角川慶子×信長「保育園もホストクラブも、経営者的にはヤンキーの方が扱いやすいので大歓迎!」

 愛娘のため、2011年9月に認可外保育園「駒沢の森こども園」(東京・目黒区)をつくった角川慶子さん。16年4月には派遣ベビーシッター事業「森のナーサリー」、17年4月には認可外保育園「衾の森こども園」がオープン。その経緯や現代の子育て事情をつづった本コラムのタイトルは「シロウトで保育園作りました」ですが、連載150回を迎え、もはや「シロウト」どころか保育事業経営の成功者として大活躍しています。

 そんな角川さんが、150回記念の対談相手として希望したのが、新宿・歌舞伎町のホストクラブ「Club Romance」のトップホストにして代表取締役、早稲田大学教育学部卒業のインテリで、14年に『シャンパンタワー交渉術』(講談社)を出版し、以降、ビジネス書作家としても大活躍している、信長さん。角川さんは彼の著作に大きな影響を受けたといいます。元アイドルの保育園経営者、大卒のホストでビジネス書作家。それぞれ異色すぎるルートを辿る2人はなぜ成功できたのか? 経営者として、また男と女として語っていただきました。

■経営者は、批判にいちいち反応しないこと!

――角川さんは、もともと信長さんの著書の大ファンなんですよね。どういった点を参考にしているんでしょうか?

角川慶子さん(以下、角川) 信長さんの本を読んで共感するところがたくさんあってお会いしたかったんです。『成功は「気にしない人」だけが手に入れる』(秀和システム)や、最新刊『強運は「行動する人」だけが手に入れる』(学研)でも、「人の意見に振り回されないことの大切さ」が書かれていて影響を受けました。Twitterをしていると、心折れそうなコメントが来るんですよ。だけど信長さんの文章を読んで、そんなことは気にしないで自分のやりたいことを続けようと思ったんです。

信長さん(以下、信長) Twitterは特に嫌なコメントが来ますよね。

角川 エゴサーチはしないし、Twitterもブログ更新や記事掲載のお知らせなどがほとんどなんですが、テレビに出演すると否定的なコメントが来て、いつも辞めたくなっていました。信長さんの本を読むまでは、時が過ぎるのを待ったり一人旅をして気分転換をしたりして気を紛らわせるしかなかったですね。

信長 僕は小さな頃から周りの目を気にする方でした。それがホストの仕事にはよかった。接客においては空気を読むことは大事。だけど、自分の生き方は空気を読んでいたら損をすると思ったんです。批判にいちいち反応していたら結局なにも行動を起こせない。芸能人も、好きなタレント上位の人は嫌いなタレント上位にも入っている。批判はセットなんです。こうして本を出版していろいろな人とお話すると、周りを気にしている人は多いですね。最近はそういうことをテーマに本を書いています。

角川 私もわざと鈍感になって傷つかないようにしています。自分で心折れそうになることがわかっているので、ヤバそうな人、意見には接しない。いちいち傷ついて悩むのは無駄な時間だし、無駄な労力。

信長 批判する方は、何も考えてませんからね。本を読んで批判する人は、ある程度根拠はあるけれど、テレビはひどい。先日、『ABChanZoo』(テレビ東京系)に出演したときも「調子乗んな」と言われました。まったく根拠がない、ただ気に入らないというだけ。いい人はそんな人に振り回されないように気をつけた方がいいですね。

角川 私も、「経営する保育園は小学校受験に対応しているので勉強も見るし、オプションでお風呂にも入れる、親が楽できる保育園で利用者に芸能人も多いんですよ」とある番組でお話したら、「こういう保育園が人間をダメにする」と私のFacebookに直接書かれました。

信長 SNSは簡単にブロックできるので、ばんばんブロックしてますよ。

角川 私、ブロックしてない!

――心の持ちようで批判を気にするんじゃなくて、ブロック機能を使うんですか?

信長 した方が楽ですよ! 6月に斎藤一人さんとの対談本(『斎藤一人 人間力 一人さんと二人で語った480分』サンクチュアリ出版)を出したときは、「なぜ斎藤さんがあなたみたいな人と!?」と来たので、3秒でブロック(笑)。便利な時代です。

角川 Facebookは、友達以外の人はコメントを書き込めないように設定しました。あと2ちゃんねるはまったく見ていません。信長さんは、「ホスラブ(=ホストやキャバクラ情報専用掲示板「ホストラブ」)」は見ていますか?

信長 今は見ていませんが、ホストになりたての頃は見ていました。8割はデタラメ! 「ラブホ行った」「付き合ってる」くらいはまだいい方。“信長の家に行ったら、入り口に絵が飾ってあった。何があった……”と、実際は社員寮なのでまったく違うのに、具体的に書いてあるからほとんどの人は信じてしまうんですよ。最初は「なんでこんなこと言われなきゃいけないんだ」と思ったけど、だんだん慣れました。そもそも全員に好かれようとすること自体が無理。大前提として相手は変えられない。わかり合えない人とは永久にわかり合えない。そう思うと気が楽。従業員であれば、間違ったところがあれば一生懸命指導して変えてあげたいと思うことはありますが……。

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信長 保育園は、何人くらい先生が働いているんですか?

角川 7年間経営していて、今は2つの保育園合わせて15~16人ほど雇っています。そのほかにベビーシッター会社も経営していますが、シッターに登録している人は何十人もいます。

信長 人間関係の悩みはありませんか?

角川 ありますよ! 悪い念がモヤモヤしているなということ、あります。信長さんが言うように、自分を変えることは一瞬でできるんですけど、相手は変えられない。園児の保護者であれば、こっちが変わらなければ、向こうが辞めるでしょうけど、スタッフは1回社員にしてしまうとすぐにはクビにできないので難しいですよね。3カ月間の試用期間に見極めないと。

信長 へんな形で辞めさせたら、恨まれそうですよね。

――従業員に煮え湯を飲まされたような経験はあるんですか?

角川 辞めた後にロッカーの鍵を返さない、制服を返さない、保育園の鍵を持って行っちゃったということもありました。LINEや電話じゃ一切無視。最終的にはなんとか返させましたが。どこの業界でも同じだと思うんですが、新人ほどすぐ辞めますね。2カ月間に11日当日欠席した子もいました。電話で「具合が悪い」と言うので、ウソっぽいなとは思ったんですが信じてあげたんですね。そしたら、インスタグラムとTwitterに「ディズニーランドに来ています」って。それはクビですよね! 私がフォローしていること知っているはずなのに、なぜ投稿するのか……。

信長 それは、頭があんまりよくないというか……。

角川 従業員に対して注意して直させますか?

信長 ある程度はやります。言って変わる人も10人中1人くらい、今までにいたから。ちゃんと指導してくれる人に会ってなかっただけという若者もいるし、僕自身もホストになってなかったら、ふてくされてた可能性もあるし。最近の子は、1対1で話すときに共感を交えながら、女の子と話すような感じで諭さないと難しい。強制的にああしろ、こうしろと言っても聞かない。むしろ、ヤンキーの子の方が簡単!

――ヤンキーだと、真っ向から反抗してきそうですが?

角川 いや、経営者としてはヤンキーの方が使いやすいですよ。一本筋が通ってるし、はっきり言ってくれる。元ヤン大好き! ギャルも黒ギャルの方がしっかりしている。そういう子を変える方がラク。

信長 やりやすいですよね。昔は、ホストといえばヤンキーかヤクザ予備軍しかいなかったから、ラクだったと思う(笑)。今は残念ながらそういう人は少ない。

角川 今は、草食系のホストが多いですよね。「お酒飲めません」とか。

信長 多いです、四大卒が半分くらい。僕の本を読んで入ってくる人も多い。そういう子には諭すように、納得できるように話さないと。一般企業も同じだと思いますけど。

角川 信長さんは早稲田大学の教育学部卒で、もともと先生になろうとしていた方だから、今時の男の子を変えられそう。

信長 なかなか、難しいものですよ(笑)。角川さんは怒ることはあるんですか?

角川 怒ったらそのときは終わりのとき。基本は怒らずに指導しています。

信長 僕も、ここ10年くらいは怒ってない。すごく酔っ払ったときに暴れるくらいですね(笑)。

 

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――お二人とも個性的で、ある意味“ほかから浮いている”という共通点があります。それが気になることはないですか?

信長 僕は“浮こう”と思って浮いているんです。あえて、他人とは離れた立ち位置に行こうと常に思ってる。同じことをやり続けるのは飽きちゃうんです。ホストも、ずっと続けていると稼げるし成績を残せるから、別のことをやりたくなっちゃう。だから本を出してみようかな、と。今は出版にも慣れてきたので、全国を講演で回っています。

角川 信長さんがホストになった10年前は、大卒ホストもいないでしょうし、「なぜ就職しないの?」という風当たりも強かったと思うんですよね。ホストの新しい風だった。それが今や信長さんの影響で、ホスト業界が変わった。

信長 どうなんですかね(笑)。

角川 私は親目線で「こんな保育園があればいいな」というところから始まって、異業種から会社を立ち上げたので、最初はアンチが多かったですね。そこから徐々に、もう1つ保育園、ベビーシッター事業と大きくしていったんです。

信長 何かモデルになるものはあったんですか?

角川 全然ないです!

信長 すごい!

角川 “認可”“認可外”とかわからないところから勉強しながら始めたんです。実は、かなり昔に光通信株で大当たりしたんですよ(笑)。それを資金にしたんですね。成功のポイントは、信長さんが書かれている通り、「いい言葉」を持つ言霊や「笑顔」だと思う。

信長 結果を出されている人にわかってもらえるのはうれしい。言葉は幸運を呼んでくれます。言霊に気をつけていると、いい人が寄ってきやすいんですよね。

――お二人のおっしゃる“言霊”というのが実感としてわからない人も少なくないと思うのですが、具体的にはどういったものでしょう?

角川 ポジティブな言葉を発してる人の方が心地いい。「疲れた」「死にたい」と言っている人は話したくないし、見るだけでも落ち込む。いいことはどんどん連鎖していく。幸せな人に幸せが集まる。そういうことを小さいときから体感していたんです。子どもたちを見ていると、みんなオーラがきれいなんですよ。エネルギー強いし。ちなみに信長さんのオーラは濃い青。冷静で落ち着いています。いいオーラです。でも親は……そうでない人も少なくない。言葉遣いが悪い、暗い。そういう人は、入園を希望しても断ります! 空きがあっても「今、定員いっぱいです」と。ベビーシッターでも、電話で「何分で来れんの~?」とか言ってくる、問題がありそうな人は断ることもありますよ。

信長 そういう人は言葉遣いで運を逃してますね。でも、そんなこと書いちゃって大丈夫ですか。「私のことかしら?」とクレームが来るのでは?

角川 いつも書いてるので大丈夫(笑)。私の連載を読んで、私の教育方針に共感してくれる人が来てくれるので、入園が決まると保護者の方は「選んでくれてありがとうございました」って言うんです。

信長 逆にファンができるんですね。

■目先の30万円より1年後のことを考える

角川 信長さんは「この手の人はヤバい」と感じることはありますか?

信長 僕は、オーラは見えないけど、やはり第六感で感じることはありますね。そういう人はメールが来ても返さない、「お店に来たい」と言っても来させない。文字にすると冷たく聞こえるかもしれないけど、僕がそういう人たちを相手にしてると、感情的にもひっぱられて、元気になりたいお客様にも影響しちゃうんですよね。

角川 負の連鎖ですね。

信長 そう、まさに負の連鎖が始まる。だから、そういう人から「今日、30万円使っていくね」と言われても断ります。

――ホストという仕事は、今この瞬間にどれだけ稼げるかに命を削るものだと思っていました!

角川 目の前の30万円ではなく、1年後を見ているんですね。それはこれだけ売れているからできることでもある。その日の30万円が喉から手が出るほどほしい人もいるでしょう。

信長 最初の頃はみんな相手にしていましたけど、精神的に疲れました(笑)。そこで、同時に相手にできる人数には限界があると知りましたね。

(後編につづく)

知らない女から突然の連絡、ネットに個人情報公開……体験者が語る“同性ストーカー”の恐怖!

 「ストーカー」といえば男から女、女から男のように、男女間で起きることがほとんどだが、実は彼氏の元カノに付きまとわれるなど、女が女をストーキングするケースも多いという。今年9月には、62歳の女性にストーカー行為をしたとして、46歳の女性が逮捕されるという事件もあった。相手に何かしたという覚えがなくとも、粘着質な女に睨まれたが最後。日常生活に支障が出るほどの嫌がらせが始まる……。IT企業に務める石井アキコさん(仮名・35歳)も、ある日突然、そんな粘着女に目をつけられた。恐怖の実体験を語ってもらった。

■恋人の元カノから突然のメッセージ

「1年くらい前のことです。私は街コンで出会ったKという男性と付き合い始めました。1カ月くらいは何事もなく過ごしていたのですが、ある日突然、Facebookを通じて“Kの元彼女”と名乗る人からメッセージが届いたんです。内容を確認して愕然としました」

 実際に送られてきたメッセージをアキコさんは見せてくれた。

「『こんにちは。Kの元彼女のE子と申します。突然ですがお願いです。Kと別れていただけないでしょうか? 誠意ある回答お待ちしています!』。……意味がわからないですよね(笑)。でも、めちゃくちゃ怖かったので、とりあえずKに相談しました」

 メッセージを読んだKは、青ざめた顔で「E子だ……」とつぶやいた。数年前に交際していたことは事実だったが、E子の激しい束縛に嫌気がさし、Kから別れを告げたのだという。しかし、別れ話をするとE子は激高。Kのスマホを叩き割ったあと、家具を破壊しながら、家の中を狂ったように走り回った。

「幸いKがケガをすることはなかったのですが、E子は泣いて暴れて大変だったそうです。無理やり別れたので、もう関わることはないと思ってたみたいですが、SNSでずっと監視されてたようですね。恐らくKの友達のアカウントを片っ端から調べて、私にたどり着いたんだと思います」

 SNSの写真で見る限り、E子は活発そうな、どこにでもいる普通の女性だった。とても執念深いようには見えず、アキコさんは「一時的に魔が差したのだろう」と解釈し、メッセージは無視することに決めた。しかし、予想に反してメッセージは毎日送られてくるようになった。

「内容は、自分がどれだけKを好きか訴えるものもあれば、Kをひたすら罵倒するものもありました。2人しか知らない夜の事情なども盛り込まれていて、気持ち悪かったです。でも私はKと別れる気はなかったし、無視していれば、そのうち飽きるだろうと、いつもやり過ごしていました」

 しかし、その行動がE子の暴走を加速させた。

 ある朝起きると、アキコさんの携帯に、いくつもの知らない番号からおびただしい数の着信が入っていた。

「すぐにピンと来て自分の名前をエゴサーチしたら、とある掲示板サイトに、私の本名と住所、電話番号が晒されていて、コメントには『I'll kill you.(殺してやる)』という言葉がびっしり書かれていました。そんなことをするのは、E子以外心当たりはいません」

