“体調不良”のはずが……音信不通の地下アイドルメンバーが「AVの契約金」受け取ったまま失踪中!?

 体調不良で休業中と伝えられていた地下アイドルグループのメンバー女性ひとりが、実際には関係者と連絡の取れない失踪状態にあり、さらに「AVデビューの契約金を受け取ったままの状態」だという仰天話が聞こえてきた。

「彼女は、昨年末から音信不通です。トラブルが表になると、グループ自体の仕事が危なくなるので、運営側は隠したままですけどね」

 事情を打ち明けたのは、元マネジャー男性。アイドルライターもやっている男性は、約1年前までグループを担当していた。

「ただ、昨年の夏に多忙で担当から降りて、グループは別の小さなプロダクション所属となったんです」

 グループは2016年に結成したばかりの女性5人組で、活動の舞台は首都圏の小さなライブ会場程度。世間での知名度はまだ低い。音信不通なのは、その中のひとりである24歳(公称21歳)のメンバーAで、昨年の秋ごろから姿を消し、事務所サイドは「体調不良」として残った4人での活動を継続させていた。ただ、元マネジャー男性が退職後も現役メンバーらと連絡を取っていた中で、その真相が「失踪」だと判明したのだった。

「さらにわかったのは、所属プロダクションがAV女優の手配も手掛けているところで、AにAVデビューの話を持ち掛け、本人もそれを受けたというんです。メーカーとの契約金は300万円で、Aはそのうち100万円を受け取ったまま、撮影を前に連絡が取れなくなったということなんですが、実はプロダクション側は、最初から“元アイドルのAVデビュー作”を撮る目的でグループごと獲得したようなんです。今年1月か2月ごろまでに5本ぐらいのAV作品を撮影しながら、発売ギリギリまでアイドル活動させて商品価値を高める予定だったようですね。ただ、本人がいなくなるとメーカーとの違約金が発生してしまうため、プロダクションは今、必死に別のメンバーに代替出演の説得をしているとか。下手に失踪を知られてしまうと、アイドルグループ自体の商品価値がなくなるので、Aの不在は体調不良ということのままにしているんでしょう」

 この衝撃の裏事情は定かでない部分も多いのだが、いずれにせよAは現在も音信不通。

「AVデビューを嫌がったのか、別の理由なのか、連絡が取れないことにはわかりません。本当はネット上で失踪を明かして無事かどうか呼び掛けたいぐらいですが、自分はもうマネジャーではないし、他のビジネスが絡んでいるとなると、出しゃばったことはできない」と元マネジャー。

 このまま「体調不良」を装うことにも限界がありそうなものだが、グループの人気が低いため、世間ではほとんど気にされることはないまま、ごく一部のファンだけが「復帰を待っています」などと声を上げている。

 現在、AV界では出演強要や奴隷契約が人権問題となっているだけに、今回の問題がそれに類するものでないことと、何より本人の無事を願いたい。
(文=藤堂香貴/NEWSIDER Tokyo)

“制服すらNG”で沈むAV業界……最後の希望は「同人AV」しかないのか

 ここ最近、夜のお供にアダルトビデオを観賞していて「これは、ちょっとな……」といいたくなるほど、ある変化が気になって仕方ない人が多いのではなかろうか。

 まず、さまざまな作品で増えているのが冒頭などに字幕で表示される「同意を得て撮影しています」の文字。これは、社会問題化する出演強要に対応したものだが、それに加えて表現の方法やタイトルにまで、さまざまな規制が及んでいるのだ。

「どんな表現がNGにされるのかは、警察当局の胸ひとつ。いつ逮捕されるのか危ない橋を渡っていると思います。いつまでも、続けられる仕事じゃないですよね」

 あるAV制作会社の関係者からは、そんな話も。そうした摘発の恐れがある中で、審査機関による審査を経て流通するAVには、多くの制約が課せられるようになっているのだ。

「タイトルに“ロリ”などの表現は、もってのほか。それに加えて、昨年からは女子高生などをイメージさせる制服も許されなくなりました。これまでの制作では、ルーティーンでシチュエーションのひとつに制服を入れることもありましたが、もう使うこともできませんよ」(前述関係者)

 加えて、凌辱的な表現にも極めて厳しい目が向けられるようになった。結局のところ、海外のポルノのようなノーマルな設定でのセックス表現以外は許されなくなっていく流れが現状といえる。

 本来なら「業界の危機」といえるのだが、そうならないのには、理由がある。

「流通が寡占化しているのが理由です。ある流通会社は傘下の制作会社のAVで、未発売のものを2,000本近くストックしているともいわれています。当局に目をつけられそうなAVをはじいても、さほど損はしないという態度です。泣くのは制作会社だけですよ」(同関係者)

 そうした中で、制作会社のフロンティアとなっているのが同人AVである。

「げっちゅ屋のダウンロード販売の同人AVのタイトル数はうなぎのぼり。理由は、不満を感じる制作会社が同人へと転換しているからです。その、げっちゅ屋は法務を強化し、アダルトビデオのメーカーなどでつくる団体・NPO法人知的財産振興協会(IPPA)の基準を遵守しつつも、表現の許容範囲が広いのです」(同)

 すでに多くの制作会社が廃業を余儀なくされているというAV業界だが、その実態は同人AVへの移行だという。締め付けを経て、新たな形でAVが進化することになるのか。
(文=特別取材班)

男たち女たちはなぜ競うのか? カンパニー松尾がキャノンボール、アイドル、テレクラ、AVを語る【後編】

(前編はこちらから)

──半ば監禁された状態の合宿生活の中で、アイドルたちもおかしくなっていったようですね。後半はガラリと雰囲気が変わり、「横浜ステージ」と称して本来の何でもありな『キャノンボール』スタイルになっていく。これは事前に予定していたもの?

松尾 そうです。これは事前のルール会議で、ビーパップみのるが「アイドルと6日間闘ったら疲弊するから、最後に自分たち本来の闘いを用意しましょう」と話したことから生まれたものです。最終ステージは従来の『テレクラキャノンボール』を踏襲したものを設定し、それを楽しみに僕らは合宿を乗り切ったんです(笑)。内容が内容だけに、渡辺淳之介さんにも高根プロデューサーにも事前に伝え、製作費もその部分に関しては「ハマジム」から持ち出しているんです。楽しみにしていたパートでしたが、まぁ予想を上回ることが次々と起こりました。

──予想外のハプニングが起きることが『キャノンボール』の醍醐味ですね。『BiSキャノンボール』でファーストサマーウイカが松尾さんに激怒するシーンがすごく印象に残っています。ウイカの怒った顔がとても美しかった!

松尾 僕はウイカを怒らせようと思って、撮っていたわけじゃないんです。「ウイカとハメ撮りしたいなぁ」と思っていたところ、ああいう予想外の展開になってしまった(笑)。ウイカは僕に怒っていたわけではなく、解散ライブ前夜にビーバップみのるがテンテンコに仕掛け、一睡もさせなかったことをライブ後に知って怒っていたんです。自分のことではなく、BiSのことを思って彼女は怒っていたんです。

──その結果、アイドルが本気になった表情、しかも美しい素顔をカメラに収めることに成功したわけですね。

松尾 先日、『BiSキャノンボール』のオーディオコメンタリー上映があって、僕もプー・ルイと一緒に参加したんですが、プー・ルイはあのシーンを観ながら爆笑していましたね。BiSってトラブルを乗り越えることで成長してきたアイドルグループだったから、プー・ルイにしてみれば「蚊に刺されたとも思っていない」程度のことだったそうです。

──BiSのリーダーであるプー・ルイとは『BiSキャノンボール』に始まり、新生BiSオーディションを追った『劇場版BiS誕生の詩』(17)、そして『アイドルキャノンボール』と一緒だったわけですが、プー・ルイはプー・ルイのまま変わらない?

松尾 やっぱり、BiSといえば、プー・ルイなんですよ。彼女が始めたアイドルユニットだし、他のメンバーはいろいろ変わっていく中、BiSの精神性はプー・ルイそのもの。BiSにカメラを向けていても、どうしてもプー・ルイのことを見てしまいますね。

■テレクラはかつて大人の社交場だった

 

──『アイドルキャノンボール』の最終ステージの舞台は横浜へ。まだ、横浜にはテレクラがあるんですか?

