オードリー・若林正恭の“熱い姿”が見られる唯一の番組が、今シーズンもやっぱり熱かった件

 今年に入ってから、コンビそろって話題を提供し続けているのがオードリーの2人、若林正恭と春日俊彰だ。新春早々、女優・南沢奈央との熱愛が発覚し、メディアをにぎわせたり番組でいじられたりしている若林。一方の春日は、東大受験の話題がこれまたスポーツ紙をにぎわせている。

 特に若林は、これまでの「人見知りキャラ」「女の子苦手芸人」「草食系」とのギャップも相まって、いいネタというか、カモにされている印象すらある。いずれにせよ、コンビのどちらにもニュースバリューがある、という時点で、今のオードリーの安定ぶりがうかがえる。

 そんなオードリーの魅力がもっとも味わえる番組は何か、というと、筆者が一番推したいのが、彼らのレギュラー番組のなかでも認知度が低いであろう、金曜深夜放送のオードリーの『NFL倶楽部』(日本テレビ系)だ。

 アメリカ4大スポーツのひとつ、プロ・アメリカンフットボール(NFL)の試合結果と魅力を伝えてくれるこの番組。オードリーがレギュラーになったのが2010年シーズンだから、もう7シーズン目に突入したことになる。振り返れば、オードリーがM-1で準優勝し、その勢いのままテレビに出まくって一気にスターダムにのし上がったのが2008~09年の出来事。まだ人気者になったばかりの頃から、芸能界で盤石な地位を築いた今でも、オードリーの2人がライフワークとして熱を入れ続けているのがこの番組ではないかと思っている。

 世間的には、暑苦しくて空回りしている春日と、それを冷静に処理する若林、という構図で認知されているオードリー。だが、この番組ではむしろ逆。春日は変わらず空回りしがちなのだが、若林の熱が過剰になるあまり、春日以上に空回りすることも。「人見知り」で「草食系」な若林なんて、この番組には存在しない。とにかく若林が熱すぎるのだ。

 今月2日深夜、アメリカプロスポーツ最大の祭典・スーパーボウル直前の放送でも、番組終盤に突然、「俺はねぇ、ずっと我慢してきたんですけど……ブレイディが好きだぁ!」と叫んだ若林。ブレイディとは、これまで若林が番組において“アンチ”を公言してきたNFL屈指のスーパースター(なぜなら、地位も名誉も手にしていて、奥さんも美人だから)。そのブレイディを「すごい」と評することはあっても、「好き」と語ったことは、これまでなかったはず。実際、4日に行われた今年のスーパーボウルでは、そのブレイディの一投が勝敗を決する最後のプレーとなり、9日深夜に放送された『NFL倶楽部』では、そのプレーを振り返りながら、「最後の0秒まで(勝敗の行方が)わからないのは、ブレイディだから。それを俺らは何度も見てきているからね」と、しみじみとコメントした若林。前の週の熱い叫びがあるからこそ、より印象的なひと言になっていた。

 また、番組では毎週、「若林の熱視線」というコーナーでNFLのプレーをマニアック解説。この番組におけるオードリーの役割は本来「MC」のはずなのだが、進行はアナウンサーに任せ、しっかりと解説業までこなしてみせている。先月には、この「若林の熱視線」を書籍化した『オードリーのNFL倶楽部』(文藝春秋)が発売。すぐに増刷が決まったというから驚かされる。

 オードリーが好きな人であっても、「NFLには興味ないから」とか「深夜だから」「(NFLシーズンだけに放送される)不定期番組だから」と見ていない人が多いのではないかと思われるこの『NFL倶楽部』。だが、オードリーファンにこそ見てほしい。というのも、この番組で見せる2人の関係性こそが、「オードリーの原点」だからだ。

 学生時代、ともに同じ高校のアメフト部でプレーしていた2人。若林は、関東代表にも選ばれる選手だった春日を見て、「いつか、こいつとコンビを組もう」と思ったといわれている。その後、実際にコンビを組み、結成当初にやっていたネタのひとつがアメフトのショートコント。それどころか、春日の決めゼリフである「トゥース!」も、もともとはアメフトで集合の合図として使われる掛け声だ。この『NFL倶楽部』では番組冒頭の合図として使用され、若林もしっかり声を張っている。

 芸能人が、あるスポーツの魅力について語ることは許せても、解説までしてしまうと「ちょっと待てよ」と思うことも珍しくない。だが、アメフトとNFLに関しては、オードリーの2人の7シーズンにわたる継続的な取り組み、そして「若林の熱視線」の信頼性もあって、不思議と嫌な感じがしない。今季の放送も残りあと数週間。試合自体はもう終わっているので、あとはオードリーのスーパーボウル珍道中がメインになるはず。むしろここからオードリー色がさらに濃くなると思うので、ぜひ一度、熱すぎる若林に熱視線を送ってもらいたい。
(文=オグマナオト)

オードリー・若林正恭の“熱い姿”が見られる唯一の番組が、今シーズンもやっぱり熱かった件

 今年に入ってから、コンビそろって話題を提供し続けているのがオードリーの2人、若林正恭と春日俊彰だ。新春早々、女優・南沢奈央との熱愛が発覚し、メディアをにぎわせたり番組でいじられたりしている若林。一方の春日は、東大受験の話題がこれまたスポーツ紙をにぎわせている。

 特に若林は、これまでの「人見知りキャラ」「女の子苦手芸人」「草食系」とのギャップも相まって、いいネタというか、カモにされている印象すらある。いずれにせよ、コンビのどちらにもニュースバリューがある、という時点で、今のオードリーの安定ぶりがうかがえる。

 そんなオードリーの魅力がもっとも味わえる番組は何か、というと、筆者が一番推したいのが、彼らのレギュラー番組のなかでも認知度が低いであろう、金曜深夜放送のオードリーの『NFL倶楽部』(日本テレビ系)だ。

 アメリカ4大スポーツのひとつ、プロ・アメリカンフットボール(NFL)の試合結果と魅力を伝えてくれるこの番組。オードリーがレギュラーになったのが2010年シーズンだから、もう7シーズン目に突入したことになる。振り返れば、オードリーがM-1で準優勝し、その勢いのままテレビに出まくって一気にスターダムにのし上がったのが2008~09年の出来事。まだ人気者になったばかりの頃から、芸能界で盤石な地位を築いた今でも、オードリーの2人がライフワークとして熱を入れ続けているのがこの番組ではないかと思っている。

 世間的には、暑苦しくて空回りしている春日と、それを冷静に処理する若林、という構図で認知されているオードリー。だが、この番組ではむしろ逆。春日は変わらず空回りしがちなのだが、若林の熱が過剰になるあまり、春日以上に空回りすることも。「人見知り」で「草食系」な若林なんて、この番組には存在しない。とにかく若林が熱すぎるのだ。

