綾瀬はるか最強説を証明した『奥様は、取り扱い注意』稀代のコメディエンヌの“3つの才能”

 いよいよ次回で最終回となる『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)。

『GO』(講談社)で直木賞を受賞した小説家・金城一紀が脚本を手掛けている本作は、かつて某国の諜報機関に属しており、今は主婦として暮らしている伊佐山菜美(綾瀬はるか)が、町内で起きる難事件を次々と解決していくというドラマだ。

『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系)等のハードな刑事モノを得意とする金城が、水曜ドラマ(日本テレビ系夜10時枠)という働く女性や母親を主人公にした女性向け作品を中心とするドラマ枠で書くと知った時は驚いた。

 しかしいざ、蓋を開けてみると面白く、パヤパヤッティーヤというおしゃれなスキャットの劇伴に象徴されるようなライトなコメディとして見せようとする演出と、女性差別に苦しむ女たちがクズ男たちに戦いを挑むというハードな脚本がケミストリーを生み出しており、水曜ドラマと金城一紀どちらにとっても幸福な新境地となっている。

 普通に考えたらミスマッチ極まりない本作が成功した最大の功績は、なんと言っても主演の綾瀬はるかの、すべてを呑み込む包容力にあることは間違いないだろう。

 主婦でありながら格闘術に長けて、実は亡国の諜報部員だったというめちゃくちゃな設定もコメディエンヌでありながらアクション女優としても活躍する綾瀬だからこそ可能なことだと言える。何よりあのアルカイックスマイルが、某国に雇われた特殊工作員という過去を持つ伊佐山菜美という人物像に説得力を与えている。これは綾瀬はるかにしか演じられない難役である。

 綾瀬はるかは出演作を立て続けにヒットさせてきた、今のテレビドラマを牽引する人気女優の一人である。

 15歳の時に第25回ホリプロスカウトキャラバンに応募して、審査員特別賞を受賞した綾瀬は、広島から芸能活動するために上京する。グラビアアイドルとして活躍する傍ら、『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)や『僕の生きる道』(フジテレビ系)といったドラマに出演するようになり、人気が広がっていく。

 そして当時大人気だった純愛小説をドラマ化した『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系)で難病のヒロインを演じる。劇中では白血病治療の副作用で脱毛症になってしまうためスキンヘッドになるという場面もあったのだが、綾瀬は見事に演じ、若手人気女優の仲間入りをする。

 これ以降、『白夜行』や『仁-JIN-』(ともにTBS系)といったドラマで、少し影のある日本的な美女を演じていき、20代後半になるとコメディエンヌとしての才能を発揮し、水曜ドラマの常連となり『ホタルノヒカリ』シリーズや『きょうは会社休みます。』に出演。ドラマ女優として不動の地位を確立する。

 どちらの作品でも、仕事はできるが恋愛面では奥手という女性を綾瀬は演じている。ともすれば痛々しくて見てられないキャラクターだが、綾瀬が演じると、途端に上品でかわいいキャラクターになるのが、彼女のコメディエンヌとしての圧倒的なセンスだろう。

『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)等のトークバラエティ番組にも出演する綾瀬だが、その時は、司会者を驚かせるような天然ボケを連発する。ゲストとしては対応に困るが、女性としてはめちゃくちゃ魅力的な振る舞いで、その姿は女優としてストイックに打ち込む姿からは想像できない面白さであると同時に、仕事はできるがプライベートはてんでダメという、過去に綾瀬が演じてきたヒロインたちの姿とも重なる。

 近年ではアクション女優としての才能も開花させており、先日は綾瀬が主演を務める大河ファンタジー『精霊の守り人』(NHK)シリーズの最終章(『精霊の守り人 最終章』)の放送がNHK土曜夜9時枠でスタートした。

 本作で綾瀬は短槍使いの用心棒・バルサを演じており、劇中では激しいアクションもおこなっている。『精霊の守り人』シリーズは3年にわたって断続的に続いているロングシリーズだが、初期作から最新作を続けて見ると綾瀬のアクションがみるみる洗練されていっているのがわかる。

 映画『僕の彼女はサイボーグ』や、大河ドラマ『八重の桜』(NHK)でも、その才能の片鱗をみせていたが、いよいよアクション女優としても本領を発揮し始めたと言えよう。

『奥様は、取扱い注意』の伊佐山菜美は、そんな綾瀬はるかの個性がすべて内包された役で、一見荒唐無稽な設定に見えながらも、ヒロインに妙な説得力があるのはそのためだろう。

 ヒューマンドラマで見せる古き良き日本人女性的な影のある芝居と、水曜ドラマでみせるコメディエンヌとしてのセンス。そして、ハードなアクションもこなせるという女優としての才能を3つも綾瀬は持っている。いや、デビュー当初から変わらないグラマラスな肉体が醸し出す健康な色気も含めれば四つだろうか。これだけの武器を兼ね備えているのだから、綾瀬が現時点で最強の女優であることは間違いないだろう。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

 

良質なNHKジュブナイル『アシガール』を輝かせる女優・黒島結菜の存在感

 若者向けに作られたジュブナイルドラマが好きだ。

 若手俳優を中心としたジュブナイルドラマには、コメディタッチのラブコメや、SFやファンタジーのような荒唐無稽なシチュエーションの作品が多い。大人の視聴者からはチープな作品だと低く見られがちだが、だからこそ描ける初々しい物語がそこにはあり、初恋の思い出のような甘酸っぱい気持ちを思い出させてくれる。

 近年はテレビの視聴者自体が高齢化していることもあってか、10代向け作品はなかなか作られなくなっているが、現在、NHK総合で土曜日の夜6時5分から放送されている『アシガール』は、久々にジュブナイル感のある甘酸っぱいドラマである。脚本は2000年に傑作ジュブナイルドラマ『六番目の小夜子』(NHK総合)を執筆した宮村優子。

『ごくせん』(集英社)などで知られる森本梢子の少女漫画を原作とする本作は、戦国時代にタイムスリップした女子高生・速川唯(黒島結菜)がイケメンの若君・羽木九八郎忠清(健太郎)に一目惚れして、若君のために孤軍奮闘するというという物語。