松尾 あります。一軒だけですが。けっこー電話はつながって、5分で出会えました。結局、ツイッターで募集して、連絡してくれた女性を撮ったわけですが、テレクラ内でツイッターを使いました。意味はありませんが(笑)。

──テレクラで出会った女性たちとのハメ撮りAV『私を女優にしてください』などの人気シリーズを手掛けた松尾監督の、テレクラに対するこだわりが感じられます。

松尾 やっぱり、テレクラ愛はありますし、出逢いのツールとして、辛うじてまだ機能していますね。かつてはテレクラはひとつの文化、大人の社交場だったんです。地方のテレクラは本当に面白かった。お客さん同士が集まって、みんなで伝説自慢するんです。「あの女はやめたほうがいい」とか情報交換もしていました。今はお店だけが残って、テレクラ文化は消えてしまいましたね。テレクラの代わりに、みんなSNSを活用しています。テレクラ以上に出会い系は盛り上がっていますね。

──そして、いよいよ最終審査発表。大号泣する監督もいれば、「えっ、どうしてそこまでやるの?」と驚きの行動に出る監督もいる。映像監督としての“業”が一線を越えさせてしまうんでしょうか?

松尾 そういうことでしょうね。やっぱり『キャノンボール』って、男同士の意地の張り合いなんですよ。誰が優勝したかはここでは伏せますが、彼は審査員として参加していた渡辺淳之介さんも巻き込んでしまいますからね。自分の持っている映像監督としての資質をいかんなく発揮してみせた。ここまでやってしまったら、次回の『キャノンボール』はどうなってしまうんだという恐怖がありますね(笑)。

■カンパニー松尾に影響を与えた監督とは?

 

──2016年に行なわれた新生BiSのオーディション合宿に密着取材した『BiS誕生の詩』を松尾監督は撮り、同じ合宿に同行していたエリザベス宮地監督は『WHO KiLLED IDOL SiS消滅』(17)として撮り上げた。同じ題材を扱いながらも監督が違えば、違った作品として完成する。2人の作品を見比べると、松尾さんのほうがやはり女の子をかわいく撮っているというか、エロく感じさせます。

松尾 やっぱり監督が違えば、編集も違ってくるし、カットの選び方も変わってきます。僕は女の子がかわいいい表情をしているカットを探すのが大好きなんです。監督なんだから、当たり前と言えば当たり前なんですけどね。なるべく、女の子のいい表情を使うようにしています。AV監督もいろいろで、バクシーシ山下は女の子のかわいい映像は撮れないし、撮らなくていい監督でしょう(笑)。その点、僕はポップなAVをつくり続けてきたこともあって、女の子がかわいく映っているイメージシーンもよく挿入してきたんです。

──カンパニー松尾=ハメ撮り、で語られがちですが、カンパニー松尾監督作品は編集や選曲もいい。

松尾 そういう部分で、ごまかしているんですよ(笑)。

──テレビドラマ&劇場版『モテキ』をヒットさせた大根仁監督は、「カンパニー松尾の影響を受けた」と公言しています。逆にカンパニー松尾さんが影響を受けた映画監督を教えてください。

松尾 大根さんは今は違うと思いますけど、『モテキ』の頃はそんなふうに言ってくれて、うれしかったですね。僕が影響を受けた映画監督……。申し訳ないけど、映画はほとんど観てこなかったんです。スピルバーグは一本も観てないし、コッポラもほぼ観ていません。映画監督じゃなくて撮影監督ですが、挙げるとすればクリストファー・ドイルでしょうね。手持ちカメラを使う、広角レンズを愛用するなど、AV監督に通じるものを感じさせます。もちろん、ドイルが撮った映像は比べようがないくらい芸術的ですよ。ドイルは自分でも監督するようになりましたが、僕はウォン・カーウァイ監督とコンビを組んでいた『欲望の翼』(90)や『ブエノスアイレス』(97)の頃がいちばん好きですね。

──松尾さんが「ハマジム」を立ち上げて15年。AV業界の現状は?

松尾 会社経営は年々厳しくなっています。2000年代は1本出すと2000本~2500本は売れていたのが、今は700本程度になっています。売り上げは三分の一に下がってしまっています。全盛期と比べると四分の一です。配信のほうで何とかカバーしていますが、それでも収益は半分程度。多分、AV業界はどこもそんな感じだと思います。収益が半分に減ったら、普通なら会社が潰れるところでしょうが、うちは小さい会社なので何とかやっています。大きな会社は薄利多売でやっていくか、規模を縮小するかしかないでしょうね。劇場版が当たったことで、「ハマジム」としても助かりましたが、単館系での公開なので、すごい収益というわけではありません。AVの可能性を広げるという目的もあって劇場版をやっていますが、うちは本来AVメーカーなので、AVで生き残りたいというのが本音なんです。

──最近のハリウッドでは、セクハラが大きな問題となっていますが……。

松尾 AV業界に限らず、セクハラ、パワハラは、どこの業界でも起きうると思います。AVではセクハラっぽく撮っているだけで、実際にセクハラ、パワハラしていれば、AV業界内で問題になって、干されることになりますね。AVの撮影に限ってですが、「いや」「やめてください」はOKなんです。その先を撮るのがAVですから。中には「殺して!」なんて言う女性もいますよ(笑)。なので、本当にNGな場合は「ストップ!」と言うようにしてもらっています。

──カンパニー松尾はAV監督としても、まだまだ現役であり続ける?

松尾 僕も50歳を過ぎてしんどくはなってきましたが、まだ月1~2本ペースで新作を撮っています。いろんな女性と出会うので、仕事に飽きることはないんです。女性とSEXしてお金がもらえるなんて、幸せなこと。今後も頑張るつもりです(笑)。

──劇場版を楽しんだ人は、カンパニー松尾監督のAV作品も観てほしいなと思います。

松尾 そうですね。『キャノンボール』をきっかけに、AVも観てもらえるとうれしいです。「ハマジム」にアクセスすれば、配信もしていますので。また僕に限らず、『キャノンボール』に参加している監督たちの本業のほうの作品も、ぜひ観てほしいなと思いますね。
(取材・文=長野辰次/撮影=尾藤能暢)

『劇場版アイドルキャノンボール2017』
監督/カンパニー松尾
出演/BiS、BiSH、GANG PARADE、WACKオーディション参加者、渡辺淳之介、高根順次、平澤大輔、今田哲史、カンパニー松尾、バグシーシ山下、アキヒト、梁井一、嵐山みちる、岩淵弘樹、エリザベス宮地
配給/日活 2月3日より渋谷HUMAXシネマほか全国順次公開中 R15+
(C)2017 WACK INC. / SPACE SHOWER NETWORKS INC.
http://idol-cannon.jp

●カンパニー松尾
1965年愛知県春日井市出身。テレビ番組の製作会社勤務を経て、AV制作会社で働くようになり、87年に安達かおる率いるV&Rプランンングに入社。88年に『あぶない放課後2』で監督デビュー。全国のテレクラを回った『私を女優にして下さい』や『燃えよテレクラ』は人気シリーズとなる。95年にV&Rプランニングを退社し、フリーのAV監督に。2003年にAVメーカー「HMJM(ハマジム)」を立ち上げ、現在に至る。レース形式でAV監督たちが目的地までのスピードとナンパした女性とのエッチ体験を競い合う『テレクラキャノンボール』は97年からスタート。『テレクラキャノンボール2009 賞品はまり子Gカップ』はその年の「AVグランプリ」にてプレス賞を受賞。『テレクラキャノンボール2013 賞品は神谷まゆと新山かえで』は2014年に劇場公開され、大反響を呼んだ。その他、劇場公開された監督作に『劇場版BiSキャノンボール』(15)、『劇場版BiS誕生の詩』(17)がある。
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男たち女たちはなぜ競うのか? カンパニー松尾がキャノンボール、アイドル、テレクラ、AVを語る【前編】

 AV作品ながら映画館で上映された『劇場版テレクラキャノンボール2013』(14)は記録的な大ヒット、続く人気アイドルグループ・BiSの解散ライブに密着取材した『劇場版BiSキャノンボール2014』(15)はテアトル新宿で上映され、スマッシュヒットとなった。“ハメ撮り”AVの巨匠として知られていたカンパニー松尾は、今や映画シーンでも注目を浴びる存在となっている。そんなカンパニー松尾の最新劇場公開作となるのが、2月3日より公開が始まった『劇場版アイドルキャノンボール2017』。BiS、BiSH、GANG PAREDEというアイドルグループの新メンバーを選抜するオーディション合宿に、カンパニー松尾ら超個性派の映像監督たちが同行。それぞれのアプローチ方法で、独自の映像表現を競い合うというエンターテイメント型ドキュメンタリーとなっている。日刊サイゾー初登場となるカンパニー松尾が、映像監督の“業”が炸裂する『キャノンボール』スタイルについて、プー・ルイをはじめとするアイドルについて、消えつつあるテレクラ文化について、そしてAV業界の現状について語った。

──『テレクラキャノンボール』『BiSキャノンボール』が劇場公開され、大反響を呼びました。カンパニー松尾監督は、どのように受け止めているんでしょうか?