 今月2日深夜、アメリカプロスポーツ最大の祭典・スーパーボウル直前の放送でも、番組終盤に突然、「俺はねぇ、ずっと我慢してきたんですけど……ブレイディが好きだぁ!」と叫んだ若林。ブレイディとは、これまで若林が番組において“アンチ”を公言してきたNFL屈指のスーパースター(なぜなら、地位も名誉も手にしていて、奥さんも美人だから)。そのブレイディを「すごい」と評することはあっても、「好き」と語ったことは、これまでなかったはず。実際、4日に行われた今年のスーパーボウルでは、そのブレイディの一投が勝敗を決する最後のプレーとなり、9日深夜に放送された『NFL倶楽部』では、そのプレーを振り返りながら、「最後の0秒まで(勝敗の行方が)わからないのは、ブレイディだから。それを俺らは何度も見てきているからね」と、しみじみとコメントした若林。前の週の熱い叫びがあるからこそ、より印象的なひと言になっていた。

 また、番組では毎週、「若林の熱視線」というコーナーでNFLのプレーをマニアック解説。この番組におけるオードリーの役割は本来「MC」のはずなのだが、進行はアナウンサーに任せ、しっかりと解説業までこなしてみせている。先月には、この「若林の熱視線」を書籍化した『オードリーのNFL倶楽部』(文藝春秋)が発売。すぐに増刷が決まったというから驚かされる。

 オードリーが好きな人であっても、「NFLには興味ないから」とか「深夜だから」「(NFLシーズンだけに放送される)不定期番組だから」と見ていない人が多いのではないかと思われるこの『NFL倶楽部』。だが、オードリーファンにこそ見てほしい。というのも、この番組で見せる2人の関係性こそが、「オードリーの原点」だからだ。

 学生時代、ともに同じ高校のアメフト部でプレーしていた2人。若林は、関東代表にも選ばれる選手だった春日を見て、「いつか、こいつとコンビを組もう」と思ったといわれている。その後、実際にコンビを組み、結成当初にやっていたネタのひとつがアメフトのショートコント。それどころか、春日の決めゼリフである「トゥース!」も、もともとはアメフトで集合の合図として使われる掛け声だ。この『NFL倶楽部』では番組冒頭の合図として使用され、若林もしっかり声を張っている。

 芸能人が、あるスポーツの魅力について語ることは許せても、解説までしてしまうと「ちょっと待てよ」と思うことも珍しくない。だが、アメフトとNFLに関しては、オードリーの2人の7シーズンにわたる継続的な取り組み、そして「若林の熱視線」の信頼性もあって、不思議と嫌な感じがしない。今季の放送も残りあと数週間。試合自体はもう終わっているので、あとはオードリーのスーパーボウル珍道中がメインになるはず。むしろここからオードリー色がさらに濃くなると思うので、ぜひ一度、熱すぎる若林に熱視線を送ってもらいたい。
(文=オグマナオト)

今年は“当たり年”だけに……2018年の「スポーツの伝え方」で期待したいこと

 2018年はスポーツの当たり年。目前に迫った平昌冬季オリンピックから始まり、3月の平昌パラ、6月のサッカーロシアW杯、夏の甲子園第100回記念大会と、ビッグイベントが目白押しだ。だからこそ、スポーツを伝える側に期待したい点や注目メディアについて、3つの視点から探ってみたい。

■卓球界の“広告塔”は誰になる!?

 

 14歳の張本智和が史上最年少で全日本王者になるなど、ますます盛り上がりをみせる日本卓球界。卓球が楽しめるカフェやバーも一気に増えてきた。卓球はここ数年、オリンピックや世界選手権で好成績を収めるなど、日本人が世界で活躍できる競技という立ち位置を確立。“日陰の部活動”の代名詞だった時代がウソのような盛り上がりぶりだ(もちろん、とても喜ばしい)。

 ただ、その日陰だった時代があるからなのか、今ひとつ突き抜けた盛り上がりを手にできていないように思う。そこで重要になってくるのが「卓球の広告塔」の存在だ。

 この「広告塔」には2種類ある。ひとつは、アスリート側=アイコン的選手の台頭だ。数年前まで、卓球界のアイコン的役割を担ってきたのは福原愛だったが、現在は休養中。そこに生まれた待望の新スターが“チョレイ”張本智和、というわけだ。

 そして、もうひとつの広告塔がメディア側の人材。しゃべりのプロが、いかに競技や選手の魅力を広げてくれるかどうか。卓球の場合、この部分でもの足りなさがある。わかりやすくいえば、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「卓球芸人」を企画する際に、リーダーとしてその魅力が語れる人物がまだ見当たらないのだ。

 現在、この立ち位置に最も近いのは、テレビ東京系の卓球中継でパーソナリティを務める福澤朗。そして、らくご卓球クラブを取り仕切る三遊亭小遊三……うーん……若手世代に向けて発信していくには、ちょっと重鎮すぎるのだ。もっと楽しく、ほどよく熱く卓球の魅力について語れる人材が出てくると、卓球界の盛り上がりはいよいよ本物になるのではないだろうか。

 高校野球におけるアンジャッシュ・渡部建、広島カープにおけるチュートリアル・徳井義実、相撲におけるナイツ・塙宣之といったポジションに、卓球では誰が落ち着くのか? そろそろ今年あたり定まってもいい頃合いだと思うので、注目して待ちたい。

 

■LINE NEWSのスポーツインタビュー企画が新しい

 

 スポーツの話題がどんどん増えているからこそ、それを伝えるメディアの数もWEBを中心にどんどん増えている。ただ、正直いって玉石混淆。ページビュー獲得だけを狙った質の悪い記事も多い。また、スポーツ紙、スポーツ雑誌がWEB用に展開する記事やコラムの場合、細かくページが分断されて公開されているものがほとんどで、はっきりいって読みにくい。ページビュー信仰の悪しき弊害だ。

 そんな中、異彩を放っているのが昨年10月からスタートしたLINE NEWSのインタビュー企画。LINE NEWS編集部が独自に取材したコンテンツが「読みやすく」「内容も深い」と評判だ。特に今月公開された第7弾、『阿部勇樹、イビチャ・オシムに会いに行く。』の前・後編は、スマホ時代のスポーツ・ノンフィクションの見本になるのではないだろうか。

