あの“下町ボブスレー”のマンガ版『黒鉄ボブスレー』で読み解く「国産ボブスレー」の苦悩とは?

 現在、絶賛開催中の平昌冬季オリンピック。男子フィギュアで羽生結弦くんが金メダルを獲ってプーさんまみれになるなど、おめでたいニュースでにぎわう中、残念なニュースもありました。いわゆる“下町ボブスレー”騒動です。

「下町ボブスレー」とはダウンタウン育ちのアメリカ人ボブがスリムになっていくという話ではなく、技術の町・東京都大田区の町工場の職人たちが、高い技術力を結集して、国産ボブスレーを開発しオリンピックを目指すという、日本のものづくり神話を象徴するプロジェクトです。

 その「下ボブ」を平昌五輪で採用する予定だったジャマイカチームが、突如使用拒否したため、契約違反として損害賠償へ……という、何やら、きな臭い騒動へ発展しました。「下町ボブスレー」は、オリンピックに出場した実績はありませんが、メディア展開は非常に先行しており、『下町ボブスレー 東京・大田区、町工場の挑戦』(朝日新聞出版)など6冊以上の関連書籍が出版され、NHKでドラマ化もされました。さらにマンガ版も存在しています。今回は国産ボブスレーの抱える課題や問題点がよくわかる、マンガ版“下町ボブスレー”こと『黒鉄ボブスレー』(小学館)をご紹介してみたいと思います。

『黒鉄(くろがね)ボブスレー』は、タイトルに「下町」を冠していないことが示す通り、下町ボブスレーにインスパイアされたオリジナルストーリーとなっています。しかし、下町ボブスレーのプロジェクト関係者のクレジットが入っており、事実上の公認マンガといえます。

 主人公は東京・大田区の金属加工の町工場「黒井精機」の、ちょっと頼りない跡取り息子、テツ(黒井鉄郎)。「黒井精機」は、お得意先だった大手自動車メーカー「鳴神自動車」から契約を突然打ち切られて経営難に陥り、テツの父親で社長の銀蔵は金策に疲れて脳卒中で倒れてしまいました。そして、テツが急遽社長代理をやることになるのですが、頼りない社長代理の下、黒井精機はこの先どうなってしまうのか……というのが序盤のストーリーです。

 そんな時期、黒井精機の技術を買って、国産ボブスレー作りの依頼が来ていました。依頼主は元ボブスレー日本代表のボブスレーコーチ・倉萩氏。

 日本のボブスレーチームは、今まで海外製の中古やレンタルのボブスレーを使っていたが、本当に強くなるには日本の技術を使った国産のボブスレーが必要で、黒井精機の技術ならそれが可能だ……というオーダーなのです。

 国産ボブスレーの開発に成功すれば、黒井精機の名前を世界に知らしめることができますが、開発費は一切出してもらえません。さらに設計図があるわけでもなく、分解して参考にできるボブスレーは10年前のタイプの中古品……。勝利への方程式が、ないないづくしです。依頼する方も開発費ぐらい出せよ、虫がよすぎだろと思ってしまうところなのですが、とにかく貧乏。それが日本のボブスレーチームの現実なのです。そんな逆境でもボブスレー作りをやることにしたテツは、大田区の町工場全体の仲間たちを巻き込んでの開発を提案。

「金がねえなら技がある。番狂わせは技でやるんだよ。」

「大田区全体でかかれば、宇宙船だって作れる!」

 などといった、テツの魂のこもったセリフに共鳴する仲間たち。大田区の町工場連合で取り掛かる一大プロジェクトへと発展していきます。さすがに大田区で宇宙船のくだりはビッグマウスにも程があると思いますけど、そのぐらい技術力に自負があるってことですね。

 しかし、実は大田区のプロジェクトの他に、もう一つの国産ボブスレープロジェクトが立ち上がっていました。それは黒井精機にとっては宿敵ともいえる鳴神自動車によるプロジェクト。こちらは開発費1億円以上の潤沢な予算や人脈、ラトビア製の最新ソリをベースとした設計などで、テツたちの作る黒鉄ボブスレーよりも4秒以上早いタイムを叩き出し、一躍、国産ボブスレー期待の星としてマスコミに取り上げられることに。強すぎるライバルの登場に意気消沈するテツたち。

 ところが、そんな鳴神自動車製のボブスレーですら、ボブスレーの世界大会では全く通用せず、壁にぶち当たってしまったのです。そして、鳴神自動車はテツの黒鉄ボブスレーチームへ共同開発をオファーするのですが、鳴神自動車と黒井精機のどっちの名前を看板にするかで話が折り合わず、ついにはテツと鳴神自動車の御曹司トオルが草相撲で決着をつけることになります。オリンピックの明暗を左右するビジネスライクな交渉なのに、急にそこだけ下町っぽい決着方法が採用されちゃうあたり、いい味出してます。

 相撲の結果はテツの勝利、トオルのアイデアにより「黒鉄」を「鐵(クロガネ)」の名前に変えた、新生「鐵ボブスレー」が、満を持してついに冬季オリンピックにデビュー! オールジャパンボブスレーチームは最強の国産ボブスレーで、金メダルに向けてレッツゴーだぜ!! という文句なしの感動的なストーリーであります。ちなみに、いつのオリンピックなのかは、特に言及されていないのもポイントです。

 実際の下町ボブスレーも、マンガのようにビシっとサクセスストーリーが決まったら、映画化間違いなしだったと思うのですが、現実は厳しく、日本チームでの採用はおろか、ジャマイカチームにも性能不足でソッポを向かれてしまったというのが、今の状態です。果たして、今後の“下町ボブスレー”はどうなってしまうのか? 2022年の北京冬季五輪では、「黒鉄ボブスレー」みたいにすごいボブスレーを作って名誉挽回してくれるのか? 要注目ですね。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

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天気予報が全然頭に入ってこない! 世界一エロい気象予報士マンガ『お天気お姉さん』

 お天気お姉さん……サラリーマンにとって、出勤前の朝の荒んだ心を癒やしてくれる一服の清涼剤。清楚かつ可憐であり、そして女子アナよりもどことなく親しみやすい存在、日本ではそんなイメージではないでしょうか。

 しかし、海外に目を転じると、メキシコで、アメリカで、ロシアで、超ミニワンピース姿やビキニ姿を惜しげもなく晒す、セクシーすぎて天気予報が全然頭に入ってこないアグレッシブなお天気お姉さんたちが存在します。朝からすでに深夜番組みたいな雰囲気! これはこれで羨ましい。

 でも、ちょっと待ってください。そんなセクシー天気予報の先駆けは、日本のマンガにあったのです。その作品の名は『お天気お姉さん』(講談社)。至ってシンプルなタイトルながら、読んでみたらビックリ、超エキセントリックなドスケベお天気お姉さんが活躍する作品でした。

『お天気お姉さん』は安達哲先生による作品で、1992年から94年まで「週刊ヤングマガジン」で連載されていました。主人公のお天気お姉さん・仲代桂子は、赤字テレビ局ATVの女子アナウンサーです。入社半年にしてゴールデンタイムの看板ニュース番組にお天気お姉さんとして抜擢された桂子は、最初こそイメージ通りに爽やかかつ清楚にお天気レポートをしていましたが、突然……

「北海道では季節外れの大雪になっており、札幌では積雪40センチ」

「あたし今ヒザ上10センチのスカートですが……このぐらいでしょーか?」(スカートをたくし上げるパンツモロ見せ)