カンパニー松尾(以下、松尾) うれしいですよ。うれしいから、続けているんです。それまでAVでそれなりにやってきたつもりではいましたが、下水道をひたすら走っているような感覚というか、狭くぬるい場所にずっと留まっていた感じだったのが、映画館で大きな反響をもらえて、すごく新鮮だったんです。それまでのAVって“抜く”ためのものだったわけですが、そうじゃないAVを僕は撮り続けて、そのAVのまま劇場公開され、僕がAVの可能性を広げたいと思ってやってきた部分に対して、ちゃんと反応してもらえた。これは、うれしかったですね。映画監督が3~5年がかりで映画を撮る気持ちが分かった気がしました。AVってモニター越しに1人で観てもらうものだったのが、劇場では観客の数だけ笑いが倍増し、驚きの声も大きくなる。『テレクラキャノンボール』を初めて劇場公開したときの興奮が忘れられず、続けているんだと思いますね。

──満席札止めになるほどヒットした『BiSキャノンボール』ですが、人気アイドルの解散ライブ前夜のホテルをAV監督たちが密着取材するという内容は、ファンの間で賛否両論が起きたわけですが……。

松尾 普通に考えれば、大事な解散ライブの前夜にホテルに押し入って、何やってくれたんだってことですよね。しかも、ビーバップみのるはメンバーの1人を朝まで寝かせなかった。でも、BiSってアイドルらしくない破天荒さが売りで人気を得たグループだったわけです。公開当時、濃いファンは「なんでハメ撮り監督と一緒にいるのにSEXしないんだ」と怒った。自分が推しているアイドルが壊れていく様を応援しているコアなファンもいたんです。アイドルにハメ撮りを迫るなんてと怒るファンもいれば、なぜハメなかった怒るファンもいた。両方から怒られてしまった(笑)。

──それでもまた、BiSのマネージャー・渡辺淳之介&スペースシャワーTVの高根順次プロデューサーから、新メンバーオーディション合宿の撮影取材のオファーが届いた。松尾さん以上に面白いドキュメンタリーを撮れる人がいないということですよね?

松尾 いや、そんなことはないと思います。僕より面白いものを撮れる人はいっぱいいるでしょう。でも、どうしてでしょうね? 渡辺さんも、高根さんも、そしてBiSたちも、他の人たちがやらないような面白いことをやりたい人たちなんです、きっと。今はいろいろとコンプライアンスとかがうるさい時代だけど、僕個人はコンプライアンスとかには囚われない人間なんです。もちろん、人間としてのコンプライアンスはありますよ。でも、映像を撮る、ドキュメンタリーをつくるという前提のある限りでは、モラルに縛られていてはつまんないと思うんです。多分、そこを期待されているんでしょうね。

──いわば、撮る側も撮らせる側も“共犯関係”にあるわけですね。

松尾 そういうことだと思います。特に渡辺さんとの関係はそうでしょうね。彼は自分のプロダクションに所属するアイドルたちは決して脱がないと信じているわけです。信じているから、ハメ撮り監督である僕らにアイドルを差し出すことができる。言ってみれば、渡辺さんは最高のM嬢たちを僕らに差し出してくれているんです。やれるものなら、やってみろと(笑)。

──劇場に足を運ぶ観客たちもまた共犯関係となる。

松尾 そうですね。1人で観るより、大勢で観たほうが『キャノンボール』は断然面白いですしね。

■非AV監督が『キャノンボール』に新しい波を起こす!?

 

──今回の『アイドルキャノンボール』に参加した監督たちですが、『テレクラキャノンボール2013』からずいぶん顔ぶれが変わってきました。

松尾 変わりました。『テレクラキャノンボール2013』は僕やバクシーシ山下ら50代の監督、そして40代の中堅監督、30代の若手監督たちの世代間抗争も見どころになっていました。40代のビーバップみのる、タートル今田は『BiSキャノンボール』でも活躍しましたが、今回は2人とも人生いろいろありまして出場していません。その代わりに参戦したのが『遭難フリーター』(09)という社会派ドキュメンタリーで監督デビューした岩淵弘樹、普段はアーティストのプロモーションビデオを撮っているエリザベス宮地という若手の非AV監督たちなんです。今回は『テレクラキャノンボール』ではなく『アイドルキャノンボール』ということもあり、監督の幅も広げています。パンツを脱ぐ脱がないに関係なく闘うことができる新ルールになっています。

──『遭難フリーター』は秋葉原殺傷事件後に派遣社員の苛酷さが社会問題になっていたこともあって、日刊サイゾーでも取り上げました。岩淵監督はその後、松尾さんのいる「ハマジム」の社員になっていたんですね?

松尾 岩淵は派遣社員、介護関係の仕事を経て、2014年ごろかな、「ハマジム」に社員として入ってもらい、ネット配信の業務を担当してもらいました。ネット配信の数字が残念ながら目標値に達しなかったので1年間の契約で終わりましたが、岩淵は非常に仕事ができ、酒癖は悪いけれどとても熱いものを持っている男です。もう1人のエリザベス宮地は社員経験することなく、ずっとフリーの映像監督としてやってきた男。『BiSキャノンボール』ではサポートカメラマンとして入ってもらいました。宮地は中2病より、もっとすごい小6病をこじらせ続けているような男です。会社経験がないこともあって、小中学生の感覚をそのまま持っているわけです。『キャノンボール』は人選が重要ですが、この2人は『キャノンボール』のことをよく理解しているし、心根の部分ではとても健全な人間なんです。それに『キャノンボール』って、例えばSEX自慢のAV男優を参加させても面白くないんです。男優ってカメラをスタートさせ、カットの声を掛けるまでは積極的に動きますが、『キャノンボール』は「スタート」の声を掛ける前から、そしてカットを掛けた後も撮り続けないとダメなんです。AV監督を経験していない岩淵と宮地ですが、彼らにはそれができる。彼らがパンツを脱ぐのか脱がないのかも含めて、今回の『アイドルキャノンボール』の見どころになっていると思います。

──『テレクラキャノンボール2013』で活躍した若手AV監督の嵐山みちるは『BiSキャノンボール』に続いての参戦ですが、わずか数年見ないうちに、頬が痩け、眼光をギラつかせた別人のような外見になっていることにも驚きました。AV業界のハードさを感じさせます。

松尾 今、AV業界は薄利多売の時代になっていて、嵐山みちるは月8本ペースでAVを撮っているんです。月8本ペースは異常です。人間が壊れるペースですよ。普通は半年か1年しか保たないはずですが、彼はもう2年間もそのペースで撮り続けています。アイドルのようなルックスだったのに、忙しすぎて愛嬌がなくなってしまっている。そういった時間の流れも感じてもらえると面白いかなと(笑)。

■アイドル病棟と化した6日間の合宿生活

 

──もはや人間ならざるAV監督や社会派ドキュメンタリーから流れてきた監督たちがカメラで追うのは、彼らとは真逆な清純さを売りにしたアイドルやアイドル候補生たち!

松尾 水と油の関係です。相容れない素材でドレッシングを作ろうっていうんだから、まぁ分裂しますよね(笑)。

──一見、清純で健気そうに見えるアイドルたちですが、彼女たちもまた競い合う。勝利者チームは敗者チームの持ち曲を奪うことができるというルールによって、グループ間で激しい抗争が勃発し、思いがけず大きな問題に発展していく。一度自分が手に入れたものは絶対に他人に渡したくないという、女の“業”を感じさせました。

松尾 アイドルたちの競争意識を煽るために導入された新ルールでしたが、合宿所内が曲奪い合い合戦に向かってしまい、そのことに僕は戸惑ってしまった。でも、そんな予想外の展開のお陰で、もう一本映画が公開されることになったので、結果的には良かったかなと。

──6日間のオーディション合宿はどうでしたか?

