チュッチュしまくりの『トドメの接吻』で、ホスト・山崎賢人が精力剤をゴックン!? 「キス女」門脇麦はホラー級の怪演!

 7日にスタートした、日本テレビ系の日曜ドラマ『トドメの接吻』。主演の山崎賢人をはじめ、新田真剣佑に志尊淳、さらに菅田将暉(主題歌「さよならエレジー」も担当)といった、今をときめく若手イケメン俳優たちが顔を揃えました。

 脚本にはいずみ吉紘さん、プロデューサー・鈴木亜希乃さんという、2015年に同枠で放送され、山崎くんもL役で出演していた『デスノート』と同じスタッフが再集結したオリジナルストーリーの本作ですが、初回の平均視聴率7.4%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)と、残念な結果に……。

 日テレといえば、昨年放送のディーン・フジオカ&武井咲の『今からあなたを脅迫します』が、初回平均視聴率が8.0%、全話平均は6.1%と大コケ。その前クールの福士蒼汰主演『愛してたって、秘密はある。』では、最終回で視聴率を上げたものの、同枠ドラマ全体でみると、視聴者の興味が集まる初回からラストに向けて、視聴率は伸びにくい傾向にあります。先行き不安なこのドラマ、一体どうなっていくのでしょうか……。

 まずは、第1話のあらすじから振り返っていきたいと思います。

 

■キス、そしてキス……

 物語の始まりは、豪華客船で行われている、とあるパーティーから。きらびやかな空間に目を奪われる兄弟らしき2人は、船長を務める父親に黙って船に忍び込み、中を探索していました。すると、突如電気トラブルが発生して船が座礁。2人は床に倒れて血を流している少女を助け出しますが、勢いよく船内に浸入してきた海水により、3人は流されてしまいます――という、どこかのサスペンスドラマの冒頭かと思うような回想シーンです。思わず、「チャンネル合ってるよね?」と不安になったのは私だけではないでしょう。

 そんなことを考えていると、画面には山崎賢人のドアップ(イケメン!)からの、水着姿の釈由美子(おっぱい!)、そしてまさかの水中キス(エロい!)……衝撃展開の連続に、物語の設定を忘れていましたが、この物語は、金と権力のために女を弄ぶホスト・堂島旺太郎(山崎賢人)が、謎の女(門脇麦)のキスによって殺され、7日前にタイムリープしてしまうという、“邪道ラブストーリー”だそうです。釈様はというと、元キャバ嬢のエステティシャンかつ「エイト」こと旺太郎の客で、あえなくお金を巻き上げられたりしています。 

「お金に困らない方法知ってる? 僕みたいに捕まえればいいんだよ、金ヅルを――」

 昨年、TBS系で放送されていた日曜劇場『陸王』では、足袋屋の社長である父親に反発しながらも、苦境に陥った会社のために奮闘する息子役を等身大で演じきった山崎くんですが、今作では打って変わって、金と権力のために女を弄ぶクズ男に大変身! 今度は不動産会社の女社長(井上晴美)から高級腕時計をちゃっかりゲットしつつ、ベッドの上でディープキスをしてみせます。

 そんなクズ男・旺太郎が働くホストクラブ「ナルキッソス」に、資産100億円のホテル王・並樹グループの令嬢・美尊(新木優子)がご来店! 同僚ホストの和馬(志尊淳)と結託しながら、美尊を落とそうと気合を入れる旺太郎ですが、男子トイレに突然現れたナゾの女にぶちゅ~っと長めのキスをされた直後、ブハッと口から血を吐き、命を落としてしまいます。目を覚ますと、冒頭の水中シーンにタイムリープをしていました。一連の出来事を夢だったととらえた旺太郎は、どうにか美尊に近づこうと奔走しますが、再びキス女が現れ、キス。そして、またも7日前に巻き巻き戻されてしまうのでした……。

■精力ドリンクを飲む、ビミョ~にダサい山崎賢人と、“ホラー”な門脇麦

 旺太郎がタイムリープするトリガーとなるのは、謎の女とのキス。今話でのタイムリープの回数は4回=キスの数も4回で、ゲスト出演の釈様と井上さんとのキスも含めると、キスシーンの数は6回に及ぶのですが、これがまたエロい。山崎くんは、『ジョジョの奇妙な冒険』『斉木楠雄のΨ難』(ともに17年公開)や少女マンガ原作の実写映画に多数出演してきましたが、これまで見たことないような大人の色気が漂うラブシーンの数々に、女性ファンであればドキドキしっぱなしでしょう。

 クズなホスト役も似合っていますし、そりゃあもう、イケメンです。なんですが、ところどころ残念なところがあったように思います(当社比)。まずは、お店にやってきた美尊ちゃんを口説こうとするシーン。席に着く前、エイトは目をギラつかせながらロッカーに仕込んである精力剤を意気揚々とキメるんですが、やる気満々すぎませんか? カリスマホストが、いざというときのために、精力ドリンクを買って、ロッカーにしのばせているって考えると……ダs(以下略)。

 そして、「エイト」という源氏名の由来。以前働いていたお店では「セブン」と名乗っていたそうです。その原理でいくと、その前は「シックス」? その前の前は「ファイブ」? せめて漢字表記なら、それっぽく思えたりもしますが、何のひねりもないカタカナ表記なのも相俟って、ダs……なんでもないです。

 そして、そんなエイトこと旺太郎に迫るキス女が、かなり不気味なんです。映画『愛の渦』(14年)での体当たりの演技が話題を呼んだ、実力派女優の門脇麦ちゃんが演じているだけに、“邪道ラブストーリー”であることを忘れるくらい、ゾッとします。真っ黒なボブヘアに、ミステリアスな顔立ち、真っ黒な瞳でこちらを見つめ、「あっ、アナタ、しっシヌ!」ってカタコトの日本語を話し、ニヤッと笑みを浮かべる彼女。肘を曲げずに棒のように伸ばしたままのちぐはぐな走り方も相俟って、完全にホラーです。

■度重なるタイムリープは、正直、飽きる?

 先ほども書いたように、今話だけで、4回もタイムリープしていた旺太郎。まだ1話目ですから、今の段階では、なぜ旺太郎がターゲットにされているのか、なぜキスで死に、7日前にタイムリープしてしまうのか、その理由は明かされません。しかし、目が覚める→キス女をかわそうと奔走する→結局見つかりキスされ過去にタイムリープする……この繰り返しなので、正直、くどい印象がありました。死ぬ前の走馬灯も毎回ご丁寧に描かれるので、視聴者としては「もう分かったよ!」とお腹いっぱい状態です。

“タイムリープ”といえば、『時をかける少女』などの青春SF作を思い浮かべる人も多いかと思いますが、今作は、「キャッキャウフフ」的要素は今のところゼロ。しかも、タイムリープに必ず“死”がつきまとうSFミステリーです。旺太郎の絶命シーンは、血がドロドロ流れるリアルな描写がグロテスクだし、キス女も狂気じみていて、小さい子どもがこのドラマを見たら、トラウマになってしまうのではないかと。そんなダークな要素が強いため、好みが分かれてしまうことが低視聴率の一因なのかもしれません。

 とはいえ、ドラマはまだまだ始まったばかり。1話にはさまざまな伏線が張られていました。キス女はタイムリープに気づいていそうだし、その上で、何度もしつこく旺太郎の元にまでやってくるので、どうやら単に旺太郎を殺そうとしているのではなく、タイムリープさせて、未来を変えようとしているのではないかとも思えます。

 それに、

・水難事故により行方不明になったままの旺太郎の弟の安否
・船で旺太郎たちが助けた少女は誰なのか
・旺太郎を橋から突き落としたのは誰なのか
・旺太郎に協力的な和馬の本心は
・100億の女、美尊と血の繋がらない兄・尊氏(新田真剣佑)との関係
・キス女から逃げる旺太郎に手を貸したストリートミュージシャン・春海(菅田将暉)は一体何を知っているのか

 これらがどのように明かされていくのか、今後の展開が楽しみです。ネット上では早くも、菅田クンが演じる春海が弟説、真剣佑が演じる尊氏が弟説、和馬が黒幕説など、さまざまな臆測が囁かれていますが、果たして……!? 山崎くんのラブシーンとともに、今夜の第2話に期待したいところです。
(文=どらまっ子TAROちゃん)

山崎賢人、連ドラ初主演『トドメの接吻』でイメージダウン&爆死スタート! せっかく『陸王』で好感度アップしたのに……

 若手俳優・山崎賢人の連ドラ初主演作『トドメの接吻』(日本テレビ系/日曜午後10時30分~)の初回が7日、30分拡大で放送され、視聴率は7.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と爆死スタートとなった。

 日テレの同ドラマ枠は、2015年4月期より放送開始し、2ケタで好発進する作品も少なくなかったが、ここ最近は低迷。前クールの『今からあなたを脅迫します』(ディーン・フジオカ、武井咲主演)は初回8.0%で、同枠史上最低のスタートだったが、『トドメの接吻』は、それをさらに下回り、ワースト記録を更新した。

 同ドラマは、カネや権力にしか興味がない新宿・歌舞伎町のクズホスト「エイト」こと堂島旺太郎(山崎)が、誰も愛さず、成り上がることだけを追う物語。初回では、序盤から山崎と常連客役の釈由美子、井上晴美とのラブシーンが立て続けに流れるという衝撃のスタート。旺太郎が働くホストクラブ「ナルキッソス」に、資産100億円のホテル王・並樹グループの令嬢・美尊(新木優子)が来店する。旺太郎はかっこうの金づるである美尊に狙いを定めるが、男子トイレに突然現れたナゾのキス女(門脇麦)にキスされて、命を落としてしまう。旺太郎が目を覚ますと、1週間前にタイムリープしていた。旺太郎は美尊を再び落とそうとするが、キス女に再度殺されてしまい、このシーンが何度も繰り返される……という展開だった。

 キャストは山崎、門脇、新木のほか、菅田将暉、志尊淳、新田真剣佑、佐野勇斗といった若手イケメン俳優が脇を固めているが、残念ながら、あまり視聴率には結びつかなかったようだ。