 引きこもりの弟が作ったタイムマシーンで戦国時代に向かうというシチュエーションこそコミカルで、一見すると若者向けのチープなラブコメに見えるものの、戦国時代の合戦の描写やタイムトラベルを用いたSF的な設定の見せ方などは、実に丁寧に作り込まれている。

 特に戦国時代の美術背景はしっかりしていて、そこは流石、NHKである。

 何より、戦国時代を舞台である以上、戦で人が死ぬという残酷な現実から目をそらしていないのが素晴らしい。

 第6話では、唯が大ケガをした若君を現代にタイムスリップさせることで治療をして、弟と若君が現代の生活を満喫して親睦を深めるという、ほっこりする場面も描かれた。

 コミカルなところはコミカルだが、シリアスなところはしっかり押さえてある。こういうドラマこそ10代の若い視聴者に見て欲しいと思える作品だ。

 何より、本作の魅力を何倍にも輝かせているのが、主演の黒島結菜の圧倒的な存在感だろう。

 本作で黒島が演じる唯は、陸上部に所属する体育会系の女子高生で、日焼けしていて、前髪を下ろしていることもあってか、見た目は少年のようだ。

 タイムスリップしてからも、女子と気づかれずに足軽たちの中に紛れ込み、劇中では唯之助という男性に扮して、若君に近づき健気に支えようとする。

 戦国時代の荒野を歩く場面から始まるので、顔は泥だらけなのだが、こういう汚い格好が黒島にはよく似合う。

 黒島は、15年にNHK広島放送局で制作された『一番電車が走った』では、原子爆弾投下に遭遇する少女を演じていた。

 極限状態の中で、髪も服もボロボロに汚れていた彼女が最後に解放されて、行水をする姿は神々しいものがあった。

 本作でも薄汚れた男の子のような姿と、ふとした瞬間に見せる女の子らしい華奢な振る舞いのギャップが黒島の魅力を倍増させており、単純なかわいらしさや綺麗さだけではない「生命力の強さ」そのものを演技で表現できることこそ、彼女の魅力だろう。

 テレビドラマ好きの間で、黒島に注目が集まったのは14年。当時は『アオイホノオ』(テレビ東京系)や『ごめんね青春!』(TBS系)といったドラマに脇役として出演しており、その存在感に釘付けとなった。

 彼女は沖縄出身で同郷の満島ひかりに憧れているというが、眉毛が太く昭和の匂いがする女優だと当時は言われていた。いい意味で洗練されていない野暮ったさが黒島にはあったのだが、あれから3年が経ち、20歳となった今も彼女は初々しい演技をしており、ダイヤの原石のような存在感を見せている。

 16年には筒井康隆の伝説的なジュブナイル小説をドラマ化した『時をかける少女』(日本テレビ系)で主演を務めた。これも、華奢な身体が醸し出す少年のようなたたずまいが、原作の世界観に見事にハマっていた。

『時をかける少女』というと、80年代に大林宣彦が監督して原田知世が主演を務めた映画版が有名だが、今の黒島の存在感は、当時の角川映画で原田知世や薬師丸ひろ子が体現していたものと近いのかもしれない。

 彼女の素朴な魅力は、NHKドラマと相性がいいのだろう。連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『マッサン』や『夏目漱石の妻』など多数の作品に出演している。

『アシガール』では、ついに主演を務め、すっかりNHKにはなくてはならない女優となった黒島だが、そろそろ彼女を主人公にした朝ドラがみたいものだ。

 おそらく黒島なら、戦前や昭和を舞台にした作品なら何をやってもハマることは間違いないだろう。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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 若者向けに作られたジュブナイルドラマが好きだ。

 若手俳優を中心としたジュブナイルドラマには、コメディタッチのラブコメや、SFやファンタジーのような荒唐無稽なシチュエーションの作品が多い。大人の視聴者からはチープな作品だと低く見られがちだが、だからこそ描ける初々しい物語がそこにはあり、初恋の思い出のような甘酸っぱい気持ちを思い出させてくれる。

 近年はテレビの視聴者自体が高齢化していることもあってか、10代向け作品はなかなか作られなくなっているが、現在、NHK総合で土曜日の夜6時5分から放送されている『アシガール』は、久々にジュブナイル感のある甘酸っぱいドラマである。脚本は2000年に傑作ジュブナイルドラマ『六番目の小夜子』(NHK総合)を執筆した宮村優子。

『ごくせん』(集英社)などで知られる森本梢子の少女漫画を原作とする本作は、戦国時代にタイムスリップした女子高生・速川唯(黒島結菜)がイケメンの若君・羽木九八郎忠清(健太郎)に一目惚れして、若君のために孤軍奮闘するというという物語。

 引きこもりの弟が作ったタイムマシーンで戦国時代に向かうというシチュエーションこそコミカルで、一見すると若者向けのチープなラブコメに見えるものの、戦国時代の合戦の描写やタイムトラベルを用いたSF的な設定の見せ方などは、実に丁寧に作り込まれている。

 特に戦国時代の美術背景はしっかりしていて、そこは流石、NHKである。

 何より、戦国時代を舞台である以上、戦で人が死ぬという残酷な現実から目をそらしていないのが素晴らしい。

 第6話では、唯が大ケガをした若君を現代にタイムスリップさせることで治療をして、弟と若君が現代の生活を満喫して親睦を深めるという、ほっこりする場面も描かれた。

 コミカルなところはコミカルだが、シリアスなところはしっかり押さえてある。こういうドラマこそ10代の若い視聴者に見て欲しいと思える作品だ。

 何より、本作の魅力を何倍にも輝かせているのが、主演の黒島結菜の圧倒的な存在感だろう。

 本作で黒島が演じる唯は、陸上部に所属する体育会系の女子高生で、日焼けしていて、前髪を下ろしていることもあってか、見た目は少年のようだ。

 タイムスリップしてからも、女子と気づかれずに足軽たちの中に紛れ込み、劇中では唯之助という男性に扮して、若君に近づき健気に支えようとする。

 戦国時代の荒野を歩く場面から始まるので、顔は泥だらけなのだが、こういう汚い格好が黒島にはよく似合う。

 黒島は、15年にNHK広島放送局で制作された『一番電車が走った』では、原子爆弾投下に遭遇する少女を演じていた。

 極限状態の中で、髪も服もボロボロに汚れていた彼女が最後に解放されて、行水をする姿は神々しいものがあった。

 本作でも薄汚れた男の子のような姿と、ふとした瞬間に見せる女の子らしい華奢な振る舞いのギャップが黒島の魅力を倍増させており、単純なかわいらしさや綺麗さだけではない「生命力の強さ」そのものを演技で表現できることこそ、彼女の魅力だろう。