松尾 つらかった(苦笑)。近くにコンビニがないような一般の合宿所だったんですが、食事がね。箸が進まない上に、量がハンパなく多い。それを毎朝8時、昼12時、夕方6時と毎日決まった時間に同じメニューを、みんなで食べるという……。刑務所とは言わないけど、軍隊のような生活でした。人間ね、食生活が満たされていないと脳の働きも低下して、闘う気力も湧いてこないんですよ。

──アイドルのオーディション合宿というよりは、隔離病棟のように見えました。

松尾 ほんとそう。合宿所を抜け出して、コンビニまで行って帰ってきた人は、すごく生き生きして戻ってくるんですよ。一度でも外の空気を吸うと、「合宿所には戻りたくない」とみんな思ってしまう。僕も1~2度、コンビニへ行きましたが、セブンイレブンで呑んだコーヒーがすごく美味しかった。合宿所に戻るのがイヤになりましたね。食事のシーンを盛り上げるために激辛のデスソースを用意したんですが、あれもつらかった。カレー好きな僕が食べても、死ぬかと思いましたよ。アイドルたちはがんがんデスソースの入った食事を平らげていましたけど、真似しないほうがいい。彼女たち、最初は嫌っていたのに、途中から進んでデスソースを手にするようになりましたからね。プー・ルイも「あの合宿はおかしかった」と話しています。

(インタビュー後編へ続く/取材・文=長野辰次/撮影=尾藤能暢)

『劇場版アイドルキャノンボール2017』
監督/カンパニー松尾
出演/BiS、BiSH、GANG PARADE、WACKオーディション参加者、渡辺淳之介、高根順次、平澤大輔、今田哲史、カンパニー松尾、バグシーシ山下、アキヒト、梁井一、嵐山みちる、岩淵弘樹、エリザベス宮地
配給/日活 2月3日より渋谷HUMAXシネマほか全国順次公開中
C)2017 WACK INC. / SPACE SHOWER NETWORKS INC.
http://idol-cannon.jp

●カンパニー松尾
1965年愛知県春日井市出身。テレビ番組の製作会社勤務を経て、AV制作会社で働くようになり、87年に安達かおる率いるV&Rプランンングに入社。88年に『あぶない放課後2』で監督デビュー。全国のテレクラを回った『私を女優にして下さい』や『燃えよテレクラ』は人気シリーズとなる。95年にV&Rプランニングを退社し、フリーのAV監督に。2003年にAVメーカー「HMJM(ハマジム)」を立ち上げ、現在に至る。レース形式でAV監督たちが目的地までのスピードとナンパした女性とのエッチ体験を競い合う『テレクラキャノンボール』は97年からスタート。『テレクラキャノンボール2009 賞品はまり子Gカップ』はその年の「AVグランプリ」にてプレス賞を受賞。『テレクラキャノンボール2013 賞品は神谷まゆと新山かえで』は2014年に劇場公開され、大反響を呼んだ。その他、劇場公開された監督作に『劇場版BiSキャノンボール』(15)、『劇場版BiS誕生の詩』(17)がある。
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男たち女たちはなぜ競うのか? カンパニー松尾がキャノンボール、アイドル、テレクラ、AVを語る【前編】

 AV作品ながら映画館で上映された『劇場版テレクラキャノンボール2013』(14)は記録的な大ヒット、続く人気アイドルグループ・BiSの解散ライブに密着取材した『劇場版BiSキャノンボール2014』(15)はテアトル新宿で上映され、スマッシュヒットとなった。“ハメ撮り”AVの巨匠として知られていたカンパニー松尾は、今や映画シーンでも注目を浴びる存在となっている。そんなカンパニー松尾の最新劇場公開作となるのが、2月3日より公開が始まった『劇場版アイドルキャノンボール2017』。BiS、BiSH、GANG PAREDEというアイドルグループの新メンバーを選抜するオーディション合宿に、カンパニー松尾ら超個性派の映像監督たちが同行。それぞれのアプローチ方法で、独自の映像表現を競い合うというエンターテイメント型ドキュメンタリーとなっている。日刊サイゾー初登場となるカンパニー松尾が、映像監督の“業”が炸裂する『キャノンボール』スタイルについて、プー・ルイをはじめとするアイドルについて、消えつつあるテレクラ文化について、そしてAV業界の現状について語った。

──『テレクラキャノンボール』『BiSキャノンボール』が劇場公開され、大反響を呼びました。カンパニー松尾監督は、どのように受け止めているんでしょうか?

カンパニー松尾(以下、松尾) うれしいですよ。うれしいから、続けているんです。それまでAVでそれなりにやってきたつもりではいましたが、下水道をひたすら走っているような感覚というか、狭くぬるい場所にずっと留まっていた感じだったのが、映画館で大きな反響をもらえて、すごく新鮮だったんです。それまでのAVって“抜く”ためのものだったわけですが、そうじゃないAVを僕は撮り続けて、そのAVのまま劇場公開され、僕がAVの可能性を広げたいと思ってやってきた部分に対して、ちゃんと反応してもらえた。これは、うれしかったですね。映画監督が3~5年がかりで映画を撮る気持ちが分かった気がしました。AVってモニター越しに1人で観てもらうものだったのが、劇場では観客の数だけ笑いが倍増し、驚きの声も大きくなる。『テレクラキャノンボール』を初めて劇場公開したときの興奮が忘れられず、続けているんだと思いますね。

──満席札止めになるほどヒットした『BiSキャノンボール』ですが、人気アイドルの解散ライブ前夜のホテルをAV監督たちが密着取材するという内容は、ファンの間で賛否両論が起きたわけですが……。

松尾 普通に考えれば、大事な解散ライブの前夜にホテルに押し入って、何やってくれたんだってことですよね。しかも、ビーバップみのるはメンバーの1人を朝まで寝かせなかった。でも、BiSってアイドルらしくない破天荒さが売りで人気を得たグループだったわけです。公開当時、濃いファンは「なんでハメ撮り監督と一緒にいるのにSEXしないんだ」と怒った。自分が推しているアイドルが壊れていく様を応援しているコアなファンもいたんです。アイドルにハメ撮りを迫るなんてと怒るファンもいれば、なぜハメなかった怒るファンもいた。両方から怒られてしまった(笑)。

──それでもまた、BiSのマネージャー・渡辺淳之介&スペースシャワーTVの高根順次プロデューサーから、新メンバーオーディション合宿の撮影取材のオファーが届いた。松尾さん以上に面白いドキュメンタリーを撮れる人がいないということですよね?

松尾 いや、そんなことはないと思います。僕より面白いものを撮れる人はいっぱいいるでしょう。でも、どうしてでしょうね? 渡辺さんも、高根さんも、そしてBiSたちも、他の人たちがやらないような面白いことをやりたい人たちなんです、きっと。今はいろいろとコンプライアンスとかがうるさい時代だけど、僕個人はコンプライアンスとかには囚われない人間なんです。もちろん、人間としてのコンプライアンスはありますよ。でも、映像を撮る、ドキュメンタリーをつくるという前提のある限りでは、モラルに縛られていてはつまんないと思うんです。多分、そこを期待されているんでしょうね。

──いわば、撮る側も撮らせる側も“共犯関係”にあるわけですね。

松尾 そういうことだと思います。特に渡辺さんとの関係はそうでしょうね。彼は自分のプロダクションに所属するアイドルたちは決して脱がないと信じているわけです。信じているから、ハメ撮り監督である僕らにアイドルを差し出すことができる。言ってみれば、渡辺さんは最高のM嬢たちを僕らに差し出してくれているんです。やれるものなら、やってみろと(笑)。

──劇場に足を運ぶ観客たちもまた共犯関係となる。

松尾 そうですね。1人で観るより、大勢で観たほうが『キャノンボール』は断然面白いですしね。

■非AV監督が『キャノンボール』に新しい波を起こす!?

 

──今回の『アイドルキャノンボール』に参加した監督たちですが、『テレクラキャノンボール2013』からずいぶん顔ぶれが変わってきました。

松尾 変わりました。『テレクラキャノンボール2013』は僕やバクシーシ山下ら50代の監督、そして40代の中堅監督、30代の若手監督たちの世代間抗争も見どころになっていました。40代のビーバップみのる、タートル今田は『BiSキャノンボール』でも活躍しましたが、今回は2人とも人生いろいろありまして出場していません。その代わりに参戦したのが『遭難フリーター』(09)という社会派ドキュメンタリーで監督デビューした岩淵弘樹、普段はアーティストのプロモーションビデオを撮っているエリザベス宮地という若手の非AV監督たちなんです。今回は『テレクラキャノンボール』ではなく『アイドルキャノンボール』ということもあり、監督の幅も広げています。パンツを脱ぐ脱がないに関係なく闘うことができる新ルールになっています。

──『遭難フリーター』は秋葉原殺傷事件後に派遣社員の苛酷さが社会問題になっていたこともあって、日刊サイゾーでも取り上げました。岩淵監督はその後、松尾さんのいる「ハマジム」の社員になっていたんですね?

