前田日明が『THE OUTSIDER』10周年に感慨 自身のリング復帰は否定「めちゃくちゃになっちゃうよ」

 格闘王・前田日明が、現代版「あしたのジョー」を探すため2008年に立ち上げた日本最大級のアマチュア総合格闘技イベント『THE OUTSIDER』が10周年を迎え、24日、都内で記念イベントを開催した。イベントでは所属選手の本音に迫ったドキュメンタリー映画『タイトロープ』の上映と、前田日明・水道橋博士によるトークショーも行われ、前田はこの10年の活動を振り返って、「大変だったけど、10年やってきてよかった」と感慨深げ。この日は自身の59歳の誕生日でもあったが、リング復帰について問われると苦笑い。「復帰はない。俺のプロレスは、やっちゃいけないプロレスばかり。今それを60代のヤツらにやってもね。めちゃくちゃになっちゃうよ」と、きっぱりと否定した。

 世の不良青年らに、格闘技を通じて更正の道を与えることをコンセプトに立ち上げられた『THE OUTSIDER』。映画『タイトロープ』では、そんな不良上がりの青年たちが格闘技を通じて自分たちの居場所を再確認し、新たな目標に向かって邁進する姿がドラマティックに映し出される。トークショーには、記念すべき『THE OUTSIDER 第1戦』にも出場、弁護士と格闘技の2つの世界を生きる堀鉄平や、“キングオブアウトサイダー”の異名を持つ啓之輔、ryoら出場選手も登壇。

 前田は「今の不良たちは、自分たちの世代とは違う。裕福な今の日本で、何をちゃらちゃらグレているのかなと思っていたけど、話してみると、自分たちの世代とはまた違う悲しさを持っていて、傷ついて行き詰っている子ばかり」と、大会に集る不良たちの素顔を紹介。

「その子たちを見ていると、目つきとか後ろ姿とか立ち姿に、その子の今の生きている状況がすごく出ている。彼らの背中を見ていると、自分と重なるときもあってね、彼らのために何かできないかなって思った」と本大会の開催の経緯も説明。そういう青年たちをリングに上げた結果「本当にどうしようもないヤツは一人もいなかった。破滅型のヤツもいるかと思ったけど、まだ出会ったことがない。その後、いろんな選手が伸びていったり輝いていったりして、(大変だったけど)そういう風景を見れるからこそ、ここまで続けてこれた」としみじみ。

 選手らとのコミュニケーションにも力を入れているといい、「結構、言いたいこと言っているよ。ふん! って、どっかに行っちゃうやつもいるけど、彼らも時間が経てば、少しずつ心を開いてくれる」と前田。「そもそも彼らの更正目的でやっている大会。(他の団体のような)シノギ目的でやっている大会とは違う。これからも継続してやっていきたい」と述べると、大会の方向性についても「選手が自分たちの1年後をどうするか、3年後をどうするか、5年後をどうするか、そういうことを、きちんと考えられる大会であり続けたいと思っています」と熱っぽくスピーチした。

 登壇した選手たちも、前田には感謝しきりの表情。啓之輔は「自分はアウトサイダーに出会ってなければ格闘技とも出会っていなかっただろうし、どんな人生になっていただろうって思うんです」と述べると、前田について「毎回むちゃくちゃなことを言われますが、いろいろ人生を教えてもらっています」と感慨深げ。「アウトサイダーと出会わなかった人生は想像もつかないです。出場するようになって、いろんな人に名前を知ってもらえるようになった。今は自分でジムを2件、経営するようになりました」と参加後の人生の変化を紹介。

 弁護士という、格闘家としては異色の本業を持つ堀も「僕も人生が変わりました」と述べ、「普段自分の仕事で接している人と全然違う人たちと触れ合え、狭い世界から脱することができた。自分の世界が変わった」と笑顔。

 Ryoも「今まで見ていた世界が変わった」と同調し、「周りの反響もすごかった。僕に自信をつけさせてくれた。前田さんからは、学ぶことがたくさん。LINEを一緒にさせてもらって練習法とかを忙しい中、アドバイスしてくれたりして、感謝しています。ふとしたときに人生論も教えてくれたりして、自分もそういうふうに生きていきたいと思うようになりました」と話していた。

『THE OUTSIDER』は今後、2月25日に福岡・宗像ユリックスで第49戦、3月11日に東京・ディファ有明で第50戦が予定されている。
(取材・文=名鹿祥史)

■THE OUTSIDER(FIGHTING NETWORK RINGS公式サイト)
http://www.rings.co.jp/

前田日明が『THE OUTSIDER』10周年に感慨 自身のリング復帰は否定「めちゃくちゃになっちゃうよ」

 格闘王・前田日明が、現代版「あしたのジョー」を探すため2008年に立ち上げた日本最大級のアマチュア総合格闘技イベント『THE OUTSIDER』が10周年を迎え、24日、都内で記念イベントを開催した。イベントでは所属選手の本音に迫ったドキュメンタリー映画『タイトロープ』の上映と、前田日明・水道橋博士によるトークショーも行われ、前田はこの10年の活動を振り返って、「大変だったけど、10年やってきてよかった」と感慨深げ。この日は自身の59歳の誕生日でもあったが、リング復帰について問われると苦笑い。「復帰はない。俺のプロレスは、やっちゃいけないプロレスばかり。今それを60代のヤツらにやってもね。めちゃくちゃになっちゃうよ」と、きっぱりと否定した。

 世の不良青年らに、格闘技を通じて更正の道を与えることをコンセプトに立ち上げられた『THE OUTSIDER』。映画『タイトロープ』では、そんな不良上がりの青年たちが格闘技を通じて自分たちの居場所を再確認し、新たな目標に向かって邁進する姿がドラマティックに映し出される。トークショーには、記念すべき『THE OUTSIDER 第1戦』にも出場、弁護士と格闘技の2つの世界を生きる堀鉄平や、“キングオブアウトサイダー”の異名を持つ啓之輔、ryoら出場選手も登壇。

 前田は「今の不良たちは、自分たちの世代とは違う。裕福な今の日本で、何をちゃらちゃらグレているのかなと思っていたけど、話してみると、自分たちの世代とはまた違う悲しさを持っていて、傷ついて行き詰っている子ばかり」と、大会に集る不良たちの素顔を紹介。

「その子たちを見ていると、目つきとか後ろ姿とか立ち姿に、その子の今の生きている状況がすごく出ている。彼らの背中を見ていると、自分と重なるときもあってね、彼らのために何かできないかなって思った」と本大会の開催の経緯も説明。そういう青年たちをリングに上げた結果「本当にどうしようもないヤツは一人もいなかった。破滅型のヤツもいるかと思ったけど、まだ出会ったことがない。その後、いろんな選手が伸びていったり輝いていったりして、(大変だったけど)そういう風景を見れるからこそ、ここまで続けてこれた」としみじみ。

 選手らとのコミュニケーションにも力を入れているといい、「結構、言いたいこと言っているよ。ふん! って、どっかに行っちゃうやつもいるけど、彼らも時間が経てば、少しずつ心を開いてくれる」と前田。「そもそも彼らの更正目的でやっている大会。(他の団体のような)シノギ目的でやっている大会とは違う。これからも継続してやっていきたい」と述べると、大会の方向性についても「選手が自分たちの1年後をどうするか、3年後をどうするか、5年後をどうするか、そういうことを、きちんと考えられる大会であり続けたいと思っています」と熱っぽくスピーチした。

 登壇した選手たちも、前田には感謝しきりの表情。啓之輔は「自分はアウトサイダーに出会ってなければ格闘技とも出会っていなかっただろうし、どんな人生になっていただろうって思うんです」と述べると、前田について「毎回むちゃくちゃなことを言われますが、いろいろ人生を教えてもらっています」と感慨深げ。「アウトサイダーと出会わなかった人生は想像もつかないです。出場するようになって、いろんな人に名前を知ってもらえるようになった。今は自分でジムを2件、経営するようになりました」と参加後の人生の変化を紹介。

 弁護士という、格闘家としては異色の本業を持つ堀も「僕も人生が変わりました」と述べ、「普段自分の仕事で接している人と全然違う人たちと触れ合え、狭い世界から脱することができた。自分の世界が変わった」と笑顔。

 Ryoも「今まで見ていた世界が変わった」と同調し、「周りの反響もすごかった。僕に自信をつけさせてくれた。前田さんからは、学ぶことがたくさん。LINEを一緒にさせてもらって練習法とかを忙しい中、アドバイスしてくれたりして、感謝しています。ふとしたときに人生論も教えてくれたりして、自分もそういうふうに生きていきたいと思うようになりました」と話していた。

『THE OUTSIDER』は今後、2月25日に福岡・宗像ユリックスで第49戦、3月11日に東京・ディファ有明で第50戦が予定されている。
(取材・文=名鹿祥史)

■THE OUTSIDER(FIGHTING NETWORK RINGS公式サイト)
http://www.rings.co.jp/

引退したボクシング元3階級制覇・井岡一翔の“嫁”谷村奈南に「バッシング」止まないワケ

 昨年大みそかに引退を発表したボクシングの元3階級世界王者、井岡一翔への批判が、妻でタレントの谷村奈南にも飛び火している。出演映画の上映会に季節外れのヘソ出し姿で出席したことに「下品なサゲマン」とバッシングが飛んでいるのだ。