 ネット上に住所を晒されたアキコさんは、やむを得ず引っ越すことに。1人暮らしをさせるのは危険というKの提案で、2人は同棲することになった。しかし、恐怖は終わらなかった。

「夜逃げみたいに引っ越したので、E子に住所がバレるはずはありませんでした。SNSにはカギをかけて、着信もメールもブロックし、完全にE子から連絡が取れないようにしました。そうしたら今度どこから入手したのか、パソコンのアドレス宛てにE子からメールが送られてきたんです。そこには、引っ越したばかりの私のアパートの画像が貼られていました」

 E子にはすべてお見通しだった。この日を境に、アキコさんは防犯ブザーを肌身離さず持つようになった。それだけでは不安が収まらず、護身用の小さいカッターを常にポケットに入れるまでになった。いつまたネット上に個人情報を晒されるかわからない。面白半分で家まで来る者もいるかもと思うと、眠るときも明かりを消せなくなった。何より、E子本人がすぐ近くにいるのでは、と気が気ではなかった。

「できるだけ1人で行動しないように気をつけていました。なので電車に乗るときは安心していたんです。周りに誰かしらいますから。だから油断してたんですよね。気づいたときは、私の真横にぴったりE子が立っていました」

 つり革につかまっていたアキコさんがふと横を見ると、無表情に前を見つめるE子がいた。アキコさんは叫びだしそうになるのを必死でこらえた。

「E子を刺激しないよう、ゆっくり隣の車両に移動しました。気づいているはずなのに、何をするでもなく、じっとしているのが余計怖かったです。私は適当な停車駅で降りて、その日は友達に迎えに来てもらい、そのまま泊めてもらいました」

 この出来事は、“言うことを聞かないと、次は何をするかわからないぞ”という、E子の警告のように思えた。「これ以上は、いよいよ危ない」そう思ったアキコさんは、事情をすべて伝え、Kと別れることを決意。

「Kと付き合い続ける限り、E子の粘着は終わらないと感じたんです。別れてから、E子からのつきまといもピタッと止まり、その後連絡も来なくなりました。Kが今どうしているかはわかりません。でも、一番かわいそうなのは、E子から逃れられないKかもしれないですね」

 追いかけっこは、追われる方が圧倒的に不利。アキコさんは、いまだにE子の無表情な横顔が忘れられないという。今回は、身体が傷つけられるような被害は受けなかったが、電車で遭遇したケースは、ストーカー規制法の規制対象である「つきまとい行為」に該当すると考えられる。取り返しのつかないことが起こる前に、早めに警察などに相談したほうがよさそうだ。
(木綿わかめ/清談社)

ファン歴16年「ジャニオタの会話に疲れた。復讐なんて虚しすぎる」【SMAPロス取材】

 「Abema TV」で『稲垣・草なぎ・香取3人でインターネットはじめます「72時間ホンネテレビ」』(11月2~5日)が放送されるなど、香取慎吾、草彅剛、稲垣吾郎の3人による「新しい地図」の活動に沸くSMAPファンは多い。

 しかし、その一方で「楽観視できない」「純粋には楽しめない」と、SMAPロスを嘆くSMAPファン、ジャニーズファンも少なくない。今回登場してくれたのは、現在36歳、ジャニオタ歴16年のB子さん。

 ちなみに、前回登場してくれたA子さんのSMAPロスの癒やしは「カワウソのちいたん」だったが、B子さんの場合も「動物」だという。ロス状態の人たちが、いったいなぜ動物にたどり着くのか。不思議な偶然も含めて、B子さんのジャニオタ歴から伺った。

――これまでのジャニオタ歴を教えてください。

B子 小学生の頃はSMAP、中でも特にキムタク(木村拓哉)が好きで、大学生くらいから20代までは嵐ファン、30代に入ってからはSexy ZoneやHey!Say!JUMP、ジャニーズJr.を中心に「事務所ファン」になりました。

――SMAP解散をどのように受け止めましたか。

B子 SMAPが解散することを昨年8月にスポーツ紙が報じたときには、まだ半信半疑の状態でした。でも、その後、ショックがWパンチになったのは、昨年12月に週刊誌で松潤(松本潤)のAV女優との二股スキャンダルが報じられたこと。これまでは、ジャニーズ事務所のダークな話は表に出づらかったですよね。実際には、いろいろあるとしても表面化しなかったのに、SMAP騒動以降、嵐だけでも松潤、ニノ(二宮和也)、櫻井翔と、スキャンダルが次々に出てきて、夢が壊されるような、幻滅した気持ちになったんです。

――SMAP解散後に、ジャニオタ活動はどのように変化しましたか。

B子 気持ちが落ちてしまって、ジャニーズ関連のことにあまり盛り上がれなくなりました。Sexy Zoneは佐藤勝利くんがすっかり大人になってしまったこと、格差売りがなくなり5人に戻ったことで、物語が終わったというか、クライマックスを越えた感があるんですよね。5人の姿を見たりトークを聞くと楽しいですが、冠番組もないですし。JUMPはグループとして成長して、みんな「アイドル」してるので、気持ちはあまり変わらないですが……。

 いま、一番安心して見ていられるのはV6。ジュリー派とかジャニー派、飯島派など特定の派閥の色がないですし、トークも面白いので、心が乱されることなく楽しめるんだと思います。

――ジャニーズJr.界隈はどうですか。

B子 Jr.では、とにかく岩橋玄樹くん(Prince)が可哀想すぎて。「Myojo」(集英社)の「恋人にしたいJr.ランキング」で4年連続1位を獲得しているのに、デビューできないんですから、もう永遠にデビューできないんじゃないかと思ってしまいます。せめてPrinceをMr.KINGの下に置かないでほしいです。

――これまでのジャニオタ活動は具体的にはどんなものでしたか。

B子 プライベートの時間やお金は、ほとんどオタ活動に使っていました。嵐、V6、関ジャニ∞、JUMP、セクゾ、Jr.などの現場を中心に、月1回から多いときは月3回くらい参戦してたような。365日、いつでも参戦できるよう融通の利く仕事を選びましたし。テレビ・雑誌・ラジオなども熱心にチェックしていました。

――SMAP解散後、ジャニオタ活動はどのように変化しましたか。

B子 昨年の12月頃からはアイドル雑誌を買わなくなりました。テレビ番組も、それまで見ていた『ザ少年倶楽部』(BSプレミアム)や『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)のほか、音楽特番やドラマもチェックしなくなり、見逃してもなんとも思わなくなりましたね。現場にも、あまり行かなくなりました。Jr.は現場が多すぎて、申し込み忘れても「まあいいか」という感じです。SMAPがなくなっても、これまでと変わらずにジャニーズごとを楽しめる人は、「のんきで良いなあ」という思いもありますし、そうしたジャニオタさんとの会話に「疲れるなあ」と感じたり、冷静に距離を置いて「ジャニオタって、こういうふうに見えるのか」と感じる部分もあります。

――ジャニーズの代わりに、現在、ハマっているものは動物ということですが。

B子 昨年末頃から、動物に萌えるようになったんですよ。きっかけは、ジャニオタさんたちのTwitterチェックからですが、タイムラインで流れてきた動物動画がすごく可愛くて、癒やされて。ジャニーズがキャッキャしてるのを見る感覚と同じで、心が温まるんです。しかも、動物の場合、入場料を払えば実際に会えるし、触れたりするんですよ。YouTubeやSNSでお気に入りの動物や動物園を見つけて、ジャニオタの“遠征”感覚で動物園に行くようになって。よこはま動物園ズーラシアは年間パスポートを作ろうかなと思ってます。ただ、ゴールデンウィークに会いに行った、お気に入りのツメナシカワウソのブブゼラくんが、9月に急逝してしまったんですよ。これまで経験がないことなのですごいショックで。

――ジャニーズにハマれない今、動物が「担当」になっているんですね。

B子 とはいえ、動物にハマっているのは、一時の気の迷いであってほしいと思っているんです。本当はジャニーズに戻りたい、もっとジャニーズを楽しみたい。できれば、派閥騒動を取り上げた「週刊文春」(文藝春秋)のメリーさんインタビュー前まで、時を戻してほしいです。当時、実際に派閥でバチバチしている部分はあっても、今思えば、ちゃんと棲み分けができていたと思うんです。

――ジャニーさん、あるいは事務所に伝えたいことはどんなことですか。

B子 「今までありがとうござました」という言葉ですかね……。ジュリーさんは嵐を育てた方として感謝しているし、有能な方だとは思います。でも、やはりSMAPがあっての嵐であり、ジャニーズ事務所だったのだと、いちジャニオタとして思います。

――B子さんにとって、「SMAP」とは、どんな存在でしたか。

B子 自分にとっても、後輩グループ、後輩グループオタにとっても「あこがれ」であり、「かなわない存在」です。超えたいけど、超えたくない存在。「Joy!!」 のような、働く大人たちを支えて明るく寄り添うような歌を歌える国民的存在は、もうジャニーズから生まれない気がします。

 ただ、カレンの3人の活動が、飯島さんの企み、ジャニーズへの「復讐」だとか言われてますが、本当に復讐だとしたら虚しすぎる。復讐のために活動する、「恨」が根源にあるアイドルなんて見たくないです。夢とか愛とか希望とか、むしろ許すことを示していく存在であってほしいと思います。
(田幸和歌子)

「だんなデスノート」に書き込む妻の共通点は? サイト管理人が明かす意外な“正体”

 「朝起きたら冷たくなって死んでますように」「死体で帰ってこい! 赤飯炊いてやるから」「旦那の歯ブラシで毎日トイレ掃除をしています」……。妻たちが夫の死を願う本音サイト「だんなデスノート」に投稿される衝撃的な内容の数々が、多くのメディアで取り上げられ、話題となった。それらの投稿をまとめた書籍『だんなデス・ノート 〜夫の「死」を願う妻たちの叫び〜』(宝島社)は、発売直後にAmazonの「家庭生活」カテゴリーで売上ランキング1位を記録するヒットとなり、賛否両論を巻き起こしている。まさに炎上中といえる「だんなデスノート」について、同サイトの管理人である牧田幸一朗氏に聞いた。

■男性の否定的な意見をシャットアウト

──まず初めに、牧田さんがサイトを開設しようと思った理由を教えてください。

牧田幸一朗氏(以下、牧田) 僕は幼少期のころ、両親が喧嘩ばかりしていたため、あまりいい思い出がありません。その経験が大人になった今でもトラウマになっているので、同じツラさを今の子どもたちに感じてほしくないというのがひとつ。それと、僕は歌舞伎町でホストをやっていた経験があり、お客さんとして来る既婚女性たちが、ただ悩みを聞いてほしいだけということをわかっていた。そんな彼女たちのために、ネット上で愚痴を吐き出す場を提供してあげたかったんです。あと、ゼロから新しいコンテンツを生み出すことに挑戦したかったというのも、理由のひとつです。

──既婚女性が集まる巨大匿名提示版などでも、夫の悪口を投稿する人はいました。この提示版との違いは、どこでしょうか?

牧田 まず、書き込むことで「旦那が死ぬ」というデスノート的な想いが込められるという点。もうひとつが、男性の否定的な意見をシャットアウトしたことです。匿名提示版では誰でもコメントできるので、旦那の悪口を投稿すると「離婚すればいいじゃん」とか「お前が死ね」などと、すぐ批判のコメントが投稿されるんですよ。正論かもしれませんが、否定的なコメントを返されると、すでに不平不満がたまっている状態の女性は、さらにストレスがたまりますよね。そういうことがないように、男性側の書き込みは、こちら側でなるべく排除しました。

──愚痴があるなら、身近にいるママ友などに聞いてもらえば事足りるような気がします。彼女たちがネットで不平不満を吐き出すのは、なぜでしょう?

牧田 友達だからといって、必ずしも共感してくれるわけではありません。円満夫婦のママ友に相談すると、余計なアドバイスをもらって傷つくことすらあります。彼女たちにとって重要なのは、共感してもらうこと。過去に「だんなデスノート」のオフ会を3回開催していますが、共通の悩みを持っている者同士なので、初対面で意気投合して、すぐ友達になるんですよ。

──彼女たちにとって、同じ悩みを共有することがストレス発散になるんですね。そのオフ会に参加された女性に、牧田さんから見て共通する特徴はありましたか?

牧田 年代は20代前半から50代まで幅広いですが、ほとんどが専業主婦。なおかつ“上品”“キレイ”“カワイイ”この3つのいずれかに、必ず該当します。オンナとしての魅力があり、さらに旦那の稼ぎが多い、裕福な女性が多かったですね。

──上流階級の既婚女性が「時間をかけて苦しんで死ね」などと書き込んでいるのは、意外ですね。彼女たちが旦那の死を願う原因としては、何が多いのでしょうか?

牧田 多いのは、モラハラやDVなどの暴力ですね。DV加害者は、医師、弁護士、大学教授などのエリートが多いので、(そうした男性を夫に持つと考えられる)裕福な家庭の専業主婦たちが旦那の死を願うのも当然なのかもしれません。また、妻を専業主婦にする男性は「女性は旦那を支えるべき」という昔ながらの男尊女卑思想から抜けきれず、まだまだ女性を見下しているというのも理由のひとつとしてありそうです。

──「そこまで嫌だったら離婚すればいい」という意見もありますが、彼女たちが離婚をしないのはなぜでしょう?

牧田 ほぼお金です。自分だけならまだしも、子どももいますから。シングルマザーになれば経済的に苦労しますし、そうやすやすと離婚はできません。旦那が死ねば保険金が手に入るというのも大きいでしょう。もうひとつは、見栄ですね。離婚をするのは世間体もよくないと考えがちですし、彼女たちのプライドも傷つくようです。だけど旦那が嫌いで一緒に生活するのは苦痛。この問題をすべて満たせる解決策が、離婚ではなく、「旦那の死」なのでしょう。

──未亡人となれば、世間体も悪くはないですし、保険金まで手に入る。まさに理想の展開ということなのですね。とはいえ、本書では「ゴキブリやネズミ以下のダンナ」「存在自体が悪」など、妻たちが旦那を人間扱いしていない内容が多く、Amazonの書評欄などでは彼女たちの投稿に対して「男性差別だ!」といった批判的な意見が多いです。

牧田 そういう意見はほとんどが男性だと思いますが、彼らに彼女たちの気持ちを理解するのは難しいとは思います。そういう男性たちに言いたいのは、「職場の嫌いな上司」に置き換えてみてください、ということ。最初は仲が良かったかもしれないけど、だんだん嫌なところが目についてきたりとかするわけじゃないですか。「そんなに上司が嫌なら、仕事を辞めればいい」って簡単に言うこともできますけど、そんな単純なものではないですよね? 家族を養わないといけないし、年齢的に転職は難しく、その職場にしがみつくしかなかったりするのが現実だと思います。少なくとも、当事者にしかわからないことがあるということだけは、男性にもわかってほしいですね。

──職場のことであれば、家族や同僚と飲みながら愚痴を吐き出したりもできますが、家庭内のことは、味方であるはずの家族が敵になっているし、友達にも相談できない。だから「だんなデスノート」でストレス発散するしかないんですね。

牧田 その通りです。ただ、悪口を書いて一時的なストレスを発散するだけの場になっているのは、問題でもあります。なので今後は、彼女たちが次の段階にステップアップするための支援をしていきたいと思っています。

──それは、つまり、離婚の後押しをするということですか?