 テレビドラマ好きの間で、黒島に注目が集まったのは14年。当時は『アオイホノオ』(テレビ東京系)や『ごめんね青春!』(TBS系)といったドラマに脇役として出演しており、その存在感に釘付けとなった。

 彼女は沖縄出身で同郷の満島ひかりに憧れているというが、眉毛が太く昭和の匂いがする女優だと当時は言われていた。いい意味で洗練されていない野暮ったさが黒島にはあったのだが、あれから3年が経ち、20歳となった今も彼女は初々しい演技をしており、ダイヤの原石のような存在感を見せている。

 16年には筒井康隆の伝説的なジュブナイル小説をドラマ化した『時をかける少女』(日本テレビ系)で主演を務めた。これも、華奢な身体が醸し出す少年のようなたたずまいが、原作の世界観に見事にハマっていた。

『時をかける少女』というと、80年代に大林宣彦が監督して原田知世が主演を務めた映画版が有名だが、今の黒島の存在感は、当時の角川映画で原田知世や薬師丸ひろ子が体現していたものと近いのかもしれない。

 彼女の素朴な魅力は、NHKドラマと相性がいいのだろう。連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『マッサン』や『夏目漱石の妻』など多数の作品に出演している。

『アシガール』では、ついに主演を務め、すっかりNHKにはなくてはならない女優となった黒島だが、そろそろ彼女を主人公にした朝ドラがみたいものだ。

 おそらく黒島なら、戦前や昭和を舞台にした作品なら何をやってもハマることは間違いないだろう。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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鬼嫁を前にりゅうちぇるが意外な芯の強さを見せる! 『夫はつらいよ』は現代を生きる男性のための番組か

「妻が強い方が家庭はうまくいく」と言われている。確かに、そうだ。「うちの嫁さん、怖くてよぉ~」とこぼすものの、実は幸せそうな夫の顔を見ることは多い。

 しかし、そればかりでもいけない。「強権をふるう妻と、肩身が狭い夫」という関係性が問題視されることは、実はあまりなかったりする。逆パターンと比較すると歴然だ。

 そんな境遇の夫に救いの手を伸ばす番組が、2週連続で放送された。10月9日と16日に放送されたのは、その名も『夫はつらいよ ~鬼嫁直談判バラエティ 願い事を一つだけ聞いてください!~』(テレビ朝日系)。鬼嫁に歯向かえない気弱な夫が、タレント応援団の後押しを受け、勇気を振り絞り、願い事を妻に直談判するバラエティである。

「タレント応援団」として出演したのは、この2人。新婚間もないりゅうちぇる、そして恐妻家としても有名なずんの飯尾和樹である。

「ウチは玄関開けたらイギリスだから。女王様!」(飯尾)

 

■グランドピアノを優雅に弾く鬼嫁と、ノートパソコンしか所有してない弱腰夫

 

 9日放送の第1回に登場したのは、名付けて“ルールブック妻”。交際当時は正真正銘のオタクであった夫を改造するため、交際する条件として自作のルールブックを夫に手渡している妻のことだ。

 ルールブックの内容だが、身に着けるとオタクに見えるNGファッションの数々(ネルシャツや迷彩柄、白靴下)が掲載されており、それらのファッションアイテムは実際に妻にすべて廃棄されてしまっている。

 それだけじゃない。結婚時には新たなルールブックが作成され、そこには「妻が起きる前に洗い物をしてゴミを捨てる」「毎朝料理を作る」といった条項が記されていたという。

 まだ、ある。35年ローンで建てた2,700万円の新築マイホームに訪れると、夫の私物はノートパソコン1台しかなかったのだ。妻の方は100万円のグランドピアノ、計110着の洋服を所有しているのに……。

 加えて「人をダメにする」という理由で、宝物であったゲーム機と4,000冊集めたマンガを全て処分されてしまう始末。先ほども述べたが、この夫は元オタクである。

「だって、マンガっていらないですよね」(鬼嫁)

 さすがに見かねた飯尾とりゅうちぇるが「毎朝5時にお弁当を作るのは大変では?」と訴えると、鬼嫁は「何かあるんだったら言えって言ってるじゃん!」という態度。言えないから、飯尾とりゅうちぇるが来ているのだが……。

■頑なな鬼嫁に熱意をぶつける、りゅうちぇるの芯の強さ

 

 16日放送の第2回目は、もっとキツい。花火大好きな鬼嫁に従い、年間70カ所の花火大会に連れていかれる弱腰夫。ちなみに、この夫は花火に全く興味がないという。

 しかも、見るだけではない。5台のカメラを使って撮影し、編集作業まで課せられている。その上、夫は仕事と花火が両立できなくなってしまい、嫁から仕事を辞めさせられてしまったというのだ。

飯尾「(夫が)仕事を続けたいと言ったら?」

鬼嫁「そしたら、まあ、離婚届持っておいでよって」

 現在、この夫の生活は「平日=編集作業、土日=花火大会」という生活を送っている。

 夫の願い事はただ一つ、「花火をやめたい」である。しかし、この家庭を見ると、そこまで主張するのは難しそうだ。そこで、夫とタレント応援団の3人は「1回、花火のない週末を送りたい」と譲歩して鬼嫁へ直談判することにした。

 この折衝の場で、りゅうちぇるが予想外の熱さを見せる。

「離婚はしたくないんですって。でも、花火と結婚はしてないから。離婚と花火が並ぶこと自体が、他の人からしたら『えっ!?』って思う」(りゅうちぇる)

