知らなかったでは済まない人種差別の深すぎる闇! 警官が丸腰の市民を虐殺した史実『デトロイト』

 スプリームス、ジャクソン5、スティーヴィー・ワンダーら人気アーティストを擁したモータウン・サウンドは、広く多くの人に愛され続けている。自動車の街(モーター・タウン)デトロイトが発祥の地であり、白人向けのポップスと黒人音楽であるソウルミュージックを融合させたモータウンは、自動車産業で栄えたデトロイトを象徴する文化だった。だが、1972年にはモータウンはLAへとレーベルを移し、80年代には日本車ブームの煽りを受け、デトロイトは次第に活気を失っていく。クリント・イーストウッド監督が『グラン・トリノ』(08)で描いたような荒廃した街へと変わってしまう。米国を代表する大都市だったデトロイトは、どのようなきっかけで坂道を下り始めたのか? キャスリン・ビグロー監督の最新作『デトロイト』は、その元凶となった“デトロイト暴動”の真相をリアルに描き出している。

 1967年に起きたデトロイト暴動は死者43名、負傷者1,100人以上に及んだ大規模暴動だった。この事件の引き金は、92年に起きたロス暴動と同じく“人種差別”をめぐる軋轢だった。自動車産業の発展は南部を離れた黒人層などの安い労働力の流入を招き、そのことを嫌った白人層が街を出たため、都市中心部の空洞化、スラム化が進んでいた。白人警官たちは街に新たに住み始めた黒人たちを蔑視し、ことあるごとに警察犬をけしかけ、警棒で殴りつけた。ベトナム戦争から帰還した黒人兵を慰労するパーティーの場で、両者の遺恨が爆発する。警察の横暴な取り締りに対し、黒人たちは投石や白人が経営する店への放火で応じた。たちまち街は戦場さながらの大混乱に陥り、ミシガン州兵が出動する騒ぎに発展していく。

 大晦日の『絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時』(日本テレビ系)でダウンタウン浜田が扮していたのは、『ビバリーヒルズ・コップ』(84)に主演していた頃のエディ・マーフィーだった。『ビバリーヒルズ~』でのエディ・マーフィーは、デトロイト市警所属の不良あがりのはみだし刑事という役どころ。デトロイト暴動のさなか、このデトロイト市警が犯した大問題が「アルジェ・モーテル事件」である。デトロイト市警の白人警官たちは、アルジェ・モーテルに泊まっていた無抵抗の黒人男性たちを次々と射殺している。モーテルにいた黒人男性客のひとりが、道路で待機していた州兵に向かって悪戯心でおもちゃの拳銃を鳴らしたため、「スナイパーが潜んでいる」と勘違いした白人警官たちが雪崩れ込み、モーテルに偶然居合わせた客たちは恐怖のドン底を味わう。

 キャスリン・ビグロー監督は、イラク戦争を舞台にした『ハート・ロッカー』(08)ではいつ作動するかわからない爆破装置の解除にあたる米軍爆弾処理班の命懸けの作業を、『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)ではビン・ラディン一家が米軍特殊部隊によって殺戮される様子を、息が詰まるほどの超リアリズム演出で再現してみせた。本作でもアルジェ・モーテルで起きた白人警官たちによる尋問という名の虐待行為を、40分間にわたって延々と描く。実際に事件現場に居合わせたサバイバーたちの証言をもとに、“薮の中”を照らし出してみせる。

 アルジェ・モーテルに駆け付けた白人警官クラウス(ウィル・ポールター)は普段から差別的言動が問題視されていたが、暴動で人手が足らずに現場へ駆り出されていた。おもちゃのピストルを鳴らしただけなのに、大騒ぎになったことにビビった黒人青年カール(ジェイソン・ミッチェル)が逃げ出そうとするのを見て、クラウスは背後から問答無用で射殺してしまう。だが、モーテル内をいくら探しても、本物の銃はどこにもない。クラウスは落ち着いた仕草で、カールの死体の横にナイフを置く。「ナイフで襲ってきたので、仕方なく撃った。正当防衛だった」と言い訳するためだ。無政府状態となった街では、暴力だけが正義だった。

 この日、デトロイトきっての大劇場でステージデビューを果たす予定だった男性グループ「ドラマティックス」のリードボーカルであるラリー(アルジー・スミス)も、このモーテルにいた。ステージを成功させれば、モータウン・レーベルのお偉いさんに認められ、メジャー契約できるはずだった。だが、ラリーの思い描いていたアメリカンドリームは、はかない夢で終わってしまう。暴動の余波でステージが中止となり、さらに混乱を避けるために逃げ込んだモーテルで次々と黒人客が殺される現場に立ち会ってしまう。白人のために、もう歌は歌えない。そう思わせるほど、白人警官たちによる暴行は陰惨さを極めていた。

 その夜、地獄の恐怖を味わったのは黒人客だけではなかった。モーテルに泊まっていた若い白人女性のジュリー(ハンナ・マリー)とカレン(ケイトリン・デヴァー)もまた辱めを受ける。モーテルの一室で白人女性が若い黒人と一緒にいたことが、クラウスたち白人警官には許せなかったのだ。だが、これはクラウスの個人的な感情ではなかった。米国南部では「ジム・クロウ法」という州法が1960年代前半まで定められており、黒人と白人との結婚や性行為は禁じられ、白人が利用するホテルやレストランに黒人が入ることも許されていなかった。ジム・クロウ法は人種隔離を公然と認めた悪法であり、また白人が顔を黒塗りして演じた大衆演劇「ミンストレル・ショー」の中での無知な黒人キャラクターの名前がジム・クロウだった。日本人タレントのブラックフェイス・パフォーマンスに欧米人が顔をしかめるのは、このことを連想させるからだ。

 悪戯がきっかけで根深い差別意識が首をもたげ、さらには事件を口封じするために、モーテルに泊まっていた黒人たちは血祭りにされていく。事件に巻き込まれるのを嫌って、現場にいた州兵たちはさっさと引き揚げていった。近くのスーパーマーケットの警備員をしていた黒人男性のディスミュークス(ジョン・ボイエガ)は、この事態を最小限に食い止めようと努めるが、逆に殺人罪の濡れ衣を着せられるはめに陥る。裁判になれば、クラウスたち白人警官はもう安泰だった。裁判所の判事も陪審員たちも、みんな白人。黒人を射殺した白人警官に有罪判決が下ることはまずなかった。

 リンカーン大統領による奴隷解放宣言が1862年。それから約100年後の1964年に公民権法が成立し、悪法ジム・クロウ法はようやく廃止される。だが、依然として差別意識は残り、デトロイトほか各地で暴動が起きてしまった。公民権運動を指導したマーティン・ルーサー・キング牧師は、デトロイト暴動の翌年1968年に貧困階級の白人男性に射殺されてしまう。キング牧師は「私には夢がある。いつの日か、私の幼い子どもたちが肌の色ではなく、人格の中身によって評価される国で暮らすという夢が」という有名な言葉を残したが、その夢は依然として叶えられてはいない。

 デトロイト暴動後、「ドラマティックス」は地元のモータウンではなく、別のレーベルからメジャーデビューを果たす。だが、メジャーデビューしたメンバーの中に、リードボーカルだったラリーの姿はなかった。ラリーは商業音楽の世界で歌うことをやめ、教会のゴスペルシンガーとして活動することになる。ラリーにとって、音楽は神に捧げるための神聖なものだった。1967年の夏に起きた暴動は、ラリーの人生を、そしてデトロイトという街そのものを大きく変えてしまった。
(文=長野辰次)

『デトロイト』
監督/キャスリン・ビグロー 脚本/マーク・ボール
出演/ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、アルジー・スミス、ジェイコブ・ラティモア、ジェイソン・ミッチェル、ハンナ・マリー、ケイトリン・デヴァー、ジャック・レイナー、ベン・オトゥール、ネイサン・デイヴィス・ジュニア、アレックス・スミス、デヴィッド・ケリー
配給/ロングライド 1月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
C)2017 SHEPARD DOG, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
http://www.longride.jp/detroit

 

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知らなかったでは済まない人種差別の深すぎる闇! 警官が丸腰の市民を虐殺した史実『デトロイト』

 スプリームス、ジャクソン5、スティーヴィー・ワンダーら人気アーティストを擁したモータウン・サウンドは、広く多くの人に愛され続けている。自動車の街(モーター・タウン)デトロイトが発祥の地であり、白人向けのポップスと黒人音楽であるソウルミュージックを融合させたモータウンは、自動車産業で栄えたデトロイトを象徴する文化だった。だが、1972年にはモータウンはLAへとレーベルを移し、80年代には日本車ブームの煽りを受け、デトロイトは次第に活気を失っていく。クリント・イーストウッド監督が『グラン・トリノ』(08)で描いたような荒廃した街へと変わってしまう。米国を代表する大都市だったデトロイトは、どのようなきっかけで坂道を下り始めたのか? キャスリン・ビグロー監督の最新作『デトロイト』は、その元凶となった“デトロイト暴動”の真相をリアルに描き出している。