 ゴールデンタイムの生放送中に、突然セクシー天気予報を炸裂させ、視聴率が15%超え。一躍、時の人となります。

 その後も、スタッフの制止を無視し、セクシー路線を突っ走る桂子。

「進学新卒の人いっしょにはりきりましょうね、浪人の方々もしっかりね、応援するからがんばってね」

「シャンと胸はって! このようにねッ」(ブラウス全開でブラジャーを放り出す)

 このような過激な天気予報で、短期間のうちに視聴率女王へ、そして局内における女帝として君臨するようになった桂子。まわりの妬みやっかみも相当なもので、桂子を巡って恐るべき女同士の戦いが繰り広げられます。

 特に、桂子のせいで、お天気お姉さんを降板させられた先輩アナウンサー・河合みち子は、出演前の桂子の弁当に下剤を入れるなど、桂子の足を引っ張ろうとします。しかし、それがバレて、桂子に逆襲を受けるハメに。

 桂子は復讐として、みち子が出演前に飲むお茶に下剤を入れるのですが……なんと、ただの下剤ではなく、動物園のゴリラ用強力下剤でした。まさに10倍返しッ! 生放送中に凄まじい便意が襲い、とうとう我慢できず●ンコを漏らしてしまったみち子は仕事が激減し、窮地に陥ります。マンションのローン返済のため、桂子の付き人として働くことになり、公私ともに奴隷のようにこき使われることに……。

 そう、桂子は自分の敵対する相手は徹底的にぶっ潰し、精神的ダメージを負わせた後、自分の奴隷にしてしまうという究極のドS気質を持つ、通称「仁義なき女」なのです。そこには、僕らの思い描くお天気お姉さんとしての清楚さや癒やしの要素が微塵も感じられないのです。

 その後も次々と「仁義なき女」桂子の前に、敵対する女たちが登場します。

 郵政省高官の父を持つフランス支局帰りの女子アナ・島森かおりは、溢れ出る才女っぷりと絶大なる親のコネクションにより、桂子を圧倒。初めて桂子が劣勢に立たされます。さらに、みち子を奴隷として奉仕させているという情報を掴んだかおりは、それをネタに、さらに桂子を追い込もうとします。

 しかし、普段は才女として振る舞うかおりも、内に秘めた溢れ出る性欲がハンパではなく、桂子に触発されて、自分自身がみち子とエロ行為に及んでいるところを桂子に隠しカメラで録画されてしまい、形勢逆転。桂子に脅される立場になります。

 次なる刺客は、元アイドルにして、売れっ子芸能リポーターの本城真奈美。人気タレントの浮気シーンなどを次々に暴き、「週刊文春」並みの活躍を見せます。そんな真奈美の次のターゲットこそが、視聴率女王・仲代桂子。桂子のスキャンダルを暴くために、徹底的につきまとうようになります。

 なかなか尻尾を出さない桂子に焦った真奈美は、チンピラを雇って桂子を襲うように仕向けますが、雇ったチンピラ同士の仲間割れで死者が出てしまいます。さらに、その一部終始を桂子に目撃されるのです。そして、弱みを握られた真奈美も桂子の奴隷に……。この作品、気がつけば桂子の奴隷ばっかりです。

 その後も電気ウナギとのバトル、婦人警察官との女子プロレスなどなど、もはや天気予報などどうでもよいスケール感で、仁義なき女・仲代桂子の絶倫パワーはとどまるところを知りません。

 というわけで、超絶ハイテンションなお天気キャスターによるエロコメディ『お天気お姉さん』をご紹介しました。以前当コラムでご紹介した、癒やし系女子アナマンガ『女子アナ七瀬』とは正反対の内容ですので、読み比べてみても面白いかもしれません。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

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強そうな武将は大体トモダチ!『花の慶次』に学ぶビジネスコミュニケーション術

 みなさまは『花の慶次 -雲のかなたに-』(集英社ほか)というマンガをご存知でしょうか。隆慶一郎先生の歴史小説『一夢庵風流記』を原作とした、原哲夫先生作画のマンガです。原先生といえば『北斗の拳」 があまりに有名すぎるため、その陰に隠れて若干印象薄めではありますが、『CR花の慶次』シリーズならパチンコ店でかなりよく見かけますね。

 舞台は世紀末ではなく戦国時代ですので、当然ながらモヒカン雑魚キャラもいなければ、「あべし」「ひでぶ」といった断末魔の叫びも出てきません。しかし主人公・前田慶次の持つ主人公としての魅力を比較するならば、むしろケンシロウよりも上かもしれません。何より特筆すべきは、そのコミュニケーション能力の高さです。というわけで、今回はビジネスに役立つかもしれない(?)前田慶次という男の魅力に迫っていきたいと思います。

『花の慶次』は、豊臣秀吉や徳川家康も一目置く傾奇者「前田慶次」が、戦国の世を自由気ままに生きる物語です。「傾奇者(かぶきもの)」というのは、本作品で一躍有名になったキーワードで、実際、戦国時代末期から江戸時代初期にかけて存在した、ド派手なファッションに身を包み、異風を好み、常識を逸脱した行動に走る人たち……つまりは、変人ってことですね。現在の歌舞伎の語源にもなったと言われています

 そして、こういった常識外れな行動をかたくなに取り続けることを「傾く(かぶく)」というのです。現代のビジネスの現場で使うとすれば……。

「あいつ、いつもセグウェイで通勤してきて、傾いてるよなあ!」とか、「あいつ、全裸にスーツしか着ていないなんて、まるで傾奇者だな!!」とかいったケースで使うことになりますね。まあ「変な人」で置き換えられるので、無理に使う必要ないんですけど。

 ただ、「傾奇者」前田慶次の凄さというのは、一見ふざけているだけのように見えて、実は命がけで傾いているということです。自分のポリシーを曲げるぐらいなら死んだほうがマシという覚悟で、真剣にふざけているのです。「やってみた」のノリとはちょっとレベルが違います。

 主である前田利家を騙して水風呂にダイブさせるとか……。

 千利久の息子、千道安をボッコボコにするとか……。

 豊臣秀吉の前で猿回し芸をするとか……。

 いずれも無礼を働いたら即刻打ち首になりそうな大物たちを相手に、命がけで傾いています。慶次のレベルの高いおふざけにより、戦国時代のすぐブチ切れそうなジジイどもが、ことごとく一杯食わされてしまうシーンが痛快なのです。

 特に、戦国時代のスーパーモンキーこと豊臣秀吉に至っては、命がけで自分を小馬鹿にしてきた慶次の傾きっぷりをいたく気に入り、「傾奇御免状」を与えます。時の天下人・秀吉から「傾いていいとも!」って言われた慶次は、一躍有名人となり日本中でやりたい放題。その勢いで戦国時代の有名人と次々にお友達になっていきます。

 その人脈はそうそうたるもので、豊臣秀吉、徳川家康、千利休、伊達政宗、上杉景勝、直江兼続、真田幸村、服部半蔵、猿飛佐助、石田三成、風魔小太郎、尚寧王などなど……まるでテレホンショッキングのよう。そう、前田慶次は戦国時代のタモさんといっても過言ではないのです。

 しかし、戦国の世で傾奇者を貫くということは、さまざまな権力者との対立を生みます。それでも傾き続けることができたのは、前田慶次が権力にも暴力にも屈しない腕っ節の強さを持っていたことが大きな要因です。