牧田 いや、離婚して幸せになる人もいれば、関係を再構築して幸せになる人もいます。それはどちらでも構いませんし、僕から離婚を後押しするようなことはしません。サイトに書き込んでいる専業主婦は、小さい子どもがいる方が多いので、そう簡単に仕事は見つからず、社会との接点がなくなって悩みを抱え込んでしまうことが多い。なので、僕はその両方を補える場所を提供したいと考えています。具体的にはオフ会活動を大きくしていって、人がたくさん集まるイベントを開催したい。そうするとスタッフが必要になるので、専業主婦の方を雇うこともできますし、同じ悩みを共有できる友達を見つけることもできます。

──「だんなデスノート」というサイトは、今度どうしていきたいと考えていますか?

牧田 サイト自体を特に大きく変えるつもりはなく、ほぼそのままにしていきます。理想としては、投稿数が少なくなること。金もうけが目的ではないので、悩める女性が減ることを切実に願うばかりです。
(ほこのき雄哉/清談社)

『M-1』翌日──“よしもと推されコンビ”ニューヨークの本音に迫る!

 今年も漫才の日本一を決める『M-1グランプリ2017』(ABC・テレビ朝日系列)が無事終了した。あまたの芸人が挑み、負けていく――この数年、「偏見」ネタで人気を博している若手・ニューヨークもその内の1組だ。

 東京国際フォーラムという破格の規模で開催される単独を控えた彼らへのインタビュー日は、なんと『M-1』の翌日。どうしても『M-1』の話をせざるを得ない。「俺たちみたいなタイプは、視聴者投票には向かない」と語る2人の大反省から始めよう。

――今日は単独ライブを控えてのインタビューなんですが、何しろ『M-1』が昨日でしたので(取材日は12月4日)、まずはその話から聞かせてください。ニューヨークは2年続けて準決勝敗退、敗者復活戦での順位が去年は12位(準決勝10位)、今年は8位(準決勝12位)でした。

屋敷 今年は去年よりは気負わずにやれたと思ったんですけど、やっぱり敗者復活から決勝上がるのはムズいっすね。ストレートに上がるより、もしかしたらムズいんじゃないかと。もう出たくないっす。しんどすぎる。

嶋佐 僕らみたいなタイプは、視聴者投票は難しいですね。

――ニューヨークは、コント「自衛隊なのにめっちゃ服好きな人」とか「売れてるバンドで作詞も作曲もしてないベーシストはただラッキーなだけ」とか、「偏見がスゴい」「悪意が強い」と言われるネタが特徴ですよね。やっぱりそれだと、お茶の間でウケるのは難しい、と?

屋敷 俺たちの中では、まだお茶の間でウケるほうのネタやったつもりやったんですけど、そんなこともなかったみたいで。でも去年より、知り合いの芸人から「敗者復活のネタ面白かったな」って言われるのは多かったです。決勝出てた、ゆにばーすの川瀬(名人)が「M-1の楽屋では、ニューヨークがダントツでウケてました」って、わざわざ連絡くれたりとか。僕らとしては正直そこまで手応えがなかったんで、「へー」って感じでした。

――川瀬名人は、『M-1』の公式サイトに掲載された決勝進出者のコメントで「吉本に激推しされているニューヨークはもういないので、マヂカルラブリーさんに勝てたらいい」と話してましたね。

屋敷 そうっすね。あいつソレ、ちょいちょい言うんですよ。俺らが推されてるって。

――推されてるんですか?

嶋佐 いや、別に……推されてるんですかね?

――知らないです(笑)。

嶋佐 なぜにあいつが、そこまで俺たちに楯突いてくるのか、わかんないんですよ(笑)。

屋敷 そもそも川瀬も、ほんまに俺たちが推されてるとは思ってないはずなんですよ。「ニューヨークばっか仕事もらってズルい」とか、別に思わんタイプだと思うんで。

――ニューヨークばっかり仕事もらってるんですか?

屋敷 売れてないのにルミネの出番入れてもらったり、知名度ある先輩と抱き合わせで営業行かせてもらってたりっていうのは、ほんまにありがたいですよ。僕らじゃなくてええ仕事をやらせてもらってるときは、すごい愛情を感じますけど、推されてる感じは別に……。

――推されてようが推されてなかろうが、賞レースは公平ですしね。今年は、苦節15年目のとろサーモンさんが優勝しました。決勝はご覧になりましたか?

嶋佐 僕は終わってすぐ飲み行っちゃって、まだ観れてないんです。天竺鼠の川原(克己)さんたちと、Twitterで「M-1グランプリ」で検索しながら飲んでました。

屋敷 いや、観ろや(笑)。

嶋佐 Twitterの声をめちゃめちゃ見てましたね。「あ、今ネタたぶん終わった!」「めっちゃ『つまんねぇ』って言われてる!」「点数発表された!」「◯◯が何点だって!」みたいな。逆に面白かったですよ。

――独特の楽しみ方ですね。

嶋佐 今日帰ったら、ちゃんと観ます。

――屋敷さんは?

屋敷 僕は、さらば青春の光の森田(哲矢)さんと、相席スタートの山添(寛)さんと観てました。とろサーモンさんの優勝が決まったときは、めちゃくちゃテンション上がりましたよ。3人で「うわー!」っていうてました。でも正直、マジで正直言うたら、俺らとしては和牛さんが優勝したほうが……。

――どういう意味ですか?

屋敷 完全に俺らの都合で言ったら、ですよ! 和牛さんが優勝してたら来年出ぇへん、とろサーモンさんは今年がラストイヤーだから出ぇへん、そしたら2枠空くじゃないですか。ツーアウト取れたのに、って思ってしまいました。でも久保田(かずのぶ)さんなんて特にめっちゃお世話になってるんで、普通にめちゃくちゃうれしかったです。

――ニューヨークは今8年目ですよね。結成15年以内という今のM-1の規定が続けば、あと7回は出られる計算になります。

屋敷 とろサーモンさんみたいに15年間ずっと準決勝止まりで、ギリギリいけへんのは、ほんまに地獄やと思うんで、初めて決勝行っていきなり優勝するのがいちばんいいんですけど、まぁ難しいですよね。

嶋佐 僕らは一昨年のメイプル超合金さんみたいに、出るだけでインパクト残すタイプじゃないんで、優勝しないと意味がない。

屋敷 和牛さんとか見とったら「どれだけ難しいねん!」って思います。あれでも優勝できんって、俺やったら気力が尽きて死んでまうな。

嶋佐 俺がマヂカルラブリーさんだったら、もう今日自殺してますよ。来年どんなにウケても、絶対決勝いくのしんどいでしょ。

――野田クリスタルさんは「ねえ大恥かいたんだけど」とツイートしてましたね……。

嶋佐 生放送中にツイートしてたのが、めっちゃ笑いましたね。

屋敷 でも、いいっすよね。マヂラブさんはおもろなると思うんですよ。ザ・パンチさんよりかは、おもろなると思う(笑)。「M-1でうまいこといかんのがおもろい」って、あの頃より視聴者も気づき始めてるじゃないですか。あそこまで言われたら、どんどんいじってもらえるでしょう。KOC最下位より全然いいと思います。

――そしてM-1終わってすぐですが、12月15日には単独ライブ『YASHIKIS’』が行われます。これまでの単独はルミネtheよしもとやなんばグランド花月だったのが、今回は国際フォーラムで、一気に会場の規模が大きくなりました。ニューヨークの単独はいつもチケットが売り切れますが、今回は売れ行きはどうですか?

屋敷 ルミネの満席よりもちょっと売れてるくらいの枚数なので、もっと売れてほしいですね。というか、「国際フォーラムで単独やる」って聞かされたのが、2カ月くらい前なんですよ。「急やな!」と。半年くらい前から決めときたいですよ、こんな規模。

嶋佐 「絶対埋まらないだろ」って思いましたね。

――自分たちが東京でどれくらい集客できるか、露呈することにもなりますね。内容はいつもの単独ライブ同様に、新ネタを下ろすものになるんですか?

嶋佐 ちょっと違って、最近全然やってない昔のネタとか、あんまり見せたことのないネタをいっぱいやろうと思ってます。今のところ「普通の単独です」みたいな雰囲気出してるんで、詐欺まがいみたいになっちゃってるんですけど。しょっちゅう見に来てくれたり、俺らのこと知ってくれてる人でも観たことないネタをやる予定です。

屋敷 あとは、これまではVTR(ネタの合間に挟まれる企画映像。これまでの単独では「逆ナン待ち」や「元カノに電話」といった企画を行なってきた)を俺らと作家さんとカメラ撮る人だけで作ってたのが、今回は『ゴッドタン』(テレビ東京系)や『水曜日のダウンタウン』(TBS系)を制作しているシオプロさんに作ってもらったんですよ。そういうガワをしっかりしました。ネタとVTR以外のところでも、お客さんに楽しんでもらえるような仕掛けを用意してます。

――ニューヨークは普段は年2回単独ライブをやってますが、単独は2人にとってはどういう意味がありますか?

嶋佐 本当に冷静に考えると、特にメリットはないんですよね……なんなんですかね。いくら単独やっても、別に売れないですし。

屋敷 まぁ、言ったらネタを作る場ですよね。結局単独とかがないと、ネタ作るのサボってまうんで。最近は特に「このネタ、単独でしかできひんやんけ」っていうのは、できるだけないようにしてます。8本ネタ作ったら、全部別のところでも使えるネタやったらええな、と。

――実際、敗者復活でやっていたネタは今年の単独ライブで披露したネタでしたね。実は何度か単独にも行っていて、『オールナイトニッポン0』(2016年4月~17年3月、毎週金曜パーソナリティを担当)も毎週聴いてたんです。なので普通にファンなんですけど、同時に「あっ、この人たち、女性をすごいバカにしてるな……」って思う時が、結構よくありまして(笑)。

屋敷 ほんまっすか! いや、全然そんなことない!

――たいへん失礼ながら、ホモソーシャルというか、「女ってこんなもんだろ」みたいな感じを受けることが……。もちろん、そういう「偏見」がニューヨークの持ち味なので面白いんですが、同時に「出るとこ出たら怒られそうだな」って勝手に心配してました。

屋敷 でも結局僕ら、いかつい怒られ方したことないんですよ。ほんまの炎上とかしたことないですし。僕らの知名度がまだまだなんで、「所詮俺らの言うことなんて誰も聞いてないやろ」みたいなところがあります。

嶋佐 確かに。テレビでネタやらせてもらうときにも、見ようによってはそういうふうに捉えられるネタとかもやってましたけど、別になんも怒られたことないから、そのままですね。

――もっと売れて知名度が上がったら、そういうネタはやりにくくなるってことはないですか?

嶋佐 なおさら、もっとやりたいっすね。

屋敷 そうなんすよ。それで売れて、そういうのをやるのが当たり前と思ってもらって、いっぱいできるようになったらいいですよね。あとそもそも、別に俺らが偏見めっちゃ言いたいとか、危険なこと言いたいわけじゃないんですよ。それが面白いと思ってるだけで、「世の中変えたい」とか思ってないんで。2人とも思ってないようなこと言ってたり、自分たちで言いながら「それは言いすぎやろ」って思ってる時もありますし。お客さんがツッコんでくれ、っていう。なんも悪口ないネタもありますしね。でも、敗者復活のネタも、そのつもりだったけど、あとでTwitterで「女性に暴力をふるう男が不快」とか「昔そういう男おったから、すごい嫌な気持ちになった」とか言ってる人がいて、「そんな角度から観てんねや」ってびっくりしました。

嶋佐 そういうのは正直めんどくさいっすけど、気にせずにやっていきたいですね。

屋敷 賞レースは、それをいかに“面白オブラート”で包むか、ですね。

嶋佐 オブラート仕様にしても、今回はダメでしたけどね。単独ライブは比較的いい意味でも悪い意味でも荒削りな、オブラートで包んでないネタを披露させてもらいますんで、それを見に来てほしいです。本当は今回の国際フォーラムは、M-1決勝上がってウケて、その流れで満席にできたらよかったんですけど。1,500人キャパなので、どうにか1,000人くらいは入ってほしいです。

屋敷 1,000人なー。1,000人入れたいなぁ……。

(取材・文=斎藤岬/撮影=尾藤能暢)

●ニューヨーク
嶋佐和也(1986年生まれ、山梨県出身)と屋敷裕政(1986年生まれ、三重県出身)のコンビ。2010年結成。THE MANZAI2014認定漫才師。『ラフターナイト』(TBSラジオ)第1回グランドチャンピオン。

●ライブ情報
ニューヨーク単独ライブ「YASHIKIS’」
日時:12月15日(金)18:15開場 19:00開演
会場:東京国際フォーラム ホールC
料金:前売3000円、当日3500円 
チケットよしもと、チケットぴあ、ローソンチケットにて発売中

 

片岡鶴太郎、激ヤセヨガ生活は“健康”なのか? 全日本ヨガ協会に聞いてみた

 1980年代、「マッチでーす!」「おはよう……キューっちゃん!」といったモノマネや、アツアツおでんのリアクション芸などで、お笑いタレントとして人気を博した片岡鶴太郎。その後、88年には、ボクシングに目覚めプロボクサーテストを受験し、90年に入ると、今度は水墨画や書、陶芸の道へ進み、すっかり芸術家のイメージが浸透、カラフルな魚の絵に、「威風堂堂」「ふく来たれ」などの言葉が添えられた作品を一度は目にしたことがある者も少なくないだろう。

 そんなお笑いタレントから、“粋な大人”タレントへのイメージチェンジに成功した鶴太郎だが、昨年頃から、“ヨガのおじさん”として世間に認識され始めた。

 鶴太郎は、2012年頃からヨガに目覚め、以降、ストイックな生活を徹底しているという。昨年11月放送の『アウト×デラックス』(フジテレビ系)では、鶴太郎のヨガライフに密着。朝3時から3~4時間みっちりヨガや瞑想などを行った後、1日1食の朝食を2時間かけて食べる様子に、多くの視聴者があぜん。その後、「睡眠時間は3時間」「身長163センチ、体重は65キロから43キロに」「ヨガに没頭しすぎて、38年間連れ添った妻と離婚」といった鶴太郎の尋常ではない私生活情報が流れるたびに、ネット上では驚きの声が飛び交うこととなった。