 井岡はWBAフライ級チャンピオンとして昨年4月、5度目の防衛を果たしたが、その後に大阪の所属ジムから姿を消し、東京で妻と新婚生活を送っていた。その間、無敗でWBCチャンピオンとなった比嘉大吾からテレビ中継を通じて対戦を要求されたが、井岡は無反応のままで、夏にはWBAから1位挑戦者との試合を行うよう指示されたが、これにも応じる気配を見せなかった。

「実のところ井岡の戦線離脱は、ジム会長を務める父親の一法氏との関係悪化が原因だった」

 こう話すのは、昨年夏にいち早く夕刊フジなどで井岡の“家庭内トラブル”を明かしていたジャーナリストの片岡亮氏。

「この業界、プロ選手としての全権を握るジム会長に背を向けてしまうと、試合活動はできなくなるので、その時点で引退状態に陥っていました。ボクシング界は芸能界に似て古い時代の奴隷契約のような仕組みが残っているので、他のジムに移籍するのは容易ではないのです。ただ、それだけなら井岡に同情が集まったはずなんですが、彼はフライ級でたくさん存在する世界的な大物選手との試合をこなしていないので、批判の方が多いんです」(同)

 実際ファンからは小心者なマッチメイクで知られた亀田兄弟になぞらえ“イオカメダ”などと呼ばれる始末。その矛先が谷村にまで及んだのは、父・一法氏がメディアに「結婚してから練習しなくなった」という話をしたためでもある。ネット上では「巨乳タレントに骨抜きにされた」という批判も飛び交っている。

「嫁なら井岡が奮起するように促すべきなのに、一緒になって引退の方向に進むんだからサゲマン以外何物でもない」

「アスリートの嫁なら、ジムから離れた東京での生活に反対するべきでしょ。夫をダメにしている元凶」

 こうしてネット上では、いまや谷村を応援する声はかなり少ない。井岡本人は引退会見で「目標である3階級制覇を成し遂げた。ボクシングに未練はないし、やり残したこともない」と悦に入っていたが、ファンの間では「強い選手から逃げたまま辞めた」との印象が残り、そのもどかしさが、まさに谷村にぶつけられているのである。井岡は今後について「次のステージに進むビジョンはできている」と話しており、なんらかのチャレンジを近々明かすとしているが、このままではボクシングファンの評価は低いままで、谷村への反発も収まらないのではないか。
(文=藤堂香貴/NEWSIDER Tokyo)

大みそかに格闘技『RIZIN』で勝負するフジテレビ、まさかの“時間帯最下位”もあり得る?

 まもなく2017年も終わり。大みそかのテレビといえば『NHK紅白歌合戦』の一人勝ちだが、“ビリ争い”の方も興味深いことになっている。

 今年の大みそか夜の各局特番は、NHKが『紅白』、日本テレビが恒例の『笑ってはいけない』、テレビ朝日が林修先生とくりぃむしちゅーのクイズ番組『クイズサバイバー』、TBSが各種トップアスリートを集めた『KYOKUGEN』、テレビ東京が夕方から『年忘れにっぽんの歌』、そしてフジテレビが格闘技の『RIZIN』というラインナップ。ちなみにテレビ東京以外はすべて昨年と同じタイムスケジュールだ。テレビ界の大みそかについて、TV情報誌の記者が語る。

「毎年のように数字が『下がった、下がった』と言われる紅白ですが、昨年は2部で40.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録。ほんのわずかではありますが、数字を持ち直しました。その次は日テレが約17%で、事実上、『紅白』か『笑ってはいけない』かの二択状態です。その他の3局(TBS、テレ朝、フジ)はいずれも5%前後で、ほぼダンゴ状態ですが、昨年は微差でテレ朝>TBS>フジの順となりました」

 一時期は大みそかの格闘技中継が恒例行事と化し、複数の局が豪華ゲストを確保してしのぎを削ったが、それも今や昔。そんな中、今年も格闘技1本で勝負するのがフジテレビだが、かなりの苦戦を強いられそうだという。前出の記者が語る。

「今年の大みそかは、昨年とあまり代わり映えがありませんが、いかにも弱いのがフジの『RIZIN』です。低視聴率で三つ巴のテレ朝、TBS、フジですが、テレ朝のクイズは広い年代が見るのにふさわしく、昨年程度の数字は取るはず。TBSはボクシング世界戦、浅田真央、『ボブ・サップ対野生クマ』など、話題になりそうなコンテンツをしっかり揃えました。しかしRIZINは、格闘技ファンでも名前を知らないような選手ばかりで、盛り上がる要素がまったくありません。そこにきて今年は、テレビ東京が3年ぶりに『年忘れにっぽんの歌』をゴールデンタイムに持ってきます。この番組は諸々の問題で2015年、16年と、放送時間が短縮された上、夕方び放送でしたが、今年は夕方4時から6時間の過去最長となり、事前収録のため、紅白出場歌手をはじめ大物が多数出演し、確実に数字が見込めます。さらにテレ東はこの後、人気深夜ドラマ『孤独のグルメ』スペシャル版を放送します。この時間帯にドラマを持ってくるのはかなりのギャンブルですが、“おひとりさま”やネットユーザーには受けそうですし、少なくとも話題性はRIZINよりはるかに上です。消去法でフジが最下位になる可能性は十分にあるでしょう」

 不祥事、炎上、低視聴率など、ここのところほとんど良い話題のないフジテレビだが、2018年も暗い話題からのスタートを強いられそうだ。

大みそかに格闘技『RIZIN』で勝負するフジテレビ、まさかの“時間帯最下位”もあり得る?

 まもなく2017年も終わり。大みそかのテレビといえば『NHK紅白歌合戦』の一人勝ちだが、“ビリ争い”の方も興味深いことになっている。

 今年の大みそか夜の各局特番は、NHKが『紅白』、日本テレビが恒例の『笑ってはいけない』、テレビ朝日が林修先生とくりぃむしちゅーのクイズ番組『クイズサバイバー』、TBSが各種トップアスリートを集めた『KYOKUGEN』、テレビ東京が夕方から『年忘れにっぽんの歌』、そしてフジテレビが格闘技の『RIZIN』というラインナップ。ちなみにテレビ東京以外はすべて昨年と同じタイムスケジュールだ。テレビ界の大みそかについて、TV情報誌の記者が語る。

「毎年のように数字が『下がった、下がった』と言われる紅白ですが、昨年は2部で40.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録。ほんのわずかではありますが、数字を持ち直しました。その次は日テレが約17%で、事実上、『紅白』か『笑ってはいけない』かの二択状態です。その他の3局(TBS、テレ朝、フジ)はいずれも5%前後で、ほぼダンゴ状態ですが、昨年は微差でテレ朝>TBS>フジの順となりました」

 一時期は大みそかの格闘技中継が恒例行事と化し、複数の局が豪華ゲストを確保してしのぎを削ったが、それも今や昔。そんな中、今年も格闘技1本で勝負するのがフジテレビだが、かなりの苦戦を強いられそうだという。前出の記者が語る。

「今年の大みそかは、昨年とあまり代わり映えがありませんが、いかにも弱いのがフジの『RIZIN』です。低視聴率で三つ巴のテレ朝、TBS、フジですが、テレ朝のクイズは広い年代が見るのにふさわしく、昨年程度の数字は取るはず。TBSはボクシング世界戦、浅田真央、『ボブ・サップ対野生クマ』など、話題になりそうなコンテンツをしっかり揃えました。しかしRIZINは、格闘技ファンでも名前を知らないような選手ばかりで、盛り上がる要素がまったくありません。そこにきて今年は、テレビ東京が3年ぶりに『年忘れにっぽんの歌』をゴールデンタイムに持ってきます。この番組は諸々の問題で2015年、16年と、放送時間が短縮された上、夕方び放送でしたが、今年は夕方4時から6時間の過去最長となり、事前収録のため、紅白出場歌手をはじめ大物が多数出演し、確実に数字が見込めます。さらにテレ東はこの後、人気深夜ドラマ『孤独のグルメ』スペシャル版を放送します。この時間帯にドラマを持ってくるのはかなりのギャンブルですが、“おひとりさま”やネットユーザーには受けそうですし、少なくとも話題性はRIZINよりはるかに上です。消去法でフジが最下位になる可能性は十分にあるでしょう」

 不祥事、炎上、低視聴率など、ここのところほとんど良い話題のないフジテレビだが、2018年も暗い話題からのスタートを強いられそうだ。

『THE OUTSIDER』から『RIZIN』へ──“超新星”朝倉海が、あびる優の夫・才賀紀左衛門を挑発!「俺のほうが遥かに上」

「やっと俺の戦いを世の中に見せられるときが来た!」――不良の格闘技の世界で頭角を現した元アウトサイダーの朝倉海(24歳)が今月29日、いよいよ『RIZIN』のリングに初参戦する。大会直前に対戦相手が才賀紀左衛門(28歳)に変更となったが、動じる気配はまるでなく、「打撃も寝技も俺のほうが遥かに上。全局面で圧倒する」と豪語した。

――まずは、RIZINへの参戦が決まった経緯を教えてください。

朝倉海(以下朝倉) 決まったのは記者会見(11月29日)の前日ですね。前田(日明)さん主催のアウトサイダーとの契約が切れたのが11月8日で、そこからRIZINの人とやりとりを始めて、出られるか出られないかっていう状態が続いていたんですが、会見の前日に「正式に決まった」という連絡が来ました。

――RIZIN実行委員長の榊原信行さんからは、どのような言葉をかけられましたか?

朝倉 「全国の人が見るRIZINのリングに相応しい戦いを見せてほしい」と言われました。もちろん俺もそのつもりです。

――かねてからRIZINへの憧れを口にしていた朝倉選手ですが、実現が意外と早かったのでは?

朝倉 いや、今年の年末は絶対に出ると自分の中で決めていたので、その通りになったという感じです。RIZINに出るために東京にも出てきたので、やっとスタートラインに立った感じですね。

――アウトサイダーの前田さんからは何か言われましたか?

朝倉 先日、直接ご挨拶をさせてもらったんですが、「よかったな。頑張れよ」と言ってくれて、試合のアドバイスもいろいろといただきました。アウトサイダーがあったからこそ俺はここまで来られたので、前田さんには本当に感謝しています。

――上京したのはいつですか?

朝倉 今年の8月末ですね。兄貴(朝倉未来選手)と一緒に、「これからは格闘技で生きていく」という覚悟を決めて地元の愛知から出て来ました。今の所属ジム(トライフォース赤坂)のオーナーの堀鉄平さんとはアウトサイダー時代から仲良くさせてもらっていて、以前からいろいろと相談に乗ってもらっていたんですよ。「愛知の豊橋だと練習相手がなかなかいないし、仕事もフルでやっているから練習時間を確保できない」とか。そしたら堀さんが「東京に来なよ」と誘ってくれたんです。「ウチのジムで雇ってあげるよ」と。それで上京を決めました。

――ジムでの仕事内容は?

朝倉 キックボクシングとヒートジムのトレーナーをやっているんですが、働きながら自分もトレーニングに参加できるのがいいですね。空き時間にミット打ちやスパーリングもできるし、それとは別に、日本国内のトップ選手が集まるジムに出稽古に行ったり、週に1回このジムにアウトサイダー時代の仲間が集まって合同練習したり。愛知にいるときは1日2時間しか練習できなかったですが、今は1日4~5時間は格闘技やフィジカルのトレーニングに充てられるのがうれしいです。

――東京に来て感じることはありますか?

朝倉 地元の豊橋は海と山しかないようなところだったので、最初は東京の満員電車に乗るのが憂鬱でしたが、それも1カ月で慣れました。あとやっぱり、こっちは格闘家のレベルが高いです。本当に強い選手が集まっていると思います。以前の練習はお遊びだったんじゃないかと思えるくらい、今はいい練習ができています。上京してからの数カ月で、自分でも実感できるくらいメキメキ強くなっているので、それを早く試合で見せたいですね。

――今回、対戦予定だった伊藤盛一郎選手が大会直前になってケガで欠場。朝倉選手は急きょ、才賀紀左衛門選手と戦うことになったと、今月21日にRIZINから発表されました。

朝倉 なんせ直前ですから、ビザの関係で外国人選手を呼べないなどの事情もあり、RIZINも代役探しに苦労したみたいです。そんな中、紀左衛門選手が名乗りを上げてくれました。

――ズバリ、紀左衛門選手の印象は?

朝倉 このギリギリの段階で試合を受けてくれたことには感謝しますが、実力は全然違うな、と思います。

――全然違うとは?

朝倉 打撃においても寝技においても、俺のほうが遥かに上、という意味です。

――言いますね。

朝倉 そうでなきゃね。向こうはもともとキックボクシングの選手で打撃には相当自信があるみたいですけれど、その打撃でも俺のほうが上だと思うので、全局面で圧倒したい。判定はないと思います。兄貴からも「勝つのは当然。勝ち方にこだわれ」と言われています。RIZINは格闘技に詳しくない人も大勢見るから、わかりやすい勝ち方を目指したいと思います。

――紀左衛門選手との一戦はキャッチウェイト(正規の階級の規定体重ではなく、事前に両選手間の話し合いで決められた体重で試合を行うこと)になりましたが、結局、何キロで戦うのでしょう?

朝倉 俺は57キロに向けて減量中で、すでに61キロまで落としていたんですが、紀左衛門選手は約70キロあるとのことなので、たぶん63キロぐらいで戦うことになると思います。試合1週間前に契約体重が6キロ増えるなんてふざけた話だし、それでもやるっていう選手はまずいないと思うんですよね。でも誰もできないことをやったほうが面白いし、体重差があっても勝てる自信があるので受けました。減量中だったのが一転、今度は増量しないといけなくなりましたけどね。

――実はこのインタビューの直前、カレー屋から出てくる朝倉選手を目撃しました。

朝倉 ハハハ、見られちゃいましたか。俺、「インド人になるぞ」って言われるくらいカレーが大好きで、あの店には週に3、4回通っているんですが、年末に向けて通う回数がもっと増えるかもしれないですね。思いきり食べてパワー全開にしてぶっ倒します。

――「9戦8勝、6KO、2サブミッション」とプロデビュー後も高いフィニッシュ率を誇る朝倉選手ですが、今年6月のROAD FCで初黒星を喫しました。あの負けは自分の中で消化できましたか?

朝倉 あれは本当に収穫の多い試合でした。初めて試合で劣勢になったんですよ。自分が思っていたよりも相手の打撃とかに巧さがあって、初めて頭が真っ白になるという状況になった。そこで頭が回らずに同じパターンの攻撃しか出せなかったのが一番の敗因です。反省点が多かったので、そこをすべて修正しました。あのときよりも何倍も強くなった自信があります。

――アウトサイダーから地上波の大舞台への進出。今はどういう気分ですか?

朝倉 緊張はまったくなくて、本当に楽しみで仕方がない。あの目標にしていたリングでやっと戦えるときが来たな、やっと俺の戦いを世の中に見せられるときが来たな、という感じです。RIZINはやっぱり影響力がデカいですね。出ることが発表されただけで、SNSとかの反響がすごい。大会関係者が俺の試合は注目度が高いと言っていたんで、KOとかで勝てばダイジェストじゃなくフルで放映されると思います。

――勝って有名になれば、あのカレー屋さんもスポンサーになってくれるかもしれませんよ(笑)。では最後に改めて、試合に向けた抱負を語ってください。

朝倉 アウトサイダー出身ってことでレベルが低いとか批判されることもありますけど、強い奴は本当に強いってことを俺が今回、証明したいと思います。そして、今アウトサイダーにいる選手とかが、またこういうRIZINみたいな大舞台に出られるよう、そのきっかけを俺が作れたらいいなと思います

――ひとつ聞き忘れていたことがありました。RIZINには体重の近い那須川天心選手(19歳)がいますが、意識はしていますか?

朝倉 もちろん意識しています。俺はやりたいですけど、やっぱりキックルールじゃなく、MMA(総合格闘技)ルールでやりたいです。那須川選手は本当に強いし、天才だと思いますけど、まあMMAはそんな簡単には強くなれないし、MMAをやってきた選手と戦ったら手も足も出ないと思う。MMAの厳しさをいつか教えてあげたいと思います。

――俺が土をつけるまで負けないで待っていろ、って感じですか?

朝倉 そうですね。そのアピールをするためにも、年末は派手に勝ちますんで注目していてください。

(取材・文=岡林敬太/撮影=長谷英史)

【大会】
RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017

【会場】
さいたまスーパーアリーナ

【日時】
12月29日(金)※朝倉海の出場日
12月31日(日)

【放送予定】
12月31日(日)18時30分よりフジテレビ系列で全国放送

『THE OUTSIDER』から『RIZIN』へ──“超新星”朝倉海が、あびる優の夫・才賀紀左衛門を挑発!「俺のほうが遥かに上」

「やっと俺の戦いを世の中に見せられるときが来た!」――不良の格闘技の世界で頭角を現した元アウトサイダーの朝倉海(24歳)が今月29日、いよいよ『RIZIN』のリングに初参戦する。大会直前に対戦相手が才賀紀左衛門(28歳)に変更となったが、動じる気配はまるでなく、「打撃も寝技も俺のほうが遥かに上。全局面で圧倒する」と豪語した。

――まずは、RIZINへの参戦が決まった経緯を教えてください。

朝倉海(以下朝倉) 決まったのは記者会見(11月29日)の前日ですね。前田(日明)さん主催のアウトサイダーとの契約が切れたのが11月8日で、そこからRIZINの人とやりとりを始めて、出られるか出られないかっていう状態が続いていたんですが、会見の前日に「正式に決まった」という連絡が来ました。

――RIZIN実行委員長の榊原信行さんからは、どのような言葉をかけられましたか?

朝倉 「全国の人が見るRIZINのリングに相応しい戦いを見せてほしい」と言われました。もちろん俺もそのつもりです。

――かねてからRIZINへの憧れを口にしていた朝倉選手ですが、実現が意外と早かったのでは?

朝倉 いや、今年の年末は絶対に出ると自分の中で決めていたので、その通りになったという感じです。RIZINに出るために東京にも出てきたので、やっとスタートラインに立った感じですね。

――アウトサイダーの前田さんからは何か言われましたか?

朝倉 先日、直接ご挨拶をさせてもらったんですが、「よかったな。頑張れよ」と言ってくれて、試合のアドバイスもいろいろといただきました。アウトサイダーがあったからこそ俺はここまで来られたので、前田さんには本当に感謝しています。

――上京したのはいつですか?

朝倉 今年の8月末ですね。兄貴(朝倉未来選手)と一緒に、「これからは格闘技で生きていく」という覚悟を決めて地元の愛知から出て来ました。今の所属ジム(トライフォース赤坂)のオーナーの堀鉄平さんとはアウトサイダー時代から仲良くさせてもらっていて、以前からいろいろと相談に乗ってもらっていたんですよ。「愛知の豊橋だと練習相手がなかなかいないし、仕事もフルでやっているから練習時間を確保できない」とか。そしたら堀さんが「東京に来なよ」と誘ってくれたんです。「ウチのジムで雇ってあげるよ」と。それで上京を決めました。

――ジムでの仕事内容は?

朝倉 キックボクシングとヒートジムのトレーナーをやっているんですが、働きながら自分もトレーニングに参加できるのがいいですね。空き時間にミット打ちやスパーリングもできるし、それとは別に、日本国内のトップ選手が集まるジムに出稽古に行ったり、週に1回このジムにアウトサイダー時代の仲間が集まって合同練習したり。愛知にいるときは1日2時間しか練習できなかったですが、今は1日4~5時間は格闘技やフィジカルのトレーニングに充てられるのがうれしいです。

――東京に来て感じることはありますか?

朝倉 地元の豊橋は海と山しかないようなところだったので、最初は東京の満員電車に乗るのが憂鬱でしたが、それも1カ月で慣れました。あとやっぱり、こっちは格闘家のレベルが高いです。本当に強い選手が集まっていると思います。以前の練習はお遊びだったんじゃないかと思えるくらい、今はいい練習ができています。上京してからの数カ月で、自分でも実感できるくらいメキメキ強くなっているので、それを早く試合で見せたいですね。

――今回、対戦予定だった伊藤盛一郎選手が大会直前になってケガで欠場。朝倉選手は急きょ、才賀紀左衛門選手と戦うことになったと、今月21日にRIZINから発表されました。

朝倉 なんせ直前ですから、ビザの関係で外国人選手を呼べないなどの事情もあり、RIZINも代役探しに苦労したみたいです。そんな中、紀左衛門選手が名乗りを上げてくれました。

――ズバリ、紀左衛門選手の印象は?

朝倉 このギリギリの段階で試合を受けてくれたことには感謝しますが、実力は全然違うな、と思います。

――全然違うとは?

朝倉 打撃においても寝技においても、俺のほうが遥かに上、という意味です。

――言いますね。

朝倉 そうでなきゃね。向こうはもともとキックボクシングの選手で打撃には相当自信があるみたいですけれど、その打撃でも俺のほうが上だと思うので、全局面で圧倒したい。判定はないと思います。兄貴からも「勝つのは当然。勝ち方にこだわれ」と言われています。RIZINは格闘技に詳しくない人も大勢見るから、わかりやすい勝ち方を目指したいと思います。

――紀左衛門選手との一戦はキャッチウェイト(正規の階級の規定体重ではなく、事前に両選手間の話し合いで決められた体重で試合を行うこと)になりましたが、結局、何キロで戦うのでしょう?

朝倉 俺は57キロに向けて減量中で、すでに61キロまで落としていたんですが、紀左衛門選手は約70キロあるとのことなので、たぶん63キロぐらいで戦うことになると思います。試合1週間前に契約体重が6キロ増えるなんてふざけた話だし、それでもやるっていう選手はまずいないと思うんですよね。でも誰もできないことをやったほうが面白いし、体重差があっても勝てる自信があるので受けました。減量中だったのが一転、今度は増量しないといけなくなりましたけどね。

――実はこのインタビューの直前、カレー屋から出てくる朝倉選手を目撃しました。

朝倉 ハハハ、見られちゃいましたか。俺、「インド人になるぞ」って言われるくらいカレーが大好きで、あの店には週に3、4回通っているんですが、年末に向けて通う回数がもっと増えるかもしれないですね。思いきり食べてパワー全開にしてぶっ倒します。

――「9戦8勝、6KO、2サブミッション」とプロデビュー後も高いフィニッシュ率を誇る朝倉選手ですが、今年6月のROAD FCで初黒星を喫しました。あの負けは自分の中で消化できましたか?

朝倉 あれは本当に収穫の多い試合でした。初めて試合で劣勢になったんですよ。自分が思っていたよりも相手の打撃とかに巧さがあって、初めて頭が真っ白になるという状況になった。そこで頭が回らずに同じパターンの攻撃しか出せなかったのが一番の敗因です。反省点が多かったので、そこをすべて修正しました。あのときよりも何倍も強くなった自信があります。

――アウトサイダーから地上波の大舞台への進出。今はどういう気分ですか?

朝倉 緊張はまったくなくて、本当に楽しみで仕方がない。あの目標にしていたリングでやっと戦えるときが来たな、やっと俺の戦いを世の中に見せられるときが来たな、という感じです。RIZINはやっぱり影響力がデカいですね。出ることが発表されただけで、SNSとかの反響がすごい。大会関係者が俺の試合は注目度が高いと言っていたんで、KOとかで勝てばダイジェストじゃなくフルで放映されると思います。

――勝って有名になれば、あのカレー屋さんもスポンサーになってくれるかもしれませんよ(笑)。では最後に改めて、試合に向けた抱負を語ってください。

朝倉 アウトサイダー出身ってことでレベルが低いとか批判されることもありますけど、強い奴は本当に強いってことを俺が今回、証明したいと思います。そして、今アウトサイダーにいる選手とかが、またこういうRIZINみたいな大舞台に出られるよう、そのきっかけを俺が作れたらいいなと思います

――ひとつ聞き忘れていたことがありました。RIZINには体重の近い那須川天心選手(19歳)がいますが、意識はしていますか?

朝倉 もちろん意識しています。俺はやりたいですけど、やっぱりキックルールじゃなく、MMA(総合格闘技)ルールでやりたいです。那須川選手は本当に強いし、天才だと思いますけど、まあMMAはそんな簡単には強くなれないし、MMAをやってきた選手と戦ったら手も足も出ないと思う。MMAの厳しさをいつか教えてあげたいと思います。

――俺が土をつけるまで負けないで待っていろ、って感じですか?

朝倉 そうですね。そのアピールをするためにも、年末は派手に勝ちますんで注目していてください。

(取材・文=岡林敬太/撮影=長谷英史)

【大会】
RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017

【会場】
さいたまスーパーアリーナ

【日時】
12月29日(金)※朝倉海の出場日
12月31日(日)

【放送予定】
12月31日(日)18時30分よりフジテレビ系列で全国放送

“失明危機”から舞い戻った格闘家・渋谷莉孔、涙のロングインタビュー!

 格闘家として一度死んだ男が、奇跡の復活を遂げた。試合中のケガが原因で失明の危機に瀕し、引退説もささかれていた渋谷莉孔(32歳)が今月9日、アジア最大の総合格闘技イベント「ONE Championship」(以下ONE)で、デェダムロン・ソー・アミュアイシルチョーク(39歳)を絞め上げ、ギブアップ勝ちを収めたのだ。「格闘技は好きじゃない」という渋谷が戦いの場に戻って来た理由は何なのか? 涙のロングインタビュー!

 試合はデェダムロンのホームであるタイで行われたが、開始早々、渋谷がテイクダウンに成功。そのままギロチンチョークが決まり、1ラウンド2分13秒、タイの英雄が「参った」のタップをした。

◆ダイジェスト動画 https://www.facebook.com/ONEChampionship/videos/1645103265512922/

 約2年ぶりの勝利に、ほんの一瞬、喜びの表情を浮かべた渋谷だったが、勝ち名乗りを受ける頃には、まるで試合に敗れたかのような寂しげな表情を浮かべていたのが印象的だった。

 勝利の実感、復活への道のり、そして目の状態などを聞くべく、試合の数日後、所属ジムのあるハワイへ戻った渋谷に電話インタビューを行った。

――復活勝利、おめでとうございます。この日を待ち望んでいました。

渋谷莉孔(以下渋谷) ありがとうございます。でもみんなもう俺のことなんか、忘れているんじゃないでしょうか。「やめたんですよね?」と言われることも多かったし。

――まずは試合当日のことを振り返っていただきたいのですが、入場時の様子が以前と違いましたね。

渋谷 おとなしかった、ってことですよね。それだけ自信があったんですよ。かつての俺はただのビビリで、プレッシャーに押しつぶされてパニック状態だったから、半狂乱な入場をしていただけ。だから力も出せなかった。でも今回は練習通りというか、普通にダラ~ッと行っても絶対に力を発揮できるという自信があったんです。だからまったく緊張せず、平常心で試合に臨むことができた。チームのみんなからも「絶対に熱くなるな」と言われてケージに入りました。過去の試合と比べて集中力は段違いでしたね。

――2016年1月のロイ・ドリゲス戦で勝利したものの、目潰しの反則を受け、失明の危機に。一部ニュースサイトで引退報道まで出た渋谷選手ですが、そこからよくぞ復活を遂げましたね。目は現在、どの程度まで見えるようになったんですか?

渋谷 試合でケガした目だけじゃなく、もう片方の目も網膜剥離になっちゃって、一時期は両目ともほとんど見えなくなっていたんですが、何度かの手術を経て、今は片方が0.2で、もう片方がその10分の1程度まで見えるようになりました。片目を瞑るとボヤっとしちゃうけど、両目を開けていれば大丈夫。相手が動けば動くほどよく見える。恐竜と同じですね。

――目を再び狙われることへの恐怖心はないんですか?

渋谷 まったくないですね。どうせ当たんないし。

――元ルンピニー3階級王者で、ONEの元ストロー級王者でもあるデェダムロンとケージ内で向き合った印象は?

渋谷 実はデェダムロンは、俺の師匠みたいな存在なんですよ。2年くらい前にシンガポールで修行していた時代に5カ月ほどお世話になった。めちゃくちゃ優しい人だけど、めちゃくちゃ強い人で。当時は実力差がすごくあって、いつも練習でボコボコにされていたから、その恐怖心もあるにはあったけど、それによりも自分が強くなっていることを早く確かめたいという気持ちが強かったですね。どれだけこいつの打撃に対応できるのか、と。

――序盤はお互い様子見の打撃の応酬で、相手のハイキックに観衆が沸く場面もありました。

渋谷 あれ、当たっていませんよ。蹴る3秒ぐらい前にはもう予測できたんで。蹴る流れってのがあるんですけど、次に何が来るかという予想通りの動きをした、というか、させたんで、相手の打撃には1分程度で対応できました。逆にこっちの左のローは蹴れば蹴るほど入るし、結構深いところに入って、相手がしっかり両足を踏ん張るようになってきた。で、踏ん張り切ったところにタックルに行ったんで、相手も逃げられなかったんです。

――タックルに入る際、カウンターの打撃は怖くなかったですか?

渋谷 実はタックルの前に俺、左ローのフェイントを1回入れているんですよ。あれを入れることによって、相手の前足が上がるのか上がらないのかを見た。痛いと足が上がらなくなるんです。ちょっと足が上がったんで、まだ余裕はあるみたいだけど、このローのフェイントによって、こいつ騙されたなと思って。俺の戦略についていけていないとわかったんで、タックルすらこいつは絶対見えないしノーリスクだろうと思って飛び込みました。

――テイクダウンしてからキメに入るまでの一連の動作が見事でした。

渋谷 練習で毎日何十人も絞めているんで、絞め技、得意なんですよ。完全に入ったから、あとはずっとレフリーを見ていました。もうこれ逃げられないよ、そろそろ落ちますよ、と目で伝えた。でも「まだ」と言われたんで、じゃあ首を折るか、絞めで落とすか、どっちかなぁと待ったんですよ。そしたら相手がちょっと動いたんで、絞めにしようと思って足をクロスしてキメたんですけど、全部自分の手の中の技っスね。

――手の中の技とは?

渋谷 相手のいろんな動きを想定して、あそこから10通り近くの技を用意しているんです。投げたり、こかしたり、相手を伸ばして呼吸困難にしたり。伸ばすと腹這いになるじゃないですか。しゃがんでいる状態と、腹這いの状態で絞められるのを比べたら、腹這いのほうがヤバくないスか? もう首吊り状態なんで。

――一瞬、逃げられかけたようにも見えましたが。

渋谷 あれ、逃げられたんじゃなく、泳がせたんです。俺の手首ってかなり柔らかくて、しかも返しがついているんですよ。だから汗で滑る以外は、絶対にアゴから外れないし、泳げば泳ぐほど呼吸困難になる。今回も相手がパニックになって息を漏らしたんですよ。これ、スキューバと同じで、パニックになったらカウントダウン開始なんです。落ちるカウントダウン。

――恐ろしいですね。

渋谷 耐える奴は必ず落ちる。そのパターンに入ったんで、落とす用意をしながらレフリーを見た。たぶんレフリーが思っているよりも前に相手はちょっと落ちているんですよ。だから本当はもうちょっと早くに試合を止めてほしかった。俺、相手を落とすのが嫌なんですよ。

――そうなんですか。

渋谷 はい。特にデェダムロンのことは好きなんで。落ちると脳が一瞬、止まるわけじゃないですか。後遺症が残ると思うんですよ。俺のギロチンを食らって失神した奴って、次も失神しやすくなるんです。だからそれが悲しくて喜べなかった。試合終わってから、ああ、やっちゃった、みたいな。俺がもっと上手ければもっと早くにタップさせらたれたのになぁとか思っちゃって。もしかしたらこれでデェダムロンの選手生命が終わっちゃうんじゃないかと思ったら切なくて。

――試合後の悲しげな表情の理由がわかりました。意識が回復したデェダムロンとは、どのような会話を?

渋谷 俺からは英語で「ありがとうございます。尊敬しています」ってことを伝えました。デェダムロンは日本語で「ありがとう」、英語で「久しぶりに会えてよかったよ」と言っていました。俺を乗り越えたな、みたいなニュアンスも表情から伝わってきた。師匠みたいな存在でしたからね。何年か前、ONEの人に「いつか俺、デェダムロンとやることはあるんですかね」と聞いたら、「何バカなことを言っているんだ」と返されたぐらい当時は差があったけど、その壁を今回、乗り越えましたね。

――最大の勝因はズバリ?

渋谷 前の試合(今年8月の復帰第1戦)は相手に対するリスペクトが足りなかった。そこっスよね。相手をナメていると、相手のいいところを見ないじゃないですか。だから相手を怖がらずに行ったら返り討ちに遭っちゃったけど、今回は相手をリスペクトしていたから、相手の強さをしっかり認められたんですよ。相手は打撃がめちゃくちゃ強い。だから死ぬ気でやらないと殺される。そういう思いで練習できたからこそ勝てた。リスペクトなしでは強くなれないってことだと思います。

――2年前からハワイに移住し、マックス・ホロウェイらUFCのトップファイターが所属する「グレイシー・テクニクス・ホノルル」でトレーニングを積み重ねてきた渋谷選手。向こうの練習環境はいかがでしょう?

渋谷 キツすぎて頭がおかしくなりそうです。特に今回の試合に向けた数カ月間は、毎日パニックとストレスの中にいるような感じ。スマホや鏡を見る余裕もない。ハワイでは日本語学校にも通っているんですが、そこで他の生徒から話しかけられても誰が誰だかわからない。世界が霧がかっているような感じで、みんなが俺のことを騙しているんじゃないかと疑いだしたり。会う人会う人に「Are you ok?」と心配されるんですが、自分では何がおかしいのかもわからない状態でした。オーバーワークが原因なのはわかっていたんですが、自分の勘を信じて猛練習を続けました。

――ここ数カ月の練習内容は?

渋谷 限りなく実戦に近いスパーリングをひたすら繰り返しつつ、前回の試合でダメだった部分、具体的には、下半身の強化に努めました。昔の俺はダメなところを見ようとしなかったんですよ。あとパニック障害だということも認めようとしなかった。

――パニック障害だったんですか? それは初耳です。

渋谷 俺、昔から病的に焦りやすいんです。なんでも完璧に準備するタイプだから、時間を急かれたり不測の事態が起きたりすると、すぐパニくっちゃうんです。「入場が30分早まりそうです」とか言われると心臓が止まりそうになる。「そんなの無理無理無理! 俺、試合なんてできない!」と叫んで、セコンドに抱きついたこともありました。今回のデェダムロン戦も直前まで大変でしたよ。

――何があったんですか?

渋谷 何回かに分けて計量と尿検査があったんですが、言葉のハードルもあり、今日は56.7キロとか、56.9キロまでOKとか、56.9キロはダメとか情報が錯綜して、どれが本当だかわからなくて。尿比重の正しい比率もわからなくて、1回オーバーしちゃったんですよ。そんで「1時間後までに落とせ」と言われてすごいパニックになったけど、そこはなんとかクリアできた。で、翌日の最終計量と尿検査はパニくらないよう早めに行ったんですけど、着いたらみんなとっくに終わっていたから大パニックになりました。知らないうちに開始時刻が1時間早まったらしいんですよ。

――それは焦りますね。

渋谷 「30分以内に尿を出してくれ。出なかったら失格だ」と急かされたんですけど、なかなか出なくて、頭真っ白になって。残り7分ってところでどうにかこうにか絞り出して、ギリ間に合って試合には出られるようになったんだけど、そのときの俺の取り乱しようったらなかった。すでに試合前日だったけど、チームのみんなで急きょ対策会議を開き、「パニック障害だということを認めよう。そしてその原因を認めよう」ということになり、それが何なのかはここでは言えませんけど、認めることで克服したんですよ。おかげで翌日の試合では一切緊張しなかった。腹が据わって、本来の力を出せたんです。

――災い転じて福となす、ですね。

渋谷 はい。土壇場で辛いことが相次いだおかげで、覚醒できたんですよ。いい経験でした。辛い経験って自分からしたいと思ってもできないし、降りかかってきてくれないと受け止められない。で、乗り越えた者だけがこうやって心が強くなれるというか、何に対してもビビらなくなる。今なら「爆弾処理をやってくれ」と頼まれてもできるような気がします(笑)。それぐらい俺は変わりました。そういや俺、ハワイで自己紹介するときはいつも、「俺のパーソナリティーは『Change』だ」って言っているんですよ。気が変わりやすいという意味もあるけど、悪いところはすぐに変えられるっていう意味でもあるんですよね。

――試合直後は悲しんでいましたが、今は勝利の充実感はありますか?

渋谷 絞め落としたこととは関係なしに、なんか喜べない。試合前はずっとこう思っていたんですよ。今回勝ったらめちゃくちゃ泣くだろうな、と。ところが、実際は勝ってもまだ心の底からは喜べていない。まだ実感がないのか、どう喜んでいいのかわからないのか、って感じです。チームのみんなの前では喜んだけど、「やったー!」ってまだ言っていないですもん。格闘技で勝って1人でしみじみと喜びを噛み締めた経験って、今まで一度もないかもしれない。

――それはなぜだと思いますか?

渋谷 そこも気分屋なんだと思います。一瞬うれしいと思っても、すぐ次に気持ちがいっちゃうんですよ。俺の脳みそは、直感で受け取って理性で返すタイプらしい。要は飽き性、浮気性なんでしょうね。直感でいいなと思っても、理性で考えてもういいやってなっちゃう。だから買い物してもすぐ捨てちゃうし、家には物がほとんどない。記念品なんて持ち帰ったことすらないですからね。ONEで勝つと3キロぐらいのプレートをもらえるんですけど、いつも誰かあげちゃいます。今回もタイから、スーパーのトートバッグ一つで帰ってきましたから。行くときは大荷物だったんですけど、帰りはスーツケースとか体重計とか服とかを全部現地に捨ててきました。だって、重たいじゃないですか。

――試合で使ったファイトパンツとかも捨てちゃうんですか?

渋谷 洗うのが面倒なんで、捨てちゃいます。そういやファイトパンツで思い出した! 俺の試合用のファイトパンツは、ケツの部分に「Ganapati PLC」というスポンサーロゴが入っているんですけど、今回このアイロンパッチのロゴを、現地に行ってから自分でアイロンを使って付けようとして大失敗したんですよ。水を噴きかけてからアイロンをかけなきゃいけないってことを知らなかったから、熱で生地が溶けてファイトパンツのケツの部分にでっかい穴が空いちゃった(笑)。

――まさか、それをはいて試合に出たんですか?

渋谷 はい(笑)。たまたまチームの後輩に器用な奴がいたから、そいつがアイロンで生き残った生地をちょっとずつペローンと伸ばして穴を塞いで、裏からもパッチを付けて補強してくれて、それでどうにか試合に出ました。試合が2ラウンドまで長引いたらロゴが取れて、ケツ丸出しになっていた可能性がある(笑)。だから1ラウンドの序盤で試合を終わらせられてよかったです。

――デェダムロンを破ったことで、タイトルマッチも見えてきました。

渋谷 ベルトは要らないですね。なんでかわかります?

――わかりません。

渋谷 持って帰るのが重たいからですよ(笑)。

――(笑)しかし、勝ってもうれしくない、ベルトにも執着がないとなると、渋谷選手は一体なんのために戦っているのでしょう? 応援している側からすると、今回の渋谷選手の勝利はめちゃくちゃうれしかったですけどね。2008年の「THE OUTSIDER」のデビュー戦からずっと見てきて、目のケガで苦しんでいたことも知っていましたから、見ていて今回ほど緊張し、感動した試合はなかったですよ。

渋谷 ……あ、わかった。やっとわかったっス。なんでうれしくないんだろう? なんで勝ったのに辛いんだろう? っていう理由が、今やっとわかった気がします。ぶっちゃけ俺、格闘技はまったく好きじゃないんですよ。でも今回、試合を終えて控え室に戻ったら、チームのみんなが泣いて喜んでくれていたから、俺もうれしくなって、もらい泣きしたんですよ。人生で泣くことなんてほとんどなかったのに。でもみんなと別れてホテルの部屋に入る頃には全然うれしくなくなっていた。つまりそれって、試合に勝って俺自身がうれしいんじゃなくて、周りが喜んでいる姿を見るのが俺はうれしんだなと思って……(突然、嗚咽を漏らす)。それのために俺、好きでもない格闘技を頑張ってこれたんですね。

――戦うモチベーションは、そこにありましたか。

渋谷 (泣きながら)そういうことか……。だって今、本当にうれしいですもん。うれしいと言ってくれたことに対し、本当にうれしい気持ちなれました。ありがとうございます。

 * * *

翌日、渋谷から電話がかかってきた。

――どうしましたか?

渋谷 聞いてください。おかげで正視恐怖症が治りました。今日、何十年かぶりに人の目をちゃんと見てしゃべれたんですよ。それまで長いこと、ピントを合わせられなかったんです。ピントを合わせたら必ず人って、俺のことを嫌な顔で見る。だから今まで合わせられなかったのに、今日はできるかもしれないと思って試してみたら、ピントを合わせられました。人の顔ってめちゃくちゃ猿みたいですね(笑)。目の使い方が正常化したことで、世界が違って見える。このことを脳外科の先生に報告したら、「泣いたことによって眼球の周りの感覚を取り戻した可能性がある」と言われました。

――それまで人を正視できなかった理由は?

渋谷 誰も信用できずにいたからです。

――なぜ信用できなかったのでしょう?

渋谷 そういう人生だったからです。起きろと叩かれ、寝たら怒られ、しゃべれと言われてしゃべったら「うるせー!」と怒鳴られる。生きていることを全否定されて育ってきたんで、ずっと人を信用できなかったんですよ。でも今回、俺の勝利を本気で喜んでくれた人が何人もいることがわかったから、これからは人を信用して生きていけそうです。
(取材・文=岡林敬太)

“失明危機”から舞い戻った格闘家・渋谷莉孔、涙のロングインタビュー!

 格闘家として一度死んだ男が、奇跡の復活を遂げた。試合中のケガが原因で失明の危機に瀕し、引退説もささかれていた渋谷莉孔(32歳)が今月9日、アジア最大の総合格闘技イベント「ONE Championship」(以下ONE)で、デェダムロン・ソー・アミュアイシルチョーク(39歳)を絞め上げ、ギブアップ勝ちを収めたのだ。「格闘技は好きじゃない」という渋谷が戦いの場に戻って来た理由は何なのか? 涙のロングインタビュー!

 試合はデェダムロンのホームであるタイで行われたが、開始早々、渋谷がテイクダウンに成功。そのままギロチンチョークが決まり、1ラウンド2分13秒、タイの英雄が「参った」のタップをした。

◆ダイジェスト動画 https://www.facebook.com/ONEChampionship/videos/1645103265512922/

 約2年ぶりの勝利に、ほんの一瞬、喜びの表情を浮かべた渋谷だったが、勝ち名乗りを受ける頃には、まるで試合に敗れたかのような寂しげな表情を浮かべていたのが印象的だった。

 勝利の実感、復活への道のり、そして目の状態などを聞くべく、試合の数日後、所属ジムのあるハワイへ戻った渋谷に電話インタビューを行った。

――復活勝利、おめでとうございます。この日を待ち望んでいました。

渋谷莉孔(以下渋谷) ありがとうございます。でもみんなもう俺のことなんか、忘れているんじゃないでしょうか。「やめたんですよね?」と言われることも多かったし。

――まずは試合当日のことを振り返っていただきたいのですが、入場時の様子が以前と違いましたね。

渋谷 おとなしかった、ってことですよね。それだけ自信があったんですよ。かつての俺はただのビビリで、プレッシャーに押しつぶされてパニック状態だったから、半狂乱な入場をしていただけ。だから力も出せなかった。でも今回は練習通りというか、普通にダラ~ッと行っても絶対に力を発揮できるという自信があったんです。だからまったく緊張せず、平常心で試合に臨むことができた。チームのみんなからも「絶対に熱くなるな」と言われてケージに入りました。過去の試合と比べて集中力は段違いでしたね。

――2016年1月のロイ・ドリゲス戦で勝利したものの、目潰しの反則を受け、失明の危機に。一部ニュースサイトで引退報道まで出た渋谷選手ですが、そこからよくぞ復活を遂げましたね。目は現在、どの程度まで見えるようになったんですか?

渋谷 試合でケガした目だけじゃなく、もう片方の目も網膜剥離になっちゃって、一時期は両目ともほとんど見えなくなっていたんですが、何度かの手術を経て、今は片方が0.2で、もう片方がその10分の1程度まで見えるようになりました。片目を瞑るとボヤっとしちゃうけど、両目を開けていれば大丈夫。相手が動けば動くほどよく見える。恐竜と同じですね。

――目を再び狙われることへの恐怖心はないんですか?

渋谷 まったくないですね。どうせ当たんないし。

――元ルンピニー3階級王者で、ONEの元ストロー級王者でもあるデェダムロンとケージ内で向き合った印象は?

渋谷 実はデェダムロンは、俺の師匠みたいな存在なんですよ。2年くらい前にシンガポールで修行していた時代に5カ月ほどお世話になった。めちゃくちゃ優しい人だけど、めちゃくちゃ強い人で。当時は実力差がすごくあって、いつも練習でボコボコにされていたから、その恐怖心もあるにはあったけど、それによりも自分が強くなっていることを早く確かめたいという気持ちが強かったですね。どれだけこいつの打撃に対応できるのか、と。

――序盤はお互い様子見の打撃の応酬で、相手のハイキックに観衆が沸く場面もありました。

渋谷 あれ、当たっていませんよ。蹴る3秒ぐらい前にはもう予測できたんで。蹴る流れってのがあるんですけど、次に何が来るかという予想通りの動きをした、というか、させたんで、相手の打撃には1分程度で対応できました。逆にこっちの左のローは蹴れば蹴るほど入るし、結構深いところに入って、相手がしっかり両足を踏ん張るようになってきた。で、踏ん張り切ったところにタックルに行ったんで、相手も逃げられなかったんです。

――タックルに入る際、カウンターの打撃は怖くなかったですか?

渋谷 実はタックルの前に俺、左ローのフェイントを1回入れているんですよ。あれを入れることによって、相手の前足が上がるのか上がらないのかを見た。痛いと足が上がらなくなるんです。ちょっと足が上がったんで、まだ余裕はあるみたいだけど、このローのフェイントによって、こいつ騙されたなと思って。俺の戦略についていけていないとわかったんで、タックルすらこいつは絶対見えないしノーリスクだろうと思って飛び込みました。

――テイクダウンしてからキメに入るまでの一連の動作が見事でした。

渋谷 練習で毎日何十人も絞めているんで、絞め技、得意なんですよ。完全に入ったから、あとはずっとレフリーを見ていました。もうこれ逃げられないよ、そろそろ落ちますよ、と目で伝えた。でも「まだ」と言われたんで、じゃあ首を折るか、絞めで落とすか、どっちかなぁと待ったんですよ。そしたら相手がちょっと動いたんで、絞めにしようと思って足をクロスしてキメたんですけど、全部自分の手の中の技っスね。

――手の中の技とは?

渋谷 相手のいろんな動きを想定して、あそこから10通り近くの技を用意しているんです。投げたり、こかしたり、相手を伸ばして呼吸困難にしたり。伸ばすと腹這いになるじゃないですか。しゃがんでいる状態と、腹這いの状態で絞められるのを比べたら、腹這いのほうがヤバくないスか? もう首吊り状態なんで。

――一瞬、逃げられかけたようにも見えましたが。

渋谷 あれ、逃げられたんじゃなく、泳がせたんです。俺の手首ってかなり柔らかくて、しかも返しがついているんですよ。だから汗で滑る以外は、絶対にアゴから外れないし、泳げば泳ぐほど呼吸困難になる。今回も相手がパニックになって息を漏らしたんですよ。これ、スキューバと同じで、パニックになったらカウントダウン開始なんです。落ちるカウントダウン。

――恐ろしいですね。

渋谷 耐える奴は必ず落ちる。そのパターンに入ったんで、落とす用意をしながらレフリーを見た。たぶんレフリーが思っているよりも前に相手はちょっと落ちているんですよ。だから本当はもうちょっと早くに試合を止めてほしかった。俺、相手を落とすのが嫌なんですよ。

――そうなんですか。

渋谷 はい。特にデェダムロンのことは好きなんで。落ちると脳が一瞬、止まるわけじゃないですか。後遺症が残ると思うんですよ。俺のギロチンを食らって失神した奴って、次も失神しやすくなるんです。だからそれが悲しくて喜べなかった。試合終わってから、ああ、やっちゃった、みたいな。俺がもっと上手ければもっと早くにタップさせらたれたのになぁとか思っちゃって。もしかしたらこれでデェダムロンの選手生命が終わっちゃうんじゃないかと思ったら切なくて。

――試合後の悲しげな表情の理由がわかりました。意識が回復したデェダムロンとは、どのような会話を?

渋谷 俺からは英語で「ありがとうございます。尊敬しています」ってことを伝えました。デェダムロンは日本語で「ありがとう」、英語で「久しぶりに会えてよかったよ」と言っていました。俺を乗り越えたな、みたいなニュアンスも表情から伝わってきた。師匠みたいな存在でしたからね。何年か前、ONEの人に「いつか俺、デェダムロンとやることはあるんですかね」と聞いたら、「何バカなことを言っているんだ」と返されたぐらい当時は差があったけど、その壁を今回、乗り越えましたね。

――最大の勝因はズバリ?

渋谷 前の試合(今年8月の復帰第1戦)は相手に対するリスペクトが足りなかった。そこっスよね。相手をナメていると、相手のいいところを見ないじゃないですか。だから相手を怖がらずに行ったら返り討ちに遭っちゃったけど、今回は相手をリスペクトしていたから、相手の強さをしっかり認められたんですよ。相手は打撃がめちゃくちゃ強い。だから死ぬ気でやらないと殺される。そういう思いで練習できたからこそ勝てた。リスペクトなしでは強くなれないってことだと思います。

――2年前からハワイに移住し、マックス・ホロウェイらUFCのトップファイターが所属する「グレイシー・テクニクス・ホノルル」でトレーニングを積み重ねてきた渋谷選手。向こうの練習環境はいかがでしょう?

渋谷 キツすぎて頭がおかしくなりそうです。特に今回の試合に向けた数カ月間は、毎日パニックとストレスの中にいるような感じ。スマホや鏡を見る余裕もない。ハワイでは日本語学校にも通っているんですが、そこで他の生徒から話しかけられても誰が誰だかわからない。世界が霧がかっているような感じで、みんなが俺のことを騙しているんじゃないかと疑いだしたり。会う人会う人に「Are you ok?」と心配されるんですが、自分では何がおかしいのかもわからない状態でした。オーバーワークが原因なのはわかっていたんですが、自分の勘を信じて猛練習を続けました。

――ここ数カ月の練習内容は?

渋谷 限りなく実戦に近いスパーリングをひたすら繰り返しつつ、前回の試合でダメだった部分、具体的には、下半身の強化に努めました。昔の俺はダメなところを見ようとしなかったんですよ。あとパニック障害だということも認めようとしなかった。

――パニック障害だったんですか? それは初耳です。

渋谷 俺、昔から病的に焦りやすいんです。なんでも完璧に準備するタイプだから、時間を急かれたり不測の事態が起きたりすると、すぐパニくっちゃうんです。「入場が30分早まりそうです」とか言われると心臓が止まりそうになる。「そんなの無理無理無理! 俺、試合なんてできない!」と叫んで、セコンドに抱きついたこともありました。今回のデェダムロン戦も直前まで大変でしたよ。

――何があったんですか?

渋谷 何回かに分けて計量と尿検査があったんですが、言葉のハードルもあり、今日は56.7キロとか、56.9キロまでOKとか、56.9キロはダメとか情報が錯綜して、どれが本当だかわからなくて。尿比重の正しい比率もわからなくて、1回オーバーしちゃったんですよ。そんで「1時間後までに落とせ」と言われてすごいパニックになったけど、そこはなんとかクリアできた。で、翌日の最終計量と尿検査はパニくらないよう早めに行ったんですけど、着いたらみんなとっくに終わっていたから大パニックになりました。知らないうちに開始時刻が1時間早まったらしいんですよ。

――それは焦りますね。

渋谷 「30分以内に尿を出してくれ。出なかったら失格だ」と急かされたんですけど、なかなか出なくて、頭真っ白になって。残り7分ってところでどうにかこうにか絞り出して、ギリ間に合って試合には出られるようになったんだけど、そのときの俺の取り乱しようったらなかった。すでに試合前日だったけど、チームのみんなで急きょ対策会議を開き、「パニック障害だということを認めよう。そしてその原因を認めよう」ということになり、それが何なのかはここでは言えませんけど、認めることで克服したんですよ。おかげで翌日の試合では一切緊張しなかった。腹が据わって、本来の力を出せたんです。

――災い転じて福となす、ですね。

渋谷 はい。土壇場で辛いことが相次いだおかげで、覚醒できたんですよ。いい経験でした。辛い経験って自分からしたいと思ってもできないし、降りかかってきてくれないと受け止められない。で、乗り越えた者だけがこうやって心が強くなれるというか、何に対してもビビらなくなる。今なら「爆弾処理をやってくれ」と頼まれてもできるような気がします(笑)。それぐらい俺は変わりました。そういや俺、ハワイで自己紹介するときはいつも、「俺のパーソナリティーは『Change』だ」って言っているんですよ。気が変わりやすいという意味もあるけど、悪いところはすぐに変えられるっていう意味でもあるんですよね。

――試合直後は悲しんでいましたが、今は勝利の充実感はありますか?

