本業へ注力の方針? ファミリーマートがアニメ関連事業から撤退のウワサ

 大手コンビニチェーンのファミリーマートが、アニメ関連事業から撤退するとのウワサが、業界を駆け巡っている。

 ここ数年のうちにコンビニが実施するアニメ作品とのコラボ展開は、当たり前のものとなった。さらに、製作委員会への参加も目立ち、多くの作品で製作委員会の中に、ファミマ・ドット・コムか、ローソンHMVエンタテイメントの名前が見られるようになってきた。

 製作委員会に参加することで、店頭でのグッズ販売やコラボキャンペーンを、より実施しやすくする戦略を実行している状況だ。

 そうした中で、ファミリーマートがアニメ関連事業から撤退するというのは、どういうことなのか?

「コンビニ本来の事業である店頭でのサービスに注力する。それが、現在のファミリーマートの方針です」(コンビニ業界関係者)

 2016年にサークルKサンクスとの経営統合によって、ファミリーマートはセブン-イレブンに次ぐ業界第2位の地位に躍り出た。

「今、ファミリーマートが目指しているのは、セブン-イレブンを超えること。でも、すでに全国のコンビニ店舗数は飽和状態。そこで、深夜に客数が見込めない店舗では24時間営業を取りやめる。あるいは、新サービスの導入など、さまざまな方法で、1店舗あたりの売上の拡大を図っているわけです」

 昨年、ファミリーマートではフィットネスジムやコインランドリーを併設した店舗を導入するなどと発表し話題を集めた。これも、事業改革の一貫だ。そうした、本業への注力の中でアニメ事業への参加の見直しが始まっているというわけだ。一部では「違約金を払ってでも作品から撤退する」という話がなされているというウワサも。

 ただ、こうしたウワサに対して当のアニメ業界関係者は静観の構えだ。

「コンビニというのは、よくも悪くもフットワークが軽いものです。今年、撤退しても来年には戻ってきているかもしれませんし。そんなに大騒ぎするようなことじゃないと思うのですが……」

 ファミリーマートでは、昨年Twitterで、新たに売り出す弁当を『けものフレンズ』か「忖度」のどちらにするかのアンケートを実施。簡単に『けものフレンズ』に決まるだろうと思いきや「忖度弁当」が発売されて話題にもなった。これも、壮大な“フリ”だったのか?
(文=特別取材班)

「助けて! 所沢なんて行きたくないよ……」本社の“ド田舎移転計画”にKADOKAWA全社員が悲痛な叫び

「所沢になんて、行きたいワケがないだろ!!」

 誰もが、そんな悲痛の声を上げているという。それが、現在のKADOKAWAの社内の状況である。1月末に同社が、2020年に完成を目指している新たな拠点施設に、本社機能を移すと言及しているからだ。

 現在、同社が建設を予定している「ところざわサクラタウン」。印刷工場や物流倉庫、さらに、アニメ専門の美術館や図書館なども備えた複合文化施設だ。同社によれば、出版に必要な機能をすべて集約するとともに、関係の深いオタクカルチャーの拠点となる予定だという。

 だが、社長が「この施設に本社機能の半分を移転する」と言及したことで、社員に動揺が走っているのだ。

 出版業界では、同社の目論見は、すでに他の出版社も実施していることを大規模にしたものだと見られている。

「本社ビルを建て替えた小学館もそうですが、集英社から岩波書店まで、たいていの老舗出版社は不動産収入が大きなウェイトを占めています。新潮社なんて、神楽坂駅周辺に会社や社長一族の名義で多くの不動産を持つ大地主ですし……」(出版社社員)

 KADOKAWAの目論見は、不動産収益の最適化。現在の飯田橋の本社ビルは、貸しビルにして収益を得たほうが都合がよいというわけだ。

 新たな拠点となる「ところざわサクラタウン」は、JR武蔵野線の東所沢駅から徒歩12分の距離。都心からは遠く、所沢市の中心市街地からも私鉄・JRを乗り継ぐかバスを待つ必要があるなど、交通の便もかなり悪い。一説には「在宅ワークを中心にすれば、出社の必要もないじゃないか」という理由で移転方針が決まったともいわれる。仮に最寄りの東所沢駅周辺や、近隣の秋津・清瀬あたりの物件を社宅として借りても、貸しビル収入で十分に採算がとれるということらしい。

 この発表を受けて、幾人かの同社社員に話を聞いたところ、一様に困惑の声を漏らした。

「いよいよ、この会社はヤバいのではないかと思った」「編集部がなくて、編集者ができるか」など、誰一人として、移転計画を支持する声は聞こえてこない。

 さらには、こんな話も。

「まだ、どの部署が移転対象となるのかは、まったく決まっていません。なので、どうやって上に『自分たちの編集部は都内にないと仕事ができない』とアピールするかを、ひそかに話し合っていますよ」(ある社員)

 また、中には「東所沢駅から一駅で西武池袋線に移動できます。この路線沿いには、マンガ家が多いから、まずマンガ編集部は、すべて移転という話も……」と語る社員も。

 全社員に影響を及ぼしそうな一大計画。この計画が現実になった時、日本のオタクコンテンツは、どう変化するのだろうか。
(文=是枝了以)

真偽はいかに?「1位が非正規で2位の正社員に海外旅行贈呈」ツイートに、日本郵便は「事実ではない」

 郵便局が、正社員と非正規との間に差別的な待遇をしていた?