 ネット上では、「同じシーンが繰り返されて退屈」「見るのがつらいから途中で消した」「門脇、菅田は演技うまいけど、山崎はヘタだから感情移入できない」「『またかよ!』っていうくらい戻りすぎ。途中で飽きた」「山崎のしゃべりがヘタでビックリ。15分で脱落した」「山崎は好きじゃないけど、暇つぶしで見たけど、暇つぶしにもならなかった」といった声が聞かれ、かなり厳しい評価だ。

 前番組の『世界の果てまでイッテQ!豪華5本立て!新春3時間SP イモト憧れの初ハワイへ!』が19.0%の高視聴率をマークし、他局を圧倒していただけに、そのままチャンネルを替えずに同ドラマを見た人は少なくなかったはず。だが、前述のような理由で、放送途中で脱落した視聴者も多かったのだろう。

 これまで山崎はクールな役柄が多く、演技面での評価は決してかんばしいものではなかった。しかし、前クール、2番手で出演した日曜劇場『陸王』(TBS系)では、父(役所広司)が経営する「こはぜ屋」を守るべく奮闘する息子役を熱演。『陸王』は平均16.0%と高い視聴率を獲得したこともあり、山崎の好感度はかなり上がっていた。ところが、直後の今ドラマでは、キスをしまくるクズホスト役。しかも、作品自体の評価が悪いとあっては、そのイメージも一気に急降下してしまいそうな雰囲気だ。

 まだ始まったばかりだが、前期同枠の『今からあなたを脅迫します』のように、5%を割り込むようなことだけは避けてほしいものだが……。
(文=田中七男)

20.5%『陸王』最終回に見たスポ根ドラマとしての完成度と「感動の押し売り感」の正体

 日曜劇場『陸王』(TBS系)も最終回。視聴率は20.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、最後の最後で大台に乗せました。おめでとうございます。数字に恥じない、熱のこもった最終回だったと思います。そんなわけで、振り返りです。

前回までのレビューはこちらから

 世界的アウトドアメーカー・Felixの御園社長(松岡修造)から提案された買収計画を、ギリギリで断った足袋業者・こはぜ屋の宮沢社長(役所広司)。代わりに考えてきた業務提携案には色よい返事をもらえず、新たな取引先を探すべく奔走中です。

 こはぜ屋には独自の技術であるシルクレイがありますが、先日製造機がぶっ壊れたので、最低でも1億円くらいないと生産を再開できません。とあるヘルメットメーカーが話を聞いてくれたりもしましたが、天敵であるアトランティス社(以下、ア社)の小原(ピエール瀧)が裏から手を回し、結局ご破算に。そんな折、例の御園社長から電話がかかってきます。

「ということは、Felixは我々を支援してくれるということでしょうか?」

 一度は断った業務提携を、御園社長は飲むといいます。3億円の融資をすると。ただしその条件は厳しく、返済期限は5年。最初の3年間はFelixからの発注を確約するが、それ以降は一切の保証なし。で、5年で返せなければ、こはぜ屋を乗っ取ると。

 悩む宮沢でしたが、やはり陸王への思いは断ち切れず、この融資を受けることにしました。

 

■アトランティスの茂木、RIIを履く

 

 一方、実業団ランナーの茂木くん(竹内涼真)は、再びア社とサポート契約を結びました。ケガをしたらサポートを打ち切り、治ったら今度は実業団チームそのものを人質にとって契約を迫るア社のやり方には不満タラタラですが、カリスマシューフィッターの村野さん(市川右團次)も「今度のRII(アール・ツー=ア社の看板シューズ)は悪くない」と言ってるので、再起をかける豊橋国際マラソンにはRIIを履いて出場することになります。

 そんな茂木くんを、こはぜ屋一同は応援に行くことに。宮沢社長にとって豊橋国際といえば、レース中にケガに倒れた茂木くんを目の当たりにし、陸王開発に乗り出した思い出の大会。たとえ茂木くんが陸王ではなくRIIを履くとしても、応援したい気持ちに変わりはありません。

 ところで、こはぜ屋にはまだ1足だけ、茂木モデルの陸王が残っています。飯山さん(寺尾聰)が開発したシルクレイに、社長の息子・大地(山崎賢人)が探してきたアッパー素材を、あけみさん(阿川佐和子)たち縫製おばちゃん軍団が縫い付け、カリスマシューフィッター村野さんがカリスマ的な調整を施したスペシャルな陸王です。しかし、今や茂木くんはア社と契約の身。豊橋国際で陸王を履くことは許されません。

 それでも、こはぜ屋一同の思いを知った村野さんは、こっそりこの陸王を茂木に手渡します。「持っていてくれるだけでいいからと。RIIを履くことを知りながら、お前のことを応援したいと、そういう連中の気持ちそのものだ」と。

「心が温かくなります……」

 茂木くんもうれしそうです。

 

■アトランティスの茂木、陸王を履く

 

 そうして迎えたレース当日。RIIを履いて準備に余念のない茂木くんに、大学時代からのライバル・毛塚(佐野岳)が声をかけます。

「おい、完走はしろよ。この前みたいに棄権なんていう無様なオチは許さねえ」

 2年前の豊橋国際で明暗が分かれた茂木と毛塚。それ以降、2人の差は広がるばかりでした。その間、ニューイヤー駅伝で茂木が毛塚に勝る結果を残したこともありましたが、世間の評価は覆っていません。日本人トップなら世界陸上への出場が約束されるこのレース。毛塚にとっては、単なる通過点でしかありませんでした。

 ちなみに、こはぜ屋は会社を休んで社員全員で応援に来ていますが、大地だけはまだ現場についていません。就活中の大地はこの日、当初からの第一志望だった大手企業・メトロ電業の最終面接なのです。終わったら新幹線で来るそうです。

 レース前、練習している茂木くんに、宮沢社長は、神社で願掛けしてもらったという手編みの靴ひもを手渡します。「お守り代わりに、持っててください」と。

 またいたく感動してしまった茂木くん、RIIを脱ぎ捨て「俺はこの陸王を履きます」とア社・小原に宣言。当然、契約違反ですし小原は激怒しますが、どうやら本気のようです。

「今のこはぜ屋さんは、2年前の俺なんです」

 陸王を履いてスタート地点に現れた茂木くんを見て、こはぜ屋一同は超びっくり&大感動。何しろ、履く履かない以前に、この陸王が茂木くんの手に渡っていることすら知らなかったので、ほぼ全員号泣のままレースがスタートします。

 

■マラソンドラマとして見どころ満載

 

 レースは、先行するケニア勢を毛塚と茂木が追う展開。先頭集団から、同大会2連覇中のサイラス・ジュイ(本人)が飛び出すと、毛塚と茂木も集団を置き去りにして三つ巴の状態に。

 40キロ過ぎにサイラスが脚を痛めてリタイア。毛塚と茂木の一騎打ちとなり、最後は茂木が毛塚をかわして優勝を果たします。

 このレースシーンが、単純にスポ根の魅力に満ちていて非常に楽しかったです。

 スタート直前、毛塚は、茂木がRIIから陸王に履き替えていることに気付きます。

毛「結局、そっち履いたんだ」

茂「ああ」

毛「いい靴なんだな、それ」

茂「最高だ」

 これまで、毛塚は陸王を見るたびにバカにしてきました。そして、陸王を履く茂木のこともバカにしてきました。しかしここにきて、ようやく茂木を、そして陸王を認めたのでした。静かなやり取りでしたが、大きな意味を持つシーンです。

 30キロ過ぎ、毛塚は給水を一度飛ばし、勝負に出ます。茂木も毛塚も、かつて箱根を制した登りのスペシャリスト。ゆるい登りが続くこの区間が勝負どころでしたが、給水のタイムロスを嫌ってリスクを取った毛塚がリードします。

 35キロ。先行する毛塚が、今度は給水に失敗。ボトルを落としてしまいます。30キロ地点の給水を飛ばしている毛塚にとっては、致命的なミス。しかし茂木はこれをチャンスと受け取らず、自分のボトルを毛塚に手渡します。なんてフェアな! 実際、マラソン中継ではしばしば見られる光景ですが、ドンピシャな演出です。これで盛り上がらないはずがありません。

 38キロ。もっとも苦しい距離ですが、並走する2人は実に楽しそうです。互いの実力を認め合ったアスリート同士の、2人だけの世界が描かれます。もはや経済ドラマを見ていることも忘れそうです。どこのシューズを履いてるとか、どうでもよくなってきました。

 40キロ。2年前に茂木が倒れた同じ地点で、トップを走るサイラスが脚を痛めました。路上に這いつくばるサイラスを見て、茂木は動揺を隠せません。しかしそこには、宮沢社長と息子・大地の姿がありました。

 茂木にとっても、こはぜ屋にとっても、すべてはこの場所から始まったのでした。

 宮沢が叫びます。

「陸王を信じて走れ、茂木──!」

 ああ、お見事。茂木が勝つことはドラマ的に当然なんですが、ここまで説得力を持ってマラソンシーンを描かれたら、もう感服するしかありません。

 レース後、敗者となった毛塚は茂木に握手を求めます。茂木には、ケガで低迷していたときにサポートスタッフとして参加したレースで、好成績を残した毛塚に握手を求めて無視された記憶があります。その毛塚が、自ら茂木に握手を求めてくるのです。

「つええな……。次は、俺が勝つ」

 なんて爽やか! 清々しいスポ根! 面白かったー!