渋谷 絞め落としたこととは関係なしに、なんか喜べない。試合前はずっとこう思っていたんですよ。今回勝ったらめちゃくちゃ泣くだろうな、と。ところが、実際は勝ってもまだ心の底からは喜べていない。まだ実感がないのか、どう喜んでいいのかわからないのか、って感じです。チームのみんなの前では喜んだけど、「やったー!」ってまだ言っていないですもん。格闘技で勝って1人でしみじみと喜びを噛み締めた経験って、今まで一度もないかもしれない。

――それはなぜだと思いますか?

渋谷 そこも気分屋なんだと思います。一瞬うれしいと思っても、すぐ次に気持ちがいっちゃうんですよ。俺の脳みそは、直感で受け取って理性で返すタイプらしい。要は飽き性、浮気性なんでしょうね。直感でいいなと思っても、理性で考えてもういいやってなっちゃう。だから買い物してもすぐ捨てちゃうし、家には物がほとんどない。記念品なんて持ち帰ったことすらないですからね。ONEで勝つと3キロぐらいのプレートをもらえるんですけど、いつも誰かあげちゃいます。今回もタイから、スーパーのトートバッグ一つで帰ってきましたから。行くときは大荷物だったんですけど、帰りはスーツケースとか体重計とか服とかを全部現地に捨ててきました。だって、重たいじゃないですか。

――試合で使ったファイトパンツとかも捨てちゃうんですか?

渋谷 洗うのが面倒なんで、捨てちゃいます。そういやファイトパンツで思い出した! 俺の試合用のファイトパンツは、ケツの部分に「Ganapati PLC」というスポンサーロゴが入っているんですけど、今回このアイロンパッチのロゴを、現地に行ってから自分でアイロンを使って付けようとして大失敗したんですよ。水を噴きかけてからアイロンをかけなきゃいけないってことを知らなかったから、熱で生地が溶けてファイトパンツのケツの部分にでっかい穴が空いちゃった(笑)。

――まさか、それをはいて試合に出たんですか?

渋谷 はい(笑)。たまたまチームの後輩に器用な奴がいたから、そいつがアイロンで生き残った生地をちょっとずつペローンと伸ばして穴を塞いで、裏からもパッチを付けて補強してくれて、それでどうにか試合に出ました。試合が2ラウンドまで長引いたらロゴが取れて、ケツ丸出しになっていた可能性がある(笑)。だから1ラウンドの序盤で試合を終わらせられてよかったです。

――デェダムロンを破ったことで、タイトルマッチも見えてきました。

渋谷 ベルトは要らないですね。なんでかわかります?

――わかりません。

渋谷 持って帰るのが重たいからですよ(笑)。

――(笑)しかし、勝ってもうれしくない、ベルトにも執着がないとなると、渋谷選手は一体なんのために戦っているのでしょう? 応援している側からすると、今回の渋谷選手の勝利はめちゃくちゃうれしかったですけどね。2008年の「THE OUTSIDER」のデビュー戦からずっと見てきて、目のケガで苦しんでいたことも知っていましたから、見ていて今回ほど緊張し、感動した試合はなかったですよ。

渋谷 ……あ、わかった。やっとわかったっス。なんでうれしくないんだろう? なんで勝ったのに辛いんだろう? っていう理由が、今やっとわかった気がします。ぶっちゃけ俺、格闘技はまったく好きじゃないんですよ。でも今回、試合を終えて控え室に戻ったら、チームのみんなが泣いて喜んでくれていたから、俺もうれしくなって、もらい泣きしたんですよ。人生で泣くことなんてほとんどなかったのに。でもみんなと別れてホテルの部屋に入る頃には全然うれしくなくなっていた。つまりそれって、試合に勝って俺自身がうれしいんじゃなくて、周りが喜んでいる姿を見るのが俺はうれしんだなと思って……(突然、嗚咽を漏らす)。それのために俺、好きでもない格闘技を頑張ってこれたんですね。

――戦うモチベーションは、そこにありましたか。

渋谷 (泣きながら)そういうことか……。だって今、本当にうれしいですもん。うれしいと言ってくれたことに対し、本当にうれしい気持ちなれました。ありがとうございます。

 * * *

翌日、渋谷から電話がかかってきた。

――どうしましたか?

渋谷 聞いてください。おかげで正視恐怖症が治りました。今日、何十年かぶりに人の目をちゃんと見てしゃべれたんですよ。それまで長いこと、ピントを合わせられなかったんです。ピントを合わせたら必ず人って、俺のことを嫌な顔で見る。だから今まで合わせられなかったのに、今日はできるかもしれないと思って試してみたら、ピントを合わせられました。人の顔ってめちゃくちゃ猿みたいですね(笑)。目の使い方が正常化したことで、世界が違って見える。このことを脳外科の先生に報告したら、「泣いたことによって眼球の周りの感覚を取り戻した可能性がある」と言われました。

――それまで人を正視できなかった理由は?

渋谷 誰も信用できずにいたからです。

――なぜ信用できなかったのでしょう?

渋谷 そういう人生だったからです。起きろと叩かれ、寝たら怒られ、しゃべれと言われてしゃべったら「うるせー!」と怒鳴られる。生きていることを全否定されて育ってきたんで、ずっと人を信用できなかったんですよ。でも今回、俺の勝利を本気で喜んでくれた人が何人もいることがわかったから、これからは人を信用して生きていけそうです。
(取材・文=岡林敬太)

元金メダリスト・内柴正人、準強姦の刑期満了で格闘技「RIZIN」から熱視線!?「事件のみそぎを……」

 2011年に起こした準強姦事件で懲役5年の実刑判決を受け、今年9月に仮出所していた柔道の五輪金メダリスト・内柴正人が15日午前0時、刑期の満期を迎えた。そんな内柴に、総合格闘技イベント「RIZIN」の関係者が「プロ転向を期待したい」と話している。

「知名度が高いし、総合格闘家としての素質は十分。事件のみそぎとするには、激しいプロのリングで戦うのが一番だし、世界の強豪に立ち向かってくれたらイメージを回復できる」(同)

 関係者は交渉の権限を持っていないとするが「共通の知人がいるので、個人的にも本人に興味がないか話をしてみたい」とした。

 内柴は仮出所後、アマチュア柔術大会に出場するなど、柔術家として再出発中だ。来年2月には都内で開催される「ヒクソン・グレイシー杯」にも出場する予定で、指導者の山田重孝氏も、世界大会への出場を目指す方針を掲げている。柔術は総合格闘技のベースになる競技でもあるだけに、RIZIN関係者からも注目を集めているのだ。

「来年以降の目玉として、引退した大相撲の元横綱・日馬富士とともにリングに上がってほしい」(同)

 ただ、RIZINの顔として表に出ている実行委員長の榊原信行氏や統括本部長の高田延彦が内柴にラブコールを送っている様子は見られない。

「それは、テレビ中継のスポンサーの手前」と関係者。

「内柴さんには世間的な批判も根強いので、安易に話を持ち出すとRIZINのイメージダウンになるデリケートな問題があります。テレビ視聴率がフジテレビの目標値に届いていないこともあり、スポンサーの手前、強気な言動もできないんですよ」(同)

 また、内柴自身もプロ活動に意欲を見せるような話は一切していない。柔術についても「柔術の技術を高めて柔道のスキルを上げたい」と目的を話しており、追放処分となっている柔道界への復帰に未練がある様子だ。

 柔道取材をしているある通信社の記者によると「柔道界は、選手を引き抜いていくプロ格闘技イベントに対して反発心が強いので、内柴さんが自分からプロ転向の話をしたら柔道界への復帰の目が完全になくなる」とする。ただ、そうでなくとも全日本柔道連盟の永久追放処分が解けるとも思えず、RIZIN関係者は「そのあたり、心の切り替えができるのを待ちたい」と言う。

「それに、プロ転向に積極的ではない素振りには、彼の駆け引きもあります。自分から『出たい』と言わない方が、商品価値が高まるんですよ。黙っておくのは、より高い契約条件を出させる選手側の常套手段。だからイベント側としては、“他に選択肢がないよ”という状態になってくれた方が誘いやすいですね。あとは来年にでも格闘界のレジェンド、ヒクソン・グレイシーとの顔合わせが実現すれば、自ずと機運は高まるのでは」(同)

 最終的にはテレビ局からゴーサインが出なければ実現は難しく、レイプ事件の汚名から、番組スポンサーとの調整も必要だろう。

 内柴は11年、コーチを務めていた大学の合宿中に19歳だった女子部員に酒を飲ませ、ホテルの部屋に連れ込んでレイプしたとされる。内柴は「合意の上だった」と無罪を主張したが、法廷では「俺がインポってことにすれば」などと隠蔽工作を疑わせるメールを関係者に送信していたことが明かされ、その後の言い分も「虚言」と見なされたところもあった。最終的には東京高裁、最高裁が控訴を棄却して実刑判決が決まった。

 柔道家のプロ転向では、先にプロデビューした石井慧を内柴が批判したこともあり、プロのリングでの“決着戦”も期待されるが、RIZIN関係者は「内柴さんはもともと66キロ級で小柄。石井選手は今なお100キロクラスなので、体重差がありすぎて、それはない」とのことだった。
(文=藤堂香貴/NEWSIDER Tokyo)