 

■日本人とは思えないほどのデカさ

 

 前田慶次は、とにかくデカいという設定です。戦国時代の男性の平均身長が157cmぐらいと推定されている中、慶次は190cm・90kgの巨漢で、普通の馬にまたがると、馬のほうがつぶれてしまうという有様。何食ったらこんなにデカくなるんでしょうか。

 とはいえ、原哲夫先生の作品ですから基本的に他の登場キャラもデカイです。というか、同じキャラでも、その時のストーリーの都合に合わせて、デカくなったり小さくなったりします。また、ハリウッドスター並みに顔の彫りが深いのも特徴。肉体に至っては、日本人なのに、アーノルド・シュワルツェネッガーみたいなガチムチの武将がバンバン出てきます。こいつら絶対、主食が肉に違いありません。

 

■どう考えても戦国時代最強の強さ

 

 前述の通り巨漢であり怪力を持つ慶次は、槍を振り回すだけで数十人をまとめてぶった斬ります。その破壊力は北斗の拳でいえばラオウ、キングダムでいえば王騎クラス。しかも、甲賀忍術までマスターしており、刺客が寝込みを襲って暗殺をしようとしても、ゴルゴのように目を覚まして反撃するというスキのなさ。加えて、慶次の乗る愛馬「松風」も、ゾウのように巨大で凶暴なため、それだけで敵が数十人まとめて蹴散らされます。

 結局のところ、自分のポリシーを貫くにはケンカも強くないといけないってことですね!

 

■負けるとわかっていてもあえて戦う漢っぷり

 

 戦国時代ってぐらいですから、そこらじゅうで戦いが起こっているわけで、それこそ勝つことがステイタス、負けはタブーなわけです。しかし慶次はそんな戦国の世でも独自の考えを持っています。

「戦ってやつは、負け戦こそおもしろいのよ!」

「ふふ、負け戦もいいじゃあないか」

 ……など、形勢不利な戦いでも自分の信念や友情のために、あえて向かっていく漢っぷり。しかも最終的に逆転して勝ち戦にしてしまうクレバーさまで見せつけてくれます。慶次のこういうところに戦国女子たちは惚れてしまうんですよね。見習いたいものです。

■ビジネスに使える名ゼリフ「だがそれがいい」

 

 数々の名ゼリフが飛び出す『花の慶次』ですが、いちばん有名なセリフと言えば、主人公・前田慶次の「だがそれがいい」ではないでしょうか?

 前田利家に仕える老臣・村井若水の不始末に怒った利家は、若水に切腹を命じます。そこに追い打ちをかけるように慶次が……。

「戦場で傷だらけになった、きたねえツラだ」

 と無礼とも言える発言。しかし間髪入れずに……。

「だがそれがいい!! その傷がいい!! これこそ生涯をかけ、殿を守り通した忠義の甲冑ではござらんか」

 と続け、利家の怒りを沈めて若水の切腹を回避するという名シーンがあります。

 このセリフ、直前に行った悪口を全て無効化するどころか、むしろ逆にいい印象を与えてしまう。これって、ビジネスの現場でめちゃくちゃ使えるセリフではないでしょうか?

「お前って同じミスを何度も繰り返して、ほんと使えねーやつだよな」

「だがそれがいい!!」

「やだー課長ってアニオタなの? キモーい!」

「だがそれがいい!!」

 ……などなど、冷静に考えると何がいいんだかサッパリわからない気もするんですが、なんとなくその場の寒い雰囲気をポジティブに転換できますよね。

 このように、ピンチをチャンスに変える卓越したコミュニケーション術と、己のポリシーを貫く芯の強さをもった前田慶次の能力こそ、現代のビジネスにおいて必要なスキルとはいえないでしょうか?

 とりあえず、明日からさっそく職場で「だがそれがいい」をこんな感じで使ってみてはいかがでしょうか。

「来月から給料20%カットだ!」

「だがそれがいい!!」

 いや、それはダメだろ……。

(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

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シャンシャンブームに物申す!! 読めばパンダが嫌いになる? パンダマンガ3選

 上野動物園に新しく生まれたジャイアントパンダ「シャンシャン」のブームがスゴいですね!! 久々のパンダのお祭り騒ぎで、日本人のパンダ好きが改めて証明された感じです。なんでも観覧希望者の抽選倍率が40倍とか……。

 マスコミも連日の加熱報道で、木から落ちた! とか、自力で排便できた! とか、フンに竹の葉が混じっていた!! とかとか……文字通り尻の穴まで覗くレベルの密着取材。もはやパンダのプライベートはゼロですよ。

 ところで、こんなに人気のパンダですから、当然ながらマンガの世界でもパンダをフィーチャーしたマンガというのがいろいろあります。本日はそんなパンダマンガたちをご紹介したいと思いますが、もしかしたらこれらを読んだらパンダのことが嫌いになってしまうかもしれません。

■『ささひと』(花月仁/日本文芸社)

 下野動物園で生まれたパンダ「ロンロン」のお話。まさしく今のシャンシャン同様、かわいらしい赤ちゃんパンダの登場で日本中に「ロンロン」ブームが巻き起こるのですが、なんと成長するにつれて二足歩行で歩き、人の言葉をしゃべり始め、人間並みの知能を持ち始めるのです。そして天才パンダ「ロンロン」は一般家庭の養子となって、小学生「鈴木笹人(ささひと)」という名前で生活を始めます。

「笹だけは食べさせないで。嫌いなんだあれ臭うから」

「二度とパンダ扱いするな、絶対にだ!!」

 などと、どうみてもパンダなのに、パンダらしからぬドギツいセリフをしゃべるささひと。

 しかし、巨乳の美女を見つけると、普段のクールな態度が180度豹変。全力で愛玩動物を演じ、かわいさ全開でにじり寄ったあげく、オッパイに顔をうずめたり、むしゃぶりつくというエロパンダぶり。その一方で、男子や貧乳の女子に対しては、冷たくそっけない態度をとるという二面性を持っているのです。

 そう、この作品に出てくるパンダは、かわいいのに中年スケベオヤジのようなエロさと性格の悪さを兼ね備えた、パンダのイメージを覆す胸糞悪いパンダ物語だったのです。

 中学生になると、童貞を卒業したささひとは、そのエロパンダぶりがさらにタチが悪くなり、インターネットを使って「パイパイ会員」なるファンクラブを作り、自分だけの巨乳ハーレムを築き上げて毎日エロ三昧の日々を送ります。

 ……なんなんでしょうか、この邪悪なパンダ。僕らがパンダに求めていたほのぼの動物癒やし系とは真逆な、まるで昨今のパンダブームに対するアンチテーゼのような展開が斬新なマンガといえます。もしシャンシャンがこんなにエロかったらやだなー。

■『パンダラブー』(松本正彦/青林工藝舎 ※復刻版)

 1972年、日中国交正常化のシンボルとして初めて中国から日本にやってきたパンダ「カンカン」と「ランラン」。そのブームに乗じて1973年に刊行された摩訶不思議なパンダ(?)のマンガが『パンダラブー』です。

 パッと見は、パンダなのにどことなくブタっぽい、愛らしいのか愛らしくないのか微妙なゆるキャラが「ブバーブバブバブヘバー」という間の抜けたセリフとともに、大好物のたこ焼きを食って巨大なウ○コをするという、シンプル・イズ・ザ・お下品なギャグマンガとなっています。