 なぜ人々が鶴太郎に注目するのかといえば、その理由は、彼の“肉体”にあるだろう。20キロ以上体重が減ったという彼の体は、誰の目にも「痩せすぎ」であり、「まるで即身仏」「ミイラみたい」「不健康そう」といった指摘も多い。

 しかし鶴太郎自身は、この体型を「細マッチョ」と言い張り、「心身ともに至って健康。125歳まで生きる」と意気込んでいるだけに、「本当に大丈夫なの?」と不審がる声が続出。今年、インド政府公認「プロフェッショナルヨガ検定・インストラクター」に合格し、ヨガ親善大使就任すると、「ヨガって、女性に人気の習い事だと思ってたけど、極めるとこんな感じになるの?」など、良くも悪くも「ヨガ自体へのイメージが変わった」という声まで出ている状況だ。

 果たして、鶴太郎の激ヤセぶりは、ヨガの教えとして“正しい”のか? 全日本ヨガ協会に見解を伺った。

 同協会「オンフルールヨガスタジオ銀座本校」の白石久美氏は、鶴太郎の体型を「痩せすぎのように感じます」と語る。ヨガの教えにおいて、“贅肉がそがれた激ヤセ状態”が理想とされることは、断じてないそうだ。

「ヨガとつながりのある“アーユルヴェーダ(インドの伝統的医学)”では、食事は三食食べ、必要な栄養はしっかり摂るとされています。鶴太郎さんは、『一日一食、朝食のみ』とテレビで言っていましたが、それはご自身で編み出されたものなのか、もしくは師匠がいて、その方から教わったものなのか……一般的なヨガの世界ではやらないですね」(白石氏、以下同)

 そもそも、「ヨガをやると痩せて健康になる」という考え方にも、白石氏は疑問を投げかける。

「ヨガの世界では、『その人本来の体型になる』というのが健康とされているんです。なので、暴飲暴食で肥満になっている方は、ヨガをやることで痩せると思うんですけれど、痩せすぎている方は、逆に健康的に太るということもあり得ます。人に個性があるように、体型も人それぞれで、その人にとってのベストな体型があって、すごく痩せていても、ぽっちゃりでも、健康な方はいます。ヨガのインストラクターが全員痩せてるわけではありませんしね。ただ、現在の鶴太郎さんが“本来の体型”なのかと聞かれると、正直疑問が残ります。鶴太郎さんは元々痩せ型ではないと思うんです。私は医師ではないのではっきりとは言えないものの、体的には、もしかしたら飢餓状態、栄養が足りていないのではないかと感じてしまいます」

 ヨガとは決してストイックなものではなく、「自分にとって“ちょうどいい”生き方を見つけるもの」と語る白石氏。であれば、鶴太郎はヨガの教えに完全に反しているようにも思えてしまうが、白石氏は「ただ、鶴太郎さんにとっては“ストイックであること”が、ちょうどいいのかもしれません。というか、自分のライフスタイルをストイックと思っていないでしょう」と続ける。

「ヨガの本来の目的は、体作りを超えて、“精神的な幸せ”というところに行き着くことなのですが、鶴太郎さんは、今のライフスタイルを“幸せ”と感じているのではないでしょうか。医学的、一般的に見たら痩せすぎではあるものの、ご自身が『体調がいい』と思っていて、幸せであれば、それは誰も否定できません。鶴太郎さんもご自分がそう思っているだけで、『ヨガを極めたいならこうすべき』と、ほかの人には押し付けていないですよね」

 ちなみに、鶴太郎がテレビ番組でよく披露しているヨガの呼吸法「ナウリ」。腹直筋を意識的にあやつり、臓器をマッサージして全身を浄化させる奥義なのだが、「インストラクターでも、養成スクールで知識は得ますが実践はしません。『伝統的なヨガははこういうのをやっていたんだなぁ』『インドで本格的にヨガをやる人向けのもの』と思うくらい」なのだそうだ。

 最後に、「“ストレスなく自分らしく生きる”というのがヨガの考え。人それぞれにヨガの形がある」とまとめてくれた白石氏。鶴太郎にとって今のヨガライフは、まさに“ストレスなく自分らしく生きている”ということなのかもしれない。

女と自由との揺らぎ──『私だってするんです』小谷真倫の探求「自分の凡庸に負けたんだ……」

 小谷真倫。福島県生まれ。性別は女。職業はマンガ家。

 商業誌をフィールドに、選ばれた者しか到達することのできないプロのマンガ家の階段。その一段目を踏んだのは2007年。講談社の新人賞「第23回講談社MANGA OPEN」にて奨励賞を受賞してからである。

 そこから、アシスタント経験などを経て初の連載作は09年に「イブニング」(講談社)15号から不定期連載された『害虫女子コスモポリタン』。これは、ゴキブリや蚊、セミなど身近な昆虫を美女に擬人化したショートショートのギャグマンガ。タイトルは、途中から『害虫女子コスモポリタン ビッチーズ』と変わり、それぞれのタイトルで1冊ずつ単行本になった。後者の単行本の発行日は、13年9月20日。それから4年あまり。小谷の最新刊『私だってするんです』(新潮社)は、前作にはなかった「共感」を呼んでいる。

 作品が連載されているのは、Web上のマンガサイト『くらげバンチ』。そこは、Web媒体の優位性を生かして、次々と実験作が投入される場。いわば、多くのマンガ家が「プロになる」第一歩、あるいは復活の一歩を踏み出す戦場である。Webの時代となり、受け手の反応は直接的に手に取ることができる。TwitterやFacebookといったSNSを中心に溢れかえる、文字通りの忌憚のない意見。おおよそ、現代的な作り手は、それに一喜一憂しながら、さらに高みを目指している。目指しているとはいえ、時にそれらの意見にへこむこともある。

 さらに『くらげバンチ』には、その一歩先がある。それが、作品のページごとにあるコメント欄。Facebookなら大抵は実名だから、あまりにも辛辣なことを書こうとすれば抑制が働くものだ。本名であることが少ないTwitterでも同様。普段、平和に会話を交わしている相手。中には、現実世界でつながりがある人がいる場合も多々ある。だから、やっぱり抑制が働くもの。ところが、サイトのコメント欄となるとワケが違う。なぜなら、完全に匿名性。表示されるのは、作者と作品に対する称賛であったり、罵倒であったり。書き逃げができる場だから、SNSに比べて辛辣な意見も投げつけられやすい。

 その中にあって『私だってするんです』に寄せられるのは、読者からの「共感」。単行本のオビに記された宣伝文句を使えば「男性も必読!!!!!! 女性読者から共感の嵐」という具合。

 そんな共感を呼ぶ作品。描かれるテーマは「女性のオナニー」。女性のオナニーのやり方や、使っている「オカズ」が、各回ごとにテーマとして設定されている。

 それは、こんな物語だ。

 女子高生・慰舞林檎は、放課後の教室でオナニーを楽しんでいたところを、男子に見つかってしまう。それも、オカズに使っていた学年イチの優等生である江田創世(エデン)本人に。

 茫然自失とするしかない林檎であったが、江田は予想外のことを言い出す。「僕の事が好きなの?」と尋ね「いいよ! 付き合っても」と。ただ、交際には条件があった。江田は、さまざまな人が使っている「オカズ」を調べた「オカズ大辞典」を制作していた。それを参考に新たな快感を開拓することが、江田のライフワークだったのである。でも、優等生の彼をしても、困難なことがあった。それは、女子がどのような「オカズ」を用いて、どんなオナニーをしているのかということ。

「俺と一緒に『オカズ大辞典』を完成させてくれないか」

「……これが完成したら僕の事オカズどころか主食にしていい……」

 文武両道かつイケメンの優等生かと思いきや、振り切った変態。でも、そのギャップも萌え要素。こうして、女子のオカズを調べることを決意する林檎だったが、そのハードルは高かった。女子は、セックスのことは話すことができても、自分のオナニーになると途端に口を閉ざすのである。

 もしかして女子にとってのセックスとオナニーって……
 同じ性的なことでも……
 マツジュンと出川○朗に迫られるくらい……
 格差がある……

 そんなギャップの存在を描きながらも、林檎は、物語の狂言回しとして、電マやセクスティング、あるいは、ボーイズラブマンガなど、未知の方法やオカズを切り拓いていくのである。

 現代では、女性が性的なテーマを描くこと自体は珍しくなくなった。作中で登場しているボーイズラブ。男性向けの、いわゆる「エロマンガ」でも、女性作者は当たり前の存在だ。そうした「実用重視」の作品群とは、別のベクトルの、女性が描く性というのも存在する。マンガに限らず、文章や映像など、さまざまな形で描かれる作品群。どこかハイコンテクストで、個人的な体験を社会の中で一般化。ともすれば、社会に問題を提起することに熱心な、声の大きな作品群。

『私だってするんです』は、そのどちらのジャンルにも属さない。作品中に描かれるオナニーのやり方で興奮させたり、登場人物の用いているオカズを通じて「多様な性を認めろ」とかいって、社会に向けて声を上げるわけでもない。狂言回しを通して描かれるのは、オナニーの楽しさと、無限の可能性。いわば、地に足の着いた感じで、女性が密かに行っている性欲の満たし方を綴っている。

 ともすれば「出オチ」にもなり得るテーマ設定。けれども、コメント欄でも読者に指摘されていたが、作品は回を追うごとに面白くなっている。単に女子高生がさまざまな女性のオナニーを探求するだけだったら、誰にでも描ける。ただし、すぐに失速して惰性になってしまうだろう。

 この作品がそうならない理由。それは、狂言回しである林檎が、いかなるオナニーや使っているオカズに対しても、まったく否定的な態度を取らないこと。いかなる行為に対しても「うわ~変態」とか「それは、上級者すぎる」などという、Twitterなどにありそうな、安全圏で上から見下ろす態度は一切ない。それを、理解し我が身の中に吸収しようとする。そればかりか、林檎は快感に到達し得ない自分を嘆くのだ。

 それがもっとも濃厚に描かれているのは、第8話「オカズは『私』」のセクスティング。それは、自分の裸体などを自撮りして彼氏などに送る行為。姉が、その行為で未知なる快感を我が物としていることを聞いた林檎は、自身でも挑戦する。自分の身体を撮影することで繰り広げられるナルシスティックな行為の数々。それは、確かに未知の快感を教えてくれる。「すごいっ意外と自分の体で白飯3杯はイケるよ!」と、自給自足で得られる快感のスゴさが独特の表現で記される。しかし、それをひとまずは彼氏であるエデンに送ろうとした時、林檎は躊躇してしまう。そこに、新たな快感があるのはわかっている。しかし、恥ずかしさをかなぐり捨てることはできない。そこで林檎が味わうのは、敗北感。

「自分の凡庸に負けたんだ……」

 この一言に、作者・小谷のオナニーにまつわる数多の事柄を、ポジティブに捉えて自分自身も獲得しようとする心情が込められているように思える。その探究心や、あらゆるものを否定する態度に「共感」を得られる要素があるのか。そうした探究心はマンガ的に描こうとすれば、いくらでもできる。すなわち、そんな気持ちなどないのに頭の中で組み立てることもできる。

 これまで、そんな「意識の高さ」を匂わせる作品にも多く出会ってきた。けれども『私だってするんです』には、そんな凡庸さはない。狂言回しである林檎を通して、作者自身が探求し右往左往する様が描かれているように思えたからだ。物語の必然として、林檎が調査をしなくてはならない理由はきちんと描かれている。でも、それを踏まえた上で作者である小谷自身の体験した驚き、快感、躊躇が余すことなく表現されている。その嘘のなさこそが「共感」を生んでいるのではなかろうか。

 デビューからこれまでの間に発表した作品が極めて少ない、寡作な描き手。それでいて、描くものは極めて濃厚。小谷真倫とは、いったい、どんな人物なのか。そんな極めて単純な好奇心から、取材を申し込んだ。

 

 最初に連絡したのは『くらげバンチ』のメールフォーム。驚くほど早く、日時は決まった。場所は神楽坂にある新潮社の別館。飯田橋駅から、喧噪にまみれる神楽坂通りをトボトボと歩いて登りながら、どんな人物が待っているのか、さまざまな想像がめぐった。

 ふと思い出したのは、単行本の中にあった一文である。

 小谷はもともと夜の世界の人間である。

 単行本のために描き下ろされた、おまけマンガにはそう書いてあった。ほかのページも含めて、添えられた作者自身の造形は、たらこ唇のズケズケと図太そうなタイプの女。女性ではなく「女」という一文字がしっくりとくる。インタビューを受けてくれるとはいえ、自意識が高くて押しの強そうな水商売風の女が来たら、どうしようかと思った。見ようによっては、オナニーのことを、ずけずけと恥ずかしげもなく描いているわけだから、きっとそんなタイプの女性なのではないか……。

 でも、新潮社別館の1階にある応接室で待っていたのは、まったくの別人だった。秋の訪れを感じさせる、小豆色と白黒がストライプになった薄手のセーター。細身の、清楚さもかすかに感じさせる大人しげな女性は言った。

「あの、私、インタビューは初めてなんです。ちゃんと話せなかったら、ごめんなさい」

 彼女が身に纏う、作品とは正反対の雰囲気。その色気とも違う、何かを取り込もうとする独特の空気感にして、私は、お決まりの言葉を紡ぐことしかできなかった。

「インタビューは初めて」という言葉通り、最初、小谷の声は小さかった。けれども、作品の中で描かれている、グイグイと押していく雰囲気の自画像とは真逆の姿に、俄然興味が湧いた。『私だってするんです』で描いた自画像よりも、自分を的確に描いているのは『害虫女子コスモポリタン』の中で描いた、自身の初取材の回。そこでドキドキする自身を描写した小谷は、緊張のあまり失禁する姿まで描いている。マンガ的な、話を盛ったコマだとはわかっている。でも、そこにはできる限り目線を下げて、取材対象に寄り添おうという精神性が感じられた。意図的かどうかはわからないが、この時は素の自分を素描していたのだと思う。

 そんな小谷への最初の質問。やはり聞くべきは、宣伝文句にもなっている読者からの共感の嵐について、どう感じているかということだった。

「えっとですね……」

 とても小さな声で、一拍置いて。それから、小谷ははっきりした声で話し始めた。

「共感した方もいらっしゃるんですけれども、もともと、これは、別にこう……わかってもらわなくていいかな、という思いでつくったんです」

 この一言に『私だってするんです』という作品が、共感を呼び起こしている理由が集約されている。インタビュー慣れした人が口にするようなものとは違う、自然体の素朴な言葉。そこには、どこからともなく湧き出る「この作品を描きたい」という作者の情熱に読者が圧倒され、物語の中に引きずり込まれているという構図があった。