松尾 岩淵は派遣社員、介護関係の仕事を経て、2014年ごろかな、「ハマジム」に社員として入ってもらい、ネット配信の業務を担当してもらいました。ネット配信の数字が残念ながら目標値に達しなかったので1年間の契約で終わりましたが、岩淵は非常に仕事ができ、酒癖は悪いけれどとても熱いものを持っている男です。もう1人のエリザベス宮地は社員経験することなく、ずっとフリーの映像監督としてやってきた男。『BiSキャノンボール』ではサポートカメラマンとして入ってもらいました。宮地は中2病より、もっとすごい小6病をこじらせ続けているような男です。会社経験がないこともあって、小中学生の感覚をそのまま持っているわけです。『キャノンボール』は人選が重要ですが、この2人は『キャノンボール』のことをよく理解しているし、心根の部分ではとても健全な人間なんです。それに『キャノンボール』って、例えばSEX自慢のAV男優を参加させても面白くないんです。男優ってカメラをスタートさせ、カットの声を掛けるまでは積極的に動きますが、『キャノンボール』は「スタート」の声を掛ける前から、そしてカットを掛けた後も撮り続けないとダメなんです。AV監督を経験していない岩淵と宮地ですが、彼らにはそれができる。彼らがパンツを脱ぐのか脱がないのかも含めて、今回の『アイドルキャノンボール』の見どころになっていると思います。

──『テレクラキャノンボール2013』で活躍した若手AV監督の嵐山みちるは『BiSキャノンボール』に続いての参戦ですが、わずか数年見ないうちに、頬が痩け、眼光をギラつかせた別人のような外見になっていることにも驚きました。AV業界のハードさを感じさせます。

松尾 今、AV業界は薄利多売の時代になっていて、嵐山みちるは月8本ペースでAVを撮っているんです。月8本ペースは異常です。人間が壊れるペースですよ。普通は半年か1年しか保たないはずですが、彼はもう2年間もそのペースで撮り続けています。アイドルのようなルックスだったのに、忙しすぎて愛嬌がなくなってしまっている。そういった時間の流れも感じてもらえると面白いかなと(笑)。

■アイドル病棟と化した6日間の合宿生活

 

──もはや人間ならざるAV監督や社会派ドキュメンタリーから流れてきた監督たちがカメラで追うのは、彼らとは真逆な清純さを売りにしたアイドルやアイドル候補生たち!

松尾 水と油の関係です。相容れない素材でドレッシングを作ろうっていうんだから、まぁ分裂しますよね(笑)。

──一見、清純で健気そうに見えるアイドルたちですが、彼女たちもまた競い合う。勝利者チームは敗者チームの持ち曲を奪うことができるというルールによって、グループ間で激しい抗争が勃発し、思いがけず大きな問題に発展していく。一度自分が手に入れたものは絶対に他人に渡したくないという、女の“業”を感じさせました。

松尾 アイドルたちの競争意識を煽るために導入された新ルールでしたが、合宿所内が曲奪い合い合戦に向かってしまい、そのことに僕は戸惑ってしまった。でも、そんな予想外の展開のお陰で、もう一本映画が公開されることになったので、結果的には良かったかなと。

──6日間のオーディション合宿はどうでしたか?

松尾 つらかった(苦笑)。近くにコンビニがないような一般の合宿所だったんですが、食事がね。箸が進まない上に、量がハンパなく多い。それを毎朝8時、昼12時、夕方6時と毎日決まった時間に同じメニューを、みんなで食べるという……。刑務所とは言わないけど、軍隊のような生活でした。人間ね、食生活が満たされていないと脳の働きも低下して、闘う気力も湧いてこないんですよ。

──アイドルのオーディション合宿というよりは、隔離病棟のように見えました。

松尾 ほんとそう。合宿所を抜け出して、コンビニまで行って帰ってきた人は、すごく生き生きして戻ってくるんですよ。一度でも外の空気を吸うと、「合宿所には戻りたくない」とみんな思ってしまう。僕も1~2度、コンビニへ行きましたが、セブンイレブンで呑んだコーヒーがすごく美味しかった。合宿所に戻るのがイヤになりましたね。食事のシーンを盛り上げるために激辛のデスソースを用意したんですが、あれもつらかった。カレー好きな僕が食べても、死ぬかと思いましたよ。アイドルたちはがんがんデスソースの入った食事を平らげていましたけど、真似しないほうがいい。彼女たち、最初は嫌っていたのに、途中から進んでデスソースを手にするようになりましたからね。プー・ルイも「あの合宿はおかしかった」と話しています。

(インタビュー後編へ続く/取材・文=長野辰次/撮影=尾藤能暢)

『劇場版アイドルキャノンボール2017』
監督/カンパニー松尾
出演/BiS、BiSH、GANG PARADE、WACKオーディション参加者、渡辺淳之介、高根順次、平澤大輔、今田哲史、カンパニー松尾、バグシーシ山下、アキヒト、梁井一、嵐山みちる、岩淵弘樹、エリザベス宮地
配給/日活 2月3日より渋谷HUMAXシネマほか全国順次公開中
C)2017 WACK INC. / SPACE SHOWER NETWORKS INC.
http://idol-cannon.jp

●カンパニー松尾
1965年愛知県春日井市出身。テレビ番組の製作会社勤務を経て、AV制作会社で働くようになり、87年に安達かおる率いるV&Rプランンングに入社。88年に『あぶない放課後2』で監督デビュー。全国のテレクラを回った『私を女優にして下さい』や『燃えよテレクラ』は人気シリーズとなる。95年にV&Rプランニングを退社し、フリーのAV監督に。2003年にAVメーカー「HMJM(ハマジム)」を立ち上げ、現在に至る。レース形式でAV監督たちが目的地までのスピードとナンパした女性とのエッチ体験を競い合う『テレクラキャノンボール』は97年からスタート。『テレクラキャノンボール2009 賞品はまり子Gカップ』はその年の「AVグランプリ」にてプレス賞を受賞。『テレクラキャノンボール2013 賞品は神谷まゆと新山かえで』は2014年に劇場公開され、大反響を呼んだ。その他、劇場公開された監督作に『劇場版BiSキャノンボール』(15)、『劇場版BiS誕生の詩』(17)がある。
http://www.hamajim.com/home.php

脱げる女優・佐々木心音×AV女優・紗倉まな「女の子たちが、絶対通る道」を語る──

 AV女優・紗倉まなの小説家としての処女作『最低。』(KADOKAWA)が映画化され、今月25日に公開される。メガホンを採ったのは、ピンク映画出身で、最近では東宝で『64-ロクヨン- 前編/後編』、松竹で『8年越しの花嫁 奇跡の実話』を手がけるなどメジャー進出にも積極的な瀬々敬久。同作は先月末から開かれた「東京国際映画祭(TIFF)」のコンペティション部門に選出されるなど、各界から高い評価を受けている。

 今週末の公開に先立ち、原作者の紗倉まなと、紗倉が「自らを投影した」と語る主人公のひとり・彩乃を演じた女優・佐々木心音に話を聞いた。

 実際に「AV女優」という仕事に携わる作家と、当代きっての“脱げる女優”として「AV女優」を演じきった佐々木。2人の対談から、「AV女優」という職業の実像が浮かび上がってきたような、まだまだ奥が深いような……。

■佐々木「AV女優さんが書いたとは思えない」

──佐々木さんは、この企画に入る前に紗倉さんのことを、どれくらいご存じだったのでしょうか?

佐々木心音(以下、佐々木) 『最低。』の本は読んでいたので、どちらかと言うと、この本の作者の方というイメージでしかなくて。最初に読んだときは、ホントにこれAV女優さんが書いたのかな? って思うくらい文章がキレイで、私はすごい好きになりました!

紗倉まな(以下、紗倉) えー、優しい……!

佐々木 いやいやいや、私けっこう本は読むんですけど、紗倉さんの独特な言葉の言い回しとか比喩みたいなものがキレイな人が好きなんです。後から文庫本に掲載されている後書きを拝見したときに、自分のことについて話していて、そういう(AV女優なんだという)印象が強くなりました。

紗倉 とってもうれしいです。ありがとうございます。

──映画なるというのは、読者から評価されることとはまた別の評価軸で価値を認められたということだと思うんですが、紗倉さんの中で受け取り方の違いってありますか?

紗倉 受け取り方、うーん……。

──たぶん、ごほうび的な感じかなと想像するんですが。

紗倉 あ、そうですね! ホントにそんな感じです。映画にしようと思って書いたものでもなかったし、逆に、映画にしにくいものだって思ってたんですね。エンタメ性とかに長けているわけでもないし……。ホントにびっくり。ごほうびみたいな、サプライズみたいな印象の方が強かったです。

──与えてくれた一派のひとりが、ここにいる佐々木さんなわけですが。

佐々木 一派です。あはははは。

紗倉 ねえー、ホントに! すっごいうれしい。

──佐々木さんは、瀬々監督とは『マリアの乳房』(2014)以来。

佐々木 そうですね、共通の友人がいて何度かお会いさせていただいていますが、作品自体は2回目です。

──瀬々監督と『最低。』という取り合わせって、ピンとくる感じってありましたか?

佐々木 はい、とっても。あ、瀬々さん! これ絶対ぴったりだ! って。

紗倉 へえー! ホントですか! すごい!

■紗倉「こういう仕事をしている女の子たちが、絶対通る道なので」

──彩乃という人物を演じることになったとき、佐々木さんはどんなイメージを抱きましたか?