 具体的には、従来のページビュー狙いではなく、明らかにページ滞在時間狙いでつくられていること。ページを切り替えることなく、下へ下へとスクロールして最後まで読み進めることができる。また、スマホで読むことに特化した文字量やサイトデザインがなされているのも特徴的だ。ひとつひとつのパラグラフが短く、合間合間に取材動画が挿入され、記事内容の補完的役割を果たしている。

 もちろん、こうした表現をするサイトやコンテンツはこれまでにもあったが、ことスポーツネタではまず見かけることはなかった。文字情報と動画をうまくリンクさせたスポーツ記事も新鮮だ。

 興味深いのは、これらの特集企画を取材・執筆しているのが、スポーツ紙の元記者であるということ。スポーツ紙ならではの取材力はそのままに、スマホに最適化された構成がなされているのだ。LINEというメディアの可能性と、スポーツ紙というメディアの古さが露見した、ともいえる。

 現状、担当している記者はひとりだけ。だが、扱う競技は多岐に渡り、それぞれの取材内容や切り口はひとつひとつ新鮮だ。まだ、あまり知れ渡っていないように思うのだが、もっともっと広く読まれていいコンテンツだ。

 

■2018年は、過去を振り返る絶好の機会

 

 今年はスポーツイベントが多いだけでなく、スポーツ界にとってさまざまな「節目」の年でもある。春のセンバツ甲子園が90回、夏の甲子園が100回記念大会。それはつまり、第70回センバツと第80回夏の甲子園で燦然と輝いた松坂大輔の甲子園物語から、ちょうど20年がたったことを意味している。

 ほかにも、Jリーグが誕生から25周年。W杯に初出場してから、ちょうど20年。プロ野球では埼玉西武ライオンズ40周年や福岡ソフトバンクホークス創設80周年、北海道日本ハムファイターズが北海道移転15周年。もひとつおまけに、「週刊ベースボール」(ベースボール・マガジン社)の創刊60周年、なんてものもある。

 何が言いたいかというと、2018年は、過去をしっかり振り返る年にしなければならない、ということ。スポーツの醍醐味のひとつは、歴史との比較。過去の偉人たちが打ち立てた記録や物語を、現在に生きるアスリートたちが継承し、更新していくところで新たなドラマが生まれる。

 だからこそ、各メディアやスポーツを扱う媒体には、過去を改めてしっかり掘り下げてほしい。そのなかから、後世にも語り継がれる良質なコンテンツが生まれるのではないだろうか。2018年は、その絶好の機会のはずだ。
(文=オグマナオト)

スポーツ熱の高まりと、スポーツ熱のある人々と──「2017年スポーツメディア考」

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックが着々と迫る中、2017年のスポーツメディアはどんな盛り上がりを見せたのか? 印象深かった番組や特集企画などをおさらいしたい。

 

■スポーツ系番組で求められ始めた「熱量のあるプレゼン能力」

 

 今年、スポーツ系番組で最も秀逸だったと思うのが、Amazonプライム限定コンテンツ『有田と週刊プロレスと』だ。Amazonレビュー評価では、星5つが88%。各種マスコミレビューでも、いい評判を見かけることが多い。

 くりぃむしちゅー有田哲平が毎回1冊の「週刊プロレス」をテーマに、語って、語って、語りまくり、プロレスから学ぶべき人生の教訓を伝授する……というプロレストークバラエティ。始まったのは昨年末のことだが、そこから今年5月までがシーズン1。2カ月半のブレークを挟んで、すぐにシーズン2がスタート。民放の各種番組がどこかぬるい企画を続けるなか、有田とこの番組スタッフの熱量の高さは実に痛快だった。

『有田と週刊プロレスと』が革新的なのは、スポーツ系番組の“核”ともいうべき、試合映像が使えない(使わない)点にある。その代わり、肝となるのが有田の話芸であり、モノマネ力であり、プレゼン能力だ。

 もちろん、過去にもトーク力を生かしたスポーツ系番組はあったが、ここまで徹底して試合映像を使わないものはなかったはず。その無謀な企画を可能にしているのは、有田の異常なまでのプロレス知識であり、プロレス愛であり、そして何よりも歴史を知っていることにある。

 スポーツファンにもいろいろな層があって、中には歴史には興味がない、という人も意外といる。それどころか、過去の名選手・名試合について興味がない、という現役アスリートも実に多い。だが、その競技のことを真剣に考え、認知度を高めていく上では、歴史を知ることも重要のはず。有田もまた「歴史を学んでください」と番組内で何度も口にする。とことんマニアックでありながら、どこかアカデミックな印象もあるからこそ、プロレスファン以外からも支持を集めるのではないだろうか。

 同様に、マニアックな知識で競技愛を発露したのが、ボクシング中継における俳優、香川照之の存在だ。実は10年以上前から、香川の熱狂的ボクシング愛は変わっていない。だが、村田諒太が22年ぶりにミドル級世界王者になる、という快挙も手伝って、フジテレビの中継でゲスト解説を務めた香川のボクシングトークにも日の目が当たった格好だ。

 SNS上での香川照之ボクシングトークへの評判は、正直なところ否定的な声も多い。だが、香川の圧倒的なボクシング知識は、今後、ボクシングファンの裾野を広げるのに大きな役目を担ってくるのではないか、と勝手に期待している。世間的には『昆虫すごいぜ!』(NHK)での怪演ぶりの方が話題だが、「2017年の香川照之」という意味では、ひとくくりに覚えておきたい。

 マニアックな競技愛をこじらせた結果、その競技の伝道師となった有田哲平と香川照之。来年以降、同様の存在が、他の競技でもどんどん出てくるのではないだろうか(というか、出てきてほしい)。

 

■好感が持てた、テレビ東京のスポーツ熱

 

「熱量」という点でもうひとつ、今年のトピックスとして押さえておきたいのが、テレビ東京におけるスポーツ熱の高まりだ。

 テレビ東京といえば、日本にサッカー文化を根づかせた往年の名番組『三菱ダイヤモンドサッカー』や、箱根駅伝を日本テレビよりも前に中継していた──などなど、かつてはスポーツをキラーコンテンツとしていた時代もあった放送局。あの「ドーハの悲劇」も中継したのはテレビ東京だ。

 だが、サッカーや駅伝の人気が高まった結果、皮肉にもそれらの中継権は他のキー局へ。ここ最近、特に若い世代において、テレ東=スポーツ、というイメージはなかったはず。

 そんなテレビ東京が今年5月末、「テレ東スポーツ祭」と題して『世界卓球2017ドイツ』と『全仏オープンテニス2017』を連日連夜放送。特に卓球は日本人選手の活躍もあって大きな盛り上がりを見せた。05年から「世界卓球」を地上波独占放送してきたテレビ東京の執念が実ったといえる。

 このほかにも、夜帯のスポーツ番組『SPORTSウォッチャー』では、ビビる大木を又吉直樹と並ぶMCに据えてテコ入れを図ったり、さまぁ~ずがさまざまなスポーツに体当たりで挑戦するスポーツバラエティ『さまスポ』が今春から始まったりと、今年のテレビ東京がスポーツに対して、例年以上に予算と時間と人をかけていたのは明白。『SPORTSウォッチャー』では、日本テレビ顔負けの巨人・阿部慎之助への密着取材など、気になる企画も多かった。

 もともと、バラエティでは他局以上に実験的な企画を仕掛けてくるテレビ東京。今後、スポーツものでも、他の局が思いつかないような企画が飛び出してくるかもしれない。

 

■DAZN・楽天の本格参入元年。スポーツメディアは、どう変わる!?