 ひとつのツイートが、真偽をよそに注目を集めている。このツイートは、以下のようなものだ。

 * * *

ある年、「年賀ハガキ販売成績全国1位の人には海外旅行が贈られます」と、本社からお達しが来た → 年明けに、「成績1位の人は非正規だったので2位の正社員に旅行が贈呈されました」と、お知らせが来たことがあった #郵便局の思い出

 * * *

 郵便局においては、正社員と非正規の間の格差がしばしば問題化しており、これまで幾度となく報道されている。それらがリアリティを持たせたのだろうか。このツイートには、さまざまな「怒り」の反応が寄せられた。

 いわく「それじゃあ、非正規には年賀状とかのノルマ課すなよ?って思うよね」「どんなにがんばっても報われない社会の縮図」というものである。中には「年賀ハガキボイコット運動指導しようかな?」というものまで。

 郵便局では、非正規雇用の社員が正社員に昇格するために、年賀ハガキなどを大量に自腹購入する「自爆営業」が存在したり、正規・非正規を問わず厳しい販売ノルマを命ぜられる場合もあるという。

 とはいえ、発端となったツイートのような、ひどい差別待遇が存在するのだろうか。

 日本郵便株式会社の経営企画部広報室に、この件を問い合わせたところ、ツイートについては全く関知していなかった。いったん、調べた上で連絡する旨を告げられた後、返ってきた反応はこうだった。

「記載のようなことが、行われた事実はありません」

 各郵便局で、販売に対して報奨を行うことはあるが、記載されているようなことが行われた事実はないという。一部ニュースサイトでは、冒頭で示したツイートをもとに日本郵便に批判的な記事が掲載されている。いったい、真相はどこにあるのだろうか。
(文=特別取材班)

資産隠し発覚の「てるみくらぶ」社長に“韓国カルト団体への横流し”疑惑が浮上中

 やはり金を隠していた。昨年3月に経営破綻した格安旅行会社「てるみくらぶ」の山田千賀子社長が、自宅に現金約700万円を隠し持ち、警視庁に押収されていたことが伝えられた。山田社長は債務超過を隠蔽して銀行から2億円もの融資を騙し取った疑いで、警視庁に逮捕されたが、一部の債権者からは資産隠しを疑われていた。事実、破産管財人に申告していない金を所持していたため、資産隠しの捜査がなお本格化しているのだが、一説には韓国のカルト団体に多額の金を逃がしているともいわれる。

「山田社長は、会社を立ち上げた頃から韓国に強い人脈があって、主力商品となった格安ツアー販売も、韓国旅行が一番の売りでした。それで社長本人も頻繁にソウルなどに足を運んでいたのですが、現地のスタッフには社員でもない怪しい協力者たちがいて、Yというカルト教団の信者だというウワサがあったんです」(元社員)

 てるみくらぶが韓国旅行に強かったのは、ソウル3日間で5,980円という超激安のツアー商品があったことでもわかる。また、倒産前の同社は、台湾や東南アジア方面のツアーについての問い合わせメールに対しては3~4日後の返答になることがあったのに、韓国旅行は現地窓口が常に即答をしていたほどの力の入れようだった。

「本来の担当者である日本人の現地スタッフが不在のときでも、日本語の話せる韓国人が常駐していて、それなのに人件費に計上されてなかったり、社内でも怪しまれていたんです」(同)

 てるみくらぶは1998年に設立、01年からオンライン販売での激安ツアーが評判を呼んでいたが、少なくとも13年から架空の利益を計上する粉飾決算を繰り返していたことが明らかになっている。結果として代金を支払った9万人もの旅行者が債権者となり、総額100億円に上る被害を出した。

 債権者は警察の捜査とは別に、独自に会社の資産を調査。そこで、山田社長が都内に本部のある新興宗教に入れ込んでいるという話が浮上していた。寄付金を隠れみのに隠し財産を作っていたのではないかという疑いまで出ていたのだが、これとは別に、韓国カルト団体・Yについても疑いが出てきている。

「何しろ、てるみくらぶは破産に至るまでの動きが用意周到。おかげで取引先と金融機関への実害は少なく、債権者の大半は無力な個人客。それを考えると、巧妙な資産隠しをしていてもおかしくはないんですが、その疑いは主に3つ。第1に創業者や山田社長の自宅に現金が隠されていないか、第2に国内宗教団体など関連各所に横流ししていないか、そして第3が海外への送金問題です。第1の疑いがクロになったことで、第2と第3の捜査に力を入れてもらいたいところ」(約80万円の被害を受けた債権者男性)

 昨年、会社は、わずか2億円足らずの現預金を残して破産したが、同時に山田社長個人も破産手続きをしていた。しかし、こちらは自宅に多額の現金を隠匿していたことで、さらに別の資産隠しがある疑いは強まる。

 その資産の逃がし先に浮上した、国内の宗教団体と韓国のカルト団体。中でも後者については、元社員が「倒産が表になってから、多数の社員やスタッフらが給料の未払いなどで困惑している。そんな中、韓国にいたはずの現地スタッフが一斉に姿を消しているのも怪しい」と話す。前代未聞の旅行会社倒産をめぐっては、いまだ謎めいた話が横行中だ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