佐々木 私は、本の中に出てくる女の子の中で一番、彩乃に共感できたので、うれしかったです。私自身も、どちらかというと男性から見られる仕事なので、そういう意味ではかぶる部分もあるので、私なりに出して(表現して)いきたいと思いましたね。

紗倉 私やっぱり、彩乃のシーンって、すごく泣いちゃったんですよ。親にバレることって、私は母親とはモメなかったですけど、学校でモメて、それはいまだに解決していなくって。すごく投影する部分があったし、本の中では描かなかった母親とのシーンで、彩乃が叫んで、結局お母さんが……っていう、あそこのシーンは、もう何物にも代えがたい思いというか。(初版の)本の帯に書いてあった「そこに落ちたら、もう戻れない」っていう言葉を、あのシーンですべて物語ってくださっていると感じました。こういう仕事をしている女の子たちが、絶対通る道なので……。

佐々木 私もグラビアをやっていたころ、母親じゃないんですけど、お爺ちゃんにけっこう似たようなことを言われて。あそこまでガーッとはやり合わなかったですけど、周りの環境も変わりましたし、見られ方も変わったっていう意味では、やっぱり、なんにもなかったころには戻れないよねっていう気持ちは、絶対的にありますよね。

紗倉 それを、あの性描写の部分とか、すごいがっつり身体を張ってくださってて、それがすごくキレイで、あれがなければこの話って物語れない部分だと思うんです。それを、あんなふうに受け入れて演じてくださっているなんてもう、こんなにうれしいことはないですよ、ホントに。

──それに、AVの中のセックスとプライベートのセックスを演じ分けている作品って、けっこう珍しいかもしれないですね。

佐々木 そっか、ひとつの作品の中に入っているのって、ないかも。

──女優ってすごいなって思いますよね。

紗倉 ホントに! 思いました。めちゃくちゃ思いました。

佐々木 いやいやいやいや。でも、このお話をいただきたときに「私がやっていいんだ」って思えた作品なんです。いろんな映画でも脱いでいるし、グラビアも、AVとはまた別だけども、同じような目線で見られる仕事をやっている中で、私はここにいていいんだなって、この役に言ってもらえた感じはあります。

──では、この役をもらうことで、佐々木さんも紗倉さんから贈り物をいただいたという感覚があると。

佐々木 そうですね、はい。すごく、居心地よかったです。

■佐々木「みんな普通に生きてる子たちじゃないですか」

──今回、AV女優を演じてみて、今後の女優としてのキャリアに何か収穫があったり、影響が出そうだったりすることってありますか?

佐々木 そうですね、あんまり肩書を意識しすぎないようにやろうと思ってたんですけど、そうじゃなくて、確かにAV女優なんだけど、でも普通に生きてる、誰だってみんな普通に生きてる子たちじゃないですか。それでも、周りから見られる目っていうのは意識しなくちゃいけなくて。私今回、いちばん現場で苦しくて、気持ち的にずっとモヤモヤして、モヤモヤモヤモヤモヤモヤして終えた彩乃だったんです。でも、その彩乃がすごくいい言葉(高い評価)をいただいたりして、あ、現場中にモヤモヤしてていいんだって気づいて。それが収穫でしたね。

──今までは、モヤモヤしなかった?

佐々木 わりと、「ああーやり切ったイエーイ!」みたいな感じだったんで、この感じのモヤモヤは、これでいいんだとわかりましたね。

紗倉 私の勝手なイメージで、心音さんって毎回、憑依型みたいな感じで、すごい没入して演じてらっしゃるような気がしていて、だから、どこでスイッチのオンオフを切り替えているんだろうとか、ずっと(自分と役の境界が)ぼやけているのかなとか、すごい気になっていたんですう。役によって、やっぱり違うんですか?

佐々木 どうなんだろう、あんまり「役になる」っていうよりは、自分と役が似ているところを探すっていう方法でやるようにはしているんですけど、親とかに聞くと、家に帰ってもその役を引きずっていたりとか、口が悪い役だったら悪いまんまになっちゃってたりするみたいです。だから今回の撮影中も、あんまり母親と楽しく会話した記憶はないですね。意識は特にしていないんですが……。

──今回の彩乃とは、似すぎていたのかも?

佐々木 そうかもしれないです、はい。

──ところで紗倉さん、今日(取材日は10月中旬)は「TIFF」でレッドカーペットを歩くための衣装合わせだったそうですね。このたびは、本当におめでとうございます。

紗倉 ありがとうございます。

──「TIFF」のコンペには日本から2つ作品が選出されましたが、もう1本は綿谷りささん原作の『勝手にふるえてろ』です。この2作品が並び立つということは、紗倉さんももう芥川賞を獲ったようなものなのでは……?

紗倉 そんなことないですよ! とんでもないですよ! 綿谷さんと並べられて、もう勝手にふるえてますよ……。
(取材・文=編集部/撮影=関戸康平)

●『最低。』
原作/紗倉まな 脚本/小川智子、瀬々敬久 監督/瀬々敬久
出演/森口彩乃、佐々木心音、山田愛奈、忍成修吾、森岡龍、斉藤陽一郎、江口のりこ、渡辺真起子、根岸季衣、高岡早紀
配給/KADOKAWA 11月25日(土)より角川シネマ新宿ほか全国公開
C)2017 KADOKAWA
http://saitei-movie.jp/

●紗倉まな
1993年生まれ、千葉県出身。工業高等専門学校在学中の2012年にSODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。15年にはスカパー!アダルト放送大賞で史上初の三冠を達成する。テレビ出演や雑誌グラビアでも活躍し、「週刊プレイボーイ」(集英社)、「messy」(サイゾー)でコラム連載。著書に『最低。』『凹凸』(KADOKAWA)、エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの転職』(宝島社)、スタイルブック『MANA』(サイゾー)がある。

金属系女子・紗倉まなの「愛ってなんですか?」(messy)
http://mess-y.com/archives/category/column/sakuramana/

●佐々木心音
1990年生まれ、東京都出身。10代から舞台女優として活動し、2011年に発売したファーストDVDがAmazonで売り上げ1位を記録。その後に発売したDVDでもヒットを連発。“芸能界で一番エロい体”とされる。主な出演作に『フィギュアなあなた』(13)、『パズル』(14)、『マリアの乳房』(14)、『TOKYO TRIBE』(14)、ドラマ『闇金ウシジマくん Season3』(16/TBS系)など。

脱げる女優・佐々木心音×AV女優・紗倉まな「女の子たちが、絶対通る道」を語る──

 AV女優・紗倉まなの小説家としての処女作『最低。』(KADOKAWA)が映画化され、今月25日に公開される。メガホンを採ったのは、ピンク映画出身で、最近では東宝で『64-ロクヨン- 前編/後編』、松竹で『8年越しの花嫁 奇跡の実話』を手がけるなどメジャー進出にも積極的な瀬々敬久。同作は先月末から開かれた「東京国際映画祭(TIFF)」のコンペティション部門に選出されるなど、各界から高い評価を受けている。

 今週末の公開に先立ち、原作者の紗倉まなと、紗倉が「自らを投影した」と語る主人公のひとり・彩乃を演じた女優・佐々木心音に話を聞いた。

 実際に「AV女優」という仕事に携わる作家と、当代きっての“脱げる女優”として「AV女優」を演じきった佐々木。2人の対談から、「AV女優」という職業の実像が浮かび上がってきたような、まだまだ奥が深いような……。

■佐々木「AV女優さんが書いたとは思えない」

──佐々木さんは、この企画に入る前に紗倉さんのことを、どれくらいご存じだったのでしょうか?

佐々木心音(以下、佐々木) 『最低。』の本は読んでいたので、どちらかと言うと、この本の作者の方というイメージでしかなくて。最初に読んだときは、ホントにこれAV女優さんが書いたのかな? って思うくらい文章がキレイで、私はすごい好きになりました!

紗倉まな(以下、紗倉) えー、優しい……!

佐々木 いやいやいや、私けっこう本は読むんですけど、紗倉さんの独特な言葉の言い回しとか比喩みたいなものがキレイな人が好きなんです。後から文庫本に掲載されている後書きを拝見したときに、自分のことについて話していて、そういう(AV女優なんだという)印象が強くなりました。

紗倉 とってもうれしいです。ありがとうございます。

──映画なるというのは、読者から評価されることとはまた別の評価軸で価値を認められたということだと思うんですが、紗倉さんの中で受け取り方の違いってありますか?

紗倉 受け取り方、うーん……。

──たぶん、ごほうび的な感じかなと想像するんですが。

紗倉 あ、そうですね! ホントにそんな感じです。映画にしようと思って書いたものでもなかったし、逆に、映画にしにくいものだって思ってたんですね。エンタメ性とかに長けているわけでもないし……。ホントにびっくり。ごほうびみたいな、サプライズみたいな印象の方が強かったです。

──与えてくれた一派のひとりが、ここにいる佐々木さんなわけですが。

佐々木 一派です。あはははは。

紗倉 ねえー、ホントに! すっごいうれしい。

──佐々木さんは、瀬々監督とは『マリアの乳房』(2014)以来。

佐々木 そうですね、共通の友人がいて何度かお会いさせていただいていますが、作品自体は2回目です。

──瀬々監督と『最低。』という取り合わせって、ピンとくる感じってありましたか?