 この作品を描いて世に出ようだとか、有名になろうだとかいったものよりも、自分はマンガ家なのだから、描きたいし描いてしまったのである。

 だから、連載を前に、小谷の心中にあったのは「共感できないけれども、理解してもらえればいい」という思いだけ。ところが、コメント欄に寄せられるのは、まったくそうではない感想。

「最初は、中にはこういう人もいるのかなと思って描いたんです。それが、<わかる>という人が何人もいて反対にびっくりしたんです」

 実のところ、男女の垣根を越えて好意的な反応が押し寄せる様は、編集サイドにとっても予想外だった。「女性のオナニー」事情をテーマにした作品。だから、当初考えていたのは男性からの反応。それが、蓋を開けてみれば男女を問わず。女性からの感想も次々と寄せられる。

 Twitterは、アカウントは持っているけれども、エゴサーチもしなければ、ほとんどツイートしていなかった。それなのに、60数人しかいなかったフォロワーは、連載を始めてから120人にまで増えている。これも、独特の反応。前述のように、Twitterでは公言しにくいが、コメント欄には感想を寄せる。オナニーについて、もっと積極的に、オープンに語りたい男女が無数に蠢いていることを感じさせてくれる。

「コメント欄は、誰が書いたかわからないから、Twitterなんかよりも書きやすいとは思うんです。それでも、意外と肯定的な意見が多くて。最初は、みんな『そんなにオナニーしていないだろう』となるんじゃないかと思っていたんです」

 同席していた『くらげバンチ』担当編集の佐藤は、存外に好意的な感想が集まったことへの驚きを隠すことはなかった。

「共感してもらう必要もなかった」

 そんな言葉を、小谷は幾度も口にした。読者の共感を得て、評判になっている実感を得て感激するよりも、もっと作品を描くための探求に限られた時間を割きたいのだ。

 取材というよりも探求という言葉がよく似合う小谷の行動力は、初の連載作『害虫女子コスモポリタン』の時から、如実に現れている。ゴキブリをはじめとした害虫を、女のコに擬人化して描くショートストーリー。そこで綴られる知られざる害虫の生態は、さまざまな専門家との対話をベースにしている。

「今、描いているのは取材と想像と、人から聞いたものを、自分を……なんてこう……実験台にしてみたいな……気持ち悪いことをやってえ」

 オナニーをテーマにするため、自分の身体を実験体にしている。それを小谷は「気持ち悪いこと」と言って笑う。その自虐も、一種の余裕である。そして、自分の知りたいこと、描きたいことのためには世間の評判などは、取るに足らないものと割り切る覚悟である。だから、作品に生かされている実体験を尋ねても、小谷は臆さない。それどころか、話題がそこに及ぶと、よりはっきりとした声で話し始める。

「作中で、林檎が電マを試していますが、これも実体験を通していらっしゃるのですね」

「そうですね、電マは……過去にやったことを彷彿とさせて、という感じですね」

「ひと通り試していらっしゃる」

「ええ、それは日記に全部……。こう、メモ書きにしてあるんですよ。何月何日にこれをやったと。『死ぬかと思った』とかみたいなことを」

「死ぬかと思ったとは」

「えっと、社会的に死ぬかと思ったのが電マなんですよね。なんか、音みたいなのとか……騒いだりとかで、迷惑をかけたのは電マ」

「声は出てしまった」

「そうですね。ちょっと、転落したりだとか」

「とりわけ、セクスティングでの敗北感は、事実を反映しているふうに読めますね」

「これなんか、大学生の時に調子こいてやっていたような気がするので……。それに近いことを正気になって考えたら、気持ち悪いな。よくよく考えたら、そんなに自慢げな身体でもなかったなあ……」

「それは、当時の彼氏なりに送った」

「彼氏というより好きな人に送ったんです。その時だけ盛り上がって……5年くらい賢者タイムでしたね」

 作中で記されているさまざまな行為を、自身が体験している。そのことを聞いても、まったく隠すことはしない。隠すことはしないのだが、自慢することもしない。それもまた、小谷の作品に反映されている独特の精神性である。女性の性を扱った時に、多くの作品は暴露的、露悪的、あるいは社会問題提起であったりする。ところが、小谷はどちらでもない。「こんな作品」を描くことに突っ走ってしまう情熱と「こんな作品」を描いてしまう恥ずかしさの間を揺らいでいる。それは、主観と客観の間の揺らぎのようなもの。その揺らぎが、作中で描かれる性を、今まで描かれてこなかっただけで、実は人知れず普遍的に存在していたものであるという存在感を与えている。

「セクスティングで、もう一歩を踏み出せない林檎の敗北感。それは、一線を越えた先に楽しい世界があるのがわかっているからこそなのでしょう」

「そうです。ですから、この主人公の林檎は非常にまともで、けっこうフツーの人間。真人間。身体はエロいけど……」

 

 世間の常識と、自分の知りたい世界との揺らぎの中に、作品世界を模索する小谷。高校までを過ごしたのは、今は市町村合併で二本松市となった福島県中通りの山間部。マンガ雑誌は薬局に「なかよし」(講談社)が数冊入る「なんかイノシシとかいるところ……」という土地で、小谷が夢見ていたのは、魔法使いになることだった。

「人と同じ行動をとるのがツラくて……大人になるにつれて、なれないなとわかってやめたんですけど」

 そういった過去を「一定の年齢まで信じていたから、危ないなとは思っています」とは言いつつも、当時の小谷は本気だった。小学校6年生の頃、10年に一度規模の台風が福島県に上陸した(平成10年台風5号だと思われる)。

「私はそろそろ空を飛べる、この風に乗って別の世界へ行ける!!」

 嵐の中、家を出た小谷は、強い決意を持って近所の山の崖から飛び降りた。空を飛ぶ事はできず、傘を三本ぶっ壊して大人に怒られただけだった。その他、悪事をやらかして全校集会を開かせたりした。「劣等生で悪童であった」と小谷は振り返る。

「親は、ちょっとオツムの具合がアレかなっと。両親は真人間だし、弟も真人間だし」

 現状維持が美徳の保守的な田舎の村で、小谷のような子どもは浮いていた。『私だってするんです』の単行本が発売になり、地元の大きな書店は、地元出身のマンガ家として大きく棚を割いている。サイン本の依頼もある。田舎に帰れば、仲良く話せる旧友もいる。それでも「東京でマンガ家をやっているという時点で、やっぱり浮いている」というのが、小谷の見立て。単行本の加筆されたページにも記されているが、作品の登場人物のモチーフには、故郷の友人たちもいる。時折、帰郷した時に、その友人たちと落ち合う。そんな時に、何気なく口に出る今の幸せや、これからの人生の目論見……旧友たちの思い描く幸せとの解離を感じている。

「そういうところに帰りづらいという思いはありますね」

 自ら「今でいうところのスクールカーストの最底辺みたいな、根暗」と、十代の青春を語る小谷。でも、その最底辺に属することで、逆にすんなりと見えてくるのが複雑な人間模様や、得体の知れない輝きを放つ人々の姿。だから『私だってするんです』に描かれるキャラクターの多くは、これまで自分が人生で出会い、興味を持った人々の中から生まれてくる。

 例えば、作中に登場する地味で目立つタイプでもないくせに、すでにセックスも体験していることがわかり、林檎を驚かせるクラスメイトの中村広子。そのモデルは、地味なのに性には発展的だった同級生。

 たとえ人口の少ない田舎町でも、学校に行けば作中に出てくるようにさまざまな興味深い同級生たちがいた。でも、キャパシティのない地域社会の中で、異端者が折り合いをつけて暮らすのは、甚だ難しい。進学や就職など、さまざまな方法で、生まれ育った土地を後にするのは必然である。小谷の場合、進学がそれだった。選んだのは、女子美術大学。それもまた、地元では異端な進学先。けれども、大学に入れば、そこは世間の常識などものともしない人々が溢れる世界。

「私の美大は全裸になって自分の肉体に色を塗ったり、芸術の方法が過激な子とか、フツーにレズビアンの子とかもいたんで……」

 そんな枷を解かれた世界で、小谷はマンガ家としての人生を明確に描き始めていた。もともと、マンガ家になろうと思ったのは、魔女を断念した直後。憧れの優等生の先輩が、マンガ家になりたいと言っていたのがきっかけ。

「自分にはないから、この世界ではリア充をって、害虫とかは一切出てこない、青春のぞわぞわする感じのを描いてました」

 それもまた、閉塞した村の中での見えない枷だったのか。上京してから小谷は、青年誌へとシフトして才能を開花させようとしていた。単に憧れるだけではなく、着実に階段を上っていた。講談社の新人賞「第23回講談社MANGA OPEN」での奨励賞を経て、09年からは『害虫女子コスモポリタン』の連載も得た。その間の修業時代。高橋しんのアシスタントをしていた時には、忘れられない思い出がある。高橋は時々、通常のアシスタントの仕事とは別に、複雑なキャラクターの心情を、表情で描く指示をしてくることがあった。ある時、高橋はプロットを小谷に渡してキャラクターの「泣いたような顔で笑う」コマを描いてみるよう指示した。

 小谷はあれこれと必死に考えて、高橋から指示された表情を描いた。それを見た高橋は「なるほど、これが泣き笑いの顔か」と呟いた。「その時、先生に認められたんだと思って、うれしかった」と小谷は言う。単にマンガ家とアシスタントの関係ではない。自分の下で働く後輩たちの成長を促すきっかけを与えることを惜しまない高橋。こうした経験は、着実に小谷を成長させていった。

 アシスタントとして修業を積む間に『害虫女子コスモポリタン』の連載も始まった。不定期連載とはいえ、アシスタントをしながらという、ぬるま湯のヤバさも感じて、小谷はマンガ家として独り立ちする決心をした。その時には、自分もこれからマンガ家として、着実にキャリアを積んでいくことができるという、希望もあった。でも、順風満帆にはいかなかった。

「まあ、不遇の時代が長かったですよね」

 2冊の単行本が出た後、講談社からの仕事は途絶えた。単行本が出た後に仕事が途絶えてしまったマンガ家は、ある意味で新人よりも苦労を強いられる。再び、さまざまな編集部に持ち込みに回っても、既存の作品の評価や売上で、足元を見られる。持ち込みに行った先の編集部で「うちでは厳しい」と突き返され、罵倒までされた。マンガ家仲間の中には、心が折れて田舎に帰る者もいれば、リストカットをする者もいた。毎日、納豆かチンゲン菜のどちらかばかりを食べてマンガを描き続ける日々。マンガ家としての矜持と財布が底を尽きそうになると、水商売を始めた。

 小谷が最初に水商売に心を引かれたのは、大学生の時であった。

「今でもそうですけど………多分、自分に自信がなかったからだと思うんです」

 水商売というのは、指名数などさまざまな形で自分に値段がつく世界。だから、自分が女性として、どれくらいの価値があるのか知ることができるのではないかと考えた。それは、東電OL殺人事件の被害者となった、あの女性に似たメンタリティ。ただ違うのは、あの女性が自分の肉体の価値を確認することを求めたのに対して、小谷は自分の女性としての価値を測りたかったということ。新宿や新橋、町田と、各地のスナックやラウンジを転々としながら、自分でも説明のつかない衝動を埋めようとしていた時期があった。

 そして、再び生活の糧を得る手段として足を踏み入れた水商売の世界。けれども、小谷はどっぷりと足を踏み入れはしなかった。ネオンの巷で働くうちに、そこで見る人間模様が小谷に、マンガをもっと描きたいという衝動を与えてくるのだ。マンガに軸足を置いては、また夜の世界へ。それを繰り返す中での体験が『私だってするんです』という作品の実を少しずつ育てていった。

 ある少し高級なクラブで働いている時だった。いまだバブル時代が続いているようなタイプの馴染み客がいた。その夜は、酔いも回っていたのか、客は小谷を執拗に夜に誘った。客とはいえ、まったくタイプではない男だった。それもあって、小谷は水商売のテクニックではなく、ごく自然な感じで言った。

「私、今日は自分でするんで、すみません」

 考えもしなかった小谷の言葉に、客の男は驚いた顔をしていった。

「そんな悲しい、そんな悲しいことを言うなよ。俺がいるだろ。パイプカットしてるんだぞ、俺は安心なんだぞ、イカせられる……」

 その客の言葉が、夜が明けても小谷の心中にずっと引っ掛かっていた。それより前に「男の人は自分たちはするけど、女の人がするっていうのを信じたくない」という話を聞いたことがあった。なんで、そんな齟齬が生じるのか気にかかっていた。自分は、とりわけ文章をオカズにやっている。中でも渡辺淳一の小説は「淳一、やるな」と思いながら、興奮してしまう。自分でマンガを描いている時にだって、事故のようにエロい気持ちになってしまうこともある。一方で、女性の側にも、何か引っ掛かるものがある。多くの男性と関係を持ち、それを誇るように話す女性であっても、オナニーの方法やオカズを聞くと、途端に否定的な態度を取ってくる。いくら巷にエロメディアが溢れているといっても、自由さはない。とりわけ、女性の性に感じるのは、価値基準が男性のフィルターを通した「自分がいかに愛されているか」といったものに限られていること。

 そうじゃない楽しい世界は必ずある。別に「私たちは!」と机を叩くようなものではない。仲間たちと、こういうことをやっているんだよ。面白い。自分もそういうことをしてみよう……そんな、前向きさのある自由で気持ちのよい世界があるはずなのに。

 神楽坂の早稲田通りに面した『くらげバンチ』のオフィスで、佐藤はいつものように業務をこなしていた。担当するマンガ家との打ち合わせ。原稿の進行の確認。いくつかの仕事をこなした後、持ち込み原稿を読む。封筒で送られてきたのは、最近は減った手描きの原稿。数作品あった中の、ひとつを読んで佐藤は思った。

「これは、モノになるかもしれない」

 マンガ家になりたいといっても、なれるのはホンの一握り。デビューしてからも、マンガ家として続けていくことができるのは、さらに一握り。すでに2冊の単行本を出した後、数年間の沈黙が続いているマンガ家。そんな人物の作品が、どんなものなのか。海の物とも山の物ともつかない。ともすれば、一度はデビューしたという安っぽいプライドは、妙な癖のついた我の強さばかりを肥大化させがち。でも、その作品は、佐藤の心臓に突き刺さった。