 この説得に鬼嫁が折れた。この弱腰夫は、なんとか2日分の休みをゲットすることに成功している。

 世の鬼嫁の押しの強さには驚愕だが、同時に弱腰夫の頼りなさを再確認することとなった『夫はつらいよ』。

 妻を持つ男は、どう生きていくべきだろう? “恐妻家”飯尾和樹のスタイルか、しっかりと己を主張するりゅうちぇるのような態度なのか。両極端な2サンプルが揃った、現代の男子からすると参考になる番組であった。
(文=寺西ジャジューカ)

鬼嫁を前にりゅうちぇるが意外な芯の強さを見せる! 『夫はつらいよ』は現代を生きる男性のための番組か

「妻が強い方が家庭はうまくいく」と言われている。確かに、そうだ。「うちの嫁さん、怖くてよぉ~」とこぼすものの、実は幸せそうな夫の顔を見ることは多い。

 しかし、そればかりでもいけない。「強権をふるう妻と、肩身が狭い夫」という関係性が問題視されることは、実はあまりなかったりする。逆パターンと比較すると歴然だ。

 そんな境遇の夫に救いの手を伸ばす番組が、2週連続で放送された。10月9日と16日に放送されたのは、その名も『夫はつらいよ ~鬼嫁直談判バラエティ 願い事を一つだけ聞いてください!~』(テレビ朝日系)。鬼嫁に歯向かえない気弱な夫が、タレント応援団の後押しを受け、勇気を振り絞り、願い事を妻に直談判するバラエティである。

「タレント応援団」として出演したのは、この2人。新婚間もないりゅうちぇる、そして恐妻家としても有名なずんの飯尾和樹である。

「ウチは玄関開けたらイギリスだから。女王様!」(飯尾)

 

■グランドピアノを優雅に弾く鬼嫁と、ノートパソコンしか所有してない弱腰夫

 

 9日放送の第1回に登場したのは、名付けて“ルールブック妻”。交際当時は正真正銘のオタクであった夫を改造するため、交際する条件として自作のルールブックを夫に手渡している妻のことだ。

 ルールブックの内容だが、身に着けるとオタクに見えるNGファッションの数々(ネルシャツや迷彩柄、白靴下)が掲載されており、それらのファッションアイテムは実際に妻にすべて廃棄されてしまっている。

 それだけじゃない。結婚時には新たなルールブックが作成され、そこには「妻が起きる前に洗い物をしてゴミを捨てる」「毎朝料理を作る」といった条項が記されていたという。

 まだ、ある。35年ローンで建てた2,700万円の新築マイホームに訪れると、夫の私物はノートパソコン1台しかなかったのだ。妻の方は100万円のグランドピアノ、計110着の洋服を所有しているのに……。

 加えて「人をダメにする」という理由で、宝物であったゲーム機と4,000冊集めたマンガを全て処分されてしまう始末。先ほども述べたが、この夫は元オタクである。

「だって、マンガっていらないですよね」(鬼嫁)

 さすがに見かねた飯尾とりゅうちぇるが「毎朝5時にお弁当を作るのは大変では?」と訴えると、鬼嫁は「何かあるんだったら言えって言ってるじゃん!」という態度。言えないから、飯尾とりゅうちぇるが来ているのだが……。

■頑なな鬼嫁に熱意をぶつける、りゅうちぇるの芯の強さ

 

 16日放送の第2回目は、もっとキツい。花火大好きな鬼嫁に従い、年間70カ所の花火大会に連れていかれる弱腰夫。ちなみに、この夫は花火に全く興味がないという。

 しかも、見るだけではない。5台のカメラを使って撮影し、編集作業まで課せられている。その上、夫は仕事と花火が両立できなくなってしまい、嫁から仕事を辞めさせられてしまったというのだ。

飯尾「(夫が)仕事を続けたいと言ったら?」

鬼嫁「そしたら、まあ、離婚届持っておいでよって」

 現在、この夫の生活は「平日=編集作業、土日=花火大会」という生活を送っている。

 夫の願い事はただ一つ、「花火をやめたい」である。しかし、この家庭を見ると、そこまで主張するのは難しそうだ。そこで、夫とタレント応援団の3人は「1回、花火のない週末を送りたい」と譲歩して鬼嫁へ直談判することにした。

 この折衝の場で、りゅうちぇるが予想外の熱さを見せる。

「離婚はしたくないんですって。でも、花火と結婚はしてないから。離婚と花火が並ぶこと自体が、他の人からしたら『えっ!?』って思う」(りゅうちぇる)

 この説得に鬼嫁が折れた。この弱腰夫は、なんとか2日分の休みをゲットすることに成功している。

 世の鬼嫁の押しの強さには驚愕だが、同時に弱腰夫の頼りなさを再確認することとなった『夫はつらいよ』。

 妻を持つ男は、どう生きていくべきだろう? “恐妻家”飯尾和樹のスタイルか、しっかりと己を主張するりゅうちぇるのような態度なのか。両極端な2サンプルが揃った、現代の男子からすると参考になる番組であった。
(文=寺西ジャジューカ)

完全覚醒前夜! 中村ゆりかの“秘めたる狂気”が心をえぐる深夜ドラマ『ぼくは麻理のなか』

 フジテレビ系で月曜深夜に放送中の『ぼくは麻理のなか』は、心をえぐる痛々しいドラマだ。

 本作はもともと、フジテレビオンデマンドで放送されていた配信ドラマ。物語は、鬱屈した感情を抱えて引きこもり生活を過ごしていた大学生の小森(吉沢亮)が、“コンビニの天使”と呼んで、密かに好意を抱いていた女子高生の吉崎麻理(池田エライザ)の体の中に意識が入り込んでしまうところからスタートする。

『ぼくは麻理のなか』は、入れ替わりモノというジャンルに属している作品だ。

 古くは大林宣彦監督の映画『転校生』(1982)、最近では新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』(2016)など、若い男女の肉体が入れ替わるという物語は青春ドラマの定番なのだが、本作が面白いのは、小森と入れ替わった麻理の精神が小森の肉体に宿っておらず、行方不明となっていることだ。

