人を殺しまくる痛快西部劇に黒人が抗議? 『42 世界を変えた男』――メジャー初の黒人選手はただ差別に耐え続けた 『大統領の執事の涙』――8人の大統領に仕えた執事が見た『フォレスト・ガンプ』が隠した60年代 『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』――蘇る「冬の兵士」とウォーターゲート事件 『X-MEN フューチャー&パスト』――超人に託された差別への怒り 蘇るミルクの名演説 『アメリカン・スナイパー』――イラク戦争の帰還兵が怯える見えざる敵 『わたしに会うまでの1600キロ』――1600キロのお遍路でヘロイン中毒からの脱出 『シチズンフォー スノーデンの暴露』――スノーデンとの接触から告発までの実況生中継 『グローリー 明日への行進』――50年目にやっと映画化されたキング牧師のセルマ行進 『トゥモローランド』――希望か絶望か? ディズニーが描く未来の国 『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』――原子爆弾投下は”神の福音”か”大量虐殺”か? 『ストレイト・アウタ・コンプトン』――N.W.A.の名作27年目にして伝えられた“悲劇” 『トランボ ハリウッドで最も嫌われた男』――ハリウッドの黒歴史「赤狩り」に耐えた脚本家の執念 『ズートピア』――なぜ、ウサギに「カワイイね」と言ってはいけないのか? 『ゴーストバスターズ』――ネトウヨのヘイトに潰された女性だけの幽霊退治チーム 『ハドソン川の奇跡』――奇跡でも英雄でもないベテラン機長の決断 『バース・オブ・ア・ネイション』――罪深き『國民の創生」に挑んだ若き黒人監督の罪 『ハミルトン』――なぜ”建国の父”のミュージカルはトランプを怒らせた? 『スノーデン』――オリバー・ストーンが自身を投影したスノーデンと”父殺し” 『ドリーム』――宇宙競争の陰に隠されてきた黒人女性のコンピュータたち 『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』――“マクドナルド的”がアメリカを支配する 『ワンダーウーマン』――女性解放のシンボルかボンテージ・コミックか? ほか 町山智浩(まちやま・ともひろ) 1962年、東京都生まれ。映画評論家。映画雑誌『映画秘宝』を創刊後、渡米し、現在は米カリフォルニア州バークレーに在住。アメリカの文化や政治に関する著者も多数。近著に『トランプがローリングストーンズでやってきた 』(文藝春秋)、『アメリカ大統領選は大騒ぎ』(講談社)、『最も危険なアメリカ映画』、『映画と本の意外な関係! 』(ともに集英社インターナショナル)などがある。

やはり週刊誌は直撃取材がないと始まらない――歌手・吉田拓郎直撃の苦い想い出

1708_yoshida.jpg
『吉田拓郎 LIVE2016 [DVD]』(avex trax)
 毎週のように続く週刊誌のスクープ合戦。緻密な取材もさることながら最後は当人に直撃する。これで初めて完璧な取材となる。「週刊新潮」が報じた今井絵里子参議院議員(33)と橋本健(37)神戸市議会議員の不倫。 「週刊文春」が報じた斎藤由貴(50)と同年代の医師のW不倫。両誌とも最後は両人を直撃。この直撃も両人に口裏を合わさせないことが大事になってくる。特に今は携帯電話のある時代。時間がズレたら先に直撃された者がもう一方に知らせてしまう恐れがある。同時直撃が理想だが、そううまくはいかない。今回の二組の不倫カップルも、直撃は成功。事実を突きつけられた当人が慌てる様子が記事からも伝わってくるものだった。  相手がどう出てくるかわからない予測不能の直撃。思わぬハプニングも起こる。  歌手の吉田拓郎(71)が最初の妻と離婚する前の事だった。離婚の予兆として「別居」という情報を掴んだ。「別居した夫婦で離婚しなかったケースはない」という確かなデータが芸能界にはある。取材を進める。  離婚の影に浮気あり。当時、歌手として飛ぶ鳥を落とす勢いの人気だった吉田。当然のようにモテる。確かな浮気相手は掴めなかったが、すでに「吉田は家を飛び出した」という情報を元に吉田と妻の直撃を敢行することになった。後は順番。出ていかれた妻のほうが不満や言いたいことがあるはず。先に妻を直撃することにした。家に残る妻なら直撃もしやすい。当時、目黒にあった吉田の豪邸を下見。家にいる相手を直撃する場合、原則、夜9時ぐらいまでをメドにするのが暗黙の取材ルールだった。昔は家にインターホンなどなく、玄関横に付いている呼び鈴しかない。へたすればドア越しで帰されてしまう可能性もある。取材拒否でも玄関を開けさせ、顔を見ることが取材の基本だった。8時過ぎに家を訪ねた。すでに家からは灯りが漏れ、人がいることが確認できる。気持ちを落ち着かせ、あらかじめ聞くことを復唱して呼び鈴を押した。そう時間を空けることなく、ドア超しに「ハイ、誰」と野太い男の声があった。えっ、と戸惑った。  奥さんが家にいるはずなのに声の主は男。 「そうか、吉田は家を出たが、奥さんは新たな男性をすでに家に呼んでいるのか?」。これはさらにスキャンダラスな展開と思ったのだが、現実はまるで違った。  ドア越しに「奥さんいますか」と奥さんに用事で来たことを伝えた。すると返事もないまま、ドアが勢いよく開いた。顔を出したのは吉田本人。言葉を失った。「こんな時間に女房に何の用だ」と語気を強める吉田。すでにお酒が入った顔は上気している。野太い声が閑静な住宅街に響く。ふと冷静になったのか、家の中に引きずり込まれるように入らされた。通されたのは入ってすぐの応接間。取材の趣旨をようやく告げる。聞く耳を持たず、吉田は黙ったままテレビを見ていた。巨人・広島戦の野球中継。広島出身の吉田は大の広島ファン。画面を見れば、広島は負けていた。私のことを忘れたかのようにビールを飲みながらテレビ観戦。負けていることで余計に機嫌が悪い。とても声をかけられる雰囲気ではない。中継終了後、ようやく口を開いた。奥さんが家にいないことについては曖昧にかわされたが、離婚は改めて否定。後はお説教。1時間近く応接間に座っていたというより、お仕置きのように座らせられていたが、離婚疑惑の核心になるような話はなかった。9時半近くになっても、それでも奥さんがいない事実は確かめられたことだけが収穫だった。 「吉田拓郎、離婚へ」の記事を吉田家における応接間での出来事も入れ掲載した。直撃で起きたハプニングはそのまま書いたほうが信憑性は増す。離婚の話は拡散。それから半年足らずで吉田夫妻は離婚した。直撃というのも常にスムーズにいくものではない。こうしたハプニングも起きる。だから直撃ほど面白いものはない。アイドルになると「事務所を通して下さい」というのが相場だが、大人の芸能人は直撃に答えるようになった。芸能関係者によれば、「答えずにいれば“逃げた”と思われ、それだけで不倫を肯定することになる。言い訳でも真摯に答える風潮になっている。ましてや、今の週刊誌はデジタル化でテレビのようにカメラを回す時代。きちんと応じることがまず大事」(芸能関係者)という。直撃に時には激昂。時には開き直る。そんな光景が直撃の醍醐味。くだんの二組の不倫も直撃が活きている。 (敬称略) 二田一比古 1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