 このマンガの凄いところは、動物愛護団体が発狂しそうな雑なパンダの扱いにあります。

 裸にネクタイ姿、股間にはキン○マがブーラブラという、変態っぽいスタイルのパンダラブーが、ドブ川に逆さ吊りにされたり、土管に閉じ込められて凶暴なブルドックを放たれたり、包丁で毛皮を剥ぎ取られそうになったりという、昭和のマンガならではのハチャメチャ残酷ギャグのオンパレード。日中友好のシンボルとかいう意識は皆無で、これほど愛され要素のないパンダ作品は他に見たことがありません。

 ちなみにこの『パンダラブー』は、そのあまりに凄まじい内容のため、カルト的なファンがいることも有名で、廃盤になっていた作品がファンの熱い要望により2002年に復刻されたという伝説を持つ作品でもあります。

■『やさぐれぱんだ』(山賊/小学館)

 ここまで読んで、だいぶパンダのことが嫌いになってきたことと思いますが、安心してください、最後にご紹介するのは一番大丈夫なやつです。どのくらい大丈夫かというと、堺雅人主演で実写版になっているぐらいの品質です。

 毎回、作者の山賊氏とパンダが会話するというだけのシンプルな構成のマンガですが、そのパンダが愛玩動物らしからぬ妙にやさぐれた発言をするところがシュールなのです。

「パンダさんには鳴き声とかないんすか?」

「ああん?」

「ほら、犬だったらワンワン、猫だったらニャーニャーみたいな」

「ばか野郎おめえ、男が泣いていいのは、生まれた時と親が死んだときだけでぇ」

 このような会話の応酬なのですが、これをパンダに言わせるだけで、とたんにかわいらしく、どこか憎めない雰囲気を醸し出すのです。

 もし、これがパンダではなくサラリーマンのオッサン同士の会話だったら面白くともなんともなく、ただのスベっている会話です。同僚のOLからはさぞかし冷たくあしらわれることでしょう。憎めないどころか憎悪の対象にすらなりえます。しかしパンダだったらスベり知らず。いわゆるパンダマジックを決して侮ってはいけないのです。

 というわけで、日本を代表する(?)パンダマンガを3作品紹介してみました。これを読んだら、行列に並んでまでパンダをみなくてもいいかなーと思うようになるかもしれません。でも19年には中国に返還されるというウワサもありますし、チャンスがあればやっぱり見ておくべきですね!(どっちだよ)
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

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クセが強すぎる! 昭和のレジェンドレスラーを描く『プロレススーパースター列伝』とは?

 みなさんは、プロレスはお好きでしょうか? 40代、あるいは30代の男子なら、青春時代に一度はプロレスにハマった経験があるのではないでしょうか? 児童館でウエスタンラリアットやバックドロップ、コブラツイストに四の字固めなどを掛け合って瀕死になったのも、今はいい思い出です。あっ、今、技の掛け合いをしている子どもたち! 四の字固めをやられると本当にしばらく歩けなくなるから要注意な!!

 近年、プ女子と呼ばれる女性ファンを中心に、プロレスブームが再び復活の兆しがあるというニュースをチラホラ見かけるようになり、思わずうれしくなってしまったのですが、僕らがハマっていた1980年代のプロレスブームは、本当にすごかった。ジャイアント馬場の全日本プロレスにアントニオ猪木の新日本プロレスという、野球でいえばセ・パに相当する2大団体の存在。ファンの度肝を抜いた初代タイガーマスクの登場、そしてゴールデンタイムのTV中継、東スポの見出しが毎日のようにプロレスネタなどなど……実にいい時代でした。

 本日はそんなオールドプロレスファンの美化しきった思い出に、さらにブーストをかけてくれるであろうプロレスマンガの名作をご紹介したいと思います。その名も『プロレススーパースター列伝』(講談社漫画文庫ほか)。

『プロレススーパースター列伝』は巨人の星、あしたのジョー、タイガーマスクの故・梶原一騎先生が原作、作画が原田久仁信先生。以前ご紹介した『男の星座』(日本文芸社ほか)も、このコンビの作品でした。

 いわゆる馬場・猪木による昭和プロレス全盛の時代に活躍したプロレスラーたちが、いかにして成り上がっていったかを紹介する伝記的作品なのですが、出てくるレスラーがことごとくキャラが濃いのです。そしてクセの強さが尋常じゃない。まあプロレスラーってキャラが濃くてなんぼのところがありますけど、それにしても限度があります。あり得ないほどのヤバイエピソードと名言の数々……久しぶりに読み返したら、面白すぎて震えが止まらなくなりました。

 作品中で紹介されているプロレスラーは、スタン・ハンセン、アブドーラ・ザ・ブッチャー、アンドレ・ザ・ジャイアント、タイガー・ジェット・シン、ジャイアント馬場とアントニオ猪木、初代タイガーマスク、ハルク・ホーガン、ブルーザー・ブロディなどなど……いずれもレジェンド級の名レスラーばかりです。オススメは、「黒い呪術師」アブドーラ・ザ・ブッチャーが出てくるエピソード。本作品に出てくるレスラーは例外なく口が悪く、面白名ゼリフのオンパレードになっていますが、ブッチャーとブルーザー・ブロディのリング上での言い合いはもう最高です。

「きさまもステーキになりてえか!?」

「黒ブタがトンカツになりやがれ!!」

 ブッチャーはその巨体のため仕方ないのですが、とにかくかわいそうなぐらい黒ブタネタでイジられまくります。ブラックタイガーとの舌戦もすごいです。

「黒ブタ風情が黒いトラに対してでかい口をきくな!」

「あッ、いった、いった、ミーが一番トサカにくることを──!」

 ブタなのにトサカにくるとか……そんな面白い言い回し、実際は絶対言ってないと思うんですが、梶原先生のセンスで面白おかしく脚色されてます。

「インドの狂虎」と呼ばれるタイガー・ジェット・シンも、文字通りクレイジー。有名なエピソードとしては、「新宿伊勢丹路上乱闘事件」というのがありまして、アントニオ猪木と当時の奥さん、倍賞美津子が夫婦でショッピングをしていたところ、タイガー・ジェット・シンとその手下たちが襲いかかり、猪木をボコボコに、通行人が通報したためパトカー数台が出動して大騒ぎ、というガチの暴力事件がありました。その辺のエピソードも、しっかりマンガ化されています。

「ヘイッイノキ!! 大事な美人ワイフの目のまえでぶざまにブチのめしてやるぜ!」

「おまえは狂人か!?」

 こんなセリフのやり取りがあったのです。たとえ演出だったとしても、今だったらほんとに逮捕されそうでシャレになってません。当時のなんでもありなプロレスの雰囲気を象徴している事件といえます。

 本作品で大きくフィーチャーされている、初代タイガーマスクのエピソードも演出過剰すぎて目が離せません。タイガーマスクはデビュー前、メキシコの秘密養成所でプロレス修行を積んでおり、火の輪くぐりをしたり、マットが鉄板で電流が流れている、そんなリングでスパーリングしたり、ガラスの破片がちりばめられたサンドバッグでキックの練習をしたり、トゲのついたバーベルを持ち上げたり……などの拷問スレスレの特訓をして強くなったと紹介されています。今考えると、ほぼ原作マンガ『タイガーマスク』(講談社)の悪役レスラー養成機関「虎の穴」のエピソードと一緒で、あまりに出来すぎなのですが、連載当時、少年だった僕は、プロレスは100%リアルガチな格闘技だと思っていましたので、このマンガに描かれていることもすべて真実だと思って信じ切っていました。