 麻理(の肉体を持った小森)が自分のアパートで対面した小森が、普通の大学生として別人のように存在しているという導入部は、極めて不穏である。

 原作は『惡の華』(講談社)等の作品で知られる押見修造が「漫画アクション」(双葉社)で描いていた同名漫画。

 思春期の少年少女の鬱屈した感情を描かせたらピカイチの描写を持つ作家の漫画を映像化しているだけに、序盤で描かれる、小森がアパートで一人ゲームをしながら鬱屈していく様は、とてもリアルで見ていていたたまれない気持ちになる。

 好きな女子高生と肉体が入れ替わった後も、楽しいエッチなイベントがいくらでもありそうなのに、男子生徒と一緒にカラオケに行ったら同級生の女子生徒から「人の彼氏に手を出すな」と怒られて孤立したり、男子生徒に強引に部屋に上がられてキスされるなど、良いことがひとつもない。内面が鬱屈していると、かわいい女子高生と肉体が入れ替わっても、鬱屈したまんまなんだと思うと切なくなってしまう。

 主演の池田エライザは、グラビアアイドルならではの色っぽさと、中に男の意識が入っているという落差をうまく出していて、麻理を好演している。一方、異様な存在感で、目が離せないのは、中村ゆりかが演じている柿口依だ。

 依はメガネをかけた陰気な雰囲気を醸し出している美少女。麻理のことを偏執的に追いかけていて、いち早く麻理の中に別の人間がいることに気づく。

 その後、麻理が元に戻れるようにいろいろと協力してくれるのだが、男性に対して嫌悪感を持っているため、麻理の中にいる小森に対しては、汚物を見るかのような対応をしている。

 小森も依も、人とコミュニケーションをするのが苦手で、鬱屈した感情が高ぶると早口になる場面があるのだが、依が麻理(の中にいる小森)を責め立てる場面の刺々しい口調は、圧巻の一言。世界のすべてを拒絶して、麻理のことを崇拝する眼鏡美少女というビジュアルに一発でやられてしまった。

 中村ゆりかは現在20歳。日本人と台湾人のハーフで、アイドルでは、ももいろクローバーZや私立恵比寿中学、若手女優では小松菜々や森川葵が在籍しているスターダストプロモーションの女優だ。

 スターダストの女優やアイドルは、細身の身体で年齢よりも幼く見えて少女性の強い子が多い。

 中村ゆりかも同様で、映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』(14)でも制服姿の美少女を演じていて、フェアリーテイルな存在感を見せていた。

 テレビドラマでは、『富士ファミリー』や連続テレビ小説『まれ』(ともにNHK)等に出演。主人公の思春期の姿や、物語の鍵を握るミステリアスな美少女としてビジュアルアイコン的に出演することが多かった。今回の『ぼくは麻理のなか』は、連続ドラマのレギュラーということもあって、今までは未知数だった演技力も見事に証明したといえる。おそらく、これから一気に主演級の役が増えていくのだろう。

 ビジュアルの魅力も去ることながら、グイグイと相手を追い込んでいくような畳み掛ける話し方を見せていて、今までとは違う個性を見せ始めている。

 今までも華奢な美少女という外見ながらも、『舞え!KAGURA姫』(NHK )での女子高生役のように、思い込んだらグイグイと自分の意見をぶつけてくる押しの強さを見せていた。今回の依は、麻理に対して狂信的な感情を抱いていることもあってか、切迫した感情が狂気のように押し寄せてくる。

 狂気を秘めた美少女役というと、同じ事務所の小松菜奈が映画界を席巻している。しかし、小松がカリスマ性のある女教祖のような絶対的な存在として上から来るのに対して、中村ゆりかの狂気は下から謙ってくる信者タイプの卑屈なヤバさなので、まったく違うアプローチが期待できる。

 ちなみに、原作漫画の依はショートカットにメガネで、必ずしも中村と外見が似ているわけではないのだが、違和感なく依になりきっている。

 ドラマのエンドロールでは、ドラマで展開したシーンと同じ箇所の漫画が流れるのだが、実写映像と見比べると、より面白いはずだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

完全覚醒前夜! 中村ゆりかの“秘めたる狂気”が心をえぐる深夜ドラマ『ぼくは麻理のなか』

 フジテレビ系で月曜深夜に放送中の『ぼくは麻理のなか』は、心をえぐる痛々しいドラマだ。

 本作はもともと、フジテレビオンデマンドで放送されていた配信ドラマ。物語は、鬱屈した感情を抱えて引きこもり生活を過ごしていた大学生の小森(吉沢亮)が、“コンビニの天使”と呼んで、密かに好意を抱いていた女子高生の吉崎麻理(池田エライザ)の体の中に意識が入り込んでしまうところからスタートする。

『ぼくは麻理のなか』は、入れ替わりモノというジャンルに属している作品だ。

 古くは大林宣彦監督の映画『転校生』(1982)、最近では新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』(2016)など、若い男女の肉体が入れ替わるという物語は青春ドラマの定番なのだが、本作が面白いのは、小森と入れ替わった麻理の精神が小森の肉体に宿っておらず、行方不明となっていることだ。

 麻理(の肉体を持った小森)が自分のアパートで対面した小森が、普通の大学生として別人のように存在しているという導入部は、極めて不穏である。

 原作は『惡の華』(講談社)等の作品で知られる押見修造が「漫画アクション」(双葉社)で描いていた同名漫画。

 思春期の少年少女の鬱屈した感情を描かせたらピカイチの描写を持つ作家の漫画を映像化しているだけに、序盤で描かれる、小森がアパートで一人ゲームをしながら鬱屈していく様は、とてもリアルで見ていていたたまれない気持ちになる。

 好きな女子高生と肉体が入れ替わった後も、楽しいエッチなイベントがいくらでもありそうなのに、男子生徒と一緒にカラオケに行ったら同級生の女子生徒から「人の彼氏に手を出すな」と怒られて孤立したり、男子生徒に強引に部屋に上がられてキスされるなど、良いことがひとつもない。内面が鬱屈していると、かわいい女子高生と肉体が入れ替わっても、鬱屈したまんまなんだと思うと切なくなってしまう。

