スポーツ番組にもユルさを! さまぁ~ず『さまスポ』に学ぶ、スポーツの多様性

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『さまスポ』テレビ東京
 これからの時代、スポーツにも「ユルさ」が必要……そんなことを考えさせられる事象が、ここのところ多い。  象徴的だったのは、スポーツ庁が示した「スポーツが嫌いな中学生を現在の半分に減らす」という目標設定に、各方面から反発の声が上がったこと。『久保みねヒャダ こじらせナイト』(フジテレビ系)で「体育への恨みつらみ川柳」なるコーナーを持つ久保ミツロウ、能町みね子、ヒャダインがその急先鋒だ。  そりゃあ反発するよ、と思う。そもそもスポーツ庁のいう「スポーツ」は体育の延長線上でしかなく、あまりに十把一絡げ。スポーツには<「する」スポーツ>もあれば<「見る」スポーツ>も<「語る」スポーツ>も、いろいろあるはずなのだから。その懐の深さこそがスポーツの魅力なのだ。 筆者個人としては熱闘や熱血も大好物なわけだが、別軸から攻める「ユルいスポーツ番組」が増えると、スポーツの楽しみ方はもっと柔軟に、多様性が出てくると思う。  そこでオススメしたいのが、テレビ東京系で4月から始まった『さまスポ』(毎週土曜夕方6時〜)。さまぁ~ず初のスポーツ番組だ。  さまぁ~ずの2人がさまざまなスポーツに体当たりで挑戦し、その魅力を学んでいく、というコンセプト。ただ、「体当たり」といっても、そこはやはりさまぁ~ず。ある意味、「熱血」とか「精神論」といったものと対極に存在しそうな2人を起用したところに、この番組の意義がある。一歩間違うとグダグダになりそうな……それでいてなぜか心地いい、さまぁ~ずの世界観がスポーツを題材にしても成り立っているのだ。  お笑い芸人がスポーツ番組を持つ、というのはもはや見慣れた光景。ただ、その多くは芸人としてのトークスキルやまわしの技術を生かして、スタジオでアスリートの素を引き出す、という企画が多かった。言うなれば、バラエティのフォーマットの中でスポーツやアスリートを扱う、というものだ。  一方の『さまスポ』は、あくまでも“スポーツ番組”を標榜。スタジオ収録ではなく、各競技の現場に出向き、アスリートの「技」や「身体」にスポットを当てていく。  実はテレビ東京、今もっともスポーツに力を入れている民放局、といっても過言ではない。先月末から今月頭にかけては「世界卓球×全仏テニス」の二大世界大会を生放送。卓球では、テレビ東京が今年放送した全番組の中で最高視聴率となる13.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、5月29日から6月4日のゴールデンタイムの週間平均視聴率は8.6%を記録。1964年の開局以来、初の民放3位に輝いたことがニュースとなった。  ある意味、スポーツに社運を懸けているテレビ東京だからこそ、『さまスポ』におけるアスリートのキャスティングに妥協がないのも好印象だ。ここまで登場したのは、卓球・リオ五輪銀メダリストの水谷隼。レスリング・リオ五輪金メダリストの登坂絵莉と土性沙羅。プロバスケットボールBリーグのアルバルク東京。野球界のレジェンド・山本昌。プロボクシング・ロンドン五輪銅メダリストの清水聡……この豪華一流アスリートたちの「技」が見られるのだから、それだけでも十分楽しめる。  番組の製作総指揮を務めるのは、『モヤモヤさまぁ~ず2』でもさまぁ~ずとコンビを組む伊藤隆行。その伊藤が「ザテレビジョン」(KADOKAWA)のインタビューで、こんな言葉を述べていた。 《僕は、これからのテレビは『素直』がキーワードだと思っていて。素直に面白い、素直にすごい、というストレートな感性で番組を作っていかないと。今のテレビって、勝手にいろんな心配をしてヤスリで削っていっちゃうんですよ。万人に受けるように、どんどんおとなしい番組になっちゃう。だからそのための『勇気』も必要かもしれない。テレビに必要なのは『素直』と『勇気』ですね》 『さまスポ』も、まさに「素直」を軸にした番組。アスリートの技と身体を「素直」に訴求しているからこそ、さまぁ~ずのリアクションも生きてくるわけだ。  むしろ、今以上にアスリートや競技の持つ魅力だけで勝負してほしいほど。ボクシング回では、パンチがヒットするタイミングで“当たる音”を後から加えていたのは明らかだったが、そういった編集すら不要だと思う。その点は、もっともっと勇気を持った編集を目指してほしい。  というわけで、いま、スポーツ庁の方々に見てほしいのが『さまスポ』だ。なんなら、鈴木大地スポーツ庁長官のゲスト回なんてどうだろう。あえて今、バサロ泳法を学ぶさまぁ~ず、ちょっと面白いと思うのだが。 (文=オグマナオト)