 プロレスといえば、スポーツなのかショーなのか、格闘技なのかエンタメなのか、ガチなのか八百長なのかというグレーゾーンな議論が必ず付きまとっていたのですが、2001年に元新日本プロレスのレフリー・ミスター高橋氏が書いた暴露本『流血の魔術 最強の演技』(講談社+α文庫)で、すべて勝敗がはじめっから決まっているショーであることが明らかにされ、今までプロレスのグレーだった部分がクロで確定してしまったのです。

 これは僕らのように、薄々感づきながらもプロレスを格闘技だと信じ続けていたファンにとって、かなり衝撃的なことでした。と同時に『プロレススーパースター列伝』に書いてあったこともウソッパチだらけだったんだなあと、気づかされたものです。

 何しろ、作品中でアントニオ猪木が「だれも八百長などと疑わぬ、実力が全ての過激な新日本プロレス」って、思いっきり書いてますからね。

 とまあ、そういう経緯があり、プロレスはエンタメであると踏まえた上で改めて読んでみても、やっぱり『プロレススーパースター列伝』には色あせない面白さがあります。登場キャラが魅力的すぎるんですよね。この作品を読んだ後に、『流血の魔術 最強の演技』を併せて読むと、マンガでいかにも真実であるかのように描かれている伝説がことごとく否定されており、これはこれで非常に味わい深く楽しめますよ。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

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ありそでなかった“スマホならでは”の表現手法「偶然の出会い」から生まれた『あげさげコミック』に注目!

 スマホを上に上げると「テンションの上がる」ストーリーに、スマホを下に下げると「テンションの下がる」ストーリーに展開していく。そんな、スマホが普及する現代ならではといえるWebコミック『あげさげコミック』が注目を集めている。

 使われている技術は、すでに普及しているもの。でも、誰も今までこんな使い方があるとは気づかなかった!! そんな声が聞こえてきそうなマンガ表現のイノベーションを生み出した制作者に話を聞いた。

『あげさげコミック』は漫画・デザインを担当する、藤井マリーさん、音楽担当の馬道まさたかさん。マークアップ・フロントエンド担当のやまだだいきさんの3人の共同製作で生まれたものだ。

 現在公開されているストーリーは、藤井さんの執筆した「おーえる子のお昼休み」。音楽と共に進むストーリーは、前述の通りスマホを上げると幸せな方向へ。下げると、ちょっと落ち込む方向へと流れていく。

 ただ、下げたといってもバッドエンドではなく、ちゃんと前向きになることはできる。

 いわば、一服の清涼剤ともいえる物語だ。

 もともとリリースをしたのが1年ほど前。それが今年10月、藤井さんが「コンペにでも出そうか」とTogetterにまとめたところ、にわかに注目を集めたという経緯である。

 そんな『あげさげコミック』が生まれたのは、文字通り偶然が重なった人の出会いから。

 製作陣の3人は、同じWebコンテンツを制作する会社のメンバーなのである。

「私はWebデザイナー、2人はエンジニアなんです。2年ほど前ですが、社内でハッカソン(ソフトウェア業界で頻繁に行われている開発イベント)があった時に、馬道とペアになったんです。その時のテーマが<10年後にも見られるコンテンツ>でした。そこで、生まれたのが現在公開しているもののプロトタイプ版だったんです」(藤井さん)

 でも、それがコンテンツを表現し、制作したいという2人の心に火をつけた。「もっとちゃんとしたものがつくりたい」と思った2人は、やまださんも誘い本格的な制作に乗り出した。

 こうして、Web業界らしくスケジュールもちゃんと引いて、タスク管理をした上で2カ月あまりの期間を経て『あげさげコミック』は生まれたというわけである。

 この『あげさげコミック』。前述のように、技術面だけでなく描かれている作品自体が魅力的。

 アーティストとしても活躍している藤井さんの独特のタッチが、非常に新鮮なのである。

 もともと、美大で大学院まで進み絵画を専攻。「私以外の同級生は、みんな美術家になった」という藤井さんは言う。

「より多くの人にスキマ時間に楽しんでもらえる作品を描きたいと思っているんです。自分の作品を、もっと日常でアウトプットしていけたらいいですね」

 取材で感じたのは制作陣3人のツーカーな雰囲気。アーティストでもある藤井さんは『あげさげコミック』の制作にあたっては率直な「レビュー」、いわばダメ出しをされる場面もあった。

 でも、それも「初めての体験なので、面白かった」と笑う。

 気の合う者同士で集まって、ひとつの作品を仕上げていく。その雰囲気自体が、一服の清涼剤のように感じられた。
(文=昼間たかし)

ありそでなかった“スマホならでは”の表現手法「偶然の出会い」から生まれた『あげさげコミック』に注目!

 スマホを上に上げると「テンションの上がる」ストーリーに、スマホを下に下げると「テンションの下がる」ストーリーに展開していく。そんな、スマホが普及する現代ならではといえるWebコミック『あげさげコミック』が注目を集めている。

 使われている技術は、すでに普及しているもの。でも、誰も今までこんな使い方があるとは気づかなかった!! そんな声が聞こえてきそうなマンガ表現のイノベーションを生み出した制作者に話を聞いた。

『あげさげコミック』は漫画・デザインを担当する、藤井マリーさん、音楽担当の馬道まさたかさん。マークアップ・フロントエンド担当のやまだだいきさんの3人の共同製作で生まれたものだ。

 現在公開されているストーリーは、藤井さんの執筆した「おーえる子のお昼休み」。音楽と共に進むストーリーは、前述の通りスマホを上げると幸せな方向へ。下げると、ちょっと落ち込む方向へと流れていく。

 ただ、下げたといってもバッドエンドではなく、ちゃんと前向きになることはできる。

 いわば、一服の清涼剤ともいえる物語だ。

 もともとリリースをしたのが1年ほど前。それが今年10月、藤井さんが「コンペにでも出そうか」とTogetterにまとめたところ、にわかに注目を集めたという経緯である。

 そんな『あげさげコミック』が生まれたのは、文字通り偶然が重なった人の出会いから。

 製作陣の3人は、同じWebコンテンツを制作する会社のメンバーなのである。

「私はWebデザイナー、2人はエンジニアなんです。2年ほど前ですが、社内でハッカソン(ソフトウェア業界で頻繁に行われている開発イベント)があった時に、馬道とペアになったんです。その時のテーマが<10年後にも見られるコンテンツ>でした。そこで、生まれたのが現在公開しているもののプロトタイプ版だったんです」(藤井さん)

 でも、それがコンテンツを表現し、制作したいという2人の心に火をつけた。「もっとちゃんとしたものがつくりたい」と思った2人は、やまださんも誘い本格的な制作に乗り出した。

 こうして、Web業界らしくスケジュールもちゃんと引いて、タスク管理をした上で2カ月あまりの期間を経て『あげさげコミック』は生まれたというわけである。

 この『あげさげコミック』。前述のように、技術面だけでなく描かれている作品自体が魅力的。

 アーティストとしても活躍している藤井さんの独特のタッチが、非常に新鮮なのである。

 もともと、美大で大学院まで進み絵画を専攻。「私以外の同級生は、みんな美術家になった」という藤井さんは言う。

「より多くの人にスキマ時間に楽しんでもらえる作品を描きたいと思っているんです。自分の作品を、もっと日常でアウトプットしていけたらいいですね」

 取材で感じたのは制作陣3人のツーカーな雰囲気。アーティストでもある藤井さんは『あげさげコミック』の制作にあたっては率直な「レビュー」、いわばダメ出しをされる場面もあった。

 でも、それも「初めての体験なので、面白かった」と笑う。

 気の合う者同士で集まって、ひとつの作品を仕上げていく。その雰囲気自体が、一服の清涼剤のように感じられた。
(文=昼間たかし)

“女体盛り”に特化しすぎたギャンブルマンガ『リーマンギャンブラーマウス』が熱すぎる!