資産隠し発覚の「てるみくらぶ」社長に“韓国カルト団体への横流し”疑惑が浮上中

 やはり金を隠していた。昨年3月に経営破綻した格安旅行会社「てるみくらぶ」の山田千賀子社長が、自宅に現金約700万円を隠し持ち、警視庁に押収されていたことが伝えられた。山田社長は債務超過を隠蔽して銀行から2億円もの融資を騙し取った疑いで、警視庁に逮捕されたが、一部の債権者からは資産隠しを疑われていた。事実、破産管財人に申告していない金を所持していたため、資産隠しの捜査がなお本格化しているのだが、一説には韓国のカルト団体に多額の金を逃がしているともいわれる。

「山田社長は、会社を立ち上げた頃から韓国に強い人脈があって、主力商品となった格安ツアー販売も、韓国旅行が一番の売りでした。それで社長本人も頻繁にソウルなどに足を運んでいたのですが、現地のスタッフには社員でもない怪しい協力者たちがいて、Yというカルト教団の信者だというウワサがあったんです」(元社員)

 てるみくらぶが韓国旅行に強かったのは、ソウル3日間で5,980円という超激安のツアー商品があったことでもわかる。また、倒産前の同社は、台湾や東南アジア方面のツアーについての問い合わせメールに対しては3~4日後の返答になることがあったのに、韓国旅行は現地窓口が常に即答をしていたほどの力の入れようだった。

「本来の担当者である日本人の現地スタッフが不在のときでも、日本語の話せる韓国人が常駐していて、それなのに人件費に計上されてなかったり、社内でも怪しまれていたんです」(同)

 てるみくらぶは1998年に設立、01年からオンライン販売での激安ツアーが評判を呼んでいたが、少なくとも13年から架空の利益を計上する粉飾決算を繰り返していたことが明らかになっている。結果として代金を支払った9万人もの旅行者が債権者となり、総額100億円に上る被害を出した。

 債権者は警察の捜査とは別に、独自に会社の資産を調査。そこで、山田社長が都内に本部のある新興宗教に入れ込んでいるという話が浮上していた。寄付金を隠れみのに隠し財産を作っていたのではないかという疑いまで出ていたのだが、これとは別に、韓国カルト団体・Yについても疑いが出てきている。

「何しろ、てるみくらぶは破産に至るまでの動きが用意周到。おかげで取引先と金融機関への実害は少なく、債権者の大半は無力な個人客。それを考えると、巧妙な資産隠しをしていてもおかしくはないんですが、その疑いは主に3つ。第1に創業者や山田社長の自宅に現金が隠されていないか、第2に国内宗教団体など関連各所に横流ししていないか、そして第3が海外への送金問題です。第1の疑いがクロになったことで、第2と第3の捜査に力を入れてもらいたいところ」(約80万円の被害を受けた債権者男性)

 昨年、会社は、わずか2億円足らずの現預金を残して破産したが、同時に山田社長個人も破産手続きをしていた。しかし、こちらは自宅に多額の現金を隠匿していたことで、さらに別の資産隠しがある疑いは強まる。

 その資産の逃がし先に浮上した、国内の宗教団体と韓国のカルト団体。中でも後者については、元社員が「倒産が表になってから、多数の社員やスタッフらが給料の未払いなどで困惑している。そんな中、韓国にいたはずの現地スタッフが一斉に姿を消しているのも怪しい」と話す。前代未聞の旅行会社倒産をめぐっては、いまだ謎めいた話が横行中だ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

「はれのひ」は氷山の一角……? 苛烈な営業電話で“高額契約”迫る呉服業界の闇

 成人式当日突然に閉店して社長ら経営陣が姿をくらましたままの横浜市の振り袖レンタル会社「はれのひ」は、民間信用調査会社の東京商工リサーチによると、一昨年9月の時点で6億円を超える負債があり、3億円以上の債務超過に陥っていたという。そのためか昨年からは従業員への給与も遅延や未払いが出ていたが、実はこの会社、問題が表面化する以前から、その営業手法が一部であまり評判がよくなかったようだ。

「とにかく、しつこい。何度も電話をかけてきて『晴れ着の準備を』って。断ってもかけてくるので、最終的には『うるさい!』と怒鳴ってしまった」

「姉の振袖を使うのでと断っても、今年の流行デザインは違うとか、小物のプレゼントがあるとか延々と話を止めなくて、途中で電話を切った」

 こうした声は、「はれのひ」からの度重なる営業電話を受けた人々のもので、特に14年頃から「不快・迷惑」度を増していたようだ。何しろ「うちの娘は海外留学中で日本の成人式には出られないのに営業電話が来た」という人もいたのである。

 証言者たちが首を傾げていたのは、「はれのひ」がどうやって成人式を迎える娘のいる家庭を知っていたかということ。これは別の呉服レンタル業者が打ち明ける。

「『はれのひ』だけじゃなく、ほとんどの同業者はやってることなんですが、名簿業者から学生名簿を大量に買うんです。必要なのは年齢、性別と電話番号だけで、片っ端から電話をかけるんです。従業員には、商談がまとまれば売り上げ1~2割の歩合ボーナス、つまりインセンティブを出す形にするのが通例。単価が高い世界なので、50万円の売り上げなら5~10万円の報酬が入るわけで、みんな誰彼構わず電話しまくります。ただ、苦情も増えるので、電話をかける役目を下請けにやらせるケースもあります」