 主演の池田エライザは、グラビアアイドルならではの色っぽさと、中に男の意識が入っているという落差をうまく出していて、麻理を好演している。一方、異様な存在感で、目が離せないのは、中村ゆりかが演じている柿口依だ。

 依はメガネをかけた陰気な雰囲気を醸し出している美少女。麻理のことを偏執的に追いかけていて、いち早く麻理の中に別の人間がいることに気づく。

 その後、麻理が元に戻れるようにいろいろと協力してくれるのだが、男性に対して嫌悪感を持っているため、麻理の中にいる小森に対しては、汚物を見るかのような対応をしている。

 小森も依も、人とコミュニケーションをするのが苦手で、鬱屈した感情が高ぶると早口になる場面があるのだが、依が麻理(の中にいる小森)を責め立てる場面の刺々しい口調は、圧巻の一言。世界のすべてを拒絶して、麻理のことを崇拝する眼鏡美少女というビジュアルに一発でやられてしまった。

 中村ゆりかは現在20歳。日本人と台湾人のハーフで、アイドルでは、ももいろクローバーZや私立恵比寿中学、若手女優では小松菜々や森川葵が在籍しているスターダストプロモーションの女優だ。

 スターダストの女優やアイドルは、細身の身体で年齢よりも幼く見えて少女性の強い子が多い。

 中村ゆりかも同様で、映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』(14)でも制服姿の美少女を演じていて、フェアリーテイルな存在感を見せていた。

 テレビドラマでは、『富士ファミリー』や連続テレビ小説『まれ』(ともにNHK)等に出演。主人公の思春期の姿や、物語の鍵を握るミステリアスな美少女としてビジュアルアイコン的に出演することが多かった。今回の『ぼくは麻理のなか』は、連続ドラマのレギュラーということもあって、今までは未知数だった演技力も見事に証明したといえる。おそらく、これから一気に主演級の役が増えていくのだろう。

 ビジュアルの魅力も去ることながら、グイグイと相手を追い込んでいくような畳み掛ける話し方を見せていて、今までとは違う個性を見せ始めている。

 今までも華奢な美少女という外見ながらも、『舞え!KAGURA姫』(NHK )での女子高生役のように、思い込んだらグイグイと自分の意見をぶつけてくる押しの強さを見せていた。今回の依は、麻理に対して狂信的な感情を抱いていることもあってか、切迫した感情が狂気のように押し寄せてくる。

 狂気を秘めた美少女役というと、同じ事務所の小松菜奈が映画界を席巻している。しかし、小松がカリスマ性のある女教祖のような絶対的な存在として上から来るのに対して、中村ゆりかの狂気は下から謙ってくる信者タイプの卑屈なヤバさなので、まったく違うアプローチが期待できる。

 ちなみに、原作漫画の依はショートカットにメガネで、必ずしも中村と外見が似ているわけではないのだが、違和感なく依になりきっている。

 ドラマのエンドロールでは、ドラマで展開したシーンと同じ箇所の漫画が流れるのだが、実写映像と見比べると、より面白いはずだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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「貧しさをエンターテインメントに」里咲りさは、いかにして“Zeppワンマン”にたどり着いたのか

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『サイン』(フローエンタテイメント)
 AKB48の成功以降、ライブハウスを拠点とする地下アイドルシーンは盛り上がりを見せており、文化として完全に定着したといえる。  しかし、日本のエンターテインメントの担い手の多くが直面している「儲からない」という壁に、彼女たちもまた、ぶつかっている。地下アイドルはライブの回数が多く、肉体的にも精神的にも消耗が激しい。しかし、それに見合う対価を受け取っているとは言い難く、ライブだけでは食えないのが現状だ。だから、多くの地下アイドルは疲弊して次々と辞めていく。  食えないこと以上に問題なのは「どうすれば売れるのか?」という出口が見えないことだ。  結局、大手芸能事務所に所属するか『ラストアイドル』(テレビ朝日系)のようなオーディション番組に参加して、秋元康がプロデュースするアイドルグループに入るしか道はなく、それができないなら、青春の思い出として文化祭感覚で楽しむしかない、というのが、地下アイドルに関わっている人々の本音ではないかと思う。  そんな中、地下アイドルでありながら、“売れる道”を切り開いているのが、里咲りさである。  里咲は、自分で作詞作曲を行うアイドル兼シンガーソングライターだ。運営も自分で手掛けているため、社長(しゃちょー)の愛称で親しまれている。  9月22日には、彼女のような個人で活動するアイドルが借りるのは難しいと言われている「Zeppダイバーシティ東京」でのワンマンライブも成功させた。  里咲りさとしてデビューして3年。彼女がここまでこられたのは、歌手としての力量もさることながら、運営としての才覚があったからだろう。  里咲がメディアで注目されたのは『ビートたけしのTVタックル!』(テレビ朝日系)のアイドル特集で、100円ショップで買ったタオルに名前をサインしたものを1,000円で売るといった「ぼったくり物販」をするアイドルとして出演したことがきっかけだった。  次々とユニークな商品を打ち出して、自分で手売りをする里咲の物販は毎回面白く、ライブと同じくらい見応えがある。  一方で里咲は、CD-Rを自分のパソコンで直接焼いて楽曲を売ることにこだわっており、オリコンチャートにCD-Rでランクインしたことも話題となった。  ぼったくり物販もCD-Rも、地下アイドルの貧しさの象徴のようなものだ。  しかし、里咲はそんな貧しさを逆手にとって、それ自体をエンターテインメント化することによって、注目を集めてきたのだ。  Zeppにはファンだけでなく、同業者のアイドルやアイドル関係の仕事をするマスコミ関係者も多数駆けつけていた。おそらく、彼女の動向に、地下アイドルに関わる者として希望を見いだしたいという人が多かったのだろう。  筆者が彼女に注目したのは、アイドルの運営として「お金の話」をあけすけに語り「売れたい」と公言していたからだ。  地下アイドルが儲からないという残酷物語自体は、メディアにあふれ返っていて珍しいものではない。ただ、里咲の話はなぜか聴いていて心地よく、むしろ応援したくなってしまう。  里咲はZeppワンマンのチケット売上枚数を公表し、損益分岐点まであと何枚かをアナウンスしていた。こういった、地下アイドルとしての自分自身が売れるために試行錯誤していくプロセス自体を実況してイベント化していくのが抜群にうまい。  インターネットの普及によってエンタメ業界の産業構造が大きく変化する中で、既存の売り方は通じなくなっている。真っ先にその影響を受けたのが音楽業界だ。そのため、今の時代のクリエイターは、ただ、表現をするだけではなく、AKBの握手会や選抜総選挙のように、表現を届けるための「手法」自体もデザインしなければならない。  表現を届ける「売り方」自体がクリエイティブで面白かったことが、里咲が注目されている大きな理由だろう。  しかし、これは諸刃の剣でもある。「売り方」ばかりに注目が集まると、肝心の表現自体が陰に隠れてしまうし、実力が伴っていなければ、やがて飽きられてしまう。  里咲はその不安についてインタビューで繰り返し語っていたが、今回のワンマンライブは歌手・里咲りさの、圧倒的な表現力を証明するものとなっていた。  会場は椅子席だったのだが、だからこそ曲を聴くことに集中できて、彼女の歌をじっくり堪能することができた。中でもよかったのは「カタルカストロ」や「TURE」といった暗い曲だ。  筆者が里咲に惹かれるのは、時々あふれ出す圧倒的な影の部分だ。明るい曲も悪くはないが、作家性を感じるのは暗い曲であり、この路線にはまだまだ前人未到の可能性があると思った。  ライブの最後で里咲はメジャーに行く(ただし、いい条件を提示するレコード会社を募集するという、FA宣言だが)と語っていたが、今後は、地下アイドルで自由奔放にやっていたことを、より大きな規模でできるかどうかが鍵となるだろう。  だが、あのライブを見る限り、心配は無用だろう。大きな会場であればあるほど、彼女の表現力はより高まっていくはずだ。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

『黒革の手帖』悪女役で新境地開拓! “リアル元子”武井咲は、結婚&妊娠でさらに化ける?

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 突然の結婚、妊娠報道の渦中、大団円を迎えた『黒革の手帖』(テレビ朝日系)は、今の武井咲だからこそ演じられるピカレスクドラマの傑作だった。  松本清張の小説をドラマ化した本作は、銀行員の女性が政治家や財界の権力者の裏金を横領し、その金で銀座の一等地にクラブを構えるという悪女の成り上がり物語だ。  ヒロインの原口元子は、山本陽子や浅野ゆう子といった女優が演じてきた伝統ある役柄で、2004年には武井の先輩に当たるオスカープロモーションの米倉涼子が演じたことでも知られている。  本作に出演したことで、米倉は男に媚びない強い女というイメージを確立し、次々とテレ朝の連ドラに出演。やがて『ドクターX ~外科医・大門未知子~』で『相棒』の水谷豊と並ぶ、テレ朝にとってはなくてはならない看板スターとなった。  そんな『黒革の手帖』の新作を武井が演じるということは、オスカーやテレ朝が武井を米倉に続くスターに育てたいと思ってのことだろう。  歴代の元子を演じた女優陣と比べると武井は23歳と若く、顔立ちも線の細い美少女という感じだ。そのため、悪女を演じるには物足りないのではないかという下馬評が強かった。  しかし、第1話が終わった後で評価は一転。絶賛の嵐となった。  脚本を担当したのは映画『パッチギ!』や、連続テレビ小説『マッサン』の羽原大介。物語は原作小説を踏襲しているが、元子の設定は現代的なものへと脚色されていた。  本作の元子は、同じ銀行員でも派遣社員。昼は銀行で働きながら、夜は家の借金をホステスの仕事で返済してきたという境遇で、現代の貧困を体現するような弱者として登場した。  そんな元子が、コネ入社した女子社員のミスを肩代わりする形で、あっさりと派遣の契約を切られてしまう。理不尽な権力に、これでもかと追い詰められたところで反撃に出て、銀行から1億8,000万円を奪い取るという第1話には、カタルシスがあった。  普段は地味な格好で質素な暮らしをしている元子が、高価な着物を身にまとって傲慢な男たちを淡々と恫喝する姿は、スーパーヒロインのような格好良さで拍手喝采だった。  物語はその後、ドロドロの権力闘争となり、やがて元子が失脚した後に銀座のママとして返り咲くという展開になるのだが、武井の結婚&妊娠の騒動があったためか、戦いの果てに弱って憔悴していく元子と、武井の姿は、どこか重なって見えた。    武井を最初に意識したのは、野島伸司脚本のドラマ『GOLD』(フジテレビ系)だった。武井が演じたのは、天才スポーツ一家で幼少期から飛び込みの選手として鍛えられ、オリンピックに出場することを周囲から期待されていた少女だった。  幼くてかわいいというよりは、きれいだが危うさを抱えた大人びた美少女という佇まいで、張り詰めたような空気をまとっていてプールで見せる競泳水着の姿が美しく、周囲の期待と恋愛によって崩れていく思春期の危うさを見事に演じていた。  月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』(同)でも、三浦春馬が演じる高校教師を振り回す女子高生を好演していた。この時期の武井は、思春期の美少女が持つ危うさを演じさせると右に出る者がいなかった。  この2作に出演できたことは、若手女優として幸運なスタートだったといえる。ただ、出演作が多く、作品自体に当たり外れが多かったこともあってか、女優としては安く見られていた。  剛力彩芽もそうだが、オスカーは新人女優を次から次へとドラマに出演させる。そのためネットでは、ゴリ押しというイメージが先行していた。だが、武井はさまざまな作品に出演することでコメディや時代劇など幅広く演じるようになり、近年は安定感のある演技を見せるようになっていた。  そんな中、『黒革の手帖』での悪女役は、武井にとっても新境地だった。  EXILEのTAKAHIROとの結婚&妊娠の報道を知った時は驚いたが、「早めに出産したい」と語っていたので、有言実行という感じなのだろう。  同時に、今の若い子らしい選択とも思った。芸能界に限らないが、武井のような今の20代は、上の世代が結婚に躊躇しているうちに晩婚化、未婚化している姿を見てきた世代だ。  だから、自分たちのライフプランに関しては、かなり自覚的なのだろう。そういうクールに自分の人生を見ているような覚めた視線があるからこそ、シリアスな美少女からコミカルなコメディエンヌまで幅広く演じることができたのだ。  まさに、元子のような計算高さと大胆さを兼ね備えた女優だといえる。    おそらくテレ朝サイドとしては10年くらいのスパンで同じような役を演じてもらい、30歳ぐらいをめどに、米倉のようなテレ朝ドラマを代表するような大人の看板女優となってほしいと考えているのだろう。その期待に、武井は『黒革の手帖』で見事に応えたと思う。    出産後に、彼女がどういう距離感で女優業を続けていくのかわからない。だが、今回の結婚&妊娠は、女優として間違いなくプラスになるはずだ。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