 やってきました忘年会シーズン。今年は日本全国のブラック企業で、宴会芸としてアキラ100%的なことをやらされる不幸な若手サラリーマンが続出することがほぼ確定している今日このごろかと思いますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

 ところで宴会芸といえば……そう「女体盛り」の存在を忘れてはいけませんよね! 全裸の女体に刺し身とかを盛り付けて、宴会などで提供するアレですアレ。その名は聞いたことがあるけれど、実際に見た者はほとんどいない……エロ劇画とか、日本文化を勘違いしてるハリウッド映画でたまに出てくる都市伝説のようなメニュー、それが「女体盛り」。

 そんな「女体盛り」を大々的にフィーチャーしたギャンブルマンガが存在します。むしろ女体盛りマンガと言い切ってもいいかもしれない、その作品の名は『リーマンギャンブラーマウス』(講談社)。

『リーマンギャンブラーマウス』の主人公は、篁(たかむら)忠則というサラリーマン。商社の経理次長を務めるエリートサラリーマンですが、なんの欲もなく無気力に、リスクを避けて平々凡々と働く日々を過ごしており、ある日、妻から「体が疼くの」という謎の理由で離婚届を突きつけられ、家を出ていかれてしまいました。

 いつものように帰宅のために電車に乗っていると突然、篁の股間を触ってくる、人差指と中指のない謎の痴女が登場。「ウチが変えたるわ、アンタの粗チン人生」という、これまた謎のセリフとともに雑居ビルにある裏カジノに招待されます。そこでやっていた「カワーダイス」という20面体サイコロのゲームに目覚めた篁は、以後「マウス」という名で全財産をつぎ込み、ギャンブラーの道を突き進むことになります。

 そんなマウスがカワーダイスの対戦中に、対戦相手の食事メニューとして呼び出されたのが「インドまぐろ子 20歳」という女体盛りの女。インドまぐろ子は、親の残した2億円の借金を抱え、女体盛りのバイトで体を張って借金を返している頑張り屋さんなのです。頑張る方向がちょっとアレですが。

 カワーダイスでの目覚ましい活躍により、裏カジノの胴元の家に招かれたマウスは、そこでインドまぐろ子と再会。まぐろ子は、そこでは裸でブリッジをする人間テーブルのバイトをやっていました。……いろんな職種があるもんですね。

 マウスは、そんなインドまぐろ子の借金をギャンブルで稼いだ金で精算してやります。以降、まぐろ子はマウスへの恩返しのため、マウスがギャンブルで劣勢に立たされると、自らを女体盛りとして捧げることで、マウスを応援するキャラクターとなります。……応援って、女体盛りにそんな効果が!?

 ちなみに、まぐろ子はこんな女体盛りメニューで応援してきました!

 人間てっちり、人間トンカツ、人間スタミナB定食、人間ブルマン(コーヒーを胸の谷間に注いだもの)、人間牛丼特盛りつゆだく玉入り……。

 さらに、特別メニューとして、越中ふんどしお赤飯合格盛り、2001年シチューの旅、学生大徳並バーガーセットなどなど、メニューの意味はさっぱりわかりませんが、とにかく女体盛りでこれだけのバリエーションが出てくる作品は、ほかに存在しないと思われます。女体盛りのバリエーションでギネス申請した方がいいレベルです。

 さらに、まぐろ子の存在を脅かす若手女体モラー、「インドカレー子」による超豪華メニュー「人間フレンチ仔牛の腎臓ローストシャンピニオン添え内臓ソースとフォアグラのテリーヌ」や、まぐろ子の母による「母体盛り たまたまたまらん玉子焼き」なども登場します。もはやギャンブルマンガというより、女体盛りマンガと呼んだほうがいいという意味がおわかりになりましたでしょうか。

 これだけ女体盛りが出てくるマンガですから、まぐろ子による数々の「女体盛り名言」もあります。

「女体盛りができなきゃ愛する人も助けられないなんて!」

「人が女体盛りを選ぶんじゃないのよ、女体盛りが食べる人を選ぶのよ」

 まあ……セリフに「女体盛り」が入ってる時点で名言の台無し感がすごいですが。

 そういえば、まぐろ子以外に、もう一人とんでもない女キャラの存在を忘れていました。それは、作品の冒頭で、「体が疼くの」という謎の理由で家を出ていったマウスの元女房、亜希子です。ギャンブルを知り、ワイルドで魅力的になったマウスの姿をみて、ヨリを戻そうとして毎回「お情けを頂戴に上がりました」というセリフとともに、めちゃくちゃ押しの強いエロコスチュームで登場。マウスのアパートに忍び込んだり、マウスの入っている男子トイレ個室に入ってきたり、神出鬼没のストーカー行為を働きます。金で追い払おうとするマウスに対し……。

「肉棒以外の情けはいらないッ!!」

 などと、とんでもないエロ名ゼリフを残します。

 というわけで、局地的に超有名な女体盛りギャンブルマンガ『リーマンギャンブラーマウス』をご紹介しました。単行本では、ネームの段階で没になった数々の女体盛りメニューも紹介されており、ギャンブルマンガ好きには微妙ですが、女体盛りマニアなら間違いなく必見の作品と言えます。何しろ、インドまぐろ子の登場するシーンを集めた「インドまぐろ子DX」「インドまぐろ子EX」という別冊が出ているぐらいですから、女体盛りマニアって意外とたくさんいるんでしょうね……。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

男子禁制少女マンガの名作『ベルサイユのばら』は、男が読んでも面白いのか?

 正直に白状しますと『ベルサイユのばら』を、わりと最近まで読んだことがありませんでした。自称マンガ読みとして、この至高の名作を読んでいなかったのは誠に恥ずべきです。ただ、言い訳をさせてもらうと、いわゆる伝統的様式美にのっとった、全てのコマに花びらが咲き誇っているような少女マンガって、男にとっては読むのに結構勇気がいるんです。

 女子の皆様だって、『ゴルゴ13』とか『野望の王国』とか『マッド★ブル34』みたいな劇画を薦められたら、普通は躊躇しますよね? それと同じです。ましてや、宝塚ファン御用達の『ベルばら』に、僕のような汚いおっさんが土足で踏み込むことなんて、できやしないのです。もし『ベルばら』を読むのであれば、最低でも正装(白い詰め襟服)をした上で、正座して読むのが礼儀というものではないでしょうか?

 ……というわけで、今回は長年避け続けていた『ベルサイユのばら』を読んだ感想を、ありのままに書き綴りたいと思います。

 僕がどのぐらい『ベルばら』を知らなかったかっていうと、「アンドレ」と聞いただけで、人間山脈アンドレ・ザ・ジャイアントを真っ先に思い浮かべるぐらい何も知りませんでした。「オスカル」だってアライグマの親戚か何かだと思っていたし、フランス革命の史実に基づいた話だったってことすら知らなかった。マリー・アントワネットも、「パンのかわりにケーキを食べる人」ぐらいの認識しかなかったし。そんな僕でも『ベルばら』を読んだ後、フランスの歴史についてめっちゃ詳しくなった。『ベルばら』ってフランス史の勉強になるんですね!!