 

 スポーツメディア史、という意味で、17年のトピックスとして外せないことがもうひとつ。ライブストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」の本格参入だ。

 17年から10年間、2,100億円という巨額の契約でJリーグ全試合の放映権を獲得したDAZN。これまでJリーグの有料放送を担ってきたスカパー!の会員数が落ち込んだ、というニュース以上に、Jリーグ自体が1シーズン制に戻り、賞金額が大幅に増えるなど、競技のあり方そのものにも大きな影響を及ぼしている。

 DAZNはJリーグ以外にも、どんどん中継コンテンツを増やしているが、ほかにも、楽天がNBA視聴サービス『Rakuten NBA Special』を、この秋からスタート。これまでNHKでのNBA中継を楽しみにしていたファンからは困惑の声も聞こえている。

 考えてみれば、上述した『有田と週刊プロレスと』もAmazonプライム限定コンテンツ。17年は、「スポーツの視聴方法や楽しみ方」そのものが大きく変わった年、として後年、大きな意味を持つことになりそうだ。

 その一方で、これまた上述したテレビ東京をはじめ、既存のテレビ局にとっても、“2020年”を控えている以上、スポーツはますますキラーコンテンツだ。だからこそ、従来的な、ひな壇芸人を並べてのアスリートいじり、といった手垢のついた企画よりも、熱量あふれた企画や番組作りが今後はますます求められるはず。18年、新規サービスと既存メディアの競争がより顕著になることで、純粋に面白いスポーツ系番組が増えることを期待したい。
(文=オグマナオト)

プロ野球の魅力伝えた「プロ野球100人分の1位」と、野球ファンの民度の高さ示した「熱盛グランプリ」の魅力

 旧聞になってしまうが、今年のプロ野球MVP、新人王の記者投票結果が物議を醸した。MVP投票において、オリックスの新人で今季8勝の山岡泰輔に票が入っていたこと。新人王では、阪神の大山悠輔が2位になったこと。それぞれすばらしいルーキーではあるが、正直、その賞に値する活躍はしておらず、野球ファンのマスコミ不信を、また大きくしてしまった次第だ。

 こういった現象は、毎年のように起きている“忖度”ではあるのだが、今年は同業者からも問題視する声が挙がっていたのが特徴的だった。

「活躍した選手より取材対象への愛。プロ野球MVP投票、“忖度”の度合い」(Number)

「甲子園から日本、世界を見る――新人王投票の偏愛問題」「がく然としたセ新人王投票結果 一生に1度、より正当な評価を」(ともにスポニチ)

 プロ意識の低い記者には、憤るというよりも情けなくなってしまうばかり。スポーツ紙の売り上げは右肩下がりというが、ファンからの信頼を失えば、その勢いはますます顕著になるはずだ。

 ただ、モノは考えよう。そんな情けない記者がいるからこそ、対称的に野球ファンから支持を集める投票企画もある。毎年恒例、フジテレビ系『スポーツLIFE HERO’S』による「プロ野球・100人分の1位」。そして今年初めて実施されたテレビ朝日系『報道ステーション』の「熱盛グランプリ」と「ザ・ゴールデングラブ熱盛」がそれだ。

「プロ野球100人分の1位」は、「パワーヒッター部門」「スピードボール部門」「走塁部門」「守備部門」「バットコントロール部門」「コントロール部門」「強肩部門」「変化球部門」の8部門について、今年一番すごかった選手は誰なのか、現役プロ野球選手100人にアンケート調査を行い、ランキング形式で紹介するというもの。フジテレビ夜のスポーツ枠の看板が『すぽると!』から変わっても受け継がれてきた名物企画だ。

 わかりやすい「数字」や「記録」以外で、プロは他選手をどう評価しているのか? どこに着目しているのか? というのが見えてきて興味深い上に、結果にはいつも納得。上述した「MVP」や「新人王」投票で疑問視する投票があった場合、「もう選手間投票にしてよ、メジャーではそうなんだから」という声が野球ファンから上がることが多いが、それを具現化したコーナーといえる。

 7年目の今年は、11月26日から12月3日まで『HERO’S』と『THE NEWSα』で8夜連続放送。もちろん、8部門いずれも面白かった。でも、だからこそ、「強肩部門」の番外編で、広陵高校・中村奨成を「甲子園優勝」と紹介してしまったテロップミスはいただけなかった(実際は準優勝)。選手たちから「この賞が欲しい」といわれ、ファンからも支持を集める信頼と実績のある企画だけに、来年は細かい部分ももう一段ブラッシュアップしていただきたい。

 一方の、報道ステーション「熱盛グランプリ」と「ザ・ゴールデングラブ熱盛」。今年から始まったスポーツコーナーの人気企画「きょうの熱盛」の年間総まとめ、ともいえるのが上記2つの展開だった。

 まず、ペナントレース終了後すぐに実施されたのが「熱盛グランプリ」で、12球団のファン各100人(合計1,200人)に聞いた「今年、最も熱かったシーン」を球団ごとに発表。また、先月30日のゴールデングラブ賞表彰式にぶつける形で放送された「ザ・ゴールデングラブ熱盛」は、ゴールデングラブ賞を受賞したセ・パの守備職人18人の中で、もっとも熱い守備をみせた守備No.1選手(=「ザ・ゴールデングラブ熱盛プレーヤー」)を、こちらもファン投票で決めようというもの。選手間投票の「プロ野球100人分の1位」と違って、徹底して“ファン投票”にこだわったのが報道ステーションだった。

 特に「ザ・ゴールデングラブ熱盛」を見ていて感じ入ったのが、ある特定球団のファンであっても自ら愛するチームには忖度せず、しっかりと他球団の選手の名を挙げる声が多かったことだ。これこそが野球ファンの民度の高さ。MVPと新人王投票で首を傾げたくなる票を投じた記者にこそ見てほしかった、素晴らしい企画だった。