『僕やり』セックスシーンに男子悶絶! 川栄李奈は今こそ脱ぐべき!!

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 川栄李奈は、いま一番エロい芝居ができる若手女優だ。  火曜夜9時から放送されている青春ドラマ『僕たちがやりました』(フジテレビ系)に出演している彼女を見ていると、それを強く感じる。  仲間たちと楽しい高校生活を過ごすトビオ(窪田正孝)の日常は、ある日を境に一変する。不良にリンチされた仲間の報復のために、不良の高校に爆弾をしかけるトビオたち。小さな爆発しか起こらないはずだったが、プロパンガスに引火したことで死傷者の出る大事故となってしまう。逮捕を恐れたトビオたちは逃亡生活を送ることになるのだが、そこから物語は予想外の方向へと転がっていく。  トビオたちの軽薄なノリは、見ていてイライラする。なんというか、ユーチューバーが悪ふざけしている動画を見せられているみたいな感じだ。それが延々と続くため、“ふざけるな!”と思うのだが、一方で現代的なリアリティがあり、目が離せない。  何より、今のテレビドラマでは描けなくなった若者を取り巻く性と暴力を正面から描こうという姿勢に好感が持てる。  1990年代なら野島伸司脚本の『未成年』(TBS系)、2000年代なら宮藤官九郎脚本の『池袋ウエストゲートパーク』(同)が描いていた、少年たちが性と暴力にまみれながら疾走していく姿の10年代バージョンがここにはある。  おそらく今、固唾を呑んで本作を見守っている10代の若者は多いのではないかと思う。     出てくる女の子たちも魅力的だ。  トビオの彼女でヒロイン・蓮子を演じる永野芽郁は、今までの優等生的なイメージをかなぐり捨てて、ギャルっぽい女子高生を好演している。そして一番目を引くのは、川栄李奈演じる今宵の、匂い立つような色気だ。  今宵はトビオの親友・伊佐美(間宮祥太朗)の恋人なのだが、寂しがり屋で、ほかの男にも色目を使ってしまう女の子だ。その一方で、クールな側面もあり、伊佐美の子どもを妊娠した時には、子どもを守るため、(爆破事件に関わった)伊佐美に別れを切り出す。  男に都合のいいバカな女に見えて、腹の底では何を考えているかわからない奥行きが見えるのは、川栄のふわっとした芝居によるところが大きい。    第5話で今宵が、童貞のトビオとセックスをする場面は多くの10代の男の子に衝撃を与えたのではないかと思う。残念ながら原作漫画のようなフルヌードとまではいかなかったが、ベッドで2人が抱き合う姿は生々しい色気があり、制約の多い民放地上波のドラマでは大健闘したといえる。  現在、女優として活躍する川栄だが、彼女はAKB48のメンバーだった。  もともと女優志望だったらしいが、アイドルとして活躍していた頃は、ユーキャンの通信教育で薬膳コーディネーターの資格試験を受ける姿がCMで流れていて、バラエティ番組では勉強ができないおバカキャラというイメージが強調されていた。おそらく、第2の指原莉乃的な売り出し方だったのだろう。  テレビで見ている限りは、そこまで女優に対する強い憧れがあったようには見えなかったが、もしかしたら、当時は「おバカタレント」という与えられた役割を、女優として演じていたのかもしれない。  AKB時代にも『ごめんね青春!』(TBS系)などのドラマに出演していたが、2015年に卒業して以降、本格的に女優業をスタートする。  前田敦子、大島優子、最近では松井玲奈、島崎遥香など、AKBグループでアイドルとしてキャリアを積み上げてから女優に転身するメンバーは多い。しかし、彼女らと比べると、川栄の女優業は少し毛色が違うものに見える。  前田や大島の女優業は、よくも悪くも、アイドルとしてのキャリアの末に獲得したものだ。だから、彼女たちが演じる役柄にはアイドル時代に培ったキャラクターが反映されている。  対して、川栄が演じる役柄は、アイドル時代の川栄のキャラクターとのつながりが薄いように見える。もっと言うと、“面白い女優だけど、この子誰だろう?”と思って調べると、川栄だったというケースがとても多い。これは、川栄が与えられた役を完全に演じ切っているからだろう。  それを最初に強く意識したのは、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』だった。  川栄が演じたのは仕出し弁当店の娘。脇役だったこともあって印象はとても地味で、アイドル時代の川栄のイメージとはまったく結びつかなった。  主演の高畑充希はもちろんのこと、浜野謙太やピエール瀧、平岩紙といった達者な俳優陣と並んでも違和感がなく、すでにベテラン女優のような貫禄を漂わせていた。   それ以降も川栄はテレビドラマに出演し、着々とキャリアを積み上げてきたが、この『僕たちがやりました』でエロが演じられる女優として、一気にブレークしたといえる。  だからこそ思うのだ。今こそ、川栄は脱ぐべきであると。  然るべき映画で濡れ場を演じれば、AKB女優だけでなく、同世代の若手女優の中でも、頭ひとつ飛び抜けた存在となれるはずだ。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