強制収容所にガス室は存在しなかった!? 歴史修正主義者との不毛な戦い。実録法廷劇『否定と肯定』

 ナチスドイツによるユダヤ人大量虐殺は行なわれなかった。強制収容所にガス室は存在しなかった──。今なお一部でささやかれているホロコースト否定説。日本では1995年に起きた「マルコポーロ事件」が有名だ。文藝春秋社が発行していた月刊誌「マルコポーロ」95年2月号に、「ガス室は捏造されたもの」という内容の記事が掲載された。米国のユダヤ人団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」からの抗議と広告出稿ボイコット運動により、文藝春秋社は「マルコポーロ」の自主廃刊と社長交替を余儀なくされた。記事内容が検証されることなく文藝春秋社が早々に白旗を揚げたため、多くの日本人にはユダヤ人団体の圧力の凄まじさだけが強烈に印象づけられることになった。映画『否定と肯定』は「マルコポーロ事件」とほぼ同時期に起きていたユダヤ人歴史学者とホロコースト否定論者との闘いを描くことで、タブー視されがちなホロコーストをめぐる問題点を浮き彫りにしている。

 レイチェル・ワイズ主演の実録法廷映画『否定と肯定』は、ユダヤ人歴史学者デボラ・E・リップシュッタットが主人公だ。1994年、リップシュッタット(レイチェル・ワイズ)が米国の大学で講演会を開いているところから物語は始まる。『ホロコーストの真実』を出版したばかりのリップシュッタットはテレビ局から討論番組への出演をオファーされていたが、すべて断っていた。学生から「なんでホロコースト否定論者との討論を避けているんですか?」と質問されるが、「ホロコーストは実際に起きた事実。頭ごなしに否定する人たちと話し合っても時間の無駄」というのがリップシュッタットの考えだった。ところが彼女の講演会に「学生たちに嘘を教えるな」とひとりの男が怒鳴り込んできた。ホロコースト否定論者の英国人作家デヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)だった。学生たちの前で挑発しまくるアーヴィング。まるでプロレスの仕込みのようだが、実際に起きたリップシュッタット vs. アーヴィングの第1ラウンドだった。

 

 大胆に宣戦布告してきたアーヴィングは、96年になってから英国の裁判所へ名誉毀損の罪でリップシュッタットを訴える。彼女の著書で中傷され、作家活動に支障をきたしているというのがアーヴィングの告訴内容だった。ホロコーストがあったポーランドでもドイツでもなく、英国の法廷で闘うというのがアーヴィングの狙いだった。英国の裁判では訴えた側ではなく、訴えられた側が無罪であることを立証しなくてはならない。売られたケンカは買ってやろうじゃないかと意気込むリップシュッタットだったが、英国在住の事務弁護士アンソニー(アンドリュー・スコット)から「あなたは裁判で発言しないように」と釘を刺される。また、リップシュッタットはホロコーストからの生還者を証言台に立たせて、収容所で起きた悲劇を彼らの肉声で語らせることがこの裁判では重要だと考えていたが、これも却下されてしまう。裁判に不慣れなホロコーストサバイバーが証言台に立てば、記憶の曖昧さを揚げ足取りされる可能性があるからだった。

 アウェーである英国での裁判を前に、自分を守ってくれるはずの弁護団とうまく意志の疎通ができずにイラ立つリップシュッタット。もし万が一、この裁判に負けるようなことがあれば、自分のせいで歴史上からホロコーストが存在しなかったことになりかねない。ホロコーストで亡くなった人々や遺族すら貶めることになる。英国のユダヤ人グループの長老たちからも、裁判はやめて示談にしたほうがいいと諭される。訴訟を起こしたことでマスコミからの注目度が急上昇したアーヴィングに比べ、リップシュッタットにとっては不利な要素が付きまとう裁判だった。

 リップシュッタットの法廷弁護を引き受けた老弁護士のリチャード(トム・ウィルキンソン)と共に、アウシュビッツへ現地調査に向かう一行。アウシュビッツへのロケ撮影シーンは本作の大きな見どころとなっている。どんよりとしたアウシュビッツの空模様。終戦間際にドイツ軍が爆破したために収容所は破壊されており、跡地には寒々しい荒涼とした風景が広がるばかり。ガス室の痕跡が残る場所に立つリップシュッタットたち。ここで数十万もの罪なきユダヤ人たちが処刑されたのだ。レイチェル・ワイズの視線を通して、強制収容所跡地の禍々しさがひしひしと伝わってくる。アウシュビッツの風景を体感したことで、この後の裁判シーンに1カットだけガス室での処刑場面が挿入されるが、とても生々しいものとして目に焼き付くことになる。

 2000年、ロンドンの王立裁判所での口頭弁論が始まり、アーヴィングは自分自身が弁護人となって証言台で滔々と自説を述べる。ところが、アーヴィングの語る内容とは「アウシュビッツにはガス室はなかった。収容所で伝染病が広まるのを防ぐために、死体をガス消毒していたのである。あれはガス室ではなく、霊安室だった」というトンデモ系のものだった。死体はすぐに焼却されたのに、なぜガス消毒するのか意味不明だった。さらに「なぜ霊安室の扉に覗き穴を付ける必要があったのか?」とツッコミが入ると、「地下にあるガス室をドイツ兵が防空壕代わりに使っていたから」というこれまた珍説が返ってくる。ここに至って、リップシュッタットの弁護団は彼女やホロコーストサバイバーたちをトンデモ学説を振りかざすホロコースト否定論者と同じ土俵には立たせないという戦略をとっていたことが明らかになる。テレビの討論番組や新聞では両論並記という形がよく用いられるが、それは根拠のない自説を唱える歴史修正主義者にとっては史実と同列に並ぶことができる絶好の機会だったのだ。

 裁判が進み、アーヴィングは歴史資料の中から自分に都合のいい部分だけを抜粋し、内容を歪める形で自分の書物に引用していたことが判明する。そして判決、当然ながらリップシュッタットは勝利を収める。ではアーヴィングは歴史修正主義者の立場を改めたかというと、もちろんそんなしおらしい人間ではない。「公判結果をよく読むと、自分に有利なように読むことができる」とお得意の独自解釈をマスコミ相手に繰り広げる。裁判に負けても、彼はホロコースト否定論者であることをやめようとしない。なぜなら、「それでもホロコーストは存在しなかった」と主張したほうが、反ユダヤ主義者たちを中心に自分の出版物が売れるからだ。アーヴィングにとっては歴史的に正しいかどうかよりも、自分の本が売れることが重要だった。

 月刊誌「マルコポーロ」の場合は、アーヴィングたちが支持したホロコースト否定説という反ユダヤ主義者たちのプロパガンダ文書を鵜呑みにした寄稿記事を掲載したために、廃刊へと追い込まれた。歴史修正主義者たちを支える民族差別や偏見が消えない限り、アーヴィングのようなトンデモ学説は今後もささやかれ続けるに違いない。
(文=長野辰次)

『否定と肯定』
監督/ミック・ジャクソン 脚本/デヴィッド・ヘア
出演/レイチェル・ワイズ、トム・ウィルキンソン、ティモシー・スポール、アンドリュー・スコット、ジャック・ロウデン、カレン・ピストリアス、アレックス・ジェニングス
配給/ツイン 12月8日(金)よりTOHOシャンテほか全国ロードショー公開中
C)DENIAL FILM, LLC AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2016
http://hitei-koutei.com


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中国でトラックが車両火災 近隣住民がアディダス新作シューズ5,000万円分を集団略奪!

 中国由来の熟語に、趁火打劫(ちんかだこう)という言葉がある。意味は、敵の混乱に乗じて土地や民を奪うことである。現代の中国では、この単語が火事場泥棒を指す言葉として、たびたびニュースなどで使われている。今回は事故に遭ったトラックが、その被害を受けてしまった。

「中財網」(11月30日付)によると、11月28日午後、浙江省温州市内の高速道路を走っていたトラックの後輪部分から火災が発生し、小規模の爆発を起こした。この爆発の影響で、積み荷の一部が高速道路の下に落下した。

 本来なら、トラック運転手の安否や爆発の影響などが気になるところだが、近隣住民にとっては積み荷にしか興味がなかったようだ。このトラックには1万4,000足のアディダスのシューズが積まれていたのだ。

 

 高速道路の下に落ちたシューズの入った段ボールは、次々と近隣住民によって持ち逃げされてしまったという。幸い、軽いケガで済んだトラックの運転手はメディアの現場取材に対し「今回、整備不良で、このような事故を起こしてしまいました。燃えてしまったり持ち逃げされたりしたシューズの被害総額は300万元(約5,000万円)以上になります。これからどうやって賠償していけばよいのか、まったくわかりません。商品を持ち逃げした人たちには、一刻も早く返却してほしいです」と、涙ながらに語った。

 今回、事故を起こしたトラックは、福建省の工場から出荷されたシューズを積み、江蘇省の倉庫に運ぶ途中だったという。さらに、積まれていたシューズは、まだ市場では発売されていない新商品だったという。

 

 運転手の男性はケガを負っていたにもかかわらず、治療費を持ち合わせていなかったため入院はせず、長距離列車で自宅に戻ったそうだ。今後、賠償について関係者と話し合いを進めていくことになる。

 今回のニュースは中国でも全国的に大きく報じられ、こうした一連の住民による略奪行為は、人民からも厳しく非難されている。日本でも災害や事故が発生すると、その裏で火事場泥棒に走る事件が後を絶たないが、人の不幸につけ込むような犯罪行為は断じて許されない。
(文=青山大樹)

プロ野球の魅力伝えた「プロ野球100人分の1位」と、野球ファンの民度の高さ示した「熱盛グランプリ」の魅力

 旧聞になってしまうが、今年のプロ野球MVP、新人王の記者投票結果が物議を醸した。MVP投票において、オリックスの新人で今季8勝の山岡泰輔に票が入っていたこと。新人王では、阪神の大山悠輔が2位になったこと。それぞれすばらしいルーキーではあるが、正直、その賞に値する活躍はしておらず、野球ファンのマスコミ不信を、また大きくしてしまった次第だ。

 こういった現象は、毎年のように起きている“忖度”ではあるのだが、今年は同業者からも問題視する声が挙がっていたのが特徴的だった。

「活躍した選手より取材対象への愛。プロ野球MVP投票、“忖度”の度合い」(Number)

「甲子園から日本、世界を見る――新人王投票の偏愛問題」「がく然としたセ新人王投票結果 一生に1度、より正当な評価を」(ともにスポニチ)

 プロ意識の低い記者には、憤るというよりも情けなくなってしまうばかり。スポーツ紙の売り上げは右肩下がりというが、ファンからの信頼を失えば、その勢いはますます顕著になるはずだ。

 ただ、モノは考えよう。そんな情けない記者がいるからこそ、対称的に野球ファンから支持を集める投票企画もある。毎年恒例、フジテレビ系『スポーツLIFE HERO’S』による「プロ野球・100人分の1位」。そして今年初めて実施されたテレビ朝日系『報道ステーション』の「熱盛グランプリ」と「ザ・ゴールデングラブ熱盛」がそれだ。

「プロ野球100人分の1位」は、「パワーヒッター部門」「スピードボール部門」「走塁部門」「守備部門」「バットコントロール部門」「コントロール部門」「強肩部門」「変化球部門」の8部門について、今年一番すごかった選手は誰なのか、現役プロ野球選手100人にアンケート調査を行い、ランキング形式で紹介するというもの。フジテレビ夜のスポーツ枠の看板が『すぽると!』から変わっても受け継がれてきた名物企画だ。

 わかりやすい「数字」や「記録」以外で、プロは他選手をどう評価しているのか? どこに着目しているのか? というのが見えてきて興味深い上に、結果にはいつも納得。上述した「MVP」や「新人王」投票で疑問視する投票があった場合、「もう選手間投票にしてよ、メジャーではそうなんだから」という声が野球ファンから上がることが多いが、それを具現化したコーナーといえる。

 7年目の今年は、11月26日から12月3日まで『HERO’S』と『THE NEWSα』で8夜連続放送。もちろん、8部門いずれも面白かった。でも、だからこそ、「強肩部門」の番外編で、広陵高校・中村奨成を「甲子園優勝」と紹介してしまったテロップミスはいただけなかった(実際は準優勝)。選手たちから「この賞が欲しい」といわれ、ファンからも支持を集める信頼と実績のある企画だけに、来年は細かい部分ももう一段ブラッシュアップしていただきたい。

 一方の、報道ステーション「熱盛グランプリ」と「ザ・ゴールデングラブ熱盛」。今年から始まったスポーツコーナーの人気企画「きょうの熱盛」の年間総まとめ、ともいえるのが上記2つの展開だった。

 まず、ペナントレース終了後すぐに実施されたのが「熱盛グランプリ」で、12球団のファン各100人(合計1,200人)に聞いた「今年、最も熱かったシーン」を球団ごとに発表。また、先月30日のゴールデングラブ賞表彰式にぶつける形で放送された「ザ・ゴールデングラブ熱盛」は、ゴールデングラブ賞を受賞したセ・パの守備職人18人の中で、もっとも熱い守備をみせた守備No.1選手(=「ザ・ゴールデングラブ熱盛プレーヤー」)を、こちらもファン投票で決めようというもの。選手間投票の「プロ野球100人分の1位」と違って、徹底して“ファン投票”にこだわったのが報道ステーションだった。

 特に「ザ・ゴールデングラブ熱盛」を見ていて感じ入ったのが、ある特定球団のファンであっても自ら愛するチームには忖度せず、しっかりと他球団の選手の名を挙げる声が多かったことだ。これこそが野球ファンの民度の高さ。MVPと新人王投票で首を傾げたくなる票を投じた記者にこそ見てほしかった、素晴らしい企画だった。

 すでに7年の歴史を誇る「プロ野球100人分の1位」に対して、「熱盛」は今年始まったばかり。だが、放送では選手のほうからアツモリスト寺川綾キャスターに対して「生“熱盛”が欲しい」と要望する場面もあり、1年目にしてすっかり愛されるコーナーになっていたことがうかがえた。

 今後、毎年オフの恒例企画として実施してくれれば、選手間投票の「プロ野球100人分の1位」、ファン投票の「熱盛グランプリ&ザ・ゴールデングラブ熱盛」として、シーズンオフの楽しみ方が広がりを見せるのではないだろうか。それならば、記者投票も続けていいんじゃないと思えてくる。変な忖度はご勘弁だけれども。

Hey!Say!JUMP『 I/Oth Anniversary Tour 2017-2018』ついに開始! このフォトレポートで、“台風の目”伊野尾慧を徹底解剖!

 “伊野尾旋風”到来中! 
 長らく「JUMPの最終兵器」とささやかれ、ついに大ブレイクを果たしたHey! Say! JUMP伊野尾慧を徹底解剖! 
 テキトー王子ならではのエピソードや愛用私物データもたっぷり収録!

CONTENTS
伊野尾慧 バイオグラフィー・・・・04P~
〜2010 年・・・・06P~
2011 年・・・・20P~
2012 年・・・・32P~
2013 年・・・・44P~
2014 年・・・・56P~
2015 年・・・・68P~
2016 年・・・・80P~
どこまでがウソ? ホント? テキトー発言&おもしろエピソード集・・・・88P~
服も小物も一挙公開! いのちゃん愛用私物コレクション・・・・93P~

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いしだ壱成が休業を「年内」に区切ってるワケ

――毒舌コラムニスト・今井舞が、話題のアノ人物やアノニュースをズバッとヒトコトで斬り捨てる!

◎疑惑の休業
 いしだ壱成、年内休業を発表。理由は「環境の変化と過密日程」とのこと。うーむ。離婚してすぐ、例の「たぁたん」と付き合ったことが「環境の変化」にあたるんだとしたら、自己管理はどうした。「過密日程」ってほど引っ張りだこ状態にも見えないし。「年内」と区切ってるところを見ると……。

 もしかしてもしかすると、年明け「ご心配おかけしました。すっかり元気になりました!」つって公の場に現れた、いしだ壱成の頭が、超フッサフサになってたらどうしよう。たぁたーーーーん!! たぁたん関係ないっすね。お大事に……。

◎都合のいい幻聴
 わいせつ行為が報道された岩泉町長。「助けて、という幻聴が聞こえて思わず駆けつけた」って、『キック・アス』気分か。自分で「幻聴」と言っちゃってるっていうのがね。本当に幻聴に悩まされている人に失礼というかね。

 「どうせ全てを失うなら」と、たわごとへの振り切りのベクトルがすごい。女性記者に直接やったこと以外は、「ウソだ」と証明するの難しいからなぁ。「ウソじゃなかったらどうするんだ!」という流れが生まれたらどうしよう。いや、世の中を信じよう。

 どうしようもない言い訳が多く見られた今年であるが。間違いなく「たわごと・オブ・ザ・イヤー2017」はこの町長に送る。トロフィーだけ持って、早く去ってくれ。

◎23区ランキング1位決定!
 神奈川県の平塚からスタートし、厚木、鶴見川を超えて都内に入り、大田区、品川区を経て、今は港区に。上昇志向の強いOLみたいなサルであるな。

「でも港区っていいとこ結構限られてるし」「今人気あるのは目黒区っしょ」「渋谷区はダサい場所いっこもないよね」「民度のクオリティでいったら千代田区で決定」。

 尽きることのない「区ヒエラルキー談義」であるが。このサルが最後に辿り着いた場所を、とりあえず暫定首位として認定してはどうだろうか。たとえ北区になろうが足立区になろうが、文句いいっこなしで。マジで。キリがないから。

 そんな私は新宿区在住。便利さでいったら、誰が何と言おうとウチが一番! あーキリがねぇ。

今井舞(いまい・まい)
週刊誌などを中心に活躍するライター。皮肉たっぷりの芸能人・テレビ批評が人気を集めている。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)、近著に『気になる「あそこ」見聞録』(新潮社)がある。

フジ・とんねるず『みなおか』終了発表回が5.9%の爆死……最後まで時代遅れの“身内ネタ”貫く

 30年続いたフジテレビ系バラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』が、7日放送の番組内で、来年3月の番組終了を発表した。

 番組終盤、共同テレビ社長・港浩一氏に扮した木梨憲武と、フジテレビのエグゼクティブプロデューサー・石田弘に扮した石橋貴明が登場。「30年間やってたんだけど、番組が終了しちまうんだよ」(石橋)、「えー! じゃあ、あれ、ウワサじゃなかったんですか!?」(木梨)、「タカとノリに説明しなきゃいけねえ。どうやって説明すりゃいいんだ」などとコント仕立てで発表し、最後はカメラに向かって「30年間のご愛顧、薄い頭を下げて、感謝いたします。すまなかった」(石橋)、「本当にありがとうございました。みなさんのおかげでした」(木梨)と頭を下げた。

「番組終了がリークされて以降、何かと注目されてきた『みなおか』ですが、この日の放送の平均視聴率は5.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。惜しまれるどころか、年内で終わらないのが不思議なほどの低い数字となってしまいました。ちなみに、この放送では、とんねるずやおぎやはぎがフリーアナウンサー・本田朋子の自宅を突然訪問し、手料理を振る舞ってもらうロケ企画や、セレブな有名人にまつわるエピソードを取り上げるクイズ企画が放送されました」(テレビ誌記者)

 とんねるずにとっては、現時点で唯一のレギュラーである『みなおか』。石橋は過去の同番組で、「(仕事が)なくなっちゃったら、なくなっちゃったでしょ。それは(タレントとしての)寿命でしょ。こっち側がやりたいとかというより、世間一般がNOって言ったら、それはその人の寿命でしょ。やりたくてもやれないわけだから、僕らの仕事は。来年かもしれないし、ひょっとしたら半年後かもしれないし。でもそれは寿命だから、もう甘んじて受けるしかない。『寿命か、俺の』と」などと発言していた。

「“裏方転向説”がささやかれている石橋ですが、今のところ、テレビ局の情けで、深夜枠に石橋が司会を務めるバラエティ枠が設けられるのではないかとウワサされている。一方、木梨は来年、主演映画『いぬやしき』の公開を控えており、とんねるずとしてメディアに出る機会はなくなるかもしれません」(同)

 来年3月には、もうひとつの看板番組『めちゃ×2イケてるッ!』も終了させるフジテレビ。民放キー局の2017年4~9月期決算によると、フジテレビが唯一、営業赤字となっており、“1人負け”の状態は依然として続いている。

「2015年4月期に、昼間のニュース番組を約5時間、ゴールデン帯を43%という大型改編を実施したほか、14年には『“ヘンシン”春のフジテレビ』というキャッチコピーを掲げるなど、春にたびたび大ナタを振るってきたフジですが、来春は近年最大の大改革が予想される。『みなおか』と『めちゃイケ』の終了が早々にリークされたのも、新社長に代わってから急ピッチで新番組の準備を進めているためでしょう」(同)

「身内ネタばかり」「笑いが時代遅れ」と揶揄されながらも、今もなお自身のスタイルを貫き続けるとんねるず。フジの“とんねるず切り”は、吉と出るだろうか?

父親がシャブ逮捕の浅野忠信『刑事ゆがみ』最終回直前で“マズイ雰囲気”に……?

 息子が稼いだカネで喰うシャブは旨ぇか!?

 というわけで、“パリピおじさん(記事参照)”こと所属事務所社長の父親が覚せい剤で逮捕されてしまった浅野忠信の主演ドラマ『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)は第9話。せめて放送が終わってからにしてよ……と、関係者全員が思っていることでしょう。逮捕報道後の浅野さんの気丈な振る舞いには、頭が下がる思いです。

 ともあれ、低視聴率ながら好評を集めている同作も、最終回直前まできました。今回は、ドラマで初となる「非1話完結」、次回へ続くとなりました。いよいよクライマックスです。さっそく振り返ってまいりましょう。ちなみに視聴率は6.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。もう数字は話題にしなくてもいいね。

前回までのレビューはこちらから

 今回の殺人事件の被害者は、元医師で資産家の独居老人・薮田先生(渡辺哲)。熱湯風呂に入れられ、身体中をズタズタに切りつけられた痛ましい姿で、二階堂ふみ(豪華ゲスト!)演じる家政婦の春菜に発見されます。現場には「積年の恨み ここに晴らす」とのメモが。

 近所の人の話では、薮田先生には晴男くん(鹿間康秀)という1人息子がいましたが、医大入試に立て続けに失敗したことで7年前に失踪。すでに失踪宣告が出され、“認定死亡”となっています。

 

■7年前といえば、覚えていますか「ロイコ事件」

 

 7年前といえば、第5話(記事参照)で語られた「ロイコ事件」のあったころです。当時、弓神(浅野)が担当したこの事件では、ある夫妻が『ロイコ』という小説になぞらえる形で惨殺され、その小説の作者・横島(オダギリジョー)が容疑者として浮上したものの、焼身自殺。事件は闇に葬られていました。

 その横島の、未完の遺作となった小説が『聖なる夜空にサンタが舞う』。弓神の上司である係長・菅能ちゃん(稲森いずみ)によれば、同著は「家を飛び出した息子が親に復讐する」というストーリー。殺害方法やメモ書きの内容まで薮田先生が殺された事件と一致しており、失踪したはずの晴男くんが容疑者として浮上します。さらに、真野恵里菜(=豪華ゲスト2!)演じる美人鑑識官がメモ書きを調べると、そこには晴男くんの指紋が。いよいよ晴男くんに疑いの目が向けられます。

 しかし、この事件の捜査に、どうにもやる気がなさそうなのが弓神です。羽生くんにサボりを注意され「マジで首切られますよ」とたしなめられると「それもいいかもなぁ」と上の空になってみたり、ロイコ事件の生き残りである夫妻の娘・ヒズミ(山本美月)に「2人で南の島でも行くか」と提案してみたり、もう警察の仕事も辞めちゃいたい感じ。どうしたんでしょう。

 弓神は、晴男くんより第一発見者の春奈が怪しいと言います。それを受けて、羽生くん(神木隆之介)が春奈を取り調べることに。しかし春奈は、先生の家から絵画やら1万円札やらをくすねていたことは認めましたが、殺害については否認します。「だって私、犯人を見ましたから」と。

 

■就職しちまったんですか、琥珀さん!

 

 映画『HiGH&LOW THE MOVIE』で大暴れしていた「琥珀さん」ことEXILE・AKIRA(=豪華ゲスト3!)は、どうやらタクシー運転手に就職したようです。メガネをかけて、真面目に働いています。正気に戻ったようでよかったです。で、この運転手とのシーンで、いよいよ弓神の怪しい行動に拍車がかかります。

 いつも春奈を先生宅まで乗せている運転手のドライブレコーダーにも、この犯人が映っているはずでした。しかし、映っているはずの部分だけ、弓神はスキを突いてドラレコから削除します。そこに映っていたのは、死んだはずの『ロイコ』作者・横島。そう、横島は生きていたのです。

 怪しい行動を重ねる弓神を羽生くんが尾行すると、なんと弓神は横島と密会していました。

 羽生くんは、上司の菅能ちゃんに「この事件とロイコ事件、関係あるんじゃ?」「横島は生きているんじゃ?」と迫ります。頑なにそれを否定する菅能ちゃんでしたが、横島の死亡報告書の作者が弓神であることを発見すると「ごめん、ありえるかも」と、関与の可能性を認めました。

 で、なんだかんだあって、横島に呼び出されたヒズミが意識不明の状態で病院に運び込まれ、その報せを受けた弓神が駆けつけると、ヒズミは声にならない声で(ロイコ事件を目撃したショックで失声症になってる)、弓神を指差し「ひとごろし……」。弓神は夜の町に姿を消すのでした。最終回へ続く。

 

■ちなみに、今回と次回の脚本はドラマオリジナルです

 

 ここまで、原作から舞台設定や人物配置を拝借しつつ、巧みにアレンジを加えながら時代性、当事者性を抱いた脚本を作ってきた『刑事ゆがみ』。結果、原作より強度が増した回も少なくありませんでしたが、今回と次回の最終回は、ほぼ完全にオリジナルとなります。

 第1話のレビュー(http://www.cyzo.com/2017/10/post_34885_entry.html)で、「いずれオリジナルで事件を構築するという、人物造形とはまるで違う脳みそを使わなければいけない段階も来ることでしょう。応援してますし、もしつまんなくなったら、それも正直に書かなきゃなーと思ってます」と書いたので正直に書きますが、第9話、けっこうマズイ雰囲気が漂ってきたかなーと思います。

 仕掛けの整合性を取ろうとするあまり、キャラクターの行動原理や捜査の技能レベルが乱れきってる。羽生くんがキレキレなのは「成長した」ってことでいいんですが、割を食ったのが菅能ちゃんで、真相に迫った羽生くんを否定し続ける場面なんて、稲森いずみがすごく無能な刑事に見えてしまっていた。弓神の突飛な行動の数々も、「次回に謎を残す」という役割はあっても、これまでの心理的な伏線がないので「意味がわからんよ……」以上の印象がない。今回、第5話とはつながっているけど、6~8話とは全然つながってない。さらにいえば、未完であるはずの『聖なる夜空にサンタが舞う』がハードカバーで出版されていたり、メモ書きに7年前の息子の指紋が残っていたりと、細部にも粗が目立ちました。それでも、各ショットの雰囲気と役者の芝居がいいので画面的に「もって」いるのが、逆にすごく優秀な作品でもあると思うんですけど。

 脚本的にいえば、そもそも初回から登場しているヒズミが「誰」なのか、そしてヒズミを生んだロイコ事件とは「何」なのかを解き明かすのがドラマ版の本筋であって、ロイコ事件を初出しした第5話と今回を担当した池上純哉さんが、実質的なメインライター(設計者)なのかもしれません。ただ、この作品の評価を高めてきたのって、おそらくは事件関係者個人(特に女性)への描き込みの深さとリアルさ、それと浅野&神木というバディのイチャコラ感だったと思うんですよね。そう考えると、倉光泰子さんをはじめとした女性脚本家たちが実力を発揮したことによって、本来の設計よりずっと魅力的な作品が出来上がってしまっていた、と理解したほうが正しいのかもしれません。

 いやいや、最終回を前に書く内容じゃないね。すみません。次回も楽しみです。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

『ドクターX』米倉涼子のV字開脚で、自己最高21.2%! 最終回も「爆上げ」確実なワケ

 米倉涼子が主演する人気医療ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』第5シリーズ(テレビ朝日系)の第9話が12月7日、15分拡大で放送され、視聴率は今シリーズ最高となる21.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)をマークした。ここまでの平均視聴率は20.3%となり、最終回(14日)で18%以上記録すれば、4シリーズ連続で大台突破となる。

 第9話は最終章と銘打たれ、主要キャストに“お休み”はなし。3人体制の脚本は、第2話以来2度目の寺田敏雄氏が担当した。ゲストは、米倉が所属するオスカープロモーションの新人で、演技初挑戦となる「第15回国民的美少女コンテスト」グランプリの井本彩花ときたろうだった。

 バレエ教室の生徒・九重遥(井本)は、大事な選考会を前に、足の痛みが治まらず、祖父・九重節郎(大友康平)とともに、大門未知子(米倉)が勤務する東帝大学病院を訪れる。再検査の結果、放置すれば運動能力に支障をきたす舟状骨骨折と判明。整形外科医・木元博司(きたろう)は、完治させるには2回の手術と半年もの時間を要するため、選考会はあきらめざるを得ない状況と宣告し、遥はショックを隠せない。そこで未知子は、手術は1回で、選考会までに完治できる方法を提案する。

 一方、日本医師倶楽部会長・内神田景信(草刈正雄)は、未知子を日本の医学界から排除すべく、彼女が所属する神原名医紹介所との取り引きを停止するよう、大学病院に圧力をかける。そんな中でも、未知子は目の前の患者を救うべく、遥の難手術に臨む……という展開だった。

 序盤では、初回以来となる、米倉の「銭湯でのV字開脚」、また米倉とフリーランス麻酔科医・城之内博美役である内田有紀のW入浴シーンがオンエアされ、男性視聴者を喜ばせたようだ。ラストは、ショッピング中の未知子が倒れるというショッキングなシーンで、最終回につなげた。

 入浴シーンの効果は絶大だったようで、今シリーズ最高の視聴率をマーク。最終回では、今シリーズでキャストから外されていた、ファン待望のドクターYこと“腹腔鏡の魔術師”加地秀樹医師役の勝村政信が、1話限定で復帰することが明らかになった。

 今シリーズのワースト視聴率は19.0%(第3話)で、キャスト的にも総力戦となる最終回が、よもや18%を下回るとは考えがたく、全話平均で20%の大台を超えることは確実だろう。

 過去シリーズの最終回視聴率は、第1シリーズ(2012年)が24.4%、第2シリーズ(13年)が26.9%、第3シリーズ(14年)が27.4%、第4シリーズ(16年)が22.8%で、いずれもハイレベルな数字を残している。果たして、今シリーズの最終回は、どこまで視聴率を伸ばせるかが注目されるところだ。
(田中七男)

『ドクターX』米倉涼子のV字開脚で、自己最高21.2%! 最終回も「爆上げ」確実なワケ

 米倉涼子が主演する人気医療ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』第5シリーズ(テレビ朝日系)の第9話が12月7日、15分拡大で放送され、視聴率は今シリーズ最高となる21.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)をマークした。ここまでの平均視聴率は20.3%となり、最終回(14日)で18%以上記録すれば、4シリーズ連続で大台突破となる。

 第9話は最終章と銘打たれ、主要キャストに“お休み”はなし。3人体制の脚本は、第2話以来2度目の寺田敏雄氏が担当した。ゲストは、米倉が所属するオスカープロモーションの新人で、演技初挑戦となる「第15回国民的美少女コンテスト」グランプリの井本彩花ときたろうだった。

 バレエ教室の生徒・九重遥(井本)は、大事な選考会を前に、足の痛みが治まらず、祖父・九重節郎(大友康平)とともに、大門未知子(米倉)が勤務する東帝大学病院を訪れる。再検査の結果、放置すれば運動能力に支障をきたす舟状骨骨折と判明。整形外科医・木元博司(きたろう)は、完治させるには2回の手術と半年もの時間を要するため、選考会はあきらめざるを得ない状況と宣告し、遥はショックを隠せない。そこで未知子は、手術は1回で、選考会までに完治できる方法を提案する。

 一方、日本医師倶楽部会長・内神田景信(草刈正雄)は、未知子を日本の医学界から排除すべく、彼女が所属する神原名医紹介所との取り引きを停止するよう、大学病院に圧力をかける。そんな中でも、未知子は目の前の患者を救うべく、遥の難手術に臨む……という展開だった。

 序盤では、初回以来となる、米倉の「銭湯でのV字開脚」、また米倉とフリーランス麻酔科医・城之内博美役である内田有紀のW入浴シーンがオンエアされ、男性視聴者を喜ばせたようだ。ラストは、ショッピング中の未知子が倒れるというショッキングなシーンで、最終回につなげた。

 入浴シーンの効果は絶大だったようで、今シリーズ最高の視聴率をマーク。最終回では、今シリーズでキャストから外されていた、ファン待望のドクターYこと“腹腔鏡の魔術師”加地秀樹医師役の勝村政信が、1話限定で復帰することが明らかになった。

 今シリーズのワースト視聴率は19.0%(第3話)で、キャスト的にも総力戦となる最終回が、よもや18%を下回るとは考えがたく、全話平均で20%の大台を超えることは確実だろう。

 過去シリーズの最終回視聴率は、第1シリーズ(2012年)が24.4%、第2シリーズ(13年)が26.9%、第3シリーズ(14年)が27.4%、第4シリーズ(16年)が22.8%で、いずれもハイレベルな数字を残している。果たして、今シリーズの最終回は、どこまで視聴率を伸ばせるかが注目されるところだ。
(田中七男)

子宮摘出手術をひとりで受けて、ひとりで退院する。解決すべき課題と医療の進歩

前回は夢子がなんとか子宮摘出手術の予約をもぎ取り、それを祝う子宮摘出パーティを開いてもらったところまで語ったな。

 手術すること自体が決まったのはもちろん、病院が決まって俺はホッとした。それさえ決まれば、無駄な悩みが減るからだ。夢子のやつ、手術は怖くないらしいんだが、入院に関しては必要ないことまであれこれ心配していた。

 入院が決まる前から夢子が恐怖していたことの中でも、代表格は”同室の入院患者にいじめられるのではないか”ということだった。夢子は収入が少ないので、一番リーズナブル価格である大部屋に入院する。5人くらいはルームメイトがいるのだろうか? 夢子には恐怖でしかなかった。やつには根拠のない確信があった。

(私は、同室のレディースに、いじめられる)

 入院関連の不安としては、思い悩んでもどうにもならないことNo.1だとわかってはいても、夢子はクヨクヨし続けた。

 夢子はもともと、1日のうち数時間はひとりっきりで過ごさないと情緒不安定になる体質だ。これは鬱とは関係ない。あまり知られていないかもしれないが、そういう体質の人間は社会に一定数、存在する。生まれついた脳の仕組みでそうなるらしい。

 そんな体質の者であっても、人と交流することは可能だ。ただ、夢子は半年に及ぶ病院探しで弱体化していると自覚していた。普段の体質に輪をかけて内向的傾向が強くなっている上に、鬱やパニックが出やすくなっている。それなのに24時間、人間と共同生活が送れるわけがない。この考えはまだ理解できるんだが、一足跳びに「いじめられる」と思ってしまうのはちょっとアレだなぁ。ま、コンディションがよくないってことだな。

◎快適な入院生活が送れるパジャマとは?

 もう少し具体的な懸案事項もあった。寝間着である。

 入院の時は、看護師さんが患者のケアをしやすいよう前開きのパジャマ、もしくは浴衣のようなものでないといけないという。夢子は前開きのパジャマを持っていない。そういえば、近年そういうタイプのものをあまり見かけない気がする。資金も乏しいことだしネットで安く買おうと、入院先が決まる前からパジャマを検索していた。しかし前開きで低価格なパジャマはほとんどなかった。ボタン代が上乗せされ割高になるからか、安いパジャマは全部スウェットのような形をしている。不況はこんなところにも影響を及ぼすのか。

 ネットショップヘビーユーザーの夢子宅には、頻繁に宅配便配達がある。昨今では、朝早くや寝る間際の配達は珍しくない。そういう場合、ひとり暮らしでは寝間着のまま荷物を受け取ることになる。配達員にパジャマパジャマした格好で応対するのはさすがに気が引けるのだが、お手頃かつ前開きなものは花柄やフリルがついていて「どうも! パジャマのままです!」という主張が強い。

 買ったものを入院の時にだけ着るのは、お金がもったいない。シンプルかつ前開きで安いパジャマはないのか! と探してもシンプルであればあるほど1万円以上する。この現象はパジャマ・パラドックスとでも言うべきか。検索し始めてから4時間くらいは平気で過ぎていた。成果なしである。

◎手術後にすぐ洗濯できるのか?

 この件はいったん脇に置こうと決めるも、違う心配が立ち上がってくる。ブラジャー問題である。ノーブラのパジャマ姿で洗面所に行く際に、乳首が透けてしまうのはイヤだった。だがせっかくパジャマを前開きにしても、その下に着けているブラが後ろ開きでは意味がない。とすると、ブラも前開きのものを購入するべきか? 恐る恐る検索しても想像通りだ。こちらは軽く1万円くらいはする。気がつくと検索を始めてからすでに6時間くらいは経過していた。

 ダメだこいつ、不安すぎて完全に正気を失っている。Googleは不安を解消してはくれないぞ!

 パジャマ、ブラなどについてひとしきり思いを馳せれば避けて通れないのは、そう、洗濯案件である。仮にパジャマとブラを調達できたとしよう。高額だからそれぞれ1セットのみだ。しかし手術後、出血やその他体液で着ているものは思いのほか汚れるかもしれない。入院は2週間の予定だが、洗濯なしで過ごすのは無理なのでは。

 ご存じの通り、夢子には身寄りがない。洗濯もすべてセルフだ。コインランドリーはあるような気がする。だが、手術後すぐにランドリーする気力が自分にあるだろうか。

(あっても、パジャマ1組と下着だけ洗って乾燥するのはお金がもったいないなぁ。あっ、洗濯中は何を着ればいいの? なるべく出費は減らしたいけど、やっぱ1セットずつじゃ無理……?  ああっ私にお金さえあれば!)

 夢子の悩みは尽きない。そこで気づいたが、自分の不安の本質はパジャマやブラのことではなく、お金のことなのかもしれない。パジャマもブラもこれ以上検索しても仕方ない。

そう考えるも、心配事は休むことなく心に去来する。

 夢子が住んでいるのはアパートの2階だ。エレベータなどなく、部屋へと続く急勾配の階段は暗く狭い。コンクリートを流し込んだだけのそれは、俺たちには凶器でしかない代物だ。体調不良だとなんでもない段差でもつまづくものだ。それは夢子も多々経験しているし、すでにこの階段からも何度か落っこちている。今のところ骨折せずに済んでいるので自身の骨密度に感謝する日々だが、手術後はどうだろう? 退院後の落ちた筋力で、この違法建築ぎりぎりの階段を自力で登ることは果たして可能なのか。

 夢子は身震いした。やつの脳裏では今、階段から落ちたまま動けず冷たいコンクリートに横たわる蒼白な女と、地面にゆっくり広がる紅色のコントラストの見事な動画が絶賛上映中だ。それが終わると別アングルでもう一回、お次はばっちりスローモーションで……などと動画はさまざまなバリエーションで展開していく。

◎「親族がいない問題」をどうするか

 脳内ムービーで現実逃避しても、重大な問題がまだ残っている。先ほども言ったように、夢子には頼れる者はいない。そもそもそんな人間でも手術・入院させてもらえるのだろうか?

 支配的かつ虐待的な両親とは物理的・精神的な距離を置かないかぎり、自分の生活が崩壊してしまうので連絡を絶っている。入院のために彼らと再び繋がりを持つつもりはない。

 手術中の緊急事態に備え、親族などが病院で待機する慣習があることを、夢子は漫画で読んで知っていた。やつは人生に役立つ知識はだいたい漫画から得ている。もし「手術中待機係」が絶対必要ならば、便利屋さんにでもお願いするしかないと思った。相場は1時間6000円。手術中ずっと待機してもらうとなると高額になるから、本気でイヤだが仕方ない。

「待機係」案件はこのようにクリアできたとしても、さらに気がかりなのが「親族による同意書サイン」問題だった。

 以前読んだ漫画『グーグーだって猫である』(大島由美子)には、大きな女性科疾患を患った未婚の主人公が入院と手術を経た後、治療を続けながら営む日常生活が描かれている。90年代に描かれた本作では、主人公の手術の際、遠くに住む親戚に出向いてもらって同意のサインをしてもらわなければならなかった。「この制度はなんとかならないのか」と書いてあったと記憶している。

◎入院中のQOLは心配なさそう!

 入院先が決まってしまえば、着るものやコインランドリーの値段、同意書サインの件などは、病院に聞けば済む。パジャマ等々の件でハゲそうなほど気をもんでいた夢子の精神的負担も、少しは軽くなるだろう。

 問い合わせの結果、病院には寝間着とタオルのレンタル制度があることが判明した。レンタルは平日のみ、1日数百円とのこと。夢子の入院期間のうち、平日は10日ほどだ。毎日レンタルしても合計5000~6000円、前開きのパジャマを1着買うより安いではないか。これなら洗濯する元気がなくても大丈夫、コインランドリー代まで浮く! すばらしい制度だ!

 しかも写真で見ると、パジャマの前身ごろは甚平のように二重になっている。これならブラなしでも乳首は透けない! 前開きのブラも買わなくて済む!

 きっと自分だけではなく、これまでに入院した多くの人たちも、パジャマやブラ、洗濯問題に頭を悩ませてきたのだろう。そんな人々が病院に意見を言ってくれたから、このように便利な制度が今は存在するのだ。先人のみなさん、ありがとう。入院前の不安を抱えていたのは、私ひとりじゃなかった、そう思うと、少し心強かった。

 もうひとつ気がかりなことがあった。子宮内膜症などの手術の際、Rを投与する病院が少なからずあると聞いていた。10年ほど前に提案され、最近でもピルの代替薬として勧められたが断ったあのRだ。

 Rのせいで骨量が低下したところにアパートの階段から落ちたら、今度こそ骨折してしまう可能性大だ。ひとり暮らしの女性が骨折から寝たきりになり孤独死する、この国に蔓延するケースに自分がなるかどうかの瀬戸際である。入院の予約を取る際に、医師にこういった。

「私は鬱ですし、ひとり暮らしで骨量低下もすごく心配なので、手術前のRはなしでお願いできませんか」

 恐怖から夢子の眉間にはくっきりとしわが刻まれていた。事前の検診で、医師はすでに子宮の動きを確認していた。これなら内視鏡で摘出できるし、卵巣も腫れていないからきっと複雑な手術にはならないだろうという結果だった。医師は言った。

「そうですか……癒着もありませんし、ご本人がRなしを希望するということでしたらなしにしましょう」

 こりゃ、言ってよかったなぁ、おい! 話のわかる先生でよかったぜ。しかし、何も言わなかったらやっぱりRを投与されていたのか。そう考えるとちょっと怖いな。

◎長年ピルを服用してきた甲斐が!

 癒着がないと言われた時、夢子は誇らしさに胸がはちきれそうだった。

(そりゃそうよ、腹腔内の炎症や癒着を最小限に留めるため、私は10年以上も前から根性で毎日ピルを服用してきたんですもの!)

 子宮内膜症の治療薬としては未認可だった昔から、地を這い泥水をすする思いでピルを確保し、家族を含めた周囲にバレないよう服用してきた。その積年の努力は、今日という日を迎えるためにあったんだ。この瞬間、これまでの苦労が報われたようで夢子はじーんと感動していた。

 手術の予約の時には、付き添いが必要か否かもまっさきに確認した。

「私は身寄りがないので、手術中に待機してくれる付き添い人はいません。手術同意書にサインしてくれる者もいないのですが、大丈夫でしょうか」

「いるにこしたことはないのですが、無理な場合はいなくても大丈夫ですよ」

 医師は手術同意書親戚の署名・押印の欄に、鉛筆でさっと×印を書き込んでくれた。

(ありがたい、病院の制度が進化して未婚・身寄りのない者にも優しい制度になっている!)

 夢子は心底ほっとしながら署名捺印した。医療が10年前とあまり変わっていない、と憤慨したことは記憶に新しいが、変化している点もあってよかったなぁ。

◎人生と体のコントロールを取り戻す

 とはいえ、「何かがあった際の緊急連絡先は必要」とのことだった。

「友人に重荷を背負わせることはしたくないので、もし手術中に何かがあっても私は病院の判断に従います。手術中に死んだ場合のこともすべて委ねます。だからこの連絡先は形式的に書き込むだけにさせてください」

 夢子は何度も念を押してから、友人・キャリーの携帯番号を書類に書き込んだ。

「死んだ場合」と夢子が言った時、医師は少し困った顔をした。こんな時に口にするにはたしかに縁起でもないことかもしれないが、自分のような独り者が死に関して意思を明確にしないままでは、人に迷惑をかけてしまうかもしれない。

 それに、夢子はこれまでずっと希死念慮とともに生きてきた。うっかりビルから飛び降りたり、衝動的に電車のホームに飛び込んだりしないよう注意する日常だったので、「死」については考え慣れている。どう死にたいかを意識して生きてきたからこそ、よりよく生きるための手術することを今回選んだのだ。このまま人生を無駄にして腐ってしまっては、自殺を我慢し続けてきた甲斐がないってもんだ。

 精一杯努力して人生と体のコントロールを取り戻す。そのプロセスの途中で(たとえば手術中などに)死んでしまっても、それはむしろ前向きなことだと解釈しているから後悔はしない、と言い切れる。夢子は、体調に関しては結果にコミットするつもりはく、努力したというプロセスが大切だと考えている。どんな結果になろうと、我々は受け入れる所存だ。