 すでに7年の歴史を誇る「プロ野球100人分の1位」に対して、「熱盛」は今年始まったばかり。だが、放送では選手のほうからアツモリスト寺川綾キャスターに対して「生“熱盛”が欲しい」と要望する場面もあり、1年目にしてすっかり愛されるコーナーになっていたことがうかがえた。

 今後、毎年オフの恒例企画として実施してくれれば、選手間投票の「プロ野球100人分の1位」、ファン投票の「熱盛グランプリ&ザ・ゴールデングラブ熱盛」として、シーズンオフの楽しみ方が広がりを見せるのではないだろうか。それならば、記者投票も続けていいんじゃないと思えてくる。変な忖度はご勘弁だけれども。

『アニ×パラ』『ぼくらはマンガで強くなった』NHKが狙う“スポーツ×マンガ・アニメ”の幸せな共犯関係

 この秋、NHKの“スポーツ×マンガ・アニメ”を巡る動きが加速している。

 まずは今月10日からNHK BS1で始まった5分アニメ枠『アニ×パラ ~あなたのヒーローは誰ですか』。2020年の東京パラリンピック開催に向け、パラリンピック競技をテーマにした、さまざまな物語が描かれていく予定だという。

 第1弾のテーマはブラインドサッカーで、『キャプテン翼』(集英社)でおなじみの漫画家・高橋陽一が原作を担当。第2弾のテーマはパラ陸上競技で、こちらの原作は『ツルモク独身寮』(小学館)の窪之内英策。最近では“高校生のサザエさん”を描いた日清カップヌードル『アオハルかよ。』シリーズの作画で話題の作家を当ててくるあたり、NHKの力の入れようをうかがい知ることができる。

 内容的にも、高橋ワールドの象徴「なにぃ!」のセリフこそなかったが、その分、キャプ翼並みの超人プレーが満載だったブラインドサッカー編。そして、窪之内作品らしい5分間のミュージックビデオのようなパラ陸上編と、それぞれ“らしさ全開”で、原作者のファンもスポーツファンも楽しめる内容になっていたと思う。

 実はNHK、以前からこの“スポーツ×マンガ・アニメ”の組み合わせが得意。その象徴ともいえるのが、こちらもこの秋、新シリーズが始まった『ぼくらはマンガで強くなった』だ。

 シーズン3、ともいうべきこの秋からの『ぼくらはマンガで強くなった』は、これまでの番組作りとは一変。空席だった番組ナビゲーター役として、バンクーバー五輪銅メダリストのフィギュアスケーター、高橋大輔を起用。オリンピックのキャスター経験はある高橋だったが、レギュラー放送での司会役は今回がはじめて。そこかしこに初々しさが感じられ、最近のアスリート系芸能人に多いおちゃらけ感がないところは好感が持てた。

 また、取りあげるスポーツマンガの選択方法も変更。これまではサッカー、ボクシング、野球、柔道……と毎回“競技”でテーマを決め、ゲストのアスリートにちなんだスポーツマンガが2、3冊紹介されてきた(ボクシングなら『あしたのジョー』と『はじめの一歩』。柔道なら『柔道部物語』といった具合。全て講談社刊)。

 だが、今シーズンからはテーマ先行。初回放送でのテーマは“復活”。車いすバスケットボールの京谷和幸はバスケマンガ『SLAM DUNK』(集英社)を紹介し、誰もが知る名台詞「あきらめたらそこで試合終了だよ」のシーンから人生の道が拓けた復活エピソードを紹介。そして、司会の高橋大輔も、自身のケガからの復活劇を振り返りながら、フィギュアスケートマンガ『モーメント 永遠の一瞬』(集英社)の作者、槇村さとるの元を訪ねるロケも敢行された。

 過去、『BSマンガ夜話』や『マンガノゲンバ』、『浦沢直樹の漫勉』など、NHKではいくつもの“マンガ語り”の番組が生まれてきた。『ぼくらはマンガで強くなった』もその潮流にありつつ、大きく違うのは、実際の試合映像やアスリートへの取材素材といった、NHKだからこそ持っている豊富なスポーツアーカイブ映像とシンクロさせながら番組作りができることにある。

 今回、京谷の20年以上前の練習風景と、高橋の10年近く前の練習風景の映像が流れていたが、これはもうNHKだからこその芸当と説得力だ。

『ぼくらはマンガで強くなった』というタイトル通り、番組構成の前提にあるのは、マンガに影響を受けてアスリートはどう成長したか? という視点。だが、アスリートの葛藤や練習風景、実際の試合映像も交えながらのこの番組は、むしろ、現実世界の試合結果やアスリートの生き様によって、マンガの描き方やテーマ設定が変化していく様も見ることができる。特に新シリーズではその傾向が強くなった。

 マンガからアスリートへ。そしてアスリートからマンガへ。スポーツとマンガの幸せな共犯関係も楽しむことができる。今後、まだ控えめな高橋大輔が持ち味を発揮できるようになり、マンガへの造詣、作家へのリスペクトを高めていけば、さらに内容の濃い番組になっていくのではないだろうか。

 だからこそ、今この番組にお願いしたいことがある。以前一度取りあげた『はじめの一歩』をもう一度扱ってもらえないものだろうか。

 この2週の急展開で、マンガ史上に残るバッドエンドを迎えそうな『はじめの一歩』。一方で、この作品によってボクシングが好きになった読者、実際に世界チャンプにまで登りつめた事例は少なくない。なんとかもう一度、この番組を通してボクシングの素晴らしさを作者か編集者に伝え、ストーリーの再構築を目指して欲しいのだが……もう遅いか。
(文=オグマナオト)

プロ野球ポストシーズンに“新たな視点”を与えた古田敦也&落合博満の「2つのテレビ番組」

 福岡ソフトバンクホークスが4勝2敗で日本一、という結果以上に見応えのあった今年のプロ野球日本シリーズ。クライマックスシリーズ(CS)も含め、ポストシーズン全体で振り返っても、実に面白かった。そんなプロ野球ポストシーズンで、これは! と唸る特集を組んだ2つの番組を振り返ってみたい。

 

■古田敦也が提言「プロ野球を16球団に増やそう」

 

 まずは先月始まったばかりの日曜朝の新番組『サンデーLIVE!!』(テレビ朝日系)から、「古田敦也のシラベルスポーツ」。1週間のスポーツを振り返りながら、独自の視点でリサーチしたネタを古田が深堀りプレゼンテーションするという、球界きっての理論派・古田敦也ならではのコーナーといえる。

 10月29日の放送で取りあげたテーマは、「プロ野球クライマックスシリーズを考えよう」。今年、シーズン優勝の広島を破って日本シリーズに進出した横浜DeNAベイスターズの“下克上”を受け、「3位が日本シリーズ進出はアリかナシか」を議論。そのなかで古田が提言したのが「プロ野球を16球団に増やそう」というものだった。

 例えば米MLBの場合、30球団中10球団しかプレーオフに進めない。一方、日本のプロ野球は12球団中6球団もポストシーズンに進むから「ありがたみがない」と訴える。

 興味深かったのは、具体的に“新球団設立候補地”も提案していたこと。球団設立に必要なのは「人口」「球場・交通」「スポンサー」の3つ。これらが叶う場所として、京都市(人口150万人)、新潟市(80万人)、静岡市(70万人)、松山市(50万人)の4都市を提案。MLB球団がある都市との人口比較も交え「決して絵空事の話ではない」と続けた。

 この“フルタ提言”に説得力があるのは、2004年、選手会長として球界再編劇を乗り越えた人物だからだ。こうした提言がビジネスサイドや野球ジャーナリストから上がることはあっても、選手・球界関係者から上がることは滅多にない。だが、現場を知る人間から上がった声の方が訴える力は明らかに大きい。

「僕も取材で行きましたが、広島も横浜も、すごく盛り上がっています。球場に来て、泣いて、笑って、悔しがって、さらに経済効果もある。少子高齢化と東京一極集中という日本が抱える問題点も解消し、地方創生にもつながる。クライマックスシリーズを考えることは、日本の将来を考えることなんです」と締めくくる、古田ならではの圧巻のプレゼンテーションだった。

 こうした「考えさせる野球の見せ方」は、「喝!」だ「アッパレ!」だと思考停止に陥りがちな日曜朝のスポーツワイドに一石を投じるのではないだろうか。

 

■落合博満がオレ流解説『戦え!スポーツ内閣』

 

 今年の日本シリーズで男を上げた選手といえば、第6戦の9回に奇跡の同点弾を放ったソフトバンクのキャプテン・内川聖一。一方のDeNAは、第4戦で8回途中までノーヒットノーランの快投を演じたルーキー濱口遥大だったのではないだろうか。

 この濱口の試合に関して、独自の解説を展開したのが落合博満だ。試合が終わった直後の生放送となった『戦え!スポーツ内閣』(毎日放送)の「日本シリーズの夜にオレ流に聞け!落合博満のプロ野球処方箋」での一幕だ。

 落合は濱口が8回に打たれた初ヒットに関して、DeNAセンター桑原将志の守備内容に言及。「ノーヒットで来てて、なんで飛び込まなかったのかな。0-0とか1-0だったら言わないけど、飛び込んでほしかった。あのケース、山井と一緒にしないでね」と語った。視聴者の多くは「落合がノーヒットノーランを期待したの!?」と思ったのではないだろうか。

 そう。今回の濱口の好投を受け、野球ファンであれば、誰もが07年日本シリーズ第5戦、中日対北海道日本ハムにおける山井大介の“完全試合未遂”を思い出したはず。偶然にも、この日の『スポーツ内閣』の目玉企画も、山井の“完全試合未遂”の舞台裏……8回終了までパーフェクト投球をしながら9回に守護神・岩瀬仁紀を登板させた真相を監督・落合が自ら明かす、というもの。「山井の右手のマメが4回くらいからつぶれていて、選手はみな、それを見て見ぬふりをしていたこと」「自分(落合監督)が代えようと思ったのではなく、山井本人からの申し出であったこと」といった内容が明かされた。

 この“真相”そのものは、野球ファンであれば一度は聞いたことがあるはずで、決して目新しいものではない。が、その内容を落合本人が語るとなると、重みがグッと変わってくる。

「周りから『一生に一度のこと』『これから出ないだろう』とか言われたけど、中を知らないからアレコレ好きなことを言う」と吐露した落合。そしてその“一生に一度”に近い出来事が、放送当日の日本シリーズで起きたという奇跡。ナマモノの試合結果と事前に用意していたゲスト&内容がここまでリンクすると、ある種の爽快感すら生まれる。落合をブッキングした番組関係者の大ホームランだった。

 古田敦也の提言にしても、落合博満の解説にしても、過去に本人が関わった出来事(古田=球界再編、落合=山井の完全試合未遂)との相乗効果があったからこそ、企画内容をより深いものにさせていた。スポーツを楽しむ上では、歴史を知ることが重要と改めて感じた今年のポストシーズン。各スポーツ番組にも、そんな歴史をしっかり掘り下げる企画を今後も期待したい。
(文=オグマナオト)

プロ野球ポストシーズンに“新たな視点”を与えた古田敦也&落合博満の「2つのテレビ番組」

 福岡ソフトバンクホークスが4勝2敗で日本一、という結果以上に見応えのあった今年のプロ野球日本シリーズ。クライマックスシリーズ(CS)も含め、ポストシーズン全体で振り返っても、実に面白かった。そんなプロ野球ポストシーズンで、これは! と唸る特集を組んだ2つの番組を振り返ってみたい。

 

■古田敦也が提言「プロ野球を16球団に増やそう」

 

 まずは先月始まったばかりの日曜朝の新番組『サンデーLIVE!!』(テレビ朝日系)から、「古田敦也のシラベルスポーツ」。1週間のスポーツを振り返りながら、独自の視点でリサーチしたネタを古田が深堀りプレゼンテーションするという、球界きっての理論派・古田敦也ならではのコーナーといえる。

 10月29日の放送で取りあげたテーマは、「プロ野球クライマックスシリーズを考えよう」。今年、シーズン優勝の広島を破って日本シリーズに進出した横浜DeNAベイスターズの“下克上”を受け、「3位が日本シリーズ進出はアリかナシか」を議論。そのなかで古田が提言したのが「プロ野球を16球団に増やそう」というものだった。

 例えば米MLBの場合、30球団中10球団しかプレーオフに進めない。一方、日本のプロ野球は12球団中6球団もポストシーズンに進むから「ありがたみがない」と訴える。

 興味深かったのは、具体的に“新球団設立候補地”も提案していたこと。球団設立に必要なのは「人口」「球場・交通」「スポンサー」の3つ。これらが叶う場所として、京都市(人口150万人)、新潟市(80万人)、静岡市(70万人)、松山市(50万人)の4都市を提案。MLB球団がある都市との人口比較も交え「決して絵空事の話ではない」と続けた。

 この“フルタ提言”に説得力があるのは、2004年、選手会長として球界再編劇を乗り越えた人物だからだ。こうした提言がビジネスサイドや野球ジャーナリストから上がることはあっても、選手・球界関係者から上がることは滅多にない。だが、現場を知る人間から上がった声の方が訴える力は明らかに大きい。

「僕も取材で行きましたが、広島も横浜も、すごく盛り上がっています。球場に来て、泣いて、笑って、悔しがって、さらに経済効果もある。少子高齢化と東京一極集中という日本が抱える問題点も解消し、地方創生にもつながる。クライマックスシリーズを考えることは、日本の将来を考えることなんです」と締めくくる、古田ならではの圧巻のプレゼンテーションだった。

 こうした「考えさせる野球の見せ方」は、「喝!」だ「アッパレ!」だと思考停止に陥りがちな日曜朝のスポーツワイドに一石を投じるのではないだろうか。

 

■落合博満がオレ流解説『戦え!スポーツ内閣』

 

 今年の日本シリーズで男を上げた選手といえば、第6戦の9回に奇跡の同点弾を放ったソフトバンクのキャプテン・内川聖一。一方のDeNAは、第4戦で8回途中までノーヒットノーランの快投を演じたルーキー濱口遥大だったのではないだろうか。

 この濱口の試合に関して、独自の解説を展開したのが落合博満だ。試合が終わった直後の生放送となった『戦え!スポーツ内閣』(毎日放送)の「日本シリーズの夜にオレ流に聞け!落合博満のプロ野球処方箋」での一幕だ。

 落合は濱口が8回に打たれた初ヒットに関して、DeNAセンター桑原将志の守備内容に言及。「ノーヒットで来てて、なんで飛び込まなかったのかな。0-0とか1-0だったら言わないけど、飛び込んでほしかった。あのケース、山井と一緒にしないでね」と語った。視聴者の多くは「落合がノーヒットノーランを期待したの!?」と思ったのではないだろうか。

 そう。今回の濱口の好投を受け、野球ファンであれば、誰もが07年日本シリーズ第5戦、中日対北海道日本ハムにおける山井大介の“完全試合未遂”を思い出したはず。偶然にも、この日の『スポーツ内閣』の目玉企画も、山井の“完全試合未遂”の舞台裏……8回終了までパーフェクト投球をしながら9回に守護神・岩瀬仁紀を登板させた真相を監督・落合が自ら明かす、というもの。「山井の右手のマメが4回くらいからつぶれていて、選手はみな、それを見て見ぬふりをしていたこと」「自分(落合監督)が代えようと思ったのではなく、山井本人からの申し出であったこと」といった内容が明かされた。

 この“真相”そのものは、野球ファンであれば一度は聞いたことがあるはずで、決して目新しいものではない。が、その内容を落合本人が語るとなると、重みがグッと変わってくる。

「周りから『一生に一度のこと』『これから出ないだろう』とか言われたけど、中を知らないからアレコレ好きなことを言う」と吐露した落合。そしてその“一生に一度”に近い出来事が、放送当日の日本シリーズで起きたという奇跡。ナマモノの試合結果と事前に用意していたゲスト&内容がここまでリンクすると、ある種の爽快感すら生まれる。落合をブッキングした番組関係者の大ホームランだった。

 古田敦也の提言にしても、落合博満の解説にしても、過去に本人が関わった出来事(古田=球界再編、落合=山井の完全試合未遂)との相乗効果があったからこそ、企画内容をより深いものにさせていた。スポーツを楽しむ上では、歴史を知ることが重要と改めて感じた今年のポストシーズン。各スポーツ番組にも、そんな歴史をしっかり掘り下げる企画を今後も期待したい。
(文=オグマナオト)

『昆虫すごいぜ!』だけじゃない……俳優・香川照之の“偏愛”は、ボクシング界を変えるか

  フジテレビが22日に中継したプロボクシング『村田諒太VSエンダム2』。勝利を手にし、「日本人2人目のミドル級世界王者」「日本人初の五輪メダリスト世界王者」という栄誉を勝ち取ったのはもちろん村田諒太だが、この一戦を通じて、ほかにも手応えを感じた者がいたはずだ。

 まずは中継局のフジテレビ。平均視聴率20.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)は、今年の同局最高視聴率だという。実は前回、5月20日のタイトルマッチもフジが中継し、視聴率は、17.8%を記録。この時点でも、近年のボクシングではトップの数字だった。

 村田は勝利インタビューで、「みんなあんまり好きじゃないかもしれないけど、電通のみなさん。また、あんまり好きじゃないかもしれないけど、フジテレビのみなさん。感謝してます」とコメントし、会場の笑いを誘っていた。

 だが、むしろ感謝したいのはフジテレビのはず。殴り合った直後に、こうした機知に富んだコメントが残せる王者の登場は、苦境が続くフジテレビにとって得難い人材ではないだろうか。

 そしてもうひとりが、ゲスト解説を務めた俳優の香川照之。この試合、村田にとってリベンジマッチだったように、香川にとってもリベンジマッチだった。

 実は香川、前回5月20日の中継でもゲスト解説を務めたのだが、このときはネット上で「ウザい」「試合に集中できない」といった厳しい意見が噴出。それを意識してか、今回の中継では香川のコメント回数は少なく、それでいて熱量のほとばしりはしっかりあって存在感は示す、という見事なゲストぶり。SNSを見ても、前回ほどの拒否反応はないように思えた。

 香川のゲストぶりが成功した理由がもうひとつ。視聴者が香川照之の「好きなものには異常な愛を注ぐ」という姿に慣れ、免疫ができてきた、という点もあるのではないだろうか。

 というのも、5月からの約半年間、熱狂的な人気を誇る『香川照之の昆虫すごいぜ!』(NHK Eテレ)の2回目と3回目が立て続けに放送され、特番の『香川照之の昆虫すごいぜ!特別編~出動!タガメ捜査一課~』も好評。香川の情熱的すぎる昆虫への偏愛は、視聴者に好意的に受け止められた。個性派俳優、という括りで紹介される香川が今年、明らかにブレイクスルーしたわけだ。

 そんな香川が昆虫と同等、それ以上に愛してやまないのがボクシングだ。たとえば、香川は『昆虫すごいぜ!』の番組内で、「本当にやりたい仕事とめぐり会えました」「これが僕の代表作です」と語っているが、実は同様のコメントを、ボクシング関連の話題でも語っていたことがある。

 それは2011年公開の映画『あしたのジョー』で、主人公・矢吹丈のトレーナー・丹下段平役を受けたときのこと。「やっと、ボクシングを仕事で生かすときがきた」「この映画は、僕にとっては映画ではない(中略)ボクシングをどう見せるかというショーに参加したという記憶です」と「映画.com」のインタビューで答えている。