東京五輪キャスターまであと一歩!? 関ジャニ∞・村上信五のMC力を鍛えた『村上信五とスポーツの神様たち』

東京五輪キャスターまであと一歩!? 関ジャニ∞・村上信五のMC力を鍛えた『村上信五とスポーツの神様たち』の画像1
 今年の『FNS27時間テレビ』の総合司会者はビートたけしに決定。そのたけしを脇で支える「キャプテン」として、関ジャニ∞・村上信五が起用されることも発表された。  これ、総合司会=ビートたけし、は間違いだと思う(フジがそう発表しているのだから、間違いも何もないのだが)。編成・営業的な理由で「ビートたけし」の冠を立てなければならないのは明らか。たけしという旗印のもと、実質的な司会者として村上が番組のかじ取り役になる、と捉えたほうがいいはずだ。  実際、SNSを中心に懸念されているのが、たけしの今の滑舌で長時間の番組が成り立つのか、ということ。だからこそ、村上の司会力・MC力が問われることになる。  個人的には、村上の司会者ぶりが今から楽しみで仕方がない。実際、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)、『ありえへん∞世界』(テレビ東京系)といった番組では抜群の安定感を見せ、そして、いま民放で最も熱量の高い番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)でも、その「回しの技術」は際立っている。  だが、『月曜から夜ふかし』はマツコ・デラックスの存在があってこそ。『ありえへん∞世界』『関ジャム』ではほかの関ジャニメンバーもいるだけに、その関係性の中で番組を回すことが多い。純粋に、村上のMC技術がどう優れているのかは、一見するとわかりにくいかもしれない。  そんな村上の「司会ぶり」を判断する上で、ぜひ一度見てもらいたい番組がある。番組開始から2年を過ぎたスポーツバラエティ『村上信五とスポーツの神様たち』(フジテレビ系)だ。  番組開始当初は、タイトル通り“スポーツの神様たち”=各競技で一時代を築いた往年のスーパースターたちを招き、現役時代の荒唐無稽なエピソードを聞く、というコンセプト。釜本邦茂、輪島功一、福本豊、中野浩一……といった、ヒト癖もフタ癖もある、さらにいえば司会者の言葉なんて一切聞いていないような唯我独尊のレジェンドたちを、MC村上が見事にいなしていくさまは、実に見応えがあって面白かった。  ただ、こうした「神様」たちも一巡してしまったのか、少しずつ現役選手や引退したばかりの選手の割合が多くなり、最近では「球団職員」「熱狂的ファン」「アスリートの妻」「トレーナー」「マイナー競技に挑戦」といった、もう神様など関係ない企画が多くなっている。  断っておくと、神様が出てこなくなったここ最近の番組も十分面白く、スポーツの魅力、奥深さ、マニアックさをしっかり伝えることができている。一方で、大きく変わったのがMC・村上にかかる比重だ。  神様が毎回出ていた時代、その神様たちが気持ちよく言葉を発することができれば、ある意味で番組は成り立っていた。意地悪くいえば、ブッキングができた時点で半分、面白さは担保できていたわけだ。  だが、今は違う。「球団職員」「熱狂的ファン」「トレーナー」「マイナー競技」……ある意味で、“素人”の出番が増えてきたのだ。当然、トーク力・トーク内容に関しては、神様ほどの破壊力はない。だからこそ、村上のMC力が重要になってくる。そして実際、村上がさまざまなエピソードを拾い上げ、膨らませ、毎回ちゃんと面白いスポーツ語りに帰結していく。  この手の役回りは、かつて『ジャンクSPORTS』(同)における浜田雅功の独壇場だった。だが、村上はより身近な存在として、微に入り細に入り、アスリートや競技関係者の懐に飛び込んでいく。  さらに言うと、以前はますだおかだの岡田圭右が毎回、サブMCとして村上をサポートしていたのだが、なぜか最近は出番が激減。村上ひとりで進行する回が多くなった。司会者としてのスキルも経験値も、ひとりで回すことでより高まっているはずだ。  この『村上信五とスポーツの神様たち』の先にある、村上の野望――。それは、2020年東京五輪におけるメインキャスターへの道だ(実際、それを番組の中でも公言している)。そのための足がかりとして、今年の『FNS27時間テレビ』でどんな司会者ぶりを発揮してくれるのか。今後の『村上信五とスポーツの神様たち』同様、大いに期待したい。 (文=オグマナオト)

くりぃむしちゅー有田哲平のプロレス愛が炸裂!『有田と週刊プロレスと』

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『有田と週刊プロレスと』公式サイトより
『有田と週刊プロレスと』がない水曜日がやってくるだなんて……。いま、そのくらいの喪失感がある。自分に「有田ロス」が訪れるとは想像もしていなかった。  昨年11月末の配信開始以来、毎週水曜に更新されてきたAmazonプライム限定コンテンツ『有田と週刊プロレスと』が5月10日、第1シーズンの最終回を迎えた。先週は習慣のごとくAmazonプライムのページを訪ね、ついバックナンバー25話を一気に振り返ってしまったほど。今週も、また同じことをしてしまいそうである。  プロレスとは、人生の縮図。「週刊プロレス」とは、人生の教科書。くりぃむしちゅー有田哲平が毎回1冊の「週刊プロレス」(ベースボール・マガジン社)をテーマに、語って、語って、語りまくり、プロレスから学ぶべき人生の教訓を伝授する……それが『有田と週刊プロレスと』。とにもかくにも、プライム会員であれば一度見ていただきたいし、まだ会員でないならば『有田と週刊プロレスと』を見るために会員になってもいいと思う。  この番組の素晴らしい点はいくつもあるのだが、大きくは3つ。プロレス初心者も詳しい人間も、共に楽しめる点。そして、「プロレスの歴史」を懇切丁寧に、何度でも解説してくれる点。そして、映像が使えない、という枷(かせ)を感じさせない。というか、その枷があるからこそ、光ってくる有田の話芸にある。  まず、秀逸なのが、MC有田以外の配役だ。有田と共にMCを務めるのは、元AKBの倉持明日香。女性タレント随一のプロレスファンだ。得てしてこのポジションには、プロレス初心者の女性タレントを配置しがち。だが、プロレスについての素養を持つ倉持が、プロレスマニアに向けた目線で番組進行に徹してくれるから、番組としての熱量が終始高いまま推移する。  一方で、毎回登場するゲストには、多くの場合プロレス初心者、またはかつては見ていたけど……という、ここ最近のプロレス事情に詳しくない人選でバランスを取っていた。  序盤ゲストの綾部祐二(ピース)は、プロレスについてまったくの素人。その綾部が、回を追うごとに知識を身につけていく過程もまた面白い。それもこれも、知識がなくてもその世界観に引っ張り込んでいく有田の話芸があればこそだ。  以降、福田充徳(チュートリアル)→田中卓志(アンガールズ)→武井壮と、少しずつ、プロレスやスポーツについての知識量・マニアック度が高めのゲストに推移していき、中盤ではついに水道橋博士(浅草キッド)とケンドーコバヤシという、芸能界でも有田と並ぶプロレスマニアが登場。一気に熱量をMAXに持っていくかと思いきや、その後に、綾部以上のプロレス初心者・元AKBの宮澤佐江が登場。その宮澤に対して、AKBやアイドルに喩えながら、プロレスの歴史をわかりやすく説明しようとする有田の姿勢にも好感が持てた。  この1~2年ほど、「プロレスブーム再燃」といわれて久しい。ただ、プロレスにあまり詳しくない筆者からすると、どうにも「プロレス村」で騒いでいるだけのような印象を受けることもあった。そもそも、なぜブームが再燃しているのか? 過去のブームと今のブームは、どう違うのか? それを端的に解説してくれるコンテンツは、これまであまりなかった。  そこに目をつけたのがこの『有田と週刊プロレスと』。熱量高く、でも決してマニアックに振り切ることなく、毎回毎回、全日と新日の歴史的な背景から振り返り、それぞれのキーマンとなるレスラーの位置付け、キャラ付けを解説してくれる。  ある回で、有田自身がこう発言したことがあった。 「(エンタテインメントは)歴史を知れば知るほど、もっと楽しめるんです」  たとえば、第7回の「天龍・全日離脱事件」と、その続編ともいえる第12回の「天龍・全日劇的再会」エピソード。ちょうど収録のタイミングは、SMAP解散騒動で揺れていた昨年末。明示こそしなかったが、全日の内紛劇を通してSMAP解散についても語っているのは明らかだった。 「どんなに憎しみ合っても、いずれは時が解決し、わかり合える日が来る」と説いた有田。その、いつか来るはずの「わかり合える日」に向けて、「歴史を学ばなければならない」と有田は熱弁を振るう。  有田の話芸が際立つのは、プロレスの肝ともいえる「試合映像」が使えない点にある。それでも、「週刊プロレス」の過去記事と写真、そして、さまざまな歴史的シーンに居合わせたかのような有田のモノマネ再現によって、映像がないという弱みを感じさせないどころか、よりわかりやすく、面白くプロレスの知識を高めることができるのだ。 『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)では終始、生徒役の有田。だが、実は誰よりも先生役、というか「伝道師」が似合っている。この番組における有田は、まさに「プロレス伝道師」であり、「プロレス宣伝部長」なのだ。  第2シーズンがあるかどうかは未定、と最終回で語った有田。だが、間違いなく第2シーズンはやってくるはず。 「人生とは100m走ではなく、終わりのないマラソンのようなものである」  有田自身がこう語ったように、伝えたい話題もプロレス愛も、マラソンのようにまだまだ長い道のりがあるはずだから。その来たるべき新シーズンに向け、ぜひ一度Amazonプライム『有田と週刊プロレスと』のページを開いてみるのをオススメしたい。 (文=オグマナオト) ◆「熱血!スポーツ野郎」過去記事はこちら

コンセプトはよかったのに……NHK『明石家スポーツ』さんまを“裸の王様”にする、過剰な「接待」演出

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 昨年末、明石家さんま「31年ぶりのNHK出演」としてニュースになった『第1回明石家紅白!』。この流れをくみ、“明石家ふたたび”と銘打って放送されたのが、5月5日の『明石家スポーツ』だ。祝日のゴールデン帯にこの番組を持ってきたNHKの意気込みがうかがえる。  企画コンセプトは、スポーツの技やルールが生まれた「決定的瞬間」「歴史的瞬間」を、芸能界で随一のスポーツ通・さんまが厳選してお届けする、というもの。 「このVTRはNHKしかそろわんぞ……と思ったら、予想以上にそろわんかったですね(笑)」  といきなりオチをつけ、実際、「映像提供TBS」といった具合に他局から借り受けたモノも多かったわけだが、コンセプト自体はとても素晴らしかったと思う。 『アメトーーク!』(テレビ朝日系)しかり、『マツコの知らない世界』(TBS系)に出てくる各界のマニアたちしかり。好きなことを好きなだけ語り尽くす番組は、その分野を知らない人間が見ても一種のカタルシスが生まれて心地いい。  今回の『明石家スポーツ』でも、NHKが調べた内容に関して「“俺調べ”とは違うんやけどなぁ……」「俺の記憶が正しければ……」「これはNHKと勝負や!」と、スポーツ知識の競い合い。さんまが語るうんちくや知識にもそれぞれ説得力があって、結果としてその「さんま知識」が違っていても、ひとつのエンタメとして成り立っていた。  また、NHKの番組でここまでWOWOWやスカパー!、DAZNといったほかの放送局の名称が出たことはいまだかつてないはず。意図せずにじみ出てしまった「NHKスポーツへの物足りなさ」も、見ていてちょっとおかしかった。  ただ、残念だったことが2点。  ひとつは、そのマニアックさを振り切れなかったこと。なぜ、スポーツを知らない女性タレントを配置するのか。NHKのゴールデンだから親しみやすく……という配慮なのだろうが、さんまの熱量についてこられないタレントは、番組そのものの熱量をも下げてしまっている。スポーツのマニアック度を下げておきながら、「笑い声」を足していた場面もあったのは見ていて歯がゆかった。  もうひとつが、さんまに対しての接待感だ。これは今回の『明石家スポーツ』に限らず、ここ数年、さんまがゲスト出演する番組でもたびたび見かけるもの。むやみに「お笑いモンスター」と持ち上げ、あおるのは、一体誰のためなのか?  接待感の一例が、海外一流アスリート(今回でいえば、アメリカのフィギュアスケーター、グレイシー・ゴールド)から、さんまへのビデオレター。これ、さんまがうれしいだけで、視聴者的にはポカーンと置いてけぼりにされるばかり。演者や番組スタッフが、視聴者ではなくMCさんまを見てしまっているのだ。結果、それがさんまを「裸の王様」化しているように感じてならない。  さんまのスポーツ知識に対して「すごい」「なんでそんなこと知ってるんですか?」と持ち上げるのではなく、「いやいやさんまさん、それ違いますよ」と切り返せる、さらなるスポーツマニアを配したっていいはずだ。  今回の番組であれば、小宮山悟や前園真聖、織田信成といった元アスリートがその役割を担っていたのかもしれないが、「専門性を見せつけよう」という気概よりも、やはり「いかにMCさんまが気持ちよくしゃべれるか」に気持ちが向いていたように感じられた(そもそも、その役割を元アスリートに求めることが違うはずだ)。  繰り返すが、さんまがスポーツのことをマニアックに語る、というコンセプト自体は間違っていない。実際、さんまのスポーツ知識・造詣の深さの一端を、今回の番組でも示すことができていた。第2回の放送があるのならば、その「マニアックさんま」を、もっともっと生かす布陣を期待したい。 (文=オグマナオト)

群雄割拠の土日深夜スポーツ番組 王者・上田晋也に挑むピース又吉&ビビる大木に「足りないもの」

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『追跡 LIVE! SPORTS ウォッチャー』(テレビ東京)
 土・日の深夜といえば、スポーツニュース番組の最激戦区だ。民放各局では昨年度からずっと、下記4番組がほぼ同時間帯でしのぎを削っている。 『Going! Sports&News』(日本テレビ系/土・日:23時55分~) 『S☆1』(TBS系/土:24時30分~、日:24時~) 『追跡LIVE! SPORTSウォッチャー』(テレビ東京系/土:23時〜、日:22時54分~) 『スポーツLIFE HERO'S』(フジテレビ系/土:24時35分~、日:23時15分~)  この春、改編期に合わせて4者4様の衣替えを済ませた。それぞれの変化と狙いを見ていきたい。

■タレントを排したTBS、あくまでもタレントで攻めるテレ東

 今回の改編期に合わせ、最も様相が変わったのがTBS『S☆1』だ。爆笑問題の田中裕二、小島瑠璃子のMC2人が卒業し、伊藤隆佑アナと上村彩子アナ、局アナだけの進行に切り替わった。  一見すると、予算削減? 規模縮小? と感じてしまうが、リニューアル初週は二夜連続でイチローに独占インタビュー。企画・構成は、イチローに関する著書も多いスポーツライター・石田雄太とあって、掘り下げ方も独自の視点も、実に素晴らしかった。  第一夜は「43歳の衰えぬ体」。第二夜が「常識を超えた打撃」。 (周囲からの「年齢による衰えがくるはず」という言葉に対して) 「『そうであってほしい』という解釈ですよね。これから僕の絶頂期が来るって、どうして考えられないんだろう」 (パワーに依存しない体作りについて聞かれ) 「随分遠回りはしましたけど、随分無駄なことはしましたけど、やっぱりそうなんだ、って」 と、イチロー節も全開だった。  2週目はマスターズ中継のために短縮放送となったが、1週目の濃度がこのまま続くのかはまだ読めない。ただ、単なる予算削減ではなく、タレントのギャラ分で良質な取材が増えるのならば、その狙いは大歓迎だ。  一方で、あくまでもタレントによる番組作りを進めているのがテレ東の『SPORTSウォッチャー』だ。これまではピースの2人がMCを務めていたが、ニューヨークに渡る(予定の)綾部祐二に代わって、ビビる大木が新MCに加わった。  ビビる大木といえば筋金入りの巨人ファンだが、初登場となった8・9日の放送でも、やはりというか案の定というか、メイン企画は巨人について。特に9日の放送では、ゲストに阪神ファンでおなじみの千秋を招いて「巨人・阪神戦」の特集を組むなど、MCありきの番組構成になっていた感は否めない。  なお、9日のスポーツ番組で、トップニュースで「体操・内村航平10連覇」を扱わなかったのは『SPORTSウォッチャー』のみ。スポーツニュースの主役はあくまでも「スポーツの結果」か「アスリート」であるべきはずなのだが……。新MCというかせに縛られた番組作りが今後どうなっていくのか、心配な点ではある。  同番組では、『やべっちF.C.』(テレビ朝日系)以降、スポーツ番組でもすっかりおなじみになったワイプ芸も多用されているわけだが、正直なところ、矢部浩之ほど効果的とは思えない。野球知識が豊富な大木と、サッカー元大阪府代表だったという又吉直樹。それぞれの強みがもっと番組作りに生きてくることを願うばかり。マニー・ラミレスに独占密着した特集企画「Human watcher」など魅せる企画もあるだけに、タレントに頼らない企画を、もっともっと深めてもらいたい。

■新コーナーで攻める『Going!』と『HERO'S』の明暗

 アナウンサー陣の交代はあったものの、メインMCは代わらず、新コーナーで新年度を迎えたのが、『Going!』(日本テレビ系)と『HERO'S』(フジテレビ系)だ。 『HERO'S』の新コーナーは「影乃英雄」。勝利を裏側で支えたもう一人のヒーローにも目を向けよう、という内容。とても真摯でいい企画のはずなのだが、現状、ちょっと地味な印象も否めない。そりゃ、あえて「影」を取り上げているのだから致し方ない気もするのだが、今後、「このコーナーで取り上げられたい」という選手が増えて定着してくると、より深みが増してくるはず。粘り強く続けてもらいたい。  一方、解説陣のキャラクターをうまく生かした新コーナーを展開しているのが『Going!』。土曜日は元阪神・赤星憲広による「入り込み解説」。日曜日は江川卓による「昭和の怪物・江川が選ぶ、この選手『買物(かいぶつ)』です」。企画・目線の面白さもさることながら、結局のところ、『Going!』が飽きない理由は、MC上田晋也のコメント力によるところが大きい。『SPORTSウォッチャー』のビビる大木も又吉も、用意されたカンペを“読んでいる”感がアリアリとわかる。だから、ワイプでのコメントも視聴者に響いてこないのだ。  現状、視聴率では圧倒的な支持を集めている日曜夜の日本テレビ。その流れもあって、『Going!』の盤石さは今後も続いていきそうだ。 ***  日曜日夜のスポーツ番組といえば、NHKの『サンデースポーツ』に、この春20周年を迎えたテレ朝『Get Sports』、サッカーなら『やべっちF.C.』 と、ほかにも固定ファンのいる番組がひしめいている。だからこそ、それぞれ独自の切り口で、もっともっとスポーツファンをうならせてほしい。TBSの「イチロー特集」しかり、テレ東の「マニー・ラミレス特集」しかり。志と取材力のある企画には、視聴者もきっと食いついてくれるはずだ。 (文=オグマナオト) 熱血!スポーツ野郎』過去記事はこちらから

群雄割拠の土日深夜スポーツ番組 王者・上田晋也に挑むピース又吉&ビビる大木に「足りないもの」

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『追跡 LIVE! SPORTS ウォッチャー』(テレビ東京)
 土・日の深夜といえば、スポーツニュース番組の最激戦区だ。民放各局では昨年度からずっと、下記4番組がほぼ同時間帯でしのぎを削っている。 『Going! Sports&News』(日本テレビ系/土・日:23時55分~) 『S☆1』(TBS系/土:24時30分~、日:24時~) 『追跡LIVE! SPORTSウォッチャー』(テレビ東京系/土:23時〜、日:22時54分~) 『スポーツLIFE HERO'S』(フジテレビ系/土:24時35分~、日:23時15分~)  この春、改編期に合わせて4者4様の衣替えを済ませた。それぞれの変化と狙いを見ていきたい。