佐々木 はい、とっても。あ、瀬々さん! これ絶対ぴったりだ! って。

紗倉 へえー! ホントですか! すごい!

■紗倉「こういう仕事をしている女の子たちが、絶対通る道なので」

──彩乃という人物を演じることになったとき、佐々木さんはどんなイメージを抱きましたか?

佐々木 私は、本の中に出てくる女の子の中で一番、彩乃に共感できたので、うれしかったです。私自身も、どちらかというと男性から見られる仕事なので、そういう意味ではかぶる部分もあるので、私なりに出して(表現して)いきたいと思いましたね。

紗倉 私やっぱり、彩乃のシーンって、すごく泣いちゃったんですよ。親にバレることって、私は母親とはモメなかったですけど、学校でモメて、それはいまだに解決していなくって。すごく投影する部分があったし、本の中では描かなかった母親とのシーンで、彩乃が叫んで、結局お母さんが……っていう、あそこのシーンは、もう何物にも代えがたい思いというか。(初版の)本の帯に書いてあった「そこに落ちたら、もう戻れない」っていう言葉を、あのシーンですべて物語ってくださっていると感じました。こういう仕事をしている女の子たちが、絶対通る道なので……。

佐々木 私もグラビアをやっていたころ、母親じゃないんですけど、お爺ちゃんにけっこう似たようなことを言われて。あそこまでガーッとはやり合わなかったですけど、周りの環境も変わりましたし、見られ方も変わったっていう意味では、やっぱり、なんにもなかったころには戻れないよねっていう気持ちは、絶対的にありますよね。

紗倉 それを、あの性描写の部分とか、すごいがっつり身体を張ってくださってて、それがすごくキレイで、あれがなければこの話って物語れない部分だと思うんです。それを、あんなふうに受け入れて演じてくださっているなんてもう、こんなにうれしいことはないですよ、ホントに。

──それに、AVの中のセックスとプライベートのセックスを演じ分けている作品って、けっこう珍しいかもしれないですね。

佐々木 そっか、ひとつの作品の中に入っているのって、ないかも。

──女優ってすごいなって思いますよね。

紗倉 ホントに! 思いました。めちゃくちゃ思いました。

佐々木 いやいやいやいや。でも、このお話をいただきたときに「私がやっていいんだ」って思えた作品なんです。いろんな映画でも脱いでいるし、グラビアも、AVとはまた別だけども、同じような目線で見られる仕事をやっている中で、私はここにいていいんだなって、この役に言ってもらえた感じはあります。

──では、この役をもらうことで、佐々木さんも紗倉さんから贈り物をいただいたという感覚があると。

佐々木 そうですね、はい。すごく、居心地よかったです。

■佐々木「みんな普通に生きてる子たちじゃないですか」

──今回、AV女優を演じてみて、今後の女優としてのキャリアに何か収穫があったり、影響が出そうだったりすることってありますか?

佐々木 そうですね、あんまり肩書を意識しすぎないようにやろうと思ってたんですけど、そうじゃなくて、確かにAV女優なんだけど、でも普通に生きてる、誰だってみんな普通に生きてる子たちじゃないですか。それでも、周りから見られる目っていうのは意識しなくちゃいけなくて。私今回、いちばん現場で苦しくて、気持ち的にずっとモヤモヤして、モヤモヤモヤモヤモヤモヤして終えた彩乃だったんです。でも、その彩乃がすごくいい言葉(高い評価)をいただいたりして、あ、現場中にモヤモヤしてていいんだって気づいて。それが収穫でしたね。

──今までは、モヤモヤしなかった?

佐々木 わりと、「ああーやり切ったイエーイ!」みたいな感じだったんで、この感じのモヤモヤは、これでいいんだとわかりましたね。

紗倉 私の勝手なイメージで、心音さんって毎回、憑依型みたいな感じで、すごい没入して演じてらっしゃるような気がしていて、だから、どこでスイッチのオンオフを切り替えているんだろうとか、ずっと(自分と役の境界が)ぼやけているのかなとか、すごい気になっていたんですう。役によって、やっぱり違うんですか?

佐々木 どうなんだろう、あんまり「役になる」っていうよりは、自分と役が似ているところを探すっていう方法でやるようにはしているんですけど、親とかに聞くと、家に帰ってもその役を引きずっていたりとか、口が悪い役だったら悪いまんまになっちゃってたりするみたいです。だから今回の撮影中も、あんまり母親と楽しく会話した記憶はないですね。意識は特にしていないんですが……。

──今回の彩乃とは、似すぎていたのかも?

佐々木 そうかもしれないです、はい。

──ところで紗倉さん、今日(取材日は10月中旬)は「TIFF」でレッドカーペットを歩くための衣装合わせだったそうですね。このたびは、本当におめでとうございます。

紗倉 ありがとうございます。

──「TIFF」のコンペには日本から2つ作品が選出されましたが、もう1本は綿谷りささん原作の『勝手にふるえてろ』です。この2作品が並び立つということは、紗倉さんももう芥川賞を獲ったようなものなのでは……?

紗倉 そんなことないですよ! とんでもないですよ! 綿谷さんと並べられて、もう勝手にふるえてますよ……。
(取材・文=編集部/撮影=関戸康平)

●『最低。』
原作/紗倉まな 脚本/小川智子、瀬々敬久 監督/瀬々敬久
出演/森口彩乃、佐々木心音、山田愛奈、忍成修吾、森岡龍、斉藤陽一郎、江口のりこ、渡辺真起子、根岸季衣、高岡早紀
配給/KADOKAWA 11月25日(土)より角川シネマ新宿ほか全国公開
C)2017 KADOKAWA
http://saitei-movie.jp/

●紗倉まな
1993年生まれ、千葉県出身。工業高等専門学校在学中の2012年にSODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。15年にはスカパー!アダルト放送大賞で史上初の三冠を達成する。テレビ出演や雑誌グラビアでも活躍し、「週刊プレイボーイ」(集英社)、「messy」(サイゾー)でコラム連載。著書に『最低。』『凹凸』(KADOKAWA)、エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの転職』(宝島社)、スタイルブック『MANA』(サイゾー)がある。

金属系女子・紗倉まなの「愛ってなんですか?」(messy)
http://mess-y.com/archives/category/column/sakuramana/

●佐々木心音
1990年生まれ、東京都出身。10代から舞台女優として活動し、2011年に発売したファーストDVDがAmazonで売り上げ1位を記録。その後に発売したDVDでもヒットを連発。“芸能界で一番エロい体”とされる。主な出演作に『フィギュアなあなた』(13)、『パズル』(14)、『マリアの乳房』(14)、『TOKYO TRIBE』(14)、ドラマ『闇金ウシジマくん Season3』(16/TBS系)など。

AV出演強要問題、メーカーはどんな罪になるのか? 法的責任を弁護士に聞いた

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
各局ワイドショー等

<今回の疑問>
AV出演強要問題でメーカーの法的責任は?

 人気ユーチューバーの女性が、過去に騙されてAV出演した経験を打ち明け、話題になっている。女性は自らイベントなどで被害防止を訴えているが、近年「AV出演を強要された」という女性の被害が社会問題視されている。こうした被害の法的責任をAVメーカーに問うことは可能なのだろうか? アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いた。

 まず、「AVメーカーに民事責任や刑事責任を問うことは簡単ではない」と岩沙弁護士は述べる。しかし、以下のような罪に当たる場合もあるという。

「さまざまなパターンがありますので一概には言えませんが、AV出演を強要することは強要罪、意に反して撮影が行われた場合は、強姦罪、集団強姦罪、暴行罪、傷害罪、監禁罪などが成立する可能性があります。もっとも、同意を推認させる契約書があること、さらに強要の証拠が少ないことから、刑事責任が問われる例はほとんどありません。多くの場合、撮影は密室で行われ、契約書で女性の同意があることを前提として行われるため、事実、女性の意に反する撮影だったとしてもその証明が難しいのです」

 過去の裁判例では、AV撮影中に激しい暴行を加え、女優が撮影の中止を求めたにもかかわらず、長時間にわたり数十回の姦淫を繰り返した非常に悪質な事案に、強姦致傷罪などが適用された例はあるが、関係者が罪に問われる例は非常に少ないという。

 では、仮にメーカーが起訴された場合、すでに販売されたDVDを回収することは可能なのだろうか?