 歩合制となれば当然、高額な商品を勧める傾向が強まるが、「一生に一度のことだと言えば、親は借金してでも金を出す、という認識がある」と業者。

「ただ、そういう中で歩合を荒稼ぎする凄腕の営業マンがいると、他社に引き抜かれたり、独立されたりということもあって競争は激化するばかり。儲かりそうに見えて、油断するとすぐに業績が落ちますよ」(同)

 激しい電話セールスもむなしく、「はれのひ」は15年9月期からは営業赤字となり、厳しい資金繰りが続き、取引先や金融機関の信用も落ちていた。結果、成人式当日に数百人単位での被害者を生む前代未聞の閉店騒動をやらかしてしまった。被害者の中には、営業電話によって契約に至った者もおり「あんな電話にさえ出ていなければ」と悔やむ声も聞かれた。

 前出業者は「基本、営業電話を激しくするところほど、値段が高いと思った方がいい」と話す。

「歩合報酬を出すわけなので、その分、客に出す値段を高くしなきゃいけなくなるからです。営業電話をしてきた業者はむしろ使わない方がいい、というのが本音です」

「はれのひ」が消えても同じ業態の呉服関連の他社による電話攻勢は続く。成人前の娘を持つ家庭では、業者の選定に慎重さが求められそうだ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

「はれのひ」は氷山の一角……? 苛烈な営業電話で“高額契約”迫る呉服業界の闇

 成人式当日突然に閉店して社長ら経営陣が姿をくらましたままの横浜市の振り袖レンタル会社「はれのひ」は、民間信用調査会社の東京商工リサーチによると、一昨年9月の時点で6億円を超える負債があり、3億円以上の債務超過に陥っていたという。そのためか昨年からは従業員への給与も遅延や未払いが出ていたが、実はこの会社、問題が表面化する以前から、その営業手法が一部であまり評判がよくなかったようだ。

「とにかく、しつこい。何度も電話をかけてきて『晴れ着の準備を』って。断ってもかけてくるので、最終的には『うるさい!』と怒鳴ってしまった」

「姉の振袖を使うのでと断っても、今年の流行デザインは違うとか、小物のプレゼントがあるとか延々と話を止めなくて、途中で電話を切った」

 こうした声は、「はれのひ」からの度重なる営業電話を受けた人々のもので、特に14年頃から「不快・迷惑」度を増していたようだ。何しろ「うちの娘は海外留学中で日本の成人式には出られないのに営業電話が来た」という人もいたのである。

 証言者たちが首を傾げていたのは、「はれのひ」がどうやって成人式を迎える娘のいる家庭を知っていたかということ。これは別の呉服レンタル業者が打ち明ける。

「『はれのひ』だけじゃなく、ほとんどの同業者はやってることなんですが、名簿業者から学生名簿を大量に買うんです。必要なのは年齢、性別と電話番号だけで、片っ端から電話をかけるんです。従業員には、商談がまとまれば売り上げ1~2割の歩合ボーナス、つまりインセンティブを出す形にするのが通例。単価が高い世界なので、50万円の売り上げなら5~10万円の報酬が入るわけで、みんな誰彼構わず電話しまくります。ただ、苦情も増えるので、電話をかける役目を下請けにやらせるケースもあります」

 歩合制となれば当然、高額な商品を勧める傾向が強まるが、「一生に一度のことだと言えば、親は借金してでも金を出す、という認識がある」と業者。

「ただ、そういう中で歩合を荒稼ぎする凄腕の営業マンがいると、他社に引き抜かれたり、独立されたりということもあって競争は激化するばかり。儲かりそうに見えて、油断するとすぐに業績が落ちますよ」(同)

 激しい電話セールスもむなしく、「はれのひ」は15年9月期からは営業赤字となり、厳しい資金繰りが続き、取引先や金融機関の信用も落ちていた。結果、成人式当日に数百人単位での被害者を生む前代未聞の閉店騒動をやらかしてしまった。被害者の中には、営業電話によって契約に至った者もおり「あんな電話にさえ出ていなければ」と悔やむ声も聞かれた。

 前出業者は「基本、営業電話を激しくするところほど、値段が高いと思った方がいい」と話す。

「歩合報酬を出すわけなので、その分、客に出す値段を高くしなきゃいけなくなるからです。営業電話をしてきた業者はむしろ使わない方がいい、というのが本音です」

「はれのひ」が消えても同じ業態の呉服関連の他社による電話攻勢は続く。成人前の娘を持つ家庭では、業者の選定に慎重さが求められそうだ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

設備大手・三菱電機ビルテクノサービスで“パワハラ訴訟”「定時後に2、3時間怒鳴り続ける……」

 エレベーターやビル用空調設備の最大手、三菱電機ビルテクノサービス(以下ビルテクノ)が、子会社の社員からパワハラ訴訟を起こされている。原告となった男性2名は、仕事現場が同社による偽装請負にもなっている事実も重ねて告発し、約1,370万円の損害賠償を求めている。

 2名はビルテクノの完全子会社、菱サ・ビルウェアの契約社員として東京・杉並区の大型スポーツ施設である上井草スポーツセンターのメンテナンスを任されているが、親会社から派遣されたセンターの所長男性・N氏から、長く直接の指揮を受け、常軌を逸するパワハラに悩まされてきたとしている。

「規定された業務とは無関係なのに、サッカーグラウンドにある15メートルもの高さのネットの部品を調整するよう命じられたこともありました。危ないからと断っても、延々と『やれ!』と怒鳴られ続け、渋々ポールを昇ったんですが、強風にさらされ、命の危険を感じる作業だったんです」

 こう話すのは、2011年から勤務する原告の40代男性A氏で、同じく13年から勤務する50代男性B氏と共に同センターのガスや電気温水器、券売機などの点検を任されてきた。

 センターは杉並区からビルテクノら3社が運営を請け負う形となっているが、そのうち設備管理を菱サが下請け。民法では、現場の指揮監督は菱サが行うことになるはずだが、実際にはビルテクノ所属のN氏(当時50代)が単独で指揮を執り、A氏らは「待遇や環境を無視した無責任な労働やパワハラがあった」としている。

「N所長はシャワー室の天井を清掃させたり、危険な高所作業もよく強制してきたんです。それも『やってもらえるかな?』という相談ではなく、机をバンバン叩きながら『やれよ!』と命令するんです。本来、専門業者が担当するものなので断ると『なんでやらないんだ!』と延々と怒鳴られました」(同)

 こうしたN所長の無茶な命令やパワハラは、勤務の開始時間である朝から、就業後にまで及んだという。

「おおよそ朝、昼、夜と所長は3度顔を出すんですが、朝はいきなり『アレはどうなってるの?』って言われ、よくわからないので聞き返すと『考えてもわからないのか!』と怒鳴る。実際にはトイレのドアがうまく閉まらないとか、些細なことなんですが、これも私たちの担当外。修理業者を呼ぶべきなのに、直せ直せと言うんです。所長は勤務9時間うち休憩1時間の昼食時にもやってきて『電話や訪問に備えろ』と、休みを許さなかった。定時の17時30分で帰ろうとしても、また顔を出しては2時間、3時間と怒鳴るんです。だから残業がまるまるパワハラの時間になっていました。定時で帰れたことは、ほとんどなかったと思います」(同)

 A氏はこれを「所長が、自分の残業代を目当てでやっていたのではないか?」と察し、会社に何度も苦情を申し立てている。

「何回、申し立てたかわからないくらい電話もメールもして、所長の上司であるビルテクノの課長にも伝えましたが、何も変わりませんでした。事態を見かねた菱サの上司がビルテクノ側に掛け合ってくれたこともありましたが、所長は『俺はそんなことやってない』って言い張っていたんです」(同)

 残業代目当ての無理な“仕事作り”だったのか、B氏によると、N氏は電気やガス、水道の使用量が前年と比較して量が多いと「原因を調べろ」と命令。さらに、A氏の私物であるポットを勝手に使用し、空焚きして壊したのに「お湯をちゃんと沸かせるようにしておくのが仕事だ!」と怒っていたという。こうした理不尽なパワハラが約6年間も続いたことで、A・B両氏はストレスによる体調不良を引き起こし、ともに通院。A氏は不眠症や高血圧、難聴などを引き起こし、B氏は精神科で鬱病と診断されたという。

 昨年、2人がビルテクノ側に病院代の支払いなどを求めたところ、ようやくN氏が現場から異動になったというのだが、偽装請負やパワハラについては一貫して認めてもらえなかったという。

「ビルテクノの担当者は、偽装請負に関しても『おたくの会社とうちの会社がウィンウィンだから』なんて開き直る始末でした。その後、『一部の病院代は支払うが、その後の通院費や過去5年を遡った被害に関してはゼロ』という和解条件を出されたのですが、謝罪については文書では絶対に渡さないとも言っていて、まるでパワハラの延長線上のように高圧的だったんです。私たちは補償を求める以上にこの問題をちゃんと認識してほしかったので、あえて法廷で戦うことに決めました」(同)

 偽装請負は、企業が仕事を下請けに発注した場合などで、実際の現場の指揮を下請け側が執っていない状態のことを指す。この問題は、企業が下請け労働者に、待遇や環境の規定を無視した無責任な労働をさせることにつながるため、その立場を利用したパワハラを伴うケースも少なくない。

 過去、キヤノンやパナソニックなどの大企業で偽装請負が大きな問題となったことがある。近年、改正労働者派遣法が可決するなどして、より厳しく問題が問われてはいるが、一方で労働者がいざそれを指摘しても、企業がそれを認めずに抵抗することも多く、その証明はハードルが高い作業でもある。

 訴状によると、被告はビルテクノと当のN氏になっており、求めた損害賠償は契約外の作業などを基本給に基づいて割り出したものに、慰謝料を加算したものとなっている。

「一連の行為は、労働契約を無視して契約外の業務を強要した上、休憩時間を与えずに労働させ、さらにパワーハラスメントにより、原告らを取り巻く労働環境を劣悪にし、原告らの人格権および働く権利を侵害するもの」(訴状より)