 そんな僕が、まだ作品を読んでいない貴方のために、作品をサクッと紹介してみましょう。『ベルばら』は、おおよそ初期・中期・後期に分かれており、その都度主人公や設定が移り変わります。

 

■マリー・アントワネットがブイブイいわせた初期

 

『ベルばら』といえば、メインはオスカルとアンドレというのが一般的なイメージではないでしょうか。少なくとも僕はそう思っていました。もちろんそれも間違いではないのですが、初期はとにかくフランス王妃マリー・アントワネットが中心。アントワネットの身を守る近衛兵連隊長が男装の麗人・オスカルで、そのオスカルをサポートする右腕的存在がアンドレというわけです。

 ストーリーは、オーストリアの皇女で絶世の美女と名高いマリー・アントワネットが、政略結婚でフランスの王太子・ルイ16世の元に嫁ぐところから始まります。フランスに来るやいなや、力こそパワー・金こそマネーといった勢いで贅沢三昧、権力振るいまくりのアントワネット。なるほど、こりゃあパンのかわりにケーキを食べるわけです。

 特に、ルイ15世の愛人として宮廷で権力を振るっていたデュ・バリー夫人とのバッチバチのバトルが見どころです。自分の権力を脅かすアントワネットの存在を疎ましく思うデュ・バリー夫人に対し、下町の娼婦から成り上がったデュ・バリー夫人を徹底的に見下すアントワネット。

「なんて……なんてずうずうしい女!!」

「そ……そんないやしい女がどうしてこの宮廷に……」

「オーストリアのお母様はそういう種類の女たちにはムチをくれて感化院へほうりこんでいたのに……!」

 もう、めちゃくちゃ蔑んでます。ムチをくれて感化院に放り込むって……ものすごいドS気質を感じますね。女王様だけに。

 当時、宮廷の女性は、マリー・アントワネットにお声がけされることがステイタスとなっていました。デュ・バリー夫人は宮廷で自分の立場を維持するために、なんとしてもアントワネットに声をかけてもらいたいのですが、アントワネットは徹底的にデュ・バリー夫人を無視。ここから、壮絶な声をかける、かけないの攻防が始まります。なんていうか……王室って暇なんすね。

 最終的には、アントワネットの態度に憤った、ルイ15世の命令により、デュ・バリー夫人に声をかけなければならなくなります。その時のアントワネットの有名なセリフがこちら。

「きょうは……ベルサイユはたいへんな人ですこと!」

 だから何なの……って感じのめちゃくちゃ内容のないセリフですが、デュ・バリー夫人に声をかけた後のアントワネットの絶望は凄まじいものでした。

「負けた……!! 王太子妃が、王太子妃が娼婦に敗れた……」

 たかが挨拶しただけでこの騒ぎですよ。フランス王室マジでめんどくさいわー。

 

■オスカル・アンドレ愛のセレナーデな中期

 

 国民感情を無視した贅沢三昧で、民衆に嫌われまくりのマリー・アントワネットの出番は次第に少なくなり、中期では男装の麗人・オスカルがメインのストーリーとなります。

 それにしても噂通り、オスカルはマジでイケメン(女ですが)。見た目の美しさもさることながら、立ち居振る舞いも実に男らしい。そして何より漢気がハンパない(女ですが)。

「わたしの屍を越えていけ!! わたしの血で紅にそまっていけ!!」

 そんな漢気あふれるセリフを放つオスカルも、やはり女性。いままで女を捨てて生きてきたのに、ある男の存在が、ついに女の部分を目覚めさせてしまいます。その男はスウェーデンから来た貴公子、フェルゼン。フェルゼンは、マリー・アントワネットに一目惚れしており、一方のアントワネットも、もっさい夫のルイ16世よりも、男性フェロモンムンムンのフェルゼンと結ばれたい……という禁断の関係なのです。立場の違いから決して結ばれることはない苦しみを抱えるフェルゼンですが、そのフェルゼンを密かに愛してしまったオスカルも、また同様に苦しむことになるのです。

 そのオスカルの苦しみを支えるのが、オスカルの幼なじみでありサポート役のアンドレ。初期は知名度の割に全然役立たずの存在だったのですが、中期では突然大学デビューした若者のように活躍し始めます。特にオスカルのピンチをかばって自分が片目の視力を失ってしまうあたりは、グッとくるものがあります。

 そんなアンドレはオスカルに片想いをしており、アントワネット←フェルゼン←オスカル←アンドレという片想いの連鎖の構図が起こっているのです。そこらの昼ドラよりも凄まじい展開ですね。

 オスカルのためだけに生きる一途な男、アンドレにも、作品を代表する名ゼリフがあります。オスカルの花婿候補として登場したジェローデルに屈辱的なセリフを言われ、怒りのあまりティーカップの液体をブッかけます。

「そのショコラが熱くなかったのをさいわいに思え!!」

 まさかのショコラ!! コーヒーでも紅茶でも、ココアでもなければミロでもない、ショコラです! さすがおフランスは高貴さが違います。こればっかりは男子向けマンガでは絶対に出てこない発想ですね。あと、ショコラをブッかけられるのって、コーヒーよりもベトベトして数倍ダメージでかそうです。

 

■主要キャラ全滅!フランス革命後のお通夜ムードな後期

 

 これだけ華々しい王族・貴族の生活を描いた作品でありながら、作品の終盤はまるで別のマンガのようにダークな展開です。

「アンドレ、この戦いが終わったら結婚式だ!」

 どう考えても死亡フラグなオスカルのセリフの後、作品の象徴的存在だったオスカルやアンドレが戦死してしまいます。

 その後は再び、マリー・アントワネットが物語の中心に。しかし前期の華々しさとは一変し、フランス革命後に没落していく王族の姿が描かれています。フェルゼンの協力むなしく脱出に失敗したルイ16世とアントワネットがギロチンで処刑されるというシーンが描かれており、マンガ的には主要キャラ全滅でお通夜のような状態です。いくら史実に基づいているとはいえ、ここまでとは……。作品後期の『ベルばら』は、そこらの劇画よりもよっぽどハードボイルドでした。そう、『ベルばら』は少女漫画であり、劇画でもあったのです!!

 というわけで、真の『ベルばら』ファンが読んだら激怒するかもしれない、『ベルばら』未体験男子向けレビューでした。結論としては、男子でも死ぬまでに一回は読んでおくべき作品です!(できれば白い詰め襟服で)
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

男子禁制少女マンガの名作『ベルサイユのばら』は、男が読んでも面白いのか?

 正直に白状しますと『ベルサイユのばら』を、わりと最近まで読んだことがありませんでした。自称マンガ読みとして、この至高の名作を読んでいなかったのは誠に恥ずべきです。ただ、言い訳をさせてもらうと、いわゆる伝統的様式美にのっとった、全てのコマに花びらが咲き誇っているような少女マンガって、男にとっては読むのに結構勇気がいるんです。

 女子の皆様だって、『ゴルゴ13』とか『野望の王国』とか『マッド★ブル34』みたいな劇画を薦められたら、普通は躊躇しますよね? それと同じです。ましてや、宝塚ファン御用達の『ベルばら』に、僕のような汚いおっさんが土足で踏み込むことなんて、できやしないのです。もし『ベルばら』を読むのであれば、最低でも正装(白い詰め襟服)をした上で、正座して読むのが礼儀というものではないでしょうか?

