ドラマ界にも吹き荒れる“乃木坂旋風”! 西野七瀬『電影少女』に注目せよ

 今や、公式ライバルのAKB48をしのぐ勢いのある乃木坂46だが、テレビドラマにも乃木坂旋風が押し寄せつつある。

 現在、与田祐希は『モブサイコ100』、1月末に次回のシングルをもってグループを卒業することを発表した生駒里奈は『オー・マイ・ジャンプ!~少年ジャンプが地球を救う~』、そして、西野七瀬は『電影少女-VIDEO GIRL AI 2018-』に出演している。どれも、テレビ東京系の深夜ドラマだというのが面白い。

 かつてAKB48のメンバーが『マジすか学園』シリーズ(テレビ東京/日本テレビ系)に出演したことで女優としての活路を切り開いていったように、今後は乃木坂のアイドルたちが女優として躍進していくことは間違いないだろう。

 中でも注目は、西野七瀬だ。

 彼女が出演している『電影少女』は土曜深夜0時20分から放送されているSF仕立ての恋愛ドラマだ。

 物語は海外で暮らす絵本作家の叔父の空き家で一人暮らしを始めた高校生・弄内翔(野村周平)が、古いVHSのビデオを見つけるところから始まる。

 ビデオの中にはビデオガールの天野アイ(西野七瀬)が封印されていた。実体化したアイは、3カ月だけ生命を獲得し、再生した男の願いを叶えてくれる理想の女の子になるはずだった。しかし、ビデオデッキが壊れていたせいで、性格や設定に不具合が生じてしまい、料理が下手で口調は乱暴という初期設定とは真逆の女の子になってしまう。

 本作は桂正和が1989~92年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載していた漫画『電影少女』の実写映像化作品だ。物語の舞台は2018年の現代で、原作漫画の続編となっている。

 ビデオガールのアイは年を取らない。漫画版の主人公で翔の叔父にあたる弄内洋太(戸次重幸)はすでに中年男性となっていて、アイには洋太の記憶がないというのは泣かせるが、そのことによって物語は、ちゃんと現代のものとなっている。

 それにしても驚いたのは、天野アイのビジュアルである。

 もともと桂正和の描く女の子は、アイドルの水着グラビアを見ているかのようなリアルな肉体描写と、漫画やアニメの記号化されたキャラクターの持つかわいらしさが共存していたのだが、ドラマ版『電影少女』は漫画版の感覚を実写に落とし込むことに完璧に成功している。

 自分のことをオレと言い、SFチックな衣装を着ている天野アイは、人間の姿をしているが人間ではないビデオガール。文字通り漫画の世界から現実に現れたような女の子だ。

 だから普通の女の子とは考え方も違い、微妙におっさんくさいところもある。でも気持ちはピュアで優しいという、チグハグなところがまた、チャーミングである。

 漫画版にあったエッチな描写は控えめだが、何気ないシーンで見せる華奢でスラッと伸びた手足からは健康な色気を感じる。

 とにかく、天野アイを演じる西野をかわいく見せようという作り手のこだわりが随所に炸裂しており、まるで動く写真集のようだ。

 特にエンドロールで流れるスチール写真が素晴らしい。

 映像は静止画で西野の映像は止まっているのだが、水や湯気といった周囲のものは動いているという不思議なものとなっている。これは時間の止まった少女としてのアイを見せる上で見事なアプローチと言えよう。監督の関和亮はPerfumeのMVを通して女の子の身体を人工的なアンドロイドのように見せてきたのだが、本作でも生身の女の子を漫画やアニメのキャラクターのように見せる手法は見事に生きている。

 そして、西野七瀬も天野アイに完璧になりきっている。

 最初に西野が天野アイを演じると知った時は正直、イメージと合わないなぁと思った。

 同じ乃木坂46ならショートカットで少年性も見え隠れして、本人も漫画好きの生駒里奈の方がいいのではないかと思った。しかし本作のために髪を切って登場した西野七瀬を見た時は驚いた。そこには、本物の天野アイがいると思った。

 女優としては野島伸司脚本のドラマ『49』(日本テレビ系)などに出演している西野だが、『電影少女』以前で、鮮烈な印象が残っているのは、映画『溺れるナイフ』などで知られる山戸結希監督が撮った西野のソロ曲のMV「ごめんね ずっと…」だ。

 このMVは、アイドルとして活躍する西野七瀬と、アイドルにならずに看護師になった西野七瀬の姿が同時に映し出され、幼少期や学生時代の映像や写真が挟み込まれるノンフィクション形式のMVだ。西野の哀しい歌声もあってか、なんだか見てはいけないヤバイものを見てしまったように感じて「あれは何だったのか?」と、今でも思い出す。

 MVの印象が鮮烈だったため、西野はもっと生々しい演技をする方向に女優として向かうのではないかと思っていた。

 だが、初主演となった映画『あさひなぐ』では『電影少女』にもつながるようなコミカルな姿も見せており、そして『電影少女』では、漫画的なキャラクターを演じるツボを完全につかんだように見える。

 漫画的なキャラクター性と女としての生々しい色気が、西野七瀬の中には共存している。

 かつてなら漫画の中でしか成立できなかった美少女・天野アイは、西野七瀬というアイドルの身体を借りることで見事、現代に蘇ったのだ。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

ドラマ界にも吹き荒れる“乃木坂旋風”! 西野七瀬『電影少女』に注目せよ

 今や、公式ライバルのAKB48をしのぐ勢いのある乃木坂46だが、テレビドラマにも乃木坂旋風が押し寄せつつある。

 現在、与田祐希は『モブサイコ100』、1月末に次回のシングルをもってグループを卒業することを発表した生駒里奈は『オー・マイ・ジャンプ!~少年ジャンプが地球を救う~』、そして、西野七瀬は『電影少女-VIDEO GIRL AI 2018-』に出演している。どれも、テレビ東京系の深夜ドラマだというのが面白い。

 かつてAKB48のメンバーが『マジすか学園』シリーズ(テレビ東京/日本テレビ系)に出演したことで女優としての活路を切り開いていったように、今後は乃木坂のアイドルたちが女優として躍進していくことは間違いないだろう。

 中でも注目は、西野七瀬だ。

 彼女が出演している『電影少女』は土曜深夜0時20分から放送されているSF仕立ての恋愛ドラマだ。

 物語は海外で暮らす絵本作家の叔父の空き家で一人暮らしを始めた高校生・弄内翔(野村周平)が、古いVHSのビデオを見つけるところから始まる。

 ビデオの中にはビデオガールの天野アイ(西野七瀬)が封印されていた。実体化したアイは、3カ月だけ生命を獲得し、再生した男の願いを叶えてくれる理想の女の子になるはずだった。しかし、ビデオデッキが壊れていたせいで、性格や設定に不具合が生じてしまい、料理が下手で口調は乱暴という初期設定とは真逆の女の子になってしまう。

 本作は桂正和が1989~92年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載していた漫画『電影少女』の実写映像化作品だ。物語の舞台は2018年の現代で、原作漫画の続編となっている。

 ビデオガールのアイは年を取らない。漫画版の主人公で翔の叔父にあたる弄内洋太(戸次重幸)はすでに中年男性となっていて、アイには洋太の記憶がないというのは泣かせるが、そのことによって物語は、ちゃんと現代のものとなっている。

 それにしても驚いたのは、天野アイのビジュアルである。

 もともと桂正和の描く女の子は、アイドルの水着グラビアを見ているかのようなリアルな肉体描写と、漫画やアニメの記号化されたキャラクターの持つかわいらしさが共存していたのだが、ドラマ版『電影少女』は漫画版の感覚を実写に落とし込むことに完璧に成功している。

 自分のことをオレと言い、SFチックな衣装を着ている天野アイは、人間の姿をしているが人間ではないビデオガール。文字通り漫画の世界から現実に現れたような女の子だ。

 だから普通の女の子とは考え方も違い、微妙におっさんくさいところもある。でも気持ちはピュアで優しいという、チグハグなところがまた、チャーミングである。

 漫画版にあったエッチな描写は控えめだが、何気ないシーンで見せる華奢でスラッと伸びた手足からは健康な色気を感じる。

 とにかく、天野アイを演じる西野をかわいく見せようという作り手のこだわりが随所に炸裂しており、まるで動く写真集のようだ。

 特にエンドロールで流れるスチール写真が素晴らしい。

 映像は静止画で西野の映像は止まっているのだが、水や湯気といった周囲のものは動いているという不思議なものとなっている。これは時間の止まった少女としてのアイを見せる上で見事なアプローチと言えよう。監督の関和亮はPerfumeのMVを通して女の子の身体を人工的なアンドロイドのように見せてきたのだが、本作でも生身の女の子を漫画やアニメのキャラクターのように見せる手法は見事に生きている。

 そして、西野七瀬も天野アイに完璧になりきっている。

 最初に西野が天野アイを演じると知った時は正直、イメージと合わないなぁと思った。

 同じ乃木坂46ならショートカットで少年性も見え隠れして、本人も漫画好きの生駒里奈の方がいいのではないかと思った。しかし本作のために髪を切って登場した西野七瀬を見た時は驚いた。そこには、本物の天野アイがいると思った。

 女優としては野島伸司脚本のドラマ『49』(日本テレビ系)などに出演している西野だが、『電影少女』以前で、鮮烈な印象が残っているのは、映画『溺れるナイフ』などで知られる山戸結希監督が撮った西野のソロ曲のMV「ごめんね ずっと…」だ。

 このMVは、アイドルとして活躍する西野七瀬と、アイドルにならずに看護師になった西野七瀬の姿が同時に映し出され、幼少期や学生時代の映像や写真が挟み込まれるノンフィクション形式のMVだ。西野の哀しい歌声もあってか、なんだか見てはいけないヤバイものを見てしまったように感じて「あれは何だったのか?」と、今でも思い出す。

 MVの印象が鮮烈だったため、西野はもっと生々しい演技をする方向に女優として向かうのではないかと思っていた。

 だが、初主演となった映画『あさひなぐ』では『電影少女』にもつながるようなコミカルな姿も見せており、そして『電影少女』では、漫画的なキャラクターを演じるツボを完全につかんだように見える。

 漫画的なキャラクター性と女としての生々しい色気が、西野七瀬の中には共存している。

 かつてなら漫画の中でしか成立できなかった美少女・天野アイは、西野七瀬というアイドルの身体を借りることで見事、現代に蘇ったのだ。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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広瀬すずは『anone』で開花する──“大先輩”田中裕子の芝居にも呑まれない「影の魅力」

 広瀬すずが連続ドラマで初主演を務めたのは、2015年の学園ドラマ『学校のカイダン』(日本テレビ系)だった。あれから3年を経て、女優としてみるみる成長しており、人気・実力ともに10代の若手女優の中ではダントツの存在だと言っても過言ではない。

 すでに19年上半期のNHK連続テレビ小説『夏空-なつぞら-』のヒロインも決定しており、女優としての彼女をとりまく環境が、今後、より大きなものとなっていくことは間違いないだろう。

 おそらく所属事務所が長期的な視点で彼女を女優として成長させたいと考えているのだろう。彼女の出演作を見ていると、女優としての将来を考えた上で、役が選択されていると感心する。

 映画では『ちはやふる』(16~18年)や『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(17年)のような若者向け青春映画に出演する一方、『海街diary』(15年)や『怒り』(16年)のような、作家性の強い文学的なドラマにも出演している。

 中でも、是枝裕和監督の『海街diary』に出演したことは、彼女にとって大きかったように思う。それ以前も女優としての勘の良さや華やかさはあったのだが、『海街diary』以降は、役に没入する力が以前よりも深くなった。その意味で、女優としての大きなターニングポイントだったと言える。こういう作品に定期的に出会えるのは、彼女にとって、とても幸福なことだ。

 そして、次の幸運な作品となりそうなのが、現在、日本テレビ系で水曜夜10時から放送中のドラマ『anone』である。

 本作は『最高の離婚』(フジテレビ系)や『カルテット』(TBS系)で知られる坂元裕二が脚本を手がけるドラマだ。チーフ演出は、作り込んだ重厚な映像に定評のある水田伸生。

 坂元と水田は、同枠で過去に芦田愛菜の出世作となった『Mother』、満島ひかりが貧困に苦しむシングルマザーを演じた『Woman』の2作を手がけている。重厚な社会派ドラマとして高い評価を受けるこのシリーズは、広瀬すずもファンだったそうだが、まさか自分が出演することになるとは思っていなかったらしい。

 広瀬すずが演じるのは、辻沢ハリカという少女。

 両親のいないハリカは、特殊清掃員のアルバイトをしながら、ネットカフェで暮らしていた。

 ハリカには、スマホのゲームアプリで交流している病気の友達がいた。入院中の少年・カノンが手術するには、多額のお金が必要だが、ハリカには何もしてあげることができない。

 そんなある日、ネットカフェで暮らす女友達が、海辺で現金の入ったカバンを見つけたという。ハリカたちはお金を探しに海辺へと向かうのだが、そこから物語は大きく転換していく。

 舞台は日本だが、映像自体はどこか無国籍感があるためか、リアルでありながらもどこかファンタジックな作品だ。物語も二転三転しており、まだ全貌は見えないのだが、この続きがまったく読めない不穏なムードが、物語に強い緊張感を与えていて目が離せない。

 ハリカを演じるにあたって、広瀬は髪をばっさりと切った。ハリカの姿は少女にも少年にも見える中性的なたたずまいだ。まるで、彼女の持つスケボーに描かれている天使のようで、ファンタジックな本作の象徴のような存在である。

 その意味でも、今までにも増して難しい役柄である。彼女自身、どう演じていいのか迷ったらしいが、次屋尚プロデューサーから「今までの広瀬すずでいい」と言われたことで開き直り、今の演技になったという。

 華やかなキャリアを重ねている彼女だが、実は広瀬すずの魅力は光よりも影の部分、今にも消え去ってしまいそうな弱々しさの中にあるのではないかと思う。

『anone』は、そんな彼女の影の部分がとても際立っていて、無表情でぽつんと立っているだけで見ている側を切なくさせる。

 それがよく出ているのが、ハリカの今にも消え去ってしまいそうな自信なさげに語られるか細いナレーションだろう。

 弱々しい声で切ないナレーションをさせると一番上手いと思う女優は深津絵里だと思っていたが、本作の広瀬すずの声は、深津に匹敵する切なさがある。

 カノンとチャットで会話するゲーム場面で、文字を読み上げるダイアローグに感情移入できるのは、彼女の今にも消え去りそうな声があってのものだ。

『anone』が広瀬すずにとって幸運なのは、阿部サダヲ、小林聡美、瑛太、田中裕子といった実力のある先輩俳優と共演できることだろう。

 特に田中裕子との芝居は、彼女にとって大きな経験となるのではないかと思う。

 田中の芝居は圧倒的で掴みどころがないため、我の強い俳優ほど、自分のリズムを崩して田中の世界に呑み込んでしまうところがあるのだが、第2話で広瀬が絡んだ際には、田中の芝居に対し善戦していたように見えた。これは、広瀬の演技が、いい意味で主張が弱いからだろう。

 広瀬を見ていると、主演女優に必要なのは自分を押し通す我の強さではなく、全体を包み込むような、おだやかな輝きだと実感する。ハリカを演じることで、その資質はより開花するはずだ。

 本作で彼女が女優としてどこまで成長するのか? 注目である。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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綾瀬はるか最強説を証明した『奥様は、取り扱い注意』稀代のコメディエンヌの“3つの才能”

 いよいよ次回で最終回となる『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)。

『GO』(講談社)で直木賞を受賞した小説家・金城一紀が脚本を手掛けている本作は、かつて某国の諜報機関に属しており、今は主婦として暮らしている伊佐山菜美(綾瀬はるか)が、町内で起きる難事件を次々と解決していくというドラマだ。

『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系)等のハードな刑事モノを得意とする金城が、水曜ドラマ(日本テレビ系夜10時枠)という働く女性や母親を主人公にした女性向け作品を中心とするドラマ枠で書くと知った時は驚いた。

 しかしいざ、蓋を開けてみると面白く、パヤパヤッティーヤというおしゃれなスキャットの劇伴に象徴されるようなライトなコメディとして見せようとする演出と、女性差別に苦しむ女たちがクズ男たちに戦いを挑むというハードな脚本がケミストリーを生み出しており、水曜ドラマと金城一紀どちらにとっても幸福な新境地となっている。

 普通に考えたらミスマッチ極まりない本作が成功した最大の功績は、なんと言っても主演の綾瀬はるかの、すべてを呑み込む包容力にあることは間違いないだろう。

 主婦でありながら格闘術に長けて、実は亡国の諜報部員だったというめちゃくちゃな設定もコメディエンヌでありながらアクション女優としても活躍する綾瀬だからこそ可能なことだと言える。何よりあのアルカイックスマイルが、某国に雇われた特殊工作員という過去を持つ伊佐山菜美という人物像に説得力を与えている。これは綾瀬はるかにしか演じられない難役である。

 綾瀬はるかは出演作を立て続けにヒットさせてきた、今のテレビドラマを牽引する人気女優の一人である。

 15歳の時に第25回ホリプロスカウトキャラバンに応募して、審査員特別賞を受賞した綾瀬は、広島から芸能活動するために上京する。グラビアアイドルとして活躍する傍ら、『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)や『僕の生きる道』(フジテレビ系)といったドラマに出演するようになり、人気が広がっていく。

 そして当時大人気だった純愛小説をドラマ化した『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系)で難病のヒロインを演じる。劇中では白血病治療の副作用で脱毛症になってしまうためスキンヘッドになるという場面もあったのだが、綾瀬は見事に演じ、若手人気女優の仲間入りをする。

 これ以降、『白夜行』や『仁-JIN-』(ともにTBS系)といったドラマで、少し影のある日本的な美女を演じていき、20代後半になるとコメディエンヌとしての才能を発揮し、水曜ドラマの常連となり『ホタルノヒカリ』シリーズや『きょうは会社休みます。』に出演。ドラマ女優として不動の地位を確立する。

 どちらの作品でも、仕事はできるが恋愛面では奥手という女性を綾瀬は演じている。ともすれば痛々しくて見てられないキャラクターだが、綾瀬が演じると、途端に上品でかわいいキャラクターになるのが、彼女のコメディエンヌとしての圧倒的なセンスだろう。

『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)等のトークバラエティ番組にも出演する綾瀬だが、その時は、司会者を驚かせるような天然ボケを連発する。ゲストとしては対応に困るが、女性としてはめちゃくちゃ魅力的な振る舞いで、その姿は女優としてストイックに打ち込む姿からは想像できない面白さであると同時に、仕事はできるがプライベートはてんでダメという、過去に綾瀬が演じてきたヒロインたちの姿とも重なる。

 近年ではアクション女優としての才能も開花させており、先日は綾瀬が主演を務める大河ファンタジー『精霊の守り人』(NHK)シリーズの最終章(『精霊の守り人 最終章』)の放送がNHK土曜夜9時枠でスタートした。

 本作で綾瀬は短槍使いの用心棒・バルサを演じており、劇中では激しいアクションもおこなっている。『精霊の守り人』シリーズは3年にわたって断続的に続いているロングシリーズだが、初期作から最新作を続けて見ると綾瀬のアクションがみるみる洗練されていっているのがわかる。

 映画『僕の彼女はサイボーグ』や、大河ドラマ『八重の桜』(NHK)でも、その才能の片鱗をみせていたが、いよいよアクション女優としても本領を発揮し始めたと言えよう。

『奥様は、取扱い注意』の伊佐山菜美は、そんな綾瀬はるかの個性がすべて内包された役で、一見荒唐無稽な設定に見えながらも、ヒロインに妙な説得力があるのはそのためだろう。

 ヒューマンドラマで見せる古き良き日本人女性的な影のある芝居と、水曜ドラマでみせるコメディエンヌとしてのセンス。そして、ハードなアクションもこなせるという女優としての才能を3つも綾瀬は持っている。いや、デビュー当初から変わらないグラマラスな肉体が醸し出す健康な色気も含めれば四つだろうか。これだけの武器を兼ね備えているのだから、綾瀬が現時点で最強の女優であることは間違いないだろう。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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良質なNHKジュブナイル『アシガール』を輝かせる女優・黒島結菜の存在感

 若者向けに作られたジュブナイルドラマが好きだ。

 若手俳優を中心としたジュブナイルドラマには、コメディタッチのラブコメや、SFやファンタジーのような荒唐無稽なシチュエーションの作品が多い。大人の視聴者からはチープな作品だと低く見られがちだが、だからこそ描ける初々しい物語がそこにはあり、初恋の思い出のような甘酸っぱい気持ちを思い出させてくれる。

 近年はテレビの視聴者自体が高齢化していることもあってか、10代向け作品はなかなか作られなくなっているが、現在、NHK総合で土曜日の夜6時5分から放送されている『アシガール』は、久々にジュブナイル感のある甘酸っぱいドラマである。脚本は2000年に傑作ジュブナイルドラマ『六番目の小夜子』(NHK総合)を執筆した宮村優子。

『ごくせん』(集英社)などで知られる森本梢子の少女漫画を原作とする本作は、戦国時代にタイムスリップした女子高生・速川唯(黒島結菜)がイケメンの若君・羽木九八郎忠清(健太郎)に一目惚れして、若君のために孤軍奮闘するというという物語。

 引きこもりの弟が作ったタイムマシーンで戦国時代に向かうというシチュエーションこそコミカルで、一見すると若者向けのチープなラブコメに見えるものの、戦国時代の合戦の描写やタイムトラベルを用いたSF的な設定の見せ方などは、実に丁寧に作り込まれている。

 特に戦国時代の美術背景はしっかりしていて、そこは流石、NHKである。

 何より、戦国時代を舞台である以上、戦で人が死ぬという残酷な現実から目をそらしていないのが素晴らしい。

 第6話では、唯が大ケガをした若君を現代にタイムスリップさせることで治療をして、弟と若君が現代の生活を満喫して親睦を深めるという、ほっこりする場面も描かれた。

 コミカルなところはコミカルだが、シリアスなところはしっかり押さえてある。こういうドラマこそ10代の若い視聴者に見て欲しいと思える作品だ。

 何より、本作の魅力を何倍にも輝かせているのが、主演の黒島結菜の圧倒的な存在感だろう。

 本作で黒島が演じる唯は、陸上部に所属する体育会系の女子高生で、日焼けしていて、前髪を下ろしていることもあってか、見た目は少年のようだ。

 タイムスリップしてからも、女子と気づかれずに足軽たちの中に紛れ込み、劇中では唯之助という男性に扮して、若君に近づき健気に支えようとする。

 戦国時代の荒野を歩く場面から始まるので、顔は泥だらけなのだが、こういう汚い格好が黒島にはよく似合う。

 黒島は、15年にNHK広島放送局で制作された『一番電車が走った』では、原子爆弾投下に遭遇する少女を演じていた。

 極限状態の中で、髪も服もボロボロに汚れていた彼女が最後に解放されて、行水をする姿は神々しいものがあった。

 本作でも薄汚れた男の子のような姿と、ふとした瞬間に見せる女の子らしい華奢な振る舞いのギャップが黒島の魅力を倍増させており、単純なかわいらしさや綺麗さだけではない「生命力の強さ」そのものを演技で表現できることこそ、彼女の魅力だろう。

 テレビドラマ好きの間で、黒島に注目が集まったのは14年。当時は『アオイホノオ』(テレビ東京系)や『ごめんね青春!』(TBS系)といったドラマに脇役として出演しており、その存在感に釘付けとなった。

 彼女は沖縄出身で同郷の満島ひかりに憧れているというが、眉毛が太く昭和の匂いがする女優だと当時は言われていた。いい意味で洗練されていない野暮ったさが黒島にはあったのだが、あれから3年が経ち、20歳となった今も彼女は初々しい演技をしており、ダイヤの原石のような存在感を見せている。

 16年には筒井康隆の伝説的なジュブナイル小説をドラマ化した『時をかける少女』(日本テレビ系)で主演を務めた。これも、華奢な身体が醸し出す少年のようなたたずまいが、原作の世界観に見事にハマっていた。

『時をかける少女』というと、80年代に大林宣彦が監督して原田知世が主演を務めた映画版が有名だが、今の黒島の存在感は、当時の角川映画で原田知世や薬師丸ひろ子が体現していたものと近いのかもしれない。

 彼女の素朴な魅力は、NHKドラマと相性がいいのだろう。連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『マッサン』や『夏目漱石の妻』など多数の作品に出演している。

『アシガール』では、ついに主演を務め、すっかりNHKにはなくてはならない女優となった黒島だが、そろそろ彼女を主人公にした朝ドラがみたいものだ。

 おそらく黒島なら、戦前や昭和を舞台にした作品なら何をやってもハマることは間違いないだろう。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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良質なNHKジュブナイル『アシガール』を輝かせる女優・黒島結菜の存在感

 若者向けに作られたジュブナイルドラマが好きだ。

 若手俳優を中心としたジュブナイルドラマには、コメディタッチのラブコメや、SFやファンタジーのような荒唐無稽なシチュエーションの作品が多い。大人の視聴者からはチープな作品だと低く見られがちだが、だからこそ描ける初々しい物語がそこにはあり、初恋の思い出のような甘酸っぱい気持ちを思い出させてくれる。

 近年はテレビの視聴者自体が高齢化していることもあってか、10代向け作品はなかなか作られなくなっているが、現在、NHK総合で土曜日の夜6時5分から放送されている『アシガール』は、久々にジュブナイル感のある甘酸っぱいドラマである。脚本は2000年に傑作ジュブナイルドラマ『六番目の小夜子』(NHK総合)を執筆した宮村優子。

『ごくせん』(集英社)などで知られる森本梢子の少女漫画を原作とする本作は、戦国時代にタイムスリップした女子高生・速川唯(黒島結菜)がイケメンの若君・羽木九八郎忠清(健太郎)に一目惚れして、若君のために孤軍奮闘するというという物語。

 引きこもりの弟が作ったタイムマシーンで戦国時代に向かうというシチュエーションこそコミカルで、一見すると若者向けのチープなラブコメに見えるものの、戦国時代の合戦の描写やタイムトラベルを用いたSF的な設定の見せ方などは、実に丁寧に作り込まれている。

 特に戦国時代の美術背景はしっかりしていて、そこは流石、NHKである。

 何より、戦国時代を舞台である以上、戦で人が死ぬという残酷な現実から目をそらしていないのが素晴らしい。

 第6話では、唯が大ケガをした若君を現代にタイムスリップさせることで治療をして、弟と若君が現代の生活を満喫して親睦を深めるという、ほっこりする場面も描かれた。

 コミカルなところはコミカルだが、シリアスなところはしっかり押さえてある。こういうドラマこそ10代の若い視聴者に見て欲しいと思える作品だ。

 何より、本作の魅力を何倍にも輝かせているのが、主演の黒島結菜の圧倒的な存在感だろう。

 本作で黒島が演じる唯は、陸上部に所属する体育会系の女子高生で、日焼けしていて、前髪を下ろしていることもあってか、見た目は少年のようだ。

 タイムスリップしてからも、女子と気づかれずに足軽たちの中に紛れ込み、劇中では唯之助という男性に扮して、若君に近づき健気に支えようとする。

 戦国時代の荒野を歩く場面から始まるので、顔は泥だらけなのだが、こういう汚い格好が黒島にはよく似合う。

 黒島は、15年にNHK広島放送局で制作された『一番電車が走った』では、原子爆弾投下に遭遇する少女を演じていた。

 極限状態の中で、髪も服もボロボロに汚れていた彼女が最後に解放されて、行水をする姿は神々しいものがあった。

 本作でも薄汚れた男の子のような姿と、ふとした瞬間に見せる女の子らしい華奢な振る舞いのギャップが黒島の魅力を倍増させており、単純なかわいらしさや綺麗さだけではない「生命力の強さ」そのものを演技で表現できることこそ、彼女の魅力だろう。

 テレビドラマ好きの間で、黒島に注目が集まったのは14年。当時は『アオイホノオ』(テレビ東京系)や『ごめんね青春!』(TBS系)といったドラマに脇役として出演しており、その存在感に釘付けとなった。

 彼女は沖縄出身で同郷の満島ひかりに憧れているというが、眉毛が太く昭和の匂いがする女優だと当時は言われていた。いい意味で洗練されていない野暮ったさが黒島にはあったのだが、あれから3年が経ち、20歳となった今も彼女は初々しい演技をしており、ダイヤの原石のような存在感を見せている。

 16年には筒井康隆の伝説的なジュブナイル小説をドラマ化した『時をかける少女』(日本テレビ系)で主演を務めた。これも、華奢な身体が醸し出す少年のようなたたずまいが、原作の世界観に見事にハマっていた。

『時をかける少女』というと、80年代に大林宣彦が監督して原田知世が主演を務めた映画版が有名だが、今の黒島の存在感は、当時の角川映画で原田知世や薬師丸ひろ子が体現していたものと近いのかもしれない。

 彼女の素朴な魅力は、NHKドラマと相性がいいのだろう。連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『マッサン』や『夏目漱石の妻』など多数の作品に出演している。

『アシガール』では、ついに主演を務め、すっかりNHKにはなくてはならない女優となった黒島だが、そろそろ彼女を主人公にした朝ドラがみたいものだ。

 おそらく黒島なら、戦前や昭和を舞台にした作品なら何をやってもハマることは間違いないだろう。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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完全覚醒前夜! 中村ゆりかの“秘めたる狂気”が心をえぐる深夜ドラマ『ぼくは麻理のなか』

 フジテレビ系で月曜深夜に放送中の『ぼくは麻理のなか』は、心をえぐる痛々しいドラマだ。

 本作はもともと、フジテレビオンデマンドで放送されていた配信ドラマ。物語は、鬱屈した感情を抱えて引きこもり生活を過ごしていた大学生の小森(吉沢亮)が、“コンビニの天使”と呼んで、密かに好意を抱いていた女子高生の吉崎麻理(池田エライザ)の体の中に意識が入り込んでしまうところからスタートする。

『ぼくは麻理のなか』は、入れ替わりモノというジャンルに属している作品だ。

 古くは大林宣彦監督の映画『転校生』(1982)、最近では新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』(2016)など、若い男女の肉体が入れ替わるという物語は青春ドラマの定番なのだが、本作が面白いのは、小森と入れ替わった麻理の精神が小森の肉体に宿っておらず、行方不明となっていることだ。

 麻理(の肉体を持った小森)が自分のアパートで対面した小森が、普通の大学生として別人のように存在しているという導入部は、極めて不穏である。

 原作は『惡の華』(講談社)等の作品で知られる押見修造が「漫画アクション」(双葉社)で描いていた同名漫画。

 思春期の少年少女の鬱屈した感情を描かせたらピカイチの描写を持つ作家の漫画を映像化しているだけに、序盤で描かれる、小森がアパートで一人ゲームをしながら鬱屈していく様は、とてもリアルで見ていていたたまれない気持ちになる。

 好きな女子高生と肉体が入れ替わった後も、楽しいエッチなイベントがいくらでもありそうなのに、男子生徒と一緒にカラオケに行ったら同級生の女子生徒から「人の彼氏に手を出すな」と怒られて孤立したり、男子生徒に強引に部屋に上がられてキスされるなど、良いことがひとつもない。内面が鬱屈していると、かわいい女子高生と肉体が入れ替わっても、鬱屈したまんまなんだと思うと切なくなってしまう。

 主演の池田エライザは、グラビアアイドルならではの色っぽさと、中に男の意識が入っているという落差をうまく出していて、麻理を好演している。一方、異様な存在感で、目が離せないのは、中村ゆりかが演じている柿口依だ。

 依はメガネをかけた陰気な雰囲気を醸し出している美少女。麻理のことを偏執的に追いかけていて、いち早く麻理の中に別の人間がいることに気づく。

 その後、麻理が元に戻れるようにいろいろと協力してくれるのだが、男性に対して嫌悪感を持っているため、麻理の中にいる小森に対しては、汚物を見るかのような対応をしている。

 小森も依も、人とコミュニケーションをするのが苦手で、鬱屈した感情が高ぶると早口になる場面があるのだが、依が麻理(の中にいる小森)を責め立てる場面の刺々しい口調は、圧巻の一言。世界のすべてを拒絶して、麻理のことを崇拝する眼鏡美少女というビジュアルに一発でやられてしまった。

 中村ゆりかは現在20歳。日本人と台湾人のハーフで、アイドルでは、ももいろクローバーZや私立恵比寿中学、若手女優では小松菜々や森川葵が在籍しているスターダストプロモーションの女優だ。

 スターダストの女優やアイドルは、細身の身体で年齢よりも幼く見えて少女性の強い子が多い。

 中村ゆりかも同様で、映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』(14)でも制服姿の美少女を演じていて、フェアリーテイルな存在感を見せていた。

 テレビドラマでは、『富士ファミリー』や連続テレビ小説『まれ』(ともにNHK)等に出演。主人公の思春期の姿や、物語の鍵を握るミステリアスな美少女としてビジュアルアイコン的に出演することが多かった。今回の『ぼくは麻理のなか』は、連続ドラマのレギュラーということもあって、今までは未知数だった演技力も見事に証明したといえる。おそらく、これから一気に主演級の役が増えていくのだろう。

 ビジュアルの魅力も去ることながら、グイグイと相手を追い込んでいくような畳み掛ける話し方を見せていて、今までとは違う個性を見せ始めている。

 今までも華奢な美少女という外見ながらも、『舞え!KAGURA姫』(NHK )での女子高生役のように、思い込んだらグイグイと自分の意見をぶつけてくる押しの強さを見せていた。今回の依は、麻理に対して狂信的な感情を抱いていることもあってか、切迫した感情が狂気のように押し寄せてくる。

 狂気を秘めた美少女役というと、同じ事務所の小松菜奈が映画界を席巻している。しかし、小松がカリスマ性のある女教祖のような絶対的な存在として上から来るのに対して、中村ゆりかの狂気は下から謙ってくる信者タイプの卑屈なヤバさなので、まったく違うアプローチが期待できる。

 ちなみに、原作漫画の依はショートカットにメガネで、必ずしも中村と外見が似ているわけではないのだが、違和感なく依になりきっている。

 ドラマのエンドロールでは、ドラマで展開したシーンと同じ箇所の漫画が流れるのだが、実写映像と見比べると、より面白いはずだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

完全覚醒前夜! 中村ゆりかの“秘めたる狂気”が心をえぐる深夜ドラマ『ぼくは麻理のなか』

 フジテレビ系で月曜深夜に放送中の『ぼくは麻理のなか』は、心をえぐる痛々しいドラマだ。

 本作はもともと、フジテレビオンデマンドで放送されていた配信ドラマ。物語は、鬱屈した感情を抱えて引きこもり生活を過ごしていた大学生の小森(吉沢亮)が、“コンビニの天使”と呼んで、密かに好意を抱いていた女子高生の吉崎麻理(池田エライザ)の体の中に意識が入り込んでしまうところからスタートする。

『ぼくは麻理のなか』は、入れ替わりモノというジャンルに属している作品だ。

 古くは大林宣彦監督の映画『転校生』(1982)、最近では新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』(2016)など、若い男女の肉体が入れ替わるという物語は青春ドラマの定番なのだが、本作が面白いのは、小森と入れ替わった麻理の精神が小森の肉体に宿っておらず、行方不明となっていることだ。

 麻理(の肉体を持った小森)が自分のアパートで対面した小森が、普通の大学生として別人のように存在しているという導入部は、極めて不穏である。

 原作は『惡の華』(講談社)等の作品で知られる押見修造が「漫画アクション」(双葉社)で描いていた同名漫画。

 思春期の少年少女の鬱屈した感情を描かせたらピカイチの描写を持つ作家の漫画を映像化しているだけに、序盤で描かれる、小森がアパートで一人ゲームをしながら鬱屈していく様は、とてもリアルで見ていていたたまれない気持ちになる。

 好きな女子高生と肉体が入れ替わった後も、楽しいエッチなイベントがいくらでもありそうなのに、男子生徒と一緒にカラオケに行ったら同級生の女子生徒から「人の彼氏に手を出すな」と怒られて孤立したり、男子生徒に強引に部屋に上がられてキスされるなど、良いことがひとつもない。内面が鬱屈していると、かわいい女子高生と肉体が入れ替わっても、鬱屈したまんまなんだと思うと切なくなってしまう。

 主演の池田エライザは、グラビアアイドルならではの色っぽさと、中に男の意識が入っているという落差をうまく出していて、麻理を好演している。一方、異様な存在感で、目が離せないのは、中村ゆりかが演じている柿口依だ。

 依はメガネをかけた陰気な雰囲気を醸し出している美少女。麻理のことを偏執的に追いかけていて、いち早く麻理の中に別の人間がいることに気づく。

 その後、麻理が元に戻れるようにいろいろと協力してくれるのだが、男性に対して嫌悪感を持っているため、麻理の中にいる小森に対しては、汚物を見るかのような対応をしている。

 小森も依も、人とコミュニケーションをするのが苦手で、鬱屈した感情が高ぶると早口になる場面があるのだが、依が麻理(の中にいる小森)を責め立てる場面の刺々しい口調は、圧巻の一言。世界のすべてを拒絶して、麻理のことを崇拝する眼鏡美少女というビジュアルに一発でやられてしまった。

 中村ゆりかは現在20歳。日本人と台湾人のハーフで、アイドルでは、ももいろクローバーZや私立恵比寿中学、若手女優では小松菜々や森川葵が在籍しているスターダストプロモーションの女優だ。

 スターダストの女優やアイドルは、細身の身体で年齢よりも幼く見えて少女性の強い子が多い。

 中村ゆりかも同様で、映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』(14)でも制服姿の美少女を演じていて、フェアリーテイルな存在感を見せていた。

 テレビドラマでは、『富士ファミリー』や連続テレビ小説『まれ』(ともにNHK)等に出演。主人公の思春期の姿や、物語の鍵を握るミステリアスな美少女としてビジュアルアイコン的に出演することが多かった。今回の『ぼくは麻理のなか』は、連続ドラマのレギュラーということもあって、今までは未知数だった演技力も見事に証明したといえる。おそらく、これから一気に主演級の役が増えていくのだろう。

 ビジュアルの魅力も去ることながら、グイグイと相手を追い込んでいくような畳み掛ける話し方を見せていて、今までとは違う個性を見せ始めている。

 今までも華奢な美少女という外見ながらも、『舞え!KAGURA姫』(NHK )での女子高生役のように、思い込んだらグイグイと自分の意見をぶつけてくる押しの強さを見せていた。今回の依は、麻理に対して狂信的な感情を抱いていることもあってか、切迫した感情が狂気のように押し寄せてくる。

 狂気を秘めた美少女役というと、同じ事務所の小松菜奈が映画界を席巻している。しかし、小松がカリスマ性のある女教祖のような絶対的な存在として上から来るのに対して、中村ゆりかの狂気は下から謙ってくる信者タイプの卑屈なヤバさなので、まったく違うアプローチが期待できる。

 ちなみに、原作漫画の依はショートカットにメガネで、必ずしも中村と外見が似ているわけではないのだが、違和感なく依になりきっている。

 ドラマのエンドロールでは、ドラマで展開したシーンと同じ箇所の漫画が流れるのだが、実写映像と見比べると、より面白いはずだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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