 1967年に起きたデトロイト暴動は死者43名、負傷者1,100人以上に及んだ大規模暴動だった。この事件の引き金は、92年に起きたロス暴動と同じく“人種差別”をめぐる軋轢だった。自動車産業の発展は南部を離れた黒人層などの安い労働力の流入を招き、そのことを嫌った白人層が街を出たため、都市中心部の空洞化、スラム化が進んでいた。白人警官たちは街に新たに住み始めた黒人たちを蔑視し、ことあるごとに警察犬をけしかけ、警棒で殴りつけた。ベトナム戦争から帰還した黒人兵を慰労するパーティーの場で、両者の遺恨が爆発する。警察の横暴な取り締りに対し、黒人たちは投石や白人が経営する店への放火で応じた。たちまち街は戦場さながらの大混乱に陥り、ミシガン州兵が出動する騒ぎに発展していく。

 大晦日の『絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時』(日本テレビ系)でダウンタウン浜田が扮していたのは、『ビバリーヒルズ・コップ』(84)に主演していた頃のエディ・マーフィーだった。『ビバリーヒルズ~』でのエディ・マーフィーは、デトロイト市警所属の不良あがりのはみだし刑事という役どころ。デトロイト暴動のさなか、このデトロイト市警が犯した大問題が「アルジェ・モーテル事件」である。デトロイト市警の白人警官たちは、アルジェ・モーテルに泊まっていた無抵抗の黒人男性たちを次々と射殺している。モーテルにいた黒人男性客のひとりが、道路で待機していた州兵に向かって悪戯心でおもちゃの拳銃を鳴らしたため、「スナイパーが潜んでいる」と勘違いした白人警官たちが雪崩れ込み、モーテルに偶然居合わせた客たちは恐怖のドン底を味わう。

 キャスリン・ビグロー監督は、イラク戦争を舞台にした『ハート・ロッカー』(08)ではいつ作動するかわからない爆破装置の解除にあたる米軍爆弾処理班の命懸けの作業を、『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)ではビン・ラディン一家が米軍特殊部隊によって殺戮される様子を、息が詰まるほどの超リアリズム演出で再現してみせた。本作でもアルジェ・モーテルで起きた白人警官たちによる尋問という名の虐待行為を、40分間にわたって延々と描く。実際に事件現場に居合わせたサバイバーたちの証言をもとに、“薮の中”を照らし出してみせる。

 アルジェ・モーテルに駆け付けた白人警官クラウス(ウィル・ポールター)は普段から差別的言動が問題視されていたが、暴動で人手が足らずに現場へ駆り出されていた。おもちゃのピストルを鳴らしただけなのに、大騒ぎになったことにビビった黒人青年カール(ジェイソン・ミッチェル)が逃げ出そうとするのを見て、クラウスは背後から問答無用で射殺してしまう。だが、モーテル内をいくら探しても、本物の銃はどこにもない。クラウスは落ち着いた仕草で、カールの死体の横にナイフを置く。「ナイフで襲ってきたので、仕方なく撃った。正当防衛だった」と言い訳するためだ。無政府状態となった街では、暴力だけが正義だった。

 この日、デトロイトきっての大劇場でステージデビューを果たす予定だった男性グループ「ドラマティックス」のリードボーカルであるラリー(アルジー・スミス)も、このモーテルにいた。ステージを成功させれば、モータウン・レーベルのお偉いさんに認められ、メジャー契約できるはずだった。だが、ラリーの思い描いていたアメリカンドリームは、はかない夢で終わってしまう。暴動の余波でステージが中止となり、さらに混乱を避けるために逃げ込んだモーテルで次々と黒人客が殺される現場に立ち会ってしまう。白人のために、もう歌は歌えない。そう思わせるほど、白人警官たちによる暴行は陰惨さを極めていた。

 その夜、地獄の恐怖を味わったのは黒人客だけではなかった。モーテルに泊まっていた若い白人女性のジュリー(ハンナ・マリー)とカレン(ケイトリン・デヴァー)もまた辱めを受ける。モーテルの一室で白人女性が若い黒人と一緒にいたことが、クラウスたち白人警官には許せなかったのだ。だが、これはクラウスの個人的な感情ではなかった。米国南部では「ジム・クロウ法」という州法が1960年代前半まで定められており、黒人と白人との結婚や性行為は禁じられ、白人が利用するホテルやレストランに黒人が入ることも許されていなかった。ジム・クロウ法は人種隔離を公然と認めた悪法であり、また白人が顔を黒塗りして演じた大衆演劇「ミンストレル・ショー」の中での無知な黒人キャラクターの名前がジム・クロウだった。日本人タレントのブラックフェイス・パフォーマンスに欧米人が顔をしかめるのは、このことを連想させるからだ。

 悪戯がきっかけで根深い差別意識が首をもたげ、さらには事件を口封じするために、モーテルに泊まっていた黒人たちは血祭りにされていく。事件に巻き込まれるのを嫌って、現場にいた州兵たちはさっさと引き揚げていった。近くのスーパーマーケットの警備員をしていた黒人男性のディスミュークス(ジョン・ボイエガ)は、この事態を最小限に食い止めようと努めるが、逆に殺人罪の濡れ衣を着せられるはめに陥る。裁判になれば、クラウスたち白人警官はもう安泰だった。裁判所の判事も陪審員たちも、みんな白人。黒人を射殺した白人警官に有罪判決が下ることはまずなかった。

 リンカーン大統領による奴隷解放宣言が1862年。それから約100年後の1964年に公民権法が成立し、悪法ジム・クロウ法はようやく廃止される。だが、依然として差別意識は残り、デトロイトほか各地で暴動が起きてしまった。公民権運動を指導したマーティン・ルーサー・キング牧師は、デトロイト暴動の翌年1968年に貧困階級の白人男性に射殺されてしまう。キング牧師は「私には夢がある。いつの日か、私の幼い子どもたちが肌の色ではなく、人格の中身によって評価される国で暮らすという夢が」という有名な言葉を残したが、その夢は依然として叶えられてはいない。

 デトロイト暴動後、「ドラマティックス」は地元のモータウンではなく、別のレーベルからメジャーデビューを果たす。だが、メジャーデビューしたメンバーの中に、リードボーカルだったラリーの姿はなかった。ラリーは商業音楽の世界で歌うことをやめ、教会のゴスペルシンガーとして活動することになる。ラリーにとって、音楽は神に捧げるための神聖なものだった。1967年の夏に起きた暴動は、ラリーの人生を、そしてデトロイトという街そのものを大きく変えてしまった。
(文=長野辰次)

『デトロイト』
監督/キャスリン・ビグロー 脚本/マーク・ボール
出演/ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、アルジー・スミス、ジェイコブ・ラティモア、ジェイソン・ミッチェル、ハンナ・マリー、ケイトリン・デヴァー、ジャック・レイナー、ベン・オトゥール、ネイサン・デイヴィス・ジュニア、アレックス・スミス、デヴィッド・ケリー
配給/ロングライド 1月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
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『隣の家族は青く見える』厚生労働省とのタイアップは大丈夫!? LGBT描写にはあざとさも……

 18日に第一回が放送された深田恭子・松山ケンイチ主演のドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)。集合住宅(コーポラティブハウス)を舞台に、うわべは幸せそうな4組の「家庭」が抱えるそれぞれの悩みや、価値観の違いから生まれる摩擦を描くっぽい。いわゆる「妊活」を軸にしたドラマとは聞いていたものの、オンエアを観るまで今ひとつ雰囲気がわからなかったのだが、思ってたよりも軽やかなコメディ路線。「ヒューマンコメディ」というやつでしょうか。

 コーポラティブハウスとは、入居者が集まって土地を買ったりデザインしたりを自主的に行って建てる集合住宅らしく、このドラマでは一軒家が4軒、そして中庭は共有スペースとなっており、若干ヒッチコックの『裏窓』(1954)っぽい印象。殺人は起きないはず。古くてすみません。さて「ご近所さん」とも「お隣さん」とも違う、その距離感がどんな摩擦を生むのか。

■まず登場人物は?

 この4世帯がどうやって出会ったかの経緯は省かれているが、それぞれ他人同士。最初に住宅設計の打ち合わせで4組の住民が集合した際は、それぞれ幸せそうな家庭なり夫婦なりに見えた。

・五十嵐大器(松山ケンイチ)と五十嵐奈々(深田恭子)夫妻。それぞれ玩具メーカー勤務とスキューバダイビングインストラクターの、いわゆる幸せそうな新婚さん。子どもなし。

・川村亮司(平山浩行)と杉崎ちひろ(高橋メアリージュン)の結婚しそうな同棲カップル。スタイリストとネイリストで、業界臭強め。子どもなし。

・小宮山真一郎(野間口徹)と小宮山深雪(真飛聖)のベーシックな家庭。商社マンと専業主婦。小さい子どもが2人。

・広瀬渉(眞島秀和)渋い独身。このコーポラティブハウスを設計した一級建築士で、モテそう。子どもなし。

 しかし、これはあくまでうわべだ。段々それぞれの歪みや本音が見えてくる。

 

■「女は子どもを産んでこそ一人前」

 まず、拮抗を崩してきたのは、いわゆる旧態依然とした価値観を、悪気なくよかれと思って押し付けてくる専業主婦の小宮山深雪。

「みなさんもいずれは、お子さん作られるでしょうしね?」の何気ない(それでいて無神経な)一言が、他の3組の会話をピタリと止める。

「お仕事お忙しいのはわかるけど、子どもは絶対作ったほうがいいわよ~」

「いろんな考え方があっても子ども欲しいっていうのは女性共通の願いよ。やっぱり女っていうのは子どもを産んでこそ一人前だもん」

「少しでも少子化に歯止めかけなきゃね?」

 他3組の微妙な空気を察した夫・真一郎が止めても、尻に敷いてるようでお構いなしに持論を展開。もうこの時点で、一緒に住むのを放棄する人がいてもおかしくないのでは? と思うほどだが、さらに、夫の海外赴任が多かった過去を自慢気に語ったりと、見事なヒールぶり。

 子ども作れ発言に我慢できなくなった業界カップル・杉崎ちひろは、仕事のふりをして途中退席、パートナーの川村にぶちまける。

「私みたいに子ども欲しくない人だっているし、欲しくたってできない人だっているんだよ? 無神経じゃん!」

 川村に「そう反論すればよかったのに?」とのんきに言われるも、「これからお隣さんになるのに、そんなこと言えるわけないじゃん」。

 しかし怒りつつも、なんだかんだ川村(バツイチだが、そこもイジれる関係)といちゃついたり。カラッとしてるのが救いか。だが、小宮山深雪は小宮山深雪で、ちひろの高級バッグをさりげなく睨みつけ、嫉妬丸出し。火種が燻っている感じだ。

 五十嵐夫妻は、クセ的には一番フラットな家庭なのだが、やはりというか、夫・大器の母親が子作りをせっついてくる様子。深雪の「自分がひた走る価値観に周りを巻き込むことで安心したい」という弱さからくる感情よりも、もっとわかりやすい、いわゆる年老いた親が子ども夫妻に望むアレだ。

 奈々が子作りに前向きなことがわかり、さっそくベッドインしたがる大器。絵に描いたように平和だ。

 そして、ダンディな設計士・広瀬。

 設計事務所の上司に、独立や、そのモチベーションとなる結婚や子作りをせっつかれている様子だが、表情が暗い。同僚の長谷部留美(橋本マナミ)が「結婚してくれたら子どもも産んであげる」と冗談ともつかないノリでからんでくるが、やはり広瀬は笑えない。

 そんなある日、馴染みのバーで酔った青年・青木朔(さく・北村匠海)と出会う。

 かつて付き合ってたパートナーの結婚式に出席した帰りだということで、荒れ気味に酔ってる青木が、何気なく言った言葉を広瀬は聞き逃さなかった。

「普通、付き合ってた男、結婚式呼びます?」

「行かなきゃ良かったのに」(マスター)

「だってー……どんな女か見たかったんだもん……」

 予感がしたのか、静かに反応する広瀬。結論からいうと、広瀬はゲイだ(おそらくマスターは知ってる空気)。

 それが確定するのは、歩けないほど酔った青木との帰り道。

「わたるん(広瀬)も、こっち側の人だよね?」と言われて、そのままキスを受け入れる。

 LGBTに向き合いたいのか、ただ見世物的にBLっぽいことをやりたいのかはまだわからないが、ただ一部の層に向けたあざとさはバシバシと感じた。なぜならこのパートだけ不自然に美化されたおとぎ話のようだったから。

 物語は途中で、1年が経過する。

■1年たって入居後

 中庭で、一家で餅つきをしながら家族円満をアピールする小宮山深雪。

 通りかかった広瀬にお見合い相手を紹介しようとしたり、派手な格好で「ニューイヤーパーティ」に出かける川村夫妻(まだ同棲状態だが結婚間近)のブランドバッグを目に、またしても自分のバッグを恥じて隠したりと相変わらず。

 実は、小宮山真一郎は多すぎる転勤を苦に、妻に言わずに商社を退職しており、世間体を過剰に気にする深雪はそれを恥じ、周囲どころか子どもたちにすら隠している。次の仕事が決まらない真一郎に激怒し、会社に行くふりをさせ、帰りも早く帰ってきたら邪魔者扱いし、それでいて自分はキレイな部屋をブログに上げてのアクセス数増加に満足したりと、虚栄心に飲み込まれ具現化されたモンスターとして描かれる。弱腰の夫にピリつく時に、昼ドラのような過剰なBGMアリ。

 一方の五十嵐夫妻は、未だ子宝に恵まれず。

「1年以上、避妊なしの性交を続けても妊娠に至らなかった場合、検査するまでもなく不妊症と言えます」

 主治医(伊藤かずえ)にいきなり言われ、驚く2人。主治医に不妊治療の覚悟を問われるも、特に夫の大器は、妻の奈々に比べ、筆者のような多くの男性がそうであるように、妊娠や出産にいまいち無知な男性といった感じで受動的だ。

「もし、治療を始めるのであれば、明日の夜か、明後日の朝、性交渉をしてください(笑顔)」

「……え? 性交渉?」

「……ご主人、何か問題でも?」

「ん、ん、いえ、ん……(動揺)」

 他にも、精液採取に大器が戸惑うなど、深刻な空気を出しすぎないようにしてる印象。

 さらに、広瀬の元には、1年付き合ってきた青木が押しかけてくる。同居するために住むところを引き払い、背水の陣で攻め入るとは、なかなかの爆弾小僧。

「一つの棟に4軒しかないから、お互いにどんな生活してるか、すぐわかるって」と怒る広瀬だが、「もしかして遊びだった?」と、逆に詰め寄る青木。押し切られるように同居が始まった。

「幸せ。わたるんの料理一生食べ続けたい」

「たくさん養子とって大家族作る」

 と、グイグイくる青木に対し、「この話は以上」と広瀬は先をはぐらかす。広瀬は職場にも周りの家族にも、いわゆるカミングアウト的なことはしていない。

 部屋でワインを飲みながら食べてたのがアヒージョなのかどうかTwitter検索で確認しようと思い「わたるん」と打ち込むと、すかさず予測で「わたるん 受け」「わたるん 攻め」という言葉が並ぶ。結局「妊活」ドラマというより、こっちの話題が先行してる様子。

 そして、ここまでただひたすらにバブリーなだけだったスタイリスト川村の元に突然、前妻の死を告げる電話が。5年間、一度も会っていなかったという前妻との子どもにそっけなくされるなど、いきなり暗雲が。

 家に帰ってきてもどこか様子がおかしいので、ちひろに「子どものこと迷ってんじゃないかなって思って」と言われ、「え?」と思わず焦ってしまう川村。

「言っとくけど、私、本当に産まないよ?(その後あーだこーだ)」

 川村は、前妻との子どものことを念頭に置いて焦ったのだろう。ちひろには、まだ何も伝えていない様子。わた……広瀬と青木の時もそうだが、こういった会話の細かい仕掛けがうまい。

 ちなみに前妻の子どもが父親を無視して見ていたのは、大人気ユーチューバーのフィッシャーズ。チョイスに、やや媚びを感じました。

■リアルな4家庭が出揃う

・不妊症発覚の五十嵐夫婦。

・結婚目前で、前妻との子どもをどうするか問題が出てきた川村と子ども欲しくない杉崎ペア。

・他人を妬み価値観押し付けがちな妻と、その妻に言い返せない無職の夫。子どもは元気そう。

・ゲイカップルの広瀬と青木。

 第1回放送を見終わって感じたのは、主演の2人が少し薄い印象。

 今が一番かわいいとの呼び声高い魔性の女・深キョンこと深田はもちろんかわいいのだが、いまいち感情が見えない。演技のせいというより、そういうシーンをあえて省いてる気も。これが深田にプラスなのかマイナスなのか……。妊活の前の晩に、うなぎ、山かけ納豆、レバニラを晩御飯に出してくる深田というか奈々は古典的ですが、よかったです。

 コミカルな芝居もうまい松ケンのからみは王道な感じでいいのだが、いまいち妊活部分もとってつけた感じがして、特に医者とのからみあたりは薄い『コウノドリ』(TBS系)のような印象。その軽さがいいのかもしれないけど、それぞれ「昼ドラ」だったり「BL」だったりと、(意図的に?)とっちらからせてる雰囲気を、どうまとめ上げるのかが見ものです。

 今のところ一番気になるのは、スタイリスト川村が実子をどうするのかという問題。それでなくても「子どもいらない」を連呼してる強気なパートナー・杉崎ちひろと結婚目前なのに。いけすかねえ金持ちスタイリストだと思ってノーマークだっただけに、5年ぶりに会った子どもの前でぎくしゃくする平山浩行の芝居がとても良かったです。

 あと、気になったのはこの番組が厚生労働省の「ポジティブ・シェアリング」「こころの耳」に賛同してタイアップを行っていること。「みんなの力で心を軽く!」だかの啓蒙スローガンを掲げていたが、なんかこれを知った途端に、少し萎えました。

 まあドラマだし、と見て見ぬ振りしてた「なんだかんだ全員やけに金持ってそうじゃん」問題が見過ごしにくくなったり。別にドラマだし、みすぼらしくする必要はないのだが、悩みのある人に寄り添うという役所の政策がちらつくと、どうしても少し見え方が変わってきてしまう。

 その辺のタイアップなどの縛りの影響で、教習所で見せられるような交通安全の映画みたいになるのだけはぜひとも避けていただきたい。第2話も期待してます!
(文=柿田太郎)

『隣の家族は青く見える』厚生労働省とのタイアップは大丈夫!? LGBT描写にはあざとさも……

 18日に第一回が放送された深田恭子・松山ケンイチ主演のドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)。集合住宅(コーポラティブハウス)を舞台に、うわべは幸せそうな4組の「家庭」が抱えるそれぞれの悩みや、価値観の違いから生まれる摩擦を描くっぽい。いわゆる「妊活」を軸にしたドラマとは聞いていたものの、オンエアを観るまで今ひとつ雰囲気がわからなかったのだが、思ってたよりも軽やかなコメディ路線。「ヒューマンコメディ」というやつでしょうか。

 コーポラティブハウスとは、入居者が集まって土地を買ったりデザインしたりを自主的に行って建てる集合住宅らしく、このドラマでは一軒家が4軒、そして中庭は共有スペースとなっており、若干ヒッチコックの『裏窓』(1954)っぽい印象。殺人は起きないはず。古くてすみません。さて「ご近所さん」とも「お隣さん」とも違う、その距離感がどんな摩擦を生むのか。

■まず登場人物は?

 この4世帯がどうやって出会ったかの経緯は省かれているが、それぞれ他人同士。最初に住宅設計の打ち合わせで4組の住民が集合した際は、それぞれ幸せそうな家庭なり夫婦なりに見えた。

・五十嵐大器(松山ケンイチ)と五十嵐奈々(深田恭子)夫妻。それぞれ玩具メーカー勤務とスキューバダイビングインストラクターの、いわゆる幸せそうな新婚さん。子どもなし。

・川村亮司(平山浩行)と杉崎ちひろ(高橋メアリージュン)の結婚しそうな同棲カップル。スタイリストとネイリストで、業界臭強め。子どもなし。

・小宮山真一郎(野間口徹)と小宮山深雪(真飛聖)のベーシックな家庭。商社マンと専業主婦。小さい子どもが2人。

・広瀬渉(眞島秀和)渋い独身。このコーポラティブハウスを設計した一級建築士で、モテそう。子どもなし。

 しかし、これはあくまでうわべだ。段々それぞれの歪みや本音が見えてくる。

 

■「女は子どもを産んでこそ一人前」

 まず、拮抗を崩してきたのは、いわゆる旧態依然とした価値観を、悪気なくよかれと思って押し付けてくる専業主婦の小宮山深雪。

「みなさんもいずれは、お子さん作られるでしょうしね?」の何気ない(それでいて無神経な)一言が、他の3組の会話をピタリと止める。

「お仕事お忙しいのはわかるけど、子どもは絶対作ったほうがいいわよ~」

「いろんな考え方があっても子ども欲しいっていうのは女性共通の願いよ。やっぱり女っていうのは子どもを産んでこそ一人前だもん」

「少しでも少子化に歯止めかけなきゃね?」

 他3組の微妙な空気を察した夫・真一郎が止めても、尻に敷いてるようでお構いなしに持論を展開。もうこの時点で、一緒に住むのを放棄する人がいてもおかしくないのでは? と思うほどだが、さらに、夫の海外赴任が多かった過去を自慢気に語ったりと、見事なヒールぶり。

 子ども作れ発言に我慢できなくなった業界カップル・杉崎ちひろは、仕事のふりをして途中退席、パートナーの川村にぶちまける。

「私みたいに子ども欲しくない人だっているし、欲しくたってできない人だっているんだよ? 無神経じゃん!」

 川村に「そう反論すればよかったのに?」とのんきに言われるも、「これからお隣さんになるのに、そんなこと言えるわけないじゃん」。

 しかし怒りつつも、なんだかんだ川村(バツイチだが、そこもイジれる関係)といちゃついたり。カラッとしてるのが救いか。だが、小宮山深雪は小宮山深雪で、ちひろの高級バッグをさりげなく睨みつけ、嫉妬丸出し。火種が燻っている感じだ。

 五十嵐夫妻は、クセ的には一番フラットな家庭なのだが、やはりというか、夫・大器の母親が子作りをせっついてくる様子。深雪の「自分がひた走る価値観に周りを巻き込むことで安心したい」という弱さからくる感情よりも、もっとわかりやすい、いわゆる年老いた親が子ども夫妻に望むアレだ。

 奈々が子作りに前向きなことがわかり、さっそくベッドインしたがる大器。絵に描いたように平和だ。

 そして、ダンディな設計士・広瀬。

 設計事務所の上司に、独立や、そのモチベーションとなる結婚や子作りをせっつかれている様子だが、表情が暗い。同僚の長谷部留美(橋本マナミ)が「結婚してくれたら子どもも産んであげる」と冗談ともつかないノリでからんでくるが、やはり広瀬は笑えない。

 そんなある日、馴染みのバーで酔った青年・青木朔(さく・北村匠海)と出会う。

 かつて付き合ってたパートナーの結婚式に出席した帰りだということで、荒れ気味に酔ってる青木が、何気なく言った言葉を広瀬は聞き逃さなかった。

「普通、付き合ってた男、結婚式呼びます?」

「行かなきゃ良かったのに」(マスター)

「だってー……どんな女か見たかったんだもん……」

 予感がしたのか、静かに反応する広瀬。結論からいうと、広瀬はゲイだ(おそらくマスターは知ってる空気)。

 それが確定するのは、歩けないほど酔った青木との帰り道。

「わたるん(広瀬)も、こっち側の人だよね?」と言われて、そのままキスを受け入れる。

 LGBTに向き合いたいのか、ただ見世物的にBLっぽいことをやりたいのかはまだわからないが、ただ一部の層に向けたあざとさはバシバシと感じた。なぜならこのパートだけ不自然に美化されたおとぎ話のようだったから。

 物語は途中で、1年が経過する。

■1年たって入居後

 中庭で、一家で餅つきをしながら家族円満をアピールする小宮山深雪。

 通りかかった広瀬にお見合い相手を紹介しようとしたり、派手な格好で「ニューイヤーパーティ」に出かける川村夫妻(まだ同棲状態だが結婚間近)のブランドバッグを目に、またしても自分のバッグを恥じて隠したりと相変わらず。

 実は、小宮山真一郎は多すぎる転勤を苦に、妻に言わずに商社を退職しており、世間体を過剰に気にする深雪はそれを恥じ、周囲どころか子どもたちにすら隠している。次の仕事が決まらない真一郎に激怒し、会社に行くふりをさせ、帰りも早く帰ってきたら邪魔者扱いし、それでいて自分はキレイな部屋をブログに上げてのアクセス数増加に満足したりと、虚栄心に飲み込まれ具現化されたモンスターとして描かれる。弱腰の夫にピリつく時に、昼ドラのような過剰なBGMアリ。

 一方の五十嵐夫妻は、未だ子宝に恵まれず。

「1年以上、避妊なしの性交を続けても妊娠に至らなかった場合、検査するまでもなく不妊症と言えます」

 主治医(伊藤かずえ)にいきなり言われ、驚く2人。主治医に不妊治療の覚悟を問われるも、特に夫の大器は、妻の奈々に比べ、筆者のような多くの男性がそうであるように、妊娠や出産にいまいち無知な男性といった感じで受動的だ。

「もし、治療を始めるのであれば、明日の夜か、明後日の朝、性交渉をしてください(笑顔)」

「……え? 性交渉?」

「……ご主人、何か問題でも?」

「ん、ん、いえ、ん……(動揺)」

 他にも、精液採取に大器が戸惑うなど、深刻な空気を出しすぎないようにしてる印象。

 さらに、広瀬の元には、1年付き合ってきた青木が押しかけてくる。同居するために住むところを引き払い、背水の陣で攻め入るとは、なかなかの爆弾小僧。

「一つの棟に4軒しかないから、お互いにどんな生活してるか、すぐわかるって」と怒る広瀬だが、「もしかして遊びだった?」と、逆に詰め寄る青木。押し切られるように同居が始まった。

「幸せ。わたるんの料理一生食べ続けたい」

「たくさん養子とって大家族作る」

 と、グイグイくる青木に対し、「この話は以上」と広瀬は先をはぐらかす。広瀬は職場にも周りの家族にも、いわゆるカミングアウト的なことはしていない。

 部屋でワインを飲みながら食べてたのがアヒージョなのかどうかTwitter検索で確認しようと思い「わたるん」と打ち込むと、すかさず予測で「わたるん 受け」「わたるん 攻め」という言葉が並ぶ。結局「妊活」ドラマというより、こっちの話題が先行してる様子。

 そして、ここまでただひたすらにバブリーなだけだったスタイリスト川村の元に突然、前妻の死を告げる電話が。5年間、一度も会っていなかったという前妻との子どもにそっけなくされるなど、いきなり暗雲が。

 家に帰ってきてもどこか様子がおかしいので、ちひろに「子どものこと迷ってんじゃないかなって思って」と言われ、「え?」と思わず焦ってしまう川村。

「言っとくけど、私、本当に産まないよ?(その後あーだこーだ)」

 川村は、前妻との子どものことを念頭に置いて焦ったのだろう。ちひろには、まだ何も伝えていない様子。わた……広瀬と青木の時もそうだが、こういった会話の細かい仕掛けがうまい。

 ちなみに前妻の子どもが父親を無視して見ていたのは、大人気ユーチューバーのフィッシャーズ。チョイスに、やや媚びを感じました。

■リアルな4家庭が出揃う

・不妊症発覚の五十嵐夫婦。

・結婚目前で、前妻との子どもをどうするか問題が出てきた川村と子ども欲しくない杉崎ペア。

・他人を妬み価値観押し付けがちな妻と、その妻に言い返せない無職の夫。子どもは元気そう。

・ゲイカップルの広瀬と青木。

 第1回放送を見終わって感じたのは、主演の2人が少し薄い印象。

 今が一番かわいいとの呼び声高い魔性の女・深キョンこと深田はもちろんかわいいのだが、いまいち感情が見えない。演技のせいというより、そういうシーンをあえて省いてる気も。これが深田にプラスなのかマイナスなのか……。妊活の前の晩に、うなぎ、山かけ納豆、レバニラを晩御飯に出してくる深田というか奈々は古典的ですが、よかったです。

 コミカルな芝居もうまい松ケンのからみは王道な感じでいいのだが、いまいち妊活部分もとってつけた感じがして、特に医者とのからみあたりは薄い『コウノドリ』(TBS系)のような印象。その軽さがいいのかもしれないけど、それぞれ「昼ドラ」だったり「BL」だったりと、(意図的に?)とっちらからせてる雰囲気を、どうまとめ上げるのかが見ものです。

 今のところ一番気になるのは、スタイリスト川村が実子をどうするのかという問題。それでなくても「子どもいらない」を連呼してる強気なパートナー・杉崎ちひろと結婚目前なのに。いけすかねえ金持ちスタイリストだと思ってノーマークだっただけに、5年ぶりに会った子どもの前でぎくしゃくする平山浩行の芝居がとても良かったです。

 あと、気になったのはこの番組が厚生労働省の「ポジティブ・シェアリング」「こころの耳」に賛同してタイアップを行っていること。「みんなの力で心を軽く!」だかの啓蒙スローガンを掲げていたが、なんかこれを知った途端に、少し萎えました。

 まあドラマだし、と見て見ぬ振りしてた「なんだかんだ全員やけに金持ってそうじゃん」問題が見過ごしにくくなったり。別にドラマだし、みすぼらしくする必要はないのだが、悩みのある人に寄り添うという役所の政策がちらつくと、どうしても少し見え方が変わってきてしまう。

 その辺のタイアップなどの縛りの影響で、教習所で見せられるような交通安全の映画みたいになるのだけはぜひとも避けていただきたい。第2話も期待してます!
(文=柿田太郎)

日テレの「物置の中身を全部出す」特番は、テレ東のアレを参考に制作された!? だが、ミラクルが起こって亜流に終わらず

 毎年1月にNHKで放送されている『新春TV放談』。前年を振り返り、テレビのあり方を語り合うのがこの番組の趣旨だが、1月2日に放送された“2018年版”で話題になったのは、テレビ東京系で定期的に放送されている特番『緊急SOS! 池の水ぜんぶ抜く大作戦』であった。

 内容は、番組名のとおり「池の水を全部抜く」だけ。シンプルながらも、池の水を全部抜くまで何が出てくるかわからないドキドキ、ワクワクが視聴者の心をつかみ、この特番は2017年に計5回放送されている。

 同番組の“生みの親”であるテレビ東京・伊藤隆行プロデューサーは「ニュース映像で、警察が池の中を捜索している場面を観て発想した」と、立ち上げの経緯を明かしている。

 結果、『池の水をぜんぶ抜く』は見事に大成功! 現在、各テレビ局では「あの番組みたいな感じの企画書出せ」というお達しが、放送作家らへの“宿題”として出されているという。

 

■「池の水をぜんぶ抜く」のではなく「物置の品をぜんぶ出す」

 

 上記の“宿題”を受けて制作されたと思われるバラエティーを、民放各局で探し出すことは容易だ。その中の一つとして挙げられるのは、1月4日に放送された日本テレビ系の『物置開けてみませんか?』。

 番組のコンセプトは、単純明快。長年開けていなかった物置に足を踏み入れると、そこには心躍る“何か”が眠っているのでは……? そんな、興奮の「物置宝探し」を試みるプログラムである。

 事実、昨年9月に岐阜県のとある民家の物置では希少なフェラーリ「デイトナ」が40年ぶりに見つかり、オークションで2億3,000万円の値が付いたこともあった。これは、期待ができそうか!?

 というわけで、番組は日本全国の物置へと赴いている。例えば、山梨の民家にある築50年以上の物置をオープンしてみると、そこには江戸時代の火縄銃や勝海舟が明治時代に書いたとされる(真偽不明)掛け軸が発見された。また、岐阜県の物置には、フレームにダイヤが散りばめられた約1,000万円の眼鏡や、およそ総額3億円の宝石箱が眠っていた。

 愛知県にある蔵付き物件(母屋とは別に昔ながらの物置である『蔵』が付いている物件)に訪れた際は、大仕事だった。蔵が2階建てという大きなサイズとなるため、埋蔵品はなんと1万点を超えていたのだ。

 そこで番組は引っ越し業者に依頼し、5時間をかけて蔵から物を一気に出すことを決意! まさに、『池の水ぜんぶ抜く大作戦』を彷彿とさせるやり方である。しかし、これらの膨大な品々から“お宝”を発見することは叶わなかった。山部赤人の木彫りや南部鉄瓶などが発見されたにもかかわらず、鑑定士による鑑定額は総額40万円……。

 でも、メゲない。今回の作業に参加し“お宝発掘”を期待していた地元の郷土研究会会長は「お宝とは、その家にとって価値のある物。自分の気持ちの中に『お宝』があると感じました」と思いを語っており、単なる「物置宝探し」ではない次のフェーズに番組がヴァージョンアップしたことを感じさせる。

■中学時代のカミナリによる露骨な“下ネタコントビデオ”が発掘される

 

 番組は、お笑いコンビ「カミナリ」の竹内まなぶの実家物置へも訪れている。彼の両親は茨城でスーパーマーケットを経営し、見事に成功。立派な家と、家のサイズに匹敵する物置を所有していた。

 さっそく、カミナリの2人が7年ぶりに物置を開けてみると、そこには幼なじみである2人が中学時代に撮ったプリクラや、相方の石田たくみがまなぶとの出会いの感謝を綴った卒業文集が保管されていた。

 しかし、彼らは芸人だ。決して、いい話だけでは終わらない。まず、まなぶが中学時代に好きだった「伊藤愛美さん」の顔やお尻を隙を見て激写した“盗撮写真”が不意に発見されてしまう。

 続いて、何が撮影されたか不明の8ミリビデオテープも発見。このテープには、どんな映像が収録されているのだろう? 竹内家全員でそのテープを視聴すると、登場したのは中学時代のカミナリの2人である。

 若き日のまなぶが自分の部屋に入ると、そこには若き日のたくみがいる。まなぶはたくみに「勉強やるよ」と促すのだが、なぜかたくみは勉強しながらまなぶの股間に手を持っていく。そして、たくみはまなぶに襲いかかり、お互いが上半身裸になってベッド上で強制的な性行為に至ってしまう……というコントが、そこには録画されていた。

 お笑いマニアにとっては「これがカミナリの“笑いの原点”か」と感慨深くもあるが、シチュエーションが悪すぎた。家族全員が観ている前で再生される、あまりにも露骨なエロ展開。顔を赤くしながら「家族、観るなー!」と絶叫するたくみであったが、時すでに遅しだ。

 

■番組が一人歩きし、亜流に収まらない

 

 松本人志はかつて、著書『松本』(朝日新聞社)にて、「テレビのバラエティー番組で、何か新しいことをやろうとしても、必ず過去の何かに似てきてしまう」「何もかもやりつくされたこのご時世で、新しいものを作るのは大変な作業」「パターンを利用して、自分たちの新しいアレンジを駆使してやっていけばいい」と綴っている。

 繰り返すが、この番組は『池の水ぜんぶ抜く大作戦』にインスパイアされ、出来上がった企画のはず。池の水を全部抜く代わりに、物置にある品々を全部外に出す……という発想だと予想される。だが、ミラクルが起こったことで、着地点は想定外にスゴいことになってしまった。

 加えて、ゲスト出演した六角精児によるコメントが秀逸だ。カミナリのVTRを観終わるや「物を捨てちゃうと、こうはならない。置いとくと、こういうオモロイことが色々と起こる。これが、物置の良さですよねぇ」と、感想を述べたのだ。

 単なる「物置宝探し」で終わるかと思いきや、唐突に昨今の“断捨離ブーム”に異を唱えだした六角。番組は、制作陣の意図する着地点にことごとく収まらない。

 番組の展開が一人歩きし、ゲストのコメントは想定外のものとなり、結果的に亜流の域を脱した『物置開けてみませんか?』。第2回放送は、果たしてあるだろうか?
(文=寺西ジャジューカ)

アイドル界屈指のエンターテイナー中居正広を大特集! 彼の葛藤と信念を記録した1冊!

 アイドル氷河期を乗り越え、MCの世界に活路を見出し、今や芸能界を代表するエンターテイナーに。
 25年間守り続けてきたSMAPの大一番において、葛藤しながらも信念に従った男の数々の魅力に迫ります。

CONTENTS

COMPANY
04 俺もジャイアンツ入団にチャレンジするぞ!
—-解散しようか?

TRUST
18 いや、俺まとめらんねぇよ。怪獣ばっかりだぞ!!
—-人を惹き付ける中居君の肝

THINKING
32 おのころは自分の中で絶対の人を探してました
—-思考するアイドル

LIE OF TURTH
46 基本、素の部分は見せない。
  僕はそれが芸能人の使命じゃないのかなと思っています。
—-エンターテインメントの世界で生きるということ

SMAP
54 SMAPは帰る場所ではなく行くところ
—-ONE FOR ALL,ALL FOR ONE,

DECISION
70 懸命にいいものを目指そうとしたのなら、
  最後どっちに転んでも仕方ない
—-失ったものを数えない

MOTTO
82 かならず「。」で終わりたい
—-反省を繰り返し、結果を受け止める男の矜持

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香取慎吾が描く“全裸男”が「怖すぎる!」、2年前の“SMAP公開処刑”を表現か

 元SMAPの香取慎吾が18日、自身のインスタグラムでイラストを発表。「悲しくて、怖い」とネット上で悲鳴が相次いでいる。

 芸能活動の傍ら、自宅に併設するアトリエでアート作品の制作を行っている香取。これまで、アクリル絵の具やパソコンなどで膨大な数の作品を作ってきたというが、世に出ているのは、1998年に出版された画集『しんごのいたずら』(ワニブックス)のほか、企業や番組、イベント宣伝用に描かれた作品など、ほんの一部だという。

「香取は、画材も選ばず、描きたいタイミングで気の向くままに描くスタイル。そのため、香取の心の闇が表れてしまうこともしばしば。過去の作品には、本人が『自画像のようなイメージ』と語る“ピエロ”や“黒ウサギ”など、どこかダークで寂しげなモチーフも目立ちます」(芸能記者)

 そんな香取が今回、インスタグラムでコメントもタグも付けずに投稿したのは、マジックなどで描かれた全裸の男の絵。下半身丸出しで立っている男は“少年”にも見え、顔はのっぺらぼうで、目元には包帯か帽子のようなものが。左手にだけ妙にリアルな手が描かれており、その周囲を涙を流した無数の顔が囲んでいる。

 見ていると辛い気持ちにもなるこの絵だが、案の定、ネット上でも「めちゃくちゃ怖いんだけど」「香取慎吾の絵、ヤベーやつじゃん」といった声が殺到している。

「ちょうど2年前に当たる2016年1月18日は、『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の生放送で、SMAPが公開処刑ともとれる謝罪会見を行った日。今回の絵は、そんな2年前の香取自身の心情を表した作品なのでしょう。メンバーにとっても、衝撃的な出来事であったことが窺えます」(同)

 なお、謝罪会見時、香取はひときわ厳しい表情で「本当に申し訳ございませんでした」と頭を下げ、「皆さまと一緒に、また今日からいっぱい笑顔を作っていきたいと思っています」とコメントしていた。

 ファンからは、「2年前の傷が癒えていないのでは?」と心配する声も相次いでいる香取。ジャニーズ事務所からの独立後に、あえてこの悲しい絵を投稿した真意が気になるところだ。

香取慎吾が描く“全裸男”が「怖すぎる!」、2年前の“SMAP公開処刑”を表現か

 元SMAPの香取慎吾が18日、自身のインスタグラムでイラストを発表。「悲しくて、怖い」とネット上で悲鳴が相次いでいる。

 芸能活動の傍ら、自宅に併設するアトリエでアート作品の制作を行っている香取。これまで、アクリル絵の具やパソコンなどで膨大な数の作品を作ってきたというが、世に出ているのは、1998年に出版された画集『しんごのいたずら』(ワニブックス)のほか、企業や番組、イベント宣伝用に描かれた作品など、ほんの一部だという。

「香取は、画材も選ばず、描きたいタイミングで気の向くままに描くスタイル。そのため、香取の心の闇が表れてしまうこともしばしば。過去の作品には、本人が『自画像のようなイメージ』と語る“ピエロ”や“黒ウサギ”など、どこかダークで寂しげなモチーフも目立ちます」(芸能記者)

 そんな香取が今回、インスタグラムでコメントもタグも付けずに投稿したのは、マジックなどで描かれた全裸の男の絵。下半身丸出しで立っている男は“少年”にも見え、顔はのっぺらぼうで、目元には包帯か帽子のようなものが。左手にだけ妙にリアルな手が描かれており、その周囲を涙を流した無数の顔が囲んでいる。

 見ていると辛い気持ちにもなるこの絵だが、案の定、ネット上でも「めちゃくちゃ怖いんだけど」「香取慎吾の絵、ヤベーやつじゃん」といった声が殺到している。

「ちょうど2年前に当たる2016年1月18日は、『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の生放送で、SMAPが公開処刑ともとれる謝罪会見を行った日。今回の絵は、そんな2年前の香取自身の心情を表した作品なのでしょう。メンバーにとっても、衝撃的な出来事であったことが窺えます」(同)

 なお、謝罪会見時、香取はひときわ厳しい表情で「本当に申し訳ございませんでした」と頭を下げ、「皆さまと一緒に、また今日からいっぱい笑顔を作っていきたいと思っています」とコメントしていた。

 ファンからは、「2年前の傷が癒えていないのでは?」と心配する声も相次いでいる香取。ジャニーズ事務所からの独立後に、あえてこの悲しい絵を投稿した真意が気になるところだ。

木村拓哉『BG』15.7%スタートは“重い十字架”? 「幼稚なおじさん」にしか見えず、視聴率急落は必至か

 満を持して始まった元SMAP・木村拓哉主演の『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)。キムタク御大の必死すぎるバラエティ番宣の甲斐もあってか、18日に放送された第1話の視聴率は15.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、今期の初回としてはトップを飾りました。さすが、腐ってもキムタクですねえ。パチパチパチ(拍手)。