 提訴の直前、ビルテクノに取材をすると「当人からの申し立てを受け、協議を行っています。内容については回答を差し控えさせていただきます」とのことで、菱サも「外部の方にお答えすることは特にありません」との回答だった。

 訴訟ではどこまでA氏、B氏の訴えが認められるかわからないが、ビルテクノは以前、エレベーター事故の原因の一端が、人員削減による担当者の過酷勤務にあったと批判されたことがあり、“人の使い方”を問われた会社でもある。

 同社は来年中にAI(人工知能)を使ったエレベーター管理をスタートすることを発表しているが、生身の人間への管理に問題があった可能性はないだろうか。裁判の行方が注目される。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

「専業主婦かバリキャリか」二択の時代ではない! 女性のライフプランに必要なこととは?

(前編はこちら)

 配偶者控除廃止問題をきっかけに、現代女性が置かれている日本社会の現状について前編で触れた。では、これからの日本で女性はどう考え、行動して生きていけばよいのだろうか。引き続き、大沢真知子さんに聞いた。

■日本社会は女性に厳しい時代に

――女性がこれからの社会を生きていくためには、どういったライフプランを考えることが大切ですか?

大沢真知子さん(以下、大沢) 今後、配偶者控除が廃止になる可能性は高く、そうなれば、女性が自分自身で自立し、稼ぐことのできるスキルを身につける覚悟をしなくてはいけません。

 自分の人生についての設計がなく、「専業主婦になればいい」という安易な考えでは、生活保障がない上に、結婚して子どもができても金銭的に大変になります。子どもを養育するためにも、お母さんが働ける力を持つことは必要になってくると思います。

 「専業主婦かバリキャリか」と二極化して考えてしまいがちですが、そうではなくて、何があってもきちんと稼げるスキルを持っていることが重要なのです。例えば、市場価値のある資格を取って、夫の転勤についていったとしても働けるようなスキルを持つこと。そのためには、20代で自己投資をして、スキルを身につけていかないといけない。

 稼がないといけないし、子育てもしなければならない。日本社会は女性に優しくない。非常に厳しい時代になってきたと感じています。

――女性にとって厳しい時代とは、具体的にどういうことでしょうか?

大沢 配偶者控除廃止の問題と合わさって、企業が配偶者手当も廃止するところまで踏み込んでしまうと、日本的雇用慣行は変質します。今までは妻の内助の功を前提にした経営がなされていたのですが、これからは子育て支援にシフトしていくと思われます。これは本当に大きな転換だと思います。

 日本は今、時代の転換点に立っていると思うのですが、どういう意味で転換点かというと、女性の社会進出が加速化して、女性が「○○ちゃんのお母さん」というアイデンティティと共に、会社では個人の名前で活躍する両方の領域を持つ時代がやってきたということです。女性に選択肢が増えたという意味では、もちろん良い面もあります。ただ、その分、今回の配偶者控除の問題のように、今まで保護されていた部分がなくなっていくことも理解しなければなりません。男性の賃金も自動的に上がる時代ではなくなりました。

 欧米諸国の場合は、男女の差別なく、女性も活躍できる社会的環境を整えていきますが、日本の場合はそれがまだ十分になされていない。大きな問題です。実際は企業における男女の差別もまだまだ根強く維持されたままで、正規・非正規の問題も解決せず、女性に対して「仕事もしてね」「子どもも産んでね」「子どもを産んでも、仕事辞めないでね」「でも、保育所は十分にないよ」という状況になっています。女性は「一体どうすればいいの!」ってなってしまいますよね。だから結婚しない女性、子どもを産まない女性も増えている。そりゃできないでしょ、って感じです。

 ここまで国が「女性を活躍させます」ということで動くのであれば、まずは女性と男性が同じような条件で仕事ができる、昇進においても差別されないような仕組みを整えることが第一です。それによって、男性は仕事、女性は家庭というステレオタイプな価値観が壊れると思います。

■正社員と同給で雇用が保障された欧米の就業形態「パート」

――海外という話が出ましたが、日本と海外の女性の働き方を比べた時に、大きな違いはありますか?

大沢 今、日本は時代の転換点に立っていると言いましたが、欧米諸国では、それを1970年代から80年代に、すでに経験しています。なので、配偶者控除の問題について、そういう変化をすでに経験している欧米の人に説明すると、向こうは女性が働いているのが当たり前の社会なので、「税金のそんなところの制限について、今ごろ議論しているんですか?」と言われます。女性がもっと稼いでいるので、海外の人から見たら、103万円の壁なんてたかが知しれた額だという認識です。

 欧米諸国では、正社員の短時間勤務のことを「パート」と言います。これは正社員と同じ時給で、雇用が保障されており、ただ労働時間を短くすることができるという就業形態です。基本は熟練を積んだ女性が、子育てのために時間を使いたいという時に、労働時間の調整ができるシステムになっています。日本のように正社員と比べて時給が低かったり、雇用が保障されていなかったりすることはないんですね。

 日本では、基本的な就業形態は、正社員でフルタイムの労働をするか、非正規で最低賃金に近いような時給で働くかの二択になっています。本当は働き手にとって一番ニーズがあるのではないかということで、「限定正社員」という考えがやっと登場しましたが、まだこれも始まったばかり。あまり広まっていません。働かないといけないし、子育てもしなくてはいけない女性のニーズを埋められるような、ワークライフバランス社会の実現が必要なのではと考えています。

 現状は、やはり正社員で長時間働くというのがモデルになっています。それを変えて、中間層をくみ取って、男性も女性も社会の中で仕事と生活とのバランスを保てる社会を作らないといけない。ですが、そこに関する議論は十分に行われていないという印象があります。

■管理者の意識改革が特に遅れている

――女性のワークライフバランスを変えていくためには、男性の意識改革や協力が必要になると思いますが、いかがでしょうか?