 香川のボクシング解説に関しては、「俳優業の隙間に解説できるほど、ボクシングは甘くない」と辛辣な評価をするネット記事もある。だが、筆者にいわせれば、その評価自体が間違いだ。

 中学生のころからボクシング観戦を始め、以来30余年にわたって情熱を傾けてきたという香川。俳優の仕事が少なかった時代にも、「ボクシングマガジン」(ベースボール・マガジン社)でコラム「香川照之の熱病的思考法」を連載し、フジテレビ以外でもWOWOWなどで世界戦のゲストコメンテーターを務めるなど、ずっとボクシングが仕事であり、心の拠り所でもあった。決して“俳優業の隙間”なんかではないのだ。

 今回、村田諒太という、一般視聴者にとってもわかりやすいアイコンができたボクシング界。一方で、ボクシング人気華やかなりし頃と比べて階級が増え、団体数も増えてしまったため、“強さ”が伝えにくい・わかりにくい競技になった、という声も多い。

 それは今回のタイトルマッチ後、村田自身が「ここにいるボクシングを大好きな人は、僕よりも強いミドル級のチャンピオンがいることも知っています」と語っていたこととも通じる。

 そんな“わかりにくい”競技になってしまったボクシングの人気を再燃させるためには、ボクシングの歴史、選手、逸話、世界との差など、さまざまな側面に関して、わかりやすく、そして熱量込めて伝える存在が必要不可欠。その存在に香川照之こそが適任なのではないだろうか。

 というわけで、フジテレビ様。今こそ、『香川照之のボクシングすごいぜ!』の制作チャンスです。有田哲平がプロレスを語り尽くすことで大きな支持を集めているAmazonプライム番組『有田と週刊プロレスと』のように、鉱脈はきっとあると思うのだが。
(文=オグマナオト)

『昆虫すごいぜ!』だけじゃない……俳優・香川照之の“偏愛”は、ボクシング界を変えるか

  フジテレビが22日に中継したプロボクシング『村田諒太VSエンダム2』。勝利を手にし、「日本人2人目のミドル級世界王者」「日本人初の五輪メダリスト世界王者」という栄誉を勝ち取ったのはもちろん村田諒太だが、この一戦を通じて、ほかにも手応えを感じた者がいたはずだ。

 まずは中継局のフジテレビ。平均視聴率20.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)は、今年の同局最高視聴率だという。実は前回、5月20日のタイトルマッチもフジが中継し、視聴率は、17.8%を記録。この時点でも、近年のボクシングではトップの数字だった。

 村田は勝利インタビューで、「みんなあんまり好きじゃないかもしれないけど、電通のみなさん。また、あんまり好きじゃないかもしれないけど、フジテレビのみなさん。感謝してます」とコメントし、会場の笑いを誘っていた。

 だが、むしろ感謝したいのはフジテレビのはず。殴り合った直後に、こうした機知に富んだコメントが残せる王者の登場は、苦境が続くフジテレビにとって得難い人材ではないだろうか。

 そしてもうひとりが、ゲスト解説を務めた俳優の香川照之。この試合、村田にとってリベンジマッチだったように、香川にとってもリベンジマッチだった。

 実は香川、前回5月20日の中継でもゲスト解説を務めたのだが、このときはネット上で「ウザい」「試合に集中できない」といった厳しい意見が噴出。それを意識してか、今回の中継では香川のコメント回数は少なく、それでいて熱量のほとばしりはしっかりあって存在感は示す、という見事なゲストぶり。SNSを見ても、前回ほどの拒否反応はないように思えた。

 香川のゲストぶりが成功した理由がもうひとつ。視聴者が香川照之の「好きなものには異常な愛を注ぐ」という姿に慣れ、免疫ができてきた、という点もあるのではないだろうか。

 というのも、5月からの約半年間、熱狂的な人気を誇る『香川照之の昆虫すごいぜ!』(NHK Eテレ)の2回目と3回目が立て続けに放送され、特番の『香川照之の昆虫すごいぜ!特別編~出動!タガメ捜査一課~』も好評。香川の情熱的すぎる昆虫への偏愛は、視聴者に好意的に受け止められた。個性派俳優、という括りで紹介される香川が今年、明らかにブレイクスルーしたわけだ。

 そんな香川が昆虫と同等、それ以上に愛してやまないのがボクシングだ。たとえば、香川は『昆虫すごいぜ!』の番組内で、「本当にやりたい仕事とめぐり会えました」「これが僕の代表作です」と語っているが、実は同様のコメントを、ボクシング関連の話題でも語っていたことがある。

 それは2011年公開の映画『あしたのジョー』で、主人公・矢吹丈のトレーナー・丹下段平役を受けたときのこと。「やっと、ボクシングを仕事で生かすときがきた」「この映画は、僕にとっては映画ではない(中略)ボクシングをどう見せるかというショーに参加したという記憶です」と「映画.com」のインタビューで答えている。

 香川のボクシング解説に関しては、「俳優業の隙間に解説できるほど、ボクシングは甘くない」と辛辣な評価をするネット記事もある。だが、筆者にいわせれば、その評価自体が間違いだ。

 中学生のころからボクシング観戦を始め、以来30余年にわたって情熱を傾けてきたという香川。俳優の仕事が少なかった時代にも、「ボクシングマガジン」(ベースボール・マガジン社)でコラム「香川照之の熱病的思考法」を連載し、フジテレビ以外でもWOWOWなどで世界戦のゲストコメンテーターを務めるなど、ずっとボクシングが仕事であり、心の拠り所でもあった。決して“俳優業の隙間”なんかではないのだ。

 今回、村田諒太という、一般視聴者にとってもわかりやすいアイコンができたボクシング界。一方で、ボクシング人気華やかなりし頃と比べて階級が増え、団体数も増えてしまったため、“強さ”が伝えにくい・わかりにくい競技になった、という声も多い。

 それは今回のタイトルマッチ後、村田自身が「ここにいるボクシングを大好きな人は、僕よりも強いミドル級のチャンピオンがいることも知っています」と語っていたこととも通じる。

 そんな“わかりにくい”競技になってしまったボクシングの人気を再燃させるためには、ボクシングの歴史、選手、逸話、世界との差など、さまざまな側面に関して、わかりやすく、そして熱量込めて伝える存在が必要不可欠。その存在に香川照之こそが適任なのではないだろうか。

 というわけで、フジテレビ様。今こそ、『香川照之のボクシングすごいぜ!』の制作チャンスです。有田哲平がプロレスを語り尽くすことで大きな支持を集めているAmazonプライム番組『有田と週刊プロレスと』のように、鉱脈はきっとあると思うのだが。
(文=オグマナオト)