 というわけで、日刊サイゾーでは本作も張り切って全話レビューしてまいります。さっそく第1話から振り返ってみましょう。

 

■キムタクが、交通整理の冴えないオッサンに

 

 さかのぼること6年前の2012年、島崎(木村拓哉)は、どうやら優秀なガードマンだったようです。欧州に移籍するサッカーのスター選手に付き添い、空港に押し寄せたファンをさばいたり、「裏切り者ー!」とか叫んでるファンが投げつけた生卵を華麗にキャッチしたりしています。しかし、どうやらこのとき何かがあったようで、スローモーションでなんとも言えない表情を浮かべたところで、現在へ。それにしても老けた。老けました。

 18年、島崎は小雪舞い散る寒空の下、黄色いヘルメットをかぶって交通整理の仕事をしています。キャリア6年だそうですから、やっぱりあの空港の件の後、すぐに転職したようです。よほどのことがあったのでしょう。何しろ、なんともいえない表情でしたから。

 一緒に働く老人(でんでん)と「俺より若いよー」「若くないですよー」みたいなやり取りをしていることから、気さくな性格であることが示されます。

 と、そこに通りかかる1台の黒塗りセダン。運転する江口洋介は、通行禁止にもかかわらず「急いでいます、通してくれませんか」と無理を言い、後部座席の石田ゆり子も「お願いできませんか」と、口調こそ丁寧なものの聞き分けはなさそう。島崎は、またなんとも言えない表情を浮かべると、「事故を起こされても困るんで」と、あっさり規制を解いて高級車を通します。通れるなら通行禁止にするなよ! といった基本的なツッコミをしていると話が進まなくなるので自重しますが、まあ導入はだいたいこんな感じでした。ちなみに後部座席の石田ゆり子は立原愛子という名前で、女子アナ上がりの厚生労働大臣。江口はそのSP・落合。愛子大臣は、失言騒ぎで失職寸前だそうです。

 そんな折、島崎の勤める警備会社が身辺警護課(ボディガードの仕事)を発足することになり、社長の今関(永島敏行)は島崎をこの課に配属したいと言います。島崎は一度、断るものの、結局、新人ボディガードとして身辺警護課の配属になって、なまった体を鍛え直すことに。チームを組むのは、会社の各部署から、盗聴器を探すのが上手そうな沢口(間宮祥太朗)、現金輸送を任されている高梨(斎藤工)、敏腕万引きGメンの菅沼(菜々緒)と、ビル警備の仕事をしている村田(上川隆也)が選抜されました。この村田が課長だそうですが、警備会社から精鋭を集めて、この程度? という印象のメンツです。島崎は敏腕ボディガードだったようですし、後に高梨は元自衛官、村田課長は元警視庁のSPであることが明かされますが、盗聴器の沢口くんなんて訓練最終盤になってもまともに動けてないし、万引きGメンの菅沼さんが抜擢された理由はまったくわかりません。目がいいから、とかかな。

 ともあれ、そんな5人のチームが初仕事に臨む、というのが第1話でした。

■冒頭は、いかにもテレ朝な味わい

 

 本作の脚本は『ギフト』(97/フジテレビ系)、『エンジン』(05/同)、『GOOD LUCK!!』(03/TBS系)などでお馴染みのキムタク御用達ライター・井上由美子さん。この3作は、いかにも華やかなキムタクドラマでしたが、『BG』に限っていえば、すこぶる地味という印象です。キムタク本人が華やかさを失っていることもありますが、それ以上に脚本が段取りじみていて、説明としてはわかりやすいけど「面白いドラマが始まる」というワクワク感が皆無です。

 唯一、真っ白なスウェット上下で全力疾走しているキムタクの走り方だけ、なんかちょっと面白い。そういえば、キムタクはSMAPで一番足が遅いのでした。数年前に放送された『スマスマ初のスター大運動会SP!!』(フジテレビ系)の惨劇を思い出します。SMAPの5人で50メートル走をして、キムタクの余りの足の遅さに気を使った中居正広が、盛大にコケて最下位を引き受けた、あのシーン。キムタクの中で、どう処理されているのでしょう。

 それはそうと、キムタクより5歳も年上なのに華やかさにあふれているのが、SP・落合を演じる江口洋介です。雰囲気もキリリと冴えていて、背も高いし、すごく優秀に見えます。愛子大臣も、全幅の信頼を寄せている様子。

 一方、キムタクはいかにも“頼りない”という記号を与えられています。バツイチだし、中学生の息子にもナメられてる。もっとも端的なのが言葉使いで、同僚の斎藤工との会話の際に「その盾(ボディガード)が死んじゃったら、まずくない?」とか「ケガすることだってあるしさ」とか「丸腰のウチらは無力だよ、怖いでしょ?」とか、言っていることの内容以前に、語尾が幼稚すぎる。

 ここで何が行われているかというと、脚本家によるキムタクの“異物化”です。江口洋介や斎藤工には固い言い回しでハッキリキリキリしゃべらせて、キムタクの語尾をユルめることで「特別な存在である」「自由で、何者にも縛られない」「わが道をゆく男」「等身大」といったイメージを浮き立たせようとしているわけです。

 これが、完全に失敗してる。

 長年の御用達ライターを起用した弊害が、モロに出ていると感じました。15年前、20年前と同じフンニャリ言葉を使うキムタクの容姿は、明らかに年齢を重ねています。もうまったく等身大じゃない。キラメキを失った、ただ顔面が整っただけの小柄な中年俳優です。しかし、脚本家の井上さんにとっては、今でも「かわいいかわいいキムタク」なのでしょう。

 キムタクの芝居は、昨年の『A LIFE~愛しき人~』(TBS系)とさして変化していませんが、『A LIFE』は周囲の人物もユルかった。浅野忠信は自由すぎたし、松ケンはキムタク以上のフンニャリだったし、及川ミッチーはミッチーだった。だから、キムタクも“変な人集団”の1人として馴染むことができていたように見えました。『BG』はこれ、きついですよ。周りが固ければ固いほど、キムタクが「幼稚なおじさん」に見えてしまう。井上さんが「いつまでも若々しいヒーロー」を描こうとしていることは理解できるけど、この座組みでもっともキムタクの加齢を認められないでいるのが、きっと脚本家の井上さんなのだと思います。不幸なことです。

 

■事件のクオリティの低さも霞みます

 

 さて、1話完結ですし、事件の仕掛けについては特筆すべきことはないので、さくっといきましょう。

「失業問題は自己責任です」という、ものすごい失言で殺害予告を受けた愛子大臣が、SP落合らを引き連れて隅田川マラソンの開会式に出席することに。島崎たちのクライアントは、マラソンのメインスポンサーであるカップラーメン会社の社長です。

 で、なんか逆恨みしたっぽい週刊誌の記者が発煙筒を焚いて、「爆弾だー!」ってことになって、ラーメン社長は島崎たちチームの護衛によって無事逃亡。一方、SP落合は警護中に持ち場を離れて携帯をイジるという大ボケをかまし、愛子大臣とはぐれてしまいます。

 なんやかんやで犯人の記者と愛子大臣が対峙していた部屋に島崎登場。華麗に取り押さえると思いきや、記者が島崎をボコるという超絶展開。このままですと愛子大臣は殺されてしまうところでしたが、都合よく現れたSP落合と島崎の連携によって、記者の身柄は確保されました。

 島崎は格闘弱いし、有能だと思っていたSP落合は超バカだし、こっちも有能だと思っていた斎藤工はよくわからない理由で初任務前にボディガードを辞めちゃったし、犯人の動機もよくわからないし、プロットも「悲惨」の一言です。いや、わかるんですよ。丸腰の民間警備員が主人公だから「丸腰だから人を守れることもあるんじゃないですか?」というキメ台詞につなげるために、いろいろ捻じ曲げる必要があったことも理解できる。ただ、事件も、脇役も、ぜんぜんキムタクを引き立てられてない。主人公に、ろくな見せ場がないんです。

 なぜなら、脚本家が「キムタクが流し目でキメ台詞を言えば成立する」と思ってるから。全然そんなの、もう通用しないのに。

 初回の15.7%という数字は、これは重い十字架になるかもしれません。終わってみたら「連ドラ史上、最大の下げ幅」という記録を作ってしまうかもしれない。そんな不安を感じさせる第1話でしたが、仕事なので第2話以降も張り切ってレビューします! よろしくお願いいたします!
(文=どらまっ子AKIちゃん)