■タレントを排したTBS、あくまでもタレントで攻めるテレ東

 今回の改編期に合わせ、最も様相が変わったのがTBS『S☆1』だ。爆笑問題の田中裕二、小島瑠璃子のMC2人が卒業し、伊藤隆佑アナと上村彩子アナ、局アナだけの進行に切り替わった。  一見すると、予算削減? 規模縮小? と感じてしまうが、リニューアル初週は二夜連続でイチローに独占インタビュー。企画・構成は、イチローに関する著書も多いスポーツライター・石田雄太とあって、掘り下げ方も独自の視点も、実に素晴らしかった。  第一夜は「43歳の衰えぬ体」。第二夜が「常識を超えた打撃」。 (周囲からの「年齢による衰えがくるはず」という言葉に対して) 「『そうであってほしい』という解釈ですよね。これから僕の絶頂期が来るって、どうして考えられないんだろう」 (パワーに依存しない体作りについて聞かれ) 「随分遠回りはしましたけど、随分無駄なことはしましたけど、やっぱりそうなんだ、って」 と、イチロー節も全開だった。  2週目はマスターズ中継のために短縮放送となったが、1週目の濃度がこのまま続くのかはまだ読めない。ただ、単なる予算削減ではなく、タレントのギャラ分で良質な取材が増えるのならば、その狙いは大歓迎だ。  一方で、あくまでもタレントによる番組作りを進めているのがテレ東の『SPORTSウォッチャー』だ。これまではピースの2人がMCを務めていたが、ニューヨークに渡る(予定の)綾部祐二に代わって、ビビる大木が新MCに加わった。  ビビる大木といえば筋金入りの巨人ファンだが、初登場となった8・9日の放送でも、やはりというか案の定というか、メイン企画は巨人について。特に9日の放送では、ゲストに阪神ファンでおなじみの千秋を招いて「巨人・阪神戦」の特集を組むなど、MCありきの番組構成になっていた感は否めない。  なお、9日のスポーツ番組で、トップニュースで「体操・内村航平10連覇」を扱わなかったのは『SPORTSウォッチャー』のみ。スポーツニュースの主役はあくまでも「スポーツの結果」か「アスリート」であるべきはずなのだが……。新MCというかせに縛られた番組作りが今後どうなっていくのか、心配な点ではある。  同番組では、『やべっちF.C.』(テレビ朝日系)以降、スポーツ番組でもすっかりおなじみになったワイプ芸も多用されているわけだが、正直なところ、矢部浩之ほど効果的とは思えない。野球知識が豊富な大木と、サッカー元大阪府代表だったという又吉直樹。それぞれの強みがもっと番組作りに生きてくることを願うばかり。マニー・ラミレスに独占密着した特集企画「Human watcher」など魅せる企画もあるだけに、タレントに頼らない企画を、もっともっと深めてもらいたい。

■新コーナーで攻める『Going!』と『HERO'S』の明暗

 アナウンサー陣の交代はあったものの、メインMCは代わらず、新コーナーで新年度を迎えたのが、『Going!』(日本テレビ系)と『HERO'S』(フジテレビ系)だ。 『HERO'S』の新コーナーは「影乃英雄」。勝利を裏側で支えたもう一人のヒーローにも目を向けよう、という内容。とても真摯でいい企画のはずなのだが、現状、ちょっと地味な印象も否めない。そりゃ、あえて「影」を取り上げているのだから致し方ない気もするのだが、今後、「このコーナーで取り上げられたい」という選手が増えて定着してくると、より深みが増してくるはず。粘り強く続けてもらいたい。  一方、解説陣のキャラクターをうまく生かした新コーナーを展開しているのが『Going!』。土曜日は元阪神・赤星憲広による「入り込み解説」。日曜日は江川卓による「昭和の怪物・江川が選ぶ、この選手『買物(かいぶつ)』です」。企画・目線の面白さもさることながら、結局のところ、『Going!』が飽きない理由は、MC上田晋也のコメント力によるところが大きい。『SPORTSウォッチャー』のビビる大木も又吉も、用意されたカンペを“読んでいる”感がアリアリとわかる。だから、ワイプでのコメントも視聴者に響いてこないのだ。  現状、視聴率では圧倒的な支持を集めている日曜夜の日本テレビ。その流れもあって、『Going!』の盤石さは今後も続いていきそうだ。 ***  日曜日夜のスポーツ番組といえば、NHKの『サンデースポーツ』に、この春20周年を迎えたテレ朝『Get Sports』、サッカーなら『やべっちF.C.』 と、ほかにも固定ファンのいる番組がひしめいている。だからこそ、それぞれ独自の切り口で、もっともっとスポーツファンをうならせてほしい。TBSの「イチロー特集」しかり、テレ東の「マニー・ラミレス特集」しかり。志と取材力のある企画には、視聴者もきっと食いついてくれるはずだ。 (文=オグマナオト) 熱血!スポーツ野郎』過去記事はこちらから