 ……というわけで、今回は長年避け続けていた『ベルサイユのばら』を読んだ感想を、ありのままに書き綴りたいと思います。

 僕がどのぐらい『ベルばら』を知らなかったかっていうと、「アンドレ」と聞いただけで、人間山脈アンドレ・ザ・ジャイアントを真っ先に思い浮かべるぐらい何も知りませんでした。「オスカル」だってアライグマの親戚か何かだと思っていたし、フランス革命の史実に基づいた話だったってことすら知らなかった。マリー・アントワネットも、「パンのかわりにケーキを食べる人」ぐらいの認識しかなかったし。そんな僕でも『ベルばら』を読んだ後、フランスの歴史についてめっちゃ詳しくなった。『ベルばら』ってフランス史の勉強になるんですね!!

 そんな僕が、まだ作品を読んでいない貴方のために、作品をサクッと紹介してみましょう。『ベルばら』は、おおよそ初期・中期・後期に分かれており、その都度主人公や設定が移り変わります。

 

■マリー・アントワネットがブイブイいわせた初期

 

『ベルばら』といえば、メインはオスカルとアンドレというのが一般的なイメージではないでしょうか。少なくとも僕はそう思っていました。もちろんそれも間違いではないのですが、初期はとにかくフランス王妃マリー・アントワネットが中心。アントワネットの身を守る近衛兵連隊長が男装の麗人・オスカルで、そのオスカルをサポートする右腕的存在がアンドレというわけです。

 ストーリーは、オーストリアの皇女で絶世の美女と名高いマリー・アントワネットが、政略結婚でフランスの王太子・ルイ16世の元に嫁ぐところから始まります。フランスに来るやいなや、力こそパワー・金こそマネーといった勢いで贅沢三昧、権力振るいまくりのアントワネット。なるほど、こりゃあパンのかわりにケーキを食べるわけです。

 特に、ルイ15世の愛人として宮廷で権力を振るっていたデュ・バリー夫人とのバッチバチのバトルが見どころです。自分の権力を脅かすアントワネットの存在を疎ましく思うデュ・バリー夫人に対し、下町の娼婦から成り上がったデュ・バリー夫人を徹底的に見下すアントワネット。

「なんて……なんてずうずうしい女!!」

「そ……そんないやしい女がどうしてこの宮廷に……」

「オーストリアのお母様はそういう種類の女たちにはムチをくれて感化院へほうりこんでいたのに……!」

 もう、めちゃくちゃ蔑んでます。ムチをくれて感化院に放り込むって……ものすごいドS気質を感じますね。女王様だけに。

 当時、宮廷の女性は、マリー・アントワネットにお声がけされることがステイタスとなっていました。デュ・バリー夫人は宮廷で自分の立場を維持するために、なんとしてもアントワネットに声をかけてもらいたいのですが、アントワネットは徹底的にデュ・バリー夫人を無視。ここから、壮絶な声をかける、かけないの攻防が始まります。なんていうか……王室って暇なんすね。

 最終的には、アントワネットの態度に憤った、ルイ15世の命令により、デュ・バリー夫人に声をかけなければならなくなります。その時のアントワネットの有名なセリフがこちら。

「きょうは……ベルサイユはたいへんな人ですこと!」

 だから何なの……って感じのめちゃくちゃ内容のないセリフですが、デュ・バリー夫人に声をかけた後のアントワネットの絶望は凄まじいものでした。

「負けた……!! 王太子妃が、王太子妃が娼婦に敗れた……」

 たかが挨拶しただけでこの騒ぎですよ。フランス王室マジでめんどくさいわー。

 

■オスカル・アンドレ愛のセレナーデな中期

 

 国民感情を無視した贅沢三昧で、民衆に嫌われまくりのマリー・アントワネットの出番は次第に少なくなり、中期では男装の麗人・オスカルがメインのストーリーとなります。

 それにしても噂通り、オスカルはマジでイケメン(女ですが)。見た目の美しさもさることながら、立ち居振る舞いも実に男らしい。そして何より漢気がハンパない(女ですが)。

「わたしの屍を越えていけ!! わたしの血で紅にそまっていけ!!」

 そんな漢気あふれるセリフを放つオスカルも、やはり女性。いままで女を捨てて生きてきたのに、ある男の存在が、ついに女の部分を目覚めさせてしまいます。その男はスウェーデンから来た貴公子、フェルゼン。フェルゼンは、マリー・アントワネットに一目惚れしており、一方のアントワネットも、もっさい夫のルイ16世よりも、男性フェロモンムンムンのフェルゼンと結ばれたい……という禁断の関係なのです。立場の違いから決して結ばれることはない苦しみを抱えるフェルゼンですが、そのフェルゼンを密かに愛してしまったオスカルも、また同様に苦しむことになるのです。

 そのオスカルの苦しみを支えるのが、オスカルの幼なじみでありサポート役のアンドレ。初期は知名度の割に全然役立たずの存在だったのですが、中期では突然大学デビューした若者のように活躍し始めます。特にオスカルのピンチをかばって自分が片目の視力を失ってしまうあたりは、グッとくるものがあります。

 そんなアンドレはオスカルに片想いをしており、アントワネット←フェルゼン←オスカル←アンドレという片想いの連鎖の構図が起こっているのです。そこらの昼ドラよりも凄まじい展開ですね。

 オスカルのためだけに生きる一途な男、アンドレにも、作品を代表する名ゼリフがあります。オスカルの花婿候補として登場したジェローデルに屈辱的なセリフを言われ、怒りのあまりティーカップの液体をブッかけます。

「そのショコラが熱くなかったのをさいわいに思え!!」

 まさかのショコラ!! コーヒーでも紅茶でも、ココアでもなければミロでもない、ショコラです! さすがおフランスは高貴さが違います。こればっかりは男子向けマンガでは絶対に出てこない発想ですね。あと、ショコラをブッかけられるのって、コーヒーよりもベトベトして数倍ダメージでかそうです。

 

■主要キャラ全滅!フランス革命後のお通夜ムードな後期

 

 これだけ華々しい王族・貴族の生活を描いた作品でありながら、作品の終盤はまるで別のマンガのようにダークな展開です。

「アンドレ、この戦いが終わったら結婚式だ!」

 どう考えても死亡フラグなオスカルのセリフの後、作品の象徴的存在だったオスカルやアンドレが戦死してしまいます。

 その後は再び、マリー・アントワネットが物語の中心に。しかし前期の華々しさとは一変し、フランス革命後に没落していく王族の姿が描かれています。フェルゼンの協力むなしく脱出に失敗したルイ16世とアントワネットがギロチンで処刑されるというシーンが描かれており、マンガ的には主要キャラ全滅でお通夜のような状態です。いくら史実に基づいているとはいえ、ここまでとは……。作品後期の『ベルばら』は、そこらの劇画よりもよっぽどハードボイルドでした。そう、『ベルばら』は少女漫画であり、劇画でもあったのです!!

 というわけで、真の『ベルばら』ファンが読んだら激怒するかもしれない、『ベルばら』未体験男子向けレビューでした。結論としては、男子でも死ぬまでに一回は読んでおくべき作品です!(できれば白い詰め襟服で)
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから