本当にあった! アホでマヌケなアメリカ白人のトホホすぎる武勇伝『オレの獲物はビンラディン』

 9.11同時多発テロの主謀者であるオサマ・ビンラディンを捕まえるため、日本刀を持って単身パキスタンへ乗り込んだアメリカ白人がいた。まるで出来の悪いB級アクション映画のようだが、これ本当にあった実話。敬虔なキリスト教徒だった米国の一般市民ゲイリー・フォークナーは、「ビンラディンを生け捕りにしろ」という神の啓示を受け、合計7回もパキスタンに渡った挙げ句、パキスタン当局に身柄を拘束され、米国に送還されている。こんなアホでマヌケなアメリカ白人のお騒がせエピソードが、ニコラス・ケイジ主演作『オレの獲物はビンラディン』(原題『Army of One』)として映画化された。

 本作を映画化したのは『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(06)や『ブルーノ』(09)といった過激な“やらせドキュメンタリー”を大ヒットさせたラリー・チャールズ監督。相変わらず、イカれたネタが大好きな米国人監督である。神を信じ、祖国アメリカを愛し、恋人とその家族を守るために、日本刀、手錠、暗視ゴーグルをパキスタンで持ち歩いていた変人ゲイリーを、チャールズ監督はどうしようもないバカだけど憎めない普遍的なアメリカ人像として描いてみせる。

 コロラド州在住のゲイリー(ニコラス・ケイジ)は元々は大工として働き、何度か刑務所のお世話になり、今は便利屋をやっている。町内で困った人がいれば手伝いに行くが、仕事がない日は昔からの仲間とバーでテレビを見ながらビールを呑み続ける生活を送っていた。ある日、ゲイリーは病院で人工透析を受けている間に、神さま(ラッセル・ブランド)からの啓示を受ける。9.11同時多発テロからすでに2年以上の歳月が流れていたが、ブッシュ政権は肝心のビンラディンを捕まえることができずにいる。「お前がパキスタンへ行って、生け捕りにしてこい」と神さまは命じる。神の啓示があれば、後は行動あるのみ。ゲイリーの約6年間に及ぶひとり十字軍がこうして始まった。

 プアホワイト層であるゲイリーは、どうやってパキスタンへ渡ったのか? まず、ゲイリーはヨットでパキスタンを目指す。自然の力で進むヨットなら、交通費がいらないから。ところがヨットはメキシコに漂着して、第一次ひとり十字軍は失敗に終わる。次はイスラエルに入国し、イスラエルの山からハングライダーに乗ってパキスタン入りを計画する。ハングライダーが墜落して、これも失敗。三度目の正直とばかりに、パキスタンの首都イスラマバードへ直行する航空便に搭乗するゲイリー。どうやって日本刀を持ち込んだのかは詳細不明。とにもかくにも、パキスタン入りを果たしたゲイリー。安宿に泊まっていたゲイリーはビンラディンを探す傍ら、持ち前の人見知りしない陽気な性格で地元の人たちと仲良くなり、パキスタン産のハッパを吸って超ハッピーに。「米国もいいが、パキスタンも素晴しい国だ」と異国での生活に溶け込んでいくゲイリーだった。

 アホでマヌケな主人公を、ニコラス・ケイジも裏表のない大らかな米国人として演じている。変人ではあるが、決してキチガイではない。50歳を過ぎているゲイリーには心から愛する恋人がいる。高校時代を一緒に過ごしたマーシ(ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ)だ。学生の頃は人気者だったマーシはその後男運には恵まれなかったが、今でも充分に魅力的。オーバードーズで死んだ妹のひとり娘リジー(チェノア・モリソン)は生まれつき障害を持っているが、マーシは養子として引き取り、愛情いっぱいに育てている。愛するマーシの家の玄関のスロープを無償で修理するゲイリー。マーシも破天荒で情熱的なゲイリーのことを優しく受け入れる。ゲイリーとマーシのラブロマンスは映画用の創作かと思いきや、実際にゲイリーは障害を持つ子を育てていた女性をすごく愛していたそうだ。

 額がすっかり広くなったニコラス・ケイジとお下劣コメディ『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(11)に出演していたウェンディとのラブシーンを見ていると無性に泣けてくる。ベテラン俳優2人が演じるゲイリーとマーシは、いい年してまるでウブな高校生のようなカップルなのだ。2人とも真っすぐすぎて、大人の社会で生きていくには不器用なタイプだった。またゲイリーは、マーシとその娘リジーを愛するがゆえに、米国の平和を脅かすアルカイダとビンラディンを成敗するために何度も何度もパキスタンへ渡ろうとする。マーシもゲイリーの一本気な性格を知っているから、神からの使命に燃えるゲイリーの暴走を止めることができない。愛と使命との狭間で揺れ動くゲイリー。男ってヤツは、どの国でも幾つになってもどうしよもないバカばっかりである。

 

『ボラット』をはじめ、米国人の頭からっぽなマッチョイズムを笑い飛ばしてきたチャールズ監督は、本作の主人公であるゲイリーをこう評している。

「ゲイリーは変態的な意味でのアメリカン・ヒーローだと思う。非常に混乱していて、神の声を聞いたと信じ、パキスタンがどこかも知らずに使命感とやる気に満ち、ある意味でアメリカそのもの。なので、ゲイリーの映画を撮れば自然とアメリカそのものについて語れると思ったんだ」

 愛国心や宗教も、チャールズ監督の作品では度々言及されるキーワードだ。その2つのワードについては、このように語っている。

「愛国心という言葉は今の時代は乱用され、誤用されているように思う。不寛容であることを正当化するための言葉として使われている。本当の意味での愛国心という言葉は使われていないんじゃないか。愛すべき国そのものの正体が分からなくなっているため、愛国心という言葉はとても多くの問題を孕んでいるんだ。宗教も誤解されている。宗教は人々に安らぎを与え、生きることに絶望している人は神の存在に救われることもある。宗教や神という概念に頼ることで、心に平穏が訪れることは決して悪いことではない。でも宗教や神は実在するものではないので、そんな幻想にすがりつくことは危険だ。愛国心と同じように宗教も現代社会では誤用されている。本来は人と人とを繋ぐものなのに、人々を対立させるものになってしまっているんだ」

 おかしな映画ばっかり撮っているチャールズ監督だけど、本当はすっごいインテリな平和主義者なんですね。米国ではクリスマスシーズンになると、フランク・キャプラ監督の『素晴しき哉、人生!』(46)がよくテレビ放映される。生きることに絶望したお人よしな米国人ジョージ(ジェームズ・スチュアート)が天使の力で家族や仲間に恵まれた人生を思い出し、自殺を思いとどまるという宗教色の強いハートウォーミングコメディだ。家族を愛し、自分が正しいと思った道を突き進むゲイリーを主人公にした本作は、現代版『素晴しき哉、人生!』だと言えるんじゃないだろうか。
(文=長野辰次)


『オレの獲物はビンラディン』

監督/ラリー・チャールズ
出演/ニコラス・ケイジ、ラッセル・ブランド、ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ、レイン・ウィルソン、デニス・オヘア、マシュー・モディーン、アメール・チャダ・パテル
配給/トランスフォーマー PG12 12月16日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開
http://www.transformer.co.jp/m/finding-binladen

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KinKi Kids年末コンサート開始前夜! アニバーサリーイヤーの締めくくりに、2人の歩みをたどる1冊!

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 メモリアルイヤーを記念し、160ページの大ボリュームでお届けするスペシャルフォトレポート! 
 なかよしツーショット満載の貴重なライブフォトに加え、グループ愛発言集やシングル完全ガイドなど、ふたりの歩みをたどるスペシャル企画も多数収録!

Contents

PROFILE ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・004P~
KinKi Kids concert tour J・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・006P~
KinKi Kids 2010-2011 ~君も堂本FAMILY ~・・・・・・・・・・024P~
King・KinKi Kids 2011-2012・・・・・・・・・・・・・・・・・042P~
Johnnys’ Countdown 2012-2013・・・・・・・・・・・・・・・・060P~
KinKi Kids Concert 2013-2014『 L』・・・・・・・・・・・・・・070P~
KinKi Kids Concert『 Memories & Moments』・・・・・・・・・・・088P~
2015-2016 Concert KinKi Kids・・・・・・・・・・・・・・・・・106P~
We are KinKi Kids DOME CONCERT 2016-2017
TSUYOSHI & YOU & KOICHI・・・・・・・・・・・・・・・・・・・124P~
futari の絆 ~グループ愛発言集~・・・・・・・・・・・・・・・・142P~
シングル全37 作完全ガイド・・・・・・・・・・・・・・・・・・149P~
BIOGRAPHY ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・156P~

■立ち読みはこちら

カテゴリー: 未分類

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藤吉久美子の親密交際は“枕営業”!? 号泣釈明会見に加藤浩次が苦言「あんな涙流しちゃダメ!」

 テレビ局員との不倫疑惑が報じられた女優・藤吉久美子(56)の“号泣釈明会見”に対し、違和感を訴える声が相次いでいる。

 1995年にタレントの太川陽介と入籍、2001年に長男をもうけた藤吉。おしどり夫婦として知られ、旅番組などでの夫婦共演も多い。そんな中、14日発売の「週刊文春」(文藝春秋)は、ABC朝日放送のゼネラルプロデューサー・A氏(50代後半)との親密交際をキャッチ。

 記事によれば、秋吉は都内に単身赴任中のA氏のマンションの合鍵を使い、逢瀬を繰り返していたという。また、イベント出演のため訪れた宮崎県にA氏も同行。滞在先のホテルで2夜にわたり、2人きりで過ごしていたとも伝えている。

「A氏はドラマ部門のトップで、藤吉は9月にも、A氏がプロデューサーを務めたドラマ『広域警察9』に出演。“枕営業”と揶揄する声も聞こえてきます。なお、太川は14日に急きょ会見を開き、終始、明るい表情で妻のことを『信じる』と擁護していました」(芸能記者)

 太川の会見から約7時間後、今度は藤吉が羽田空港で会見。終始、号泣しっぱなしであったが、主張としては不倫を完全否定。A氏については、「舞台の構成をお願いして、やっていただいていました。自主ライブなので、自分たちで何もかもしないといけないので」とあくまでもスタッフであると強調。合鍵については、A氏のマンションに「チラシをどうしても取りに行かないといけなくて」とし、ホテルで朝まで過ごしたことについては、「体をほぐしてもらった」と説明した。

「号泣している姿と、口から発せられる釈明の内容がちぐはぐで、『なぜ泣いているのか?』と違和感しかなかった。これなら、不倫相手との手つなぎを『あまり記憶がなくて』とあっけらかんと言ってのけた斉藤由貴の会見のほうが、辻褄としては合っていますよ」(同)

 会見の模様を伝えた15日の情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)では、司会の極楽とんぼ・加藤浩次が「自分が白だという潔白の会見をするときに、あんな涙流しちゃダメ」「泣きたいのは太川さんですよ」「許すって言ってる旦那さんの記者会見見た後に、あの涙はダメよ」とばっさり。さらに、A氏と今後「一切、会わない」としている藤吉を「何もないんだったら、スタッフとこれからも仕事やっていいと思います」「切る必要はない。大事なスタッフだったら」と否定。全く納得していない様子だった。

「とはいえ、藤吉は以前、バラエティ番組で『夫へのタメ口厳禁』『食事の主導権は夫』『妻の就寝時間まで夫が指示』など、太川の亭主関白ぶりを暴露。以来、太川に“モラハラ夫”疑惑が付きまとっており、今回の報道との関連を疑う声も……」(同)

 会見の「体をほぐしてもらった」発言が、「一体、どこまでほぐしてもらったんだ?」と物議を醸している藤吉。おしどり夫婦として売っていただけに、仕事への影響も大きそうだ。

好評だった『刑事ゆがみ』主人公のキャラ崩壊とミステリー構築の失敗で残念な最終回に

 14日、ドラマ『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)も最終回を迎えました。視聴率は6.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と最後まで低調でしたが、評判は悪くないようです。

 さて、この作品については第1話から「面白いから見たほうがいいよ」と言い続けてきましたが、基本的に、その感じは最後まで変わっていません。最終回も、演出はカッコよいですし、弓神(浅野忠信)と羽生くん(神木隆之介)が魅力的なキャラとして画面を駆け回っていました。ただ、ちょっとなー。ちょっとなー。という感想は否めないところで。振り返りましょうか。あんまり気が進まないんですが。

前回までのレビューはこちらから

 前回のレビューでも少し触れましたが、『刑事ゆがみ』は明確に2つのパートに分かれています。1つは、単話完結で主に女性脚本家が健筆を振るった1~4話と6~8話。これらの回では、事件関係者の心理的掘り下げと弓神&羽生のチャーミングなコンビネーションが前面に押し出されていて、すごく楽しめたし、個性的な刑事ドラマに仕上がっていました。題して、『刑事ゆがみと、その仲間たちの日常』。このシリーズだけで1年でも2年でもやってほしいくらい好きな作品です。

 もう1つは、5話と9話、そして今回の最終話で語られた『刑事ゆがみとロイコ事件』。ドラマオリジナルキャラである天才美少女ハッカー・ヒズミ(山本美月)の存在を軸に、7年前に発生した夫婦殺人事件と、その事件にそっくりな内容の小説『ロイコ』をめぐるミステリーです。原作にも同様の設定は登場しますが、ヒズミの存在そのものを含めて事件の設計は完全にオリジナル。脚本は同作のチーフ演出家である西谷弘さんの盟友・池上純哉さんでした。

 願わくば、『日常』編で丁寧に造り上げられた弓神&羽生のキャラクターが、大仕掛けである『ロイコ』編のミステリーに完全にハマって「これを見ないなんで人生損してる! 大傑作!!」とか書きたかったんですが、この仕掛けがよくなかった。よくなかったです。

 

■弓神の側から「ロイコ事件」を振り返る

 

 7年前に起きたロイコ事件の被害者は、フリーライターの河合武(渋川清彦)と、その妻・伊代(酒井美紀)。2人は『ロイコ』という小説になぞらえた形で殺害されました。容疑者として浮上したのは『ロイコ』の作者・横島(オダギリジョー)。世間を騒がして小説をベストセラーにするために夫妻を殺害したとされていましたが、事件の1週間後に焼身自殺。事件は闇に葬られました。

 ここからは、ドラマの仕掛けを時系列通りに並べ直して振り返ります。

 事件の第一発見者は弓神でした。夫妻の娘・和美(=ヒズミ)と面識のあった弓神は、和美から「ママが殺される」というメールを受け、自宅に急行します。

 すると、夫妻が血を流して死んでおり、12歳の和美の手には金属バットが握られていました。和美が父親を撲殺したことを察した弓神は、その罪を横島になすりつけて和美の将来を守ることにします。

 実は横島の小説は、すべて殺された武がゴーストとして書いていたものでした。なぜ有名人でもないし文章も書けない横島にゴーストが用意されていたのかわかりませんが、そういうことのようです。横島にも不満があったのでしょう。当てつけなのかなんなのか、武の妻・伊代をレイプしました。その結果、生まれたのが和美だったのです。

 レイプされた伊代は、なぜかそのとき被害届を出しませんでした。そのまま和美を産み、夫婦で育てます。しかし、夫の武は日に日に和美が「自分に似ていない」ことから伊代を疑いだし、「誰の子だ!」と迫ると、伊代はこれまで隠してきた横島によるレイプを白状。夫は通報しますが、伊代はここでも被害届を出しません。いわく「娘の父親を犯罪者にしたくない」から。まあこれはわからんでもないですが、レイプされた直後に通報しなかった理由は語られません。夫が横島のゴーストで生計を立ててたからかな。それだとちょっと、伊代さんにも同情しにくいかな。

 そのレイプ事件から13年後に発生したのが、少女・和美による父親殺し事件でした。ちなみに旧強姦罪の時効は10年ですので、この時点で横島が伊代さんへのレイプで罪に問われることはありません。

 しかし、和美による殺人を隠ぺいすることを決めた弓神は、横島を脅し、犯人に仕立て上げます。「罪をかぶって、作品通り再現したカルト小説家として名を残すか、強姦魔として世間にバラされるか」を選べと迫るのです。

 横島は現場にいたわけでもないし、アリバイがありそうなもんですが、なぜか捜査線上に浮上しました。そして、弓神がでっち上げた「ベストセラーにするため」という動機だけで容疑者とされてしまいます。弓神以外、まったく誰も捜査しなかったのでしょうか。

 レイプの時効が成立しているのに、今さら殺人の罪をかぶることにした横島の気持ちもよくわかりませんが、弓神の工作についてはさらに不可思議です。

 偶然、管内で焼身自殺を図ったハタチそこそこの青年に、ちょっと焼いた横島の免許証を持たせて「ハイこれが横島です自殺しました、ロイコ事件は終わりです」との報告書を上げ、それが通ってしまいます。殺人事件の重要参考人が焼死体で見つかったというのに、司法解剖もしてない。身長、体重、歯型、血液型、その他もろもろ遺体の身元特定を何もせず、免許の物的証拠だけで断定してしまう。なんと杜撰なのでしょう。警察不信になってしまいます。

 こうして弓神という刑事は、父親を殺した少女を守るために、ひとりのレイプ犯を“私刑”に処したのです。横島を社会的に殺したのです。

 ここまで、弓神のやっていることは明らかに倫理に反しているし、職権の私的な濫用です。警察権力を振りかざして横島という人間を殺したのです。到底、共感できるものではありません。

 また、武がヒステリーを起こして伊代を殺し、和美が武を撲殺したという単純で突発的な事件の、どこがどう小説『ロイコ』になぞらえられていたのか。「現場にカタツムリの絵が残されていた」以外、どんな共通点があったのか。ドラマは、それを語ることを放棄しました。最終回まできて、「ロイコ事件」の「小説『ロイコ』と事件との関係」を投げ捨ててしまったのです。最初から、この仕掛けそのものが成立していなかったということです。

 

■そして7年後

 

 氷川と苗字を変えた和美に“ヒズミ”というニックネームを与え、生活の面倒を見続けてきた弓神は、横島の不穏な動きを察すると、ヒズミに「南の島に行こう」と提案しました。どうやら警察も辞めるつもりのようでした。

 12歳で父親を殺し、そのショックで記憶喪失と失語症を患った少女は確かに不憫です。しかし、最終話でも語られた通り12歳の児童が殺人罪に問われることはありません。

 そんなヒズミの「記憶を戻してはいけない」というのが弓神の考え方でした。記憶を失ったまま、言葉を失ったまま、南の島で自分が一生面倒を見ればいい……弓神のその考えも理解不能です。ヒズミに必要なのは適切な治療とカウンセリングでしょう。弓神が事件に関わりさえしなければ、心の回復を経て違う人生を歩んでいたかもしれない。少女の父親殺しの、その罪ともいえない罪をもっとも強く断罪したのも、また弓神だったということです。「俺が一生、面倒を見ればいい」という判断は、和美という少女から自由な人生を奪う行為でもあると思うのです。ここも設計として失敗していると感じさせる部分です。

 そういう刑事で、そういうドラマを作ろうとしたわけではないことは、重々承知しています。いろいろ考えてドラマチックなシーンを頭に描いて、整合性を取ってみたら弓神がひどい人物になっちゃっただけだとは思うんです。

 でも、だったら、ちゃんと作れないなら無理にミステリーを構築しようとしなければいいのに、と思うんです。せっかく好印象なドラマだったのに、仕掛けの至らなさでキャラクターの魅力まで台無しになってる。

 先に書いた『日常』編でも、こうした事件の粗は見られましたが、脚本が徹底的に人物に寄り添っていたので、見応えのあるドラマになっていました。しかし『ロイコ』編では、弓神の心情よりもミステリーの仕掛けに心血が注がれ、その結果、弓神のキャラクターが崩壊していた。さらに、弓神のキャラクターを崩壊させてまで組み上げたミステリーも破綻しているという、なんとも残念な最終回になりました。

 あと、いくら金属バットだからって、12歳の少女が一撃必殺で大人の頭蓋骨を割って殺すのは無理だと思うよ。日馬富士でも、たぶん一撃じゃ無理だと思う。以上です。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

選挙公約実施! AKB総選挙第8位 SKE48・チームKII 惣田紗莉渚1st写真集の発売が決定

 今年6月に開催された「AKB48 49thシングル選抜総選挙」にて、速報62位からの大躍進で、初のAKB48シングル選抜入りを果たしたSKE48・チームKIIの惣田紗莉渚。彼女は20歳だった2013年、「第1回AKB48グループ ドラフト会議」においてSKE48・チームKIIに第5巡目で指名され、グループに加入した“遅咲きアイドル”だ。

 そして、そんな彼女の初となるソロ写真集の発売がついに決定。来年2月7日(水)にサイゾーより出版される。

 今年の総選挙では、16位までに入って選抜入りすることを目標にかかげ、達成の際にはファンミーティングを実施することを公約にしていた彼女。「ダークホースなるか?」と期待されていた選挙期間中、

 と、自ら目標をさらに上位へと設定し直し、見事8位を獲得してみせたのだ。

 今回の写真集では、目標達成に導いてくれたファンたちへの感謝と、これまで彼女が見せてこなかった“努力と葛藤”の日々を写真で追っていく。

 明日12月16日(土)よりAmazonにて限定ポスター付き写真集の先行予約がスタートするので、ぜひ、チェックしてほしい。

■商品データ
惣田紗莉渚1st写真集『タイトル未定』
発売日:2018年2月7日(水)
本体価格:1800円(+税)
B5判/並製/オールカラー112P
※写真集には未収録の生写真8種類の中から1枚をランダム封入!
※Amazon購入者限定特典ポスター封入!

 

中山美穂のヤマザキビスケットCMが意図するもの

――毒舌コラムニスト・今井舞が、話題のアノ人物やアノニュースをズバッとヒトコトで斬り捨てる!

◎中山美穂と秋の空
 ヤマザキビスケットのCMに出演している中山美穂。「みんなに食べてもらいたい」と言って一口かじった後、そのおいしさに思わず「やっぱり1人で食べたい」に心変わり。知ってたよ。あんた、そういうとこあるもんね。世間は膝を打つこと然りのセリフなのだが。ヤマザキビスケット側は果たして中山美穂の「そういうとこ」を意識して、これを作ったのだろうか。意識して作ってんならすごいが。今のところ、してないようにしか。という部分をわざと狙って、意識してる人にも、意識してない人にも刺さるように作ったってことなのか。考えすぎですね。

 しかし、あんなにアップにしちゃうから、アラが目立っちゃってもう大変である。そこもあえて狙ってるのか。何か意味があるのか。考えすぎですね。

◎売名成功
 「高く買わないでください」という新聞の一面広告を出した人気日本酒・獺祭。この商売上手が。

 この広告がネットニュースやマスコミに取り上げられることで「え? そんなプレミアつく酒なんだ」と印象づけられ宣伝効果抜群。正規の店できちんと買ったかどうか追跡できるシステムを導入するのではなく、正規の店できちんと買えないくらい人気の酒なんです、というアピールを優先。いやー。効果ありそうっすねぇ。正直者がバカを見るっつうかね。

 獺祭。「昔はまあ、おいしかったんだけどねぇ。石鹸とか売り出すようになってから、ちょっと、ね」という酒呑みの人のつぶやきを聞いたことがあるが。私は下戸なので石鹸に飛びついてしまった。石鹸もまあ普通だった。高く買わないでください。

◎不倫情報誌「週刊文春」
 すごい。不倫関連の会見で、こんなパーフェクトな出来見たことない。「歴代最高得点」を叩き出した太川陽介。あの内容、あの明るさであんなふうに言われたらもう。

 ベッキー以来、犯罪レベルで叩かれてしかるべき、という概念が広く植え付けられた有名人の不倫であるが。「そもそも夫婦の間の問題」という基本に立ち返らせる何かが、この会見にはあった。ムーブメントは文春に始まり、文春で終わるのか。いや、山尾志桜里がいる限り継続だ。それにしても、「ともだちんこ」って、彼女のために作られた言葉であるな。

今井舞(いまい・まい)
週刊誌などを中心に活躍するライター。皮肉たっぷりの芸能人・テレビ批評が人気を集めている。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)、近著に『気になる「あそこ」見聞録』(新潮社)がある。

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今井舞(いまい・まい)
週刊誌などを中心に活躍するライター。皮肉たっぷりの芸能人・テレビ批評が人気を集めている。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)、近著に『気になる「あそこ」見聞録』(新潮社)がある。

子宮摘出手術の付き添いを、独り身なので「便利屋」に頼もうと思ったけれど

 前回は、ヒトリ者で親戚とは絶縁、友人も少ない夢子でも手術・入院は可能なのか? というテーマで語ったよな。だがヒトリ者のあなたは安心していい。結論から言うと、そうした人らの付き添いがなくとも手術・入院は可能だ!

 そう、手術・入院には病気の体ひとつあればいい! 来るべき日に備え、いよいよ具体的に準備する時期がやってきたと考えた夢子は、鼻歌まじりに剃毛するのだった。夢子は体毛を見られるのがものすごく恥ずかしいらしい。日本では陰毛がないほうがむしろ驚かれるぞ、という俺のアドバイスは届かなかった。ヤツはこう言い張る。

「私が見られるのが嫌なんだから綺麗にするの!」

 剃刀を操りながら、夢子はふと思い出したように俺にこう言った。

「あ、そういえばさ。子宮がいなくなったら私、女じゃなくなると思う?」

 この言葉に俺はショックを受けた。

「まさかお前そんな血迷い事、信じてるわけじゃないよな?」

「思ってないよ。けどあまりにも世間がそう言ってるのを耳にするから、子宮自身はどう思ってるのか、知りたい」

子宮に女性性は宿っていない!
 俺は答えた。

「『女』ってのはなぁ、世間さまにならせてもらって『なる』もんじゃねえ。AV男優でも勃起しない時期を半年くらい経験する者もいる。心は女でも体が男に生まれついた者もいる。みんな必死で『男』や『女』やってんだよ。ならせてもらうんじゃねぇ、『やる』んだ。子宮がなきゃ女でいられないなら、女なんかやめちまえ!」

 さらに俺はこうも言った。

「俺は、お前の皮膚の一部が陥入してできた袋、ただの窪みだぞ。俺にお前の女性性は宿ってない!」

 剃毛の時とは違い、どうやらこの言葉は夢子の心にクリーンヒットしたらしい。

「たしかに!」夢子は大きく頷いた。そして何度も何度も「うん、そうだよね、その通りだ!」とつぶやくのだった。

 もし、これを読んでいるあなたにも「子宮がなくなったら女じゃない」という考えがあるならば、そんな考えは即刻捨てることをアドバイスしたい。

私に付き添いはいらない
 入院情報は友人のキャリーにごく簡単に伝えてあり、その時彼女は手術中の待機係になることを申し出てくれていた。だがそのありがたい申し出を夢子は断った。

 夢子の言い分はこうだった。大変なのは手術の確約を得るところまで。術中、医療スタッフはそりゃ大変だろう。けど、私はその間ぐうぐう寝ているだけだ。こんな楽なことはない。もしイレギュラー事態発生で、腹腔鏡手術を開腹手術に変更するだの死ぬだのしても、病院側に全部判断を任せると言ってあるから、私に付き添いはいらないのだ。

「そうは言っても、本当は誰か待機してたほうがいいんだぞ」とキャリーはなおも言ってくれたのだったが、夢子は頑固だった。自分は身寄りもいないし、死んでも誰も困らない存在だ。そんな人間のために、世界的企業のエグゼクティブであるキャリーを何時間も拘束するなんてできない。便利屋さんを頼んでも一時間6,000円かかる、キャリーの時給は6,000円どころではないでしょう! ダメダメダメ、そんな、もったいなすぎる‼

 俺は思う。この夢子の考え方には大いに歪みがある、と。1時間いくら稼げるかで人の価値は決まらない。人間というのは、何かの部品のじゃないんだ。こんな世知辛い時代ではあるがな、本来、人間は死んだら「ハイ火葬しましょう」では済まない。

 あとな、貧乏人根性丸出しで何でも時給で計算する癖は、エレガントじゃないからやめてほしい。夢子、お前、吝嗇(ドケチ)がすぎるぞ。時給で働いた時期が長すぎた弊害だなぁ。それにヤツが自分のことをまったく愛せてないのも心配だ。痛みが多すぎる自分の体にうんざりしてることも一因だろうな、うむ、すまん。これは俺にも責任がある。

 そのへんのセルフ・イメージが改善されて、考え方の歪みが矯正されることを俺は願ってるぜ。今回の手術はそもそも自分への敬意、信頼性、自信を取り戻す旅だもんな。

 夢子の決心は揺るがないように見えたが、結果として、ヤツはキャリーに待機係をお願いすることにした。それは、ネット上の見知らぬ友人からもたらされた助言のおかげだった。

 その人のことは、夢子は本名もどこに住んでいるかも、実際の性別すら知らない。ただ、ネット上の掲示板でここ数年、お互いの存在を認識しあっている、それだけの関係だ。ネット上の名前を「みみせん」というその人と言葉を交わしたことはここ数年で一、二度あっただろうか、なかっただろうか。それすらはっきり覚えていない。夢子はみみせんさんのオリジナリティとユーモアに溢れた書き込みが好きだった。

 その掲示板に夢子が「今度手術することになった」とだけ書き込んだ時のことである。みみせんさんは、自分も手術して退院してきたばかりだ、知りたいことがあれば聞いてくれと親切にメッセージをくれたのである。

 夢子は待機係問題について聞いてみた。

「友人が手術中の待機を申し出てくれているのですが、申し訳ないので断りました。みみせんさんはどう思いますか?」

便利屋に術中待機してもらった女性
 みみせんさんからのお返事にはこう書かれていた。

「どの科に入院ですか? それによって多少異なるかもしれないので……」

 なるほどと思い「女性科です」と答えると驚かれた。

「みちばたさん(夢子のハンドルネーム)、女性だったんですか! 私も女性科で手術・入院したんですよ」

 そう、夢子はネット上で男性だと思われていた。よくあることだ。夢子だってみみせんさんのことは男性かもしれないと思っていたが、みみせんさんの手術も子宮摘出だったとのことだから、きっと女性なのだろう。

 何度かのやり取りを経て、以下のことが判明した。みみせんさんも単身女性で出産未経験のひとり暮らし。近親者はみな遠方であるために、夢子も検討した便利屋さんを雇って術中待機してもらったのだそうだ。

 みみせんさんには、

「術後のパンツはへそに当たらないほうがいい」
「ベッドにS字フックをかけてて収納するといい」
「術後トイレに行っても沁みることはない」

そして、

「付き添いはお願いしたほうがいい」

など現場からの貴重な情報を教えてもらった。みみせんさんの言葉に夢子は説得力を感じた。それは見知らぬ人に対してのみ感じる種類の説得力だった。

これがシンクロニシティか!?
 さらにみみせんさんはこうも言った。

「知らない者同士だから寄り添えることもある」

 これは俺もたしかにそう思う。知人・友人には言いたくないことでも、たとえばバーでひとりで飲んでいる時に偶然隣あった見知らぬ人には言えてしまう、ということはあるもんだ。

 昨今、人と人の繋がりは希薄になったと言われる。たしかにそうかもしれない、夢子は家族との縁もなく、友人も少ない。地域や職場のコミュニティにも属していない。

 だが現代では、ネットなどを通して、今までなかった繋がり方が可能になってきている。その新しい人との繋がり方を心得ているか否かで、現代社会をサバイブできるかどうかが、決まってくるのかもしれない。

 みみせんさんも夢子と同じような状況にあり、似たような不安・心配と向き合ってきたのだ。夢子には「こんな経験しているのは私だけだろう」という不遜な思いがあったから、自分のように便利屋さんを検討し、実際に利用した人がいたことに驚いた。それ以上に不思議なのは、タイミングまでほぼ同じだったことだ。

 カール・ユングという心理学者によると、何かが起こる時、同じようなことは地球上のいろんな場所で同時に発生しているのだそうだ。インターネットはユングが言うところの集合的無意識そのもののような場所だから、みみせんさんと夢子の手術のタイミングが近かったのも当然なのかもしれない。

 自分の少ない繋がりの中だけでも、自分と同じ経験をしている人がいた。みんな語りたがらないから情報としては表面には出てこないし、絶対数としてはまだ少ないのかもしれないが、日本中で今もひとりっきりで子宮摘出に挑んでいる女性がきっとたくさんいる。夢子は確信した。

 ということは、夢子はひとりだけどひとりじゃないのかもしれない。

 夢子の祖母の時代、女性は結婚する相手も自分の意思で選べなかった。そういう時代だったのだからそれがいいとか悪いとか言いたいんじゃない。

自分の運命を自分でコントロールする
 だが、夢子の祖母に限っては、結婚を激しく悔い、しょっちゅう愚痴っていた。

「祝言の時、角隠しをつけた自分が大きく見える気がして、ずっと背を屈めて縮こまってたのよ。その時は、おじいさんより背が高く見えたらいけないと思ってたの。けど今思うともっと背筋を伸ばして堂々としてればよかった。あんなジジイに遠慮する必要なんて何もなかったのに!」

 何十年も過去の記憶でフレッシュに悔しがれる祖母の様子からは、結婚生活がどれほど苦労の連続だったかうかがい知れるのだった。この一件から、人生を変えるような出来事を人任せにしてろくなことはないと夢子は信じるようになった。自分のこれまでの経験からも、そう思う。

 祖母のような「女の波乱万丈人生」を再現しては現代に生きている意味がない。

 昔は、子宮摘出のための病院探しから入院、手術、リカバリーの工程を女性本人がたったひとりで実行することは不可能だっただろう。だけど今は21世紀だ。きっとやれる。ひとりでも大丈夫、自分の運命は自分でコントロールできる。

 安心と希望はあると夢子は思った。