安室奈美恵の母親取材と殺害事件――安室奈美恵の母との交流

1708_amuros.jpg
『約束―わが娘・安室奈美恵へ』(扶桑社)
前編はこちら  頑なに口を閉ざしていた安室奈美恵の母・恵美子さんがようやく口を開いたのは、初の接触から3日後の夜、沖縄名護にある居酒屋でのことだった。「私も奈美恵も人見知りする。特に内地(沖縄県外)の人には弱いの」という母も、お酒を飲むうちに心を打ち明けて話すようになり、次第に饒舌になった。根っからの沖縄人。沖縄の太陽のように明るい。娘の奈美恵の生い立ちから「沖縄アクターズスクール」に通い、中学卒業と同時に歌手になるために上京していった経緯を詳細に語り始めた。取材は何日も続いた。すべてお酒の席。お酒は取材の潤滑油になる。母親は大宜味村にある実家近くでスナックを経営していた。店には沖縄在住の奈美恵ファンの子が毎日のように数人来ては、母親との交流をしていた。アイドルのファンが実家を訪れることがあるが、奈美恵のファンも同じだった。大半は奈美恵と同年代くらいの女の子。「本人に会えなくてもお母さんから少しでも情報を共有していたい」というのがファン心理。安室は当時から同性のファンが大半を占めていた。「アムラー現象」が起きた原点である。  沖縄本島北部にある辺士名には居酒屋からスナックまでお店が10件ほど立ち並ぶ。どこの店も母親は顔。飲むと朝まではしご酒が母親の日常だったが、飲む姿は豪快そのもの。沖縄の民謡を歌いながら踊る母親。  膨大な母親の取材。これほど取材がトントン拍子に運ぶことはそうはない。週刊誌で独占告白を掲載。さらに母親の話を出版まですることになった。たまたまの取材が縁で想定外の方向に進む、これも取材の醍醐味。だが、本にするには別の壁があった。母親は事務所の所属ではない。出版は母親の意志とはいえ、本の中身は歌手である娘の奈美恵の話が大半。奈美恵は芸能人であり芸能プロに所属している。そのため奈美恵側の許諾が必要になった。両者が反対すれば出版の話はなくなる。事務所の社長に直談判し、多少のカットはあったが、最終的には社長も快く承諾してくれた。  出版を記念して母親と乾杯。「近いうちに東京で奈美恵も入れて焼肉屋で食べましょうね」と、本のタイトルになった「約束」を交わした。その日を楽しみにしていた矢先に事件は起きた。  1999年3月17日。午前11時頃だった。午後からの仕事のため私は髭を剃りながら出かける支度をしていた。突然、携帯ではなく自宅の電話が鳴った。毎日新聞の知人からだった。「母親が沖縄で交通事故に遭い、救急車で病院に運ばれたが、危篤状態のようです。なにか連絡はありましたか」との問い合わせだった。すぐに母親の携帯に電話する。通じない。何度かけても不通。そのうちに自宅の電話から携帯までひっきりなしに電話が鳴った。母親の身になにかが起きている。状況は刻々と変わり、最終的に「殺された」との報道が出された。にわかに信じがたい。すぐさま沖縄に向かう。他のメディアも一斉に沖縄に向かう。人気歌手の母親が殺されるという大事件は世間を震撼させた。私は真っ先に母親の再婚相手だった夫を探した。夫の携帯も通じない。大宜味村の自宅には誰もいない。途方に暮れた。母親と一緒に飲んだ地元の友人夫妻のをつかまえるとようやく事件の全貌が見えてきた。夫の義弟が車で轢いたうえにナタで殺害したのだ。夫と出かけるために車に乗り込もうとしていた時にふいに襲われた。夫が止める間もなく殺害されたという。その後、義弟も車で逃走。離れた畑の中で自殺した。事件の真相は闇の中。唯一、知り得る立場にあった夫は私と接触する前に事務所の人たちに連れて行かれ、メディアとの接触を遮断されていた。 「義弟との間で起きた金銭トラブル」が原因というぐらいしかわからず、事件の全貌は今も闇の中。  各メディアは母親の半生の報道に切り替えた。結果、母の本を出版した私がもっとも母親の半生を知る人物となり、取材対象者になってしまった。私が独自に取材しようにも、私を尾行するメディアの群れ。私の話が新聞、テレビ、週刊誌のほぼ全てを埋めた。後に安室の姉や事務所関係の人から「奈美恵に変わって母親の人となりを話してくれて、殺害されたという嫌な事件を払拭してくれました」と感謝の言葉を伝え聞いた。母親の取材で生まれた不思議な縁を今さらながら痛感する。 (敬称略) 二田一比古 1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

結婚・離婚は両親がキーパーソン――安室奈美恵の結婚と親

1707_yokoyasus.jpg
『安室奈美恵 エピソードプラス -Infinite- (RECO BOOKS)』(アールズ出版)
 芸能人が結婚や離婚という人生の大きな決断をするとき、事務所の許諾はもちろん必要だが、常にカギを握るのは両親。一般社会でも真っ先に親に相談や報告をするように、芸能人も変わらない。メディアも親の居所を掴み現地まで取材に行くのが基本になっている。特に親が地方に住む場合「わざわざこんな遠くまで来てくれて」と取材を受け入れてもらえやすい背景もある。離婚騒動で揺れる松居一代の両親のところにも、最初はテレビなどが取材に訪れたが、当然のように親は娘の味方。あれだけの暴言を吐いて暴走する娘をかばうだけ。なるほど絆の強い親子であると世間を驚かせた。どういう反応であれ、親の発言は誰もが関心を寄せる。それが時には芸能ニュースの核となることもある。それを痛感したのが安室奈美恵(39)の結婚だった。  安室がダンサーだったSAM(55)と電撃結婚を発表したのは1997年の事だった。  人気絶頂時に「デキ婚」。まだ幼さが残る20歳のときである。出産のため1年近く産休・育休に入ることも発表された。嬉しさいっぱいで結婚報告する2人だったが、事務所関係者は複雑な思いだった。こんな話を聞いた。 「伸び盛りの歌手が休むリスクは大きい。単に結婚したいという話なら当然、事務所は強硬に反対して結婚させなかっただろうが、デキ婚では反対もできない。多分、安室は反対されるのを見越しての妊娠だったのでしょう」(芸能関係者)  この安室の結婚をきっかけに芸能界にデキ婚が続出。デキ婚が当たり前のようになっていた。ビッグニュースにメディアも湧きたった。大半のメディアは安室の母親が暮らす沖縄に飛んだ。沖縄本島北部・大宜味村。のどかな集落に一際目立つ、大きな二階建ての家。近所では「安室御殿」と呼ばれ、母親孝行に安室が建てたものとも言われていた。私も沖縄に向かったが、みんなが一斉に取材に行っている最中であり、彼らと一緒になれば、取材拒否でも取材に応じた場合でも、同じ話しかとれない。テレビや新聞は速報性が優先されるが、週刊誌は中身が重要で、それも独自のものが必要。時間差を設ける作戦をとった。先に押し掛けた報道陣は取材拒否を受け、三々五々退散した。実家が静かになった日を狙って家を訪ねた。もう取材陣は東京に戻り、ようやく普通の生活ができると思っていた矢先の来訪。驚いた様子を見せたが、取材は拒否。取材はしつこい人のほうが勝ち目がある。朝晩、呼び鈴を押しては帰る。この繰り返し。後日、作戦を変更。呼び鈴では家の中から声だけで断られるため、出かける時を外で静かに待つ。  早朝から待つこと2時間。無線で呼んだタクシーが横付けになった。案の定、母親・安室美恵子さんが出てきた。初めて母親に接触。「困ります」という母親を車で追った。向かった先は車で30分ほどの名護。買い物の後、知人に会っていた。終わるのを待ち、近くのハンバーガー店に誘った。  最初は世間話である。母親と私は同年代。取材対象者と取材する側は年齢が近いなど共通点が多くあるほうが話も合い、取材が有利になることもある。最初は沖縄での生活などについて雑談。時折、笑みも見せようやく馴染んでくるのを感じた。しめたものだ。お酒が好きだと聞き、夜の食事に誘った。沖縄は男女問わず飲む酒は泡盛。ここでも相手に合わせる。苦手だった泡盛を一緒に飲むにつれ、ようやく母親は素の顔になり心を開いて話すようになった。取材拒否していたときとは違い、饒舌である。娘・奈美恵の話も語り出した。「結婚、良かったですね」と型通りの言葉を向けると。母親はこう答えた。 「嬉しいけど、複雑なんよね」と言って一呼吸おくと、「私も最初の結婚は奈美恵と同じ二十歳で、しかもデキ婚でした。奈美恵から電話で話を聞いたとき、嬉しさと同時に私と一緒だと思ったの。私はうまくいかずに離婚。やはり若かったのよね。奈美恵は大丈夫かなあ? という不安もよぎりました」  母親からしか言い出せない言葉。自身の人生と奈美恵が被ったことで語らせたのだろう。この話を聞いた瞬間、母親の話はもっと奥深いものになると確信めいたものが生まれた。  それから何度となく沖縄に通い母親の本格的な取材が始まった。

『巨人の星』はインドでも虐待アニメ――今、法律のウラとオモテで起きていること

――虐待を受けた「わたしたち」に残ったものとは? よじれてしまった家族への想いを胸に、果たして、そこに再生の道はあるのだろうか。元・被虐待児=サバイバーである筆者が、自身の体験やサバイバーたちへの取材を元に「児童虐待のリアル」を内側からレポートする。
1707_honamiill_2.jpg

あなたは本当に「虐待の定義」を答えられるだろうか

 2012年、スポ根アニメの草分けである『巨人の星』(原作・梶原一騎、作画・川崎のぼる)がインド版アニメとしてリメイク放送された。製作当初、インド側のスタッフから「大リーグボール養成ギプスは、児童虐待に当たる」ということで拒否されたらしい。確かに筋力強化のためとはいえ、現実の小学生に拘束具を使っていたら、やはりやり過ぎだろう。だがトレーニングに苦痛はつきもの。道具を使わないにせよ、どこまでが虐待かという線引きはなかなか難しい。  今やすっかりメジャーになってしまった「虐待」というキーワード。しかし、そもそも児童虐待とは、どんな行為を指すのだろうか? 「“親”が子どもに“暴力を振るう”こと」。  でも、これだけでは不正解。言葉で脅したり、食事を与えなかったりするなど、直接手を挙げない行為も存在するからだ。では、法律での扱いはどうなっているのだろう。虐待対応の基盤となる「児童虐待の防止等に関する法律」(通称:児童虐待防止法)では、次のように定められている。 ――保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。 “次に掲げる行為”には、直接的な暴力以外にも、わいせつ行為や育児放棄などさまざまな内容が記されている。つまりは「保護者が子どもに耐えがたい苦痛を負わせる」こととも言えるが、実はこれでも実態とは遠くかけ離れている。サバイバーたちに話を聞いていくと、「加害者=保護者」ではないケースも多いからだ。  例えば、「高校生になっても、年の離れた兄から毎日グーで殴られていました」という40代女性や、「両親が離婚して父に引き取られたが、その実家で親戚一同から暴行にあっていた」という女の子もいる。 『法律家が書いた子どもを虐待から守る本』(中央経済社)の著者であり、子どもの虐待根絶を目指すNPO法人「Think Kids」の代表理事も務める後藤啓二弁護士は、児童虐待防止法上の虐待における“加害者の定義の狭さ”の弊害を指摘する。 「法律の定義では、同居して面倒を見るなどしていない限り、祖父母や親の愛人、親戚や兄弟姉妹などは対象外です。2011年に姫路市で起きた姫路市虐待重体事件では、児童相談所が法律を限定的に解釈し、“虐待行為が疑われていた母親の交際相手”について事情を聴かないままにし、この男による更なる虐待行為を防げませんでした」  野放しになった母親の愛人、その顛末はどうなったのだろうか? 「結局、子どもを重体に陥らせた後に、警察がこの男を逮捕しました。しかし、児童相談所が細かい文言にこだわらず適切に対応すれば、防ぐことができたはずです。児童相談所のこのような消極的な対応により虐待と認知されない案件がまだまだあると思いますので、行為者の定義をもっと広げる必要があります」  これらの発言からもわかるとおり、現在の日本の法律では、虐待を一言で定義することは非常に困難なのだ。こうして法の網目からこぼれおちる虐待や、そこから生き抜いてきたサバイバーがいる。ああ、なんてつかみどころがないんだろう。  つかみどころがないからこそ、わたしたちは隣の家から子どもの泣き声が聞こえたときにどう行動していいかうろたえてしまうし、「自分が虐待者になる可能性」に怯えるのかもしれない。虐待の経験がある人も、またそうでない人も、得体の知れない迷路の中で迷うことがあるんじゃないかと思うのだ。

サバイバーの4つの属性

虐待の多様性を示す例は、他にもある。例えば下記は、厚生労働省による虐待行為の4つの分類である。(『子ども虐待対応の手引き』より) ・身体的虐待 → 外傷を受ける行為や生命に危険のある暴行、意図的に病気にさせられる行為など ・性的虐待 → 性交や性的行為の強要、性器や性交を見せる行為、ポルノの被写体への強要など ・ネグレクト → 衣食住を含め、健康・安全への配慮をしてもらえないこと。情緒的な欲求に答えてもらえないことなど ・心理的虐待 → 言葉で執拗に傷つけられる、無視、他の兄弟との差別、家庭内のDVを見せられることなど  サバイバーからすると、こんな切ない名称が自分の過去にラベリングされるのは大変不本意なのだが、便宜的にサバイバー間の自己紹介などで使うこともある。それぞれの属性によって、苦しみの種類や乗り越えなければならない壁が少しずつ違うからだ。  ではこの4類型を詳しく見てみよう。まず多くの人が想像しやすいのは、殴る蹴る、縄で拘束するなどの「身体的虐待」だろう。しかし、全体の比率として一番多いのは、言葉での脅しや過度の監視などによる「心理的虐待」(47.2%/2015年度厚生労働省調べ)である。  食事を与えられない、病院に連れていってもらえないなど、育児放棄ともいえるのが「ネグレクト」。2004年に上映された是枝裕和監督による映画『誰も知らない』では、1988年に実際に発覚した「巣鴨子供置き去り事件」を扱ったことで話題になった。父が失踪、続いて母が蒸発した後も、親を待ちながら健気に生きるしかない4人のきょうだいの姿を描いた作品である。  そして、もっとも世の中で認知されることが少なく、誤解を生じやすいのが、「性的虐待」だろう。レイプのような暴力的なものを思い浮かべる人もいるかと思うが、実際はセックスが何かも知らない女の子(あるいは男の子)に「愛情表現」や「しつけ」と称して行われることも少なくない。成長して行為の意味を知ったとき、彼ら彼女らの信じる世界がガラガラと音を立てて崩れ落ちてしまうのだ。  以上の4類型は、個別にではなく「身体的」×「ネグレクト」など複合的に行われることもある。 * こんな入り組んだ世界の中で、サバイバーたちは孤独に葛藤している。だからこそ、彼らは出会った同志を大切にし、属性に関係なくお互いを労おうとするのかもしれない。  わたしが5年前にサバイバーのオフ会を開いたとき、参加者にはさまざまな虐待の経験者が混在しており、未だ継続中の子もいた。そんな中、15歳のときに母親が蒸発したというカオルさん(仮名・当時30歳)は、初対面のみんなにお守りのような小さな巾着を手渡して回っていた。手作りと思しきその袋を開けると、中から小指の先ほどのかわいらしいダルマが顔を出したのである。 「ほら、七転び八起きって言うじゃないですか。その意味は――わたしたちならわかりますよね」。カオルさんはいたずらっぽく笑った。 法や定義はもちろん必要だ。しかし、生身のサバイバーの世界は、今この瞬間もどこかで力強く回っている。 (文/帆南ふうこ) 帆南ふうこ(ほなみ・ふうこ) 1980年生まれ、ライター。4歳ごろから高校生まで実母から身体的・精神的な暴力を受けて育つ。13年間にも及ぶ反抗期を経た後、結婚を機に母親と和解。ここ数年は元・被虐待児である「サバイバー」たちのオフ会を開いたり、取材を通じてサバイバー仲間との親交を深めている。趣味はお酒と田舎暮らし。

男性向けグラビアvs女性向けグラビアの“差異”とは? Fカップ美乳【山地まり】男女のエロを徹底考察!

――グラビアといえば男性だけのものだった時代はとうに過ぎ去り、最近では女性誌での「女性向け」エログラビアを見かけることも珍しくなくなった。そこで、グラビアでも大活躍中の山地まりちゃんに、それぞれのグラビアを演じ分けていただいた!
1708_170707yamaji0295_520.jpg
(写真/角田修一)
 グラビアにおけるエロティシズムといえば、男性向け雑誌のグラビアが思い出されるが、最近では雑誌「an・an」(マガジンハウス)の「セックス特集」に見られるような“女性向けグラビア”も珍しいものではなくなってきた。そこで本企画では、グラビアの世界で大活躍中の山地まりちゃんに、前半では「男性向けグラビア」を、後半では「女性向けグラビア」を演じ分けてもらいました。  まずは、まりちゃんにとっては“主戦場”である男性向けグラビアから。 「男性向けのグラビアは、いろいろ妄想するためのものですよね。1枚の写真で終わるものではなくて、その先にあるストーリーを楽しんでるのでは」  そういった男性の妄想をかき立てるため、撮影される際に努力していることはありますか? 「いい表情を作ろうと頑張っても、出来上がったグラビアを見ると『実際はこんな表情をしてたんだ?』ということも多い。結局、一生懸命表情を作るより、カメラマンさんや編集さんに任せて指示通りに動いたほうが、リラックスできていいのかもしれないですね。ほら、男性って“スキ”がある表情が好きじゃないですか。受け身なくらいで撮影したほうが、“スキ”が出て妄想しやすい写真になるのかなって」  男性向けのグラビアでは、バストやヒップといった体のパーツを強調したポーズも多いけど、大変そうですよね。 「無理な体勢のポーズも多いから、撮影後の筋肉痛は“グラドルあるある”だと思います。あと、男性向けグラビアだと、毛穴や鳥肌も修正せずにバッチリ写ったまま掲載されることも多い。女性としては恥ずかしいけど、男性の皆さんは、そこがいいんですよね」
1708_170707yamachi0074_520.jpg
(写真/角田修一)
 一方「an・an」など女性誌のグラビアでは、全体的にオシャレな雰囲気に包まれています。 「男性は女性のボディ中心に見ていると思うんですけど、女性はページ全体を見ているんですよ。『水着もかわいいしメイクもかわいいし、アクセサリーも可愛いし』って、いろんなところを楽しんでるんです」  そんななかにじみ出てくる、女性向けのエロティシズムってどんなもの? 「男性向けグラビアでやるとちょっと過激すぎるようなポーズでも、女性誌の“オシャカワ”な雰囲気で撮ると、そんなにいやらしくないから、意外といけちゃったりするんですよね。だから、実は女性向けグラビアのほうが、すごくナマナマしい気がします」  確かに女性誌のグラビアでは、「人気アイドルがいきなり手ブラ!」なんてこともありますね。 「女性向けグラビアのエロスって、女性が憧れるエロスなんだと思うんです。『こういう体形になりたいな』っていう気持ちもあるし、『今度カレにこんな姿を見せてみようかな』みたいなことを考えている人も多いと思います。女性はたぶん、自分を投影しながらグラビアを見ているんですよね」  男性向け、女性向けを問わず、グラビアを見るのが大好きだと語るまりちゃん。モデルさんの体のどのへんに目が行きますか? 「肌と体の曲線、太ももの隙間とかですね。あと個人的には、“ジュワッ”としている女性にはエロスを感じます。潤いというか質感というか。肌でも唇でも、保湿するだけで女性は結構エロくなりますよ」  ちなみに、グラビアで多くの男性たちを魅了するテクニックは、リアルな生活のモテにはつながってますか? 「それが全然モテないんですよ! グラビアって過酷な撮影も多いし、カメラマンさんの要求にいかに応えるかっていう戦いでもありますし、仕上がりの写真はエロくても、現場はまったくエロくない。プライベートには役立たないんです。たぶん女性向けグラビアなら、ずっと『かわいいね、かわいいね』って言われ続けて撮影するから、そっちのほうがモテるのかも(笑)」  被写体として男性向けグラビアを頑張ったからといって、男性にモテるわけではないというこの矛盾。うーむ、グラビアのエロティシズムって難しいですね! (スタイリング/丸本達彦) (ヘア・メイク/MEGURO) (文/相羽 真) 山地まり(やまち・まり) 1994年6月25日、東京都生まれ。12年、「週刊プレイボーイ」(集英社)巻頭グラビアにてデビュー。翌年4月にドラマ『35歳の高校生』(日本テレビ系)で女優デビュー。以降、雑誌グラビアやドラマ、映画、バラエティ等で活躍。現在、MBSラジオ『オレたちゴチャ・まぜっ!~集まれヤンヤン~』9期生レギュラーとして出演中。また出演映画『咲~saki~』DVD&Blu-rayがVAPより絶賛発売中! [衣装協力]水着(2万7000円)/LENNY NIEMEYER(fruits de mer) [連絡先]fruits de mer/0467-22-2277

都ファ躍進で表面化――安倍VS麻生、決裂!?自民党内権力抗争

1708_ns01_230.jpg
圧勝で満面の笑みを見せているだろう、小池百合子都知事。イベントで見せたのは、トレードカラーの緑ではなくて、赤。
 加計学園問題など、安倍政権のスキャンダルに世の不信感が集中するなかで行われた東京都議選。結果は小池百合子氏が率いる「都民ファースト」の圧勝で幕を閉じた。しかし、その評価は正しいのか? 数々の政府系プロジェクトに参画している、経営コンサルタント・クロサカタツヤ氏が、ムードや風に流されやすい日本の政治の実態、また都議選の裏で起きていた権力の暗闘について語る!  都議選前、ネットを中心に論陣を敷く論客たち(以下、ネット論壇)は、小池都政や都民ファーストに批判的、もしくは「敗北する」という論理を展開していました。僕個人の印象としては、彼らの論理はある意味ではとても“自由”で“合理的”。「候補者は政策で選ぶべき」「豊洲は残すべきではない」などとても科学的で、正しいと感じざるを得ない主張が少なくありませんでした。しかし同時に僕は、「それらの主張の正しさは、都民の投票行動を促す力にはならない」とも感じていました。都議選が終わった今、改めてそれを言い出すのは“後出し”ですが、結果的に「都ファが勝つ」という当初の予想が的中した形になったのです。  日本では経済的な豊かさのおかげで、政治にある程度無関心でも生きていける社会が長らく続いてきました。そのため、国民、もしくは都民の「どのような政治家に投票すべきか判断する能力」は、残念ながら洗練されていない現実があります。  今回、政治に対して意識が高い人たちと、都民のマジョリティ間にある、ある種の断絶が露呈しましたが『基礎票の固さ+その時のノリで趨勢が決まる』日本の政治の実態もあらためて浮き彫りにされました。選挙前、いかに生産的な議論があっても、あくまで議論の域を出ない。支持基盤のしっかりした政治家と“ポピュリズムを煽る”政治家によって起きた風で、結果は見えてしまう。そして今回、その風が小池都知事だったのでしょう。それは、ドナルド・トランプ大統領が勝利を収めた、米大統領選の構図に近いものがありそうです。  ただし、有権者側の判断能力が低いのかと言うと、一概にそうとも言い切れません。政治の裏舞台は常に見えにくいもの、投票者の大半が真実に触れられないまま投票を余儀なくされる構造があるのもまた事実です。  例えば、加計問題などさまざまなスキャンダルに揺れる政権内部には今、どのような権力争いやパワーバランスが働いているのか。少し掘り下げてみましょう。  ここ20年ほど、日本の政権内部ではプライマリーバランス(財政規律)に対してどの立場を取るか、という対立が続いてきました。言い換えれば、国の借金ゼロを目指すのか、もしくは借金=財政出動して景気浮揚策を取るかという、財政政策面における主導権争いが存在します。  第二次安倍政権によるアベノミクスは、世の中にどんどんお金を回していこうというスタンスに基づいています。当然、国の借金は増えていく。そのため、財政規律を重視する派とは対立する構図があります。  そんなプライマリーバランスをめぐる政権内部の対立は、今年はじめから徐々に表面化していました。閣内で言えば、安倍首相の出身派閥と麻生財務相の派閥の対立です。麻生氏は財政規律を守るべしとする財務省を背負っていて、安倍政権の経済政策には必ずしも賛同していません。  そんな財務省が実現を目指すのが、消費税の増税です。国の借金を減らすには歳出の削減、または歳入の増加、つまり増税が近道。しかし安倍首相は、自らの政権が経済政策によって支持されていることをわかっています。財務省が「いい加減、手をつけてほしい」とイライラしても、相容れることはできません。一方で増税は、国民からの反発が必至なので、人気のある政権でないと実現が困難です。そこで増税を目指す人々が、安倍政権の人気を利用しつつ、財政規律を守る方向に舵を切らせようと、画策してきたのではないか。  こうした仮定を置いてみると、麻生派が安倍政権をコントロールするためには、どのような方法がもっとも効果的でしょうか。おそらくもっとも手っ取り早いのは、現政権中枢を支える人物を辞めさせ、自分たちの影響力が及ぶ人物を送り込み、すげ替えてしまうことでしょう。そこで標的となりそうなのが、菅義偉官房長官です。菅氏は、自民党内であえて味方をつくらないことで安倍首相への忠誠心を示しつつ、一方で官僚の人事権を掌握することで、自身の権力基盤を確保してきました。  そんな菅氏に対して、加計学園問題での告発で目下、注目が集まる前川喜平氏など一部の官僚たちはやりづらさを感じていたはず。財務規律を守らせたい人たちは、そんな彼らを焚きつけ、菅氏と対立させる構図を作ろうとしたのかもしれない。一連のスキャンダルの背景には、そのような権力争いが作用している気がしてなりません。  おそらく、今後の日本の政治は、安倍首相が残された政治余生で「何をしたいか」で、大きく変わってくると思います。憲法改正なのか、経済なのか、はたまた他のことなのか。仮に憲法改正だとすれば、麻生氏らはそれを手伝う代償として、財政規律を是正するよう重圧をかけるようにも思えます。ただ、財政規律を是正する方向に舵をきれば、日本経済へのダメージは大きそうです。そして経済がダメになれば、政権の支持率がガタ落ちになるのは、目に見えています。安倍首相としては、何を優先するか判断に迫られるはずですが、経済を犠牲にしてまで憲法改正に固執するならば、それは国民に対する裏切りに近い。改憲も日本にとっては重要ですが、今はその時ではない。個人的には、安倍首相が経済政策を優先すると信じたいです。  話を都議選に戻しましょう。当時、政権内部で主導権争いがあったとして、都民はそれを知る由もなかったはずです。結果、「小池都知事は何かやってくれそうだ」というような表面的な情報から、都「ファ圧勝」という結果に終わりました。都民ファーストで当選した候補は、多くが初当選【1】。政策を評価されうる経歴も見当たりません。正直、有権者が何を持って投票したかという理由もいささか疑問が残るところです。  ただし、専門家でもない有権者が、四六時中、政治に関心を持つことはおそらく不可能でしょう。重要なのは、それが日本の政治の現実であると認めることです。そして自分の生活に密接かつ重要に結びついた「これだけは譲れない」というテーマを絞って、候補者について良く調べてみるべきでしょう。育児なのか、介護なのか、雇用なのか。候補者の過去をさかのぼれば、その人物に一貫性があるか否か、知ることができるはずです。ただ支持した候補者が当選したとしても、政策が実現しない場合もあります。それでも、思いを託せる候補に愚直に投票し続ける。それが、有権者に唯一できることではないでしょうか。 (構成=河 鐘基) 【1】都民ファーストで当選した候補は、多くが初当選 今回、都民ファーストから出馬した候補者は、小池百合子知事が開いた政治塾「小池百合子政経塾 希望の塾 (小池塾)」の出身者が多数。同塾では、都議選対策講座なるものが開講されていた。今回の結果に対しては、さすがに多くの有権者が「いつか来た道」だと感じていそうだ。

“スタイルブック”とはなんぞや!? 女性タレントが群がる金脈ビジネス

――世の中には、男性がなかなか手に取らないジャンルの本がある。BL(ボーイズラブ)にTL(ティーンズラブ)、イケメン写真集、婦人科系——その種類はさまざまだが、本稿では「スタイルブック」に焦点を当ててみたい。
1707_stylebooks.jpg
『RIKA』(角川春樹事務所)
「スタイルブックとはもともと、着装を紹介する書籍や雑誌のことを指します。日本でも戦前からこの呼び方は見られます。ただ、そうした本に掲載されているのはスタイル画も写真もありましたので、当時から明確な定義はありません」と、ファッションの歴史に詳しい武庫川女子大学の井上雅人氏は説明する。  2017年の現在でもスタイルブックの定義は明確にはないが、ざっくり言えば、モデルや女優、女性アーティストが、自身のファッションやメイク術、美容法、ライフスタイルを、写真中心で紹介する本だ。  出版業界のひとつの水脈として存在してきたこのジャンルが、近年飽和状態になっているのも、男性諸氏にはあまり知られていないだろう。 「スタイルブックの火付け役は梨花です。彼女が出した『Love myself 梨花』(09年/宝島社)がヒットして、同性人気が高い女性のスタイルブックが売れることを出版社が理解した。その後、平子理沙や風間ゆみえなど、『GLAMOROUS』(講談社)や『SWEET』(宝島社)のような女性誌のモデルやスタイリストが続々とスタイルブックを刊行し、ある程度出揃ったら、さらに下の年齢層の『non-no』(集英社)や『Popteen』(角川春樹事務所)のモデルが出し……と、年齢層と裾野がどんどん広がっていきました。結果、今はインスタグラマーや“インフルエンサー” 、“ブランドプロデューサー” といった肩書の、モデルでもなんでもない人までスタイルブックを刊行するに至っています」(スタイルブック編集経験者)  編集者がそう語るように、今年に入ってからだけでもダレノガレ明美『MY STYLE』(マガジンハウス)、emma『ビジュアルスタイルブック「emma」』(SDP)、田中彩子『AYAKO's My Style』(ワニブックス)、バンドじゃないもん!『バンもん!スタイルブック』(主婦の友社)、ゆうこす『モテるために生きている!』(ぶんか社)等々、月数冊のペースでスタイルブックに分類される書籍が刊行されている。ダレノガレ明美はともかく、emmaや田中彩子の名前にはピンとこない男性読者も多いだろう。前者は「装苑」(文化出版局)、「NYLON JAPAN」(トランスメディア)で人気を集め、14年から「ViVi」(講談社)専属となったモデル。後者はフォロワーが9万人を超えるインスタグラマーで、「CLASSY」(光文社)で活躍するママ読モでもある人物だ。なお、バンドじゃないもん!はアイドルグループ、“ゆうこす”は現在“インフルエンサー”“モテクリエイター”の肩書で活動する、元HKT48の菅本裕子。確かに、モデルを本業とする人以外の進出が甚だしい。  こうした状況が生まれている理由のひとつとして、女性誌の編集者はこう語る。 「人気のモデルは、基本的にどこかの雑誌の専属になっている場合がほとんど。専属の子がほかの版元からスタイルブックを出すことはなかなかないので、ファッション誌を持っていない出版社は、モデル以外で女子人気のありそうな人をつかまえてこないといけないわけです。そうすると、YouTuberやインスタグラマーなどの青田買いが始まります。スタイルブックはある程度構成や内容が決まっていて、似通った内容になりがち。特に人気モデルでもなければ編集側がイニシアチブを取って制作できるのも利点です」  実際にスタイルブックを開いてみると、大雑把にはオシャレ下着や水着のグラビア、私服コーディネート、メイク&美容紹介、お部屋公開、ロングインタビュー、Q&Aあたりが定番企画の様子。制作にかかる費用は「タレントにもよるが、印税抜きで100~200万円程度。連載をまとめたり、インスタからの転載が多ければ印刷費を除いて60~70万円程度で済ませることもあります」(前出・編集者)という。 「取り上げる洋服やメイク用品などにタイアップがつくこともありますが、露骨なものは少ないですね。あとは、海外ロケがある場合に航空会社やホテルのタイアップが入るくらいです。ロケ地はニューヨークやロサンゼルス、ロンドンなどの“オシャレ感”が強い街か、女性人気の高いハワイあたりが定番ですね。サイパンや韓国、台湾のような近場の安いところだと、事務所に対して申し訳が立たない感じもするので……」(前出・女性誌編集者)  “オシャレ感”というワードが出たところで、改めてこうしたスタイルブックを買う人が何を求めているかを考えてみたい。 「男性に媚びた感じのないおしゃれな女性が出していることから、その人たちの着こなし術や私生活を知りたい! というのが前提ですね。なので、『この人の本とあの人の本、ほとんど同じ構成じゃないか!』といって怒る人はあまりいないと思います。ただ、インスタグラムで人気の女性の場合、インスタからの転載が多いとアマゾンレビューなどで低評価をつけられがちですね。撮り下ろしの分量には敏感だと思います。あと、アーティスティックなページが多すぎると、タレントの自己満足のための本と捉えて怒る読者も。タレントサイドが主導権を握っている場合、こうした事態が起きやすいです。タレントも読者も満足のいくバランスを取ることが大事になってきます」(同)  近年は梨花のようなヒット本は出ていないというが、今回話を聞いた編集者たちが口を揃えて褒めるのが泉里香の『RIKA』(角川春樹事務所/16年4月刊)だ。「すごく丁寧にできている」「男性ファンも取り込む内容」と、評価が高かった。書籍は、ビスチェ姿で床に寝転がるモノクロ写真からスタート。オシャレさもありつつ、胸がしっかり強調されている。その後のグラビアも、一見可愛らしいワンピース姿を披露しながら、連続ショットの中で横乳だけ写した1枚が混ざっていたり、「ボディメイク」と題した章では男性誌と見紛うようなグラビアが続いたりと、男性向けの要素も多い。実は泉里香がここまでの露出度に挑戦したのは本書が初であり、「モグラ女子」ブームの牽引役としての現在に至るまでの活躍はここから始まったといえるようだ。 「スタイルブックを買うのは、『その人のセンスを買う』という意味合いが強いと思います。だから作る場合には、憧れ8割・親近感2割くらいの見せ方ができると理想的。よほどのことがない限り重版はかからないジャンルですが、親近感が増すような内容であればあるほど、地味に売れ続けるんです。泉里香さんのスタイルブックも、スタイル維持のコツや、仕事が全然なくて苦労した時代の話などを語っているのが高評価の理由だと思います」(前出・編集者)  とはいえ、門外漢からすれば、インスタグラマーのスタイルブックを読んでも「無名の人の私生活を語られましても」と思ってしまうのが正直なところ。やはりインスタで人気のインフルエンサー・Marikoが出した『mariko_0808 FASHION STYLE BOOK』の質問コーナーでは「Marikoさんはモデル?」という質問が寄せられており、「なんだと思って見ていたんだ?」と、ついズッコケてしまう。むろん、スタイルブックはファンに向けて作られているものなので、そうでない人が読んで鼻白むのはお門違い。だが、さすがにこれだけスタイルブックが乱発されていると、今後は本当に「誰が読むんだ?」という本も生まれてくることになるはずだ。 「インスタで1万人以上のフォロワーがいる女性は、同性の間では知られている感じがあるので、むしろそのフォロワーの中から金の卵を探しています。そうしたインフルエンサーをフォローしている子たちも、美意識が高くてオシャレに敏感な子が多いので。ただ、ステマアカウントもすごく多いので、気が滅入る作業ですが……」(スタイルブック編集者)  まかり間違って、ステマアカウントの運営者がスタイルブックを出してしまう日も来るのかもしれない。 (文/斎藤 岬)

【齢(よわい)67歳アイドルにハマる!】中高年をも虜にする清楚派グループ、それが乃木坂46だ

齢(よわい)67歳の週刊誌記者が突然アイドルにハマってしまった……余生を乃木坂46に捧げる!そんな覚悟で送る、オジサンのヲタ活ノススメ。
1707_nogirensai.jpg
『ぐるぐるカーテン』(通常盤)
 昨年の夏のある日私は神宮球場にいた。自分の娘ほどの年齢のアイドルのライブに67歳で初めて参加したのだ。  さて、そんな私がハマった乃木坂46だが、音楽番組にバラエティに、CM。テレビに出ない日がない。AKB48の公式ライバルとして登場したものの「二番煎じ」と見られたり、ぐんぐん前に出る強引さがないことから2012年2月のデビューシングルも一部のファンが応援するという状態だった。しかしテレビ東京の冠番組「乃木坂って、どこ?」が毎週放送されることでメンバーのキャラの魅力が発揮され、新曲が次々と発表されヒットするようになり、紅白にも出場しファンが大幅に増えたのだった。今では「いちばんチケットが取りにくいアイドル」といわれるくらい人気は過熱状態。「よくテレビ見るあの可愛い少女たちは何者」と思っている人も多いはず。  私は開演を前にときめきながら、彼女たちに導かれるようにここまで来た過程を思い返していた。少年時代にビートルズやストーンズの洗礼を受けてロック少年になった私。レッド・ツェッペリンやディープパープルにハマり来日公演には当たり前のように行き「やっぱ、ペイジのギター最高」なんて喜んでいた。しかし、その一方でテレビで見る南沙織や麻丘めぐみのような清楚で可愛いアイドルなら大好きだった。とはいえまさかこの歳になってアイドルのライブに行くなんてことは夢にも思わなかった。昔のロック好きの友達にライブ参加を話すと一瞬、小説『沈黙』に出てくる棄教したパードレを見るような目で私を見た。しかし乃木坂46は私が心が震えるような青春の日にタイムスリップできるパワーを持っていたのだ。彼女たちが歌って踊る姿を目の前で見たくてしかたなく万難を排してライブに参加することにしたのだった。そして在宅ファンから一歩踏み出した時世界が変ってしまった。 中高年に刺さるにはワケがある!キーワードはノスタルジア  人気の要素はメンバーが美形ぞろいであることやダンスがかっこいことや、楽曲がいいことなどいろいろある。また、従来のアイドルと異なり、白石麻衣、西野七瀬を筆頭にすでに10人近くが雑誌モデルとして活躍していることで、そうしたモデル活動が女性人気につながりライブ観客の2割以上が女性を占めるという、坂道グループの中でも独特な発展を遂げているのも特徴的だ。しかし、彼女たちに魅了されているのはなにも従来の坂道グループファンや、モデル活動によって引き寄せられた若い女性たちだけではない。実は私のような中高年のハートも掴んで離さないのだ。あえて言うが、乃木坂46は若い人だけでなく中高年こそその魅力にハマれる要素をもったアイドルグループであり、これからもそうした増えていくのではないかと予想する。 その理由はまず、メンバーが各々が美少女清楚な衣装と相まって青春時代に憧れた女子高の生徒を思わせるに十分な資質を持っていることがあげられる。しかも楽曲がも青春のときめきとかだけでなく、ほかのアイドルが歌わないようなシリアスなものもがけっこう多い。例えば8枚目シングル「君の名は希望」などは、孤独で影の薄い少年が自分の存在を認めてくれた少女のおかげで世界観が一気に変わってしまうという感動的なものだ。自転車全力で走らせて少女の乗ったバスを追いかけたり、図書館で女子たちのヒソヒソ話に聞き耳を立てたり、告白したくてもできない情けなさとか誰にでも心当たりがあるような内容が盛りだくさん。ライブ中メンバーが「これまでの集大成見せつけよう!」と叫ぶと、おじさんたちの心の中で凍冷保存していた「青春」は一気に解凍させられ若い日が蘇ってしまうのだ。おなじみの「あの人を思ってひとり涙の雪見酒」の演歌の世界もいいけどこういう世界もいいではないですか。 黒歴史を乗り越えて成長していく彼女たちに熱くなる  メンバーがかわいい、曲がいいだけではない、中高年がジーンとするのは、この何も屈託がないように思えるアイドルたちの中にひきこもり、いじめなどの「黒歴史」を抱えたメンバーがいるということだ。今年グループを卒業した大人気メンバーの橋本奈々未はアイドルになった動機を貧困脱出のためと告白し、親孝行をできる状態になったから卒業するとして世間を驚かせ感動させた。乃木坂46のメンバーの多くはオーディションを受けいろんな過去の自分を乗り越えて新しい自分を創造し、メンバー間の葛藤も乗り越えてついにはトップアイドルへ。これまで見たことのない景色を見ていることになる。かつて小柳ルミ子、キャンディーズ、小泉今日子、おニャン子くらぶそれぞれの世代でその時代にいろいろなアイドルに出会っていた中高年なら、そうした古き良きアイドルの姿を懐かしく呼び起こしてくれる乃木坂46の魅力にハマれそうではないか。昔なら「この記事を読んだらすぐレコード店に走れ」となるだろうけど、今はYouTubeであっという間に彼女たちの歌とパフォーマンスが楽しめる。かくいう筆者も「君の名は希望」を聴いて感動して何年か乃木坂46の在宅ファンとして出演番組を録画したりYouTubeなどを漁りながら「修業」を続けたがどうしてもライブに参加したくてしょうがなくなったのだ。  しかし中高年がアイドルのライブに参加して若者から嫌がられないだろうかという不安が頭をよぎったのだ。でもそんな思いは杞憂だった。SNSのコミュニティで自分がいかに乃木坂46が好きかを語り、ファンに問いかけたところ、「乃木坂46好きなら大歓迎です」と優しくしてもらったのだった。しかもトイレが近いシニアにトイレの行きかたまでアドバイスしてくれたのだ。若い人にそんな風に親切にしてもらい、素直に嬉しかった。ライターである私は感謝を込めてライブ参加までのみんなの協力ぶりや夢のようなライブの感想を週刊誌に寄稿した。それに対してもSNSのコミュニティの乃木坂46ファンの人たちは喜んでくれた。そしてその後もSNSを通じていろいろな人と出会い、ライブに一緒に行く歳下のLINE仲間ができて毎日いろいろなやり取りをし、おかげでチケット入手困難なライブにもほとんど参加でき楽しい日々を送っている。この7月も思い出の神宮ライブに参加した。今回は1人でなく5人の仲間と全員そろって!そしてメンバーの最終目標だった東京ドームでのライブの発表を聞いてみんな感動の嵐に巻き込まれてしまった。  今後はメンバーの魅力や乃木坂46のファン活動を通じて出会ったファンのことを紹介したい。中高年がアイドルにハマるのは全然OKで実際ライブには50代くらいから上の人がたくさん来ているのだから。46人のメンバー一人ひとりの名前と愛称と顔を覚えて、歌っている映像を見ながら心の中で名前を呼べばそれだけでボケ防止になる。乃木坂46のレパートリーに「心の薬」という曲があるが、中高年の胸をときめかしてくれる乃木坂46こそ「心のアンチエイジング薬」なのだ。とにかく一人でも清楚な美少女はインパクトあるのに団体でかかってこられたらもう降参。少しでも乃木坂46が気になっている人は思い切って新しい世界に入ってみましょう。待ってます。 土肥 真也 1948年生まれ。長年週刊誌記者として実用やエンタメなどの記事を取材・執筆。今も現役でウェブニュースなどの仕事をしている。ハードロック好きでツェッペリンやディープパープルの初来日ライブに行ったことが記憶の中の宝物。しかし、たまたま聴いた1曲で乃木坂46が降臨してしまう。以来座学で数年間乃木坂46を学ぶも、我慢できなくなり昨年初めてライブに参加して初めてサイリウムを振りまくった。その感動を週刊誌に寄稿、以来年下のファン仲間ができて楽しく一緒にライブに通っている。夢は家族席、女性席に次ぐシルバー席を用意してもらい死ぬまで乃木坂46のライブに通い続けること。

息子の話をする時に見せた笑顔は父親のそれだった――週刊誌とも格闘した伝説の漫才師・横山やすし

1707_yokoyasus.jpg
『昭和の名コンビ傑作選 1 横山やすし・西川きよし: DVD付マガジン よしもと栄光の80年代漫才』(小学館SJ・MOOK)
 最近の芸人は、マンションを買うなど財テクに走る傾向にある。芸人の大先輩の横山やすし(1996年没・享年51歳)は財テクなどまるで無関心だった。むしろ借金が大物芸人の証とも言われていたほどだ。やすしの住んでいた家は庶民的な二階建ての一軒家だった。大阪市内から車で30分以上もかかる下町の住宅街。「すぐ裏に川が流れておるやろ。ここに俺のボート(趣味の競艇用)を停泊してあるんや。いつでも乗れるからな」というのが理由だった。  やすしは趣味の競艇と酒には惜しみなく金を使ったが、他のことには無頓着な人だった。  この家を初めて訪れたのは、1998年に長男・木村一八(現在47歳)が六本木の路上でタクシー運転手に暴行し、傷害で逮捕されたときだった。当時、19歳だった一八は少年院に収監。1年後ぐらいだったと思うが、間もなく出所という情報を得て、保護責任者である父親のやすしに確かめる目的だった。  事前にアポを取ると、「俺は謹慎中やし、酒も止められている。朝からでもいいで」と言われ、朝9時過ぎに家を訪ねた。  奥さんと2人の謹慎生活。あまり来訪者もないのか、ご機嫌で迎え入れてくれたのだが、「家じゃあ、話しにくいこともある。喫茶店に行こう」と少し歩いたところにある地元の喫茶店に入った。やすしがコーヒーを飲んだところを見たことはなかった。むしろ、「あんな進駐軍が飲むようなものを飲めるかー」と毛嫌いしていた。席に着くなり「ビールくれや」。他の客はコーヒーとモーニングのトーストを食べている横で堂々と朝ビール。当然のように「コーヒーなんか飲むな」、でビールを付き合わされた。まずは相方だったキー坊(西川きよし)との確執話だった。私のなかでは後はいかに一八の話を切り出すかだけだったが、お酒が入ると止まらない人だった。禁酒どころか喫茶店を出て、次に向かったのは市内の居酒屋。そこには競艇仲間が集まってきた。他の客がランチをたべている横で、こちらはすでに宴会状態。取材どころではなく、競艇話を聞くだけだった。夕方近く解散。ようやく2人になった。「少し話をしましょう」と持ちかけると、やすし馴染みの法善寺横丁の寿司屋に移動。今度は日本酒を飲みながら少しずつこちらの質問に耳を傾けだした。本当に聞きたいのは、一八のいる少年院と出所日だけ。少年院までは聞いたが、出所日になると「そんなことを聞きたくて来たのか」と一喝する。やすしの対応には慣れているとはいえ、始末が悪い。ただ、話した感触から出所日が近いことは掴めた。その日は、最終の飛行機を予約していた。とりあえず帰ることを告げると、夫人を呼び出し、「車で送らせる」と言い出した。やすしは自分の行為をムゲにされることを凄く嫌う。車で寿司屋に迎えに来た奥さんの運転する車で伊丹空港に向かった。車の中は相変わらずうるさい。隣の車に向かって「ボケ!」と怒鳴るやすし節は全開。  空港に到着。これで無事に帰れると思っていると、「まだ乗るのは早いだろう」と、空港内にある行きつけの寿司屋に拉致された。奥さんも「もうよしなさい」とお酒を止めても、もう誰も止められない。  また飲みだす。寿司屋のハシゴである。  搭乗時間が迫る。「大丈夫や。俺はいつも飛行機を待たせる」と言い出す始末。結局、飛行機に乗り遅れ、新幹線もなくなり、カプセルホテルに泊まった。一八が出所したのはその3日後だった。思い起こせば、一八の話をするときに時折見せた笑顔は帰ってくる息子を待つ父親の顔だった。一八は出所後、しばらくやすしと自宅で謹慎生活を送っていた。父と息子の関係が一番、充実していた日々だったのかもしれない。 (敬称略) 二田一比古 1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。