大沢 その通りです。男女共同参画基本計画の第4次計画の中に男性の育児休暇の取得率を高めることで、男性の家庭参加を高めるという文言があります。しかし、現状は企業の努力義務に任されていて、ただでさえ忙しい企業が、簡単に男性の働き方を変えることは難しい。若いお父さん世代の人たちが、長時間労働を強いられているのが現状です。

 アンケートを取ると、多くの男性が「子どもと、もっとコミュニケーションを取りたい」「成長を見守りたい」と言っています。しかし、家庭を優先させて転勤を断るとか、残業をしないとなれば、出世を諦めることになってしまう。実際はまだまだ男性の方が稼ぎ主なので、家族にとってよいのは頑張って働くことなのだと悩んでいる男性も多いです。

 いくら男性の意識が変わっても、社会の構造を変えなければ意味がない。それができるのは国のリーダーなのに、全く力が足りていない。会社も同じです。組織の風土が長時間労働を評価するようなものであれば、いくら制度を作っても意味がない。会社の場合は、管理者の意識改革が特に遅れていると思います。日本ではこのような問題が、男性/女性の意識の問題にすり替えられがちですが、社会の構造に大きな問題があるということを認識すべきです。

 ただ、夫婦の関係については、私たち個人が柔軟に考えていくことも必要になります。従来のスタイルに当てはまる家庭ももちろんあると思いますが、お母さんが家にいることだけが子どもにとっていい影響があるとは考えないで、自分たちにとっての一番いい夫婦の関係や子育ての形を探していくことが大切です。

 例えば妻の方に管理職の能力があって、夫は子ども好きだし家庭のことがきっちりとできる人だというケースもあり得ますよね。どちらが昇進のスピードが早いかで育児休暇を取る方を決めるなど、「男は仕事で女は家庭」という意識を取っ払っていくことが、これからの時代は必要になると思います。
(田村はるか)

大沢真知子(おおさわ・まちこ)
シカゴ大学ヒューレット・フェロー、ミシガン大学ディアボーン校助教授、日本労働研究機構研究員、亜細亜大学助教授を経て、日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。2013年、同大学の「現代女性キャリア研究所」所長に就任。内閣府男女共同参画会議の専門調査会、厚生労働省のパートタイム労働研究会などの委員を務める。

「専業主婦かバリキャリか」二択の時代ではない! 女性のライフプランに必要なこととは?

(前編はこちら)

 配偶者控除廃止問題をきっかけに、現代女性が置かれている日本社会の現状について前編で触れた。では、これからの日本で女性はどう考え、行動して生きていけばよいのだろうか。引き続き、大沢真知子さんに聞いた。

■日本社会は女性に厳しい時代に

――女性がこれからの社会を生きていくためには、どういったライフプランを考えることが大切ですか?

大沢真知子さん(以下、大沢) 今後、配偶者控除が廃止になる可能性は高く、そうなれば、女性が自分自身で自立し、稼ぐことのできるスキルを身につける覚悟をしなくてはいけません。

 自分の人生についての設計がなく、「専業主婦になればいい」という安易な考えでは、生活保障がない上に、結婚して子どもができても金銭的に大変になります。子どもを養育するためにも、お母さんが働ける力を持つことは必要になってくると思います。

 「専業主婦かバリキャリか」と二極化して考えてしまいがちですが、そうではなくて、何があってもきちんと稼げるスキルを持っていることが重要なのです。例えば、市場価値のある資格を取って、夫の転勤についていったとしても働けるようなスキルを持つこと。そのためには、20代で自己投資をして、スキルを身につけていかないといけない。

 稼がないといけないし、子育てもしなければならない。日本社会は女性に優しくない。非常に厳しい時代になってきたと感じています。

――女性にとって厳しい時代とは、具体的にどういうことでしょうか?