「女性のオナニーについて、女性自身が描いている」

 男性にとっては謎の部分。エロマンガなんかで、男性が好むスタイルで描かれることはあっても、その実像をする術もない。それを知ることができたら、面白いじゃないか。

 すぐに佐藤は、原稿の主……小谷に連絡をした。

「これ、すごく面白いと思います」

 そこから連載開始までは、1年あまり。何度も打ち合わせと描き直しが続いた。テーマには確固たるものがある。それを、エンターテインメントとして、どのように見せるか。『くらげバンチ』は、Webという特性も生かして実験的な作品が並ぶ。一種特異な作品を求めてアクセスしてくる読者に向けたエンターテインメントとは何かを探った。

 これまで、一貫して手描きで原稿を描いてきた小谷にとって、Webへの戸惑いもあった。自身もマンガは紙で読むことに慣れ親しんできた小谷。画面をスクロールしながら読むWebのスタイルは、自分の作風には向いていないのではないかという恐れもあった。

 打ち合わせを重ねて、ようやく連載が始まった。始まってしまうと、恐れは新たな発見と好奇心へと転換していった。紙媒体にはない、読者からのダイレクトな反応。もちろん、いい話ばかりではない。「悪口を言われるとツラくて創作に支障が出たり、匿名でしか好き勝手言えないような奴は肥溜めに落ちろと思うことがあります」という赤黒の感情も湧き出す。けれども、紙媒体とは違う読者の直接的すぎる反応は、小谷の創作意欲をさらに高めている。単純に「共感」されることに喜ぶのではない。読者自身がコメントの中で書き記す読者自身の行為。それが、小谷の探究心の新しいスイッチをオンにするのだ。

「……自分のリアルな恋愛とかセックスが充実していたら、生まれなかった作品だと思っています。そういうものに自信がないから、こういう性的な作品が描けるんだと思っているんです」

 これまで、付き合った男に話が及ぶと小谷は、少し笑いながらいった。

「まあ、そうですね。悲しいっていうか。ちょっと、乱暴だったっていうか……」

 そうした、人には言えない経験。暖かい家庭を築くこととはかけ離れた体験。それを、マンガ家の芸の糧として誇るわけではない。それは、広く世間から見れば恥ずかしいことかもしれないが、そのことをも糧にしていく性を持つ自分を、徹頭徹尾客観視している。その観察眼は、内面だけではなく周囲にも向けられている。オナニーを通じて明らかになるさまざまな性癖。そして、個人の日常。興味を惹かれて、昂ぶりは止まらない。でも、決して自分にはないものがある。上から見て、分析したり、自分のほうが優れているという気持ちを巧妙に隠しながら、見下したような同情をするような気持ちのようなものは、どこにもない。

「みんなそれぞれ違うところを『こーいう違いもあるのか』と楽しみ合えればと思います」

 そして、小谷はまた笑う。
(取材・文=昼間たかし)

女と自由との揺らぎ──『私だってするんです』小谷真倫の探求「自分の凡庸に負けたんだ……」

 小谷真倫。福島県生まれ。性別は女。職業はマンガ家。

 商業誌をフィールドに、選ばれた者しか到達することのできないプロのマンガ家の階段。その一段目を踏んだのは2007年。講談社の新人賞「第23回講談社MANGA OPEN」にて奨励賞を受賞してからである。

 そこから、アシスタント経験などを経て初の連載作は09年に「イブニング」(講談社)15号から不定期連載された『害虫女子コスモポリタン』。これは、ゴキブリや蚊、セミなど身近な昆虫を美女に擬人化したショートショートのギャグマンガ。タイトルは、途中から『害虫女子コスモポリタン ビッチーズ』と変わり、それぞれのタイトルで1冊ずつ単行本になった。後者の単行本の発行日は、13年9月20日。それから4年あまり。小谷の最新刊『私だってするんです』(新潮社)は、前作にはなかった「共感」を呼んでいる。

 作品が連載されているのは、Web上のマンガサイト『くらげバンチ』。そこは、Web媒体の優位性を生かして、次々と実験作が投入される場。いわば、多くのマンガ家が「プロになる」第一歩、あるいは復活の一歩を踏み出す戦場である。Webの時代となり、受け手の反応は直接的に手に取ることができる。TwitterやFacebookといったSNSを中心に溢れかえる、文字通りの忌憚のない意見。おおよそ、現代的な作り手は、それに一喜一憂しながら、さらに高みを目指している。目指しているとはいえ、時にそれらの意見にへこむこともある。

 さらに『くらげバンチ』には、その一歩先がある。それが、作品のページごとにあるコメント欄。Facebookなら大抵は実名だから、あまりにも辛辣なことを書こうとすれば抑制が働くものだ。本名であることが少ないTwitterでも同様。普段、平和に会話を交わしている相手。中には、現実世界でつながりがある人がいる場合も多々ある。だから、やっぱり抑制が働くもの。ところが、サイトのコメント欄となるとワケが違う。なぜなら、完全に匿名性。表示されるのは、作者と作品に対する称賛であったり、罵倒であったり。書き逃げができる場だから、SNSに比べて辛辣な意見も投げつけられやすい。

 その中にあって『私だってするんです』に寄せられるのは、読者からの「共感」。単行本のオビに記された宣伝文句を使えば「男性も必読!!!!!! 女性読者から共感の嵐」という具合。

 そんな共感を呼ぶ作品。描かれるテーマは「女性のオナニー」。女性のオナニーのやり方や、使っている「オカズ」が、各回ごとにテーマとして設定されている。

 それは、こんな物語だ。

 女子高生・慰舞林檎は、放課後の教室でオナニーを楽しんでいたところを、男子に見つかってしまう。それも、オカズに使っていた学年イチの優等生である江田創世(エデン)本人に。

 茫然自失とするしかない林檎であったが、江田は予想外のことを言い出す。「僕の事が好きなの?」と尋ね「いいよ! 付き合っても」と。ただ、交際には条件があった。江田は、さまざまな人が使っている「オカズ」を調べた「オカズ大辞典」を制作していた。それを参考に新たな快感を開拓することが、江田のライフワークだったのである。でも、優等生の彼をしても、困難なことがあった。それは、女子がどのような「オカズ」を用いて、どんなオナニーをしているのかということ。

「俺と一緒に『オカズ大辞典』を完成させてくれないか」

「……これが完成したら僕の事オカズどころか主食にしていい……」

 文武両道かつイケメンの優等生かと思いきや、振り切った変態。でも、そのギャップも萌え要素。こうして、女子のオカズを調べることを決意する林檎だったが、そのハードルは高かった。女子は、セックスのことは話すことができても、自分のオナニーになると途端に口を閉ざすのである。

 もしかして女子にとってのセックスとオナニーって……
 同じ性的なことでも……
 マツジュンと出川○朗に迫られるくらい……
 格差がある……

 そんなギャップの存在を描きながらも、林檎は、物語の狂言回しとして、電マやセクスティング、あるいは、ボーイズラブマンガなど、未知の方法やオカズを切り拓いていくのである。

 現代では、女性が性的なテーマを描くこと自体は珍しくなくなった。作中で登場しているボーイズラブ。男性向けの、いわゆる「エロマンガ」でも、女性作者は当たり前の存在だ。そうした「実用重視」の作品群とは、別のベクトルの、女性が描く性というのも存在する。マンガに限らず、文章や映像など、さまざまな形で描かれる作品群。どこかハイコンテクストで、個人的な体験を社会の中で一般化。ともすれば、社会に問題を提起することに熱心な、声の大きな作品群。

『私だってするんです』は、そのどちらのジャンルにも属さない。作品中に描かれるオナニーのやり方で興奮させたり、登場人物の用いているオカズを通じて「多様な性を認めろ」とかいって、社会に向けて声を上げるわけでもない。狂言回しを通して描かれるのは、オナニーの楽しさと、無限の可能性。いわば、地に足の着いた感じで、女性が密かに行っている性欲の満たし方を綴っている。

 ともすれば「出オチ」にもなり得るテーマ設定。けれども、コメント欄でも読者に指摘されていたが、作品は回を追うごとに面白くなっている。単に女子高生がさまざまな女性のオナニーを探求するだけだったら、誰にでも描ける。ただし、すぐに失速して惰性になってしまうだろう。

 この作品がそうならない理由。それは、狂言回しである林檎が、いかなるオナニーや使っているオカズに対しても、まったく否定的な態度を取らないこと。いかなる行為に対しても「うわ~変態」とか「それは、上級者すぎる」などという、Twitterなどにありそうな、安全圏で上から見下ろす態度は一切ない。それを、理解し我が身の中に吸収しようとする。そればかりか、林檎は快感に到達し得ない自分を嘆くのだ。

 それがもっとも濃厚に描かれているのは、第8話「オカズは『私』」のセクスティング。それは、自分の裸体などを自撮りして彼氏などに送る行為。姉が、その行為で未知なる快感を我が物としていることを聞いた林檎は、自身でも挑戦する。自分の身体を撮影することで繰り広げられるナルシスティックな行為の数々。それは、確かに未知の快感を教えてくれる。「すごいっ意外と自分の体で白飯3杯はイケるよ!」と、自給自足で得られる快感のスゴさが独特の表現で記される。しかし、それをひとまずは彼氏であるエデンに送ろうとした時、林檎は躊躇してしまう。そこに、新たな快感があるのはわかっている。しかし、恥ずかしさをかなぐり捨てることはできない。そこで林檎が味わうのは、敗北感。

「自分の凡庸に負けたんだ……」

 この一言に、作者・小谷のオナニーにまつわる数多の事柄を、ポジティブに捉えて自分自身も獲得しようとする心情が込められているように思える。その探究心や、あらゆるものを否定する態度に「共感」を得られる要素があるのか。そうした探究心はマンガ的に描こうとすれば、いくらでもできる。すなわち、そんな気持ちなどないのに頭の中で組み立てることもできる。

 これまで、そんな「意識の高さ」を匂わせる作品にも多く出会ってきた。けれども『私だってするんです』には、そんな凡庸さはない。狂言回しである林檎を通して、作者自身が探求し右往左往する様が描かれているように思えたからだ。物語の必然として、林檎が調査をしなくてはならない理由はきちんと描かれている。でも、それを踏まえた上で作者である小谷自身の体験した驚き、快感、躊躇が余すことなく表現されている。その嘘のなさこそが「共感」を生んでいるのではなかろうか。

 デビューからこれまでの間に発表した作品が極めて少ない、寡作な描き手。それでいて、描くものは極めて濃厚。小谷真倫とは、いったい、どんな人物なのか。そんな極めて単純な好奇心から、取材を申し込んだ。

 

 最初に連絡したのは『くらげバンチ』のメールフォーム。驚くほど早く、日時は決まった。場所は神楽坂にある新潮社の別館。飯田橋駅から、喧噪にまみれる神楽坂通りをトボトボと歩いて登りながら、どんな人物が待っているのか、さまざまな想像がめぐった。

 ふと思い出したのは、単行本の中にあった一文である。

 小谷はもともと夜の世界の人間である。

 単行本のために描き下ろされた、おまけマンガにはそう書いてあった。ほかのページも含めて、添えられた作者自身の造形は、たらこ唇のズケズケと図太そうなタイプの女。女性ではなく「女」という一文字がしっくりとくる。インタビューを受けてくれるとはいえ、自意識が高くて押しの強そうな水商売風の女が来たら、どうしようかと思った。見ようによっては、オナニーのことを、ずけずけと恥ずかしげもなく描いているわけだから、きっとそんなタイプの女性なのではないか……。

 でも、新潮社別館の1階にある応接室で待っていたのは、まったくの別人だった。秋の訪れを感じさせる、小豆色と白黒がストライプになった薄手のセーター。細身の、清楚さもかすかに感じさせる大人しげな女性は言った。

「あの、私、インタビューは初めてなんです。ちゃんと話せなかったら、ごめんなさい」

 彼女が身に纏う、作品とは正反対の雰囲気。その色気とも違う、何かを取り込もうとする独特の空気感にして、私は、お決まりの言葉を紡ぐことしかできなかった。

「インタビューは初めて」という言葉通り、最初、小谷の声は小さかった。けれども、作品の中で描かれている、グイグイと押していく雰囲気の自画像とは真逆の姿に、俄然興味が湧いた。『私だってするんです』で描いた自画像よりも、自分を的確に描いているのは『害虫女子コスモポリタン』の中で描いた、自身の初取材の回。そこでドキドキする自身を描写した小谷は、緊張のあまり失禁する姿まで描いている。マンガ的な、話を盛ったコマだとはわかっている。でも、そこにはできる限り目線を下げて、取材対象に寄り添おうという精神性が感じられた。意図的かどうかはわからないが、この時は素の自分を素描していたのだと思う。

 そんな小谷への最初の質問。やはり聞くべきは、宣伝文句にもなっている読者からの共感の嵐について、どう感じているかということだった。

「えっとですね……」

 とても小さな声で、一拍置いて。それから、小谷ははっきりした声で話し始めた。

「共感した方もいらっしゃるんですけれども、もともと、これは、別にこう……わかってもらわなくていいかな、という思いでつくったんです」

 この一言に『私だってするんです』という作品が、共感を呼び起こしている理由が集約されている。インタビュー慣れした人が口にするようなものとは違う、自然体の素朴な言葉。そこには、どこからともなく湧き出る「この作品を描きたい」という作者の情熱に読者が圧倒され、物語の中に引きずり込まれているという構図があった。

 この作品を描いて世に出ようだとか、有名になろうだとかいったものよりも、自分はマンガ家なのだから、描きたいし描いてしまったのである。

 だから、連載を前に、小谷の心中にあったのは「共感できないけれども、理解してもらえればいい」という思いだけ。ところが、コメント欄に寄せられるのは、まったくそうではない感想。

「最初は、中にはこういう人もいるのかなと思って描いたんです。それが、<わかる>という人が何人もいて反対にびっくりしたんです」

 実のところ、男女の垣根を越えて好意的な反応が押し寄せる様は、編集サイドにとっても予想外だった。「女性のオナニー」事情をテーマにした作品。だから、当初考えていたのは男性からの反応。それが、蓋を開けてみれば男女を問わず。女性からの感想も次々と寄せられる。

 Twitterは、アカウントは持っているけれども、エゴサーチもしなければ、ほとんどツイートしていなかった。それなのに、60数人しかいなかったフォロワーは、連載を始めてから120人にまで増えている。これも、独特の反応。前述のように、Twitterでは公言しにくいが、コメント欄には感想を寄せる。オナニーについて、もっと積極的に、オープンに語りたい男女が無数に蠢いていることを感じさせてくれる。

「コメント欄は、誰が書いたかわからないから、Twitterなんかよりも書きやすいとは思うんです。それでも、意外と肯定的な意見が多くて。最初は、みんな『そんなにオナニーしていないだろう』となるんじゃないかと思っていたんです」