「メーカーが強要罪などで起訴されることとDVDを回収することは全く別の手続きなので、起訴されたからといってDVDを回収できるわけではありません。販売を中止するためには、別途裁判手続きを利用する必要がありますが、AV出演を強要された場合でも、裁判所による販売差し止めが認められることはほとんどありません。出演や販売に同意する契約書がある上、虚偽の説明や脅迫の証拠が残っていないことが多いからです」

 岩沙弁護士は「AV出演強要は、女性に対する人権侵害であることは明らか」と述べている。被害者保護のためにも、業界を規制する法律を早急に制定する必要があることは間違いないようだ。

アディーレ法律事務所

<疑問大募集>
ドラマ、バラエティーから、ニュース、CMまで、弁護士に聞いてみたい、テレビを見ていて感じた疑問を募集しています。下記フォームよりご応募ください。

ご応募はこちらから

AV出演強要問題、メーカーはどんな罪になるのか? 法的責任を弁護士に聞いた

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回の番組>
各局ワイドショー等

<今回の疑問>
AV出演強要問題でメーカーの法的責任は?

 人気ユーチューバーの女性が、過去に騙されてAV出演した経験を打ち明け、話題になっている。女性は自らイベントなどで被害防止を訴えているが、近年「AV出演を強要された」という女性の被害が社会問題視されている。こうした被害の法的責任をAVメーカーに問うことは可能なのだろうか? アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いた。

 まず、「AVメーカーに民事責任や刑事責任を問うことは簡単ではない」と岩沙弁護士は述べる。しかし、以下のような罪に当たる場合もあるという。

「さまざまなパターンがありますので一概には言えませんが、AV出演を強要することは強要罪、意に反して撮影が行われた場合は、強姦罪、集団強姦罪、暴行罪、傷害罪、監禁罪などが成立する可能性があります。もっとも、同意を推認させる契約書があること、さらに強要の証拠が少ないことから、刑事責任が問われる例はほとんどありません。多くの場合、撮影は密室で行われ、契約書で女性の同意があることを前提として行われるため、事実、女性の意に反する撮影だったとしてもその証明が難しいのです」

 過去の裁判例では、AV撮影中に激しい暴行を加え、女優が撮影の中止を求めたにもかかわらず、長時間にわたり数十回の姦淫を繰り返した非常に悪質な事案に、強姦致傷罪などが適用された例はあるが、関係者が罪に問われる例は非常に少ないという。

 では、仮にメーカーが起訴された場合、すでに販売されたDVDを回収することは可能なのだろうか?

「メーカーが強要罪などで起訴されることとDVDを回収することは全く別の手続きなので、起訴されたからといってDVDを回収できるわけではありません。販売を中止するためには、別途裁判手続きを利用する必要がありますが、AV出演を強要された場合でも、裁判所による販売差し止めが認められることはほとんどありません。出演や販売に同意する契約書がある上、虚偽の説明や脅迫の証拠が残っていないことが多いからです」

 岩沙弁護士は「AV出演強要は、女性に対する人権侵害であることは明らか」と述べている。被害者保護のためにも、業界を規制する法律を早急に制定する必要があることは間違いないようだ。

アディーレ法律事務所

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「産まない自由を強調していきたい」北原みのり×佐藤優が語る、国家に支配される性

 時事問題や普遍的テーマをジェンダーの観点から説く作家であり、女性のためのセックストーイショップの経営者でもある北原みのりさんと、元外交官のキャリアを生かして国内外の政治、社会について考察し、メディアで発信し続ける作家・佐藤優さん。ふたりが“性”の視点から国家を考え、論を交わした『性と国家』(河出書房新社)が発売された。12月下旬、同書の発売を記念して行われた北原、佐藤両氏によるトークイベントをレポートする。

■フェミニズム、売買春の是非、AVをめぐる知の格闘

 同書は、両氏に共通する「逮捕経験」がきっかけで生まれた。佐藤さんは2002年に逮捕、起訴される。512日間に及ぶ勾留体験をまとめた『獄中記』(岩波書店)に「これからはフェミニズムだ」といった内容が記されていることに、北原さんは惹かれた。また、佐藤さんは14年に北原さんが自身のショップに女性器をモチーフとした作品を展示したことで逮捕された後の対応と、それに対する世間からのバッシングに、彼女の「闘い方」を見る。

 「逮捕されたとき、ブラジルかニカラグア、ベネズエラに逃げればよかったのに。これらの国は犯罪者でも引き渡さないから(笑)」という佐藤さんの冗談から始まったトークは1時間半に及んだ。同書の内容をさらにふくらませながらも、アカデミズムというそもそもマッチョな世界でフェミニズムを学ぶ難しさから、売買春の是非、昨今大きな注目を集めるAVの出演強要問題、一夫一婦制……などテーマが複合的に交錯し、知の格闘が披露された。

 ここでは来場者から寄せられた質問と、両氏の回答を紹介したい。いずれも私たちの“性”が国家によっていかに管理され、不自由を強いられているかがわかる内容だったからだ。ちなみに、どちらの質問も男性からのものである。

■マッチョというのは小さな声を潰していく力

ーーフェミニズムを勉強したことがなく、この本を皮切りに学びたいと思いました。この世界がマッチョ(男性優位的)であることについて知りたいとき、どういう本を読めばいいのでしょう?

佐藤 フェミニズムは教科書を読めばわかる形の“知”ではないんですよ。私の解釈では、根っこにあるのは“男のほうが筋力が強い”ということ。その筋力の差が、社会システム全体に埋め込まれている。しかもそれは固定のものではなく、時代や状況に合わせて常に変化していくがゆえに、なかなか気づかない。これを知るには、いい小説、映画に触れることです。マッチョな人がいない作品ではなく、むしろマッチョなるものが描かれた作品。たとえば角田光代さんの『八日目の蝉』(中央公論新社)。出てくるのは弱い男、無責任な男、不要な男……そんなのばかりで、生殖を別にして考えると、男がいることによってこの社会は男も女も誰も幸せにならないことがわかります。映画も小説も、マッチョであることの究極の無責任さを突きつけてきますよ。

北原 私は、笙野頼子さんの『ひょうすべの国―植民人喰い条約』(河出書房新社)をおすすめします。この小説は、マッチョというのは小さな声を潰していく力だということを教えてくれます。ひょうすべとは妖怪の名ですが、作中では“NPOひょうげんがすべて”の略なんです。暴力もレイプも表現の自由とするマッチョな力と、それによって傷つき苦しむ女性たちを嘲笑する流れ……いまの日本をこうしたものが支配していることが、よく理解できる1冊です。

佐藤 あとは、北原さんが書いたものを、時系列に沿って読んでいくのがいいんじゃないかな。『フェミの嫌われ方』(新水社)ぐらいまでさかのぼって。

■個人の生活、生き方に国家が介入するのは危険

ーー大学でフェミニズムの授業をとったとき、「中絶は女性の権利である」と強調されたが、生まれてくる生命に対する切り捨てのように感じて違和感を覚えました。それについてどう思われますか?

北原 生殖の問題は、フェミニズムにおいても一大テーマです。女たちは産む産まないを自分で決めることができず、生涯ずっと産むしかない時代が何千年も続いてきました。だから20世紀になってウーマンリブやフェミニズムの観点から「産む産まないは、自分が決める」という考えが出てきたとき、どれだけ多くの女の人たちを動かしたか、それによって自分の人生を手に入れられた人がどれだけいたか……と考えると“中絶する権利”という言葉で簡単にまとめられるような話ではないと私は思います。

 もちろん命の問題については、今後もあきらめずに言葉を尽くして考えていくべきことですが、現在は国が「中絶するな」「どんどん産んでください」と推し進めているところですよね。いつの時代においても、女の身体は国家に利用されてきて、生殖はその最たるもの。男性と女性とでは、そのことで感じる恐怖や身体感覚の度合いが、まったく違うのではないでしょうか。

佐藤 いまの政府が、少子高齢化対策としてできるだけ多くの子どもを産むことを奨励しているという文脈の中で、私は意図的に「産まない自由」を強調していきたい。産まない自由が担保されたうえで、少子高齢化を考えなければいけないということです。個人の生活、生き方に国家が介入するのは危険です。ひとりひとりの生殖に国家が口を出して、しかも生殖によって経済的利益を得られるというやり方は、私は国家の過剰介入だと見ています。

 

 同書のイシューは沖縄、慰安婦、戦争、性売買、性暴力など多岐にわたっているが、上記で紹介したように、生殖をはじめとする私たちの身近にある問題ともつながっている。子育てや介護はなぜ女性の仕事とされるのか、街を歩いているだけで目に入ってくる児童ポルノ的な表現を異常と思うほうがおかしいのか、なぜドラマやCMなどを通じて女性蔑視的な視点に出くわさなければいけないのか……この違和感や不自由はすべて“国家”と切り離せないのだと気づかずにはいられない1冊である。
(三浦ゆえ)