大沢 配偶者控除廃止の問題と合わさって、企業が配偶者手当も廃止するところまで踏み込んでしまうと、日本的雇用慣行は変質します。今までは妻の内助の功を前提にした経営がなされていたのですが、これからは子育て支援にシフトしていくと思われます。これは本当に大きな転換だと思います。

 日本は今、時代の転換点に立っていると思うのですが、どういう意味で転換点かというと、女性の社会進出が加速化して、女性が「○○ちゃんのお母さん」というアイデンティティと共に、会社では個人の名前で活躍する両方の領域を持つ時代がやってきたということです。女性に選択肢が増えたという意味では、もちろん良い面もあります。ただ、その分、今回の配偶者控除の問題のように、今まで保護されていた部分がなくなっていくことも理解しなければなりません。男性の賃金も自動的に上がる時代ではなくなりました。

 欧米諸国の場合は、男女の差別なく、女性も活躍できる社会的環境を整えていきますが、日本の場合はそれがまだ十分になされていない。大きな問題です。実際は企業における男女の差別もまだまだ根強く維持されたままで、正規・非正規の問題も解決せず、女性に対して「仕事もしてね」「子どもも産んでね」「子どもを産んでも、仕事辞めないでね」「でも、保育所は十分にないよ」という状況になっています。女性は「一体どうすればいいの!」ってなってしまいますよね。だから結婚しない女性、子どもを産まない女性も増えている。そりゃできないでしょ、って感じです。

 ここまで国が「女性を活躍させます」ということで動くのであれば、まずは女性と男性が同じような条件で仕事ができる、昇進においても差別されないような仕組みを整えることが第一です。それによって、男性は仕事、女性は家庭というステレオタイプな価値観が壊れると思います。

■正社員と同給で雇用が保障された欧米の就業形態「パート」

――海外という話が出ましたが、日本と海外の女性の働き方を比べた時に、大きな違いはありますか?

大沢 今、日本は時代の転換点に立っていると言いましたが、欧米諸国では、それを1970年代から80年代に、すでに経験しています。なので、配偶者控除の問題について、そういう変化をすでに経験している欧米の人に説明すると、向こうは女性が働いているのが当たり前の社会なので、「税金のそんなところの制限について、今ごろ議論しているんですか?」と言われます。女性がもっと稼いでいるので、海外の人から見たら、103万円の壁なんてたかが知しれた額だという認識です。

 欧米諸国では、正社員の短時間勤務のことを「パート」と言います。これは正社員と同じ時給で、雇用が保障されており、ただ労働時間を短くすることができるという就業形態です。基本は熟練を積んだ女性が、子育てのために時間を使いたいという時に、労働時間の調整ができるシステムになっています。日本のように正社員と比べて時給が低かったり、雇用が保障されていなかったりすることはないんですね。

 日本では、基本的な就業形態は、正社員でフルタイムの労働をするか、非正規で最低賃金に近いような時給で働くかの二択になっています。本当は働き手にとって一番ニーズがあるのではないかということで、「限定正社員」という考えがやっと登場しましたが、まだこれも始まったばかり。あまり広まっていません。働かないといけないし、子育てもしなくてはいけない女性のニーズを埋められるような、ワークライフバランス社会の実現が必要なのではと考えています。

 現状は、やはり正社員で長時間働くというのがモデルになっています。それを変えて、中間層をくみ取って、男性も女性も社会の中で仕事と生活とのバランスを保てる社会を作らないといけない。ですが、そこに関する議論は十分に行われていないという印象があります。

■管理者の意識改革が特に遅れている

――女性のワークライフバランスを変えていくためには、男性の意識改革や協力が必要になると思いますが、いかがでしょうか?

大沢 その通りです。男女共同参画基本計画の第4次計画の中に男性の育児休暇の取得率を高めることで、男性の家庭参加を高めるという文言があります。しかし、現状は企業の努力義務に任されていて、ただでさえ忙しい企業が、簡単に男性の働き方を変えることは難しい。若いお父さん世代の人たちが、長時間労働を強いられているのが現状です。

 アンケートを取ると、多くの男性が「子どもと、もっとコミュニケーションを取りたい」「成長を見守りたい」と言っています。しかし、家庭を優先させて転勤を断るとか、残業をしないとなれば、出世を諦めることになってしまう。実際はまだまだ男性の方が稼ぎ主なので、家族にとってよいのは頑張って働くことなのだと悩んでいる男性も多いです。

 いくら男性の意識が変わっても、社会の構造を変えなければ意味がない。それができるのは国のリーダーなのに、全く力が足りていない。会社も同じです。組織の風土が長時間労働を評価するようなものであれば、いくら制度を作っても意味がない。会社の場合は、管理者の意識改革が特に遅れていると思います。日本ではこのような問題が、男性/女性の意識の問題にすり替えられがちですが、社会の構造に大きな問題があるということを認識すべきです。

 ただ、夫婦の関係については、私たち個人が柔軟に考えていくことも必要になります。従来のスタイルに当てはまる家庭ももちろんあると思いますが、お母さんが家にいることだけが子どもにとっていい影響があるとは考えないで、自分たちにとっての一番いい夫婦の関係や子育ての形を探していくことが大切です。

 例えば妻の方に管理職の能力があって、夫は子ども好きだし家庭のことがきっちりとできる人だというケースもあり得ますよね。どちらが昇進のスピードが早いかで育児休暇を取る方を決めるなど、「男は仕事で女は家庭」という意識を取っ払っていくことが、これからの時代は必要になると思います。
(田村はるか)

大沢真知子(おおさわ・まちこ)
シカゴ大学ヒューレット・フェロー、ミシガン大学ディアボーン校助教授、日本労働研究機構研究員、亜細亜大学助教授を経て、日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。2013年、同大学の「現代女性キャリア研究所」所長に就任。内閣府男女共同参画会議の専門調査会、厚生労働省のパートタイム労働研究会などの委員を務める。