木村拓哉『BG』15.7%スタートは“重い十字架”? 「幼稚なおじさん」にしか見えず、視聴率急落は必至か

 満を持して始まった元SMAP・木村拓哉主演の『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)。キムタク御大の必死すぎるバラエティ番宣の甲斐もあってか、18日に放送された第1話の視聴率は15.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、今期の初回としてはトップを飾りました。さすが、腐ってもキムタクですねえ。パチパチパチ(拍手)。

 というわけで、日刊サイゾーでは本作も張り切って全話レビューしてまいります。さっそく第1話から振り返ってみましょう。

 

■キムタクが、交通整理の冴えないオッサンに

 

 さかのぼること6年前の2012年、島崎(木村拓哉)は、どうやら優秀なガードマンだったようです。欧州に移籍するサッカーのスター選手に付き添い、空港に押し寄せたファンをさばいたり、「裏切り者ー!」とか叫んでるファンが投げつけた生卵を華麗にキャッチしたりしています。しかし、どうやらこのとき何かがあったようで、スローモーションでなんとも言えない表情を浮かべたところで、現在へ。それにしても老けた。老けました。

 18年、島崎は小雪舞い散る寒空の下、黄色いヘルメットをかぶって交通整理の仕事をしています。キャリア6年だそうですから、やっぱりあの空港の件の後、すぐに転職したようです。よほどのことがあったのでしょう。何しろ、なんともいえない表情でしたから。

 一緒に働く老人(でんでん)と「俺より若いよー」「若くないですよー」みたいなやり取りをしていることから、気さくな性格であることが示されます。

 と、そこに通りかかる1台の黒塗りセダン。運転する江口洋介は、通行禁止にもかかわらず「急いでいます、通してくれませんか」と無理を言い、後部座席の石田ゆり子も「お願いできませんか」と、口調こそ丁寧なものの聞き分けはなさそう。島崎は、またなんとも言えない表情を浮かべると、「事故を起こされても困るんで」と、あっさり規制を解いて高級車を通します。通れるなら通行禁止にするなよ! といった基本的なツッコミをしていると話が進まなくなるので自重しますが、まあ導入はだいたいこんな感じでした。ちなみに後部座席の石田ゆり子は立原愛子という名前で、女子アナ上がりの厚生労働大臣。江口はそのSP・落合。愛子大臣は、失言騒ぎで失職寸前だそうです。

 そんな折、島崎の勤める警備会社が身辺警護課(ボディガードの仕事)を発足することになり、社長の今関(永島敏行)は島崎をこの課に配属したいと言います。島崎は一度、断るものの、結局、新人ボディガードとして身辺警護課の配属になって、なまった体を鍛え直すことに。チームを組むのは、会社の各部署から、盗聴器を探すのが上手そうな沢口(間宮祥太朗)、現金輸送を任されている高梨(斎藤工)、敏腕万引きGメンの菅沼(菜々緒)と、ビル警備の仕事をしている村田(上川隆也)が選抜されました。この村田が課長だそうですが、警備会社から精鋭を集めて、この程度? という印象のメンツです。島崎は敏腕ボディガードだったようですし、後に高梨は元自衛官、村田課長は元警視庁のSPであることが明かされますが、盗聴器の沢口くんなんて訓練最終盤になってもまともに動けてないし、万引きGメンの菅沼さんが抜擢された理由はまったくわかりません。目がいいから、とかかな。

 ともあれ、そんな5人のチームが初仕事に臨む、というのが第1話でした。

■冒頭は、いかにもテレ朝な味わい

 

 本作の脚本は『ギフト』(97/フジテレビ系)、『エンジン』(05/同)、『GOOD LUCK!!』(03/TBS系)などでお馴染みのキムタク御用達ライター・井上由美子さん。この3作は、いかにも華やかなキムタクドラマでしたが、『BG』に限っていえば、すこぶる地味という印象です。キムタク本人が華やかさを失っていることもありますが、それ以上に脚本が段取りじみていて、説明としてはわかりやすいけど「面白いドラマが始まる」というワクワク感が皆無です。

 唯一、真っ白なスウェット上下で全力疾走しているキムタクの走り方だけ、なんかちょっと面白い。そういえば、キムタクはSMAPで一番足が遅いのでした。数年前に放送された『スマスマ初のスター大運動会SP!!』(フジテレビ系)の惨劇を思い出します。SMAPの5人で50メートル走をして、キムタクの余りの足の遅さに気を使った中居正広が、盛大にコケて最下位を引き受けた、あのシーン。キムタクの中で、どう処理されているのでしょう。

 それはそうと、キムタクより5歳も年上なのに華やかさにあふれているのが、SP・落合を演じる江口洋介です。雰囲気もキリリと冴えていて、背も高いし、すごく優秀に見えます。愛子大臣も、全幅の信頼を寄せている様子。

 一方、キムタクはいかにも“頼りない”という記号を与えられています。バツイチだし、中学生の息子にもナメられてる。もっとも端的なのが言葉使いで、同僚の斎藤工との会話の際に「その盾(ボディガード)が死んじゃったら、まずくない?」とか「ケガすることだってあるしさ」とか「丸腰のウチらは無力だよ、怖いでしょ?」とか、言っていることの内容以前に、語尾が幼稚すぎる。

 ここで何が行われているかというと、脚本家によるキムタクの“異物化”です。江口洋介や斎藤工には固い言い回しでハッキリキリキリしゃべらせて、キムタクの語尾をユルめることで「特別な存在である」「自由で、何者にも縛られない」「わが道をゆく男」「等身大」といったイメージを浮き立たせようとしているわけです。

 これが、完全に失敗してる。

 長年の御用達ライターを起用した弊害が、モロに出ていると感じました。15年前、20年前と同じフンニャリ言葉を使うキムタクの容姿は、明らかに年齢を重ねています。もうまったく等身大じゃない。キラメキを失った、ただ顔面が整っただけの小柄な中年俳優です。しかし、脚本家の井上さんにとっては、今でも「かわいいかわいいキムタク」なのでしょう。

 キムタクの芝居は、昨年の『A LIFE~愛しき人~』(TBS系)とさして変化していませんが、『A LIFE』は周囲の人物もユルかった。浅野忠信は自由すぎたし、松ケンはキムタク以上のフンニャリだったし、及川ミッチーはミッチーだった。だから、キムタクも“変な人集団”の1人として馴染むことができていたように見えました。『BG』はこれ、きついですよ。周りが固ければ固いほど、キムタクが「幼稚なおじさん」に見えてしまう。井上さんが「いつまでも若々しいヒーロー」を描こうとしていることは理解できるけど、この座組みでもっともキムタクの加齢を認められないでいるのが、きっと脚本家の井上さんなのだと思います。不幸なことです。

 

■事件のクオリティの低さも霞みます

 

 さて、1話完結ですし、事件の仕掛けについては特筆すべきことはないので、さくっといきましょう。

「失業問題は自己責任です」という、ものすごい失言で殺害予告を受けた愛子大臣が、SP落合らを引き連れて隅田川マラソンの開会式に出席することに。島崎たちのクライアントは、マラソンのメインスポンサーであるカップラーメン会社の社長です。

 で、なんか逆恨みしたっぽい週刊誌の記者が発煙筒を焚いて、「爆弾だー!」ってことになって、ラーメン社長は島崎たちチームの護衛によって無事逃亡。一方、SP落合は警護中に持ち場を離れて携帯をイジるという大ボケをかまし、愛子大臣とはぐれてしまいます。

 なんやかんやで犯人の記者と愛子大臣が対峙していた部屋に島崎登場。華麗に取り押さえると思いきや、記者が島崎をボコるという超絶展開。このままですと愛子大臣は殺されてしまうところでしたが、都合よく現れたSP落合と島崎の連携によって、記者の身柄は確保されました。

 島崎は格闘弱いし、有能だと思っていたSP落合は超バカだし、こっちも有能だと思っていた斎藤工はよくわからない理由で初任務前にボディガードを辞めちゃったし、犯人の動機もよくわからないし、プロットも「悲惨」の一言です。いや、わかるんですよ。丸腰の民間警備員が主人公だから「丸腰だから人を守れることもあるんじゃないですか?」というキメ台詞につなげるために、いろいろ捻じ曲げる必要があったことも理解できる。ただ、事件も、脇役も、ぜんぜんキムタクを引き立てられてない。主人公に、ろくな見せ場がないんです。

 なぜなら、脚本家が「キムタクが流し目でキメ台詞を言えば成立する」と思ってるから。全然そんなの、もう通用しないのに。

 初回の15.7%という数字は、これは重い十字架になるかもしれません。終わってみたら「連ドラ史上、最大の下げ幅」という記録を作ってしまうかもしれない。そんな不安を感じさせる第1話でしたが、仕事なので第2話以降も張り切ってレビューします! よろしくお願いいたします!
(文=どらまっ子AKIちゃん)