 同席していた『くらげバンチ』担当編集の佐藤は、存外に好意的な感想が集まったことへの驚きを隠すことはなかった。

「共感してもらう必要もなかった」

 そんな言葉を、小谷は幾度も口にした。読者の共感を得て、評判になっている実感を得て感激するよりも、もっと作品を描くための探求に限られた時間を割きたいのだ。

 取材というよりも探求という言葉がよく似合う小谷の行動力は、初の連載作『害虫女子コスモポリタン』の時から、如実に現れている。ゴキブリをはじめとした害虫を、女のコに擬人化して描くショートストーリー。そこで綴られる知られざる害虫の生態は、さまざまな専門家との対話をベースにしている。

「今、描いているのは取材と想像と、人から聞いたものを、自分を……なんてこう……実験台にしてみたいな……気持ち悪いことをやってえ」

 オナニーをテーマにするため、自分の身体を実験体にしている。それを小谷は「気持ち悪いこと」と言って笑う。その自虐も、一種の余裕である。そして、自分の知りたいこと、描きたいことのためには世間の評判などは、取るに足らないものと割り切る覚悟である。だから、作品に生かされている実体験を尋ねても、小谷は臆さない。それどころか、話題がそこに及ぶと、よりはっきりとした声で話し始める。

「作中で、林檎が電マを試していますが、これも実体験を通していらっしゃるのですね」

「そうですね、電マは……過去にやったことを彷彿とさせて、という感じですね」

「ひと通り試していらっしゃる」

「ええ、それは日記に全部……。こう、メモ書きにしてあるんですよ。何月何日にこれをやったと。『死ぬかと思った』とかみたいなことを」

「死ぬかと思ったとは」

「えっと、社会的に死ぬかと思ったのが電マなんですよね。なんか、音みたいなのとか……騒いだりとかで、迷惑をかけたのは電マ」

「声は出てしまった」

「そうですね。ちょっと、転落したりだとか」

「とりわけ、セクスティングでの敗北感は、事実を反映しているふうに読めますね」

「これなんか、大学生の時に調子こいてやっていたような気がするので……。それに近いことを正気になって考えたら、気持ち悪いな。よくよく考えたら、そんなに自慢げな身体でもなかったなあ……」

「それは、当時の彼氏なりに送った」

「彼氏というより好きな人に送ったんです。その時だけ盛り上がって……5年くらい賢者タイムでしたね」

 作中で記されているさまざまな行為を、自身が体験している。そのことを聞いても、まったく隠すことはしない。隠すことはしないのだが、自慢することもしない。それもまた、小谷の作品に反映されている独特の精神性である。女性の性を扱った時に、多くの作品は暴露的、露悪的、あるいは社会問題提起であったりする。ところが、小谷はどちらでもない。「こんな作品」を描くことに突っ走ってしまう情熱と「こんな作品」を描いてしまう恥ずかしさの間を揺らいでいる。それは、主観と客観の間の揺らぎのようなもの。その揺らぎが、作中で描かれる性を、今まで描かれてこなかっただけで、実は人知れず普遍的に存在していたものであるという存在感を与えている。

「セクスティングで、もう一歩を踏み出せない林檎の敗北感。それは、一線を越えた先に楽しい世界があるのがわかっているからこそなのでしょう」

「そうです。ですから、この主人公の林檎は非常にまともで、けっこうフツーの人間。真人間。身体はエロいけど……」

 

 世間の常識と、自分の知りたい世界との揺らぎの中に、作品世界を模索する小谷。高校までを過ごしたのは、今は市町村合併で二本松市となった福島県中通りの山間部。マンガ雑誌は薬局に「なかよし」(講談社)が数冊入る「なんかイノシシとかいるところ……」という土地で、小谷が夢見ていたのは、魔法使いになることだった。

「人と同じ行動をとるのがツラくて……大人になるにつれて、なれないなとわかってやめたんですけど」

 そういった過去を「一定の年齢まで信じていたから、危ないなとは思っています」とは言いつつも、当時の小谷は本気だった。小学校6年生の頃、10年に一度規模の台風が福島県に上陸した(平成10年台風5号だと思われる)。

「私はそろそろ空を飛べる、この風に乗って別の世界へ行ける!!」

 嵐の中、家を出た小谷は、強い決意を持って近所の山の崖から飛び降りた。空を飛ぶ事はできず、傘を三本ぶっ壊して大人に怒られただけだった。その他、悪事をやらかして全校集会を開かせたりした。「劣等生で悪童であった」と小谷は振り返る。

「親は、ちょっとオツムの具合がアレかなっと。両親は真人間だし、弟も真人間だし」

 現状維持が美徳の保守的な田舎の村で、小谷のような子どもは浮いていた。『私だってするんです』の単行本が発売になり、地元の大きな書店は、地元出身のマンガ家として大きく棚を割いている。サイン本の依頼もある。田舎に帰れば、仲良く話せる旧友もいる。それでも「東京でマンガ家をやっているという時点で、やっぱり浮いている」というのが、小谷の見立て。単行本の加筆されたページにも記されているが、作品の登場人物のモチーフには、故郷の友人たちもいる。時折、帰郷した時に、その友人たちと落ち合う。そんな時に、何気なく口に出る今の幸せや、これからの人生の目論見……旧友たちの思い描く幸せとの解離を感じている。

「そういうところに帰りづらいという思いはありますね」

 自ら「今でいうところのスクールカーストの最底辺みたいな、根暗」と、十代の青春を語る小谷。でも、その最底辺に属することで、逆にすんなりと見えてくるのが複雑な人間模様や、得体の知れない輝きを放つ人々の姿。だから『私だってするんです』に描かれるキャラクターの多くは、これまで自分が人生で出会い、興味を持った人々の中から生まれてくる。

 例えば、作中に登場する地味で目立つタイプでもないくせに、すでにセックスも体験していることがわかり、林檎を驚かせるクラスメイトの中村広子。そのモデルは、地味なのに性には発展的だった同級生。

 たとえ人口の少ない田舎町でも、学校に行けば作中に出てくるようにさまざまな興味深い同級生たちがいた。でも、キャパシティのない地域社会の中で、異端者が折り合いをつけて暮らすのは、甚だ難しい。進学や就職など、さまざまな方法で、生まれ育った土地を後にするのは必然である。小谷の場合、進学がそれだった。選んだのは、女子美術大学。それもまた、地元では異端な進学先。けれども、大学に入れば、そこは世間の常識などものともしない人々が溢れる世界。

「私の美大は全裸になって自分の肉体に色を塗ったり、芸術の方法が過激な子とか、フツーにレズビアンの子とかもいたんで……」

 そんな枷を解かれた世界で、小谷はマンガ家としての人生を明確に描き始めていた。もともと、マンガ家になろうと思ったのは、魔女を断念した直後。憧れの優等生の先輩が、マンガ家になりたいと言っていたのがきっかけ。

「自分にはないから、この世界ではリア充をって、害虫とかは一切出てこない、青春のぞわぞわする感じのを描いてました」

 それもまた、閉塞した村の中での見えない枷だったのか。上京してから小谷は、青年誌へとシフトして才能を開花させようとしていた。単に憧れるだけではなく、着実に階段を上っていた。講談社の新人賞「第23回講談社MANGA OPEN」での奨励賞を経て、09年からは『害虫女子コスモポリタン』の連載も得た。その間の修業時代。高橋しんのアシスタントをしていた時には、忘れられない思い出がある。高橋は時々、通常のアシスタントの仕事とは別に、複雑なキャラクターの心情を、表情で描く指示をしてくることがあった。ある時、高橋はプロットを小谷に渡してキャラクターの「泣いたような顔で笑う」コマを描いてみるよう指示した。

 小谷はあれこれと必死に考えて、高橋から指示された表情を描いた。それを見た高橋は「なるほど、これが泣き笑いの顔か」と呟いた。「その時、先生に認められたんだと思って、うれしかった」と小谷は言う。単にマンガ家とアシスタントの関係ではない。自分の下で働く後輩たちの成長を促すきっかけを与えることを惜しまない高橋。こうした経験は、着実に小谷を成長させていった。

 アシスタントとして修業を積む間に『害虫女子コスモポリタン』の連載も始まった。不定期連載とはいえ、アシスタントをしながらという、ぬるま湯のヤバさも感じて、小谷はマンガ家として独り立ちする決心をした。その時には、自分もこれからマンガ家として、着実にキャリアを積んでいくことができるという、希望もあった。でも、順風満帆にはいかなかった。

「まあ、不遇の時代が長かったですよね」

 2冊の単行本が出た後、講談社からの仕事は途絶えた。単行本が出た後に仕事が途絶えてしまったマンガ家は、ある意味で新人よりも苦労を強いられる。再び、さまざまな編集部に持ち込みに回っても、既存の作品の評価や売上で、足元を見られる。持ち込みに行った先の編集部で「うちでは厳しい」と突き返され、罵倒までされた。マンガ家仲間の中には、心が折れて田舎に帰る者もいれば、リストカットをする者もいた。毎日、納豆かチンゲン菜のどちらかばかりを食べてマンガを描き続ける日々。マンガ家としての矜持と財布が底を尽きそうになると、水商売を始めた。

 小谷が最初に水商売に心を引かれたのは、大学生の時であった。

「今でもそうですけど………多分、自分に自信がなかったからだと思うんです」

 水商売というのは、指名数などさまざまな形で自分に値段がつく世界。だから、自分が女性として、どれくらいの価値があるのか知ることができるのではないかと考えた。それは、東電OL殺人事件の被害者となった、あの女性に似たメンタリティ。ただ違うのは、あの女性が自分の肉体の価値を確認することを求めたのに対して、小谷は自分の女性としての価値を測りたかったということ。新宿や新橋、町田と、各地のスナックやラウンジを転々としながら、自分でも説明のつかない衝動を埋めようとしていた時期があった。

 そして、再び生活の糧を得る手段として足を踏み入れた水商売の世界。けれども、小谷はどっぷりと足を踏み入れはしなかった。ネオンの巷で働くうちに、そこで見る人間模様が小谷に、マンガをもっと描きたいという衝動を与えてくるのだ。マンガに軸足を置いては、また夜の世界へ。それを繰り返す中での体験が『私だってするんです』という作品の実を少しずつ育てていった。

 ある少し高級なクラブで働いている時だった。いまだバブル時代が続いているようなタイプの馴染み客がいた。その夜は、酔いも回っていたのか、客は小谷を執拗に夜に誘った。客とはいえ、まったくタイプではない男だった。それもあって、小谷は水商売のテクニックではなく、ごく自然な感じで言った。

「私、今日は自分でするんで、すみません」

 考えもしなかった小谷の言葉に、客の男は驚いた顔をしていった。

「そんな悲しい、そんな悲しいことを言うなよ。俺がいるだろ。パイプカットしてるんだぞ、俺は安心なんだぞ、イカせられる……」

 その客の言葉が、夜が明けても小谷の心中にずっと引っ掛かっていた。それより前に「男の人は自分たちはするけど、女の人がするっていうのを信じたくない」という話を聞いたことがあった。なんで、そんな齟齬が生じるのか気にかかっていた。自分は、とりわけ文章をオカズにやっている。中でも渡辺淳一の小説は「淳一、やるな」と思いながら、興奮してしまう。自分でマンガを描いている時にだって、事故のようにエロい気持ちになってしまうこともある。一方で、女性の側にも、何か引っ掛かるものがある。多くの男性と関係を持ち、それを誇るように話す女性であっても、オナニーの方法やオカズを聞くと、途端に否定的な態度を取ってくる。いくら巷にエロメディアが溢れているといっても、自由さはない。とりわけ、女性の性に感じるのは、価値基準が男性のフィルターを通した「自分がいかに愛されているか」といったものに限られていること。

 そうじゃない楽しい世界は必ずある。別に「私たちは!」と机を叩くようなものではない。仲間たちと、こういうことをやっているんだよ。面白い。自分もそういうことをしてみよう……そんな、前向きさのある自由で気持ちのよい世界があるはずなのに。

 神楽坂の早稲田通りに面した『くらげバンチ』のオフィスで、佐藤はいつものように業務をこなしていた。担当するマンガ家との打ち合わせ。原稿の進行の確認。いくつかの仕事をこなした後、持ち込み原稿を読む。封筒で送られてきたのは、最近は減った手描きの原稿。数作品あった中の、ひとつを読んで佐藤は思った。

「これは、モノになるかもしれない」

 マンガ家になりたいといっても、なれるのはホンの一握り。デビューしてからも、マンガ家として続けていくことができるのは、さらに一握り。すでに2冊の単行本を出した後、数年間の沈黙が続いているマンガ家。そんな人物の作品が、どんなものなのか。海の物とも山の物ともつかない。ともすれば、一度はデビューしたという安っぽいプライドは、妙な癖のついた我の強さばかりを肥大化させがち。でも、その作品は、佐藤の心臓に突き刺さった。

「女性のオナニーについて、女性自身が描いている」

 男性にとっては謎の部分。エロマンガなんかで、男性が好むスタイルで描かれることはあっても、その実像をする術もない。それを知ることができたら、面白いじゃないか。

 すぐに佐藤は、原稿の主……小谷に連絡をした。

「これ、すごく面白いと思います」

 そこから連載開始までは、1年あまり。何度も打ち合わせと描き直しが続いた。テーマには確固たるものがある。それを、エンターテインメントとして、どのように見せるか。『くらげバンチ』は、Webという特性も生かして実験的な作品が並ぶ。一種特異な作品を求めてアクセスしてくる読者に向けたエンターテインメントとは何かを探った。

 これまで、一貫して手描きで原稿を描いてきた小谷にとって、Webへの戸惑いもあった。自身もマンガは紙で読むことに慣れ親しんできた小谷。画面をスクロールしながら読むWebのスタイルは、自分の作風には向いていないのではないかという恐れもあった。

 打ち合わせを重ねて、ようやく連載が始まった。始まってしまうと、恐れは新たな発見と好奇心へと転換していった。紙媒体にはない、読者からのダイレクトな反応。もちろん、いい話ばかりではない。「悪口を言われるとツラくて創作に支障が出たり、匿名でしか好き勝手言えないような奴は肥溜めに落ちろと思うことがあります」という赤黒の感情も湧き出す。けれども、紙媒体とは違う読者の直接的すぎる反応は、小谷の創作意欲をさらに高めている。単純に「共感」されることに喜ぶのではない。読者自身がコメントの中で書き記す読者自身の行為。それが、小谷の探究心の新しいスイッチをオンにするのだ。

「……自分のリアルな恋愛とかセックスが充実していたら、生まれなかった作品だと思っています。そういうものに自信がないから、こういう性的な作品が描けるんだと思っているんです」