 

■『陸王』全話における“感動と約束事”のトレードオフ

 

 レース後、勝利者インタビューで茂木くんは、陸王を掲げて「この陸王に支えられました」と、堂々と話します。「こはぜ屋のみなさんに、今日の優勝は捧げたいと思います」と。

 ア社の契約ランナーなのに。まだ契約破棄の手続きだってしてないはずなのに。レースでRIIを履かないだけでも大問題なのに、よりによって競合他社製品を大々的に宣伝している。結果、陸王は大ヒット商品になり、こはぜ屋は工場を増築。Felixからの融資にも返済の目処が立ったようです。一方、ア社の小原は左遷されてしまいました。契約不履行された上に職を解かれる小原さん、かなり不憫です。

 もちろん、インタビューで陸王に感謝を述べる茂木くんの姿はカッコいいし、感動的なんです。だけど、これはないですよ。片方でFelixとこはぜ屋の「買収か業務提携か」という契約の話を何週にも渡って条件の細部までシビアに語っておいて、もう片方で茂木とア社、茂木が所属するダイワ食品とア社との契約について、茂木の「謝罪します」の一言で済ましちゃうというのは、まるで筋が通ってないですよ。

『陸王』では、こうした感動と約束事のトレードオフがしばしば行われてきました。第1話では、おばちゃんたちの行動を献身的な美談として語るために「サービス残業」を肯定する描写がありました。

 第9話では、大地の頑張りを強調しつつ「最後の陸王」を演出するために、タチバナラッセルとの「3月までの契約」をウヤムヤにし、残っているはずのアッパー素材の在庫を消失させてしまいました。

 最終回の茂木の行動も、社会人としてあるまじき行為であることに疑いの余地はありません。ア社や小原のやり方を汚く描いておいて、それをやっつければ、社会通念上むっちゃ非常識な判断を行ったとしても許される、感動できる、という論法です。

 少なくとも上記3つの例は、原作では描かれていません。なぜなら、こうした約束事の破棄は、一方で宮沢が戦っているビジネス上の「清濁併せ飲もうよ感」や「時には妥協も必要だよ感」「契約だからしょうがないよ感」と同居できないからです。一本の作品の中で、求められるビジネスマナーの水準や仕事上の倫理感が一貫していなければ、経済小説として成立しないからです。

 これらの設定を、ドラマの脚本家が追加しました。結果、物語に振り幅が生まれ、見応えのあるシーンが演出されました。エモーショナルでリッチなドラマの一丁上がりです。これ、どちらがいいとか悪いとかいう話ではないです。好みの問題として、このやり方は好みじゃなかった。もっと視聴者を信じていいと思うし、もっと原作を信じていいと思うんです。なんか評判がよろしくないリトグリちゃんの歌なんかより、こういう「感動の押し売り」的なあざとさのほうが、よっぽど没入を妨げる要素だったと思います。

 

■後半の間延び感について

 

 結局最後まで見ていて、もっとも盛り上がったのは第6話のニューイヤー駅伝と今回の豊橋国際マラソンでした。宮沢社長を演じる役所広司は終始すばらしい、まったくすばらしいとしかいいようのない芝居でしたし、トリックスター気味に投入された松岡修造の、なんと達者なことか。風格で役所広司に対抗できる俳優が誕生したというのは、日本の映画・ドラマ界において大きな収穫だと思います。

 それでも、マラソンシーンの興奮には勝らなかった。特に7話以降の間延び感については、ちょっと見ていられないくらいでした。

『陸王』は宮沢社長が判断を繰り返す物語です。ひとつ判断すれば、次の危機が来る。それを判断で乗り越えれば、また新しい危機が来る。その繰り返しの中で、宮沢社長の中に成長が訪れ、判断基準や決断のプロセス、結果に対する熱量が変化していくのが面白いところなんですが、ドラマは宮沢社長目線ではなく、基本的には息子・大地と茂木くん目線で進むので、宮沢社長の内面描写がおざなりになっていた部分があると思うんです。

 深く悩んだり、それなりに周囲に感謝しながら判断を下しているそのプロセスの中で、何度も「ただのヒステリックおじさん」に見えてしまう場面があった。これは物語の構造的な問題なので、作りようによって解決できたかどうかは難しいところだと思うんですが、主人公周辺が盛り上がりに欠けたのは、そんなところが原因なのかなと思います。

 とはいえ、面白かったし、好きな作品ではあるんですよ。第1話からチャキチャキ阿川さんはずっとキュートでしたし、第5話の馬場徹さんの「新しい陸王、完成したら、私、買います」には心底痺れたし、第6話の音尾くんの「バテるに決まっとろうが!(号泣)」には私も泣かされました。大手への就職が決まったのに、こはぜ屋に残ると言った大地と、その大地を諭す社長でもあり父親でもある宮沢の姿もよかった。正直、このレベルで作り込まれた作品って、少ないと思います。豪腕、達人、巨匠……福澤克雄監督と福澤組のみなさんには、どんな賛辞だって惜しくない。だからこそ、なんというか、もうちょい視聴者を信じてほしいと思っちゃうんですよねえ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

20.5%『陸王』最終回に見たスポ根ドラマとしての完成度と「感動の押し売り感」の正体

 日曜劇場『陸王』(TBS系)も最終回。視聴率は20.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、最後の最後で大台に乗せました。おめでとうございます。数字に恥じない、熱のこもった最終回だったと思います。そんなわけで、振り返りです。

前回までのレビューはこちらから

 世界的アウトドアメーカー・Felixの御園社長(松岡修造)から提案された買収計画を、ギリギリで断った足袋業者・こはぜ屋の宮沢社長(役所広司)。代わりに考えてきた業務提携案には色よい返事をもらえず、新たな取引先を探すべく奔走中です。

 こはぜ屋には独自の技術であるシルクレイがありますが、先日製造機がぶっ壊れたので、最低でも1億円くらいないと生産を再開できません。とあるヘルメットメーカーが話を聞いてくれたりもしましたが、天敵であるアトランティス社(以下、ア社)の小原(ピエール瀧)が裏から手を回し、結局ご破算に。そんな折、例の御園社長から電話がかかってきます。

「ということは、Felixは我々を支援してくれるということでしょうか?」

 一度は断った業務提携を、御園社長は飲むといいます。3億円の融資をすると。ただしその条件は厳しく、返済期限は5年。最初の3年間はFelixからの発注を確約するが、それ以降は一切の保証なし。で、5年で返せなければ、こはぜ屋を乗っ取ると。

 悩む宮沢でしたが、やはり陸王への思いは断ち切れず、この融資を受けることにしました。

 

■アトランティスの茂木、RIIを履く

 

 一方、実業団ランナーの茂木くん(竹内涼真)は、再びア社とサポート契約を結びました。ケガをしたらサポートを打ち切り、治ったら今度は実業団チームそのものを人質にとって契約を迫るア社のやり方には不満タラタラですが、カリスマシューフィッターの村野さん(市川右團次)も「今度のRII(アール・ツー=ア社の看板シューズ)は悪くない」と言ってるので、再起をかける豊橋国際マラソンにはRIIを履いて出場することになります。

 そんな茂木くんを、こはぜ屋一同は応援に行くことに。宮沢社長にとって豊橋国際といえば、レース中にケガに倒れた茂木くんを目の当たりにし、陸王開発に乗り出した思い出の大会。たとえ茂木くんが陸王ではなくRIIを履くとしても、応援したい気持ちに変わりはありません。

 ところで、こはぜ屋にはまだ1足だけ、茂木モデルの陸王が残っています。飯山さん(寺尾聰)が開発したシルクレイに、社長の息子・大地(山崎賢人)が探してきたアッパー素材を、あけみさん(阿川佐和子)たち縫製おばちゃん軍団が縫い付け、カリスマシューフィッター村野さんがカリスマ的な調整を施したスペシャルな陸王です。しかし、今や茂木くんはア社と契約の身。豊橋国際で陸王を履くことは許されません。

 それでも、こはぜ屋一同の思いを知った村野さんは、こっそりこの陸王を茂木に手渡します。「持っていてくれるだけでいいからと。RIIを履くことを知りながら、お前のことを応援したいと、そういう連中の気持ちそのものだ」と。

「心が温かくなります……」

 茂木くんもうれしそうです。

 

■アトランティスの茂木、陸王を履く

 

 そうして迎えたレース当日。RIIを履いて準備に余念のない茂木くんに、大学時代からのライバル・毛塚(佐野岳)が声をかけます。

「おい、完走はしろよ。この前みたいに棄権なんていう無様なオチは許さねえ」

 2年前の豊橋国際で明暗が分かれた茂木と毛塚。それ以降、2人の差は広がるばかりでした。その間、ニューイヤー駅伝で茂木が毛塚に勝る結果を残したこともありましたが、世間の評価は覆っていません。日本人トップなら世界陸上への出場が約束されるこのレース。毛塚にとっては、単なる通過点でしかありませんでした。

 ちなみに、こはぜ屋は会社を休んで社員全員で応援に来ていますが、大地だけはまだ現場についていません。就活中の大地はこの日、当初からの第一志望だった大手企業・メトロ電業の最終面接なのです。終わったら新幹線で来るそうです。

 レース前、練習している茂木くんに、宮沢社長は、神社で願掛けしてもらったという手編みの靴ひもを手渡します。「お守り代わりに、持っててください」と。

 またいたく感動してしまった茂木くん、RIIを脱ぎ捨て「俺はこの陸王を履きます」とア社・小原に宣言。当然、契約違反ですし小原は激怒しますが、どうやら本気のようです。

「今のこはぜ屋さんは、2年前の俺なんです」

 陸王を履いてスタート地点に現れた茂木くんを見て、こはぜ屋一同は超びっくり&大感動。何しろ、履く履かない以前に、この陸王が茂木くんの手に渡っていることすら知らなかったので、ほぼ全員号泣のままレースがスタートします。

 

■マラソンドラマとして見どころ満載

 

 レースは、先行するケニア勢を毛塚と茂木が追う展開。先頭集団から、同大会2連覇中のサイラス・ジュイ(本人)が飛び出すと、毛塚と茂木も集団を置き去りにして三つ巴の状態に。

 40キロ過ぎにサイラスが脚を痛めてリタイア。毛塚と茂木の一騎打ちとなり、最後は茂木が毛塚をかわして優勝を果たします。

 このレースシーンが、単純にスポ根の魅力に満ちていて非常に楽しかったです。

 スタート直前、毛塚は、茂木がRIIから陸王に履き替えていることに気付きます。

毛「結局、そっち履いたんだ」

茂「ああ」

毛「いい靴なんだな、それ」

茂「最高だ」

 これまで、毛塚は陸王を見るたびにバカにしてきました。そして、陸王を履く茂木のこともバカにしてきました。しかしここにきて、ようやく茂木を、そして陸王を認めたのでした。静かなやり取りでしたが、大きな意味を持つシーンです。

 30キロ過ぎ、毛塚は給水を一度飛ばし、勝負に出ます。茂木も毛塚も、かつて箱根を制した登りのスペシャリスト。ゆるい登りが続くこの区間が勝負どころでしたが、給水のタイムロスを嫌ってリスクを取った毛塚がリードします。

 35キロ。先行する毛塚が、今度は給水に失敗。ボトルを落としてしまいます。30キロ地点の給水を飛ばしている毛塚にとっては、致命的なミス。しかし茂木はこれをチャンスと受け取らず、自分のボトルを毛塚に手渡します。なんてフェアな! 実際、マラソン中継ではしばしば見られる光景ですが、ドンピシャな演出です。これで盛り上がらないはずがありません。

 38キロ。もっとも苦しい距離ですが、並走する2人は実に楽しそうです。互いの実力を認め合ったアスリート同士の、2人だけの世界が描かれます。もはや経済ドラマを見ていることも忘れそうです。どこのシューズを履いてるとか、どうでもよくなってきました。

 40キロ。2年前に茂木が倒れた同じ地点で、トップを走るサイラスが脚を痛めました。路上に這いつくばるサイラスを見て、茂木は動揺を隠せません。しかしそこには、宮沢社長と息子・大地の姿がありました。

 茂木にとっても、こはぜ屋にとっても、すべてはこの場所から始まったのでした。

 宮沢が叫びます。

「陸王を信じて走れ、茂木──!」

 ああ、お見事。茂木が勝つことはドラマ的に当然なんですが、ここまで説得力を持ってマラソンシーンを描かれたら、もう感服するしかありません。

 レース後、敗者となった毛塚は茂木に握手を求めます。茂木には、ケガで低迷していたときにサポートスタッフとして参加したレースで、好成績を残した毛塚に握手を求めて無視された記憶があります。その毛塚が、自ら茂木に握手を求めてくるのです。

「つええな……。次は、俺が勝つ」

 なんて爽やか! 清々しいスポ根! 面白かったー!

 

■『陸王』全話における“感動と約束事”のトレードオフ

 

 レース後、勝利者インタビューで茂木くんは、陸王を掲げて「この陸王に支えられました」と、堂々と話します。「こはぜ屋のみなさんに、今日の優勝は捧げたいと思います」と。

 ア社の契約ランナーなのに。まだ契約破棄の手続きだってしてないはずなのに。レースでRIIを履かないだけでも大問題なのに、よりによって競合他社製品を大々的に宣伝している。結果、陸王は大ヒット商品になり、こはぜ屋は工場を増築。Felixからの融資にも返済の目処が立ったようです。一方、ア社の小原は左遷されてしまいました。契約不履行された上に職を解かれる小原さん、かなり不憫です。

 もちろん、インタビューで陸王に感謝を述べる茂木くんの姿はカッコいいし、感動的なんです。だけど、これはないですよ。片方でFelixとこはぜ屋の「買収か業務提携か」という契約の話を何週にも渡って条件の細部までシビアに語っておいて、もう片方で茂木とア社、茂木が所属するダイワ食品とア社との契約について、茂木の「謝罪します」の一言で済ましちゃうというのは、まるで筋が通ってないですよ。

『陸王』では、こうした感動と約束事のトレードオフがしばしば行われてきました。第1話では、おばちゃんたちの行動を献身的な美談として語るために「サービス残業」を肯定する描写がありました。

 第9話では、大地の頑張りを強調しつつ「最後の陸王」を演出するために、タチバナラッセルとの「3月までの契約」をウヤムヤにし、残っているはずのアッパー素材の在庫を消失させてしまいました。

 最終回の茂木の行動も、社会人としてあるまじき行為であることに疑いの余地はありません。ア社や小原のやり方を汚く描いておいて、それをやっつければ、社会通念上むっちゃ非常識な判断を行ったとしても許される、感動できる、という論法です。

 少なくとも上記3つの例は、原作では描かれていません。なぜなら、こうした約束事の破棄は、一方で宮沢が戦っているビジネス上の「清濁併せ飲もうよ感」や「時には妥協も必要だよ感」「契約だからしょうがないよ感」と同居できないからです。一本の作品の中で、求められるビジネスマナーの水準や仕事上の倫理感が一貫していなければ、経済小説として成立しないからです。

 これらの設定を、ドラマの脚本家が追加しました。結果、物語に振り幅が生まれ、見応えのあるシーンが演出されました。エモーショナルでリッチなドラマの一丁上がりです。これ、どちらがいいとか悪いとかいう話ではないです。好みの問題として、このやり方は好みじゃなかった。もっと視聴者を信じていいと思うし、もっと原作を信じていいと思うんです。なんか評判がよろしくないリトグリちゃんの歌なんかより、こういう「感動の押し売り」的なあざとさのほうが、よっぽど没入を妨げる要素だったと思います。

 

■後半の間延び感について

 

 結局最後まで見ていて、もっとも盛り上がったのは第6話のニューイヤー駅伝と今回の豊橋国際マラソンでした。宮沢社長を演じる役所広司は終始すばらしい、まったくすばらしいとしかいいようのない芝居でしたし、トリックスター気味に投入された松岡修造の、なんと達者なことか。風格で役所広司に対抗できる俳優が誕生したというのは、日本の映画・ドラマ界において大きな収穫だと思います。

 それでも、マラソンシーンの興奮には勝らなかった。特に7話以降の間延び感については、ちょっと見ていられないくらいでした。

『陸王』は宮沢社長が判断を繰り返す物語です。ひとつ判断すれば、次の危機が来る。それを判断で乗り越えれば、また新しい危機が来る。その繰り返しの中で、宮沢社長の中に成長が訪れ、判断基準や決断のプロセス、結果に対する熱量が変化していくのが面白いところなんですが、ドラマは宮沢社長目線ではなく、基本的には息子・大地と茂木くん目線で進むので、宮沢社長の内面描写がおざなりになっていた部分があると思うんです。

 深く悩んだり、それなりに周囲に感謝しながら判断を下しているそのプロセスの中で、何度も「ただのヒステリックおじさん」に見えてしまう場面があった。これは物語の構造的な問題なので、作りようによって解決できたかどうかは難しいところだと思うんですが、主人公周辺が盛り上がりに欠けたのは、そんなところが原因なのかなと思います。

 とはいえ、面白かったし、好きな作品ではあるんですよ。第1話からチャキチャキ阿川さんはずっとキュートでしたし、第5話の馬場徹さんの「新しい陸王、完成したら、私、買います」には心底痺れたし、第6話の音尾くんの「バテるに決まっとろうが!(号泣)」には私も泣かされました。大手への就職が決まったのに、こはぜ屋に残ると言った大地と、その大地を諭す社長でもあり父親でもある宮沢の姿もよかった。正直、このレベルで作り込まれた作品って、少ないと思います。豪腕、達人、巨匠……福澤克雄監督と福澤組のみなさんには、どんな賛辞だって惜しくない。だからこそ、なんというか、もうちょい視聴者を信じてほしいと思っちゃうんですよねえ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

15.7%『陸王』ストーリー停滞、最終回直前で「こはぜ屋」の誰もが信用できなくなっていく……

 17日に放送された日曜劇場『陸王』(TBS系)最終回直前の第9話は25分の拡大版でした。視聴率は15.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調ではあるものの、ちょっと伸び悩みな感じです。

 そして視聴率以上に、お話は停滞しています。正直、第6話のニューイヤー駅伝のくだりから急激に進展しなくなった物語にイライラが募るばかりです。瞬間瞬間の画面の強さや俳優さんたちの芝居の良さはあるので、ドラマが出力を失ったわけではありません。だからこそ、フラフラしてる宮沢社長以下こはぜ屋の面々が信用できなくなっていくのがつらいところです。

 というわけで、振り返りましょう。

前回までのレビューはこちらから

 世界的スポーツメーカーFelixの御園社長(松岡修造)に買収話を持ちかけられ、「すぐにでも3億出資する」と言われてホイホイと固い握手をかわしてしまった宮沢社長(役所広司)でしたが、社内からは当然のように猛反発。さらに、銀行の融資担当・大橋さん(馬場徹)からも「(買収されれば)相手の思い通りにするしかなくなる」と諭され、再びフラフラと迷いだします。いわく「買収を受け入れて陸王を続けるか、足袋屋に戻るか」の選択肢しかないといい、「俺は陸王を続けたいんだ」と決意を述べます。

 もっとも強く反発しているのが、これまで宮沢社長に理解を示してきた縫製おばちゃん軍団のリーダー・あけみさん(阿川佐和子)でした。

「私が会社を売ることに賛成することは絶対にない、絶対にない」

 と、大切なことなので2回言ったりします。今回、こはぜ屋パートでは、このあけみさんを説得するだけで、フルに1時間半を使います。長いよ。

 そもそもこのドラマは、こはぜ屋という老舗足袋業者が「100年の暖簾」とやらを“もう守れない”という状況から始まっています。足袋の需要が減って、もうこのままでは先も長くない。だから新規事業を始めなければいけない。よし、「陸王」で頑張ろう。そういう話だったのに、最終回前の大詰めまで来て「足袋屋に戻る」ことへの逡巡が語られる。「足袋屋に戻る」ことは、ドラマの序盤で「イコール倒産」と、すでに定義されているはずなのに、社員がそれを求め、社長も迷う。そりゃ気持ちがわからないわけじゃないけど、3話も引っ張られたら、さすがに嫌気が差してしまいます。あんなにキュートだった阿川さんも、なんだか憎たらしく見えてくる始末です。「感情論じゃどうしようもない」ということを視聴者に一度飲み込ませておいて、今さらそこをグチグチ言われても、ねえ……。

 

■急にアッパー素材が手に入りました

 

 一方、宮沢社長以上に陸王をあきらめられないのが、社長の息子・大地(山崎賢人)です。織物業者・タチバナラッセルの不義理によってアッパー素材の供給が止まることになって以来、一人であちこちの繊維業者、織物業者へ折衝に訪れては、門前払いされる日々。それでも、大地は陸王を作りたくて仕方ありません。初めて自分の人生に意味を与えてくれたのが陸王だった、ということは、ここまで丁寧に描写されているので、よくわかります。この人の行動は、信用できるんです。

 でも、この人はいつも結果が信用できないんだ。この日、アポを取って訪れたタテヤマ織物という会社で、担当者にドタキャンされ、受付で夕方まで待ち続けた大地。その姿をチラ見していたおじさんに会議室に招かれると、いきなり「お手伝いさせていただきます」とアッパー素材の提供を申し出られました。こはぜ屋の財務状況も、現状ソール材であるシルクレイを作る算段がないことも、説明したのかどうか知りませんが、「ある意味ブレイクスルーだ」と、実に物わかりのいいおじさん。社内で検討する必要もないそうです。なぜなら社長だから。しかも、サンプル材を持って帰ってみたら、タチバナ以上の優秀な素材なんだとか。もう、おとぎ話の世界です。

 大地は、1足分だけ残っている茂木モデルの陸王を作りたいといいます。茂木(竹内涼真)といえば、そもそも陸王プロジェクトのきっかけになった実業団選手。ケガこそ克服したものの、記録的には伸び悩んでいる様子。しかも、一度は陸王でサポート契約をしたのに、こはぜ屋の都合でご破算にしてしまった過去もある。まだ応援している気持ちを伝えたいから、陸王を1足作って贈りたいと。そのために、アッパー素材を探してきたのだと。

 あれー? と思ったんですよ。タチバナは確か、こはぜ屋との契約を切るときに「3月までは納品する」と言ってなかったっけと。結果、シルクレイ製造機が火を噴いたことで陸王の製造はストップしましたが、その時点で大量生産をかけているということは、タチバナからの納入も止まってないはず。現時点で「タチバナの素材の在庫がない」という状況があるとすれば、宮沢社長が「製造機がブッ壊れたから、もう素材は買えない。今あるものも返品する」とタチバナに申し出た以外には、あり得ないケースです。あれほど「裏切り者!」と面罵したタチバナに対して、そういう仕打ちをしているわけで、やっぱり信用できない人だよなぁとなってしまう。些末なことではあるんですが、会社と会社との契約云々で散々引き延ばされている中での出来事なので、どうしても気になってしまいました。

■村野さんも坂本さんも信用できなくなった

 

 ただ1足の陸王を茂木くんに納入するため、こはぜ屋はシューフィッター・村野さん(市川右團次)を呼び戻すことに。最初は「茂木を迷わすだけだ」と協力を固辞していた村野さんでしたが、飯山ちゃん(寺尾聰)に何か言われたら、あっさり翻意。出来上がった陸王を見て「1mmカカトを深くして!」とか指示を出したり「完璧です!」と感動してみたり、こちらもブレブレです。

 さらに、買収話を持ってきたベンチャーキャピタルの坂本ちゃん(風間俊介)も手落ちがひどい。宮沢社長が買収ではなく業務提携を模索することにした段になって初めて、これまでFelixに買収された企業がどうなったかを調べる有様です。それまで「買収は有益」「これしかない」「こはぜ屋を守れる」と言い続けてきた坂本ちゃん、実は何も調べてなかったことが露呈しました。坂本ちゃんの提案通り買収されてたら、あっという間に、こはぜ屋はなくなっていたということです。

 こうしたブレを、このドラマでは、セリフの“振り返しの一撃”で逆転させようとしています。誰かのひと言で誰かの心変わりを促し、説得力を生もうとしている。まだ物語の全容が見えていなかった序盤は、それも効果的だったんです。大地が、大橋さんが、あけみさんが、ギュッと力を込めて発するセリフのひとつひとつが、ドラマに大きな展開を与えていたし、そこに爽快感があった。

 でも、ここまで状況が煮詰まっている終盤では、セリフひとつで状況を逆転させる手法に無理が生じているように感じます。物語が、どんどんほころんでいくように見えるのです。

 

■唯一信用できる男・松岡修造

 

 そんな中、Felixの御園社長だけはブレていません。威風堂々とした振る舞いは迫力がありますし、妻の命を奪ったハリケーンの名前を社名にしたというエピソードもサイコっぽくて素敵です。業務提携を持ちかけられたときに「買収の方が簡単」と繰り返す様も、信念が感じられて実に信用できる。なぜ御園社長が信用できるかといえば、まだ出てきたばっかりでよくわからない人だからというだけなんですが、ともあれ『陸王』の最終盤を下支えする見事な配置ですし、松岡さんの演技も要求に十分応えていると感じます。

 ともあれ、次回は最終回。いろんなモヤモヤは忘れて、ただ画面に身を委ねたいと思います。いろいろ書いたけど、楽しんで見ていることだけは間違いないのですよ。ホントに。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

15.7%『陸王』ストーリー停滞、最終回直前で「こはぜ屋」の誰もが信用できなくなっていく……

 17日に放送された日曜劇場『陸王』(TBS系)最終回直前の第9話は25分の拡大版でした。視聴率は15.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調ではあるものの、ちょっと伸び悩みな感じです。

 そして視聴率以上に、お話は停滞しています。正直、第6話のニューイヤー駅伝のくだりから急激に進展しなくなった物語にイライラが募るばかりです。瞬間瞬間の画面の強さや俳優さんたちの芝居の良さはあるので、ドラマが出力を失ったわけではありません。だからこそ、フラフラしてる宮沢社長以下こはぜ屋の面々が信用できなくなっていくのがつらいところです。

 というわけで、振り返りましょう。

前回までのレビューはこちらから

 世界的スポーツメーカーFelixの御園社長(松岡修造)に買収話を持ちかけられ、「すぐにでも3億出資する」と言われてホイホイと固い握手をかわしてしまった宮沢社長(役所広司)でしたが、社内からは当然のように猛反発。さらに、銀行の融資担当・大橋さん(馬場徹)からも「(買収されれば)相手の思い通りにするしかなくなる」と諭され、再びフラフラと迷いだします。いわく「買収を受け入れて陸王を続けるか、足袋屋に戻るか」の選択肢しかないといい、「俺は陸王を続けたいんだ」と決意を述べます。

 もっとも強く反発しているのが、これまで宮沢社長に理解を示してきた縫製おばちゃん軍団のリーダー・あけみさん(阿川佐和子)でした。

「私が会社を売ることに賛成することは絶対にない、絶対にない」

 と、大切なことなので2回言ったりします。今回、こはぜ屋パートでは、このあけみさんを説得するだけで、フルに1時間半を使います。長いよ。

 そもそもこのドラマは、こはぜ屋という老舗足袋業者が「100年の暖簾」とやらを“もう守れない”という状況から始まっています。足袋の需要が減って、もうこのままでは先も長くない。だから新規事業を始めなければいけない。よし、「陸王」で頑張ろう。そういう話だったのに、最終回前の大詰めまで来て「足袋屋に戻る」ことへの逡巡が語られる。「足袋屋に戻る」ことは、ドラマの序盤で「イコール倒産」と、すでに定義されているはずなのに、社員がそれを求め、社長も迷う。そりゃ気持ちがわからないわけじゃないけど、3話も引っ張られたら、さすがに嫌気が差してしまいます。あんなにキュートだった阿川さんも、なんだか憎たらしく見えてくる始末です。「感情論じゃどうしようもない」ということを視聴者に一度飲み込ませておいて、今さらそこをグチグチ言われても、ねえ……。

 

■急にアッパー素材が手に入りました

 

 一方、宮沢社長以上に陸王をあきらめられないのが、社長の息子・大地(山崎賢人)です。織物業者・タチバナラッセルの不義理によってアッパー素材の供給が止まることになって以来、一人であちこちの繊維業者、織物業者へ折衝に訪れては、門前払いされる日々。それでも、大地は陸王を作りたくて仕方ありません。初めて自分の人生に意味を与えてくれたのが陸王だった、ということは、ここまで丁寧に描写されているので、よくわかります。この人の行動は、信用できるんです。

 でも、この人はいつも結果が信用できないんだ。この日、アポを取って訪れたタテヤマ織物という会社で、担当者にドタキャンされ、受付で夕方まで待ち続けた大地。その姿をチラ見していたおじさんに会議室に招かれると、いきなり「お手伝いさせていただきます」とアッパー素材の提供を申し出られました。こはぜ屋の財務状況も、現状ソール材であるシルクレイを作る算段がないことも、説明したのかどうか知りませんが、「ある意味ブレイクスルーだ」と、実に物わかりのいいおじさん。社内で検討する必要もないそうです。なぜなら社長だから。しかも、サンプル材を持って帰ってみたら、タチバナ以上の優秀な素材なんだとか。もう、おとぎ話の世界です。

 大地は、1足分だけ残っている茂木モデルの陸王を作りたいといいます。茂木(竹内涼真)といえば、そもそも陸王プロジェクトのきっかけになった実業団選手。ケガこそ克服したものの、記録的には伸び悩んでいる様子。しかも、一度は陸王でサポート契約をしたのに、こはぜ屋の都合でご破算にしてしまった過去もある。まだ応援している気持ちを伝えたいから、陸王を1足作って贈りたいと。そのために、アッパー素材を探してきたのだと。

 あれー? と思ったんですよ。タチバナは確か、こはぜ屋との契約を切るときに「3月までは納品する」と言ってなかったっけと。結果、シルクレイ製造機が火を噴いたことで陸王の製造はストップしましたが、その時点で大量生産をかけているということは、タチバナからの納入も止まってないはず。現時点で「タチバナの素材の在庫がない」という状況があるとすれば、宮沢社長が「製造機がブッ壊れたから、もう素材は買えない。今あるものも返品する」とタチバナに申し出た以外には、あり得ないケースです。あれほど「裏切り者!」と面罵したタチバナに対して、そういう仕打ちをしているわけで、やっぱり信用できない人だよなぁとなってしまう。些末なことではあるんですが、会社と会社との契約云々で散々引き延ばされている中での出来事なので、どうしても気になってしまいました。

■村野さんも坂本さんも信用できなくなった

 

 ただ1足の陸王を茂木くんに納入するため、こはぜ屋はシューフィッター・村野さん(市川右團次)を呼び戻すことに。最初は「茂木を迷わすだけだ」と協力を固辞していた村野さんでしたが、飯山ちゃん(寺尾聰)に何か言われたら、あっさり翻意。出来上がった陸王を見て「1mmカカトを深くして!」とか指示を出したり「完璧です!」と感動してみたり、こちらもブレブレです。

 さらに、買収話を持ってきたベンチャーキャピタルの坂本ちゃん(風間俊介)も手落ちがひどい。宮沢社長が買収ではなく業務提携を模索することにした段になって初めて、これまでFelixに買収された企業がどうなったかを調べる有様です。それまで「買収は有益」「これしかない」「こはぜ屋を守れる」と言い続けてきた坂本ちゃん、実は何も調べてなかったことが露呈しました。坂本ちゃんの提案通り買収されてたら、あっという間に、こはぜ屋はなくなっていたということです。

 こうしたブレを、このドラマでは、セリフの“振り返しの一撃”で逆転させようとしています。誰かのひと言で誰かの心変わりを促し、説得力を生もうとしている。まだ物語の全容が見えていなかった序盤は、それも効果的だったんです。大地が、大橋さんが、あけみさんが、ギュッと力を込めて発するセリフのひとつひとつが、ドラマに大きな展開を与えていたし、そこに爽快感があった。

 でも、ここまで状況が煮詰まっている終盤では、セリフひとつで状況を逆転させる手法に無理が生じているように感じます。物語が、どんどんほころんでいくように見えるのです。

 

■唯一信用できる男・松岡修造

 

 そんな中、Felixの御園社長だけはブレていません。威風堂々とした振る舞いは迫力がありますし、妻の命を奪ったハリケーンの名前を社名にしたというエピソードもサイコっぽくて素敵です。業務提携を持ちかけられたときに「買収の方が簡単」と繰り返す様も、信念が感じられて実に信用できる。なぜ御園社長が信用できるかといえば、まだ出てきたばっかりでよくわからない人だからというだけなんですが、ともあれ『陸王』の最終盤を下支えする見事な配置ですし、松岡さんの演技も要求に十分応えていると感じます。

 ともあれ、次回は最終回。いろんなモヤモヤは忘れて、ただ画面に身を委ねたいと思います。いろいろ書いたけど、楽しんで見ていることだけは間違いないのですよ。ホントに。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

過去最高17.5%! TBS『陸王』好調と相反する“物語の停滞、引き伸ばし”がストレスに……

 日曜劇場『陸王』(TBS系)も第8話。視聴率は17.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と過去最高を記録。2話を残してラストスパートといったところでしょうか。

 今回は、クライマックスのキーマン・御園社長役に大抜擢された松岡修造に大注目でしたが、ずいぶんと引き延ばされたなーという印象でした。というわけで、とりあえず振り返りましょう。

前回までのレビューはこちらから

 奇跡のソール素材・シルクレイの製造機がぶっ壊れたことで、こはぜ屋・宮沢社長(役所広司)が進めてきた新マラソンシューズ「陸王」の開発は完全に行き詰まりました。新たに製造機を作るには1億円の設備投資が必要ですが、そんな融資をしてくれる銀行はひとつもありません。

 そんな折、銀行からベンチャーキャピタルに転職した坂本ちゃん(風間俊介)が、こはぜ屋への買収話を持ってきました。坂本ちゃんといえば、「チーム陸王」の一員としてさまざま尽力してきてくれた人物。そもそも、こはぜ屋に新規事業を提案したのも、シルクレイを見つけてきてくれたのも坂本ちゃんです。坂本ちゃんの存在なくしては、この物語は始まってすらいないのです。『陸王』の中で、坂本ちゃんこそ「神の使い」「大いなる導き手」として、ここまで描かれてきました。

 だからこそ、買収話が持ち込まれたときに、坂本ちゃんを「冗談じゃない!」「必要ない!」と面罵する宮沢社長が、なんだかひどくみっともない人物に見えてしまった。「今回ばかりは坂本ちゃん見損なったよ」と社員に向かって吐き捨てる宮沢社長を、今回ばかりは見損なってしまいました。

 まあ『陸王』というドラマは、そもそもそういう設計なんです。宮沢社長は誰かにそそのかされてお熱を上げ、物事が思い通りに進まなければ酒を飲んで家族や取引先に当たり散らし、誰かが手を貸してくれなければ何も解決できないのに、解決できたら、まるで自分の手柄みたいにニッコニコになる。人と人とのつながりが仕事を成功に導く、といえば耳触りはいいもんですが、要するに他力本願、我田引水の神風主義。そういう男なんです。と、ここまで楽しんできたドラマの主人公を貶めたくなるほど、みっともなかったんですよねえ、坂本ちゃんに対する宮沢社長の態度って。

 

■駅伝大会出場の意味も見出せず

 

 とりあえずなんの解決案もないまま陸王への未練に溺れ、うじうじしている宮沢社長。「行田市民駅伝大会」などにうつつを抜かしているうちに心変わりし、買収を持ちかけてきた世界的スポーツメーカー・Felixの御園社長と会ってみることにしました。今回、ほぼ大半の時間を使って、この心変わりまでが描かれます。実に白々しく、間延びした展開です。

 そうして宮沢社長がうじうじしている間に、実害が出始めます。陸王のサポート契約が消滅した茂木くん(竹内涼真)は大事なレースにミズノの市販品で挑まざるを得ず、一度、陸王によって矯正したフォームが崩れ、大惨敗。一度は見捨てられた大手メーカー・アトランティスから再度サポートの打診を受けますが、意固地になって拒否したりしています。

 一度はみんなの心を動かした宮沢社長の情熱、その「陸王」という夢に縛られて、今度はみんなが不幸になろうとしている。役所広司の芝居が達者すぎることもあって、本当にフラストレーションのたまる回でした。池井戸ドラマといえば、毎回訪れる爽快感こそが魅力なんですが、今回は爽快感ゼロ。リトグリちゃんの「Jupiter」も鳴りません。制作側からしても、ゴリ押ししたい感動ポイントがなかったということです。

 

■満を持して、松岡修造です

 

 なんのかんので、ようやくFelix御園と会うことにした宮沢社長。満を持して、松岡修造の登場です。大物が来るぞ、という重々しいBGMとともに、会議室に御園が入ってきます。

 まず、風格! デカいし、顔が美しくて、目が強い。さすが、混じりっけなしの超絶ボンボンでありながら、テニスという実力社会に飛び込んで結果を残してきただけのことはあります。存在感として、役所広司にまるで引けを取りません。

 そして、演技もわりと自然! 「先じちゅは坂本さんを通して~」とか「御社の技じゅちゅ力です」とか、「つ」の発音が多少アレなことに目をつぶれば、実に堂々とした役者ぶりでした。よくよく考えてみれば、ドラマ初出演とはいえCMではさんざんお芝居してますし、なんかあの“熱血キャラ”だって芝居といえば芝居だろうし、これくらい出来て当たり前なんでしょうけど、この大詰めで松岡さんを持ってきたのはナイスキャスティングだったと思います。

 その御園社長、買収しても、こはぜ屋の名前は残していいといいます。足袋屋も続けていいし、宮沢が社長を続けてもいい。壊れちゃったシルクレイ製造機の新規調達に、3億円の資金を用意する。Felixのマーケティング力をもってすれば、これまで以上に「こはぜ屋」ブランドを広めていくこともできる。まあ、だいたい坂本ちゃんが最初に宮沢社長に相談に来たときに話していたことと同じです。

「宮沢社長、一緒にやりましょう」

 そう言って握手を求める御園の手を、あっさり握り返す宮沢社長。なんなんだよ、って感じですが、まあようやく、2話にわたって停滞していた話が進みましたので、よかったです。

 宮沢社長が帰った後、「あと一押しだな」と言ってニヤリと笑う松岡修造も、実に怪しげで素敵でした。

 あと2話、いよいよ宮沢社長のことが全然信用できなくなってしまったのと、なんだかんだでここまでで一番盛り上がったのが、話の筋に全然関係ない“平瀬(和田正人)の引退レース”だったことが心配ではありますが、あの異様な盛り上がりを超えることができるのかどうか、見守りたいと思います。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

過去最高17.5%! TBS『陸王』好調と相反する“物語の停滞、引き伸ばし”がストレスに……

 日曜劇場『陸王』(TBS系)も第8話。視聴率は17.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と過去最高を記録。2話を残してラストスパートといったところでしょうか。

 今回は、クライマックスのキーマン・御園社長役に大抜擢された松岡修造に大注目でしたが、ずいぶんと引き延ばされたなーという印象でした。というわけで、とりあえず振り返りましょう。

前回までのレビューはこちらから

 奇跡のソール素材・シルクレイの製造機がぶっ壊れたことで、こはぜ屋・宮沢社長(役所広司)が進めてきた新マラソンシューズ「陸王」の開発は完全に行き詰まりました。新たに製造機を作るには1億円の設備投資が必要ですが、そんな融資をしてくれる銀行はひとつもありません。

 そんな折、銀行からベンチャーキャピタルに転職した坂本ちゃん(風間俊介)が、こはぜ屋への買収話を持ってきました。坂本ちゃんといえば、「チーム陸王」の一員としてさまざま尽力してきてくれた人物。そもそも、こはぜ屋に新規事業を提案したのも、シルクレイを見つけてきてくれたのも坂本ちゃんです。坂本ちゃんの存在なくしては、この物語は始まってすらいないのです。『陸王』の中で、坂本ちゃんこそ「神の使い」「大いなる導き手」として、ここまで描かれてきました。

 だからこそ、買収話が持ち込まれたときに、坂本ちゃんを「冗談じゃない!」「必要ない!」と面罵する宮沢社長が、なんだかひどくみっともない人物に見えてしまった。「今回ばかりは坂本ちゃん見損なったよ」と社員に向かって吐き捨てる宮沢社長を、今回ばかりは見損なってしまいました。

 まあ『陸王』というドラマは、そもそもそういう設計なんです。宮沢社長は誰かにそそのかされてお熱を上げ、物事が思い通りに進まなければ酒を飲んで家族や取引先に当たり散らし、誰かが手を貸してくれなければ何も解決できないのに、解決できたら、まるで自分の手柄みたいにニッコニコになる。人と人とのつながりが仕事を成功に導く、といえば耳触りはいいもんですが、要するに他力本願、我田引水の神風主義。そういう男なんです。と、ここまで楽しんできたドラマの主人公を貶めたくなるほど、みっともなかったんですよねえ、坂本ちゃんに対する宮沢社長の態度って。

 

■駅伝大会出場の意味も見出せず

 

 とりあえずなんの解決案もないまま陸王への未練に溺れ、うじうじしている宮沢社長。「行田市民駅伝大会」などにうつつを抜かしているうちに心変わりし、買収を持ちかけてきた世界的スポーツメーカー・Felixの御園社長と会ってみることにしました。今回、ほぼ大半の時間を使って、この心変わりまでが描かれます。実に白々しく、間延びした展開です。

 そうして宮沢社長がうじうじしている間に、実害が出始めます。陸王のサポート契約が消滅した茂木くん(竹内涼真)は大事なレースにミズノの市販品で挑まざるを得ず、一度、陸王によって矯正したフォームが崩れ、大惨敗。一度は見捨てられた大手メーカー・アトランティスから再度サポートの打診を受けますが、意固地になって拒否したりしています。

 一度はみんなの心を動かした宮沢社長の情熱、その「陸王」という夢に縛られて、今度はみんなが不幸になろうとしている。役所広司の芝居が達者すぎることもあって、本当にフラストレーションのたまる回でした。池井戸ドラマといえば、毎回訪れる爽快感こそが魅力なんですが、今回は爽快感ゼロ。リトグリちゃんの「Jupiter」も鳴りません。制作側からしても、ゴリ押ししたい感動ポイントがなかったということです。

 

■満を持して、松岡修造です

 

 なんのかんので、ようやくFelix御園と会うことにした宮沢社長。満を持して、松岡修造の登場です。大物が来るぞ、という重々しいBGMとともに、会議室に御園が入ってきます。

 まず、風格! デカいし、顔が美しくて、目が強い。さすが、混じりっけなしの超絶ボンボンでありながら、テニスという実力社会に飛び込んで結果を残してきただけのことはあります。存在感として、役所広司にまるで引けを取りません。

 そして、演技もわりと自然! 「先じちゅは坂本さんを通して~」とか「御社の技じゅちゅ力です」とか、「つ」の発音が多少アレなことに目をつぶれば、実に堂々とした役者ぶりでした。よくよく考えてみれば、ドラマ初出演とはいえCMではさんざんお芝居してますし、なんかあの“熱血キャラ”だって芝居といえば芝居だろうし、これくらい出来て当たり前なんでしょうけど、この大詰めで松岡さんを持ってきたのはナイスキャスティングだったと思います。

 その御園社長、買収しても、こはぜ屋の名前は残していいといいます。足袋屋も続けていいし、宮沢が社長を続けてもいい。壊れちゃったシルクレイ製造機の新規調達に、3億円の資金を用意する。Felixのマーケティング力をもってすれば、これまで以上に「こはぜ屋」ブランドを広めていくこともできる。まあ、だいたい坂本ちゃんが最初に宮沢社長に相談に来たときに話していたことと同じです。

「宮沢社長、一緒にやりましょう」

 そう言って握手を求める御園の手を、あっさり握り返す宮沢社長。なんなんだよ、って感じですが、まあようやく、2話にわたって停滞していた話が進みましたので、よかったです。

 宮沢社長が帰った後、「あと一押しだな」と言ってニヤリと笑う松岡修造も、実に怪しげで素敵でした。

 あと2話、いよいよ宮沢社長のことが全然信用できなくなってしまったのと、なんだかんだでここまでで一番盛り上がったのが、話の筋に全然関係ない“平瀬(和田正人)の引退レース”だったことが心配ではありますが、あの異様な盛り上がりを超えることができるのかどうか、見守りたいと思います。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

M-1の裏で強さ見せた『陸王』と“リアルこはぜ屋”を特集した『ガイアの夜明け』を見比べる

 日曜劇場『陸王』(TBS系)第7話の視聴率は14.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、前回より1.7ポイントの大幅ダウン。とはいえ、裏では言わずと知れた『M-1グランプリ2017』(テレビ朝日系)が平均15.4%も取ってますし、『陸王』が放送されていた21時台の『M-1』は、まさしく佳境でしたので、大健闘だと思います。

 というわけで、今回も振り返りです。

前回までのレビューはこちらから

 

■そして、ふりだしに戻る

 

 前回、ニューイヤー駅伝で陸王を履き、激走を見せた茂木くん(竹内涼真)でしたが、世間の反応は冷たいもの。ライバル・毛塚(佐野岳)の体調不良ばかりが取りざたされ、正当な評価を受けることができません。

 茂木くんの活躍で陸王のヒットを確信し、量産に入った「こはぜ屋」の宮沢社長(役所広司)の目算も大外れ。たいして売れない上に、大手メーカー・アトランティスの看板商品「RII(アール・ツー)」より圧倒的に性能がいいことがバレてしまい、アトランティスから妨害を受けてしまうことに。せっかく見つけたアッパー素材の提供元「タチバナラッセル」はアトランティスに札束で頬を叩かれ、こはぜ屋との契約を打ち切ると言い出しました。

 到底受け入れられない宮沢社長ですが、タチバナラッセル・橘社長(木村祐一)も創業3年の新興企業ゆえ背に腹は代えられず、こはぜ屋はアッパー素材をイチから探さなければならなくなりました。宮沢社長の長男・大地(山崎賢人)こそ「俺が探す!」と頼もしいことを言ってくれますが、難儀しそうです。

 そんな折、こはぜ屋の開発室が緊急事態に。陸王に絶対必要な革命的ソール材・シルクレイの製造機が火を噴いていました。幸い、ボヤで済んだものの、機械を持ち込んで顧問を務めていた飯山さん(寺尾聰)いわく「ダメだ、こいつはもうただの鉄くずだ」状態。試作段階の機械を騙し騙し使ってきたツケが、ここにきて出てしまったようです。製造機を作り直すには、1億円かかるとか。

 アッパーもない、ソールもない。つまり、何もない。当然、金もない。開発はふりだしに戻ってしまいました。宮沢社長に残されたのは、陸王への未練と、厳しい経営判断を下さなければならない状況だけ。もう陸王の開発はあきらめて、ただの足袋屋に戻るしかなさそうです。

 

■村野さん、ブチ切れる

 

 これに業を煮やしたのが、陸王企画に賛同し、こはぜ屋と運命を共にすることを決めたカリスマシューフィッター・村野さん(市川右團次)。徹底的に選手に寄り添うことをモットーとする村野さんは、「陸王を、茂木を見捨てるのか」と宮沢社長に迫ります。

「あいつらは命をかけて走ってるんですよ」

「生きるか死ぬかの戦いをしているんだ」

「安易にシューズなんか提供すべきじゃない」

「陸上競技者への冒涜だ」

 厳しい言葉を残して、村野さんはこはぜ屋を去っていきます。

 そして、命をかけて走っている側の茂木くんにも屈辱が訪れます。以前、一度ドタキャンされた雑誌「月刊アスリート」からの取材依頼を、陸王の宣伝になるなら、と受けた茂木くん。「茂木特集」のつもりで、取材では必死に陸王の良さをアピールしますが、実際に掲載されたのは「毛塚とそのライバルたち」の1カコミ記事。言ってもいない、毛塚に都合のいいコメントだけが掲載され、もちろん陸王の宣伝もゼロ。それどころか、この企画全体が毛塚に「RII」を提供しているアトランティスのタイアップだったようです。

 茂木くんは猛然と、城戸監督(音尾琢真)に「抗議したい」と訴えますが、「気に食わないなら走りで見せるしかない」「死ぬ気で走れ」とたしなめられます。もう陸王は、二度と提供されないというのに! かわいそう!

 

■シルクレイ飯山には天啓が

 

 そんなこんなで、こはぜ屋と茂木くんが絶望的な状況に陥る中、シルクレイの特許を持っている飯山さんには天啓が訪れます。世界的な新興スポーツメーカー「Felix」から、特許の独占使用契約を結びたいとの申し入れがあったのです。条件は年間6,000万円。

 ここで、こはぜ屋を切れば、飯山さんには大金が転がり込むことに。もともと飯山さんは、こういう状況を見越して、自分の会社を潰してまでシルクレイの開発に打ち込んできた経緯があります。まさに、渡りに船。マリアナ海溝に豪華客船。乗らない理由はないはずですが、どうやら奥さんともども逡巡しているようです。嘘みたいに義理堅い男です。金に転んだタチバナラッセルの立場がありません。

 

■決められない男・宮沢

 

 金に転ぼうとしているのは、こはぜ屋の宮沢社長も同じです。陸王への未練は断ち切りがたいが、金策の手段は尽きた。1億円なんて銀行は貸してくれないし、そもそも借りたって返せるあてはない。経営者として、決断の時は迫っています。金に転んだタチバナラッセルを「裏切り者!」と断罪した宮沢社長もまた、経営者として村野さんや茂木くんを裏切ろうとしている。今回の役所広司、ほぼ全編にわたって半泣きです。

 しかし、銀行を辞めてベンチャーキャピタルに転職することにしたスーパー銀行マン・坂本っちゃん(風間俊介)にド正面から「あなたはどうしたいんですか?」と詰められ、この状況でも大地がアッパー素材探しに奔走していることを知ると、覚悟を決めることにしました。

「やれるだけやって、それでもどうしてもダメだったときは、自分の意志で、ちゃんと決断してあきらめたい」

 大見得を切った宮沢社長の言葉を受け、飯山さんはFelixとの契約を断ることにしました。

 前を向いた、宮沢社長と、こはぜ屋。今回はたっぷり時間をかけてこの葛藤だけが描かれましたが、最後の最後に一縷の望みがもたらされます。

 VCに転職した坂本っちゃんが持ってきたのは、こはぜ屋の買収話でした。

「会社を、売りませんか?」

 なんとその買収先は、飯山さんが契約を断ったFelixでした。特許の独占ができないなら、会社ごと買ってしまえという、いかにもグローバル企業らしいダイナミックなやり方です。ずんずんずんずんと空港に降り立ったFelixの社長・御園(松岡修造)が大写しになったところで、今回はここまで。「月刊TVガイド」(東京ニュース通信社)の情報によれば、最終回は12月24日の第10話になりそうです。

 原作では、ここから先は松岡修造演じる御園が、物語を大きく左右することになります。役所広司と松岡修造の演技合戦が盛り上がりのカギになるということです。次回予告を見た限り、背が高くて顔がハンサムで、なんとなくカリスマ性を感じさせる松岡修造の立ち姿は、御園にぴったりだと思いました。それにしても、クライマックスへのキーマンを演技未経験の元テニス選手を、しかもお茶の間に浸透しているイメージとは真逆の冷徹で知的なキャラクターとしてブッキングする『陸王』のチャレンジ精神には感服します。おそらくは、勝算があってのことでしょう。ちょっと小難しい話にもなっていくので、松岡さんの熱演に期待したいです。

 

■もうひとつの“ただの足袋屋”の物語

 

 ところで、先月28日の『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)は、「“陸の王者”を目指せ!」と題して、マラソンシューズの開発に乗り出した老舗の足袋屋が特集されていました。番組内では『陸王』の名前も出ませんし、ドラマのモデルだと公言もしていませんが、原作執筆の際に池井戸潤さんが取材に訪れたことで知られる「きねや足袋」という会社です。

 今回の『陸王』で、宮沢社長は「シルクレイがなければただの足袋屋に逆戻りです」と言っていますが、シルクレイはご存じのように架空の素材。つまり、「シルクレイがない、ただの足袋屋」が、どのようにマラソンシューズ開発に取り組んでいるのかが丁寧な取材で語られました。

 シルクレイもない、特別なアッパー素材もない。あるのは技術と創意と情熱だけ。役所広司よりだいぶ若い40歳のイケメン社長が、あの「Nike」(これも実名で登場)に挑む姿も、それはそれで胸に迫るものがありましたよ。今回、ドラマの大半でうじうじしてた宮沢社長を見るにつけ、きねやみたいにしっかりせえ! と思いました。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

『陸王』が持つドラマとしての強さ──和田正人と吉木りさの結婚発表も“計算済み”か!?

 日曜劇場『陸王』(TBS系)は第6話も視聴率16.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調キープ。というわけで、さっさと振り返りましょうね。泣いてしまいましたよ。

前回までのレビューはこちらから

 前回、第5話の90分拡大版には数多くのエピソードが含まれていましたが、今回は大筋で2つ。はっきりと前後半に分かれる構成でした。

 前半では、ついに「陸王」を履いてレースに臨むことになった茂木くん(竹内涼真)が出場する「ニューイヤー駅伝」の様子が描かれます。茂木くんにとってこのレースはケガで途中リタイアした豊橋国際マラソン以来の復帰戦となります。茂木くんにとっても、茂木くんのケガを目の当たりにしたことで「陸王」の開発を決意した主人公・宮沢社長(役所広司)が率いる足袋業者・こはぜ屋にとっても、ひとつの“到達点”となるレースです。

 なので、ここまで登場してきた人物たちが「ニューイヤー駅伝」が行われた群馬に、一堂に会しています。まさに『陸王』オールスター状態。さらに、大観衆として7,000人のエキストラも。

 宮沢社長と息子・大地(山崎賢人)は、大手メーカー・アトランティスとケンカ別れしたカリスマシューフィッター・村野さん(市川右團次)とともに巨大モニター前に陣取ります。事あるごとに助言してくれるスポーツショップの有村さん(光石研)が、陸王のソール材「シルクレイ」開発者で先週暴漢にボコられたばかりの飯山さん(寺尾聰)を連れてやってきました。

 実際に「陸王」を縫っていた縫製おばちゃんたちは、3時間も前から茂木くんが走る6区のスタート地点で、横断幕を用意して待っています。リーダー・あけみさん(阿川佐和子)は今日も元気でかわゆいです。

 憎まれ役がすっかり板についてきたアトランティスの小原(ピエール瀧)と佐山(小籔千豊)も、ご自慢の最新鋭シューズ「RII(アール・ツー)」を携えて憎たらしい顔をしています。今レースでRIIを履く主な選手は、茂木くんの同僚で「ダイワ食品」のエース格・立原(宇野けんたろう)と、茂木くんと同じ6区を走る永遠のライバル・毛塚(佐野岳)です。茂木くんがケガをしている間に、毛塚はすっかり日本中の注目を集めるランナーに成長。レース前、茂木くんが陸王を履いているのを見つけると、「ふっふふふっ、勝つ気あんの?」と小バカにしてくるなど、レースへの機運は自ずと高まってきました。

 

■茂木くん、チーターになる

 

 6区。8位でタスキを受け取る瞬間までの茂木くんの様子が、まずは丹念に描かれます。テンションを上げるでもなく、真摯で、覚悟を決めた男の顔。静かに燃えるアスリートの闘志。毛塚の挑発にも、心を乱されることはありません。その心中を、倒産経験者の飯山さんが代弁します。

「緊張もしてるだろうが、今のアイツには、それ以上に感じるものがあるはずだ。また走れる喜びだ。俺がそうだった──」

 この飯山さんのセリフによって、茂木くんとこはぜ屋一同の思いがひとつになります。こういうとこなんだろうなーと思うんですよね。視聴者が何に感動すればいいかを、ちゃんと丁寧にセリフで説明してくれるから、万人にとって見やすいドラマになってる。その丁寧さの際たるものがリトグリちゃんの「Jupiter」を流すタイミングで、「はい、今週はここですよ!」と教えてくれるわけです。まあ、この歌については賛否両論のようですけど、間口を広げようという作り手側の意図は、すごく理解できるところで。

 で、8位でタスキを受けた茂木くんは、快走を見せます。解説者も「神がかってますね」「魔法にかかった走りです」「チーターですよ」と興奮を隠せない走りで次々に先行ランナーをかわすと、いよいよ3位を走る毛塚との一騎打ちとなります。

 エキストラに囲まれたコーナーから、まずは毛塚が姿を見せます。その瞬間、映像はスローモーションに、アウトフォーカスの向こうに茂木が姿を見せる。毛塚も思わず振り返る。BGMがかき鳴らされ、7,000人のエキストラがエキサイトする中、強い風が吹いている。茂木は毛塚のスリップストリームに入り、毛塚が突風にバランスを失ったスキに、一気に抜き去っていきます。

 結果、茂木は6区の区間賞を獲得。完全復活を果たすとともに、陸王が優れたシューズであることを証明して見せました。こはぜ屋一同も、もちろん大喜び。でも、ここで「Jupiter」は鳴らないんです。

 

■オールスター戦なのに、主役は番手の低い2人でした

 

 ここまでの総決算となるニューイヤー駅伝で、中盤のクライマックスで、主役となったのは、陸王もアトランティスも履いていない、主人公たちにまったく関係のない2人の男でした。

 ダイワ食品のアンカーは、このレースでの引退を決めている平瀬(和田正人)。平瀬が、泣きながら激走を見せます。

 その様子を見ていたのが、ダイワの城戸監督(音尾琢真)でした。この人、登場からずっと必要以上に怖い、物わかりのよくない人物として描かれてきました。宮沢社長も、何度冷たくあしらわれたかわからない。

 その城戸が、平瀬の走りを見てブチ切れているんです。

「あんなオーバーペースで、バテるに決まっとろうが!」

 そして、涙を流しているのです。このギャップ! 一気に、城戸監督という人物の心の中が、爆発的に表現される瞬間。ここぞとばかりに「Jupiter」。泣いちゃうよねえ~。泣いちゃうよ。『水曜どうでしょう』(HTB)では、ろくに顔も出さず釣りだけしていた音尾くんの顔面に泣かされることになるとは……。

 それにしても、ここまで平瀬のエピソードに比重が置かれたことには意表を突かれました。「ひとりのランナーの引退レース」という設定が内包する訴求力を、加工せず生のまま投げつけられたような、筋を追うだけではない「ドラマとしての強さ」を意識した作劇だったと思います。

 和田正人と吉木りさの結婚発表も、おそらくは展開に配慮した(もしくはドラマが求めた)タイミングだったのではないでしょうか。第6話で最大の見せ場を和田さんに設定しておいて、その直前に芸能ニュースで和田さんの顔をお茶の間に浸透させた……というのは、ちょっとうがちすぎかな。

 

■後半ではアトランティスの逆襲が

 

 長くなったので後半はさくっといきましょう。

 茂木くんの快走で調子に乗った宮沢社長は「陸王」を製品化しますが、しょせんはマイナーブランドですので、売れ行きはよくありません。

 そんな中、いよいよ陸王がホンモノだと判断したアトランティス・小原は、そのアッパー素材の調達先であるベンチャー企業「タチバナラッセル」の橘社長(木村祐一)に大量ロットの発注をかけ、こはぜ屋との取引中止を迫りました。橘社長も、背に腹はかえられず、アトランティスと契約することに。

 こはぜ屋はアッパー素材の供給元を失い、またまたピンチです。来週から登場するという松岡修造は、果たして敵か味方か。というか、松岡さんが演じる御園って、けっこう難役だと思うんですが、大丈夫なのか。うーん、目が離せません。
(文=どらまっ子AKIちゃん)