中居正広問題、長すぎる試合時間……WBCから考える「野球中継の課題」

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 WBCが終幕した。メディア的に見れば、日本戦は軒並み高視聴率。テレビ朝日はこのWBC効果で、「日本テレビが35週連続で続けていた平均視聴率の週間三冠王記録をストップさせた」とニュースになった。 ただ、数字だけでは伝わらない「問題点」も散見されたのは事実。ともすれば、それらは「野球嫌い」を作ってしまうきっかけにもなりかねない。野球の国際大会は、どのように「見せる・魅せる」べきなのか? 熱が冷めきらないうちに、あらためて考察しておきたい。 ■サポートキャプテン、中居正広の功罪  すっかりおなじみになった、侍ジャパン中継における公認サポートキャプテン・中居正広の存在。野球ファンの純度が高ければ高いほど、こうした「タレント枠」を嫌う傾向にあるわけだが、だからこそ感じたのが、中居のさまざまな「配慮」だ。    それこそ、中居自身が純度の高い野球ファン。自分の存在を快く思っていない層がいることは重々承知しているはず。だからなのか、以前のプレミア12などと比べても前に出すぎようとせず、自らが加わる野球の戦術的な話よりも、選手間の会話やベンチでの様子についてのレポートに時間を割いていた。  一方で気になったのは、放送局側の中居への過剰な配慮だ。 「●●選手がこんなことを“おっしゃっていました”」とレポートする中居。「中居さんが話を聞いて“くださりました”」と受ける実況アナウンサー。  そもそも、中居が選手に対して過剰な敬語を使ってレポートするのも、スポーツ中継としてはおかしなこと。それにかぶせて中居に対して敬語を使うことで、誰が誰に気を使っているのやら……という状況になっていた。  また、SNSで話題になっていたのが、元SMAPメンバーに対しての中居の配慮。木村拓哉主演の『A LIFE~愛しき人~』(TBS系)。草なぎ剛主演の『嘘の戦争』(フジテレビ系)、香取慎吾出演の『おじゃMAP!!』(同)と試合中継がかぶると、それぞれの放送が終わるまで、つまりSMAPメンバーと裏かぶりしないように中居レポートが途絶えていたことが美談として盛り上がっていた。  ……それって、果たして美談なんだろうか? スポーツ中継のレポーターを務めていながら1時間何も言葉を発しない、というのはナシだろう。それでは、「じゃあ仕事を受けるな」と言われても、「いなくてもいい存在」と見られても仕方がない。  ただ、今回2つの点で中居を見直したことがある。まずひとつは、日本が出場しない決勝戦でも、現地からの生中継に参加していたこと。まあ、もともと予定していた試合だから、というのはあるだろうが、侍ジャパンが不在で、裏では国民的関心事の籠池証人喚問の生中継。その中にあって、WBC決勝戦という、本来であればもっと注目されてしかるべき試合への一般視聴者の興味をつなぎ留めることに、少なからず貢献していたはずだ。  そしてもうひとつが、大会終了後に発したコメントに関して。   「短期決戦の中でチームとして一丸になったと思いますし、この選手がいれば良かったなぁとか一切思うことのなかった、ベストの侍ジャパンだったんじゃないかと思います」という談話がスポーツ新聞に掲載されていた。  一部メディアでは、「(直前でケガのために辞退した)大谷翔平がもしいれば……」という仮定での検証記事を掲載していたが、それはあまりにもナンセンス。出場した選手たちに対しても失礼だ。中居のコメントは圧倒的に正しかった。 ■試合時間が長くなってしまうのは、開始時刻だけの問題なのか?  WBCで毎回議論になるのが、試合時間の長さだ。特に東京で行われたオランダ戦は、終電を逃すファンも続出。テレビ朝日が満を持してプライムタイム帯で放送を予定していた『プロレス総選挙』が深夜放送になってしまうという、悲喜こもごもを生んだ。  これに関しては、スポーツ報知などで「試合開始を1時間早めるべき」といった記事が掲載され、おおむね賛同する意見が多かったように思う。  ただ、本質的な問題は、もっと違うところにある。それがCMの長さだ。WBCではイニング間のCM時間が2分30秒。これは、通常の野球中継よりも長い。  現在、プロ野球ペナントレースでは、イニングインターバルを「2分15秒以内にプレー再開」と規定している。試合時間のスピードアップのための施策だが、これでもまだ長い、という意見もある。  一方、WBCではイニング間のCMが2分30秒あるのだから、イニングインターバルは、それ以上空いていたことになる。  ひとつ断っておくと、私はCMそのものを否定しない。これだけ規模の大きな大会。運営費を賄うためには必要不可欠だし、マネタイズをどうするかも重要な要素だ。だが、実際の中継では試合時間があまりに長くなってCM枠を使いきってしまい、試合後半はCMが流れない、といった状況も何度となく起きていた。なんだかなぁ、である。  危惧をするのは、「野球って、とにかく時間のかかる競技だよね」というイメージばかりが定着してしまうこと。だからといって、イニング数を減らしたほうがいい、とか、今年からMLBで導入する敬遠四球の簡素化、などの議論になるのも性急だ。野球という競技の魅力を損なうことなく、時間短縮のためにできることはなんなのか? そこに、問題提起なり、CM送出方法のアイデアなど、メディアとして介在できる努力は、もっとあるのではないだろうか? ■野球はこうあるべき、という提言ができるメディアはあるのか?  同様の議論になってしまうのだが、野球という競技の未来を、メディアはどう考えているのだろうか? 一時の「興行」としての盛り上がりだけではない、競技のあるべき姿につながる議論が、もっとメディアで盛んに行われればいいのになぁと思ってしまう。  一例を出したい。日本が敗れた準決勝。そのまさに裏では、センバツ甲子園の滋賀学園対東海大市原望洋の試合が、延長14回までもつれる熱戦となっていた。勝った滋賀学園の棚原孝太投手の球数は192球。敗れた東海大市原望洋の金久保優斗投手の球数は218球。まさに熱投だ。  だが、一歩引くと、野球という競技が抱える歪みが満載だ。WBCでは、大人のプロ選手が、シーズン前とはいえ95球以内という球数制限の中で試合を行い、成長過程の高校生が200球超え。延長14回まで戦って試合時間3時間の高校野球に対して、日本対アメリカの準決勝は9イニングで3時間12分。審判に抗議もできない高校野球に対して、一球一球ビデオ判定連発のWBC……。同じ競技なのに、この複雑さ。野球に興味のない人は、これでついてこられるのだろうか?  これらの点に関して、問題提起をするメディアは実に少ない。むしろ、センバツでの200球も奮闘をたたえる要素として扱いがちだ。個人的に、野球での球数制限には否定派なのだが、こうも歪みが生じてしまうのであれば、何かしら検討を始めたほうがいいのではないか、と思ってしまう。  WBCで盛り上がった今こそ、建設的に話ができる絶好の機会。野球という競技の未来の未来について語るべきだ。 (文=オグマナオト) 熱血!スポーツ野郎』過去記事はこちらから

当時の実況音源で蘇る、三浦知良の「サッカー人生で最も“重い”ゴール」

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『神様に選ばれた試合』テレビ朝日
 イチローと三浦知良。年齢の壁を超えて光り輝く2人のスーパースターを特集したスポーツ・ドキュメント『神様に選ばれた試合』(テレビ朝日系)が5日に放送された。  過去にも、「田中将大 日本最後の15球」(2013年)、「PL対横浜 甲子園延長17回の死闘」(1998年)、「ジョホールバルの歓喜」(97年)など、日本スポーツ史に燦然と輝く名場面を取り上げ、当事者たちの証言を元に「この試合」「この一球」を振り返ってきた良質なスポーツ・ドキュメンタリー。不定期とはいえ、にぎやかしタレントも一切出ない番組をプライムタイムで放送するところに、テレ朝がスポーツにかける並々ならぬ決意を感じる。  今回の『神様に選ばれた試合』で取り上げたのは、第2回WBCで日本を世界一に導く決勝打を放ったイチローの苦闘。そして、先日50歳を迎えたカズと、日本サッカーの歩んできた道。特にカズ自身が「最も重いゴールとカズダンス」と語った11年の震災復興支援チャリティーマッチでのゴールについてピックアップしていた。  とても良質な番組だっただけに、細かな演出で気になる点があった。「実況」の扱い方についてだ。  イチロー編において、第2回WBC決勝戦映像が流れる際の実況の声は、テレビ朝日・清水俊輔アナウンサー。テレビ朝日が中継する日本シリーズでマイクを握るのはもちろん、前回のWBCでもテレビ朝日担当試合ではすべて実況を担当。テレ朝スポーツのエースだ。だが、連覇のかかった09年WBC決勝戦の中継はTBS。つまり、今回の番組で流れた清水アナの実況は「アフレコ」ということになる。  TBSの映像(実況)を使わなかった理由はいくつもあるのだろう。単純に権利関係かもしれないし、TBSの中継ではスペシャル・コメンテーターに清原和博を起用していたため、編集上の問題で使えなかった、という可能性も高い。  自局で中継していない場合、あとから実況をかぶせるというスタイルはよくあることだ。しかし、結果を知っているアナウンサーの声に緊張感が宿らず、結果として場面に入り込めなくなってしまうケースが多々ある。  その点、清水アナのアフレコ実況は、適度な緊張感をにじませるものだった。さすがはテレ朝のエース。だが、違和感を覚えたのは「実況:韓国も守る!名勝負になりました」といった、実況を強調したテロップが何度か流れたこと。この実況は当然、試合のときにはなかったもの。目に余る実況テロップはなかったとはいえ、スポーツ・ドキュメンタリーとしては過剰演出になっていた、ともいえる。  一方、「当時の実況音源」にこだわっていたのが三浦知良編だった。「ドーハの悲劇」「ジョホールバルの歓喜」「震災復興支援チャリティーマッチ」の3試合に焦点を絞ってカズが歩んできた道を振り返ったわけだが、それぞれの試合で流れていた実況は、ラジオのニッポン放送が実際に中継した音源(ドーハとジョホールバルは師岡正雄アナ、震災復興マッチは煙山光紀アナ)だった。  93年の「ドーハの悲劇」を中継したのはテレビ東京。地方出身だった筆者の地域でテレビ東京は映らず、ラジオにくぎ付けにならざるを得なかった。そんな私にとって、あの試合の思い出は師岡アナの声で記憶されている。そんなスポーツファン、サッカーファンは少なくないはずだ。  かつてのヒット曲を聴くと当時の思い出が脳裏に甦る……という経験は多くの人があるだろう。同じことが、スポーツファンにとって実況アナウンサーの声で起きることがある。だからこそ、こういった振り返りのスポーツ・ドキュメントでは「当時の実況音源」を大切にしてほしいのだ。サッカー編でできたのだから、野球編でだって方法はあったはずだ。  震災復興支援チャリティーマッチの実況を担当したニッポン放送の煙山アナウンサーに以前、あの試合における実況の意味を聞いたことがある。 「『復興支援チャリティーマッチ』って、テレビで見た人とラジオで聴いた人とではまったく違う印象なんですよ。テレビはたぶん、ああいう試合だし、一部では開催自体に批判もあったから、ちょっとかしこまってやったんです。でも、ラジオのほうは僕がもう入場時から半泣きになっていて、試合中も泣きそうになりながらしゃべっていて。ピッチレベルの音もサポーターの声もしっかり響いて、ものすごく盛り上がった試合でした。そんなふうに、同じものを伝えても違うものになる……そこが、ラジオのひとつの腕の見せどころなんじゃないかと思います」  今回の『神様に選ばれた試合』では、そのラジオの魅力と映像の持つ説得力とが見事にかけ算となり、カズの偉大さをより際出たせていたと思う。  それだけに、番組最後で「なぜ?」と思うことがもう1点あった。エンドクレジットの「協力」にニッポン放送の名がなかったことだ。いや、私が気にすることではないのかもしれないが、もっと「実況の著作権」について大切にしてほしい。スポーツ紙を出すときに紙名と日付を出すように、実況についてもどこかでクレジットを出してもいいはずだ。 (文=オグマナオト) ■『熱血!スポーツ野郎』過去記事はこちらから

“日テレ・スポーツの顔”上田晋也に期待したい、障害者スポーツの伝え方

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BS日テレ『ストロングポイント』番組サイトより
 くりぃむしちゅー・上田晋也の、“日テレ・スポーツの顔”化が止まらない。  週末の『Going! Sports&News』に、未来のメダリストを取り上げる『上田晋也の日本メダル話』、24日放送の「金曜ロードShow!」枠では、スポーツエンタテインメント特番『人生が二度あれば 運命の選択』で大トリのナビゲーターも務めた。  そんな上田が関わる日テレ系スポーツ番組で、もっと知られるべきだと思うのが、BS日テレの『ストロングポイント』(毎週土曜17時30分~)だ。上田がナレーションを務める「民放BS初のレギュラー障がい者スポーツ番組」が、この2月末で1周年を迎えた。  年々、注目度が高まっているパラスポーツということもあって、地上波でも『PARA DO!』(フジテレビ系)や『勇気のシルシ~パラアスリートの挑戦~』(TBS系)といった番組が始まっている。だが、こちらはどちらも5分に満たないミニ番組。その中にあって、毎週30分、一人のアスリートをじっくり掘り下げる『ストロングポイント』は、パラスポーツを知る手がかりとして貴重な存在だ。  パラスポーツはクラス分けが複雑だったり、個々の抱える障害がどう競技に影響を及ぼしているのか、言葉では伝わりにくい場合も多い。だからこそ、ルール解説から含め、丁寧に競技特性を伝えてくれるのも、この番組の魅力のひとつといえる。  ただまあ、気になる点もある。良くも悪くも、上田のナレーションだ。どうにも「カッコつけすぎる」のだ。ちょっと想像してほしい。もはや懐かしい「うんちく王・上田」の決めゼリフのときのような、あのドヤ顔をしているに違いないという低音ボイスで番組が始まる。もういきなり重い。そこから少しずつ冗談も交えながら、軽いナレーションに切り替わっていくのだが、番組内容やコンセプトがいいだけに、入り方はもうちょっとどうにかしていただきたい。  それと比べて、ごくまれにあるロケの回は、もう抜群に面白い。パラアスリートのスゴさを、上田ならではの純粋な驚きで表現してくれる。  筆者自身、パラアスリートに取材する機会があるのだが、彼ら・彼女らは普段なかなか注目されないからこそ、語りたがりであることが多い。そして、健常者アスリート同様、世界で戦っている選手たちは常軌を逸した「超人性」を秘めている。その「素の部分」と「超人性」を的確に表現できるのは、例えツッコミの元祖ともいえる上田ならではだ。  特に1月放送のブラインドサッカー回は、その魅力が顕著だった。この回では、上田のほかに横浜F・マリノスの新10番・齋藤学がロケに参加し、上田とともにブラインドサッカーに初挑戦。期待通りのズッコケプレーを見せる上田に対して、齋藤は目隠し状態でも足元の感覚だけでスムーズなドリブルを披露するという、J屈指の技術の高さを見せつける形となった。そして、その齋藤も舌を巻く、ブラインドサッカー選手の「視覚に頼らない空間把握能力」という異能ぶり。ひとつの放送で、パラアスリートとサッカー日本代表の技術力を証明する形となったのだ。  加えて、齋藤がミスをすると、おなじみ「ぶはははは!」の大爆笑。障害者番組で、ここまで笑いがあふれるのは珍しい。  障害者をテーマにする番組は、往々にして真面目すぎたり、変に「感動」の方向性に持っていこうとしがちだ。もちろん、それはそれで正しいのだが、時には、とことんふざけた一面を見せてもいい。『ストロングポイント』はそのへんのバランス感覚にも優れているから、毎週見ていて、変におなかいっぱいにならない。上田のバランス感覚の妙もあるはずだ。  だからこそ、上田晋也にというか、日本テレビに期待したいことがある。  ひとつは、もっと『Going! Sports&News』でもパラスポーツを取り上げてほしいということ。もちろん、相対的な注目度からいって時間を割けない、というのはわかる。だが、19日の『Going! Sports&News』では亀梨和也の4月からの新ドラマの話題をわざわざニュース枠で取り上げ、上田が「スポーツ番組ですけどぉ!」と声を荒らげる場面があった。  上田の発言はもちろんポーズではあるだろうが、上田の憤りを「その通り」と思った視聴者も多いに違いない。だって、その時間で、もっとほかの競技について扱うことができるから。  特にこの日は、パラアスリートの中では知名度の高い成田緑夢と山本篤が、障害者スノボ全国大会に出場。成田が連覇を達成したニュースは、NHK『サンデースポーツ』も取り上げる大きなネタだった。山本に至っては『ストロングポイント』の最多出演者。上田ならではのコメントだって出せたはずだ。プロ野球のペナントレースが始まれば、もっともっと野球一辺倒になっていくのが目に見える『Going! Sports&News』なだけに、オフシーズンの今くらいは、適度なバランス感覚を保持してほしい。  そしてもうひとつ、切実に期待したいのが『24時間テレビ』における障害者の取り上げ方だ。「感動ポルノ」と批判されて久しい『24時間テレビ』にこそ、『ストロングポイント』の真摯な番組作りを見習ってほしい。なんならこの番組をベースにして『24時間テレビ』をやってみてはどうだろうか? いや、本気で。 (文=オグマナオト)

『アメトーーク!』は物足りなかった!? 相撲ブームの今こそ再注目したい、ナイツ塙の相撲愛

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マセキ芸能社公式サイトより
「大谷翔平スゴイぞ芸人」「スクール☆ウォーズ芸人」に続いての、スポーツネタ3連発となった『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「相撲大好き芸人」(12日放送)。新横綱・稀勢の里ブームに沸く大相撲だが、番組企画は初場所での稀勢の里優勝前だったというから、そのあたりの時流を読む巧さはさすがだ。  芸人たちの話術以上に、相撲の「画力」で見せていた番組構成は非常に好感が持てた。相撲ライトユーザーも、コアなファンも、双方楽しめる内容になっていたのではないだろうか。やはり『アメトーーク!』は、マニアックなネタを大衆向けにマイルドにしていく企画よりも、大相撲のような誰もが知ってはいるけれど……というネタに真正面から切り込んでいくほうが面白い。  それはさておき、12日の放送では、大相撲中継でゲスト解説を務めることもあるデーモン閣下、そして曙×イチロー、白鵬×旭鷲山の知られざるエピソードを語ったキンボシ西田の2人の独壇場だったように思う。  それだけに、リーダーを務めたナイツ・塙宣之のおとなしさが、ちょっともったいなく思えてしまった。もっと塙の“相撲話芸”を披露してほしかったのだ。放送でカットされている分はあるだろうし、リーダーとして、ほかの芸人(特に、普段ラジオなどで名前だけはやたらと紹介しているキンボシ西田)の話を引き出そうとしていた部分はあるだろう。だが、特にこの1年、芸能界で最も相撲人気に貢献していたのは塙宣之であり、ナイツだと思う。  たとえば、ちょうど1年前、2016年2月放送の『炎の体育会TV』(TBS系)では「大相撲が100倍楽しくなるスゴ技映像ベスト3」を熱烈プレゼン。小錦の突っ張り、琴奨菊のがぶり寄り、霧島のうっちゃりについて、映像とともに熱く語り倒していた。  5月29日の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、「相撲界で話題の宇良に迫る」と題して、十両・宇良の珍しい決まり手を、なぜか塙が解説。塙といえば、「ご存じでしょ」とばかりに浅草芸人の名を次々連ねるのがおなじみだが、この日の『ワイドナショー』では同様に、「ご存じでしょ」と十両力士の名を笑いなしで語り続け、「情報量が多すぎる(笑)。宇良君に詳しすぎて笑ってしまう(笑)」という松本人志のコメントを引き出していた。  年末放送のNHK特番『大相撲この一年』では、北の富士、舞の海と並んで角界の1年間を総まとめ。ご意見番2人に負けず劣らずの相撲知識を披露していた。また、相撲における優勝の難しさと、漫才の賞レースで勝つことの難しさについて問われた際には「優勝候補といわれると、自分をよく見せようと思っちゃって、そうじゃないリラックスしているコンビに優勝をかっさらわれるとかありますね。ただ、優勝したいという気迫もないと優勝できない」とコメント。さすがの分析力だった。  ついでに言うと、BS・CSの優れた番組や企画に贈られる「衛星放送協会オリジナル番組アワード2016」のバラエティ部門最優秀賞は、塙がナレーションを担当するフジテレビONE『大相撲いぶし銀列伝』だ。  塙が素晴らしいのは、相撲への愛情や敬意が常に感じられる点はもちろん、番組で披露する相撲話に、“かぶりネタ”が少ない点にある。 『アメトーーク!』芸人に少なからずあるのが、「違う番組でしゃべってたネタ、ここでもまた使ってるな」という場面だ。一度目は面白くても、何度も聞かされると飽きてしまうもの(もっともこれは、芸人の問題よりも、番組サイドの「あの面白い話、またお願いします」というオーダーもあったりするのだろうが)。だが、番組ごとに少しずつ視点を替え、取り組みを替え、力士を替えて相撲の魅力を語る塙を見ていると、その話芸の巧みさと、大相撲の奥深さを知ることができる。  加えてここ最近は、バラエティやスポーツ系番組以外、つまり本業の寄席やテレビ番組で披露する漫才でも「相撲ネタ」が増えてきた印象がある。かつて、「野球はなんにでも例えられる」と語っていた塙だが、同様に、相撲や力士もなんにでも例えることができるようだ。そして、もちろん、この相撲漫才がすこぶる面白い。地方の寄席では、その土地ごとに出身力士の話題を枕に使い、場を盛り上げているという。  新横綱・稀勢の里の誕生に沸く今、やっと来た相撲ブーム。この時流に合わせて、ナイツ塙の相撲ネタ・相撲漫才を披露する機会が、もっともっと増えてほしいと願うばかりだ。 (文=オグマナオト) ◆「熱血!スポーツ野郎」過去記事はこちらから◆