 これまで、付き合った男に話が及ぶと小谷は、少し笑いながらいった。

「まあ、そうですね。悲しいっていうか。ちょっと、乱暴だったっていうか……」

 そうした、人には言えない経験。暖かい家庭を築くこととはかけ離れた体験。それを、マンガ家の芸の糧として誇るわけではない。それは、広く世間から見れば恥ずかしいことかもしれないが、そのことをも糧にしていく性を持つ自分を、徹頭徹尾客観視している。その観察眼は、内面だけではなく周囲にも向けられている。オナニーを通じて明らかになるさまざまな性癖。そして、個人の日常。興味を惹かれて、昂ぶりは止まらない。でも、決して自分にはないものがある。上から見て、分析したり、自分のほうが優れているという気持ちを巧妙に隠しながら、見下したような同情をするような気持ちのようなものは、どこにもない。

「みんなそれぞれ違うところを『こーいう違いもあるのか』と楽しみ合えればと思います」

 そして、小谷はまた笑う。
(取材・文=昼間たかし)

メジャーシーンで結果を出した入江悠監督が語る埼玉ロケ作品『ビジランテ』で挑んだ新境地!!【後編】

──インタビュー後半は、入江監督に2017年を振り返ってもらえればと思います。6月に公開された『22年目の告白 私が殺人犯です』が興収1位をとったことは大きな勲章になったのではないでしょうか。

入江悠(以下、入江) 首の皮が繋がったかなと(笑)。『バトル・ロワイアル』(00)を撮った頃の深作欣二監督に「俺の頃は2~3本失敗しても、東映という会社があったからチャンスがまた貰えたけど、お前らはフリーだから1本でもコケると大変だよ」と言われたことがあったんです。メジャー映画を撮っていて、ヒット作が出せないようだと監督生命が終わってしまう―という危機感はずっとありました。『22年目の告白』が他の僕の作品とどこがどう違うという意識はないんですが、宣伝スタッフや主演の藤原竜也くんが作品のPRをすごく頑張ってくれたことにはとても感謝しています。今の日本はキラキラムービーが多いけど、『22年目の告白』のような犯罪サスペンスでもヒットすることが分かったことも大きな収穫でした。

──『22年目の告白』は地上波でテレビ放映されることは考慮せず、思い切ったバイオレンス描写を盛り込んだ。

入江 劇場公開でコケたら、地上波放送もないわけじゃないですか。あまり先のことを考えても仕方ないなと(笑)。子どもの頃からトラウマになるような殺人描写のある映画が好きだったので、そのくらい振り切ったものにしたいとはスタッフに話していました。北野武監督の『アウトレイジ最終章』も今年ヒットしているわけですし、飢えている人は多いと思うんです。テレビでは観ることができない、劇場でしか味わえないヒリヒリするような映画が観たいと思っている人はいっぱいるはずです。

──『22年目の告白』を撮る前に、デヴィッド・フィンチャー監督の『ゾディアック』(07)を見直したんですよね。

入江 はい。フィンチャー繋がりで言うと、『ビジランテ』で篠田麻里子さんに出てもらう前に、フィンチャー製作総指揮の政治サスペンス『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(13~17)を見ておいてくださいと伝えたんです。大統領を目指すケヴィン・スペイシーの妻役のロビン・ライトの悪女ぶりを参考にしてもらえればと思って。ヒロインもの、好きなんです。『緋牡丹博徒』(68)みたいな業を背負った女性に惹かれますね。

 

■キューバへの家族旅行と2017年のベスト映画

──『22年目の告白』が大ヒットしたことで、ワーナーで祝勝会が開かれた?

入江 ないです、ないです(笑)。夏に別の映画会社でもう1本映画を撮るつもりだったんですが、それが流れてしまって。『22年目の告白』が公開された後は暇だったんで、キューバ旅行に行きました。

──『サイタマノラッパー』シリーズは自宅でロケ合宿したりと、さんざん世話になったご家族との初の海外旅行ですね。

入江 これまで、本当に親のスネを齧って生きてきましたから(苦笑)。撮影で自宅をボロボロにするわ、スタッフやキャストを泊めて、親に食事を用意させ、足りない布団をご近所から掻き集めさせて……。『ビジランテ』もそれに近いことやってました。そろそろ親孝行しないとマズいなと、思い切ってキューバへ家族旅行したんです。日本に帰ってきたら、阪本順治監督がキューバで撮影した『エルネスト』が公開されていたんですが、「よく、こんな場所で撮影できたなぁ」とすごく面白く感じられましたね。キューバ旅行以外は、いろいろ映画を観て回っていました。

──入江監督の2017年のベスト映画は?

入江 そろそろ映画雑誌向けにベスト映画を選ばなくちゃいけないので、考えているところなんですが、強く印象に残っているのはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF映画『メッセージ』ですね。恵比寿ガーデンシネマで公開されていた韓国映画『わたしたち』も好きでした。女の子たちが主人公なんですが、表情がとても豊かなんです。『新感染 ファイナルエクスプレス』もよかったんですが、後半は泣かせようとする演出が目立つのがちょっと残念。でも、あれだけ観客をぐいぐい引き込んでいく脚本は素晴しい。『22年目の告白』のオリジナルにあたる『殺人の告白』(12)もそうですが、韓国映画はじっくり時間を掛けて、丁寧に脚本を練り込んでいる。そこは日本映画も見習わなくちゃいけないところだし、負けられないなという気にもなりますね。

──熊切和嘉監督の『武曲 MUKOKU』は高校の剣道部が舞台でしたが、剣道経験者の入江監督的にはどうでした?

入江 面白かったですよ。近藤龍人さんの撮影も素晴しかったし、剣道部の雰囲気が伝わってきました。熊切監督じゃないと撮れなかった作品でしょうね。熊切監督がその前に撮った『ディアスポリス DIRTY YELLOW BOYS』(16)もよかった。僕もあの原作コミックが好きで、映画化したいなと考えていたんです。熊切監督に先にやられてしまいましたね(笑)。

 

■ 『マイクの細道』東北ロケと入江監督の新しいステージ

──2017年は『SRサイタマノラッパー マイクの細道』がテレビ東京でオンエアされたことも、大きなトピックでした。ドラマの終盤、「SHO-GUNG」が川崎クラブチッタに登場してのライブシーンをスクリーンでもう一度観たいというファンの声はよく耳にします。

入江 『マイクの細道』は、最後のライブシーンに向けて物語が進んでいくドラマでしたからね。スクリーンで観たら、より盛り上がるでしょうね。

──地元・深谷で1日限定ながら『マイクの細道』の一挙上映をやったとか。

入江 やったみたいです。テレビドラマを映画館で上映するのは許可をもらうのが面倒だったりするので、よくできたなと感心していたんですが、無料上映という形にしてテレビ東京には黙認してもらったみたいですね(笑)。

──深谷市ってフリーダムな町だなぁ。『マイクの細道』第6話の冒頭でIKKUたちは釜石の被災地で合掌するシーンが1カットだけ映ります。時間があれば、被災地でのエピソードも撮りたかったのでは?

入江 釜石は撮影の半年くらい前から何度も行って取材もしていましたし、本当はそうしたかった。でも、深夜ドラマ25分の枠では、被災地で起きたこと、そして今も続いている問題を物語に置き換えるのがすごく難しくて。せめて、東北のこの場所には来たという足跡だけは残しておきたいと思い、1カットだけ撮ったんです。

──『22年目の告白』は入江監督が10代の頃に体験した阪神淡路大震災が物語の背景になっている。今回、『マイクの細道』で東北を回って感じたことは今後の課題になる?

入江 そうなると思います。青森では原子力施設のある六ヶ所村や三沢の米軍基地なども回ってきましたし、地元に帰っていたかつての仲間が東日本大震災で家族を亡くしたりもしているんですが、そのことにはまだ向き合うことができずにいます。どうしても実際に起きた事件や事象を咀嚼して、自分の作品として描くにはかなりの時間を要してしまうので、これからの課題だと言っていいと思います。その点、ハリウッドや韓国映画は、実際に起きたことを巧みにエンターテイメント化してしまう。あの知性には憧れますね。

──2017年は『ビジランテ』の撮影&公開、『サイタマノラッパー マイクの細道』の放映とDVD化、そして『22年目の告白』の成功と、新しいステージが見えてきた1年だったのではないでしょうか?

入江 『ビジランテ』はオリジナル作品ですし、『22年目の告白』もかなり思い切って脚色させてもらい、自分のやりたい道が見えてきたようには思います。ノアール感のある犯罪サスペンスに今年は照準を絞ることができたかなと。自分の監督作が年間2本公開されるのも初めてなんです。『ビジランテ』ともども、これからもよろしくお願いします。
(取材・文=長野辰次/撮影=長谷英史)

『ビジランテ』
脚本・監督/入江悠
出演/大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太、篠田麻里子、嶋田久作、間宮夕貴、吉村界人、菅田俊
配給/東京テアトル R15+ 12月9日(土)よりテアトル新宿ほか全国公開
C)2017「ビジランテ」製作委員会
https://vigilante-movie.com/index.php

■『ビジランテ』の公開を記念して、テアトル新宿にてトークショーを開催

ヤクザday
12月10日(日)  14:00の回上映後
ゲスト/般若、坂田聡、山口航太、龍 坐、大宮将司、蔵原 健、三溝浩二、裵ジョンミョン

ヤングday
12月16日(土)3回目上映後
ゲスト/吉村界人、間宮夕貴、大津尋葵、入江悠監督

デリヘルday
12月23日(土)4回目上映後
ゲスト/岡村いずみ、浅田結梨、市山京香、入江悠監督

●入江悠(いりえ・ゆう) 

1979年神奈川県生まれ、埼玉県深谷市出身。『JAPONICA VIRUS』(06)で長編監督デビュー。自伝的要素の強い青春映画『SRサイタマノラッパー』(09)が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」オフシアター・コンペティション部門でのグランプリ受賞を皮切りに、自主映画として異例のロングランヒットに。『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(10)、『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)と共に『SR』北関東三部作として熱烈な支持を集めた。『日々ロック』(14)、『ジョーカー・ゲーム』(15)でメジャーシーンに進出。『22年目の告白 私が殺人犯です』(17)は3週連続興収1位を記録するヒット作となった。その他の主な監督作に『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンローロは鳴り止まないっ』(11)、『太陽』(16)など。『SRサイタマノラッパー マイクの細道』『22年目の告白』が共に現在DVDが絶賛リリース中。

『奥様は、取り扱い注意』よりびっくり!? 結婚後に夫のウソと“本当の職業”が判明!

 綾瀬はるか主演の連続ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)。特殊工作員という過去を持つ専業主婦の綾瀬演じる主人公・伊佐山菜美が、同じセレブ住宅街に暮らす、主婦友の大原優里(広末涼子)や佐藤京子(本田翼)と共に、主婦の間で起きるさまざまなトラブルを解決していくというストーリー。

 12月6日放送の最終回で、夫・菜美は勇輝(西島秀俊)の本当の姿を、かつての仕事仲間・小雪(西尾まり)から知らされる。勇輝は菜美に、任務のために近づいたが本気で愛してしまった苦悩を打ち明け、“普通の主婦”としてドイツで暮らすことを提案する。一方、この街に潜む怪しい男・横溝(玉山鉄二)から、浮気の動画をネタに主婦売春を要求された優里は、横溝と対決するという展開だ。

 夫の職業が聞かされていたものと違う――このようなことが実際にあるのだろうか? 今回話を聞いたのは、結婚後に夫の本当の職業が判明し、泥沼の末に離婚したという菜穂さん(仮名・26歳)だ。

「私のアルバイト先の飲食店に、夫が客として来店したのが最初の出会いです。出会った頃の夫はおしゃれで、バイト仲間の間でもかっこいいと評判でした。ライバルは多かったけれど、私からアプローチして付き合うことになったのです」

 付き合った当初、菜穂さんにとって、彼は理想の男性だったという。

「初めてのデートは、なかなか予約が取れない隠れ家レストラン、迎えに来てくれた車はレクサス。すべてが理想の人だと思いました。彼は某有名アパレル会社勤務で、他社からヘッドハンティングされるほどのエリートだと言っていました。一方、私は大学卒業後もフラフラしていたフリーター。いっそのこと、このまま専業主婦になるのもいいかなと、思い切って彼と結婚することにしたんです!」

 このような菜穂さんの軽はずみな行動や世間知らずな性格が、彼の嘘に気づかなかった要因かもしれない。結婚話はトントン拍子で進み、2人は交際わずか2カ月で婚姻届を提出した。

「彼の嘘が発覚したのは、新居の引っ越し手続きの時でした。初めに気づいたのは私の父です。保証人の欄に名前を書いてもらう時、父が彼の会社を念のため調べたそうです。そこで知った事実……なんと彼はアパレル会社勤務ではなく、派遣会社の販売員だったんです。すぐに彼を問い詰めて、事実を聞いた時は愕然としましたね。ヘッドハンティングも大げさにに話を盛っていて、別のアパレル会社から『就職面接を受けてみないか?』と言われただけだったそうです。それも、ほかの人に決まったとか。しかし、彼は反省する様子もなく『お金目当てで結婚したの?』と言ってきて、返す言葉がありませんでしたね……」

 事実を知って菜穂さんの両親は反対したが、彼が正社員になるまでは共働きをしようと決意した。だが、さらなる悲劇が起こる。

「2人で遠出した帰り道、彼の居眠り運転が原因で、交通事故に遭ったんです。私は軽傷でしたが、彼は骨折を負う重傷。すぐに彼の両親がやってきました。そこでさらに驚きの事実が……。彼のものだと思っていたレクサスは、なんと彼の実家の車だったんです! 両親に平謝りする彼の姿を見て、どんどん気持ちが冷めていきましたね。単独事故なのでほとんど保険も下りず、彼はけがで働けない状態。嘘がバレてプライドがボロボロになった彼は、事故以来、憔悴しきってしまい……彼の身の回りの世話は、すべて彼の両親が見るようになりました」

 自分だけが働く生活と、毎日世話をしに来る彼の両親に対し、ついに菜穂さんにも限界が訪れた。

「嘘をつかれていた分と事故の慰謝料を請求し、離婚を突きつけました。すると彼の両親から『息子のほうが重傷だ』『知らずに結婚したあなたも悪い』と責め立てられて……。ついに私の両親も出てきて、両家で揉めに揉めて、事故の慰謝料だけもらう話でまとまりました。入籍から4カ月のスピード離婚ですよ」

 夫に職業を隠されていて、離婚した女性は少なくない。カナさん(仮名・32歳)も、その1人だ。

「飲食店で働いていると言っていた夫の本当の仕事は、実はゲイバー経営だったんです! もちろん夫もゲイで、私と結婚したのは、親のための偽装結婚だったそうです。どうりで子どもを作ることに積極的じゃないはずですよ。結局、離婚しましたが、夫の店のスタッフの中には、奥さんに内緒で働いている人も多いみたいです」

 ほかにも、夫にはパートと偽っているが、実は昼キャバ勤務という主婦もいた。夫婦間の“職業偽装”は案外身近なところに潜んでいるのかもしれない。
(カワノアユミ)